(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173157
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】フィルムロール、その製造方法、偏光板、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
B65H 75/10 20060101AFI20231130BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231130BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231130BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231130BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20231130BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B65H75/10
G02B5/30
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/02
G09F9/30 349E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085208
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾山 真也
(72)【発明者】
【氏名】増田 修
(72)【発明者】
【氏名】金子 由紀
(72)【発明者】
【氏名】南條 崇
【テーマコード(参考)】
2H149
3F058
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB11
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA08X
2H149FA12X
2H149FA63
2H149FA68
2H149FA69
2H149FB05
2H149FD31
2H149FD47
3F058AA03
3F058AB01
3F058AC00
3F058BB19
3F058CA00
3F058CA06
3F058DA04
3F058DB03
3F058DB05
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF15
3K107FF16
5C094AA43
5C094BA27
5C094BA31
5C094BA43
5C094ED14
5C094JA08
5C094JA20
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、輸送時に巻きズレがなく、長期保管時においても貼り付き故障がないフィルムロール、その製造方法、偏光板、及び表示装置を提供することである。
【解決手段】ナーリング加工部を有さないフィルムロールであって、前記フィルムロールの幅手方向側面部にて測定した、巻き芯周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをX[μm]とし、巻き外周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをY[μm]としたとき、前記Xと前記Yが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とするフィルムロール。
式(1) X<Y
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナーリング加工部を有さないフィルムロールであって、
前記フィルムロールの幅手方向側面部にて測定した、巻き芯周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをX[μm]とし、巻き外周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをY[μm]としたとき、前記Xと前記Yが下記式(1)の関係を満たす
ことを特徴とするフィルムロール。
式(1) X<Y
【請求項2】
前記X[μm]と前記Y[μm]が、下記式(2)及び下記式(3)を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルムロール。
式(2)0.15< X <0.40
式(3) 1<(Y/X)≦3
【請求項3】
ナーリング加工部を有さないフィルムロールを製造するフィルムロールの製造方法であって、
前記フィルムロールの幅手方向側面部にて測定した、前記巻き芯周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをX[μm]とし、前記巻き外周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをY[μm]としたとき、前記Xと前記Yが下記式(1)の関係を満たすように調整する
ことを特徴とするフィルムロールの製造方法。
式(1) X<Y
【請求項4】
前記X[μm]と前記Y[μm]が、下記式(2)及び下記式(3)を満たすように調製する
ことを特徴とする請求項3に記載のフィルムロールの製造方法。
式(2)0.15< X <0.40
式(3) 1<(Y/X)≦3
【請求項5】
前記巻き芯周辺部のフィルムタッチ圧を6~55[N/m]の範囲内、巻き中央部のフィルムタッチ圧を4~40[N/m]の範囲内、及び前記巻き外周辺部のフィルムタッチ圧を3~30[N/m]の範囲内にて調整する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のフィルムロールの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のフィルムロールの一部のフィルムが、具備されている
ことを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のフィルムロールの一部のフィルムが、具備されている
ことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムロール、その製造方法、偏光板、及び表示装置に関する。より詳しくは、輸送時に巻きズレがなく、長期保管時においても貼り付き故障がないフィルムロール等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビの熾烈な価格競争に伴い、偏光板メーカーにて切り替えロス削減などのコスト削減施策が検討されており、それに応えるべく偏光板に用いるフィルムの長尺化が進んできている。
【0003】
フィルムは、長尺化することで、繋ぎロス、検査工数、輸送、副資材等様々な観点でコスト削減が期待でき、当該フィルムは、通常、保管・搬送の利便性から製造された後にロール状に巻き取られる。
【0004】
しかしながら、特にフィルムを長尺巻きにしたフィルムロールは、特に製品輸送時に巻きズレが起こることがあり、当該フィルムロールを長期保管するとフィルム間の空気抜けによる貼り付き故障が起こるという問題がある。
【0005】
上記の問題を解決する手段としては、プロテクトフィルムと一緒に巻き取る手段が考えられるが、プロテクトフィルムが廃棄物となってしまう問題がある。
【0006】
廃棄物を出さずに上記の問題を解決する手段としては、あらかじめフィルムの端部にナーリング加工を施し、巻き取り時に当該フィルム間に空気を取り込むことで適度な厚さの空隙層(「空気層」ともいう。)を形成し、当該フィルムどうしの貼りつきを抑制する手段が考えられる。
しかしながら、上記のナーリング加工による手段は、プロテクトフィルムと一緒に巻き取る手段と比べて貼りつきを抑制する効果が薄く、特に巻き外側部分において経時でフィルム間の空気が抜けることによって貼り付き故障が起こりやすくなるという問題がある。
また、上記の貼り付き故障抑制のために空隙層を厚く形成すると製品輸送時に巻きズレが起こるという問題がある。
【0007】
特許文献1では、フィルムの巻き取り時に、巻取り張力の大きさとフィルム端部のナーリングの高さをフィルムロールの巻径に対応して変化させることで、当該フィルム間に取り込む空気の量を一定にし、適度な厚さの空気層を形成する手段が開示されているが、上記の問題を解決するためには改善の余地が残されている。
【0008】
なお、本明細書において「空隙層」とは、フィルムロールにおいて隣り合うフィルムの対向する表面間のすき間により形成される層であって、空気、又は空気以外のその他の物質(例えば不活性ガス等の気体)が存在し得る層のことをいう。厳密には、この「空隙層」中の空気によって構成される層を「空気層」というが、両者を区別しないことによって特に本発明に影響を与えない場合には当該「空気層」を「空隙層」と表記するものとする。
また、隣り合うフィルムがお互いに一方のフィルム表面に存在する微細な凹凸形状の凸部が、対向する他方のフィルム表面に所どころで接触している形態も空隙層の一形態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、輸送時に巻きズレがなく、長期保管時においても貼り付き故障がないフィルムロール、その製造方法、偏光板、及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、フィルムロールにナーリング加工を施さず、巻き外周辺部のフィルム間の空隙層の厚さを巻き外周辺部の空隙層の厚さより厚くすることによって上記課題を解決できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0012】
1.ナーリング加工部を有さないフィルムロールであって、前記フィルムロールの幅手方向側面部にて測定した、巻き芯周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをX[μm]とし、巻き外周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをY[μm]としたとき、前記Xと前記Yが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とするフィルムロール。
【0013】
式(1) X<Y
【0014】
2.前記X[μm]と前記Y[μm]が、下記式(2)及び下記式(3)を満たすことを特徴とする第1項に記載のフィルムロール。
【0015】
式(2)0.15< X <0.40
式(3) 1<(Y/X)≦3
【0016】
3.ナーリング加工部を有さないフィルムロールを製造するフィルムロールの製造方法であって、前記フィルムロールの幅手方向側面部にて測定した、前記巻き芯周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをX[μm]とし、前記巻き外周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをY[μm]としたとき、前記Xと前記Yが下記式(1)の関係を満たすように調整することを特徴とするフィルムロールの製造方法。
【0017】
式(1) X<Y
【0018】
4.前記X[μm]と前記Y[μm]が、下記式(2)及び下記式(3)を満たすように調製することを特徴とする第3項に記載のフィルムロールの製造方法。
【0019】
式(2)0.15< X <0.40
式(3) 1<(Y/X)≦3
【0020】
5.前記巻き芯周辺部のフィルムタッチ圧を6~55[N/m]の範囲内、巻き中央部のフィルムタッチ圧を4~40[N/m]の範囲内、及び前記巻き外周辺部のフィルムタッチ圧を3~30[N/m]の範囲内にて調整することを特徴とする第3項又は第4項に記載のフィルムロールの製造方法。
【0021】
6.第1項又は第2項に記載のフィルムロールの一部のフィルムが、具備されていることを特徴とする偏光板。
【0022】
7.第1項又は第2項に記載のフィルムロールの一部のフィルムが、具備されていることを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記手段により、輸送時に巻きズレがなく、長期保管時においても貼り付き故障がないフィルムロール、その製造方法、偏光板、及び表示装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0024】
