(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173154
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】掘削装置及び地盤調査方法
(51)【国際特許分類】
E21B 10/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
E21B10/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085202
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】393030899
【氏名又は名称】アジア海洋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】海老海 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 章
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 正志
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB25
2D129DA11
2D129GA01
2D129GA11
(57)【要約】
【課題】固い地盤に突き当たってもコーンプローブを取り付けたロッドや掘削ビットを取り付けたロッドの回収や設置を繰り返す必要がないようにする。
【解決手段】掘削装置60は、掘削ロッド55の先端に取り付けられ、コーンプローブ51を先端に取り付けたCPTロッド50を挿通可能な管状の形状を有する本体61と、本体61に支持されて掘削方向に対向する環状のクラウンビット68と、本体61によってクラウンビット68の開口6B内に支持され、コーンプローブ51及びCPTロッド50が開口6Bを挿通可能なように本体61の内面に沿って格納された格納位置と、開口6B内で実質的な範囲を占めて掘削方向に対向する掘削位置との間で可動なコアビット63とを有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ロッドの先端に取り付けられる掘削装置であって、
コーンプローブを先端に取り付けたCPTロッドを挿通可能な管状の形状を有する本体と、
前記本体に支持されて掘削方向に対向する環状のクラウンビットと、
前記本体によって前記クラウンビットの開口内に支持されたコアビットであって、前記コーンプローブ及び前記CPTロッドが前記開口を挿通可能なように前記本体の内面に沿って格納された格納位置と、前記開口内で実質的な範囲を占めて掘削方向に対向する掘削位置との間で可動なコアビットと
を含む掘削装置。
【請求項2】
前記本体と同軸上にあって、前記軸方向に移動可能であるように前記本体に支持されたスリーブをさらに含み、前記クラウンビットは前記スリーブの先端に取り付けられ、前記コアビットは、前記本体の先端から掘削方向に延び、前記軸を囲むように配置されて前記本体の径方向に開閉可能である複数のコアビットから構成され、前記スリーブは、前記本体及び前記複数のコアビットを取り囲み、前記本体に対して遠位から近位に移動するにつれて前記複数のコアビットを閉じて前記格納位置から前記掘削位置に案内する請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
前記複数のコアビットは、同一の形状を有し、前記本体の先端において前記本体の軸について回転方向に対称な位置にある請求項2に記載の掘削装置。
【請求項4】
前記複数のコアビットは、2個以上のコアビットを含む請求項2又は3に記載の掘削装置。
【請求項5】
前記スリーブは、前記掘削方向に進むにしたがい次第に内面の径が縮小するように形成され、前記スリーブが遠位から近位に移動するにつれて前記複数のコアビットの外周を摺動して閉じるように案内するコアビット案内部を含む請求項2に記載の掘削装置。
【請求項6】
前記スリーブが前記本体に対して前記遠位及び前記近位の間の範囲でのみ移動できるように移動範囲を制限する移動範囲制限手段をさらに含む請求項2に記載の掘削装置。
【請求項7】
前記本体に対して前記スリーブを前記遠位から前記近位に向けて付勢する付勢手段をさらに含む請求項2に記載の掘削装置。
【請求項8】
前記複数のコアビットは、開閉可能なように前記本体の先端にヒンジによって取り付けられた請求項2に記載の掘削装置。
【請求項9】
前記スリーブを前記本体の軸の周りの回転について前記本体に拘束する拘束手段をさらに含む請求項2に記載の掘削装置。
【請求項10】
前記クラウンビットは掘削方向に対向する複数の掘削チップを備え、前記複数のコアビットはそれぞれ先端に掘削チップを備える請求項2に記載の掘削装置。
【請求項11】
前記クラウンビットは前記本体の先端に取り付けられ、前記コアビットは、前記本体の軸を含む平面内において、掘削方向に向けて延びた格納位置と、前記軸に向けて延びた掘削位置との間で回転可能なように前記本体に取り付けられ、前記掘削位置から前記格納位置に向けて回転するように付勢された複数のコアビットから構成された請求項1に記載の掘削装置。
【請求項12】
前記複数のコアビットは、同一の形状を有し、前記本体の先端において前記本体の軸について回転方向に対称な位置にある請求項11に記載の掘削装置。
【請求項13】
前記複数のコアビットは、2個以上のコアビットを含む請求項11又は12に記載の掘削装置。
【請求項14】
前記複数のコアビットは、前記格納位置において前記開口内に留まる請求項11に記載の掘削装置。
【請求項15】
前記複数のコアビットは、前記格納位置において前記開口から掘削方向に突き出した請求項11に記載の掘削装置。
【請求項16】
前記複数のコアビットは、前記開口に引き込まれる前記コーンプローブにしたがい前記格納位置から前記掘削位置まで回転する請求項11に記載の掘削装置。
【請求項17】
前記複数のコアビットは、前記開口から突き出される前記コーンプローブにしたがい前記掘削位置から前記格納位置まで回転する請求項11に記載の掘削装置。
【請求項18】
前記複数のコアビットは、回転可能なように前記本体にヒンジによって取り付けられた請求項11に記載の掘削装置。
【請求項19】
前記複数のコアビットを前記掘削位置から前記格納位置に向けて回転するように付勢する付勢手段をさらに含む請求項11に記載の掘削装置。
【請求項20】
前記クラウンビットは掘削方向に対向する複数の掘削チップを備え、前記複数のコアビットは前記掘削位置で掘削方向に対向するように掘削チップを備える請求項11記載の掘削装置。
【請求項21】
請求項1から18のいずれか一項に記載の掘削装置を用いて地盤をCPT調査する地盤調査方法であって、
前記CPTロッドの先端に取り付けたコーンプローブを地盤に所定の速度で貫入してCPT調査し、前記コーンプローブは掘削ロッドの先端に取り付けられた掘削装置に挿通されている工程と、
前記CPT調査をする工程が、地盤に存在する固い地盤によって前記コーンプローブの貫入が阻まれて中断したときには、前記コーンプローブを前記掘削装置に引き込み、前記掘削装置の前記コアビットを用いて前記固い地盤を取り除く工程と、
前記固い地盤を取り除いた後に、前記CPT調査を再開する工程と
を含む地盤調査方法。
【請求項22】
前記固い地盤を掘削する工程は、前記クラウンビットとともに前記コアビットを前記本体の軸の周りに回転させて前記固い地盤を掘削する請求項21に記載の地盤調査方法。
【請求項23】
前記固い地盤を取り除く工程は、
前記掘削装置を前記固い地盤に接するまで掘削方向に進める工程と、
前記コーンプローブが前記掘削装置内に引き込まれるように前記CPTロッドを所定の長さにわたって回収して前記コアビットが前記掘削位置にあるようにする工程と
をさらに含む請求項21に記載の地盤調査方法。
【請求項24】
