(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173142
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】射出装置及び成形機
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20231130BHJP
B29C 45/03 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B22D17/32 B
B22D17/32 H
B22D17/32 E
B29C45/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085184
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 俊治
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JD04
4F206JL02
4F206JQ31
4F206JQ90
4F206JT21
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】アキュムレータと射出シリンダとの間に介在するバルブの開度を大きくする速度を速くすることができる射出装置を提供する。
【解決手段】第1バルブ39において、バルブ本体41の内部は弁体43の主部45によってA1側の連通室49とA2側のパイロット室51とに区画されている。連通室49はアキュムレータ29と射出シリンダ27とに接続されている。バルブ本体41は、連通室49のA1側の端部にアキュムレータ29に接続されているACC用ポート53を有している。主部45は、A2側からACC用ポート53を塞いでアキュムレータ29から射出シリンダ27への液圧の付与を禁止し、ACC用ポート53からA2側へ離れてアキュムレータ29から射出シリンダ27への液圧の付与を許容する。主部45のパイロット室51における受圧面積S2は、主部45の連通室49における受圧面積S1よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を押すプランジャを駆動する射出シリンダと、
前記射出シリンダと接続されているアキュムレータと、
前記アキュムレータと前記射出シリンダとの間に介在している第1バルブと、
を有しており、
前記第1バルブは、
中空状のバルブ本体と、
前記バルブ本体に対して第1側及びその反対側の第2側に摺動可能に前記バルブ本体に収容されている主部を有している弁体と、を有しており、
前記バルブ本体の内部は、前記主部によって前記第1側の連通室と前記第2側のパイロット室とに区画されており、
前記連通室は、前記アキュムレータと前記射出シリンダとに接続されており、
前記パイロット室は、前記弁体を前記第1側へ移動させるときに当該パイロット室にパイロット圧力を供給するパイロット圧力供給源と、前記弁体を前記第2側へ移動させるときに当該パイロット室の作動液が排出される排出先と、に接続されており、
前記バルブ本体は、前記連通室の前記第1側の端部に前記アキュムレータに接続されているアキュムレータ用ポートを有しており、
前記主部は、前記第2側から前記アキュムレータ用ポートを塞いで前記アキュムレータから前記射出シリンダへの液圧の付与を禁止する閉位置と、当該閉位置から前記第2側へ離れて前記アキュムレータから前記射出シリンダへの液圧の付与を許容する開位置との間で移動可能であり、
前記主部の前記パイロット室における受圧面積が、前記主部の前記連通室における受圧面積よりも小さい
射出装置。
【請求項2】
前記パイロット圧力供給源は、加圧シリンダを有しており、
前記加圧シリンダは、
加圧シリンダ部材と、
前記加圧シリンダ部材に対して軸方向に摺動可能に前記加圧シリンダ部材に収容されている所定部位を有している加圧ピストンと、を有しており、
前記加圧シリンダ部材の内部は、前記所定部位によって前記軸方向の一方側の入力シリンダ室と前記軸方向の他方側の出力シリンダ室とに区画されており、
前記入力シリンダ室は、当該入力シリンダ室に液圧を付与する液圧源に接続されており、
前記出力シリンダ室は、前記パイロット室に接続されており、
前記加圧ピストンの前記入力シリンダ室における受圧面積は、前記加圧ピストンの前記出力シリンダ室における受圧面積よりも大きい
請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記加圧シリンダ部材は、
大径シリンダ部と、
前記大径シリンダ部と直列につながっており、前記大径シリンダ部よりも内径が小さい小径シリンダ部と、を有しており、
前記加圧ピストンは、
前記大径シリンダ部を摺動可能な、前記所定部位としての大径ピストンと、
前記小径シリンダ部を摺動可能な小径ピストンと、を有しており、
前記大径シリンダ部の内部は、前記大径ピストンによって、前記小径ピストンとは反対側の前記入力シリンダ室と、前記小径ピストンの側の前記出力シリンダ室と、に区画されており、
前記小径シリンダ部は、前記小径ピストンに対して前記大径シリンダ部とは反対側に位置する補助シリンダ室を有している
請求項2に記載の射出装置。
【請求項4】
前記加圧シリンダは、
大径シリンダ部と、
前記大径シリンダ部と直列につながっており、前記大径シリンダ部よりも内径が小さい小径シリンダ部と、を有しており、
前記加圧ピストンは、
前記大径シリンダ部を摺動可能な大径ピストンと、
前記小径シリンダ部を摺動可能な小径ピストンと、を前記所定部位として有しており、
前記大径シリンダ部の内部は、前記大径ピストンによって、前記小径ピストンとは反対側の前記入力シリンダ室と、前記小径ピストンの側の補助シリンダ室と、に区画されており、
前記小径シリンダ部は、前記小径ピストンに対して前記大径シリンダ部とは反対側に位置している前記出力シリンダ室を有している
請求項2に記載の射出装置。
【請求項5】
前記パイロット室から前記排出先が有しているタンクへの流れを許容及び禁止する第2バルブと、
前記液圧源から前記入力シリンダ室への流れの許容及び禁止、並びに前記入力シリンダ室から前記タンクへの流れの許容及び禁止を行う第3バルブと、を有している
請求項2に記載の射出装置。
【請求項6】
前記補助シリンダ室からタンクへの流れの許容及び禁止、並びに前記液圧源から前記補助シリンダ室への流れの許容及び禁止を行う第2バルブを有している
請求項3に記載の射出装置。
【請求項7】
前記第2バルブは、前記液圧源から前記パイロット室への流れを許容するとともに前記補助シリンダ室から前記タンクへの流れを許容する状態と、前記パイロット室から前記タンクへの流れを許容するとともに前記液圧源から前記補助シリンダ室への流れを許容する状態との間で切換え可能な切換弁を有している
請求項6に記載の射出装置。
【請求項8】
前記弁体は、前記主部から前記第2側へ延びて、前記第2側の端面が大気圧下にある延長部を更に有している
請求項1に記載の射出装置。
【請求項9】
前記バルブ本体は、
中空状の第1部位と、
前記第1部位の内径よりも小さい内径を有し、前記第1部位に対して前記第2側につながっている第2部位と、を有しており、
前記主部は、
前記第1部位に対して前記第1側及び前記第2側へ摺動可能な第3部位と、
前記第2部位に対して前記第1側及び前記第2側へ摺動可能な第4部位と、を有しており、
前記第1部位の内部は、前記第3部位によって前記第1側の前記連通室と前記第2側の付属室とに区画されており、
前記第2部位の内部は、前記第4部位に対して前記第2側に位置する前記パイロット室を有している
請求項1に記載の射出装置。
【請求項10】
前記バルブ本体は、
中空状の第1部位と、
前記第1部位の内径よりも小さい内径を有し、前記第1部位に対して前記第2側につながっている第2部位と、を有しており、
前記主部は、
前記第1部位に対して前記第1側及び前記第2側へ摺動可能な第3部位と、
前記第2部位に対して前記第1側及び前記第2側へ摺動可能な第4部位と、を有しており、
前記第1部位の内部は、前記第3部位によって前記第1側の前記連通室と前記第2側の前記パイロット室とに区画されており、
前記第2部位の内部は、前記第4部位に対して前記第2側に位置している付属室を有している
請求項1に記載の射出装置。
【請求項11】
前記射出シリンダは、
前記プランジャに連結されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドと固定されている射出ピストンと、
前記射出ピストンを収容しており、内部が、前記射出ピストンによって、前記ピストンロッドの側のロッド側室と、その反対側のヘッド側室とに区画されている射出シリンダ部と、
前記ヘッド側室に通じている増圧シリンダ部と、
前記増圧シリンダ部に収容されており、前記増圧シリンダ部の内部を、前記ヘッド側室に通じる小径シリンダ室と、前記ヘッド側室とは反対側の大径シリンダ室とに区画しており、前記大径シリンダ室における受圧面積が前記小径シリンダ室における受圧面積よりも大きい増圧ピストンと、を有しており、
前記第1バルブは、前記アキュムレータと前記大径シリンダ室との間に介在している
請求項1に記載の射出装置。
【請求項12】
請求項1に記載の射出装置と、
前記射出装置によって成形材料が射出される型を保持する型締装置と、
を有している成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、型内に成形材料を射出する射出装置、並びに当該射出装置を含む成形機に関する。成形機は、例えば、金属を成形するダイカストマシン、又は樹脂を成形する射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
成形機の射出装置として、成形材料を型内へ押すプランジャに連結される射出シリンダと、射出シリンダへ液圧を付与するアキュムレータ(以下、「ACC」と略すことがある。)と、を有するものが知られている(例えば、下記特許文献1~5)。アキュムレータから射出シリンダへの液圧の付与は、アキュムレータと射出シリンダとの間に介在するバルブによって許容及び禁止される。上記バルブは、例えば、パイロット圧力が導入されると閉じられ、パイロット圧力の導入が停止されると、アキュムレータからの圧力によって開かれる。
【0003】
より詳細には、例えば、上記バルブは、中空状のバルブ本体と、軸方向に移動可能にバルブ本体に収容されている弁体とを有している。弁体は、バルブ本体の内部を、軸方向の一方側の連通室と、軸方向の他方側のパイロット室とに区画している。連通室は、アキュムレータと射出シリンダとを連通するためのものであり、パイロット室とは反対側にアキュムレータに通じるポートを有している。パイロット室にパイロット圧力が導入されると、弁体は、上記ポートに向かって移動して上記ポートを塞ぐ。これにより、アキュムレータから射出シリンダへの液圧の付与が禁止される。また、パイロット室がタンクに接続されると、アキュムレータからの液圧によって弁体はポートから離れる。これにより、アキュムレータから射出シリンダへの液圧の付与が許容される。弁体がポートから離れるほど、バルブの開度は大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-290041号公報
【特許文献2】特開2017-64766号公報
【特許文献3】実開昭59-25363号公報
【特許文献4】特開2004-160484号公報
【特許文献5】特開2016-128174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなバルブにおいて、開度が大きくなる速度が遅いと、例えば、射出シリンダの液圧がアキュムレータの液圧と同等になるまでの時間が長くなり、ひいては、射出シリンダが生じる駆動力を所望の大きさまで上昇させる時間が長くなる。その結果、例えば、プランジャによって成形材料に付与する圧力を上昇させる増圧を開始してから上記圧力が最終的な目標値に到達するまでの時間(昇圧時間)が長くなる。換言すれば、バルブを開く速度は、昇圧時間を短くするときの限度に影響している。一方、昇圧時間は成形品に影響を及ぼすから、昇圧時間の設定の自由度は高いことが望ましい。従って、アキュムレータと射出シリンダとの間に介在するバルブの開度を大きくする速度を速くすることができる射出装置、及び該射出装置を有する成形機が待たれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る射出装置は、成形材料を押すプランジャを駆動する射出シリンダと、前記射出シリンダと接続されているアキュムレータと、前記アキュムレータと前記射出シリンダとの間に介在している第1バルブと、を有しており、前記第1バルブは、中空状のバルブ本体と、前記バルブ本体に対して第1側及びその反対側の第2側に摺動可能に前記バルブ本体に収容されている主部を有している弁体と、を有しており、前記バルブ本体の内部は、前記主部によって前記第1側の連通室と前記第2側のパイロット室とに区画されており、前記連通室は、前記アキュムレータと前記射出シリンダとに接続されており、前記パイロット室は、前記弁体を前記第1側へ移動させるときに当該パイロット室にパイロット圧力を供給するパイロット圧力供給源と、前記弁体を前記第2側へ移動させるときに当該パイロット室の作動液が排出される排出先と、に接続されており、前記バルブ本体は、前記連通室の前記第1側の端部に前記アキュムレータに接続されているアキュムレータ用ポートを有しており、前記主部は、前記第2側から前記アキュムレータ用ポートを塞いで前記アキュムレータから前記射出シリンダへの液圧の付与を禁止する閉位置と、当該閉位置から前記第2側へ離れて前記アキュムレータから前記射出シリンダへの液圧の付与を許容する開位置との間で移動可能であり、前記主部の前記パイロット室における受圧面積が、前記主部の前記連通室における受圧面積よりも小さい。