本発明のフィルムロールは、ナーリング加工を施さず、巻き外周辺部のフィルム間の空隙層の厚さを巻き芯周辺部の空隙層の厚さより厚くすることによって、輸送時にも巻きズレを起こさず、長期保管時においても貼り付き故障を防止することができる。
【0025】
従来のようにナーリング加工を施したフィルムロールは、ナール部分のみでフィルムを支えることとなるため、巻きズレを防止するための規制力がナール部分にかかることになり、フィルムにかかる応力が偏ることで当該フィルム間の空気抜けの量が特に巻き外側で多くなることにより空隙層の厚さが不均一になるため、長期保管時において貼り付き故障が起きてしまう。
【0026】
これに対して、本発明のフィルムロールは、ナール加工部分がなく、フィルムどうしの微小な接触面全体で当該フィルムを支え、かつ、巻き芯側よりも巻き外側の空隙層を厚くしているため、長期保管時に当該フィルム間の空気抜けの量が巻き外側で多くなったとしても空隙層の厚さが不均一になりづらく、フィルムにかかる応力が均一になることで貼り付き故障がなくすことができたと推察される。
【0027】
上記の「フィルムどうしの微小な接触面」について説明する。
本発明のフィルムロールはナーリング加工をしていないが、通常フィルム表面には、ナノメートルサイズの微細な凹凸形状を有しているため、隣り合うフィルムの対向する表面の多数の凸部が所どころで、お互いに他方の表面に接触し、当該凸部の微小な接触面の全体で当該フィルムを支えている。
【0028】
すなわち、例えば凸部の一部が接触しているため、当該フィルムどうしは、空隙層例えば空気層のみによって支えられているのではなく、当該微小な凹凸による複数の接触点によっても支えられているような場合もある。
【0029】
ここで、フィルムロールの輸送時に当該フィルムロール幅手方向(巻き芯の長軸方向)に働く慣性力について考える。
【0030】
図1は、巻き芯側に近いフィルムにかかるフィルムロール幅手方向への慣性力の概念図であり、
図2は、巻き外側に近いフィルムにかかるフィルムロール幅手方向への慣性力の概念図である。
【0031】
巻き芯をRとし、フィルムロール(30)に巻かれている巻き芯(R)側に近いフィルムをF
inとし、巻き外側に近いフィルムをF
outとすると、
図1及び
図2を見てわかるように、巻き芯(R)側に近いフィルム(F
in)には、当該フィルム(F
in)より巻き外側に巻かれているフィルム層(L
1)の質量の分の慣性力がかかるが、巻き外側に近いフィルム(F
out)には、当該フィルム(F
out)より巻き外側に巻かれているフィルム層(L
2)の質量の分の慣性力しかかからない。
【0032】
上記のことより、巻き芯(R)側に近いフィルム(Fin)には巻き外側に近いフィルム(Fout)よりも大きい質量分の慣性力が働くことになり、慣性力は質量に比例するため、当該フィルム(Fin)には当該フィルム(Fout)よりも大きい慣性力が働くことになり、巻き芯側で巻きズレが起こりやすくなると考えられる。
【0033】
これに対して、本発明のフィルムロールは、巻き外周辺部のフィルム間の空隙層の厚さを巻き芯周辺部のフィルム間の空隙層の厚さより厚くするため、巻き外周辺部よりも巻き芯周辺部の方がフィルムどうしに働く摩擦力が相対的に大きくなることで上記のように巻き芯側に大きく働く慣性力とのつり合いがとれ、上記のように巻き芯側で巻きズレが起こりやすくなることを抑制することができたと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】巻き芯側に近いフィルムにかかるフィルムロール幅手方向への慣性力の概念図
【
図2】巻き外側に近いフィルムにかかるフィルムロール幅手方向への慣性力の概念図
【
図3】フィルムロールの幅手方向側面部と撮像装置との位置関係を表す概略図
【
図4】フィルムロールの幅手方向側面部を当該側面部に垂直な面から見た時の概略図
【
図6】巻き芯周辺部、巻き中央部及び巻き外周辺部を説明するためのフィルムロールの幅手方向側面部の一部の簡略概念図
【
図9】溶液流延製膜法の製造工程の流れを示すフローチャート
【
図10】溶液流延製膜法によってフィルムを製造する装置の概略図
【
図11】テンター延伸装置の内部構成を模式的に表す平面図
【
図12】テンター延伸装置のカバーを取り外した状態を表す平面図
【
図13】テンター延伸装置内の3つのゾーンを正面から見たときのノズルとヒーター設置部分の概略図
【
図14】テンター延伸装置内の3つのゾーンの側面図
【
図15】フィルムが巻き取られる工程と、巻き取られた後の本発明のフィルムロールの断面を示す概略図
【
図16】溶融流延製膜法の製造工程の流れを示すフローチャート
【
図17】溶融流延製膜法によってフィルムを製造する装置の概略図
【
図18】本発明の液晶表示装置の構成の一例を示した模式図
【
図19】フィルムロールの幅手方向の端面の左右のズレ量を表す概念図
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のフィルムロールは、ナーリング加工部を有さないフィルムロールであって、前記フィルムロールの幅手方向側面部にて測定した、巻き芯周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをX[μm]とし、巻き外周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをY[μm]としたとき、前記Xと前記Yが前記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
上記の特徴により、本発明の課題を解決できる。
【0036】
また、本発明のフィルムロールの製造方法は、ナーリング加工部を有さないフィルムロールを製造するフィルムロールの製造方法であって、前記フィルムロールの幅手方向側面部にて測定した、前記巻き芯周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをX[μm]とし、前記巻き外周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをY[μm]としたとき、前記Xと前記Yが前記式(1)の関係を満たすように調整することを特徴とする。
上記二つの特徴は、下記各実施形態(態様)に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0037】
本発明の実施態様としては、前記X[μm]と前記Y[μm]が、前記式(2)及び前記式(3)を満たすことが、輸送時の巻きズレ防止及び長期保管時の貼り付き故障抑制の観点から好ましい。
【0038】
前記X[μm]と前記Y[μm]が、前記式(2)及び前記式(3)を満たすように調整することが輸送時の巻きズレ防止及び長期保管時の貼り付き故障抑制の観点から好ましい。
【0039】
前記巻き芯周辺部のフィルムタッチ圧を6~55[N/m]の範囲内、巻き中央部のフィルムタッチ圧を4~40[N/m]の範囲内、及び前記巻き外周辺部のフィルムタッチ圧を3~30[N/m]の範囲内にて調整することが輸送時の巻きズレ防止及び長期保管時の貼り付き故障抑制から好ましい。
【0040】
本発明のフィルムロールの一部のフィルムは、偏光板に具備されることで好適に用いることができる。
【0041】
本発明のフィルムロールの一部のフィルムは、表示装置に具備されることで好適に用いることができる。
【0042】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0043】
1.フィルムロール
(1.1)フィルムロールの概要
本発明のフィルムロールは、ナーリング加工部を有さないフィルムロールであって、前記フィルムロールの幅手方向側面部にて測定した、巻き芯周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをX[μm]とし、巻き外周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをY[μm]としたとき、前記Xと前記Yが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
【0044】
式(1) X<Y
【0045】
本発明のフィルムロール(「フィルムロール」とは、ロール状に巻いたフィルムをいう。)は、巻き外周辺部のフィルム間の空隙層の厚さを巻き芯周辺部の空隙層の厚さより厚くするため、巻き芯側のフィルムに働く摩擦力が大きくなり、輸送時の、特に巻き芯周辺部の巻きズレを防止することができる。
【0046】
また、ナール部分がなく、前述のようにフィルムどうしの微小な接触面全体で当該フィルムを支え、かつ、巻き芯側よりも巻き外側の空隙層を厚くしているため、長期保管時に当該フィルム間の空気抜けの量が巻き外側で多くなったとしても空隙層の厚さが不均一にならず、フィルムにかかる応力が均一になることで貼り付き故障をなくすことができる。
【0047】
本発明の実施態様としては、前記X[μm]と前記Y[μm]が、前記式(2)及び前記式(3)を満たすことが輸送時の巻きズレ防止及び長期保管時の貼り付き故障抑制の観点から好ましい。
【0048】
(1.2)フィルム間の空隙層
(1.2.1)空隙層の厚さ制御手段
本発明のフィルムロールは、適度な空気の量を取り込むための空隙層を巻き外周辺部で厚くすることで、相対的にフィルムどうしの巻き芯周辺部での摩擦力を高め、輸送時の巻きズレ防止及び長期保管時の貼り付き故障抑制の効果を高める。
また、巻き外の部分でより多くの空気が抜けたとしてもフィルムロール全体での空隙層の厚さの偏りを小さく抑え、均一な空隙層をフィルム間に形成する。
【0049】
このような手段としては、例えばタッチローラーによってフィルムタッチ圧を変化させる手段や、巻取り張力、巻取り速度及びローラーだき角等を変化させる手段等が挙げられる。
上記のタッチローラーは、複数あってもよく、表面加工としてクロムコーディングされていてもよい。
また、上記タッチローラーには、弾性ローラー等を用いることもできる。
【0050】
(1.2.2)空隙層の厚さ算出方法
図3は、フィルムロールの幅手方向側面部と撮像装置との位置関係を表す概略図である。
図3のように、撮像装置(E)は、巻き芯(R)に巻かれたフィルムロール(30)の幅手方向側面側に設置される。
なお、
図3におけるTDは、フィルムロールの幅手方向である。
【0051】
以下、上記撮像装置によるフィルムロールの幅手方向側面部の撮影方法の一例と空隙層の厚さの算出方法について説明する。
【0052】
撮像装置の一部分である撮像ユニット(U)にて、フィルムロールの幅手方向側面部上の任意の点(P)を中心としてフィルムロールの幅手方向側面部を撮影し、フィルム間の空隙を算出するための画像データを取得する。
【0053】
図4は、フィルムロールの幅手方向側面部を当該側面部に垂直な面から見た時の概略図である。
【0054】
ここで、
図4のように、巻き芯表面(S
0)からフィルムロールの最外層のフィルム層(S
4)まで巻き径を百分率で表した場合、巻き芯表面(S
0)の巻き径は、0%であり、フィルムロールの最外層のフィルム層(S
4)の巻き径は、100%である。
【0055】
巻き芯周辺部を撮影する際には、巻き径20%となる位置(P20)を中心として、当該側面部を撮影し、前記画像データを取得する。
【0056】
なお、巻き中央部を撮影する際には、巻き径50%となる位置(P50)を中心として、当該側面部を撮影し、巻き外周辺部を撮影する際には、巻き径80%となるとなる位置(P80)を中心として、当該側面部を撮影し、前記画像データを取得する。
【0057】
その後、取得した画像データに対してエッジ強調処理を行い
図5のような空隙層の厚さを算出するための加工画像を得て、フィルムロールの幅手方向側面部の巻き芯周辺部、巻き中央部及び巻き外周辺部の各々の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さを算出する。
【0058】
フィルム間の空隙層の厚さは、巻き芯周辺部、巻き中央部及び巻き外周辺部の3つの領域で算出しているため、上記の空隙層の厚さを算出するための具体的な例示をする前に、まず、巻き芯周辺部、巻き中央部及び巻き外周辺部の3つの領域の概念を説明する。
【0059】
図6は、巻き芯周辺部、巻き中央部及び巻き外周辺部を説明するためのフィルムロールの幅手方向側面部の一部の簡略概念図である。
【0060】