前記掘削装置を進める工程は、前記クラウンビットを前記本体の軸の周りに回転させて地盤を掘削する請求項21に記載の地盤調査方法。
【請求項25】
前記CPT調査を再開する工程は、前記固い地盤を取り除く工程により前記固い地盤を取り除くと、前記CPTロッドの先端に取り付けたコーンプローブを前記掘削装置から突き出してCPT調査を再開する請求項21に記載の地盤調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コーン貫入試験(cone penetration test:CPT)に用いる掘削装置及びCPTにより地盤を調査する地盤調査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を調査するために先端にコーンプローブを取り付けたロッドを一定の速度で地盤に押し込んで貫入抵抗力を測定するコーン貫入試験(CPT)が実施されている(CPTについては、非特許文献1を参照。)。CPTは、海底の地盤の調査にも利用され、櫓によって支持された作業床や自己昇降式作業台船(self-elevating platform:SEP)から海底の地盤に先端にコーンプローブを取り付けたロッドを押し込む技術が提供されている(櫓及びSEPについては、例えば特許文献1及び2を参照。)。
【0003】
コーンプローブを取り付けたロッドを地盤に押し込んでいるときに、コーンプローブが貫入できないような固い地盤に突き当たることがあった。このような場合には、一旦、コーンプローブを取り付けたロッドを地上に回収し、ロッドの先端をコーンプローブから掘削ビットに付け替え、コーンプローブによって形成した孔に掘削ビットを取り付けたロッドを入れて固い地盤を掘削して取り除いていた。その後で、掘削ビットを取り付けたロッドを地上に回収し、ロッドの先端を掘削ビットからコーンプローブに付け替え、掘削ビットによって形成した掘削孔にコーンプローブを取り付けたロッドを入れて掘削した深さにコーンプローブを設置し、CPT調査を再開していた。
【0004】
掘削ビットを取り付けたロッドによる掘削作業のときにはコーンプローブを地上に回収しているが、掘削作業の完了後にも掘削ビットを取り付けたロッドを孔内に残し、掘削した深さにコーンプローブを設置してCPT調査を再開する方法も提供されている。この方法でも、掘削作業を行う度にコーンプローブを地上に回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭50-78002号公報
【特許文献2】実開昭60-195324号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JIS A 1220:2013 機械式コーン貫入試験方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コーンプローブが固い地盤に突き当たって貫入が妨げられたときには、固い地盤を1~2m程度の深さにわたり取り除き、その都度地盤の固さを測定していた。その場合、1~2mを掘削する度にCPT調査を行うことになり、CPT調査の都度コーンプローブ、ロッド等の設置及び回収を繰り返す必要があった。
【0008】
海底の地盤を調査する場合にも、コーンプローブが固い地盤に突き当たって貫入が妨げられたときには、固い地盤を1~2m程度の深さにわたり取り除き、その都度地盤の固さを測定していた。その場合も1~2mを掘削する度にCPT調査を行うことになり、CPT調査の都度、水深及び地盤の掘削深さ分にわたりコーンプローブの設置及び回収を繰り返す必要があった。また、CPT調査を行うときに掘削ビットと掘削ビットを取り付けたロッドを回収する方法では、定尺の鋼管を接続して構成されたロッドの延長及び回収の作業を繰り返す必要があった。
【0009】
この発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、地盤をCPT調査するときにコーンプローブが貫入できないような固い地盤に突き当たってもコーンプローブを取り付けたロッドや掘削ビットを取り付けたロッドの回収や設置を繰り返し行う必要がないような掘削装置及び地盤調査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、この発明に係る掘削装置は、掘削ロッドの先端に取り付けられ、コーンプローブを先端に取り付けたCPTロッドを挿通可能な管状の形状を有する本体と、本体に支持されて掘削方向に対向する環状のクラウンビットと、本体によってクラウンビットの開口内に支持されたコアビットであって、コーンプローブ及びCPTロッドが開口を挿通可能なように本体の内面に沿って格納された格納位置と、開口内で実質的な範囲を占めて掘削方向に対向する掘削位置との間で可動なコアビットとを含んでいる。
【0011】
本体と同軸上にあって、軸方向に移動可能であるように本体に支持されたスリーブをさらに含み、クラウンビットはスリーブの先端に取り付けられ、コアビットは、本体の先端から掘削方向に延び、軸を囲むように配置されて本体の径方向に開閉可能である複数のコアビットから構成され、スリーブは、本体及び複数のコアビットを取り囲み、本体に対して遠位から近位に移動するにつれて複数のコアビットを閉じて格納位置から掘削位置に案内してもよい。
【0012】
複数のコアビットは、同一の形状を有し、本体の先端において本体の軸について回転方向に対称な位置にあってもよい。複数のコアビットは、2個以上のコアビットを含んでもよい。
【0013】
スリーブは、掘削方向に進むにしたがい次第に内面の径が縮小するように形成され、スリーブが遠位から近位に移動するにつれて複数のコアビットの外周を摺動して閉じるように案内するコアビット案内部を含んでもよい。
【0014】
スリーブが本体に対して遠位及び近位の間の範囲でのみ移動できるように移動範囲を制限する移動範囲制限手段をさらに含んでもよい。本体に対してスリーブを遠位から近位に向けて付勢する付勢手段をさらに含んでもよい。
【0015】
複数のコアビットは、開閉可能なように本体の先端にヒンジによって取り付けられてもよい。スリーブを本体の軸の周りの回転について本体に拘束する拘束手段をさらに含んでもよい。クラウンビットは掘削方向に対向する複数の掘削チップを備え、複数のコアビットはそれぞれ先端に掘削チップを備えてもよい。
【0016】
クラウンビットは本体の先端に取り付けられ、コアビットは、本体の軸を含む平面内において、掘削方向に向けて延びた格納位置と、軸に向けて延びた掘削位置との間で回転可能なように本体に取り付けられ、掘削位置から格納位置に向けて回転するように付勢された複数のコアビットから構成されていてもよい。
【0017】
複数のコアビットは、同一の形状を有し、本体の先端において本体の軸について回転方向に対称な位置にあってもよい。複数のコアビットは、2個以上のコアビットを含んでもよい。
【0018】
複数のコアビットは、格納位置において開口内に留まってもよい。複数のコアビットは、格納位置において開口から掘削方向に突き出してもよい。
【0019】
複数のコアビットは、開口に引き込まれるコーンプローブにしたがい格納位置から掘削位置まで回転してもよい。複数のコアビットは、開口から突き出されるコーンプローブにしたがい掘削位置から格納位置まで回転してもよい。
【0020】
複数のコアビットは、回転可能なように本体にヒンジによって取り付けられてもよい。複数のコアビットを掘削位置から格納位置に向けて回転するように付勢する付勢手段をさらに含んでもよい。クラウンビットは掘削方向に対向する複数の掘削チップを備え、複数のコアビットは掘削位置で掘削方向に対向するように掘削チップを備えてもよい。
【0021】