【0007】
本開示の一態様に係る成形機は、前記射出装置と、前記射出装置によって成形材料が射出される型を保持する型締装置と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、アキュムレータと射出シリンダとの間に介在するバルブの開度を大きくする速度を速くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図。
【
図2】第1実施形態に係る射出装置の要部の構成を、射出前の状態で示す断面図。
【
図3】
図2の射出装置の要部の構成を、増圧が行われている状態で示す断面図。
【
図5】第2実施形態に係る射出装置の要部を示す断面図。
【
図6】第3実施形態に係る射出装置の要部を示す断面図。
【
図7】第4実施形態に係る射出装置の要部を示す断面図。
【
図8】第5実施形態に係る射出装置の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態に係るダイカストマシンの要点>
図1は、実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。なお、図の上下方向(紙面に沿う方向)は鉛直方向であり、図の左右方向及び紙面貫通方向は水平方向である。
【0011】
ダイカストマシン1は、例えば、液状の金属材料(溶湯)を金型101内(空間107)へ射出し、溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造する。溶湯の金型101内への射出は、スリーブ21内の溶湯がプランジャ23によって金型101内へ押し出されることによって行われる。プランジャ23は、射出装置9の駆動部25によって駆動される。
【0012】
図2及び
図3は、実施形態に係る射出装置9の要部を示す模式的な断面図である。
図2及び
図3は、後述するように、互いに異なる状態を示している。後述する射出シリンダ27に関して、
図2及び
図3の左右方向は、
図1の左右方向に対応している。すなわち、射出シリンダ27に関して、図の上下方向(紙面に沿う方向)は鉛直方向であり、図の左右方向及び紙面貫通方向は水平方向である。
【0013】
また、図中に矢印で示すA1側及びA2側(A1方向及びA2方向ということもある。)は、後述する弁体43の軸方向(別の観点では移動方向)の互いに反対側を示している。A1方向の鉛直方向に対する向き、並びにA1方向の射出シリンダ27に対する向きは任意である。
【0014】
射出装置9の駆動部25は、射出シリンダ27と、射出シリンダ27と接続されているアキュムレータ29と、アキュムレータ29と射出シリンダ27との間に介在している第1バルブ39と、を有している。第1バルブ39は、バルブ本体41と、弁体43とを有しており、弁体43がバルブ本体41に対して軸方向(A1側及びA2側)に移動することによって開閉される。第1バルブ39の開閉によって、アキュムレータ29から射出シリンダ27への液圧の付与が許容及び禁止される。
【0015】
バルブ本体41は、中空状である。弁体43は、バルブ本体41に収容されている主部45を有している。主部45は、バルブ本体41に対してA1側及びA2側に摺動可能である。バルブ本体41の内部は、主部45によってA1側の連通室49とA2側のパイロット室51とに区画されている。
【0016】
連通室49は、アキュムレータ29と射出シリンダ27とに接続されている。すなわち、連通室49は、アキュムレータ29に通じるACC用ポート53と、射出シリンダ27に通じるシリンダ用ポート55とを有している。ACC用ポート53は、連通室49のA1側の端部に位置している。
【0017】
図2に示されているように、パイロット室51にパイロット圧力が付与されることによって、弁体43は、A1側へ移動する。そして、主部45がA2側からACC用ポート53を塞ぐことによって、第1バルブ39は閉じられる(全閉となる)。ひいては、アキュムレータ29から射出シリンダ27への液圧の付与が禁止される。
【0018】
また、
図3に示されているように、パイロット室51へのパイロット圧力の付与が停止され、かつパイロット室51からの作動液の排出が許容されることによって、弁体43は、A2側へ移動する。そして、主部45がACC用ポート53から離れることによって、第1バルブ39は開かれる。ひいては、アキュムレータ29から射出シリンダ27への液圧の付与が許容される。また、主部45がA2側の移動限に到達した状態(
図3の状態)は、第1バルブ39の全開に相当する。
【0019】
本実施形態では、従来とは異なり、主部45がパイロット室51の作動液からA1側への圧力を受ける面積(受圧面積S2)が、主部45が連通室49の作動液からA2側への圧力を受ける面積(受圧面積S1)よりも小さい。より詳細には、図示の例では、弁体43は、主部45からA2側へ延びて、A2側の端部が大気圧下にある延長部47を有している。これにより、受圧面積S2は、受圧面積S1に対して、延長部47の横断面の断面積だけ減じられている。
【0020】
なお、「受圧面積」の語は、特に断りが無い限り、上記のように、ピストン状の部位又は部材が移動方向への圧力を受ける面積を指す。例えば、主部45の連通室49における受圧面積S1は、主部45の連通室49への露出面の、A1側(又はA2側)への投影面積であって、上記露出面の表面積(A1方向に平行な面の面積を含む。)ではない。
【0021】
弁体43がACC用ポート53を塞いでいる位置(A1側の移動限)から所定の移動距離(例えばA2側への移動限までのストローク全体)でA2側へ移動するときにパイロット室51から排出される作動液の体積は、弁体43のパイロット室51における受圧面積S2に上記の移動距離を乗じた値となる。従って、受圧面積S2が小さくされることによって、弁体43が所定の移動距離でA2側へ移動するときにパイロット室51から排出されなければならない作動液が減じられる。
【0022】
一方、パイロット室51から排出される作動液の流量(速度)は、パイロット室51から作動液の排出先(例えばタンク)に至る流路の断面積等によって制限される。従って、上記のように排出されなければならない作動液の量が減じられることによって、弁体43を速やかにA2側へ移動させることができる。すなわち、速やかに第1バルブ39を開くことができる。その結果、例えば、プランジャ23によって成形材料に付与する圧力を増圧する増圧を開始してから上記圧力が最終的な目標値に到達するまでの時間(昇圧時間)を短くすることができる。別の観点では、昇圧時間の設定可能な幅の自由度を短時間側へ広げることができる。その結果、製品の品質を向上させることが容易化される。
【0023】
なお、従来技術においては、弁体43のパイロット室51における受圧面積(S2に相当)は、弁体43の連通室49における受圧面積S1よりも大きくされている。これは、アキュムレータ29から連通室49に付与される比較的高い液圧に抗して、弁体43をA1側へ移動させたり、弁体43を閉位置(
図2の位置)に保持したりすることを容易化するためである。
【0024】
以上が実施形態に係るダイカストマシン1の要点である。以下では、複数の実施形態について順に説明する。第1実施形態の説明の後においては、基本的に、先に説明された実施形態との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項は、先に説明された実施形態と同様とされたり、先に説明された実施形態から類推されたりしてよい。
【0025】
<第1実施形態>
第1実施形態の説明では、概略、下記の順に説明を行う。なお、「4.バルブ駆動部61」は、第1バルブ39を駆動するための駆動部についての説明である。
1.ダイカストマシン1の全体構成(
図1)
2.射出装置9の構成(
図1~
図3)
2.1.射出装置9の全体構成
2.2.射出シリンダ27
2.3.アキュムレータ29
2.4.射出装置9の液圧装置
3.第1バルブ39(
図2及び
図3)
4.バルブ駆動部61(
図2及び
図3)
4.1.バルブ駆動部61の概要
4.2.加圧シリンダ63
4.3.バルブ駆動部61の液圧装置
5.第1バルブ39及びバルブ駆動部61の動作(
図2及び
図3)
6.射出装置の動作(
図4)
7.第1実施形態のまとめ
【0026】
本開示において、液圧回路に関して、2つの要素が「接続されている」又は「通じている」等というとき、2つの要素が、その間に作動液の流れを許容及び禁止する要素(例えばバルブ)を介して、又は介さずに、接続されている構成を指す場合と、2つの要素の間で作動液の流れが現に許容されている状態を指す場合と、いずれであってもよい場合とがある。いずれであるかは、文脈及び技術常識に照らして合理的に解釈されたい。
【0027】
弁体43の主部45がACC用ポート53を塞ぐ位置まで到達すると、主部45のA1側に位置する空間(連通室49)は無くなると解釈することができる。本開示において、主部45がバルブ本体41の内部を連通室49とパイロット室51とに区画しているというとき、そのような特異な状態は除くものとする。主部45がA2側の移動限に到達するとき、及び他の構成要素(例えば射出シリンダ27及び後述する加圧シリンダ63)についても同様とする。ただし、上記とは異なり、例えば、ACC用ポート53の外側の流路の一部を連通室49の一部と捉え、主部45がACC用ポート53を塞いでいるときも連通室49が存在していると解釈することもできる。
【0028】
(1.ダイカストマシンの全体構成)
図1に示すダイカストマシン1は、既述のように、液状の金属材料(溶湯)を金型101内に射出する。溶湯は、上位概念でいえば、未硬化状態の金属材料(成形材料)である。未硬化状態は、液状の他、固液共存状態を含む。固液共存状態は、液状から凝固が進んだ半凝固状態、又は固体状から溶融が進んだ半溶融状態である。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。なお、実施形態の説明では、未硬化状態の金属材料として、基本的に溶湯を例に取る。
【0029】
金型101は、例えば、固定型103及び移動型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定型103又は移動型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定型103及び移動型105には、中子などが組み合わされてもよい。
【0030】
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
【0031】
マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定型103又は移動型105(
図1では移動型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体3において、射出装置9以外の構成(例えば型締装置7及び押出装置11の構成)は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同じとされて構わない。
【0032】
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動型105を固定型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状の製品部を含む空間107が構成される。射出装置9は、その空間107へ溶湯を射出・充填する。空間107の溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。すなわち、溶湯は成形品になる。その後、型締装置7は、移動型105を固定型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際、又はその後、押出装置11は、移動型105から成形品を押し出す。
【0033】
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17と、画像を表示する表示装置19と、を有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、
図1に示されている操作ユニット(符号省略)とを有している。
【0034】
制御装置15は、例えば、不図示の制御盤及び