図6において、巻き芯(R)に直接巻かれ、巻き芯表面(S
0)(図示せず。)に貼り付いているフィルムの層をS
1とし、フィルムロールの最外層をS
4としたとき、S
1からS
4までの領域を3つの均等な領域に分割したときの巻き芯側の領域を巻き芯周辺部(A)とし、巻き外側の領域を巻き外周辺部(C)とし、当該巻き巻き芯周辺部(A)と巻き外周辺部(C)との間の領域を巻き中央部(B)とする。
また、巻き芯周辺部(A)と巻き中央部(B)との境界となっているフィルムの層をS
2とし、巻き中央部(B)と巻き外周辺部(C)との境界となっているフィルムの層をS
3とする。
【0061】
巻き周辺部の空隙層の厚さを算出するための具体的な例としては、例えば下記のような算出方法が挙げられる。
【0062】
(空隙層の厚さの算出方法の具体例)
例えば巻き芯周辺部の空隙層の厚さの算出においては、前述の位置(P
20)を中心としてフィルムロールの幅手方向側面部を撮影し、フィルム間の空隙を算出するための画像データを取得し、その後、取得した画像データに対してエッジ強調処理を行い
図5のような加工画像を得て、その加工画像の中心(P
20)を始点とし、フィルム面に垂直に巻き外側に向かって第100層目にある位置の点を終点として半径方向長さを測定し、下記式(A)を用いて空隙層の厚さX[μm]を算出する。
【0063】
式(A) 空隙層の厚さX[μm]=〔半径方向の長さ[μm]-(膜厚計で測定したフィルム層の1層あたりの平均厚さ[μm])×(層数)〕÷(層数)
【0064】
なお、上記式における(層数)は、前記終点がフィルム面に垂直に巻き外側に向かって第何層目にあるかどうかで決定し、前述のように第100層目にある場合には、(層数)=100となる。
【0065】
巻き中央部の空隙層の厚さの算出においては、前述の位置(P20)を位置(P50)に変更すること以外は上記と同様にして算出し、巻き外周辺部の空隙層の厚さにおいては、前述の位置(P20)を位置(P80)に変更すること以外は上記と同様にして算出する。
【0066】
なお、フィルムロールの全長が短いため前述の任意の点(P)を中心としてフィルムロールの幅手方向側面部を撮影したとき、フィルム面垂直に巻き外側に向かって100層ない場合、例えば70層までしか層がない場合には、その70層目にある位置の点を終点として半径方向長さを測定し、上記式(A)を用いて空隙層の厚さX[μm]を算出すればよい。
【0067】
上記式(A)中の膜厚計としては、例えばインラインリターデーション・膜厚測定装置RE-200L2T-Rth+膜厚(大塚電子(株)製)を用いることができる。
【0068】
(撮像ユニットと撮像装置のシステム構成)
撮像ユニットとしては、以下の構成のものを用いた。
図7は、撮像ユニット(U)の内部構成模式図であり、
図7中のSは、フィルムロールの被測定面(幅手方向側面部)である。なお、
図7中の主な構成部品は以下のとおりである。
【0069】
〈構成部品〉
・全反射ミラー(60)
・ハーフミラー(61)
・テレセントリックレンズ(62)(MML1-HR130VI-35F:株式会社モリテックス社製、倍率×1、WD130mm)
・高輝度ライン照明(63)(LNSP2-100SW:シーシーエス社製)
・モノクロラインセンサ―カメラ(64)(RMSL8K39CL:日本エレクトロデバイス社製、3.5μm/pixelの8000画素)
【0070】
また、撮像装置のシステム構成は
図8の概略図に示すものとした。
【0071】
2.フィルムロールの製造方法
本発明のフィルムロールの製造方法は、ナーリング加工部を有さないフィルムロールを製造するフィルムロールの製造方法であって、前記フィルムロールの幅手方向側面部にて測定した、前記巻き芯周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをX[μm]とし、前記巻き外周辺部の互いに隣り合うフィルム間の空隙層の厚さをY[μm]としたとき、前記Xと前記Yが前記式(1)の関係を満たすように調整することを特徴とする。
【0072】
上記のフィルムロールの製造方法において、前記X[μm]と前記Y[μm]が、前記式(2)及び前記式(3)を満たすように調整することが輸送時の巻きズレ防止及び長期保管時の貼り付き故障抑制の観点から好ましい。
【0073】
また、前記巻き芯周辺部のフィルムタッチ圧を6~55[N/m]の範囲内、巻き中央部のフィルムタッチ圧を4~40[N/m]の範囲内、及び前記巻き外周辺部のフィルムタッチ圧を3~30[N/m]の範囲内にて調整することが輸送時の巻きズレ防止及び長期保管時の貼り付き故障抑制の観点から好ましい。
【0074】
本発明のフィルムロールの製造には、通常のインフレーション法、T-ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造方法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイライン等の光学欠点の抑制等の観点から、溶液流延製膜法と溶融流延製膜法が好ましく、特に溶液流延製膜法であることが、フィルムの表面を均一にするために好ましい。
【0075】
(2.1)溶液流延製膜法
図9は、溶液流延製膜法の製造工程の流れを示すフローチャートであり、
図10は、溶液流延製膜法によってフィルムを製造する装置の概略図である。
【0076】
以下溶液流延製膜法において、
図9及び
図10を参照しながら説明する。
溶液流延製膜法によるフィルムの製造方法は、ドープ調製工程〔S1〕、流延工程〔S2〕、剥離工程〔S3〕、収縮工程〔S4〕、第1乾燥工程〔S5〕、第1延伸工程〔S6〕、第1切断工程〔S7〕、第2延伸工程〔S8〕、第2切断工程〔S9〕、第2乾燥工程〔S10〕、第3切断工程〔S11〕、及び巻取工程〔S12〕を含む。
【0077】
なお、上記製造方法は、第1乾燥工程〔S5〕及び第2乾燥工程〔S10〕の両方を含む必要はなく、少なくともいずれか一方の工程を含んでいればよい。
また、第1延伸工程〔S6〕、第2延伸工程〔S8〕並び第1切断工程〔S7〕、第2切断工程〔S9〕及び第3切断工程〔S11〕いずれかの切断工程を含んでいればよい。
【0078】
(2.1.1)ドープ調製(撹拌調製)工程〔S1〕
以下、本発明の一実施形態として、熱可塑性樹脂としてシクロオレフィン系樹脂(以下、「COP」ともいう。)を使用する場合を一例としてドープ調製工程を説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0079】
図9のドープ調製(撹拌調製)工程〔S1〕では、
図10の撹拌装置(1)の攪拌槽(1a)にて、少なくとも樹脂及び溶媒を攪拌し、支持体(3)(エンドレスベルト)上に流延するドープを調製する。
【0080】
(溶媒)
上記溶媒としては、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒を用いる。
本工程は、COPに対する良溶媒を主とする溶媒に、溶解釜中で当該COP、場合によって、その他の化合物を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいは当該COP溶液に場合によってその他の化合物溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
【0081】
ドープを支持体に流延した後に乾燥負荷を低減する観点からは、ドープ中のCOPの濃度は高い方が好ましいが、当該濃度が高すぎると、当該ドープろ過時の負荷が増えて精度が悪くなるため、上記の乾燥負荷の低減とろ過時の負荷抑制とを両立する必要がある。
これらを両立するためには、ドープ中のCOPの濃度は、10~35質量%の範囲内が好ましく、15~30質量%の範囲内がより好ましい。
また、ドープ中には水が、0.01~2質量%の範囲内で含有されていることが好ましい。
【0082】
ドープで用いられる溶媒は、単独で用いても二種以上を併用してもよいが、COPの良溶媒と貧溶媒を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶媒が多い方がCOPの溶解性の点で好ましい。
【0083】
良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70~98質量%の範囲内であり、貧溶剤が2~30質量%の範囲内である。
【0084】
なお、本明細書においてCOPの「良溶媒」とは、使用するCOPを単独で溶解するものと定義し、COPの「貧溶媒」とは、使用するCOPを単独で膨潤するか又は溶解しないものと定義している。
そのため、上記COPの平均置換度によって良溶媒、貧溶媒が変わる。
【0085】
本発明に用いられる良溶媒は、特に限定されないが、例えばメチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられ、特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルで挙げられる。
【0086】
本発明に用いられる貧溶媒は、特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、n-ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
【0087】
また、COPの溶解に用いられる溶媒は、各工程において乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
【0088】
回収溶媒中に、COPに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、樹脂、モノマー成分等が微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
【0089】
(溶解方法)
上記記載の、ドープを調製する時のCOPの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。
具体的には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましく、加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
【0090】
また、溶媒の常圧での沸点以上で、かつ、加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解する方法も、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
【0091】
また、COPを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶媒を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0092】
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。
加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0093】
溶媒を添加しての加熱温度は、高い方がCOPの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
【0094】
好ましい加熱温度は30~120℃の範囲内であり、60~110℃の範囲内がより好ましく、70~105℃の範囲内が更に好ましい。
また、圧力は設定温度で溶媒が沸騰しないように調整される。
【0095】
又は、冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にCOPを溶解させることができる。
【0096】
(ろ過)
次に、このCOP溶液(溶解中又は溶解後のドープ)を濾紙等の適当なろ過材を用いてろ過することが好ましい。
【0097】
ろ過材としては、不溶物等を除去するために絶対ろ過精度が小さい方が好ましいが、絶対ろ過精度が小さ過ぎると、ろ過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。
このため絶対ろ過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001~0.008mmの範囲内の濾材がより好ましく、0.003~0.006mmの範囲内の濾材が更に好ましい。
【0098】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