この出願に係る地盤調査方法は、前記掘削装置を用いて地盤をCPT調査し、CPTロッドの先端に取り付けたコーンプローブを地盤に所定の速度で貫入してCPT調査し、コーンプローブは掘削ロッドの先端に取り付けられた掘削装置に挿通されている工程と、CPT調査をする工程が、地盤に存在する固い地盤によってコーンプローブの貫入が阻まれて中断したときには、コーンプローブを掘削装置に引き込み、掘削装置のコアビットを用いて固い地盤を取り除く工程と、固い地盤を取り除いた後に、CPT調査を再開する工程とを含んでいる。
【0022】
固い地盤を掘削する工程は、クラウンビットとともにコアビットを本体の軸の周りに回転させて固い地盤を掘削してもよい。固い地盤を取り除く工程は、掘削装置を固い地盤に接するまで掘削方向に進める工程と、コーンプローブが掘削装置内に引き込まれるようにCPTロッドを所定の長さにわたって回収してコアビットが掘削位置にあるようにする工程とをさらに含んでもよい。
【0023】
掘削装置を進める工程は、クラウンビットを本体の軸の周りに回転させて地盤を掘削してもよい。CPT調査を再開する工程は、固い地盤を取り除く工程により固い地盤を取り除くと、CPTロッドの先端に取り付けたコーンプローブを掘削装置から突き出してCPT調査を再開してもよい。
【発明の効果】
【0024】
この発明によると、地盤をCPT調査するときに固い地盤があることによりコーンプローブを貫入できなくなりCPT調査を中断した場合でも、コーンプローブを取り付けたロッドや掘削ビットを取り付けたロッドの回収や設置を繰り返し行う必要なく調査を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】海底地盤調査装置の概略的な構成を示す図である。
【
図2】海底地盤調査装置に用いるロッドの断面図である。
【
図3】第1の実施の形態の掘削装置の構造を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態の掘削装置の構造を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態の海底地盤調査方法を概略的に説明する図である。
【
図6】第1の実施の形態の海底地盤調査方法を説明する図である。
【
図7】第1の実施の形態の海底地盤調査方法を説明する図である。
【
図8】第2の実施の形態の掘削装置の構造を示す図である。
【
図9】第2の実施の形態の掘削装置の構造を示す図である。
【
図10】第2の実施の形態の海底地盤調査方法を概略的に説明する図である。
【
図11】第2の実施の形態の変形例の掘削装置の構造を示す図である。
【
図12】第2の実施の形態の変形例の掘削装置の構造を示す図である。
【
図13】比較例の海底地盤調査方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施の形態の掘削装置及び地盤調査方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、海底に設置した櫓によって支持された海水面上の作業床からコーンプローブを先端に取り付けたロッドを一定の速度で地中に貫入しながら深度別の貫入抵抗力を測定するコーン貫入試験(CPT)により海底の地盤を調査することを想定している。
【0027】
図1は、本実施の形態の地盤調査方法を実施するための海底地盤調査装置10の概略的な構成を示す図である。海底地盤調査装置10は、海底201に設置された架台11と、架台11によって支持され海水面上まで延びる櫓12と、櫓12によって海水面上に支持された作業床20とを有している。架台11は、鋼製又はコンクリート製の構造部材によって構成され、底部は海底に着座し、上部に取り付けられた櫓12を支持している。櫓12は鋼製の構造部材によって構成され、架台11の上部から海水面上まで鉛直方向に延びている。作業床20は、櫓12の頂部によって支持され、海水面から波による影響を受けないように海水面から所定の高さを確保して設けられている。
【0028】
櫓12には、作業床20の直下から海底201まで鉛直方向に延びる鋼管によるガイド管16が取り付けられている。ガイド管16は、掘削装置60が先端に取り付けられた鋼管による掘削ロッド55を挿通して作業床20から海底201まで導いている。掘削装置60は、海底201の地盤200に貫入されるコーンプローブ51が先端に取り付けられた鋼管によるCPTロッド50を挿通している。掘削装置60の先端には、コーンプローブ51及びCPTロッド50を挿通できるような環状のクラウンビットが設けられている。コーンプローブ51がクラウンビットでは十分に掘削できないような固い地盤に突き当たったときには、コーンプローブ51を掘削装置60の内部に引き込み、掘削装置60に内蔵したコアビットがクラウンビットの開口内で掘削方向に対向するように移動し、クラウンビット及びコアビットで構成された掘削ビットで固い地盤を掘削する。
【0029】
図2は、海底地盤調査装置10で用いられるCPTロッド50等の断面図である。
図2(a)は架台11の深さにおける切断線IIA-IIAによる断面であり、
図2(b)は海底201の地盤200中で掘削ロッド55の先端に取り付けられた掘削装置60まで達しない深さにおける切断線IIB-IIBによる断面である。
図2(a)に示すように、ガイド管16には、掘削ロッド55が挿通され、掘削ロッド55にはさらにCPTロッド50が挿通されている。
図2(b)に示す海底201の地盤200中では、掘削ロッド55にCPTロッド50が挿通されている。
【0030】
再び
図1を参照すると、作業床20は2層構造を有し、櫓12の頂部に設けられた第1層21においてガイド管16の直上には、ガイド管16に挿通されて海底201の地盤200に達する掘削ロッド55を把持し、回転駆動して推進するための掘削駆動機25が設けられている。掘削ロッド55は作業床20の直下で開口するガイド管16の上端から突き出し、その上端は掘削駆動機25を超える高さに達している。掘削ロッド55は定尺の鋼管を接続して構成され、作業床20において接続して延長したり、取り外して回収したりすることができる。
【0031】
第1層21の上層になる第2層22において、ガイド管16及び掘削ロッド55の直上にはガイド管16及び掘削ロッド55に挿通されて海底の地盤200に達するCPTロッド50を把持し、CPTロッド50の先端に取り付けられたコーンプローブ51が海底201の地盤200に貫入されるように押し込むためのCPT押込機27が設けられている。CPTロッド50は第1層21において開口する掘削ロッド55の上端から突き出してその上端はCPT押込機27を超える高さに達している。CPTロッド50も定尺の鋼管を接続して構成され、作業床20において接続して延長したり、取り外して回収したりすることができる。作業床20には、CPTロッド50や掘削ロッド55を延長又は回収する作業のために、定尺の鋼管を吊り下げることができるクレーンが備えられていてもよい。
【0032】
(第1の実施の形態)
図3及び
図4は、第1の実施の形態の掘削装置60の構造を説明する図である。
図3はCPT調査のために掘削装置60からコーンプローブ51を突き出している状態を示し、
図4は固い地盤の掘削のために掘削装置60内にコーンプローブ51を引き込んで掘削方向にクラウンビット68とともにコアビット63が対向するようにした状態を示している。なお、
図3及び
図4において、それぞれ(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は断面図である。
図3(c)の断面図は
図3(a)及び
図3(b)における切断線IIIC-IIICによるものであり、
図4(c)の断面図は
図4(a)及び
図4(b)における切断線IVC-IVCによるものである。
【0033】
