(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173143
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】照射装置、および食品の処理装置
(51)【国際特許分類】
A23L 3/28 20060101AFI20231130BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A23L3/28
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085186
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】阿部 周平
【テーマコード(参考)】
4B021
4C058
【Fターム(参考)】
4B021LA07
4B021LA18
4B021LA24
4B021LA25
4B021LA41
4B021LT01
4B021LT02
4B021LW02
4B021LW03
4B021LW04
4B021LW10
4B021MC01
4C058AA21
4C058BB06
4C058CC04
4C058DD01
4C058DD07
4C058DD11
4C058EE23
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK32
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、積算光量の制御を行うことができる照射装置、および食品の処理装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る照射装置は、搬送部により、所定の方向に搬送される食品に、紫外線領域の波長を有する処理光を照射する発光素子、または放電ランプと;前記搬送部の、前記食品が載置される部分に等間隔に設けられた複数の検出体を検出する検出部と;前記複数の検出体の間隔と、前記検出部の出力の変化と、により前記食品が載置される部分の移動速度を演算し、前記演算された移動速度に基づいて、前記処理光の光量を制御するコントローラと;を具備している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部により、所定の方向に搬送される食品に、紫外線領域の波長を有する処理光を照射する発光素子、または放電ランプと;
前記搬送部の、前記食品が載置される部分に等間隔に設けられた複数の検出体を検出する検出部と;
前記複数の検出体の間隔と、前記検出部の出力の変化と、により前記食品が載置される部分の移動速度を演算し、前記演算された移動速度に基づいて、前記処理光の光量を制御するコントローラと;
を具備した照射装置。
【請求項2】
前記複数の検出体は、複数の孔、複数の凹部、および複数の凸部の、少なくともいずれかである請求項1記載の照射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の照射装置と;
等間隔に設けられ、所定の方向に移動するとともに、一方の端部と他方の端部との間を循環する複数のローラを有し、前記複数のローラの上に載置された食品を搬送する搬送部と;
を具備し、
前記照射装置に設けられた検出部は、前記搬送部の前記ローラを検出する食品の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照射装置、および食品の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品市場においては、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)などへの対応により食品に対する安全意識が高まっている。また、食品市場には、腐敗などによるフードロスなどの問題もある。
【0003】
この場合、食品を加熱処理したり、塩素や次亜塩素酸などの薬剤を用いて食品を処理したりすれば、食品の表面に付着した細菌やウイルスなどの減菌を行うことができる。細菌などの減菌を行うことができれば、食品の鮮度維持や品質維持が容易となる。しかしながら、これらの様にすると、熱により食品が変質したり、食品に残留した薬剤により健康に対するリスクが生じたりするという新たな問題が生じる。
【0004】
そのため、食品に紫外線を照射して、食品の表面に付着した細菌などの減菌を行う処理装置が提案されている。この様な処理装置においては、コンベアなどの搬送装置により所定の方向に搬送される食品に対して紫外線が照射される。この様にすれば、食品を連続的に処理することができるので、多数の食品を比較的短時間で減菌することができる。
【0005】