【0099】
ろ過により、原料のCOPに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0100】
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にフィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が、0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。
より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0~10個/cm2以下である。
また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
【0101】
ドープのろ過は通常の方法で行うことができるが、溶媒の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながらろ過する方法が、ろ過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
【0102】
好ましい温度は30~120℃の範囲内であり、45~70℃の範囲内がより好ましく、45~55℃の範囲内であることが更に好ましい。
【0103】
濾圧は小さい方が好ましい。
具体的には1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
【0104】
(2.1.2)流延工程〔S2〕
図9の流延工程〔S2〕では、ドープ調製工程〔S1〕で調製されたドープを、加圧型定量ギアポンプ等を通して、導管によって
図10の流延ダイ(2)に送液し、無限に移送する回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体(3)上の流延位置に流延ダイ(2)からドープを流延し、流延膜(5)を形成する。
【0105】
その際、流延ダイ(2)の傾き、すなわち流延ダイ(2)から支持体(3)へのドープの吐出方向は、支持体(3)の面(ドープが流延される面)の法線に対する角度で0~90°の範囲内となるように適宜設定されればよい。
【0106】
その後、上記流延膜(5)を支持体(3)上で加熱・乾燥させて、剥離ローラー(4)によって流延膜(5)が支持体(3)から剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる。
なお、本発明において、流延膜とは、上記のリップ部分から流延されるドープ膜のことをいう。
【0107】
上記の蒸発は、5~75℃の範囲内の雰囲気下にて行うことが好ましい。
溶媒を蒸発させるには、温風を流延膜(5)上面に当てる方法、及び/又は支持体(3)の裏面から液体により伝熱させる方法、及び輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、輻射熱により表裏から伝熱する方法が、乾燥効率がよく好ましい。
また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。
【0108】
流延(キャスト)の幅は生産性の観点から1.3m以上が好ましい。
より好ましくは1.3~4.0mの範囲内である。
流延(キャスト)の幅が4.0mを超えなければ、製造工程で縞が入らず、その後の搬送工程での安定性が高くなる。
搬送性、生産性の観点では、1.3~3.0mの範囲内がさらに好ましい。
【0109】
(流延ダイ)
流延ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、いずれも好ましく用いられる。
【0110】
当業者が流延工程においてフィルムの厚さの均一性を上げるためには、溶液流延製膜法と溶融流延製膜法のいずれにおいても流延ダイのリップ部分(流延ダイスリットのドープの出る部分)のスリットギャップ(スリットノズル液吐出口の先端開口部)を制御する方法が挙げられる。
【0111】
例えば粘度の高いドープ(メルト含む)を押し出す際には、上記スリットギャップの幅手のバラつきが生じるが、このことを防ぐために幅手でヒートボルトを複数本設置してスリットギャップを制御する方法である。
【0112】
ただし、この方法はヒートボルト数の物理的な設置限界があるという問題がある。
また、上記スリットギャップの幅手のバラつきを生じさせる幅手での圧力変動を抑制するために流延ダイの内部構造を幅手で変化させる方法があるが、生産品種ごとに流延ダイを切り替えなくてはならず、時間及びコストがかかるという問題がある。
【0113】
流延ダイにはドープを吐出(溶融の場合は樹脂の押出し)するスリットを幅手に調整する機構が設けられている。
上記流延ダイのヒートボルトにより、ドープを吐出するスリットの幅手の間隙を、吐出直後の膜厚偏差を流延膜全体に対して1.0~5.0%の範囲内に調整し、流延膜の初期吐出膜厚の制御を行うことが好ましい。
【0114】
本発明に係るフィルムの製膜速度を上げるために、上記の流延ダイを支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムロールを得ることも好ましい。
製膜速度を上げるために流延ダイを支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
【0115】
(支持体)
支持体(3)は、例えばステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられ、一対のローラー(3a)、ローラー(3b)及びこれらの間に位置する複数のローラーによって保持されている。
このとき、支持体の表面は鏡面となっていることが好ましい。
【0116】
ローラー(3a)及び(3b)の一方、又は両方には、支持体(3)に張力を付与する駆動装置が設けられており、これによって支持体(3)は張力が掛けられて張った状態で使用される。
【0117】
流延工程〔S2〕の支持体(3)の表面温度は-50℃~溶媒の沸点の範囲内の温度で、温度が高い方が流延膜の乾燥速度が速くできるので好ましい。
【0118】
好ましい支持体温度は、0~55℃の範囲内であり、22~50℃の範囲内が更に好ましい。
【0119】
なお、支持体の温度は、全体が同じでも、位置によって異なっていてもよい。
【0120】
支持体(3)の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を支持体の裏側に接触させる方法がある。
温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
温風を用いる場合は、目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0121】
(2.1.3)剥離工程〔S3〕
本工程では、流延工程〔S2〕にて、支持体(3)上で流延膜(5)が剥離可能な膜強度となるまで溶媒を蒸発させ、乾燥固化あるいは冷却凝固させた後、支持体(3)をフィルムが一周する前にフィルムを支持体(3)から剥離する。
すなわち、本工程は支持体(3)上で溶媒が蒸発したフィルムを、剥離位置で剥離する工程である。
このとき、面品質、透湿性、剥離性の観点から、30~600秒の範囲内で上記のフィルムを支持体から剥離することが好ましい。
【0122】
剥離工程〔S3〕では、フィルムを、自己支持性を持たせたまま剥離ローラー(4)(フィルムの剥離を助けるロール)によって剥離する。
支持体上の剥離位置における温度は-50~40℃の範囲内とするのが好ましく、10~40℃の範囲内がより好ましく、15~30℃の範囲内とするのが最も好ましい。
【0123】
(残留溶媒量)
剥離工程〔S3〕における剥離時での支持体(3)上でのフィルムの残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、支持体(3)の長さ等によって適宜調節され、収縮工程〔S4〕における残留溶媒量は、フィルムの厚さ、樹脂等が大きく影響するため、剥離工程〔S3〕と収縮工程〔S4〕では、残留溶媒量の好ましい範囲に重複する範囲がある。
【0124】
フィルムの残留溶媒量は、フィルムの厚さによっても変わってくるが、剥離点(支持体からフィルムを剥離する位置)での残留溶媒量が多すぎるとフィルムが柔らかすぎて剥離しにくくなることがあり、平面性を損なったり、剥離張力による横段、ツレや縦スジが発生しやすくなることがある。
逆に、残留溶媒量が少なすぎると、途中でフィルムの一部が剥がれたりすることがある。
【0125】
上記の観点から、フィルムが良好な平面性を示すためには、経済速度と品質との兼ね合いの観点から残留溶媒量が10~50質量%の範囲内であることが望ましい。
【0126】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる。)として、残留溶媒量が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)が挙げられる。
【0127】
上記の方法としては、ドープ中にCOPに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、流延膜をゲル化する方法、支持体を冷却することによって流延膜をゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態で剥離する方法等がある。
また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。
【0128】
上記のように、支持体上で流延膜をゲル化させ膜を強くすることによって、フィルムの支持体からの剥離を早め、製膜速度を上げることができる。
【0129】
残留溶媒量は、下記式で定義される。
【0130】
式:残留溶媒量[質量%]={(M-N)/N}×100
【0131】
なお、上記式中のMは、流延膜又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、Nは、Mを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0132】
(剥離張力)
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、300N/m以下とすることが好ましい。
より好ましくは、196~245N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
【0133】
(2.1.4)収縮工程〔S4〕
収縮工程〔S4〕は、フィルム(F)を面内で幅手方向に収縮させる工程である。
フィルム(F)を収縮させる方法としては、例えばフィルムを幅手保持しない状態で高温処理して、フィルムの密度を高める方法、支持体から剥離後のフィルムを搬送方向(Machine Direction、以下「MD方向」ともいう。)に張力をかけて、フィルム面内でMD方向と直交する幅手方向(TD方向)に延伸し収縮させる方法、及び急峻にフィルムの残留溶媒量を減少させる等の方法によって行われる。
この場合、フィルムは、フィルム面内でMD方向と直交する幅手方向(Traverse Direction、以下「TD方向」ともいう。)に収縮する。
【0134】
収縮工程によって、フィルムの厚さ方向における樹脂分子(マトリックス分子)間の絡み合いが促進されるため、例えば偏光板作製時に、フィルムを偏光子と接着剤を介して接着する場合でも、上記接着剤がマトリックス分子間の絡み合いの部分(架橋部分)を介してフィルム内部に浸透しやすくなる。
その結果、接着剤を介してフィルムを偏光子に強固に固定することができ、偏光子に対するフィルムの剥離強度を向上させることができる。
つまり、フィルムと偏光子との良好な接着性を確保することできる。
【0135】
(収縮率の定義)
本発明において収縮率とは、下記式にて定義される。
【0136】
式:収縮率[%]=収縮工程終了時のフィルムの幅[mm]/収縮工程開始時のフィルムの幅[mm]×100
【0137】
ここで、収縮工程〔S4〕において、フィルムの収縮率が小さすぎると、マトリックス分子間の絡み合いを促進する効果が不十分となり、大きすぎると、フィルム(延伸フィルム)の生産効率が低下することが懸念される。
このため、収縮工程〔S4〕におけるフィルムの収縮率は、1~40%の範囲内であることが好ましく、5~20%の範囲内であることがより好ましい。
【0138】
(収縮率の測定方法と算出方法)