図3を参照すると、掘削装置60は、コーンプローブ51及びCPTロッド50を取り囲んで挿通可能に支持する管状の形状の本体61を有している。本体61の先端には、掘削方向に延びるように、本体61の軸(以下では、単に軸又は軸方向として参照することがある。)を取り囲むように軸の周りに回転対称な位置に3個の爪状の形状を有するコアビット63が取り付けられている。これらのコアビット63は、本体61の径方向に可動で開閉可能なように、その基部が本体61の先端にヒンジ64によって取り付けられている。コアビット63の先端には、コアビット63とともに開閉方向に可動である掘削チップ65が取り付けられている。コアビット63及び掘削チップ65は、超硬合金などで構成されてもよい。
【0034】
また、掘削装置60は、本体61と同軸上にあって、本体61及びコアビット63を取り囲むスリーブ67を有している。スリーブ67は、軸方向に所定の長さを有する管状の形状を有し、先端には環状の形状を有するクラウンビット68が取り付けられている。クラウンビット68の開口6Bには、コーンプローブ51及びCPTロッド50が挿通可能である。クラウンビット68の掘削方向に対向する面には、軸の周りに回転対称な位置に3個の掘削チップ69が配置されている。クラウンビット68及び掘削チップ69は、超硬合金などで構成されてもよい。
【0035】
本体61の外面には、軸方向に所定範囲にわたってスリーブ67を軸方向に移動可能に支持するスリーブ支持部62が形成されている。スリーブ支持部62には、スリーブ67が軸方向に移動可能に案内する第1の外径を有するスリーブ案内部62b、スリーブ67の回収方向への移動範囲を制限する第1の外径よりも大きい第2の外径を有する第1のスリーブ止め62a、及びスリーブ67の掘削方向への移動範囲を制限する第1の外径よりも大きい第3の外径を有する第2のスリーブ止め62cが形成されている。ここで、回収方向とは、掘削方向とは逆にコーンプローブ51などを作業床20に回収する方向をいうものとする。スリーブ案内部62bには、突起66も形成されている。
【0036】
第1のスリーブ止め62a及び第2のスリーブ止め62cは、本体61に対するスリーブ67の移動範囲を制限する移動範囲制限手段を構成している。なお、後述するように、スリーブ67の回収方向への移動範囲は、スリーブ67と第1のスリーブ止め62aとの間に介在するコイルばね6Aによってさらに制限される。突起66は、軸の周りの回転対称な位置に3個が配置されてもよい。突起66は、スリーブ67が軸について本体61とともに回転するようにスリーブ67を本体61の周方向について拘束している。
【0037】
スリーブ67の基部には、スリーブ67が軸方向に移動可能なように、本体61のスリーブ支持部62においてスリーブ案内部62bに嵌合して支持される第1の内径よりも小さい第2の内径を有する嵌合部67aが形成されている。スリーブ67は、嵌合部67aによって、スリーブ案内部62bを摺動して移動可能なように支持されている。
【0038】
嵌合部67aには、突起66に対応する位置に軸方向を長手方向として延びる案内孔67dが形成されている。案内孔67dは、突起66の位置に対応するように、軸の周りの回転対称な位置に3個が配置されてもよい。案内孔67dには突起66が係合され、突起66は案内孔67dに沿って軸方向に案内される。案内孔67d及び突起66は、スリーブ67は本体61に対して軸方向には移動可能であるが、周方向への移動、すなわち軸の周りの回転が本体61に拘束されるようにする拘束手段を構成している。この拘束手段によって、本体61が軸の周りに回転するとスリーブ67も一緒に回転することが確保されている。
【0039】
スリーブ67において、内面の軸方向にスリーブ支持部62とクラウンビット68を取り付けた先端との間の所定範囲には、コアビット63の基部から先端に向けて所定の範囲を格納することができる第1の内径を有するコアビット格納部67bが形成されている。コアビット格納部67bには、コアビット63が掘削方向に延びてスリーブ67の内面に接するようなコアビット63が完全に開いた格納位置においてコアビット63を格納することができる。また、スリーブ67において、内面の軸方向にコアビット格納部67bから先端に向かって、コアビット格納部67bの内径から次第に内径が小さくなり、スリーブ67の先端で第3の内径に達するようにテーパー状の形状に形成されたコアビット案内部67cが形成されている。コアビット案内部67cは、開閉可能なコアビット63の外周をテーパー状の内面に沿って摺動して、コアビット63がスリーブ67に対して掘削方向に進むにつれてコアビット63が次第に閉じるように案内する。
【0040】
本体61のスリーブ支持部62のスリーブ案内部62bには、コイルばね6Aが巻回されている。コイルばね6Aは、スリーブ案内部62bの第1の外径よりは大きいが、第1のスリーブ止め62aの第2の外径及びスリーブ67の外径よりは小さい径を有し、第1のスリーブ止め62aとスリーブ67の嵌合部67aとが離れるように付勢している。スリーブ67はコイルばね6Aの付勢力によって本体61から離れるように掘削方向に進められ、スリーブ67の嵌合部67aが本体61の第2のスリーブ止め62cに接するまで付勢される。コイルばね6Aは、本体61に対してスリーブ67を掘削方向に付勢する付勢手段を構成している。
【0041】
ここで、スリーブ67の嵌合部67aが第2のスリーブ止め62cと接する位置は、スリーブ67が本体61から最も遠くにあるため、本体61に対してスリーブ67が遠位にあると称することにする。また、嵌合部67aがコイルばね6Aを介在させて第1のスリーブ止め62aに最も接近した位置は、スリーブ67が本体61の最も近くにあるため、本体61に対してスリーブ67が近位にあると称することにする。スリーブ67と本体61との遠近は、例えばスリーブ67及び本体61のそれぞれの重心の間の距離を基準にしてもよい。
【0042】
図3においては、スリーブ67は本体61に対して遠位にある。スリーブ67が本体61に対して遠位にあるときには、コアビット63の基部から先端に向けて所定範囲は掘削方向に延びてスリーブ67の内面に接するように開いて、コアビット63がスリーブ67のコアビット格納部67bに格納された格納位置にあることができる。スリーブ67はコイルばね6Aによって本体61から離れるように掘削方向に付勢されているため、本体61及びスリーブ67に外力が印加されていない状態においてスリーブ67は本体61に対して遠位にある。コーンプローブ51及びCPTロッド50を掘削方向にコアビット63の間に進めることにより、コアビット63は次第に開いてスリーブ67の内面に接して掘削方向に延びるように格納位置に移動する。格納位置にあるコアビット63に形成された間隙によって、コアビット63を挿通されるコーンプローブ51及びCPTロッド50は軸方向に移動可能なように支持される。
【0043】
図4においては、スリーブ67は本体61に対して近位にある。前述のように、スリーブ67はコイルばね6Aによって本体61から離れるように掘削方向に付勢されている。このため、スリーブ67が本体61に対して近位になるのは、掘削装置60が固い地盤に突き当たるなどしたとき、固い地盤からの抗力がコイルばね6Aの付勢力に打ち勝ってコイルばね6Aが最も縮んだときである。
【0044】
スリーブ67が本体61に対して近位にあるときには、コーンプローブ51及びCPTロッド50は、コーンプローブ51の先端が少なくともコアビット63よりも回収方向に位置するようにされる。このとき、コアビット63はコーンプローブ51と干渉することなくテーパー状の内面を有するコアビット案内部67cに案内されて閉じ、先端は互いに接するようにされる。このとき、コアビット63の先端は、スリーブ67の先端のクラウンビット68の開口6B内に集まって開口6B内で実質的な範囲を占め、クラウンビット68とともに掘削方向に対向する。したがって、コアビット63がクラウンビット68とともに土壌を掘削するための掘削ビットを構成することを可能にしている。
【0045】