ところが、食品の大きさや種類などによって、食品の搬送速度が調整される場合がある。食品の搬送速度が変わると、食品の表面における紫外線の照射量(積算光量)が変化する。積算光量が変化すると減菌効果がばらついたり、食品の鮮度維持や品質維持が図れなくなったりするおそれがある。この場合、食品の搬送速度に応じて、作業者が積算光量を調整するようにすると、作業者の負担が大きくなったり、調整ミスにより所定の減菌効果が得られなくなったりするおそれがある。
【0006】
また、近年においては、既に使用されている装置に、積算光量の制御を行うことができる照射装置を追加することが望まれる場合がある。この場合、照射装置を追加する際に、既に使用されている装置を改造しないで済むようにすることが好ましい。
【0007】
そこで、簡易な構成で、積算光量の制御を行うことができる照射装置、および食品の処理装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、積算光量の制御を行うことができる照射装置、および食品の処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る照射装置は、搬送部により、所定の方向に搬送される食品に、紫外線領域の波長を有する処理光を照射する発光素子、または放電ランプと;前記搬送部の、前記食品が載置される部分に等間隔に設けられた複数の検出体を検出する検出部と;前記複数の検出体の間隔と、前記検出部の出力の変化と、により前記食品が載置される部分の移動速度を演算し、前記演算された移動速度に基づいて、前記処理光の光量を制御するコントローラと;を具備している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、簡易な構成で、積算光量の制御を行うことができる照射装置、および食品の処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】照射装置を例示するための模式断面図である。
【
図3】
図2における照射装置をA-A線方向から見た模式平面図である。
【
図4】他の実施形態に係る照射装置を例示するための模式図である。
【
図6】放電ランプを備えた照射装置の分光分布曲線の一例を例示するためのグラフである。
【
図7】検出部によるローラの検出を例示するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、各図中の矢印X、Y、Zは、互いに直交する三方向を表している。例えば、X方向とY方向は水平方向とし、X方向は食品100の搬送方向としている。例えば、Z方向は鉛直方向としている。
また、本明細書において「減菌」は、付着している細菌やウイルスの数を減らすことだけではなく、細菌やウイルスを死滅させる滅菌をも含むものとする。
【0014】
本実施の形態に係る食品の処理装置1(以下、単に、処理装置1と称する)は、食品100に、少なくとも紫外線領域の波長を有する処理光を照射する。
図1は、処理装置1を例示するための模式図である。
図1に示すように、処理装置1は、例えば、供給部10、搬送部20、照射部30、収容部40、およびコントローラ50を有する。
【0015】
供給部10は、例えば、搬送部20の搬入側の端部の近傍に設けられている。例えば、供給部10は、食品100を内部に複数収容し、収容されている食品100を搬送部20に供給する。
【0016】
例えば、供給部10は、複数の食品100を積層状に収納するホッパと、ホッパに収納されている食品100を取り出して搬送部20に供給する供給装置と、を有する。また、例えば、供給部10は、複数の食品100をランダムに収納するホッパと、ホッパに接続され、振動装置などが設けられたシュートと、を有するようにしてもよい。なお、供給部10の構成は例示をしたものに限定されるわけではない。供給部10は、食品100同士が重ならないようにして、食品100を搬送部20に供給することができるものであればよい。
また、供給部10は、必ずしも必要ではなく省くこともできる。供給部10を省く場合には、例えば、作業者が、食品100を搬送部20に供給すればよい。
【0017】
食品100は、例えば、収納容器の内部に収納されていない食品(単体の食品)、または、収納容器の内部に収納された食品とすることができる。
【0018】
食品100は、例えば、農産物、精肉素材、鮮魚素材、加工食品などである。
なお、「農産物」は、例えば、人為的に栽培され収穫される植物、あるいは、自然界において生育し収穫される植物とすることができる。「農産物」は、栽培植物を計画的に栽培し収穫する農耕、自然界で自生している植物の採取(野生植物の採取)、栽培と野生の中間的な状態で生育し収穫するいわゆる半栽培などにより得られたものであってもよい。「農産物」の用途には特に限定がなく、例えば、食用、薬用などの様々な用途が考えられる。
「加工食品」は、例えば、総菜、弁当、サラダなどである。
また、食品100は、例示をしたものに限定されるわけではなく、例えば、消費期限を有するものであればよい。
【0019】