フィルムの幅は、株式会社キーエンス製のLS-9000にて測定することができる。
なお、本発明にかかるフィルムの収縮率は、フィルムの幅を上記の測定器により1秒毎で5分間(300秒)測定した各値の平均値をフィルムの幅とし、上記式に代入することにより求めたが、上記の方法に限る必要はなく、例えばフィルムの幅を定規から読み取った値を用いてフィルムの幅とし、上記式に代入してもよい。
【0139】
(2.1.5)第1乾燥工程〔S5〕
第1乾燥工程〔S5〕では、乾燥装置(6)によりフィルム(F)を支持体上で加熱することによって、溶媒を蒸発させ、乾燥させる工程である。
【0140】
図10における乾燥装置(6)内では、側面から見て千鳥状に配置された複数の搬送ロールによってフィルム(F)が搬送され、その間にフィルム(F)が乾燥される。
【0141】
乾燥装置(6)内での乾燥方法は、特に制限はなく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等を用いてフィルム(F)を乾燥させるが、簡便さの点から、熱風でフィルム(F)を乾燥させる方法が好ましい。
また、それらを組み合わせる方法も好ましい。
なお、第1乾燥工程〔S5〕は、必要に応じて行われればよい。
【0142】
フィルムが厚くなければ乾燥が早いが、あまり急激な乾燥は、でき上がりのフィルムの平面性を損ねやすい。
フィルムの高温による乾燥を行う際には、乾燥を行う前の残留溶媒量を考慮する必要があるが、残留溶媒量は、多すぎないことで溶媒の発泡による故障を防ぐことができる。
【0143】
第1乾燥工程〔S5〕前の残留溶媒量は、30質量%以下くらいが好ましく、乾燥工程全体を通して、乾燥温度はおおむね30~250℃の範囲内で行われる。
特に35~200℃の範囲内で乾燥させることが好ましく、乾燥温度は、段階的に高くしていくことが好ましい。
【0144】
フィルムの乾燥には、一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにフィルムを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でフィルムを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0145】
フィルムの乾燥にテンター延伸装置を用いる場合は、後述する延伸工程において、テンター延伸装置の左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。
また、延伸工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
【0146】
さらに、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0147】
(2.1.6)第1延伸工程〔S6〕
第1延伸工程〔S6〕は、フィルム(F)をフィルム面内でMD方向にのみ延伸する工程であってもよいし、TD方向にのみ延伸する工程であってもよいし、MD方向及びTD方向の両方に対してであってもよいし、斜め方向に延伸する工程であってもよい。
また、延伸方向に限定はないが、広幅のフィルムを得る観点では、少なくとも幅手方向の延伸を含む工程があることが好ましい。
このような延伸は、延伸装置(7)によって行う。
【0148】
(延伸方法)
延伸方法としては、ロールの周速差を設けて搬送方向(フィルムの長手方向;製膜方向;流延方向;縦方向;MD方向)に延伸(縦延伸)する方法や、フィルム(F)の両側縁部をクリップ等で固定して幅手方向(フィルム面内で直交する方向;フィルムの幅手方向;横方向;TD方向)に延伸(横延伸)する方法、縦延伸と横延伸を順に行う方法(逐次2軸延伸)及び縦延伸と横延伸を同時に行う方法(同時2軸延伸)等が挙げられるが、これらのうち横延伸や同時2軸延伸(斜め延伸を含む)では、テンター延伸装置が用いられる。
テンター延伸装置は、フィルムの幅手方向の両端部をクリップで把持し、このクリップをフィルムとともに走行させながら間隔を拡げることによって、フィルムを延伸する装置である。
【0149】
上記の方法の中では、テンター延伸装置を用いる、いわゆるテンター方式が、フィルムの性能・生産性、平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
【0150】
また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0151】
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンター延伸装置によって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
なお、延伸装置(7)内では、延伸に加えて乾燥を行ってもよい。
【0152】
(延伸倍率)
高位相差確保、広幅確保、及び偏光子と接着の際の接着剤浸透促進のためには、延伸工程においてフィルムを高倍率で延伸することが好ましい。
ただし、延伸倍率が高すぎると、延伸応力により、フィルム内にクレーズが発生したり、フィルム強度を保っているマトリックス分子間の絡み合いが解離して、フィルムが脆弱化する場合があり得る。
【0153】
このため、延伸工程における延伸倍率は、1.1~5.0倍の範囲内であることが好ましく、1.3~3.0倍の範囲内であることがより好ましい。
【0154】
なお、本発明でいう、「延伸倍率」とは、延伸前のフィルムの面積に対する延伸後のフィルムの面積の比率[%]をいう。
すなわち、上記の延伸行程における「延伸倍率」は、フィルムの縦(長手)方向及び横(幅手)方向の延伸による合計延伸率が、面積倍率で1.1~5.0倍の範囲内であることが好ましく、1.3~3.0倍の範囲内であることがより好ましい。
【0155】
なお、延伸が複数回行われる場合、複数回の延伸のうちでマトリックス分子の解離のリスクが最も高い最高倍率の延伸は、最終回に行われることが好ましい。
例えば
図9において、最高倍率の延伸は、第2延伸工程にて行われることが好ましい。
この場合、最高倍率の延伸までに、マトリックス分子の絡み合いを強固にできるため、最高倍率の延伸を行っても、マトリックス分子の絡み合いの解離を抑えて、凝集破壊を抑えることができる。
【0156】
(テンター延伸装置)
以下、
図11、
図12、
図13及び
図14を参照しながら延伸装置(7)としてテンター延伸装置が用いられている場合を例に説明する。
【0157】
図11は、テンター延伸装置の内部構成を模式的に表す平面図であり、テンター延伸装置をフィルムの面に垂直な面を上側から見た断面図である。
図12は、上記のテンター延伸装置のカバーを取り外した状態を表しており、カバーは二点鎖線で示している。
【0158】
図13は、テンター延伸装置内の3つのゾーンを正面から見たときのノズルとヒーター設置部分の概略図である。
図13のように、赤外線(IR)ヒーターは、フィルム破断時に赤外線(IR)ヒーターにフィルムが接触しないようにノズルの上側にのみ配置されているが、フィルムに赤外線(IR)ヒーターを近づけた方が、赤外線(IR)ヒーターによる放射エネルギーをより狭い範囲に集中させることができるため、クリップによる幅だし動作に干渉しない範囲で、フィルムに赤外線(IR)ヒーターをなるべく近づける。
【0159】
なお、
図13では、主に中央ノズル(105)からの熱処理が示されており、今回の実施例では端部ノズル(104)による熱処理は行われていないが、本実施形態では併用可能である。
【0160】
熱処理をするにあたっては、
図14のようにノズルすき間から赤外線(IR)ヒーターが出ている方が放射エネルギーを無駄なくフィルムに伝えることができる。
【0161】
図11のように、延伸前のフィルムにおいても、全ての幅を加熱できるように赤外線(IR)ヒーターは列に配置した。
なお、ヒーターは、長手方向に千鳥状に配置しても良い。
【0162】
テンター延伸装置(40)は、フィルム(F)の幅手方向の両端部を把持する多数のクリップ(42)を備え、クリップ(42)は、無端チェーン(48)に一定の間隔で取り付けられている。
無端チェーン(48)は、フィルム(F)を挟んで両側に配置されており、それぞれが入口側の原動スプロケット(50)と出口側の従動スプロケット(52)との間に掛け渡される。
原動スプロケット(50)は不図示のモータに接続されており、このモータを駆動することによって原動スプロケット(50)が回転される。
これにより、無端チェーン(48)が原動スプロケット(50)と従動スプロケット(52)との間を周回走行するので、無端チェーン(48)に取り付けたクリップ(42)が周回走行される。
【0163】
原動スプロケット(50)と従動スプロケット(52)との間には、無端チェーン(48)(又はクリップ(42))をガイドするためのレール(54)が設けられる。
レール(54)は、フィルム(F)を挟んで両側に配置されており、レール(54)同士の間隔はフィルム(F)の搬送方向の上流側よりも下流側が広くなるように構成される。
これにより、クリップ(42)が周回走行する際に、クリップ(42)同士の間隔が拡げられるので、クリップ(42)に把持されたフィルム(F)を幅手方向に横延伸することができる。
【0164】
原動スプロケット(50)と従動スプロケット(52)にはそれぞれ開放部材(56)が取り付けられている。
開放部材(56)は、後述するクリップ(42)のフラッパ(図示せず)を把持位置から開放位置に変位させる装置であり、この開放部材(56)によって、フィルム(F)の把持動作と開放動作が自動的に行われる。
【0165】
ところで、テンター延伸装置(40)の内部は
図11、
図12及び
図14に示すように、予熱ゾーン、(横)延伸ゾーン及び熱固定ゾーンが設けられている。
ゾーン同士の間は、不図示の遮風カーテン(不図示)によって仕切られている。
また、各ゾーンの内部では、フィルム(F)に対して上方又は下方、若しくはその両方から、熱風が給気される。
【0166】
熱風は、ゾーン毎に所定の温度に管理された状態で、フィルム(F)の幅手方向に均一に吹き出される。
これにより、各ゾーンの内部が所望の温度に制御される。以下、各ゾーンについて説明する。
【0167】
予熱ゾーンは、フィルム(F)を予熱処理するゾーンであり、クリップ(42)の間隔を拡げることなく、フィルム(F)を加熱する。
【0168】
予熱ゾーンで予熱されたフィルム(F)は、(横)延伸ゾーンに移動する。
(横)延伸ゾーンは、クリップ(42)の間隔を広げることによってフィルム(F)を幅手方向に(横)延伸するゾーンである。
この(横)延伸処理における延伸倍率は、1.0~2.5倍の範囲内が好ましく、1.05~2.3倍の範囲内がより好ましく、1.1~2倍の範囲内がさらに好ましい。
【0169】
横延伸ゾーンで横延伸されたフィルム(F)は、熱固定ゾーンに移動する。
【0170】
なお、本実施の形態では、テンター延伸装置(40)の内部を予熱ゾーン、(横)延伸ゾーン、熱固定ゾーンに分けたが、ゾーンの種類や配置はこれに限定するものではなく、例えば(横)延伸ゾーンの後に、フィルム(F)を冷却する冷却ゾーンを設けてもよい。
また、熱固定ゾーンの中に熱緩和ゾーンを設けてもよい。
【0171】
なお、本実施の形態では、テンター延伸装置(40)で(横)延伸のみを行ったが、縦方向にも同時に延伸してもよい。
この場合、クリップ(42)の移動時に、クリップ(42)のピッチ(搬送方向におけるクリップ(42)同士の間隔)を変化させればよい。
クリップ(42)のピッチを変化させる機構としては、例えばパンタグラフ機構やリニアガイド機構を利用することができる。
【0172】
(熱処理タイミング)
テンター延伸装置は通常、複数ゾーンに分けられており、例えば
図11、
図12及び
図14のようにフィルムを加熱する予熱ゾーン、フィルムを横方向に延伸する横延伸ゾーン、フィルムの結晶化を行う熱固定ゾーン、フィルムの熱応力を取り除く緩和ゾーン等が設けられている。
【0173】
(炉内温度)
通常、炉内温度は120~200℃の範囲内が好ましく、さらに好ましくは120~180℃の範囲内である。
ここで、「炉内温度」とは、後述するテンター延伸装置の延伸ゾーンにおいて、延伸直前のフィルム中央から100mm上側の位置を測定した温度(HA=100mm)であり、1分間ごとの各温度の値を1時間測定し、それらの平均値を算出したものと定義する。
【0174】
通常、炉内温度は120~200℃の範囲内が好ましく、さらに好ましくは120~180℃の範囲内である。