図1に示されている操作ユニットに設けられている。制御装置15は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置15は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
【0035】
表示装置19及び入力装置17は、例えば、操作ユニット(符号省略)に含まれている。操作ユニットは、適宜な位置に設けられてよく、図示の例では、型締装置7の固定ダイプレート(符号省略)に設けられている。表示装置19は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
【0036】
なお、制御ユニット5、制御装置15、入力装置17及び/又は表示装置19は、ダイカストマシン1が含む各装置に着目したときは、その装置の構成要素として捉えられてよい。例えば、制御装置15は、射出装置9の制御装置として捉えられてもよい。
【0037】
(2.射出装置の構成)
(2.1.射出装置の全体構成)
射出装置9は、例えば、
図1に示すように、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側を前方、その反対側を後方ということがある。また、スリーブ21及びプランジャ23は、消耗品として捉えることができるから、駆動部25のみを射出装置として捉えてもよい。
【0038】
スリーブ21は、例えば、筒状の部材であり、上面には溶湯をスリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、例えば、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。
【0039】
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の給湯装置によって1ショット分の溶湯が供給口21aからスリーブ21内へ注がれる。そして、プランジャ23が図示の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
【0040】
図2及び
図3に示す射出装置9の駆動部25は、液圧式(又は液圧式と電動式とを組み合わせたハイブリッド式)のものとされている。具体的には、駆動部25は、既述の、射出シリンダ27、アキュムレータ29、第1バルブ39及びバルブ駆動部61を有している。さらに、駆動部25は、射出シリンダ27を駆動するために、ここでは不図示の種々の構成要素(後述する「2.4.射出装置の液圧装置」を参照)を有している。
【0041】
射出装置9は、駆動部25等の動作を把握するために、不図示の種々のセンサを有している。制御装置15は、種々のセンサの検出値に基づいて、駆動部25を制御する。種々のセンサは、例えば、公知の射出装置と同様に設けられてよい。例えば、特に図示しないが、射出装置9は、プランジャ23の位置及び速度を検出するための位置センサと、プランジャ23が溶湯に付与する圧力を検出するための圧力センサと、を有してよい。また、制御装置15による駆動部25の制御も、バルブ駆動部61の新たな構成に応じた具体的な制御を除いて、公知の制御と同様とされて構わない。
【0042】
(2.2.射出シリンダ)
射出シリンダ27は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされて構わない。
図2及び
図3に例示されている射出シリンダ27は、いわゆる増圧式のものとされている。なお、実施形態の説明では、便宜上、主として射出シリンダ27が増圧式である態様を例にとり、特に断り無く、射出シリンダ27が増圧式であることを前提とした表現等を用いることがある。
【0043】
射出シリンダ27は、シリンダ部材31と、シリンダ部材31の内部を摺動可能な射出ピストン33及び増圧ピストン35と、射出ピストン33から前方(プランジャ23側)へ延びるピストンロッド37と、を有している。
【0044】
シリンダ部材31は、例えば、概略、筒状の部材である。シリンダ部材31の内部の横断面(軸方向に直交する断面)の形状は、例えば、円形状である。なお、実施形態の説明では、便宜上、シリンダ部材31の内部の横断面及びピストンの横断面の形状が円形状であることを前提とする。従って、例えば、径の大小関係と横断面の大小関係とは同一である。シリンダ部材31の外形(外面の形状)は任意である。
【0045】
シリンダ部材31は、型締装置7の固定ダイプレートに対して移動不可能とされている。シリンダ部材31は、射出シリンダ部31eと、射出シリンダ部31eの後部に通じている増圧シリンダ部31fとを有している。増圧シリンダ部31fは、射出シリンダ部31eの後部に通じる小径シリンダ部31xと、小径シリンダ部31xの後端に直列に連結されている大径シリンダ部31yとを有している。大径シリンダ部31yの内径は、小径シリンダ部31xの内径よりも大きい。
【0046】
射出ピストン33は、射出シリンダ部31e内に摺動可能に配置されている。射出ピストン33と射出シリンダ部31eとの間には、パッキン(不図示)が介在してよい。パッキンが介在する場合も、射出ピストン33が射出シリンダ部31e(シリンダ部材31)内を摺動すると表現する。射出ピストン33に固定されているパッキンは、射出ピストン33の一部として捉えられてよい。以上のパッキンに関する説明は、他の部材(例えば増圧ピストン35、弁体43及び後述する加圧ピストン69)についても同様とする。
【0047】
射出シリンダ部31eの内部の空間は、射出ピストン33によって、ピストンロッド37側のロッド側室31rと、その反対側のヘッド側室31hに区画されている。増圧ピストン35は、小径シリンダ部31xを摺動する小径ピストン35xと、大径シリンダ部31yを摺動する大径ピストン35yとを有している。大径シリンダ部31yの内部は、大径ピストン35yによって、小径シリンダ部31xの側の前側室31aと、その反対側の後側室31bとに区画されている。小径シリンダ部31xは、小径ピストン35xに対して射出ピストン33の側に位置する小径シリンダ室31cを有している。なお、ヘッド側室31hと小径シリンダ室31cとの境界は明確でなくてもよい。ピストンロッド37は、シリンダ部材31の外部へ延び出ており、その前端がカップリング24(
図1)によってプランジャ23の後端と連結されている。
【0048】
ヘッド側室31hへ作動液が供給されることによって、射出ピストン33は前進する。これにより、ピストンロッド37及びカップリング24を介して射出ピストン33に連結されているプランジャ23が前進する。ひいては、スリーブ21内の溶湯が空間107に射出される。その後、後側室31bに作動液が供給される。増圧ピストン35は、後側室31bの作動液から前方への圧力を受ける面積(受圧面積)が、小径シリンダ室31cの作動液から後方への圧力を受ける面積(受圧面積)よりも大きいことから、後側室31bの圧力よりも高い圧力を小径シリンダ室31c(及びヘッド側室31h)に付与できる。これにより、成形材料の圧力を上昇させる増圧(及びその後の保圧)が行われる。
【0049】
なお、例えば、アキュムレータ29から後側室31bへ作動液が流れるとき、その間に介在する流路の容積が大きく、かつ増圧ピストン35の移動量が小さい場合は、アキュムレータ29の作動液は、後側室31bへ到達しない。このような場合であっても、便宜上、アキュムレータ29から後側室31bへ作動液が供給される(又は流れる)と表現することがある。他の構成要素についても、また、作動液の排出についても同様である。また、作動液の供給の語と液圧の付与の語とは、特に断りが無い限り、相互に置換されて構わない。
【0050】
図示の例では、小径シリンダ部31xは、射出シリンダ部31eの後端に直列に連結されており、また、小径シリンダ部31xの径と、射出シリンダ部31eの径とは同一とされている。ただし、小径シリンダ部31xの径と、射出シリンダ部31eの径とは異なっていても構わない。また、特に図示しないが、分離型の増圧式シリンダが公知であることから理解されるように、小径シリンダ部31xは、射出シリンダ部31eの後端に直列に連結されていなくてもよい。
【0051】
図示の例では、増圧ピストン35は、小径ピストン35xと大径ピストン35yとの間に小径ピストン35xよりも径が小さい部位(符号省略)を有している。ただし、そのような部位は設けられなくてもよい。図示の例では、増圧ピストン35は、小径ピストン35xから前方へ突出するロッド(符号省略)を有している。このようなロッドは、例えば、ロッド側室31rへの作動液の供給などによって射出ピストン33を後退させるときに、増圧ピストン35を後退させたり、及び/又は射出ピストン33の後退限を増圧ピストン35の後退限によって間接的に規定したりすることに寄与する。ただし、このようなロッドは設けられなくてもよい。
【0052】
増圧式の射出シリンダ以外の射出シリンダとしては、例えば、単胴式のものを挙げることができる。単胴式の射出シリンダは、端的に言えば、増圧式の射出シリンダ27から増圧シリンダ部31f及び増圧ピストン35を無くした構成を有している。
【0053】
(2.3.アキュムレータ)
アキュムレータ29は、例えば、後側室31bに作動液を供給する。これにより、上述のように増圧が行われる。アキュムレータ29は、後側室31bへの作動液の供給に加えて、不図示の流路及びバルブを介して、ヘッド側室31hへの作動液の供給に利用されてよい。上記とは異なり、アキュムレータ29は、ヘッド側室31hへの作動液の供給に利用されなくてもよい。
【0054】
後側室31bへ作動液を供給するアキュムレータ29がヘッド側室31hへの作動液の供給にも利用される態様において、ヘッド側室31hへの作動液の供給の許容及び禁止をするための構成にも、実施形態に係る第1バルブ39及びバルブ駆動部61に相当する構成が適用されてよい(もちろん、適用されなくてもよい。)。又は、図示の例とは異なり、アキュムレータ29から後側室31bへの作動液の供給の許容及び禁止には、第1バルブ39及びバルブ駆動部61が適用されずに、アキュムレータ29からヘッド側室31hへの作動液の供給の許容及び禁止に第1バルブ39及びバルブ駆動部61が適用されてもよい。これらの場合においては、例えば、第1バルブ39によって、後述する低速射出から高速射出への切換えを速やかに行うことができる。
【0055】
既述のように、射出シリンダは、単胴式のものであってもよい。この場合において、アキュムレータ29、第1バルブ39及びバルブ駆動部61は、ヘッド側室31hに作動液を供給することに利用されてよい。単胴式の射出シリンダが用いられる態様においては、射出用のACCと、増圧用のACCとが別個に設けられることがある。この場合、アキュムレータ29、第1バルブ39及びバルブ駆動部61に係る技術は、射出用のACCに適用されてもよいし、増圧用のACCに適用されてもよいし、双方に適用されてもよい。なお、射出用のACCと、増圧用のACCとは、増圧式の射出シリンダに対して設けられてもよく、この場合において、上記と同様に、いずれのACCに第1バルブ39及びバルブ駆動部61が適用されてもよい。
【0056】
アキュムレータ29の形式は、種々のものとされてよく、例えば、重量式、ばね式、気体圧式、ピストン式又はブラダ式とされてよい。重量式では、重りの重力によって作動液に圧力を付与する。ばね式では、ばねの復元力によって作動液に圧力を付与する。気体圧式では、圧縮された気体が作動液に直接に触れて作動液に圧力を付与する。ピストン式では、圧縮された気体がピストンを介して作動液に圧力を付与する。ブラダ式では、圧縮された気体が可撓性のブラダ(ダイヤフラム)を介して作動液に圧力を付与する。気体圧式、ピストン式及びブラダ式において、気体は、例えば、空気若しくは窒素である。
【0057】
アキュムレータの形式にもよるが、成形サイクル中において、アキュムレータ29の圧力は変動する。例えば、アキュムレータ29からヘッド側室31hへ作動液が供給されて射出が行われると、アキュムレータ29の圧力は低下する。ただし、実施形態の説明では、便宜上、このような圧力変動を無視することがある。成形サイクル中の具体的な時期について言及することなく、アキュムレータ29の圧力について説明している場合、いずれの時期の圧力であるかは、合理的に判断されたい。
【0058】
アキュムレータ29の圧力は、一般的なダイカストマシンのものと同様に設定されてよい。その具体的な大きさは、ダイカストマシンに要求される性能等によって異なるが、一例を挙げると、13MPa以上15MPa以下である。
【0059】
(2.4.射出装置の液圧装置)
射出装置9(例えばその液圧装置)は、射出シリンダ27を駆動するために図示された構成要素以外にも種々の構成要素を有していてよい。この種々の構成要素は、公知のものとされて構わない。
【0060】