「食品が収納される収納容器」は、後述する処理光を透過可能な材料から形成されている。収納容器は、例えば、処理光を透過可能なフィルム、袋、トレー、箱などとすることができる。収納容器は、例えば、ポリ塩化ビニリデンやポリ塩化ビニルなどから形成することができる。
【0020】
搬送部20は、食品100を所定の方向(例えば、X方向)に搬送する。例えば、搬送部20は、処理前の食品100の供給位置(供給部10の位置)から、処理済みの食品100aの排出位置(収容部40の位置)まで食品100を搬送する。
【0021】
図1に例示をした搬送部20は、等間隔に設けられた複数のローラ20aを有している。複数のローラ20aは、自転しながら所定の方向に移動するとともに、搬送部20の一方の端部と他方の端部との間を循環している。搬送部20は、複数のローラ20aの上に載置された食品100を搬送する。この場合、複数のローラ20aは、自転しながら所定の方向に移動するので、ローラ20aの上に載置された食品100の位置が変化しやすくなる。そのため、後述する照射部30(30a)から照射された処理光を、食品100の表面のより広い範囲に入射させることができる。そのため、減菌効果の向上を図ることができる。
【0022】
なお、搬送部20の構成は、
図1に例示をしたものに限定されるわけではない。例えば、搬送部20は、メッシュベルトやワイヤーネットなどの網状のベルトを用いたコンベアとしたり、横桟付きベルトコンベアとしたりすることもできる。網状のベルトを用いたコンベアや横桟付きベルトコンベアとすれば、食品100の姿勢を安定させることができるので、食品100の表面の所定の領域に処理光を入射させるのが容易となる。
【0023】
以上に説明した様に、搬送部20は、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の孔、複数の凹部、および複数の凸部のいずれかを有するものであればよい。搬送部20の構成は、食品100の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、搬送部20が、ミカンや梅などの果実や、トマトや玉葱などの野菜のように、球状に近い形状を有し、表面のなるべく広い領域に処理光を照射した方が好ましい場合には、
図1に例示をした様な複数のローラ20aを有する搬送部20とすることが好ましい。例えば、
図1に例示をした搬送部20は、果実や野菜の選果を行う場合に好適である。
【0024】
なお、
図1においては、搬送部20が、食品100を水平方向に搬送する場合を例示したが、搬送部20は、食品100を水平に対して傾斜した方向に搬送するものであってもよい。
【0025】
照射部30は、搬送部20により、所定の方向(例えば、X方向)に搬送される食品100に処理光を照射する。
図2は、照射部30を例示するための模式断面図である。
図3は、
図2における照射部30をA-A線方向から見た模式平面図である。
図2に示すように、照射部30は、例えば、発光モジュール31、冷却部32、回路基板33、筐体34、および検出部35を有する。
【0026】
図2、および
図3に示すように、発光モジュール31は、例えば、複数設けることができる。複数の発光モジュール31は、例えば、Y方向に並べて設けることができる。複数の発光モジュール31は、筐体34の内部に設けることができる。なお、発光モジュール31の数は、食品100の大きさに応じて適宜変更することができる。すなわち、発光モジュール31は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0027】
発光モジュール31は、例えば、基板31a、および複数の発光素子31bを有する。 基板31aは、板状を呈している。基板31aの平面形状は、例えば、四角形である。基板31aの材料は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどの無機材料、紙フェノールやガラスエポキシなどの有機材料、金属板の表面を絶縁材料で被覆したメタルコア基板などとすることができる。この場合、発光素子31bにおいて発生した熱の放熱を考慮すると、基板31aは、熱伝導率の高い材料を用いて形成することが好ましい。例えば、基板31aは、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックス、高熱伝導性樹脂、メタルコア基板などから形成することができる。なお、高熱伝導性樹脂は、例えば、PET(polyethylene terephthalate)やナイロンなどの樹脂に、酸化アルミニウムなどを含むフィラーを混合させたものである。
【0028】