ここで、複数の区画で長手に温度勾配をつけている際は、熱処理の区画を対象とするものとする。
【0175】
また、延伸ゾーンにおいて熱処理を実施する場合としない場合とで炉内温度は異なるが、延伸ゾーンにおいて熱処理を実施する場合は、当該炉内温度は熱処理を実施する前の延伸ゾーンにおける炉内温度をいうものとする。
【0176】
(残留溶媒量)
延伸時におけるフィルム中の残留溶媒量は20質量%以下が好ましく、さらに好ましくは15質量%以下で延伸するのが好ましい。
【0177】
(2.1.7)第1切断工程〔S7〕
第1切断工程〔S7〕では、スリッターからなる切断部(8)が、第1延伸工程〔S6〕によって延伸されたフィルム(F)の幅手方向の両端部を切断する。
フィルム(F)において、両端部の切断後に残った部分は、フィルム製品となる製品部を構成する。
一方、フィルム(F)から切断された部分は、回収され、再び原材料の一部としてフィルムの製膜に再利用してもよい。
【0178】
(2.1.8)第2延伸工程〔S8〕
第2延伸工程〔S8〕では、第1延伸工程〔S6〕と同様にフィルム(F)を延伸装置(9)によって延伸する。
このときの延伸方法としては、ロールの周速差を設けて搬送方向(MD方向)に延伸する延伸方式や、フィルム(F)の両側縁部をクリップ等で固定して幅手方向(TD方向)に延伸するテンター方式が、フィルムの性能・生産性、平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
なお、延伸装置(9)内では、延伸に加えて乾燥を行ってもよい。
【0179】
(2.1.9)第2切断工程〔S9〕
第2切断工程〔S9〕では、第1切断工程〔S7〕と同様にスリッターからなる切断部(10)が、製膜されたフィルム(F)の幅手方向の両端部を切断する。
なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は、通常はフィルムが変形しており、製品として使用できないので切除される。
熱による材料の劣化が起こっていない場合は、回収後に再利用される。
【0180】
フィルム(F)において、両端部の切断後に残った部分は、フィルム製品となる製品部を構成する。
一方、フィルム(F)から切断された部分は、回収され、再び原材料の一部としてフィルムの製膜に再利用される。
【0181】
(2.1.10)第2乾燥工程〔S10〕
第2乾燥工程〔S10〕では、第1乾燥工程〔S5〕と同様にフィルム(F)が、乾燥装置(11)にて乾燥される。
乾燥装置(11)内では、側面から見て千鳥状に配置された複数の搬送ロールによってフィルム(F)が搬送され、その間にフィルム(F)が乾燥される。
【0182】
乾燥装置(6)での乾燥方法は、特に制限はなく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、及びマイクロ波等が挙げられる。
上記の乾燥方法の中でも、簡便さの点から、熱風でフィルム(F)を乾燥させる方法が好ましい。
なお、第2乾燥工程〔S10〕は、必要に応じて行われればよい。
【0183】
(2.1.11)第3切断工程〔S11〕
第3切断工程〔S11〕では、第1切断工程〔S7〕、第2切断工程〔S9〕と同様にスリッターからなる切断部(12)が、製膜されたフィルム(F)の幅手方向の両端部を切断する。
フィルム(F)において、両端部の切断後に残った部分は、フィルム製品となる製品部を構成する。
一方、フィルム(F)から切断された部分は、回収され、再び原材料の一部としてフィルムの製膜に再利用される。
【0184】
(2.1.12)巻取工程〔S12〕
最後に、巻取工程〔S12〕にて、フィルム(F)を、巻取装置(13)によって巻取り、フィルムロールを得る。
すなわち、巻取工程では、フィルム(F)を搬送しながら巻芯に巻き取ることにより、フィルムロールが製造される。
巻取工程におけるフィルムを巻取る際の初期張力の好ましい範囲は、20~300N/mの範囲内である。
【0185】
図15は、フィルムが巻き取られる工程と、巻き取られた後の本発明のフィルムロールの断面を示す概略図である。
フィルム(F)を巻き取る際には例えば
図15のようにタッチローラー(33)を設置し、所望の空隙層を形成するためにフィルムタッチ圧を適宜変更することが好ましい。
図15では、製膜されたフィルム(31)はローラー(32)及びタッチローラー(33)によって巻き回され、フィルムロール(30)として巻き取られる。
【0186】
(残留溶媒量)
より具体的には、フィルム中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻取装置(12)により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
特に、残留溶媒量が、0.00~0.20質量%の範囲内で巻き取ることが好ましい。
【0187】
(巻取り方法)
フィルム(F)の巻取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
【0188】
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼りつきや擦り傷防止のために、表面改質処理をフィルム両端に施してもよい。
【0189】
(巻取り後)
本発明のフィルムロールは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100~10000m程度の範囲内のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。
【0190】
(2.2)溶融流延製膜法によるフィルムロールの製造工程
本発明に係るフィルムは、溶融流延製膜法により製膜することもできる。
「溶融製膜法」とは、熱可塑性樹脂及び上述した添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性の熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延する方法をいう。
【0191】
加熱溶融する成形方法としては、詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。
これらの成形法の中では、機械的強度及び表面精度等の点から、溶融押出し法が好ましい。
【0192】
図16は、溶融流延製膜法の製造工程の流れを示すフローチャートである。
また、
図17は、溶融流延製膜法によってフィルムを製造する装置の概略図である。
以下溶液流延製膜法において、
図16及び
図17を参照しながら説明する。
【0193】
溶融流延製膜法によるフィルムロールの製造方法は、押出し工程〔M1〕、流延・成形工程〔M2〕、第1延伸工程〔M3〕、第1切断工程〔M4〕、第2延伸工程〔M5〕、第2切断工程〔M6〕、及び巻取工程〔M7〕を含む。
【0194】
なお、上記製造方法は、第1延伸工程〔M3〕及び第2延伸工程〔M5〕の両方を含む必要はなく、少なくともいずれか一方の工程を含んでいればよい。
また、第1切断工程〔M4〕、第2切断工程〔M6〕も同様に少なくともいずれか一方の工程を含んでいればよい。
【0195】
(2.2.1)押出し工程〔M1〕
押出し工程〔M1〕では、押出し機(14)にて、少なくとも樹脂を溶融押出しして、キャストドラム(16)上に成形する。
本発明に用いることのできる上記樹脂についての詳細は後述する。
【0196】
また、樹脂はあらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法で行えばよい。
【0197】
例えば乾燥樹脂や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し、1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、流延ダイ(15)からストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでペレット化できる。
【0198】
添加剤は、押出し機に供給する前に樹脂に混合しておいてもよいし、添加剤及び樹脂をそれぞれ個別のフィーダーで押出し機に供給してもよい。
また、粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に樹脂に混合しておくことが好ましい。
【0199】
供給ホッパーから押出し機へ、ペレットを導入する際は、乾燥、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0200】
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。
【0201】
例えば2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。
混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
樹脂・ペレットは溶融時に、リーフディスクタイプのフィルター等でろ過して異物を除去することが好ましい。
【0202】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。
勿論、ペレット化せず、原材料の樹脂(粉末等)をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0203】
(2.2.2)流延・成形工程〔M2〕
流延・成形工程〔M2〕では、押出し工程で溶融した樹脂・ペレットを、加圧型定量ギアポンプ等を通して、導管によって流延ダイ(15)からフィルム状に流延し、無限に移送する回転駆動ステンレス鋼製エンドレスキャストドラム(16)上の流延位置に流延ダイ(15)から溶融した樹脂・ペレットを流延する。
そして、流延した溶融状態の樹脂・ペレットをキャストドラム(16)上で成形させて、流延膜(18)を形成する。
【0204】
流延ダイ(15)の傾き、すなわち、流延ダイ(15)から支持体(16)への溶融状態の樹脂・ペレットの吐出方向は、キャストドラム(16)の面(溶融状態の樹脂・ペレットが流延される面)の法線に対する角度で0~90°の範囲内となるように適宜設定されればよい。
【0205】
タッチローラー(16a)やキャストドラム(16)を補助する冷却ドラム(17)を適宜、単独であるいは組み合わせてフィルム(F)を形成してもよい。
【0206】
(2.2.3)第1延伸工程〔M3〕
第1延伸工程〔M3〕では、フィルム(F)を延伸装置(19)によって延伸する。
このときの延伸方法としては、ロールの周速差を設けてMD方向に延伸する延伸方式や、フィルム(F)の両側縁部をクリップ等で固定してTD方向に延伸するテンター方式が、フィルムの性能・生産性、平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
なお、延伸装置(19)内では、延伸に加えて乾燥を行ってもよい。
【0207】
なお、テンター延伸装置、熱処理タイミング、炉内温度、延伸温度、延伸炉内の温度及び残留溶媒量等の記載については、溶液流延製膜法によるフィルムロールの製造工程における第1延伸工程〔S6〕と重複するので省略する。
【0208】
(2.2.4)第1切断工程〔M4〕
第1切断工程〔M4〕では、スリッターからなる切断部(20)が、製膜されたフィルム(F)の幅手方向の両端部を切断する。
フィルム(F)において、両端部の切断後に残った部分は、フィルム製品となる製品部を構成する。
一方、フィルム(F)から切断された部分は、回収され、再び原材料の一部としてフィルムの製膜に再利用してもよい。
【0209】
(2.2.5)第2延伸工程〔M5〕
第2延伸工程〔M5〕では、第1延伸工程〔M3〕と同様にフィルム(F)を延伸装置(21)によって延伸する。
このときの延伸方法としては、ロールの周速差を設けてMD方向に延伸する延伸方式や、フィルム(F)の両側縁部をクリップ等で固定してTD方向に延伸するテンター方式が、フィルムの性能・生産性、平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
なお、延伸装置(21)内では、延伸に加えて乾燥を行ってもよい。
【0210】
(2.2.6)第2切断工程〔M6〕
第2切断工程〔M6〕では、第1切断工程〔M4〕と同様にスリッターからなる切断部(22)が、製膜されたフィルム(F)の幅手方向の両端部を切断する。
フィルム(F)において、両端部の切断後に残った部分は、フィルム製品となる製品部を構成する。