例えば、射出装置9(例えばその液圧装置)は、射出シリンダ27の駆動のために、以下の構成要素のいずれか1つ以上を備えていてよい。射出ピストン33が前進するときにロッド側室31rの作動液をタンクへ排出するための流路及びバルブ。前側室31aの容積の変化を許容するために前側室31aとタンクとを接続する流路。射出シリンダ27(例えばヘッド側室31h及び/又は後側室31b)に流入する作動液の流量を制御する流量制御弁(別の観点ではメータイン回路)。射出シリンダ27(例えばロッド側室31r)から流出する作動液の流量を制御する流量制御弁(別の観点ではメータアウト回路)。ロッド側室31rから排出される作動液をヘッド側室31hへ流入させるランアラウンド回路。ポンプ等の液圧源からの作動液を射出シリンダ27(例えばロッド側室31r)へ供給するときに利用される流路及びバルブ。増圧ピストン35が後退するときに後側室31bの作動液をタンクへ排出するための流路及びバルブ。上記とは異なり、増圧ピストン35が後退するときに後側室31bから第1バルブ39を介してアキュムレータ29へ作動液が戻されてもよい。
【0061】
また、例えば、射出装置9(例えばその液圧装置)は、射出(増圧等を含む広義の射出)が完了した後、アキュムレータ29を蓄圧するために適宜な構成要素を備えていてよい。例えば、射出装置9は、ポンプ等の液圧源からの作動液をアキュムレータ29へ供給するための流路及びバルブを有してよい。また、例えば、射出装置9は、液圧源からの作動液をロッド側室31rへ供給し、これにより射出ピストン33を後退させ、ヘッド側室31hの作動液をアキュムレータ29へ供給するように流路及びバルブを有していてもよい。液圧源としては、ポンプの他、電動機によって駆動される液圧シリンダが挙げられる。射出装置9が電動式と液圧式とを組み合わせたハイブリッド式である態様においては、電動機によって射出ピストン33を後退させ、ヘッド側室31hの作動液をアキュムレータ29へ供給するように射出装置9が構成されてもよい。
【0062】
(3.第1バルブ)
第1バルブ39は、既述のように、バルブ本体41及び弁体43を有している。弁体43は、主部45及び延長部47を有している。バルブ本体41は、連通室49及びパイロット室51を有している。連通室49には、ACC用ポート53及びシリンダ用ポート55が開口している。これらの概要については既に述べた。
【0063】
バルブ本体41は、パイロット室51とバルブ本体41の外部とを通じさせる第1ポート57及び第2ポート59(これらを「パイロット用ポート」と称することがある。)を有している。これらのポートと接続されるバルブ駆動部61に関する後述の説明から理解されるように、第1ポート57は、例えば、主として、パイロット室51へのパイロット圧力の導入に寄与する。第2ポート59は、例えば、主としてパイロット室51からの作動液の排出に寄与する。第1ポート57は、パイロット圧力の導入に加えて、パイロット室51からの作動液の排出に寄与してもよい。図示の例とは異なり、第1ポート57及び第2ポート59は、1つのポートに統合され、当該1つのポートから延びる流路が2つに分岐して、図示の例のバルブ駆動部61と接続されていてもよい。
【0064】
バルブ本体41及び弁体43の具体的な形状及び寸法は、既述の機能が発揮されるように適宜に設定されてよい。図示の例では、以下のとおりである。
【0065】
バルブ本体41の内部空間(連通室49及びパイロット室51)は、概略、A1方向に直交する横断面の形状が円形である。なお、射出シリンダ27と同様に、便宜上、実施形態の説明では、バルブ本体41の内部の横断面及び弁体43の横断面の形状が円形状であることを前提とする。従って、例えば、径の大小関係と横断面の大小関係とは同一である。バルブ本体41の外形は任意である。バルブ本体41の外形及び/又は内部空間は、A1方向及び当該A1方向に直交する方向のいずれの寸法が大きくてもよい。
【0066】
バルブ本体41の内部空間は、特に符号を付さないが、A2側の小径部とA1側の大径部とを有している。小径部は、弁体43の主部45が摺動する部分であり、A2側にパイロット室51を構成する。大径部は、小径部に対してA1側につながっており、小径部よりも径が大きい。別の観点では、バルブ本体41の内部空間は、概略、主部45が摺動する円柱形状において、A1側に軸回りの1周に亘って溝が形成された形状である。大径部(溝)は、シリンダ用ポート55と接続されている。大径部のA1方向の長さ(溝の幅)は、シリンダ用ポート55の径と概ね同じである。大径部(溝)は、例えば、第1バルブ39が開かれているときのACC用ポート53とシリンダ用ポート55との間の流路断面を大きくすることに寄与している。小径部は、第1バルブ39が全開のとき(
図3の状態のとき)、A1側の部分が連通室49を構成してもよいし(図示の例)、構成しなくてもよい。念のために記載すると、バルブ本体41の内部空間は、図示の例とは異なり、大径部(溝)を有していなくても構わない。
【0067】
ACC用ポート53は、バルブ本体41のA1側の端部をA1側へ貫通している。ただし、ACC用ポート53は、バルブ本体41のA1側の内面(連通室49のA1側の端部)に開口している限り(弁体43によってA2側から塞ぐことが可能である限り)、その全体形状、及びバルブ本体41の外面における開口位置は任意である。例えば、ACC用ポート53は、屈曲する流路状であったり、バルブ本体41の外面のうちA1側に面する面以外の面において外部に開口していたりしてもよい。このような場合は、バルブ本体41の内面から外面へ至る流路の全体ではなく、上記流路のうちバルブ本体41の内面側の一部のみがACC用ポートとして捉えられてよい。
【0068】
前段落のただし書きは、他のポートにも適宜に適用可能である。すなわち、各ポート(55、57、59)は、その機能を果たすために、バルブ本体41の内面における開口位置は制限されるが、バルブ本体41の外面における開口位置は任意である。そして、内面から外面へ至る流路が屈曲しているような場合においては、上記流路のうちバルブ本体41の内面側の一部のみがポートとして捉えられ、本実施形態におけるポートの位置の説明が適用されてよい。なお、実施形態の説明では、便宜上、図示の例のように、ポートが直線状にバルブ本体41を貫通する態様を前提とした説明を行う。
【0069】
シリンダ用ポート55は、バルブ本体41(連通室49)の軸回り(A1方向に平行な軸の回り)の壁部を軸方向(A1方向)に直交する方向へ貫通している。なお、理論上は、図示の例とは異なり、バルブ本体41のA1側に位置するシリンダ用ポート55をACC用ポート53と共に両者に跨る弁体43によって塞ぐことも可能である。第1ポート57及び第2ポート59は、バルブ本体41(パイロット室51)のA2側の端部を軸方向に平行に貫通している。図示の例とは異なり、これらのパイロット用ポートは、バルブ本体41の軸回りの部分を貫通していてもよい。
【0070】
各ポート(53、55、57及び59)の横断面(流れに直交する断面)の形状は、例えば、円形である。ACC用ポート53及びシリンダ用ポート55の横断面の面積(径)は、比較的大きくされている。例えば、これらのポート(53及び55)の横断面の面積それぞれは、パイロット用ポート(57及び59)の横断面の面積のそれぞれ、及び/又は合計よりも大きい。また、ACC用ポート53及びシリンダ用ポート55の横断面の面積は、例えば、概ね同じである。
【0071】
ACC用ポート53の径(より詳細にはバルブ本体41の内面に開口する位置の径)は、バルブ本体41の上記の小径部(弁体43の主部45が摺動する部分)よりも径が小さくされている。これにより、例えば、ACC用ポート53が主部45によって塞がれている状態では、アキュムレータ29からの液圧が主部45に作用する面積は、主部45の連通室49(本段落ではACC用ポート53を除く。)における受圧面積S1よりも小さくなる。その結果、例えば、第1バルブ39の閉状態を維持しているときのパイロット圧力を減じることができる。そして、主部45がACC用ポート53から離れると、アキュムレータ29からの液圧が作用する面積が、主部45の連通室49における受圧面積S1と同じになり(すなわち増大し)、第1バルブ39の開度を大きくする力が増加する。念のために記載すると、ACC用ポート53の径は、図示の例とは異なり、上記の小径部の径に対して、同等とされたり、大きくされたりしてもよい。
【0072】
ACC用ポート53は、バルブ本体41の外側ほど径が小さくなっている。これにより、例えば、弁体43の主部45の先端をACC用ポート53へ受け入れつつ、ACC用ポート53の内面(ACC用ポート53のA2側の縁部を含む。)と、主部45とを確実に接触させて、第1バルブ39を閉じることができる。念のために記載すると、図示の例とは異なり、ACC用ポート53の径は、貫通方向の位置によらずに一定であってもよいし、バルブ本体41の外側ほど径が大きくなっていてもよい。この場合、主部45は、例えば、ディスク弁のように、バルブ本体41のA2側に面する内面のうちのACC用ポート53の周囲部分に接して第1バルブ39を閉じてよい。
【0073】
弁体43の主部45は、バルブ本体41に対して摺動する摺動部45aと、摺動部45aのA1側に位置する閉塞部45bとを有している。閉塞部45bは、摺動部45aよりも径が小さくされている。これにより、例えば、上述したように、バルブ本体41のうち摺動部45aが摺動する小径部の内径よりも小さい径を有するACC用ポート53に主部45を挿入しつつ、ACC用ポート53を塞ぐことができる。摺動部45a及び閉塞部45bは、概略、軸心が互いに一致する直円柱状である。特に符号を付さないが、閉塞部45bの先端部は、A1側ほど径が小さくなるテーパ状とされている。これまでの説明から理解されるように、図示の例とは異なり、ACC用ポート53がバルブ本体41の内部空間の径よりも小さい径を有しているか否かに関わらず、主部45は、A1方向の位置によらずに一定の径であってもよい。
【0074】
弁体43の延長部47は、バルブ本体41のA2側の端部に形成された貫通孔(符号省略)に挿入されており、A2側の端面が外部(大気圧下)に露出している。弁体43がA1側の移動限に位置しているとき(
図2の状態のとき)、延長部47のA2側の端面は、バルブ本体41のA2側の端面(外面)に対して、A2側に位置してもよいし(図示の例)、同じ位置に位置してもよいし、A1側に位置してもよい。弁体43がA2側の移動限に位置しているとき(
図3の状態のとき)、延長部47のA2側の端面は、バルブ本体41のA2側の端面に対して、A1側に位置してもよいし(図示の例)、同じ位置に位置してもよいし、A2側に位置してもよい。延長部47は、例えば、概略、主部45と軸心が一致する直円柱状である。
【0075】
バルブ本体41及び弁体43それぞれは、その全部又は大部分が一体的に構成されていてもよいし、複数の部材が組み合わされて構成されていてもよい。バルブ本体41及び弁体43の材料は特に限定されない。例えば、これらの全部又は大部分の材料は、金属又はセラミックとされてよい。また、既述のように、バルブ本体41又は弁体43は、パッキンを有していてよく、その材料もゴム又は樹脂等の適宜な材料とされてよい。
【0076】
既述のように、延長部47が設けられていることによって、主部45のパイロット室51における受圧面積S2は、主部45の連通室49における受圧面積S1よりも小さくされている。受圧面積S2が受圧面積S1よりも小さくされている限り、各面積の具体的な値、両面積の差、及び両面積の比は任意である。例えば、S2/S1は、0.9以下又は0.6以下とされてよい。
【0077】
(4.バルブ駆動部)
(4.1.バルブ駆動部の概要)
バルブ駆動部61は、これまでの説明から理解されるように、第1バルブ39に閉動作を行わせるときは、パイロット用ポート(57及び59)を介してパイロット室51へパイロット圧力(別の観点では作動液)を供給する。これにより、弁体43は、連通室49に付与されているアキュムレータ29の圧力に抗してA1側へ移動し、ACC用ポート53を塞ぐ。また、バルブ駆動部61は、第1バルブ39に開動作を行わせるときは、パイロット圧力の供給を停止し、かつパイロット室51(パイロット用ポート)からの作動液の排出を許容する。これにより、弁体43は、ACC用ポート53(連通室49)に付与されているアキュムレータ29の圧力によってA2側へ移動し、ACC用ポート53を開く。
【0078】
ここで、弁体43の連通室49の受圧面積S1は、弁体43のパイロット室51における受圧面積S2よりも大きい。従って、連通室49に付与されているアキュムレータ29の圧力に抗して弁体43をA1側へ移動させるためには、パイロット圧力は、アキュムレータ29の圧力よりも高くなければならない。具体的には、パイロット圧力は、アキュムレータ29の圧力のS1/S2倍を超える圧力でなければならない。バルブ駆動部61は、そのような比較的大きなパイロット圧力を供給可能に構成されている。
【0079】
具体的には、バルブ駆動部61は、加圧シリンダ63と、加圧シリンダ63に液圧を付与する液圧装置65とを有している。加圧シリンダ63は、射出シリンダ27の増圧ピストン35と同様に、パスカルの原理を利用して液圧装置65(別の観点では液圧源)からの圧力を増圧し、その増圧した圧力をパイロット圧力としてパイロット室51に付与する。これにより、バルブ駆動部61は、連通室49に付与されたアキュムレータ29の圧力に抗して弁体43をA1側へ移動させることができる。