図3に示すように、基板31aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いて、放熱部32aに取り付けられる。この場合、基板31aと放熱部32aとの間に、弾性を有する伝熱シートを設けたり、シリコーングリスからなる層などを設けたりすることができる。この様にすれば、発光素子31bにおいて発生した熱が放熱部32aに伝わり易くなるので、発光素子31bの温度が最大ジャンクション温度を超えるのを抑制することができる。
【0029】
また、基板31aは、例えば、熱伝導率の高い接着剤を用いて、放熱部32aに接着することもできる。熱伝導率の高い接着剤を用いて、基板31aが放熱部32aに接着されていれば、基板31aと放熱部32aとの間に隙間が生じるのを抑制することができるので、発光素子31bにおいて発生した熱が放熱部32aに伝わり易くなる。また、発光モジュール31の構成が簡易なものとなる。
【0030】
複数の発光素子31bは、基板31aの、放熱部32a側とは反対側の面に設けられている。複数の発光素子31bの光の出射面は、筐体34に設けられた窓34eに向けられている。複数の発光素子31bから照射された処理光は、窓34eを介して照射部30の外部に照射される。
【0031】
複数の発光素子31bは、並べて設けられている。例えば、
図3に示すように、複数の発光素子31bは、マトリクス状に並べて設けられる。複数の発光素子31bの配設形態や数は、
図3に例示をしたものに限定されるわけではなく、食品100の大きさや、形状などに応じて適宜変更することができる。
【0032】
発光素子31bは、紫外線領域の波長を有する処理光を照射する。この場合、処理光のピーク波長を短くすると、減菌効果を向上させることができる。そのため、発光素子31bは、UVC(C領域紫外線)を照射可能なものとすることが好ましい。例えば、発光素子31bは、ピーク波長が、200nm以上、300nm以下の処理光を照射可能な発光ダイオードや、レーザダイオードなどとすることができる。
【0033】
発光素子31bは、チップ状の発光素子であってもよいし、表面実装型の発光素子であってもよいし、砲弾型などのリード線を有する発光素子であってもよい。
【0034】
また、紫外線領域の波長を有する処理光を照射可能な発光素子31bとともに、近赤外線領域(例えば、波長帯域が、700nm以上、960nm以下)の光(近赤外線)を照射可能な発光素子をさらに設けることもできる。この場合、紫外線領域の波長を有する処理光は、食品100の表面に付着した細菌やウイルスの減菌に用いることができる。また、例えば、食品100が農産物である場合に、近赤外線が、農産物の表面に照射されると、後述する放電ランプ132の場合と同様に、農産物の表面からの液体成分の蒸散を抑制することができる。そのため、農産物の鮮度維持がさらに容易となる。
すなわち、照射部30(発光素子31b)は、所定の方向に搬送される食品100に、少なくとも紫外線領域の波長を有する処理光を照射する。
【0035】
冷却部32は、例えば、放熱部32a、および送風部32bを有する。
図3に示す様に、放熱部32aは、例えば、複数設けることができる。複数の放熱部32aを設ける場合には、例えば、複数の放熱部32aをY方向に並べて設けることができる。なお、1つの放熱部32aを設けるようにしてもよい。すなわち、放熱部32aは、少なくとも1つ設けることができる。
【0036】
放熱部32aは、例えば、発光モジュール31が取り付けられるブロック状のベースと、複数のフィンを有する。放熱部32aは、例えば、アルミニウム合金などの熱伝導率の高い材料から形成される。
【0037】
送風部32bは、放熱部32aに設けられた複数のフィンに気体Gを供給する。気体Gは、例えば、処理装置1が設置された雰囲気に含まれている空気である。送風部32bは、筐体34の内部に設けられている。送風部32bは、例えば、筐体34の内壁に取り付けられる。送風部32bは、例えば、放熱部32aの、発光モジュール31側とは反対側に設けられる。送風部32bは、例えば、軸流ファンとすることができる。
【0038】
図2に示すように、回路基板33は、筐体34の内部に設けられている。回路基板33は、例えば、筐体34の内部の、発光モジュール31が設けられる側とは反対側の端部の近傍に設けられる。なお、回路基板33は、コントローラ50に設けることもできる。
回路基板33は、例えば、複数の発光素子31bの点灯と消灯とを切り替えたり、複数の発光素子31bに印加する電力を制御したり、送風部32bによる気体Gの供給と供給の停止とを切り替えたりする。
なお、複数の発光素子31bに印加する電力を制御することで、照射部30(発光素子31b)から照射される処理光の光量を制御することができる。
【0039】
筐体34は、箱状を呈し、内部に、例えば、発光モジュール31、冷却部32、および回路基板33を収納する空間を有する。筐体34の側面には、複数の排気口34aを設けることができる。また、筐体34には、電力用のコネクタ34b、通信用のコネクタ34c、およびフィルタ34dなどを設けることができる。
【0040】