一方、フィルム(F)から切断された部分は、回収され、再び原材料の一部としてフィルムの製膜に再利用してもよい。
【0211】
(2.2.7)巻取工程〔M7〕
最後に、巻取工程〔M7〕にて、フィルム(F)を、巻取装置(23)によって巻取り、フィルムロールを得る。
すなわち、巻取工程〔M7〕では、フィルム(F)を搬送しながら巻芯に巻き取ることにより、フィルムロールが製造される。
【0212】
フィルム(F)の巻取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
【0213】
3.フィルムを構成する樹脂
(3.1)熱可塑性樹脂
本発明に係るフィルムに用いられる熱可塑性樹脂材料としては、製膜後フィルムロールとして扱えるものであれば限定はない。
【0214】
偏光板用途として使用されている熱可塑性樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、ジアセチルセルロース(DAC)等のセルロースエステル系樹脂やシクロオレフィン樹脂等の環状オレフィン系樹脂(以下、「COP」ともいう。)、ポリプロピレン(PP)等のポリプロピレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、及びポリエチレンテレフターレート(PET)等のポリエステル系樹脂が適用できる。
【0215】
ただし、延伸性や結晶化度のコントロールがしやすい点、及び、接着剤が浸透しやすく、偏光子とのより良好な接着性を確保できる点では、COPを用いることが望ましい。
なお、上記フィルムは、製造後に表面改質処理を施しても良い。
【0216】
また、本発明の効果は、薄膜領域にて価値が高まる。
フィルムの厚さとしては5~80μmの範囲内が好ましく、10~65μmの範囲内がより好ましく、10~45μmの範囲内がさらに好ましい。
【0217】
フィルムの厚さが5μm以上であれば、フィルムロールの剛性が高く、ロール形状を保つことが容易となる。
フィルムの厚さが80μm以下であれば質量が増えすぎず、長尺のフィルムロールを作製し易くなる。
【0218】
(3.1.1)シクロオレフィン系樹脂
本発明のフィルムロールに含有されるシクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィン単量体の重合体、又はシクロオレフィン単量体とそれ以外の共重合性単量体との共重合体であることが好ましい。
【0219】
シクロオレフィン単量体としては、ノルボルネン骨格を有するシクロオレフィン単量体であることが好ましく、下記一般式(A-1)又は(A-2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体であることがより好ましい。
【0220】
【0221】
一般式(A-1)中、R1~R4は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1~30の炭化水素基、又は極性基を表す。pは、0~2の整数を表す。ただし、R1~R4の全てが同時に水素原子を表すことはなく、R1とR2が同時に水素原子を表すことはなく、R3とR4が同時に水素原子を表すことはないものとする。
【0222】
一般式(A-1)においてR1~R4で表される炭素原子数1~30の炭化水素基としては、例えば炭素原子数1~10の炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1~5の炭化水素基であることがより好ましい。
【0223】
炭素原子数1~30の炭化水素基は、例えばハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はケイ素原子を含む連結基を更に有していても良い。
そのような連結基の例には、カルボニル基、イミノ基、エーテル結合、シリルエーテル結合、チオエーテル結合等の二価の極性基が含まれる。
炭素原子数1~30の炭化水素基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が含まれる。
【0224】
一般式(A-1)においてR1~R4で表される極性基の例には、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基及びシアノ基が含まれる。
【0225】
中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基が好ましく、溶液製膜時の溶解性を確保する観点から、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基が好ましい。
【0226】
一般式(A-1)におけるpは、フィルムの耐熱性を高める観点から、1又は2であることが好ましい。
pが1又は2であると、得られる重合体がかさ高くなり、ガラス転移温度が向上しやすいためである。
【0227】
【0228】
一般式(A-2)中、R5は、水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は炭素数1~5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表す。R6は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子)を表す。pは、0~2の整数を表す。
【0229】
一般式(A-2)におけるR5は、炭素数1~5の炭化水素基を表すことが好ましく、炭素数1~3の炭化水素基を表すことがより好ましい。
【0230】
一般式(A-2)におけるR6は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基を表すことが好ましく、溶液製膜時の溶解性を確保する観点から、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基がより好ましい。
【0231】
一般式(A-2)におけるpは、フィルムの耐熱性を高める観点から、1又は2を表すことが好ましい。
pが1又は2を表すと、得られる重合体がかさ高くなり、ガラス転移温度が向上しやすいためである。
【0232】
一般式(A-2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体は、有機溶媒への溶解性を向上させる点から好ましい。
【0233】
一般的に有機化合物は対称性を崩すことによって結晶性が低下するため、有機溶媒への溶解性が向上する。
【0234】
一般式(A-2)におけるR5及びR6は、分子の対称軸に対して片側の環構成炭素原子のみに置換されているので、分子の対称性が低く、すなわち、一般式(A-2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体は溶解性が高いため、フィルムを溶液流延製膜法によって製造する場合に適している。
【0235】
シクロオレフィン単量体の重合体における一般式(A-2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体の含有割合は、シクロオレフィン系樹脂を構成する全シクロオレフィン単量体の合計に対して、例えば70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは100モル%とし得る。
【0236】
一般式(A-2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体を一定以上含むと、樹脂の配向性が高まるため、位相差(リターデーション)値が上昇しやすい。
【0237】
以下、一般式(A-1)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体の具体例を例示化合物1~14に示し、一般式(A-2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体の具体例を例示化合物15~34に示す。
【0238】
【0239】
シクロオレフィン単量体と共重合可能な共重合性単量体の例には、シクロオレフィン単量体と開環共重合可能な共重合性単量体、及びシクロオレフィン単量体と付加共重合可能な共重合性単量体等が含まれる。
【0240】
開環共重合可能な共重合性単量体の例には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン及びジシクロペンタジエン等のシクロオレフィンが含まれる。
【0241】
付加共重合可能な共重合性単量体の例には、不飽和二重結合含有化合物、ビニル系環状炭化水素単量体及び(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0242】
不飽和二重結合含有化合物の例には、炭素原子数2~12(好ましくは2~8)のオレフィン系化合物が含まれ、その例には、エチレン、プロピレン及びブテン等が含まれる。
【0243】
ビニル系環状炭化水素単量体の例には、4-ビニルシクロペンテン及び2-メチル-4-イソプロペニルシクロペンテン等のビニルシクロペンテン系単量体が含まれる。
【0244】
(メタ)アクリレートの例には、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1~20のアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0245】
シクロオレフィン単量体と共重合性単量体との共重合体におけるシクロオレフィン単量体の含有割合は、共重合体を構成する全単量体の合計に対して、例えば20~80モル%の範囲内、好ましくは30~70モル%の範囲内とし得る。
【0246】
シクロオレフィン系樹脂は、前述のとおり、ノルボルネン骨格を有するシクロオレフィン単量体、好ましくは一般式(A-1)又は(A-2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体を重合又は共重合して得られる重合体であり、その例には、以下(1)~(7)の重合体が含まれる。
【0247】
(1)シクロオレフィン単量体の開環重合体
(2)シクロオレフィン単量体と、それと開環共重合可能な共重合性単量体との開環共重合体
(3)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体の水素添加物
(4)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフツ反応により環化した後、水素を添加した(共)重合体
(5)シクロオレフィン単量体と、不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
(6)シクロオレフィン単量体のビニル系環状炭化水素単量体との付加共重合体及びその水素添加物
(7)シクロオレフィン単量体と、(メタ)アクリレートとの交互共重合体
【0248】
上記(1)~(7)の重合体は、いずれも公知の方法、例えば特開2008-107534号公報や特開2005-227606号公報に記載の方法で得ることができる。
【0249】
例えば上記(2)の開環共重合に用いられる触媒や溶媒は、例えば特開2008-107534号公報の段落0019~0024に記載のものを使用できる。
【0250】
上記(3)及び(6)の水素添加物に用いられる触媒は、例えば特開2008-107534号公報の段落0025~0028に記載のものを使用できる。
【0251】
上記(4)のフリーデルクラフツ反応に用いられる酸性化合物は、例えば特開2008-107534号公報の段落0029に記載のものを使用できる。
【0252】
上記(5)~(7)の付加重合に用いられる触媒は、例えば特開2005-227606号公報の段落0058~0063に記載のものを使用できる。
【0253】
上記(7)の交互共重合反応は、例えば特開2005-227606号公報の段落0071及び0072に記載の方法で行うことができる。
【0254】
中でも、上記(1)~(3)及び(5)の重合体が好ましく、上記(3)及び(5)の重合体がより好ましい。
【0255】
すなわち、シクロオレフィン系樹脂は、得られるシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度を高くし、かつ光透過率を高くすることができる点で、下記一般式(B-1)で表される構造単位と下記一般式(B-2)で表される構造単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、一般式(B-2)で表される構造単位のみを含むか、又は一般式(B-1)で表される構造単位と一般式(B-2)で表される構造単位の両方を含むことがより好ましい。