【0080】
液圧装置65は、加圧シリンダ63への液圧の付与に加えて、パイロット室51からの作動液の排出にも寄与する。作動液の排出に係る構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされても構わない。ただし、図示の例の液圧装置65は、後に詳述するように、パイロット室51からの作動液の排出に加圧シリンダ63を利用可能に構成されているなど、作動液の排出に関しても新たな構成を含んでいる。
【0081】
以上がバルブ駆動部61の概要である。以下、加圧シリンダ63及び液圧装置65の詳細について順に説明する。
【0082】
なお、比較的大きなパイロット圧力をパイロット室51へ供給するバルブ駆動部(別の観点では液圧源)の構成は、図示の例以外にも種々可能である。換言すれば、加圧シリンダ63は、必ずしも設けられなくてもよい。例えば、アキュムレータ29の圧力よりも高い圧力を有しているアキュムレータからパイロット室51へ作動液を供給してもよい。また、例えば、パイロット室51の圧力がアキュムレータ29の圧力よりも高くなるまでポンプからパイロット室51へ作動液を供給してもよい。加圧シリンダ63のようなシリンダを電動機で駆動して、アキュムレータ29の圧力よりも高い圧力をパイロット室51に付与してもよい。また、比較的大きなパイロット圧力を生じるのではなく、延長部47に連結された電動式のアクチュエータによって、パイロット圧力による弁体43のA1側への移動を補助してもよい。
【0083】
(4.2.加圧シリンダ)
加圧シリンダ63は、加圧シリンダ部材67と、加圧シリンダ部材67に収容されている加圧ピストン69と、を有している。加圧ピストン69は、加圧シリンダ部材67に対して軸方向に摺動可能である。加圧シリンダ63及び加圧ピストン69の具体的な形状及び寸法は、上述した増圧作用を発揮できる限り任意である。図示の例では、以下のとおりである。
【0084】
加圧シリンダ部材67は、概略、筒状の部材である。加圧シリンダ部材67の内部の横断面(軸方向に直交する断面)の形状は、円形状である。なお、実施形態の説明では、便宜上、加圧シリンダ部材67の内部の横断面及び加圧ピストン69の横断面の形状が円形状であることを前提とする。従って、例えば、径の大小関係と横断面の大小関係とは同一である。加圧シリンダ部材67の外形(外面の形状)は任意である。
【0085】
加圧シリンダ部材67は、互いに直列につながっている大径シリンダ部67a及び小径シリンダ部67bを有している。小径シリンダ部67bの内径は、大径シリンダ部67aの内径よりも小さい。加圧ピストン69は、大径シリンダ部67aを摺動可能な大径ピストン69aと、小径シリンダ部67bを摺動可能な小径ピストン69bと、を有している。
【0086】
大径シリンダ部67aの内部は、大径ピストン69aによって、第1シリンダ室67c及び第2シリンダ室67dに区画されている。第1シリンダ室67cは、大径ピストン69aに対して小径ピストン69bとは反対側に位置している。第2シリンダ室67dは、大径ピストン69aに対して小径ピストン69bの側に位置している。小径シリンダ部67bは、小径ピストン69bに対して大径シリンダ部67aとは反対側に位置する第3シリンダ室67eを有している。
【0087】
大径ピストン69aの第2シリンダ室67dにおける受圧面積S4は、大径ピストン69aの第1シリンダ室67cにおける受圧面積S3に対して、小径ピストン69bの横断面の面積だけ小さくされている。従って、大径ピストン69aは、第1シリンダ室67cに付与された液圧を増圧して第2シリンダ室67dに伝えることができる。そこで、第1シリンダ室67cは、液圧装置65(別の観点では液圧源)と接続されており、第2シリンダ室67dは、パイロット室51(より詳細には第1ポート57)と接続されている。これにより、液圧源からの液圧を増圧した圧力をパイロット圧力としてパイロット室51へ付与できる。
【0088】
受圧面積S4が受圧面積S3よりも小さくされている限り、各面積の具体的な値、両面積の差、及び両面積の比は任意である。例えば、S4/S3は、0.9以下又は0.6以下とされてよい。また、S4/S3は、S2/S1に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。S4/S3がS2/S1よりも小さい場合においては、例えば、第1シリンダ室67cに液圧を付与する液圧装置65(より詳細には後述する液圧源71)の圧力が、アキュムレータ29の圧力と同等であっても、パイロット圧力によって弁体43をA1側へ移動させることができる。この場合、液圧源71は、アキュムレータ29であっても構わない(もちろん、アキュムレータ29とは別の液圧源であっても構わない。)。
【0089】
受圧面積S4は、受圧面積S2に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。なお、受圧面積S4と受圧面積S2とが同等の場合、例えば、第2シリンダ室67dからパイロット室51へ作動液を供給するとき、加圧ピストン69の移動距離と弁体43の移動距離とは同じである。また、受圧面積S4が受圧面積S2よりも大きいと、加圧ピストン69の移動距離に対する弁体43の移動距離は長くなり、受圧面積S4が受圧面積S2よりも小さいと、加圧ピストン69の移動距離に対する弁体43の移動距離は短くなる。
【0090】
加圧ピストン69をフルストローク(図の左側の移動限と図の右側の移動限との距離)で駆動したときの第2シリンダ室67dの容積の変化量は、例えば、弁体43をフルストローク(A1側の移動限とA2側の移動限との距離)で駆動したときのパイロット室51の容積の変化量と同等以上である。これにより、加圧シリンダ63からパイロット室51への作動液の供給によって、弁体43をフルストロークで駆動することができる。なお、加圧シリンダ63は、フルストロークで利用されてもよいし、フルストロークで利用されなくてもよい。図示の例では、加圧シリンダ63は、加圧ピストン69が、第1シリンダ室67cの側(図の右側)の移動限と、その反対側(図の左側)の移動限の手前との間で往復する態様で利用されている。
【0091】
第3シリンダ室67eは、作動液が満たされていてもよいし、作動液が満たされていなくてもよい。第3シリンダ室67eに作動液が満たされる場合、この作動液は、何らかの用途に利用されてもよいし、利用されなくてもよい。後にバルブ駆動部61の液圧装置65の説明において詳述するように、本実施形態では、第3シリンダ室67eは、加圧ピストン69を第1シリンダ室67cの側(図の右側)へ移動させることに利用される。第3シリンダ室67eに満たされている作動液が利用されない態様では、第3シリンダ室67eは、例えば、単にタンクに接続されているだけとされてよい。第3シリンダ室67eに作動液が満たされていない態様においては、例えば、第3シリンダ室67eは、大気開放されていてもよい。この場合、第3シリンダ室67eは、潤滑用に作動液(油)が少量配置されていてもよい。
【0092】
(4.3.バルブ駆動部の液圧装置)
バルブ駆動部61の液圧装置65は、これまでに触れたように、第1シリンダ室67c(入力シリンダ室の一例)への液圧の付与と、パイロット室51からの作動液の排出とを行う。当該動作を行うための構成は、種々可能である。図示の例では、以下のとおりである。
【0093】
液圧装置65は、作動液を送出する液圧源71と、作動液を貯留するタンク73とを有している。また、液圧装置65は、液圧源71、タンク73、パイロット室51及び加圧シリンダ63の間の作動液の流れを制御するために、第2バルブ75、第3バルブ77及び逆止弁79を有している。
【0094】
図2及び
図3のそれぞれにおいては、2個所に液圧源71が示されている。この2個所に示された液圧源71は、互いに異なるものであってもよいし、互いに同一のものであってもよい。後者について別の表現をすれば、2個所に示された液圧源71は、1つの液圧源71が、図示の都合上、2個所に示されたものであってよい。2個所に示された液圧源71が互いに異なるものである場合においても、2つの液圧源71は、概念的に1つの液圧源として捉えられても構わない。以下では、特に断りが無い限り、2個所に示された液圧源71を特に区別せず、1つの液圧源71が設けられていると捉えた表現をする。液圧源71は、図示された用途以外に利用されるものであってもよい。例えば、液圧源71は、射出シリンダ27、ダイカストマシン1内の他の液圧機器、又は他のダイカストマシン1に液圧を付与するものであってもよい。
【0095】
また、
図2及び
図3のそれぞれにおいては、タンク73も複数個所(2個所)に示されている。前段落の説明は、液圧源の語をタンクの語に置換して、タンク73に援用されてよい。後述する他の実施形態に係る
図5及び
図6についても同様とする。
【0096】
液圧源71の構成は、種々の構成とされてよい。例えば、液圧源71は、ポンプ又はアキュムレータであってよい。また、液圧源71は、電動機で駆動される液圧シリンダであってもよい。ポンプ及びアキュムレータの具体的な形式は任意である。既に触れたように、液圧源71は、アキュムレータ29であっても構わない。液圧源71がポンプのように電動機で駆動されるものである場合において、液圧源71は、必要に応じて駆動されてもよいし、常時駆動されていてもよい。
【0097】
液圧源71が生じる圧力は、パイロット室51に付与されるパイロット圧力が弁体43をA1側へ押す力(パイロット圧力×S2)が、連通室49に付与されるアキュムレータ29の圧力が弁体43をA2側へ押す力(ACC圧力×S1)を上回る限り、任意の大きさに設定されてよい。例えば、面積比S2/S1と面積比S4/S3との関係にもよるが、液圧源71が生じる圧力は、アキュムレータ29の圧力に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。
【0098】
タンク73は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク73内の作動液の圧力をタンク圧ということがある。開放タンクにおいては、タンク圧は、近似的に(作動液の自重の影響を無視すると)大気圧と同等である。パイロット室51等のシリンダ室がタンク73と接続されると、そのシリンダ室の圧力は、基本的にはタンク圧となる。なお、本開示において、タンク73に限らず、タンクの語は、特に断りが無い限り、開放タンクを指すと捉えられてよい。
【0099】
第2バルブ75は、第1バルブ39の第2ポート59に接続されており、パイロット室51からタンク73への作動液の排出の許容及び禁止を行う。第2バルブ75によってパイロット室51からタンク73への作動液の排出が許容されることによって、例えば、弁体43がA2側に移動可能となる。また、第2バルブ75は、液圧源71からパイロット室51への作動液の供給を許容及び禁止してもよい。この場合、例えば、加圧シリンダ63の第2シリンダ室67dからパイロット室51へパイロット圧力を付与している期間以外の適宜な時期において、パイロット室51を介して第2シリンダ室67dに作動液を供給できる。
【0100】
さらに、第2バルブ75は、加圧シリンダ63の第3シリンダ室67eからタンク73への作動液の排出の許容及び禁止、並びに液圧源71から第3シリンダ室67eへの作動液の供給の許容及び禁止に兼用されてよい。別の観点では、第2バルブ75は、加圧シリンダ63の制御に兼用されてよい。第3シリンダ室67eからタンク73への作動液の排出が許容されることによって、例えば、加圧ピストン69が第3シリンダ室67eの作動液から受ける圧力を実質的に無視できる。これにより、上述したように、加圧シリンダ63によって第1シリンダ室67cの圧力を増圧して第2シリンダ室67dに伝え、その増圧した圧力をパイロット圧力としてパイロット室51に付与できる。また、第3シリンダ室67eに作動液が供給されることによって、例えば、弁体43をA2側へ移動させるときに、加圧ピストン69を第1シリンダ室67cの側(図の右側)へ移動させて第2シリンダ室67dの容積を拡張し、パイロット室51の作動液を第2シリンダ室67dに速やかに回収できる。
【0101】
上記のような機能を果たす第2バルブ75の構成は種々可能である。図示の例では、第2バルブ75は、4ポート2位置の切換弁によって構成されている。第2バルブ75は、当該第2バルブ75を示す2つの矩形のうち図の左側の矩形の状態では、
図2に示されているように、液圧源71と第2ポート59(パイロット室51)とを接続し、タンク73と第3シリンダ室67eとを接続する。また、第2バルブ75は、図の右側の矩形の状態では、
図3に示されているように、液圧源71と第3シリンダ室67eとを接続し、タンク73と第2ポート59(パイロット室51)とを接続する。第2バルブ75は、図示の例とは異なり、複数のバルブの組み合わせであっても構わない。
【0102】