窓34eは、筐体34の、発光モジュール31が設けられる側の端部に設けられている。窓34eは、発光モジュール31(発光素子31b)から照射された処理光を透過する。窓34eは、例えば、紫外線透過ガラス(ultraviolet transmitting glass)、アクリル樹脂などから形成される。
【0041】
次に、他の実施形態に係る照射部30aについて説明する。
照射部30aは、搬送部20により、所定の方向(例えば、X方向)に搬送される食品100に処理光を照射する。
【0042】
図4は、他の実施形態に係る照射部30aを例示するための模式図である。
図4に示すように、照射部30aは、例えば、リフレクタ131、放電ランプ132、および検出部35を有する。
リフレクタ131は、放電ランプ132から照射され、食品100の側とは反対側に向かう処理光を反射して、食品100の側に向かうようにする。リフレクタ131は、例えば、凹面鏡などである。
【0043】
放電ランプ132は、リフレクタ131の内側に設けられる。例えば、放電ランプ132は、紫外線領域から近赤外線領域までの波長を含む処理光を照射する。放電ランプ132の点灯と消灯とを切り替えたり、放電ランプ132に印加する電力を制御したりする点灯回路は、例えば、コントローラ50に設けることができる。放電ランプ132に印加する電力を制御することで、照射部30a(放電ランプ132)から照射される処理光の光量を制御することができる。
【0044】
放電ランプ132は、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、エキシマ蛍光ランプ、フラッシュランプなどとすることができる。
以下においては、一例として、放電ランプ132がキセノンフラッシュランプである場合を説明する。
【0045】
図5は、放電ランプ132を例示するための模式図である。
図5に示すように、放電ランプ132は、例えば、発光管132a、電極132b、およびトリガー電極132cを有する。
【0046】
発光管132aは、筒状を呈し、管外径に比べて全長(管軸方向の長さ)が長い形態を有する。発光管132aは、例えば、円筒状を呈している。発光管132aの管軸方向の長さ、および管外径は、食品100の大きさなどに応じて適宜変更することができる。例えば、食品100が一般的な農産物の場合には、発光管132aの管軸方向の長さは、40cm~200cm程度とすることができる。発光管132aの管外径は、6mm~30mm程度とすることができる。発光管132aは、例えば、石英ガラスなどの透光性を有する材料から形成される。
【0047】
発光管132aの内部空間には、放電媒体が封入される。放電媒体は、例えば、キセノンの単体ガス、または、キセノンに、その他の希ガス(例えば、アルゴン、ネオン、クリプトン等)を1種類以上混合させた混合ガスとすることができる。放電媒体の封入圧力を高くすれば、紫外線の発光強度が大きくなる。例えば、放電媒体の封入圧力を10kPa以上、200kPa以下とすれば、紫外線の発光強度を大きくすることができる。放電媒体の封入圧力は、気体の標準状態(SATP(Standard Ambient Temperature and Pressure):温度25℃、1bar)により求めることができる。
【0048】
電極132bは、発光管132aの内部空間に一対設けられている。電極132bは、発光管132aの、管軸方向における両側の端部に1つずつ設けられる。一対の電極132bは、互いに対向している。電極132bの一方の端部は発光管132aの内部空間に設けられ、電極132bの他方の端部は発光管132aの端部から露出している。電極132bは、例えば、いわゆる冷陰極形の電極とすることができる。電極132bは、例えば、ニッケル、タングステン、モリブデン、タンタル、チタンなどから形成される。
【0049】
ここで、前述した様に、放電媒体の封入圧力を10kPa以上、200kPa以下にすると紫外線の発光強度を大きくすることができる。しかしながら、放電媒体の封入圧力が高くなれば、一対の電極132b同士の間で放電が生じにくくなる。そのため、放電ランプ132にはトリガー電極132cが設けられている。
【0050】
トリガー電極132cが設けられていれば、トリガー電極132cと、少なくとも一方の電極132bとの間に大きな電位傾度を形成することができる。そのため、発光管132aの内部空間において絶縁破壊が生じ易くなるので、一対の電極132b同士の間で放電が生じ易くなる。
【0051】
トリガー電極132cは、発光管132aの外部に設けられている。トリガー電極132cは、例えば、発光管132aの外面に線状部材を巻き付けることで形成することができる。トリガー電極132cを形成するのに用いる線状部材の太さは、0.1mm~2.0mm程度である。トリガー電極132cの材料は、例えば、電極132bの材料と同じとすることができる。
【0052】