このような掘削装置60は、掘削方向に延びる掘削ロッド55と同軸上にあるように、掘削ロッド55の先端に取り付けられる。掘削装置60の本体61は、掘削ロッド55と同様の径を有するロッドから構成されてもよい。掘削装置60は、スリーブ67が本体61に対して近位にあるときと遠位にあるときでは軸方向の全長が異なるが、掘削ロッド55を構成する定尺の鋼管と略同じ長さを有してもよい。掘削装置60は、鉄鋼などの金属で構成されてもよい。
【0046】
第1の実施の形態の掘削装置60は、
図3に示したようにスリーブ67が本体61に対して遠位にあるときには、先端にコーンプローブ51を取り付けたCPTロッド50を挿通してCPT調査を可能としている。また、スリーブ67の先端に環状のクラウンビット68を備えるため、コーンプローブ51又はCPTロッド50の周囲の土壌の掘削を可能にしている。
図4に示したようにスリーブ67が本体61に対して近位にあるときには、コーンプローブ51を掘削装置60内に引き込んでクラウンビット68の開口6B内にコアビット63の先端を集め、掘削方向に対向するクラウンビット68及びコアビット63で掘削ビットを構成することにより、優れた掘削能力を発揮することができる。
【0047】
したがって、第1の実施の形態の掘削装置60は、通常はスリーブ67が本体61に対して遠位にあるようにして、掘削装置60を通したCPTロッド50によりコーンプローブ51を深さ方向に貫入させてCPT調査を行うが、コーンプローブ51の貫入が固い地盤210に阻まれたときには、コーンプローブ51を掘削装置60内に引き込んだ後、スリーブ67が本体61に対して近位にあるようにして掘削方向に対向するクラウンビット68及びコアビット63による掘削ビットを構成し、この掘削ビットで固い地盤210を取り除くことができる。固い地盤210を取り除いた後で、掘削装置60からCPTロッド50及びコーンプローブ51を突き出してCPT調査を再開することができる。なお、掘削装置60は3個のコアビット63を備えていたが、2個又は4個以上のコアビット63を備えるようにしてもよい。また、突起66及び案内孔67dは3組が形成されていたが、2組以下又は4組以上が設けられてもよい。
【0048】
図5は、第1の実施の形態の海底地盤調査方法を概略的に説明する図である。
図5においては、
図1に示した海底地盤調査装置10の櫓12及び作業床20を省略している。
【0049】
図5(a)に示すように、コーンプローブ51が先端に取り付けられたCPTロッド50は、ガイド管16、掘削ロッド55及び掘削ロッド55の先端に取り付けられた掘削装置60に挿通されて海底201の地盤200に導かれる。そして、図示しない作業床20のCPT押込機27によって、コーンプローブ51が所定の速度で地盤200に貫入するように深さ方向に押し込まれる。掘削装置60においては、
図3に示したように、コイルばね6Aによってスリーブ67は本体61から離れる掘削方向に付勢されている。このため、スリーブ67は本体61に対して遠位にあり、スリーブ67に格納された図示しないコアビット63は開き、その間隙でコーンプローブ51及びCPTロッド50を挿通可能に支持している。海底201から所定の深さには、固い地盤210が存在している。この固い地盤210は、コーンプローブ51が貫入することができず、掘削装置60のスリーブ67の先端のクラウンビット68によっては十分に掘削することができないような固さを有している。
【0050】
このような固い地盤210にコーンプローブ51が達し、CPT調査が阻まれたときには、CPT調査は中断される。図示しない作業床20の掘削駆動機25は、スリーブ67の先端にクラウンビット68が取り付けられた掘削装置60を回転駆動して、掘削装置60が固い地盤210に達するまで推進する。掘削装置60が固い地盤210に達すると、掘削装置60のクラウンビット68では固い地盤210の掘削には不足するため、掘削装置60の推進は阻まれる。掘削装置60の推進が阻まれると、掘削装置60の回転駆動を停止し、作業床20のCPT押込機27によって固い地盤210に達しているCPTロッド50を所定の長さにわたって回収し、コーンプローブ51を掘削装置60内に引き戻してコーンプローブ51がコアビット63よりも回収方向に位置するようにする。
【0051】
図5(b)に示すように、CPTロッド50をCPT押込機27によって把持してコーンプローブ51を固い地盤210から所定の高さに留置したままで、掘削駆動機25は先端に掘削装置60を取り付けた掘削ロッド55に押圧力を印加してさらに進める。このとき、掘削装置60においては、固い地盤210から及ぼされる抗力が本体61とスリーブ67とを離すように付勢するコイルばね6Aの付勢力に打ち勝ち、コイルばね6Aは縮んでスリーブ67は本体61に対して近位に移動する。
図4に示したように、コアビット63はスリーブ67のコアビット案内部67cによって閉じるように案内され、コアビット63の先端は接するようにされる。コアビット63の先端は、スリーブ67の先端のクラウンビット68の開口6B内に集まってクラウンビット68とともに掘削方向に対向し、土壌を掘削するための掘削ビットを構成する。このような掘削ビットにおいては、クラウンビット68及びコアビット63が共働することにより優れた掘削能力を発揮し、掘削駆動機25によって回転駆動されることにより固い地盤210も掘削することを可能にする。
【0052】
図5(c)に示すように、クラウンビット68及びコアビット63が協働して固い地盤210を掘削し、掘削装置60が固い地盤210を突き抜けると、固い地盤210から掘削装置60に及ぼされる抗力がなくなり、掘削装置60の本体61とスリーブ67とを離すように付勢するコイルばね6Aの付勢力によって、コイルばね6Aは伸びてスリーブ67は本体61に対して遠位に移動する。
図3に示すように、コアビット63はスリーブ67のコアビット格納部67bに格納されてコアビット63はコーンプローブ51及びCPTロッド50を挿通可能に支持する間隙を形成するように開くことができるようになる。
図5(b)において固い地盤210から所定の高さに留置されていたコーンプローブ51は、CPT押込機27によって進められてCPTロッド50とともに掘削ロッド55及び掘削装置60を通り、固い地盤210を突き抜けて地盤200に導かれる。そして、コーンプローブ51が所定の速度で地盤に貫入するように深さ方向に押し込まれ、CPT調査が再開される。
【0053】
図6及び
図7は、第1の実施の形態の海底地盤調査方法の工程を説明する図である。この
図6及び
図7は、
図5を参照して説明した第1の実施の形態の海底地盤調査方法の概略をさらに詳細に説明するものである。
図6及び
図7においては、
図1に示した海底地盤調査装置10の架台11、櫓12及びガイド管16を省略し、作業床20の構成は掘削駆動機25及びCPT押込機27のみを示している。
【0054】
図6(a)及び
図6(b)は、
図5(a)に対応している。
図6(a)に示すように、図示しない作業床20に設けられたCPT押込機27によってコーンプローブ51が先端に取り付けられたCPTロッド50を海底201の地盤200に所定の速度で押し込むCPT調査が行われている。CPTロッド50は、掘削ロッド55及び掘削ロッド55の先端に取り付けられた掘削装置60を通って海底の地盤200に導かれ、コーンプローブ51が所定の速度で地盤200に貫入するように深さ方向に押し込まれる。CPTロッド50及び掘削ロッド55は、それぞれ作業床20で定尺の鋼管を接続して延長することができる。
【0055】
掘削装置60においては、スリーブ67はコイルばね6Aによって本体61から離れるように掘削方向に付勢され、スリーブ67は本体61に対して遠位にある。このため、コアビット63の基部から先端方向に所定範囲はスリーブ67のコアビット格納部67bに格納され、コアビット63はコーンプローブ51及びCPTロッド50を挿通できるように開いた状態にある。
【0056】