第3バルブ77は、加圧シリンダ63の第1シリンダ室67cに接続されており、液圧源71から第1シリンダ室67cへの作動液の供給の許容及び禁止を行う。第3バルブ77によって液圧源71から第1シリンダ室67cへの作動液の供給が許容されることによって、例えば、上述したように、増圧された圧力がパイロット圧力としてパイロット室51へ付与される。また、第3バルブ77は、第1シリンダ室67cからタンク73への作動液の排出を許容及び禁止してもよい。この作動液の排出によって、例えば、弁体43をA2側へ移動させるときに、加圧ピストン69の第1シリンダ室67cの側(図の右側)への移動が許容され、パイロット室51の作動液の排出先として第2シリンダ室67dを利用できる。
【0103】
上記のような機能を果たす第3バルブ77の構成は種々可能である。図示の例では、第3バルブ77は、4ポート2位置の切換弁によって構成されている。ただし、1つのポートは不使用とされている(塞がれている。)。第3バルブ77は、当該第3バルブ77を示す2つの矩形のうち図の左側の矩形の状態では、
図2に示されているように、液圧源71と第1シリンダ室67cとを接続する。また、第3バルブ77は、図の右側の矩形の状態では、
図3に示されているように、タンク73と第1シリンダ室67cとを接続する。第3バルブ77は、図示の例とは異なり、複数のバルブの組み合わせであっても構わない。
【0104】
第2バルブ75及び第3バルブ77の駆動方式は任意である。例えば、これらのバルブの駆動方式は、電磁式若しくはパイロット式又はこれらの組み合わせを含んでよい。
図2及び
図3の例では、第2バルブ75及び第3バルブ77のいずれも、ばねによって図の左側の矩形の状態とされ、ソレノイドが通電されることによって図の右側の状態とされる。すなわち、両バルブの駆動方式は、ばね式と電磁式との組み合わせとされている。
【0105】
逆止弁79は、液圧源71と第2バルブ75との間に位置している。そして、逆止弁79は、液圧源71から第2バルブ75への作動液の流れを許容し、その反対側の流れを禁止する。これにより、例えば、
図2に示すように加圧シリンダ63によってパイロット圧力がパイロット室51に付与されている状態において、液圧源71の圧力よりも高いパイロット圧力によって、パイロット室51の作動液が第2バルブ75を経由して液圧源71(例えばアキュムレータ)へ逆流する蓋然性が低減される。ただし、液圧源71の構成によっては、逆止弁79は不要である。
【0106】
なお、特に図示しないが、バルブ駆動部61は、加圧ピストン69の加圧シリンダ63に対する位置、及び/又は弁体43のバルブ本体41に対する位置を検出するセンサを有していてもよい。このセンサは、加圧ピストン69又は弁体43の位置を連続的に検出できるものであってもよいし、加圧ピストン69又は弁体43が一方又は双方の移動限に到達したことを検出するもの(例えばリミットスイッチ)であってもよい。
【0107】
(5.第1バルブ及びバルブ駆動部の動作)
第1バルブ39が閉状態であるとき、
図2に示されているように、制御装置15は、第2バルブ75を図の左側の矩形の状態にしているとともに、第3バルブ77を図の左側の状態にしている。すなわち、第3バルブ77によって、液圧源71から第1シリンダ室67cへの圧力の付与が許容されている。また、第2バルブ75によって、第3シリンダ室67eからタンク73への作動液の流れが許容されており、ひいては、加圧ピストン69の第3シリンダ室67eの側(図の左側)への移動は許容されている。その結果、加圧ピストン69(大径ピストン69a)は、第1シリンダ室67cに付与された圧力を増圧して第2シリンダ室67dに伝えている。ひいては、第2シリンダ室67dからパイロット室51へパイロット圧力が導入されている。パイロット室51から第2バルブ75を経由した液圧源71への逆流は逆止弁79によって禁止されている。
【0108】
第1バルブ39を閉状態から開状態へ切り換えるときは、
図3に示されているように、制御装置15は、第2バルブ75を図の右側の矩形の状態に切り換えるとともに、第3バルブ77を図の右側の状態に切り換える。第3バルブ77の切換えによって、液圧源71から第1シリンダ室67cへの液圧の付与は禁止される。これにより、加圧シリンダ63からパイロット室51へのパイロット圧力の導入が停止される。また、第2バルブ75の切換えによって、パイロット室51からタンク73への作動液の排出が許容される。別の観点では、パイロット室51の圧力はタンク圧とされる。その結果、弁体43は、アキュムレータ29の圧力によってA2側へ移動する。当該移動に伴って容積が縮小されるパイロット室51の作動液は、第2バルブ75を介してタンク73へ排出される。
【0109】
第3バルブ77の、図の右側の矩形の状態への切換えは、液圧源71から第1シリンダ室67cへの液圧の付与の禁止に加えて、第1シリンダ室67cからタンク73への作動液の排出の許容を伴う。これにより、加圧ピストン69の第1シリンダ室67cの側(図の右側)への移動は許容されている。従って、弁体43のA2側への移動に伴ってパイロット室51から排出される作動液は、第2シリンダ室67dへ流れ込むことも可能である。
【0110】
第2バルブ75の、図の右側の矩形の状態への切換えは、パイロット室51からタンク73への作動液の排出の許容に加えて、液圧源71から第3シリンダ室67eへの作動液の供給の許容を伴う。従って、加圧ピストン69は、第3シリンダ室67eの圧力によって第1シリンダ室67cの側(図の右側)へ押される。これにより、加圧ピストン69は、第1シリンダ室67cの側へ移動して、第2シリンダ室67dの容積を拡張することができる。その結果、第2シリンダ室67dの圧力をパイロット室51の圧力よりも下げて、パイロット室51の圧力を第2シリンダ室67dに引き込むことができる。
【0111】
第2バルブ75の、図の右側の矩形の状態への切換えのタイミングと、第3バルブ77の、図の右側の矩形の状態への切換えのタイミングとは、例えば、同時である。より厳密な表現をすれば、両者のタイミングは、同時とされることが意図されており、意図的な時間差は設定されていない。別の観点では、同時といっても、不可避な時間差は存在してよい。ただし、一方のタイミングが他方のタイミングに対して、意図的にずらされても構わない。
【0112】
弁体43がA2側の移動限に到達した後(第1バルブ39が全開となった後)も、第2バルブ75及び第3バルブ77は、図の右側の矩形の状態が維持される。従って、液圧源71から第2バルブ75を介した第3シリンダ室67eへの作動液の供給は維持され、加圧ピストン69は第1シリンダ室67cの側(図の右側)の移動限へ到達する。この間、加圧ピストン69の移動に伴って容積が拡大する第2シリンダ室67dへの作動液の補給は、例えば、タンク73から、第2バルブ75、第2ポート59、パイロット室51及び第1ポート57を介してなされる。
【0113】
第1バルブ39を開状態から閉状態へ切り換えるときは、
図2に示されているように、第2バルブ75及び第3バルブ77を図の左側の矩形の状態に切り換える。このときの作動液の流れについては既に述べた。第2バルブ75の切換えのタイミングと、第3バルブ77の切換えのタイミングとは、例えば、同時である。同時の意味については、既述のとおりである。ただし、一方のタイミングが他方のタイミングに対して、意図的にずらされても構わない。
【0114】
(6.射出装置の動作)
図4は、射出に係る動作を説明するための図である。
【0115】
図4において、横軸は時間tを示しており、右側ほど後の時点となっている。左の縦軸は速度Vを示しており、上側ほど高速である。右の縦軸は圧力Pを示しており、上側ほど高圧である。
【0116】
線LVは、射出速度(プランジャ23の速度)の経時変化を示している。線LPは、射出圧力の経時変化を示している。ここでは、射出圧力は、プランジャ23が溶湯に付与する圧力であるものとする。
【0117】
射出装置9は、例えば、低速射出(時点t0~t1)、高速射出(時点t1~t2)、並びに増圧(時点t2~t3)及び保圧(時点t3~)を順に行う。すなわち、ダイカストマシン1は、線LVによって示されているように、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止する等の観点から比較的低速(速度VL)でプランジャ23を前進させる低速射出を行う。次に、ダイカストマシン1は、線LVによって示されているように、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速(速度VH)でプランジャ23を前進させる高速射出を行う。次に、ダイカストマシン1は、線LPによって示されているように、ひけ巣をなくす等の観点から、金型101内の溶湯を上昇させる増圧を行う。その後、線LPによって示されているように、ダイカストマシン1は、増圧によって得られた鋳造圧力Pcを維持する保圧を行う。
【0118】
より詳細には、低速射出(時点t0~t1)では、例えば、アキュムレータ29(他の液圧源であってもよい。)からヘッド側室31hへ作動液が供給される。なお、第1バルブ39は閉じられている(
図2参照)。このときのプランジャ23の速度の制御は、メータアウト回路及び/又はメータイン回路によってなされてよい。なお、
図4では、便宜上、低速射出中の射出圧力については、比較的小さいものとして図示が省略されている。
【0119】
高速射出(時点t1~t2)では、例えば、低速射出に引き続いて、アキュムレータ29(他のアキュムレータであってもよい。)からヘッド側室31hへ作動液が供給される。ただし、メータアウト回路及び/又はメータイン回路によってプランジャ23の速度は高速に切り換えられる。速度の切換えに伴い、射出圧力は低速射出のときに比較して上昇する。
【0120】
増圧(時点t2~t3)では、溶湯が行き場を失うことによって射出圧力が更に上昇する。また、
図3に示されているように、第1バルブ39が開かれ、アキュムレータ29から後側室31bへ作動液が供給されて増圧が行われることによって射出圧力が更に上昇する。第1バルブ39は、適宜な速度で適宜な開度まで開かれてよいが、例えば、最も速い速度で全開まで開かれる。そして、射出圧力は、鋳造圧力Pcに至る。
【0121】
その後(時点t3~)、アキュムレータ29から後側室31bへ圧力が付与された状態が維持されることによって、保圧が行われる。このときの第1バルブ39の開度も適宜なものとされてよいが、例えば、全開である。
【0122】
射出装置9の動作は、上記の動作と異なる動作であっても構わない。例えば、増圧によって射出圧力が上昇しているときに、不図示のバルブによってロッド側室31rからタンク73への作動液の排出を禁止してよい。この排出を禁止するタイミングの設定によって、ロッド側室31rの圧力をタンク圧よりも高い任意の値としてよい。
【0123】
(7.第1実施形態のまとめ)
以上のとおり、第1実施形態に係る射出装置9は、射出シリンダ27と、アキュムレータ29と、第1バルブ39とを有している。射出シリンダ27は、成形材料を押すプランジャ23を駆動する。アキュムレータ29は、射出シリンダ27と接続されている。第1バルブ39は、アキュムレータ29と射出シリンダ27との間に介在している。第1バルブ39は、中空状のバルブ本体41と、弁体43とを有している。弁体43は、バルブ本体41に収容されている主部45を有している。主部45は、バルブ本体41に対して第1側(A1側)及びその反対側の第2側(A2側)に摺動可能である。バルブ本体41の内部は、主部45によってA1側の連通室49とA2側のパイロット室51とに区画されている。連通室49は、アキュムレータ29と射出シリンダ27とに接続されている。パイロット室51は、パイロット圧力供給源(バルブ駆動部61。より詳細には、加圧シリンダ63)と、排出先(バルブ駆動部61。より詳細には、タンク73及び/又は加圧シリンダ63)と、に接続されている。パイロット圧力供給源(バルブ駆動部61)は、弁体43をA1側へ移動させるときにパイロット室51にパイロット圧力を供給する。排出先(バルブ駆動部61)は、弁体43をA2側へ移動させるときに当該パイロット室の作動液が排出される。バルブ本体41は、連通室49のA1側の端部にアキュムレータ29に接続されているACC用ポート53を有している。主部45は、閉位置と開位置との間で移動可能である。閉位置は、主部45が、A2側からACC用ポート53を塞いでアキュムレータ29から射出シリンダ27への液圧の付与を禁止する位置である。開位置は、閉位置からA2側へ離れてアキュムレータ29から射出シリンダ27への液圧の付与を許容する位置である。主部45のパイロット室51における受圧面積S2は、主部45の連通室49における受圧面積S1よりも小さい。
【0124】
従って、例えば、既述のように、第1バルブ39を開くためにパイロット室51から排出しなければならない作動液の量が減じられ、速やかに第1バルブ39の開度を大きくすることができる。その結果、例えば、
図4を参照して説明した増圧を行う時間(昇圧時間、時点t2~t3)を短くすることができる。別の観点では、昇圧時間を短く設定する場合の限度に第1バルブ39が及ぼす影響を低減し、昇圧時間の自由度を向上させることができる。その結果、成形品の品質を向上させることが容易化される。
【0125】