図6は、放電ランプ132を備えた照射部30aの分光分布曲線の一例を例示するためのグラフである。
分光分布のデータは、例えば、浜松ホトニクス株式会社製の分光測定器(型番:C7473-36)を用い、周囲温度が25℃の雰囲気で測定した。
図6は、発光管132aの管軸方向の長さが300mm、発光管132aの管外径が12mm、発光管132aの管内径が10mmの場合である。放電媒体は、キセノンの単ガスである。25℃における放電媒体の封入圧力は、40kPaである。
【0053】
図6から分かるように、放電ランプ132を備えた照射部30aとすれば、紫外線領域(例えば、波長帯域が、200nm以上、400nm以下)から近赤外線領域(例えば、波長帯域が、700nm以上、960nm以下)までの波長を含む処理光を照射することができる。この場合、紫外線領域の光は、食品100の表面に付着した細菌やウイルスの減菌に用いることができる。また、例えば、食品100が農産物である場合に、近赤外線領域の光が、農産物の表面に照射されると、農産物の表面からの液体成分の蒸散が抑制される。そのため、農産物の鮮度維持が容易となる。
【0054】
すなわち、放電ランプ132を備えた照射部30aを用いれば、食品100の表面に付着した細菌やウイルスの減菌を行うことができ、且つ、例えば、農産物の鮮度維持を図ることができる。
一方、発光素子31bを備えた照射部30とすれば、分光分布がナローになる。そのため、照射部30を用いれば、細菌やウイルスの減菌を効率よく行うことができる。
照射部30と照射部30aは、処理の目的や食品100の種類などに応じて適宜選択することができる。
【0055】
また、照射部30および照射部30aを備えた処理装置1として、処理の目的や食品100の種類などに応じて、照射部30または照射部30aを選択して用いたり、照射部30および照射部30aを同時に用いたりすることもできる。この様にすれば、処理装置1の汎用性を高めることができる。
また、照射部30(30a)が1つ設けられる場合を例示したが、複数の照射部30(30a)が設けられていてもよい。
【0056】
ここで、食品100の大きさや種類などによって、搬送部20による食品100の搬送速度が調整される場合がある。食品100の搬送速度が変化すると、食品100が照射部30(30a)の照射領域を通過する時間が変化する。そのため、搬送部20による食品100の搬送速度が調整されると、食品100の表面における処理光の照射量(積算光量)が変化する。処理光の積算光量が変化すると、減菌効果がばらつくおそれがある。また、積算光量が不足すると所望の減菌効果が得られなくなって食品100の鮮度維持が図れなくなるおそれがある。また、積算光量が過剰になると食品100の表面が変質して、食品100の品質維持が図れなくなるおそれがある。
【0057】
この場合、食品100の搬送速度を求めることができれば、食品100が照射部30(30a)の照射領域を通過する時間を求めることができる。そして、求められた通過時間に応じて、照射部30(30a)から照射される処理光の光量を変化させれば、食品100の表面における処理光の積算光量が適切な範囲となるようにすることができる。
【0058】
一般的に、搬送部20には、食品100がランダムに供給されるので、食品100同士の間隔のばらつきが大きくなる。そのため、搬送部20により搬送される食品100を検出しても、食品100の搬送速度を求めることができない。
【0059】
この場合、例えば、搬送部20の駆動装置にエンコーダなどのセンサを設け、駆動装置の回転数などから、食品100の搬送速度を求めることもできる。しかしながら、この様にすると、既に使用されている装置の搬送部に、照射部30(30a)を追加する際に、既に使用されている装置にセンサや外部インターフェースなどを設ける改造を施す必要がある。
【0060】
例えば、果実や野菜などの選果機には、果実や野菜などを搬送する搬送部が設けられている。近年においては、果実や野菜などの鮮度維持や品質維持などのために、既に使用されている選果機に照射部30(30a)を追加することが望まれる場合がある。この場合、前述した改造が必要になると、照射部30(30a)の追加作業が繁雑となる。
【0061】
そのため、食品100の搬送速度に応じた積算光量の制御を行うことができ、且つ、既に使用されている選果機などの装置に容易に追加することができる照射部30(30a)とすることが好ましい。
【0062】
そこで、照射部30(30a)には、検出部35が設けられている。検出部35は、搬送部20の、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の検出体を検出する。
前述した様に、搬送部20は、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の孔、複数の凹部、および複数の凸部のいずれかを有している。すなわち、検出部35が検出する検出体は、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の孔、複数の凹部、および複数の凸部のいずれかとすることができる。