海底201から所定の深さに固い地盤210が存在している。コーンプローブ51がこの固い地盤210に突き当たると、貫入が妨げられる。固い地盤210は、コーンプローブ51が貫入することができず、掘削装置60のスリーブ67の先端のクラウンビット68によっては十分に掘削することができないような固さである。
【0057】
図6(b)に示すように、コーンプローブ51が固い地盤210に突き当たって貫入が妨げられると、CPT調査を中断し、CPT押込機27はCPTロッド50の押し込みを中断する。CPT押込機27によるCPTロッド50の把持を解放してもよい。そして、図示しない作業床20に設けられた掘削駆動機25によって掘削ロッド55及び掘削装置60を回転駆動して推進する。掘削装置60においては、
図3に示したようにスリーブ67は本体に対して遠位にあり、コアビット63はスリーブ67に格納されている。このため、掘削装置60は、スリーブ67の先端に備えるクラウンビット68のみを使用して地盤200を掘削する。クラウンビット68のみでは固い地盤210の掘削には不足するため、掘削装置60の推進は固い地盤210に達すると阻まれる。
【0058】
図6(c)及び
図7(d)は、
図5(b)に対応している。
図6(c)に示すように、固い地盤210によって掘削装置60のクラウンビット68による推進が妨げられると、掘削駆動機25による掘削ロッド55及び掘削装置60の回転駆動は中断される。CPT押込機27によってCPTロッド50が所定の長さにわたって回収され、コーンプローブ51が掘削装置60内に引き込まれる。CPTロッド50はCPT押込機27によって把持され、掘削装置60においてコーンプローブ51がコアビット63よりも回収方向に位置するように、コーンプローブ51は固い地盤210から所定の高さに留置される。
【0059】
その後で、掘削駆動機25によって掘削ロッド55を押圧して掘削装置60を進めると、掘削装置60は固い地盤210に突き当たっているため、固い地盤210からの効力が本体61とスリーブ67とを互いに離れるように付勢するコイルばね6Aの付勢力に打ち勝ち、本体61はスリーブ67に対して押し込まれ、スリーブ67は本体61に対して近位に位置するようになる。このとき、コアビット63はスリーブ67のコアビット案内部67cによって閉じるように案内され、コアビット63の先端は環状のクラウンビット68の開口6B内に集まり、クラウンビット68とともに掘削ビットを構成する。このような掘削ビットにおいては、クラウンビット68及びコアビット63が共働することにより優れた掘削能力を発揮し、掘削駆動機25によって回転駆動されて固い地盤210も掘削することを可能にする。
【0060】
図7(d)に示すように、掘削装置60のクラウンビット68及びコアビット63によって固い地盤210が掘削され、掘削装置60が固い地盤210を突き抜けて地盤200に達すると、固い地盤210からの抗力がなくなり、スリーブ67が本体61から離れるように掘削方向に付勢するコイルばね6Aの付勢力によってスリーブ67は本体61に対して遠位にあるようになる。コアビット63の基部から先端方向に所定範囲は、スリーブ67のコアビット格納部67bに格納されて開くことができるようになる。
【0061】
図7(e)及び
図7(f)は、
図5(c)に対応している。
図7(e)に示したように固い地盤210から所定の高さの位置で留置されていたコーンプローブ51は、CPT押込機27によってCPTロッド50とともに掘削方向に進められ、掘削ロッド55及び掘削装置60を通って地盤200に導かれる。
図7(f)に示すように、コーンプローブ51が地盤200の深さ方向に貫入され、中断していたCPT調査は再開される。
【0062】
(第2の実施の形態)
図8及び
図9は、第2の実施の形態の掘削装置70の構造を説明する図である。
図8はCPT調査のために掘削装置70からコーンプローブ51を突き出している状態を示し、
図9は固い地盤210の掘削のために掘削装置70内にコーンプローブ51を引き込んで開口7A内にコアビット74が位置するようにした状態を示している。なお、
図8及び
図9において、それぞれ(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は断面図である。
図8(c)の断面図は
図8(a)及び
図8(b)における切断線VIIIC-VIIICによるものであり、
図9(c)の断面図は
図9(a)及び
図9(b)における切断線IXC-IXCによるものである。
【0063】
図8を参照すると、掘削装置70は、コーンプローブ51及びCPTロッド50を取り囲んで挿通可能に支持する管状の形状の本体71を有している。本体71の先端には、環状の形状を有するクラウンビット78が取り付けられている。クラウンビット78の開口7Aには、コーンプローブ51及びCPTロッド50が挿通可能である。クラウンビット78の掘削方向に対向する面には、軸の周りに略回転対称な位置に4個の掘削チップ79が配置されている。クラウンビット78及び掘削チップ79は、超硬合金などで構成されてもよい。
【0064】
また、本体71の先端近くの軸を挟んで対向する位置には、翼状の形状を有する一対のコアビット74が取り付けられている。これらのコアビット74は、軸を含む平面内で回転可能であるように、その基部が本体71の先端から回収方向に所定範囲に設けられたコアビット支持部73の枠内でヒンジ75によって支持されている。コアビット支持部73は、コアビット74が掘削方向に向けて延びるように開いてコアビット支持部73に格納された格納位置と、コアビット74が軸に向かうように閉じて開口7A内で掘削方向に対向する掘削位置(
図9(c)を参照)との間にコアビット74が回転可能な範囲を制限している。コアビット支持部73のヒンジ75の軸の周囲には付勢手段としてコイルばね76が巻回され、コアビット74が格納位置から掘削位置に向けて回転するように付勢している。コアビット74には、掘削位置において掘削方向に対向する面に図示しない掘削チップが取り付けられている。コアビット74及び掘削チップは、超硬合金などで構成されてもよい。
【0065】
図8においては、コアビット74はコアビット支持部73に格納された格納位置にある。コーンプローブ51及びCPTロッド50が本体71内を先端に向けて進むと、付勢されて掘削位置にあるコアビット74は、コーンプローブ51によって押し開かれ、コーンプローブ51又はCPTロッド50の側面によって支持されてコアビット支持部73に格納された格納位置にあるように維持される。
【0066】
コアビット74が格納位置にあるときには、コアビット74はコアビット支持部73に格納されているため、掘削方向にはクラウンビット78のみが対向している。クラウンビット78はコーンプローブ51又はCPTロッド50を取り囲むようにコーンプローブ51又はCPTロッド50の周囲に位置している。このため、CPT調査をしながらコーンプローブ51又はCPTロッド50の周囲の掘削を進めることができる。例えば、地盤の抵抗が大きくなってCPT調査の続行が困難になったときに、コーンプローブ51又はCPTロッド50の周囲の地盤を掘削して地盤の抵抗を減少させることができる。
【0067】
図9においては、コーンプローブ51及びCPTロッド50は本体71に引き込まれている。本体71から突き出していたコーンプローブ51及びCPTロッド50が本体71内に引き込まれると、掘削位置に向けて回転するように付勢されているコアビット74は引き込まれるコーンプローブ51にしたがって閉じられる。そして、コーンプローブ51及びCPTロッドが本体71に引き込まれているときには、コアビット74は開口7A内で掘削方向に対向する掘削位置にあるように付勢される。
【0068】
コアビット74が掘削位置にあるときには、コアビット74は閉じて開口7A内で実質的な範囲を占め、クラウンビット78とともに掘削方向に対向する。したがって、コアビット74がクラウンビット78とともに土壌を掘削するための掘削ビットを構成することを可能にしている。