パイロット圧力供給源(バルブ駆動部61)は、加圧シリンダ63を有していてよい。加圧シリンダ63は、加圧シリンダ部材67と、加圧ピストン69と、を有していてよい。加圧ピストン69は、加圧シリンダ部材67に対して軸方向(A1方向)に摺動可能に加圧シリンダ部材67に収容されている所定部位(本実施形態では大径ピストン69a)を有していてよい。加圧シリンダ部材67の内部は、上記所定部位によって、軸方向の一方側(図の右側)の入力シリンダ室(第1シリンダ室67c)と、軸方向の他方側(図の左側)の出力シリンダ室(本実施形態では第2シリンダ室67d)と、に区画されていてよい。第1シリンダ室67cは、当該第1シリンダ室67cに液圧を付与する液圧源71に接続されていてよい。第2シリンダ室67d(出力シリンダ室)は、パイロット室57に接続されていてよい。加圧ピストン69の第1シリンダ室67cにおける受圧面積S3は、加圧ピストン69の第2シリンダ室67d(出力シリンダ室)における受圧面積S4よりも大きくてよい。
【0126】
この場合、例えば、既述のように、液圧源71の圧力を増圧した圧力をパイロット圧力としてパイロット室51に付与することができる。その結果、受圧面積S2を受圧面積S1よりも小さくしたことによって生じる不都合(第1バルブ39を閉じるためのパイロット圧力が高くなる)の少なくとも一部を補償できる。
【0127】
加圧シリンダ部材67は、大径シリンダ部67aと、大径シリンダ部67aよりも内径が小さい小径シリンダ部67bと、を有していてよい。大径シリンダ部67aと小径シリンダ部67bとは直列につながっていてよい。加圧ピストン69は、大径シリンダ部67aを摺動可能な大径ピストン69a(上記所定部位)と、小径シリンダ部67bを摺動可能な小径ピストン69bと、を有していてよい。大径シリンダ部67aの内部は、大径ピストン69aによって、小径ピストン69bとは反対側の入力シリンダ室(第1シリンダ室67c)と、小径ピストン69dの側の出力シリンダ室(本実施形態では第2シリンダ室67d)と、に区画されていてよい。小径シリンダ部67bは、小径ピストン69bに対して大径シリンダ部67aとは反対側に位置する補助シリンダ室(本実施形態では第3シリンダ室67e)を有していてよい。
【0128】
この場合、例えば、第3シリンダ室67eが設けられていない態様(後述する
図8参照)とは異なり、第3シリンダ室67eへ作動液を供給することによって、パイロット室51につながっている第2シリンダ室67d(出力シリンダ室)の容積を拡張することができる。その結果、第1バルブ39を開くときに、第2シリンダ室67dの圧力を下げて、積極的にパイロット室51の作動液を第2シリンダ室67dに排出することができる。ひいては、第1バルブ39の開度を速やかに大きくする効果が向上する。また、例えば、第3シリンダ室67eからの作動液の排出を制御することによって(ただし、実施形態ではそのような制御は行っていない)、パイロット圧力の上昇を制御することも可能である。
【0129】
射出装置9は、加圧シリンダ63を有する場合において、第2バルブ75と、第3バルブ77とを有していてよい。第2バルブ75は、パイロット室51から上記排出先(バルブ駆動部61)が有しているタンク73への流れを許容及び禁止してよい。第3バルブ77は、液圧源71から入力シリンダ室(第1シリンダ室67c)への流れの許容及び禁止、並びに第1シリンダ室67cからタンク73への流れの許容及び禁止を行ってよい。
【0130】
この場合、例えば、第3バルブ77によって第1シリンダ室67cからタンク73への作動液の流れが許容されることにより、加圧ピストン69の第1シリンダ室67cの側(
図2及び
図3の右側)への移動が許容される。これにより、第1バルブ39を閉じるときにパイロット室51にパイロット圧力を付与する第2シリンダ室67dを、第1バルブ39を開くときのパイロット室51の作動液の排出先としても利用可能である。一方で、パイロット室51の作動液は、第2バルブ75経由でタンク73へも排出可能である。すなわち、パイロット室51の作動液を2個所へ排出することができる。その結果、例えば、第1バルブ39の開度を速やかに大きくする効果が向上する。
【0131】
射出装置9は、補助シリンダ室(本実施形態では第3シリンダ室67e)を有する場合において、第2バルブ75を有してよい。第2バルブ75は、第3シリンダ室67eからタンク73への流れの許容及び禁止、並びに液圧源71から第3シリンダ室67eへの流れの許容及び禁止を行ってよい。
【0132】
この場合、例えば、既述のように、第1バルブ39を開くときに、第3シリンダ室67eへ作動液を供給することによって、第2シリンダ室67d(出力シリンダ室)の容積を拡張し、パイロット室51の作動液を第2シリンダ室67dに引き込むことができる。すなわち、第1バルブ39を閉じるときにパイロット室51にパイロット圧力を付与する第2シリンダ室67dを、第1バルブ39を開くときにパイロット室51の作動液が排出される排出先として積極的に利用できる。
【0133】
第2バルブ75は、切換弁を有してよい(切換弁であってよい。)。切換弁は、液圧源71からパイロット室51への流れを許容するとともに補助シリンダ室(本実施形態では第3シリンダ室67e)からタンク73への流れを許容する状態と、パイロット室51からタンク73への流れを許容するとともに液圧源71から補助シリンダ室への流れを許容する状態との間で切り換えられてよい。
【0134】
この場合、例えば、第1バルブ39を開くときに、パイロット室51から第2バルブ75を介したタンク73への作動液の排出と、第3シリンダ室67eへの作動液の供給によるパイロット室51から第2シリンダ室67d(出力シリンダ室)への作動液の引き込みとが、簡素な構成で同時に開始される。
【0135】
弁体43は、主部45に加えて、主部45から第2側(A2側)へ延びて、A2側の端面が大気圧下にある延長部47を更に有していてよい。
【0136】
この場合、延長部47によって受圧面積S2を受圧面積S1よりも小さくすることができる。また、例えば、延長部47のA2側の端面がタンク圧下にある態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、上記端面に圧力が作用する蓋然性を低減することができる。
【0137】
射出シリンダ27は、増圧式のものであってよい。すなわち、射出シリンダ27は、ピストンロッド37と、射出ピストン33と、射出シリンダ部31eと、増圧シリンダ部31fと、増圧ピストン35と、を有していてよい。ピストンロッド37は、プランジャ23に連結される。射出ピストン33は、ピストンロッド37と固定されている。射出シリンダ部31eは、射出ピストン33を収容しており、内部が、射出ピストン33によって、ピストンロッド37の側のロッド側室31rと、その反対側のヘッド側室31hとに区画されている。増圧シリンダ部31fは、ヘッド側室31hに通じている。増圧ピストン35は、増圧シリンダ部31fに収容されており、増圧シリンダ部31fの内部をヘッド側室31hに通じる小径シリンダ室31cと、その反対側の大径シリンダ室(後側室31b)とに区画しており、後側室31bにおける受圧面積が小径シリンダ室31cにおける受圧面積よりも大きい。第1バルブ39は、アキュムレータ29と後側室31bとの間に位置していてよい。
【0138】
この場合、例えば、既述のように、昇圧時間を短く設定する場合の限度に第1バルブ39が及ぼす影響を低減し、昇圧時間の自由度を向上させることができる。
【0139】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る射出装置209を示す模式的な断面図である。この図は、第1実施形態の
図2の一部に相当している。
【0140】
射出装置209は、基本的に、第1バルブの構成のみが第1実施形態と相違する。相違点は、端的に言えば、第2実施形態に係る第1バルブ39Aの弁体43Aが、増圧ピストン35のように、大径のピストン状部分(摺動部45a)と、小径のピストン状部分(付属摺動部45c)とを有している点である。当該構成は、弁体43Aのパイロット室51Aにおける受圧面積S2を、弁体43Aの連通室49における受圧面積S1に対して小さくすることに寄与している。具体的には、以下のとおりである。
【0141】
バルブ本体41Aは、中空状の第1部位41aと、第1部位41aの内径よりも小さい内径を有している第2部位41bとを有している。第2部位41bは、第1部位41aに対してA2側に直列につながっている。第1部位41aは、第1実施形態のバルブ本体41のうちのA1側の一部(A2側の端部を除いた部分)に相当している。第2部位41bは、第1実施形態のバルブ本体41のA2側の端部において、貫通孔に代えて、凹部と貫通孔との組み合わせを形成した構成に相当している。
【0142】
弁体43Aは、第1実施形態と同様に、バルブ本体41Aに摺動可能に収容されている主部45Aと、主部45Aから延び出て端面が大気圧下にある延長部47Aとを有している。主部45Aは、第1実施形態と同様に、摺動部45aと、閉塞部45bとを有している。さらに、主部45Aは、第1実施形態とは異なり、摺動部45aのA2側に固定されている付属摺動部45cを有している。
【0143】
摺動部45aは、第1部位41aに対して摺動可能である。第1部位41aの内部は、摺動部45aによって連通室49と付属室81とに区画されている。連通室49は、第1実施形態と同様のものである。付属室81は、摺動部45aに対してA2側に位置しており、摺動部45aに対する位置関係の観点からは、第1実施形態のパイロット室51に相当している。ただし、本実施形態では、付属室81は、パイロット圧力が導入されるパイロット室51としては利用されていない。
【0144】
付属摺動部45cは、第2部位41bに対して摺動可能である。第2部位41bは、付属摺動部45c(別の観点では主部45A)に対してA2側に位置するパイロット室51Aを有している。パイロット室51Aは、第1実施形態のパイロット室51と同様に、パイロット用ポート(57及び59)を介してバルブ駆動部61と接続されている。
【0145】
主部45Aのパイロット室51Aにおける受圧面積S2は、第1実施形態と同様に、主部45Aの連通室49における受圧面積S1よりも小さくされている。具体的には、まず、受圧面積S2は、パイロット室51Aを密閉する付属摺動部45cの径が、連通室49を密閉する摺動部45aの径よりも小さいことによって、受圧面積S1よりも小さくされている。さらに、受圧面積S2は、第1実施形態と同様に、延長部47Aが設けられていることによっても、受圧面積S1よりも小さくされている。
【0146】
付属室81は、例えば、基本的に(少なくとも成形サイクルが行われているときにおいて)、付属ポート83を介して常にタンク73に接続されており、常にタンク圧とされている。付属室81とタンク73との間には、例えば、制御装置15によって制御可能なバルブは設けられていない。ただし、そのようなバルブが設けられ、成形サイクルが行われていないときに当該バルブが利用されてもよい。また、付属室81は、タンク圧とされるのではなく、大気開放されていてもよい。この場合、付属室81には、潤滑用に作動液(油)が少量配置されていてもよい。いずれにせよ、理論上若しくは理想的には、付属室81の存在は、基本的に、弁体43Aの移動(第1バルブ39Aの開閉)に影響を及ぼさない。なお、本実施形態の説明とは異なり、付属室81は、成形サイクル中に作動液の供給及び排出が制御されることによって、何らかの用途に用いられてもよい。
【0147】
以上のとおり、第2実施形態に係る射出装置209は、第1実施形態と同様に、射出シリンダ27と、アキュムレータ29と、第1バルブ39Aとを有している。第1バルブ39Aは、バルブ本体41Aと、弁体43Aとを有している。弁体43Aは、バルブ本体41Aに収容されている主部45Aを有している。主部45Aは、バルブ本体41Aに対して第1側(A1側)及びその反対側の第2側(A2側)に摺動可能である。バルブ本体41Aの内部は、主部45A(より詳細には摺動部45a及び付属摺動部45c)によってA1側の連通室49とA2側のパイロット室51Aと区画されている。主部45Aのパイロット室51Aにおける受圧面積S2は、主部45Aの連通室49における受圧面積S1よりも小さい。
【0148】
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、第1バルブ39Aを開くためにパイロット室51Aから排出しなければならない作動液の量が減じられ、速やかに第1バルブ39Aの開度を大きくすることができる。
【0149】
バルブ本体41Aは、中空状の第1部位41aと、第1部位41aの内径よりも小さい内径を有する第2部位41bとを有してよい。第2部位41bは、第1部位41a対して第2側(A2側)につながっていてよい。主部43Aは、第3部位(摺動部45a)と、第4部位(付属摺動部45c)とを有してよい。摺動部45aは、第1部位41aに対してA1側及びA2側へ摺動可能であってよい。付属摺動部45cは、第2部位41bに対してA1側及びA2側へ摺動可能であってよい。第1部位41aの内部は、摺動部45aによってA1側の連通室49とA2側の付属室81とに区画されていてよい。第2部位41bの内部は、付属摺動部45cに対してA2側に位置するパイロット室51Aを有していてよい。