そのため、検出部35により、等間隔に設けられた孔、凹部、凸部のいずれかを検出すれば、搬送部20の、食品100が載置される部分の移動速度、ひいては食品100の搬送速度を求めることができる。
【0063】
例えば、
図1に例示をした搬送部20は、食品100が載置される複数のローラ20aを有している。そのため、例えば、複数のローラ20aが、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の凸部に相当する。また、例えば、複数のローラ20a同士の間の隙間が、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の凹部に相当する。 この場合、検出部35は、例えば、ローラ20aを検出することができる。
【0064】
また、搬送部20が、メッシュベルトやワイヤーネットなどの網状のベルトを用いたコンベアの場合には、例えば、網状のベルトを構成する線状体が、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の凸部に相当する。また、例えば、網状のベルトに設けられた複数の孔が、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の孔に相当する。
この場合、検出部35は、例えば、網状のベルトを構成する線状体を検出することができる。
【0065】
また、搬送部20が、横桟付きベルトコンベアなどの場合には、例えば、コンベアベルトに設けられた複数の横桟が、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の凸部に相当する。例えば、複数の横桟同士の間が、食品100が載置される部分に等間隔に設けられた複数の凹部に相当する。
この場合、検出部35は、例えば、横桟を検出することができる。
【0066】
検出部35は、例えば、光センサ、超音波センサ、近接センサなどとすることができる。検出部35は、透過型センサであってもよいし、反射型センサであってもよい。ただし、検出体に対する汎用性を考慮すると、検出部35は、反射型センサとすることが好ましい。
ただし、反射型センサとすると、検出体の表面状態により検出誤差が大きくなる場合がある。そのため、検出部35は、レーザ変位センサとすることが好ましい。検出部35がレーザ変位センサであれば、検出体に対する汎用性を向上させることができ、且つ、検出体の表面状態による検出誤差を小さくすることができる。
【0067】
図7は、検出部35によるローラ20aの検出を例示するためのグラフである。
図7に示すように、検出部35の検出領域を複数のローラ20aが通過すると、ほぼ一定の時間T(s)で、検出部35の出力が変化する。ローラ20aの間隔L(mm)は予め分かっているので、ローラ20aの移動速度は、「L(mm)/T(s)」により求めることができる。なお、N個のローラ20aの間隔(mm)と、N個のローラ20aの時間(s)とからローラ20aの移動速度を求めてもよい。すなわち、「N・L(mm)/N・T(s)」とすることもできる。この様にすれば、移動速度の誤差を小さくすることができる。
【0068】
ローラ20aの移動速度は、ローラ20aの上に載置された食品100の搬送速度と見なすことができるので、求められたローラ20aの移動速度に基づいて、照射部30(30a)から照射される処理光の光量を制御することができる。例えば、食品100の搬送速度(ローラ20aの移動速度)が遅くなった場合には、照射部30(30a)から照射される処理光の光量を少なくする。例えば、食品100の搬送速度(ローラ20aの移動速度)が速くなった場合には、照射部30(30a)から照射される処理光の光量を多くする。
この様にすれば、食品100の大きさや種類などによって、搬送部20による食品100の搬送速度が調整されたとしても、食品100の表面における処理光の積算光量が適切な範囲に収まるようにすることができる。食品100の表面における処理光の積算光量が適切な範囲内となれば、所望の減菌効果を得ることができる。
【0069】
なお、前述したメッシュベルトやワイヤーネットなどの網状のベルトや、横桟付きベルトなどの場合も同様である。
【0070】
ここで、食品100が収納容器に収納されていない食品、例えば、農産物などの場合には、食品100にゴミなどが付着している場合がある。また、食品100に含まれていた成分が食品100から放出される場合がある。食品100に付着していたゴミや、食品100から放出された成分が照射部30の窓34eや、照射部30aの放電ランプ132の発光管132aに付着すると、照射部30(30a)から照射される処理光の光量が、経時的に少なくなるおそれがある。
【0071】