【0069】
このような掘削装置70は、掘削方向に延びる掘削ロッド55と同軸上にあるように、掘削ロッド55の先端に取り付けられる。本体71は、基部に設けられたねじ部72によって、掘削ロッド55の先端にねじ接合されている。掘削装置70は、鉄鋼などの金属で構成されてもよい。
【0070】
第2の実施の形態の掘削装置70は、
図8に示したように先端にコーンプローブ51を取り付けたCPTロッド50を挿通してCPT調査を可能としている。また、本体71の先端に環状のクラウンビット78を備えるため、コーンプローブ51又はCPTロッド50の周囲の土壌の掘削を可能にしている。
図9に示したようにコーンプローブ51が本体71に引き込まれたときには、コアビット74はクラウンビット78の開口7A内において掘削方向に対向するような掘削位置にあるように付勢されているため、掘削方向に対向するクラウンビット78及びコアビット74で掘削ビットを構成することにより、優れた掘削能力を発揮することができる。
【0071】
したがって、クラウンビット78は掘削位置にあるコアビット74と共働することによって、固い地盤210に対しても掘削を進めることができる。また、コアビット74は付勢によって引き込まれるコーンプローブ51にしたがって閉じられるため、コアビット74はコーンプローブ51を覆いながら開口7A内に格納される。コアビット74は引き込まれるコーンプローブ51にしたがい土壌の侵入に妨げることなく掘削位置に到達することができるため、コアビット74の開閉の安定した動作が確保される。なお、掘削装置70は2枚のコアビット74を備えていたが、3枚以上のコアビット74を備えるようにしてもよい。
【0072】
図10は、第2の実施の形態の海底地盤調査方法を概略的に説明する図である。
図10においては、
図1に示した海底地盤調査装置10の櫓12及び作業床20を省略している。
【0073】
図10(a)に示すように、コーンプローブ51が先端に取り付けられたコーンプローブ51は、ガイド管16、掘削ロッド55及び掘削ロッド55の先端に取り付けられた掘削装置70に挿通されて海底201の地盤200に導かれる。そして、図示しない作業床20のCPT押込機27によって、コーンプローブ51が所定の速度で地盤200に貫入するように深さ方向に押し込まれる。海底201から所定の深さには、固い地盤210が存在している。この固い地盤210は、コーンプローブ51が貫入することができず、掘削装置70の本体71の先端に取り付けられたクラウンビット78によっては十分に掘削することができないような固さを有している。
【0074】
このような固い地盤210にコーンプローブ51が達し、CPT調査が阻まれたときには、CPT調査は中断される。図示しない作業床20の掘削駆動機25は、掘削装置70を回転駆動してクラウンビット78によって土壌を掘削し、掘削装置70が固い地盤210に達するまで推進する。掘削装置70が固い地盤210に達すると、クラウンビット78では固い地盤210の掘削には不足するため、掘削装置70の推進は阻まれる。掘削装置70の推進が阻まれると、掘削装置70の回転駆動を停止し、作業床20のCPT押込機27によって固い地盤210に達しているCPTロッド50を所定の長さにわたって回収し、コーンプローブ51を掘削装置70内に引き戻すようにする。このとき、掘削装置70において格納位置にあるコアビット74は、付勢力によりコーンプローブ51にしたがって閉じて掘削装置70の本体71内の開口7A内で掘削方向に対向する掘削位置にされる。
【0075】
図10(b)に示すように、CPTロッド50をCPT押込機27によって把持してコーンプローブ51を固い地盤210から所定の高さに留置したままで、掘削駆動機25は先端に掘削装置70を取り付けた掘削ロッド55に押圧力を印加してさらに進める。このとき、掘削装置70において、掘削位置にあるコアビット74はクラウンビット78とともに掘削方向に対向し、土壌を掘削するための掘削ビットを構成する。このような掘削ビットにおいては、クラウンビット78及びコアビット74が共働することにより優れた掘削能力を発揮し、掘削駆動機25によって回転駆動されることにより固い地盤210も掘削することを可能にする。
【0076】
図10(c)に示すように、クラウンビット78及びコアビット74が協働して固い地盤210を掘削し、掘削装置70が固い地盤210を突き抜けると、
図10(b)において固い地盤210から所定の高さに留置されていたコーンプローブ51は、CPT押込機27によって進められてCPTロッド50とともに掘削ロッド55及び掘削装置70を通り、固い地盤210を突き抜けて地盤200に導かれる。このとき、掘削装置70において掘削位置にあったコアビット74は開口7Aから突き出すコーンプローブ51によって押し開かれ、コアビット支持部73に格納された格納位置にされる。そして、コーンプローブ51が所定の速度で地盤に貫入するように深さ方向に押し込まれ、CPT調査が再開される。
【0077】
(変形例)
図11及び
図12は、第2の実施の形態の変形例の掘削装置70の構造を説明する図である。第2の実施の形態の掘削装置70においては格納位置のコアビット74はコアビット支持部73に格納されて土壌の掘削には寄与しなかったのに対し、変形例の掘削装置70において格納位置のコアビット74は先端が本体71の先端から突出してクラウンビット78とともに土壌の掘削に寄与する点において相違している。変形例の他の構成は第2の実施の形態と同様であるため、対応する構成部材には共通する参照番号を付すことにする。
【0078】
図11はCPT調査のために変形例の掘削装置70からコーンプローブ51を突き出した状態を示し、
図12は固い地盤210の掘削のために変形例の掘削装置70内にコーンプローブ51を引き込んで開口7A内にコアビット74が位置するようにした状態を示している。なお、
図11及び
図12において、それぞれ(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は断面図である。
図11(c)の断面図は11(a)及び
図11(b)における切断線XIC-XICによるものであり、
図12(c)の断面図は
図12(a)及び
図12(b)における切断線XIIC-XIICによるものである。
【0079】
図11を参照すると、変形例の掘削装置70は、コーンプローブ51及びCPTロッド50を取り囲んで挿通可能に支持する管状の形状の本体71を有している。本体71の先端には、環状の形状を有するクラウンビット78が取り付けられている。クラウンビット78の開口7Aには、コーンプローブ51及びCPTロッド50が挿通可能である。クラウンビット78の掘削方向に対向する面には、軸の周りに略回転対称な位置に4個の掘削チップ79が配置されている。クラウンビット78及び掘削チップ79は、超硬合金などで構成されてもよい。
【0080】
また、本体71の先端近くの軸を挟んで対向する位置には、翼状の形状を有する一対のコアビット74が取り付けられている。これらのコアビット74は、軸を含む平面内で回転可能であるように、その基部が本体71の先端から回収方向に所定範囲に設けられたコアビット支持部73の枠内でヒンジ75によって支持されている。コアビット支持部73は、コアビット74が掘削方向に向けて延びるように開いてコアビット支持部73に格納された格納位置と、コアビット74が軸に向かうように閉じて開口7A内で掘削方向に対向する掘削位置(
図9(c)を参照)との間にコアビット74が回転可能な範囲を制限している。変形例においては、コアビット74は格納位置においても全体がコアビット支持部73に格納されることはなく、コアビット74の先端は掘削方向にコアビット支持部73の外に延び、本体71の先端に取り付けられたクラウンビット78の開口7Aから掘削方向に突き出している。コアビット支持部73のヒンジ75の軸の周囲には付勢手段としてコイルばね76が巻回され、コアビット74が格納位置から掘削位置に向けて回転するように付勢している。変形例のコアビット74には、掘削位置において掘削方向に対向する面とともに、格納位置においてクラウンビット78の開口7Aから突き出す先端にも図示しない掘削チップが取り付けられている。コアビット74及び掘削チップは、超硬合金などで構成されてもよい。