【0150】
この場合、付属摺動部45cの径が摺動部45aの径よりも小さいことによって、受圧面積S2を受圧面積S1よりも小さくすることができる。また、例えば、付属室81を利用することが可能である(ただし、第2実施形態では利用されていない。)。例えば、成形サイクルが行われていないときに、付属室81からの作動液の排出を禁止してよい。これにより、アキュムレータ29からの圧力によって第1バルブ39Aが開かれてしまう蓋然性が低減される。
【0151】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る射出装置309を示す模式的な断面図である。この図は、第2実施形態の
図5に相当している。
【0152】
射出装置309は、端的に言えば、第2実施形態の射出装置209において、パイロット室及び付属室として利用されるシリンダ室を互いに逆にしたものである。すなわち、射出装置209のパイロット室51Aは、射出装置309の付属室81Bとされており、射出装置209の付属室81は、射出装置309のパイロット室51Bとされている。
【0153】
以上のとおり、第3実施形態に係る射出装置309は、第1実施形態と同様に、射出シリンダ27と、アキュムレータ29と、第1バルブ39Bとを有している。第1バルブ39Bは、バルブ本体41Bと、弁体43Aとを有している。弁体43Aは、バルブ本体41Bに収容されている主部45Aを有している。主部45Aは、バルブ本体41Bに対して第1側(A1側)及びその反対側の第2側(A2側)に摺動可能である。バルブ本体41Bの内部は、主部45A(より詳細には摺動部45a)によってA1側の連通室49とA2側のパイロット室51Bとに区画されている。主部45Aのパイロット室51Bにおける受圧面積S2は、主部45Aの連通室49における受圧面積S1よりも小さい。
【0154】
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、第1バルブ39Bを開くためにパイロット室51Bから排出しなければならない作動液の量が減じられ、速やかに第1バルブ39Bの開度を大きくすることができる。
【0155】
バルブ本体41Bは、第2実施形態と同様に、第1部位41aと第2部位41bとを有してよい。主部43Aは、第2実施形態と同様に、第3部位(摺動部45a)と第4部位(付属摺動部45c)とを有してよい。第1部位41aの内部は、摺動部45aによってA1側の連通室49とA2側のパイロット室51Bとに区画されていてよい。第2部位41bの内部は、付属摺動部45cに対してA2側に位置する付属室81Bを有してよい。
【0156】
この場合、付属摺動部45cが設けられていることによって、受圧面積S2を受圧面積S1よりも小さくすることができる。また、例えば、第2実施形態の説明で述べたように、付属室81Bを利用することが可能である(ただし、本実施形態では利用されていない。)。
【0157】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態に係る射出装置409を示す模式的な断面図である。この図は、第1実施形態の
図2の一部に相当している。
【0158】
射出装置409は、端的に言えば、第1実施形態の射出装置9において、第2シリンダ室67d及び第3シリンダ室67eの役割を互いに逆にしたものである。すなわち、射出装置409のバルブ駆動部61A(液圧装置65A)では、第3シリンダ室67eが第1ポート57に接続されており、第2シリンダ室67dが第2バルブ75に接続されている。そして、第3シリンダ室67eは、例えば、第1実施形態の第2シリンダ室67dと同様に、第1バルブ39を閉じるときにパイロット室51へパイロット圧力を付与することに寄与する。第2シリンダ室67dは、例えば、第1実施形態の第3シリンダ室67eと同様に、第1バルブ39を開くときに加圧ピストン69を第1シリンダ室67cの側(図の右側)へ移動させることに寄与する。
【0159】
以上のとおり、第4実施形態に係る射出装置409は、第1実施形態に係る射出装置9と同様に、第1バルブ39を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、受圧面積S2が受圧面積S1よりも小さいことによって、第1バルブ39の開度を迅速に大きくすることができる。
【0160】
パイロット圧力供給源(バルブ駆動部61A)は、第1実施形態と同様に、加圧シリンダ63を有していてよい。加圧ピストン69は、加圧シリンダ部材67に対して軸方向(A1方向)に摺動可能に加圧シリンダ部材67に収容されている所定部位(本実施形態では大径ピストン69a及び小径ピストン69b)を有していてよい。加圧シリンダ部材67の内部は、上記所定部位によって、軸方向の一方側(図の右側)の入力シリンダ室(第1シリンダ室67c)と、軸方向の他方側(図の左側)の出力シリンダ室(本実施形態では第3シリンダ室67e)と、に区画されていてよい。第1シリンダ室67cは、当該第1シリンダ室67cに液圧を付与する液圧源71に接続されていてよい。第3シリンダ室67e(出力シリンダ室)は、パイロット室57に接続されていてよい。加圧ピストン69の第1シリンダ室67cにおける受圧面積S3は、加圧ピストン69の第3シリンダ室67e(出力シリンダ室)における受圧面積S4よりも大きくてよい。
【0161】
この場合、例えば、パイロット圧力を出力するシリンダ室が第1実施形態とは異なるが、第1実施形態と同様に、液圧源71の圧力を増圧した圧力をパイロット圧力としてパイロット室51に付与することができる。その結果、受圧面積S2を受圧面積S1よりも小さくしたことによって生じる不都合(第1バルブ39を閉じるためのパイロット圧力が高くなる)の少なくとも一部を補償できる。
【0162】
加圧シリンダ部材67は、第1実施形態と同様に、大径シリンダ部67aと小径シリンダ部67bとを有していてよい。加圧ピストン69は、第1実施形態と同様に、大径ピストン69aと小径ピストン69bとを有していてよい。大径シリンダ部67aの内部は、大径ピストン69aによって、小径ピストン69bとは反対側の入力シリンダ室(第1シリンダ室67c)と、小径ピストン69dの側の補助シリンダ室(本実施形態では第2シリンダ室67d)と、に区画されていてよい。小径シリンダ部67bは、小径ピストン69bに対して大径シリンダ部67aとは反対側に位置する出力シリンダ室(本実施形態では第3シリンダ室67e)を有していてよい。
【0163】
この場合、例えば、第2シリンダ室67d及び第3シリンダ室67eの役割が第1実施形態とは逆であるが、第1実施形態と同様に、第3シリンダ室67eが設けられていない態様(
図8)に比較して、有利な効果を得ることができる。例えば、第1バルブ39を開くときに、第2シリンダ室67dへ作動液を供給することによって、パイロット室51につながっている第3シリンダ室67e(出力シリンダ室)の容積を拡張することができる。
【0164】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態に係る射出装置509を示す模式的な断面図である。この図は、第1実施形態の
図2の一部に相当している。
【0165】
射出装置509は、第1実施形態の射出装置9と第1バルブ39を駆動するためのバルブ駆動部の構成が異なっている。具体的には、本実施形態に係るバルブ駆動部61Bは、第1実施形態に係るバルブ駆動部61と、加圧シリンダの構成が異なっており、また、これに伴い、加圧シリンダに係る作動液の流れを制御する液圧装置の構成が異なっている。より詳細には、以下のとおりである。
【0166】
本実施形態に係る加圧シリンダ63Aは、端的に言えば、第1実施形態の加圧シリンダ63から小径シリンダ部67b(別の観点では第3シリンダ室67e)を無くした構成である。従って、本実施形態の加圧シリンダ部材67Aは、第1実施形態の大径シリンダ部67aに相当している。小径ピストン69b(便宜上、ピストンの語を用いる。)は、加圧シリンダ部材67Aの外部に延び出ており、大径ピストン69aとは反対側の端面は、大気圧下にある。
【0167】
液圧装置65Bは、図示の例では、概略、第1実施形態の液圧装置65と同様とされている。ただし、第2バルブ75の4つのポートのうち、第1実施形態において第3シリンダ室67eに接続されていたポートは、不使用とされている(塞がれている。)。
【0168】
液圧装置65の動作は、概略、第1実施形態と同様とされてよい。ただし、第3シリンダ室67eが設けられていないことから、第1バルブ39を開くとき、液圧源71から第2バルブ75を介して供給される液圧によって加圧ピストン69を積極的に第1シリンダ室67cの側(図の右側)へ移動させる動作は行われない。なお、第1バルブ39を開くとき、加圧ピストン69は、パイロット室51からの圧力によって第1シリンダ室67cの側へ移動してよい。
【0169】
また、第1バルブ39を開いた後、第1バルブ39を閉じる前までの適宜な時期において、加圧ピストン69は、第1シリンダ室67cの側の移動限へ駆動されてよい。例えば、第3バルブ77は、第1バルブ39を開いたときの状態(図の右側の矩形の状態)としたまま、第2バルブ75は、第1バルブ39を閉じるときの状態(図の左側の矩形の状態)とされてよい。これにより、液圧源71から第2バルブ75、第2ポート59、パイロット室51及び第1ポート57を介して第2シリンダ室67dに液圧が付与されてよい。このとき第2シリンダ室67dに付与される圧力は、例えば、連通室49に付与されるアキュムレータ29の圧力に抗して弁体43をA1側へ移動させることができる圧力よりも低い。その後、第3バルブ77が図の左側の状態とされて、第1バルブ39が閉じられてよい。
【0170】
以上の第1~第5実施形態において、溶湯は成形材料の一例である。ダイカストマシン1は成形機の一例である。A1側は第1側の一例である。A2側は第2側の一例である。バルブ駆動部61、61A若しくは61B、又は加圧シリンダ63若しくは63Aは、パイロット圧力供給源の一例である。タンク73及び/又は加圧シリンダ63若しくは63Aは排出先の一例である。第1シリンダ室67cは、入力シリンダ室の一例である。
【0171】
バルブ駆動部61(
図2及び
図3並びに
図5及び
図6)において、大径ピストン69aは、加圧ピストンの所定部位の一例であり、第2シリンダ室67dは出力シリンダ室の一例であり、第3シリンダ室67eは補助シリンダ室の一例である。バルブ駆動部61A(
図7)において、大径ピストン69a及び小径ピストン69bの組み合わせは、加圧ピストンの所定部位の一例であり、第2シリンダ室67dは補助シリンダ室の一例であり、第3シリンダ室67eは出力シリンダ室の一例である。バルブ駆動部61B(
図8)において、大径ピストン69aは、加圧ピストンの所定部位の一例であり、第2シリンダ室67dは出力シリンダ室の一例である。
【0172】
第1バルブ39A及び39B(
図5及び
図6)において、主部45の摺動部45aは、第3部位の一例である。付属摺動部45cは、第4部位の一例である。
【0173】
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0174】
例えば、第1~第5実施形態は適宜に組み合わされてよい。例えば、第2及び第3実施形態の第1バルブ39A及び39B(
図5及び
図6)に対して、第4実施形態のバルブ駆動部61A(
図7)、又は第5実施形態のバルブ駆動部61B(
図8)が組み合わされてもよい。
【0175】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、縦型締横射出、横型締縦射出であってもよい。ダイカストマシンは、コールドチャンバマシンに限定されず、例えば、ホットチャンバマシンであってもよい。
【0176】
第1バルブの構成は、第2又は第3実施形態の第1バルブ39A又は39B(
図5又は
図6)から延長部47Aを無くした構成であってもよい。別の観点では、弁体は、その全体がバルブ本体に収容されていてもよい。
【0177】
実施形態では、第1バルブ(39等)を開くとき、パイロット室(51等)の作動液は、第2バルブ75を介してタンク73に排出されるとともに、加圧シリンダ(63等)へ排出された。ただし、バルブ駆動部(61等)は、パイロット室の作動液を上記の2つの排出先の一方のみへ排出するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0178】
1…ダイカストマシン(成形機)、9…射出装置、21…スリーブ、23…プランジャ、25…駆動部、27…射出シリンダ、29…アキュムレータ、39…第1バルブ、41…バルブ本体、43…弁体、45…(弁体の)主部、49…連通室、51…パイロット室、53…ACC用ポート(アキュムレータ用ポート)、61…バルブ駆動部(パイロット圧力供給源及び排出先)、63…加圧シリンダ(パイロット圧力供給源及び/又は排出先)、71…液圧源、73…タンク(排出先)、101…金型(型)、107…空間(型の内部)。