そのため、
図1に示すように、処理装置1は、気体供給部60をさらに有することができる。気体供給部60は、照射部30(30a)と、搬送部20(ローラ20a)との間の空間、照射部30の窓34e、照射部30aの放電ランプ132の発光管132aなどに気体を供給する。気体供給部60による気体の供給は、搬送部20(ローラ20a)に対して行うこともできる。
【0072】
気体供給部60は、気体を噴射するブロー装置、ブロアなどの送風装置などとすることができる。気体は、食品100の品質に対する影響が少ないものであれば特に限定はない。気体は、例えば、空気、窒素ガスなどとすることができる。
【0073】
気体供給部60による気体の供給は、常時行うこともできるし、所定の時間間隔で行うこともできるし、センサなどでゴミが検出された場合に行うこともできるし、作業者の判断で行うこともできる。また、気体供給部60に代えて、あるいは、気体供給部60と共に、ゴミなどを吸引する装置を設けることもできる。
【0074】
次に、
図1に戻って、収容部40、およびコントローラ50について説明する。
収容部40は、処理済みの食品100aを収容する。収容部40は、例えば、搬送部20の排出側の端部の近傍に設けられたコンテナなどとすることができる。また、収容部40には、搬送部20からの食品100aの排出を促進させるためのシュートや振動装置などを設けることもできる。
【0075】
コントローラ50は、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。コントローラ50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、半導体メモリなどの記憶部を有する。コントローラ50は、例えば、コンピュータである。記憶部には、例えば、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。
【0076】
例えば、コントローラ50は、検出部35の出力に基づいて、食品100が載置される部分の移動速度(食品100の搬送速度)を演算する。コントローラ50は、求められた食品100の搬送速度に基づいて、照射部30(30a)から照射される処理光の光量を制御する。
すなわち、コントローラ50は、複数の検出体の間隔と、検出部35の出力の変化と、により食品100が載置される部分の移動速度を演算し、演算された移動速度に基づいて、処理光の光量を制御する。
例えば、コントローラ50は、食品100の搬送速度が遅くなった場合には、照射部30(30a)から照射される処理光の光量を少なくする。例えば、コントローラ50は、食品100の搬送速度が速くなった場合には、照射部30(30a)から照射される処理光の光量を多くする。
処理光の光量の制御は、例えば、前述した回路基板33により複数の発光素子31bに印加する電力を制御したり、前述した点灯回路により放電ランプ132に印加する電力を制御したりすることで行うことができる。
【0077】
なお、適切な積算光量は、食品100の種類や大きさ、求められる減菌の程度などにより変化する場合がある。そのため、食品100が載置される部分の移動速度と、照射部30(30a)から照射される処理光の光量との関係は、予め、実験やシミュレーションを行うことで求めることが好ましい。
【0078】
また、コントローラ50は、供給部10や搬送部20の動作を制御することもできる。 既に使用されている選果機などの装置に、照射部30(30a)を追加する場合には、コントローラ50は、検出部35により検出された、選果機などの装置に設けられている搬送部の、食品100が載置される部分の移動速度に基づいて、照射部30(30a)から照射される処理光の光量を制御すれば良い。例えば、コントローラ50は、既に使用されている選果機などの装置に設けられている搬送部などを制御しなくてもよい。
【0079】
この場合、選果機などの装置に設けられている搬送部の、食品100が載置される部分を検出部35により検出すれば、選果機などの装置の駆動部にセンサなどを追加したり、選果機などの装置のコントローラに外部インターフェースなどを追加したりする必要がない。そのため、照射部30(30a)の追加作業が容易となる。
【0080】
以上に説明した様に、本実施の形態に係る照射部30(30a)とすれば、簡易な構成で、積算光量の制御を行うことができる。また、照射部30(30a)とすれば、食品100の搬送速度に応じた積算光量の制御を行うことができ、且つ、既に使用されている選果機などの装置に照射部30(30a)を容易に追加することができる。
【0081】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 処理装置、20 搬送部、20a ローラ、30 照射部、30a 照射部、31 発光モジュール、31b 発光素子、35 検出部、50 コントローラ、132 放電ランプ、100 食品