【0081】
図11においては、コアビット74はコアビット支持部73に格納された格納位置にある。コーンプローブ51及びCPTロッド50が本体71内を先端に向けて進むと、付勢されて掘削位置にあるコアビット74は、コーンプローブ51によって押し開かれ、コーンプローブ51又はCPTロッド50の側面によって支持されてコアビット支持部73に格納された格納位置にあるように維持される。
【0082】
コアビット74が格納位置にあるときには、変形例のコアビット74はクラウンビット78の開口7Aから先端が突き出しているため、掘削方向にはクラウンビット78とともにコアビット74が対向している。クラウンビット78及びコアビット74はコーンプローブ51又はCPTロッド50を取り囲むようにコーンプローブ51又はCPTロッド50の周囲に位置している。このため、CPT調査をしながらコーンプローブ51又はCPTロッド50の周囲の掘削を進めることができる。例えば、地盤の抵抗が大きくなってCPT調査の続行が困難になったときに、コーンプローブ51又はCPTロッド50の周囲の地盤を掘削して地盤の抵抗を減少させることができる。
【0083】
図12においては、コーンプローブ51及びCPTロッド50は本体71に引き込まれている。本体71から突き出していたコーンプローブ51及びCPTロッド50が本体71内に引き込まれると、掘削位置に向けて回転するように付勢されているコアビット74は引き込まれるコーンプローブ51にしたがって閉じられる。そして、コーンプローブ51及びCPTロッドが本体71に引き込まれているときには、コアビット74は開口7A内で掘削方向に対向する掘削位置にあるように付勢される。
【0084】
コアビット74が掘削位置にあるときには、コアビット74は閉じて開口7A内で実質的な範囲を占め、クラウンビット78とともに掘削方向に対向する。したがって、したがって、コアビット74がクラウンビット78とともに土壌を掘削するための掘削ビットを構成することを可能にしている。
【0085】
このような変形例の掘削装置70は、掘削方向に延びる掘削ロッド55と同軸上にあるように、掘削ロッド55の先端に取り付けられる。本体71は、基部に設けられたねじ部72によって、掘削ロッド55の先端にねじ接合されている。掘削装置70は、鉄鋼などの金属で構成されてもよい。
【0086】
変形例の掘削装置70は、
図11に示したように先端にコーンプローブ51を取り付けたCPTロッド50を挿通してCPT調査を可能としている。また、変形例の掘削装置70は、コーンプローブ51又はCPTロッドを取り囲むように配置されたクラウンビット78及び格納位置のコアビット74によって、コーンプローブ51又はCPTロッド50の周囲の土壌の掘削を可能としている。
図12に示したようにコーンプローブ51が本体71に引き込まれたときには、コアビット74はクラウンビット78の開口7A内において掘削方向に対向するような掘削位置にあるように付勢されているため、掘削方向に対向するクラウンビット78及びコアビット74で掘削ビットを構成することにより、優れた掘削能力を発揮することができる。
【0087】
したがって、クラウンビット78は掘削位置にあるコアビット74と共働することによって、固い地盤210に対しても掘削を進めることができる。また、コアビット74は付勢によって引き込まれるコーンプローブ51にしたがって閉じられるため、コアビット74はコーンプローブ51を覆いながら開口7A内に格納される。コアビット74は引き込まれるコーンプローブ51にしたがい土壌の侵入に妨げることなく掘削位置に到達することができるため、コアビット74の開閉の安定した動作が確保される。なお、掘削装置70は2枚のコアビット74を備えていたが、3枚以上のコアビット74を備えるようにしてもよい。
【0088】
以上説明したような本実施の形態の掘削装置及び海底地盤調査方法によると、海底201の地盤200をCPTにより調査するときにコーンプローブ51の貫入が阻まれるような固い地盤210に突き当たっても、掘削装置の先端のクラウンビットと開口内に位置するコアビットとが協働することにより固い地盤210を取り除くことができる。したがって、コーンプローブ51を取り付けたCPTロッド50や掘削ビットを取り付けた掘削ロッド55の回収や設置を繰り返し行う必要なく調査を継続することができる。
【0089】
このため、本実施の形態によると、調査期間が短縮できるので、支援船の使用日数の短縮による費用削減及び調査作業人件費、調査機器リース費用の削減ができる。また、調査期間が短縮できるため、海象の急変などには対応しやすくなり、調査の安全性が向上する。さらに、固い地盤210に遭遇した場合での、CPT調査から地盤の掘削排除への作業変更が迅速にでき、必要に応じて掘削ピッチを短くして、その都度CPT調査により掘削地盤の強度を確認が素早くできる。これにより、固い地盤でもほぼ連続的に地盤調査ができる。
【0090】
なお、本実施の形態の海底地盤調査方法は、櫓12に支持された海水面上の作業床20について説明したが、これに限定されない。例えば、作業床20は、自己昇降式作業台船(SEP)に設置してもよい。また、本実施の形態においては、海底地盤調査方法について説明したが、これに限定されない。本実施の形態は、海底地盤調査方法に限らず、陸上の地盤調査方法にも適用することができる。この場合、作業床20は地上に設けることになり、作業床20と海底201とを結んでいたガイド管16は不要になる。
【0091】
(比較例)
図13は、比較例の掘削装置及び海底地盤調査方法を説明する図である。
図13においては、
図6及び
図7と同様に、
図1に示した海底地盤調査装置10の架台11及び櫓12を省略し、作業床20の構成は掘削駆動機25及びCPT押込機27のみを示している。
【0092】
図13(a)に示すように、CPTロッド50の先端に取り付けられたコーンプローブ51は、海水面上の作業床からガイド管16通って海底の地盤200に導かれ、CPT押込機27によって所定の速度で押し込まれている。固い地盤210によってコーンプローブ51が阻まれたため、PCT調査は中断している。
【0093】
図13(b)に示すように、先端にコーンプローブ51を取り付けたCPTロッド50は作業床に完全に回収される。そして、底面の全体に超硬合金などによる掘削ビットが形成されたノンコア型ビット80を先端に取り付けた掘削ロッド55を掘削駆動機25によって回転駆動して推進し、固い地盤210を取り除く。
【0094】
ノンコア型ビット80によって固い地盤210を取り除いた後、先端にノンコア型ビット80を取り付けた掘削ロッド55は作業床に完全に回収される。その後で、先端にコーンプローブ51が取り付けられたCPTロッド50が、ノンコア型ビット80の掘削孔を通して固い地盤210の下の地盤200まで導かれ、CPT調査が再開される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
この発明は、CPTによる地盤の調査に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
10 海底地盤調査装置
11 架台
12 櫓
16 ガイド管
20 作業床
25 掘削駆動機
27 CPT押込機
50 CPTロッド
51 コーンプローブ
55 掘削ロッド
60 掘削装置
61 本体
63 コアビット
67 スリーブ
68 クラウンビット
69 掘削チップ
70 掘削装置
71 本体
74 コアビット
78 クラウンビット
200 地盤
201 海底
210 固い地盤