【0256】
一般式(B-1)で表される構造単位は、前述の一般式(A-1)で表されるシクロオレフィン単量体由来の構造単位であり、一般式(B-2)で表される構造単位は、前述の一般式(A-2)で表されるシクロオレフィン単量体由来の構造単位である。
【0257】
【0258】
一般式(B-1)中、Xは、-CH=CH-又は-CH2CH2-を表す。R1~R4及びpは、それぞれ一般式(A-1)のR1~R4及びpと同義である。
【0259】
【0260】
一般式(B-2)中、Xは、-CH=CH-又は-CH2CH2-を表す。R5~R6及びpは、それぞれ一般式(A-2)のR5~R6及びpと同義である。
【0261】
本発明に係るシクロオレフィン系樹脂は、市販品であっても良い。
シクロオレフィン系樹脂の市販品の例には、JSR(株)製のアートン(Arton)G(例えばG7810等)、アートンF、アートンR(例えばR4500、R4900及びR5000等)、及びアートンRXが含まれる。
【0262】
シクロオレフィン系樹脂の固有粘度〔η〕inhは、30℃の測定において、0.2~5cm3/gの範囲内であることが好ましく、0.3~3cm3/gの範囲内であることがより好ましく、0.4~1.5cm3/gの範囲内であることが更に好ましい。
【0263】
シクロオレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、8000~100000の範囲内であることが好ましく、10000~80000の範囲内であることがより好ましく、12000~50000の範囲内であることが更に好ましい。
【0264】
シクロオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000~300000の範囲内であることが好ましく、30000~250000の範囲内であることがより好ましく、40000~200000の範囲内であることが更に好ましい。
【0265】
シクロオレフィン系樹脂の数平均分子量や重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にてポリスチレン換算にて測定することができる。
【0266】
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0mL/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500~2800000の範囲内の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0267】
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲にあると、シクロオレフィン系樹脂の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性、及びフィルムとしての成形加工性が良好となる。
【0268】
シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg[℃]は、通常、110℃以上であり、110~350℃の範囲内であることが好ましく、120~250℃の範囲内であることがより好ましく、120~220℃の範囲内であることが更に好ましい。
【0269】
ガラス転移温度Tg[℃]が110℃以上であると、高温条件下での変形を抑制しやすい。
一方、ガラス転移温度Tg[℃]が350℃以下であると、成形加工が容易となり、成形加工時の熱による樹脂の劣化も抑制しやすい。
【0270】
シクロオレフィン系樹脂の含有量は、フィルムに対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0271】
(3.1.2)アクリル系樹脂
本発明に係るアクリル系樹脂は、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルの重合体であって、他のモノマーとの共重合体も含まれる。
したがって、本発明に係るアクリル系樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。
【0272】
樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位が50~99質量%の範囲内、及びこれと共重合可能なほかの単量体単位が1~50質量%の範囲内からなるものが好ましい。
【0273】
共重合で形成されるアクリル系樹脂を構成するほかの単位としては、アルキル数の炭素数が2~18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1~18のアルキルアクリレート、メタクリル酸イソボルニル、2-ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β-不飽和酸、アクリロイルモルホリン、N-ヒドロキシフェニルメタクリルアミド等のアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β-不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N-置換マレイミド、グルタルイミド及びグルタル酸無水物等が挙げられる。
【0274】
上記単位より、グルタルイミド及びグルタル酸無水物を除いた単位を形成する共重合可能な単量体としては、上記単位に対応した単量体が挙げられる。
【0275】
すなわち、アルキル数の炭素数が2~18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1~18のアルキルアクリレート、メタクリル酸イソボルニル、2-ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β-不飽和酸、アクリロイルモルホリン、Nヒドロキシフェニルメタクリルアミド等のアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β-不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド及びN-置換マレイミド、等の単量体が挙げられる。
【0276】
また、グルタルイミド単位は、例えば(メタ)アクリル酸エステル単位を有する中間体樹脂に1級アミン(イミド化剤)を反応させてイミド化することにより形成できる(特開2011-26563号公報参照。)。
【0277】
グルタル酸無水物単位は、例えば(メタ)アクリル酸エステル単位を有する中間体樹脂を加熱することにより形成することができる(特許第4961164号公報参照。)。
【0278】
本発明に係るアクリル系樹脂には、上記の構造単位の中でも、機械的強度の観点から、メタクリル酸イソボルニル、アクリロイルモルホリン、N-ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、スチレン、ヒドロキシエチルメタクリレート、無水マレイン酸、マレイミド、N-置換マレイミド、グルタル酸無水物又はグルタルイミドが含まれることが、特に好ましい。
【0279】
本発明に係るアクリル系樹脂は、環境の温湿度雰囲気の変化に対する寸法変化を制御する観点や、フィルム生産時の金属支持体からの剥離性、有機溶媒の乾燥性、耐熱性及び機械的強度の改善の観点から、重量平均分子量(Mw)が50000~1000000の範囲内であることが好ましく、100000~1000000の範囲内であることがより好ましく、200000~800000の範囲内であることが特に好ましい。
【0280】
50000以上であれば、耐熱性及び機械的強度が優れ、1000000以下であれば、金属支持体からの剥離性及び有機溶媒の乾燥性に優れる。
【0281】
本発明に係るアクリル系樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。
【0282】
ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。
【0283】
重合温度については、懸濁又は乳化重合では30~100℃の範囲内、塊状又は溶液重合では80~160℃の範囲内で実施しうる。
【0284】
得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
【0285】
アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg[℃]は、80~120℃の範囲内であることが、フィルムの機械的強度を保持する観点から、好ましい。
【0286】
本発明に係るアクリル系樹脂としては、市販のものも使用することができる。
例えばデルペット60N、80N、980N、SR8200(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88、EMB-143、EMB-159、EMB-160、EMB-161、EMB-218、EMB-229、EMB-270、EMB-273(以上、三菱レイヨン(株)製)、KT75、TX400S及びIPX012(以上、電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
アクリル系樹脂は二種以上を併用することもできる。
【0287】
本発明に係るアクリル系樹脂は、添加剤を含有することが好ましく、添加剤の一例としては、国際公開第2010/001668号に記載のアクリル粒子(ゴム弾性体粒子)を、フィルムの機械的強度向上や寸法変化率の調整のために含有することが好ましい。
【0288】
このような多層構造アクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば三菱レイヨン社製の「メタブレンW-341」、カネカ社製の「カネエース」、クレハ社製の「パラロイド」、ロームアンドハース社製の「アクリロイド」、アイカ社製の「スタフィロイド」、ケミスノーMR-2G、MS-300X(以上、綜研化学(株)製)及びクラレ社製の「パラペットSA」等が挙げられ、これらは、単独ないし二種以上を用いることができる。
【0289】
アクリル粒子の体積平均粒子径は0.35μm以下であり、好ましくは0.01~0.35μmの範囲内であり、より好ましくは0.05~0.30μmの範囲内である。
粒子径が一定以上であれば、フィルムを加熱下で伸びやすくでき、粒子径が一定以下であれば、得られるフィルムの透明性を損ないにくい。
【0290】
本発明のフィルムは、柔軟性の観点から、曲げ弾性率(JIS K7171)が10.5GPa以下であることが好ましく、より好ましくは1.3GPa以下であり、更に好ましくは1.2GPa以下である。
【0291】
上記の曲げ弾性率は、フィルム中のアクリル系樹脂やゴム弾性体粒子の種類や量等によって変動し、例えばゴム弾性体粒子の含有量が多いほど、一般に曲げ弾性率は小さくなる。
【0292】
また、アクリル系樹脂として、メタクリル酸アルキルの単独重合体を用いるよりも、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキル等との共重合体を用いる方が、一般に曲げ弾性率は小さくなる。
【0293】
(3.1.3)セルロースエステル系樹脂
本発明のフィルムロールにおいては、セルロースエステル系樹脂を用いることも好ましい。
【0294】
本発明に用いられるセルロースエステルとは、セルロースを構成するβ-1,4結合しているグルコース単位中の2位、3位及び6位のヒドロキシ基(-OH)の水素原子の一部又は全部がアシル基で置換されたセルロースアシレート樹脂をいう。
【0295】
上記のセルロースエステルは特に限定されないが、炭素数2~22程度の直鎖又は分岐のカルボン酸のエステルであることが好ましい。
エステルを構成するカルボン酸は脂肪族カルボン酸でもよいし、環を形成してもよく、芳香族カルボン酸でもよい。
【0296】
上記の例としては、例えばセルロースのヒドロキシ基部分の水素原子が、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ラウロイル基、ステアロイル等の炭素数2~22のアシル基で置換されたセルロースエステルが挙げられる。
【0297】
エステルを構成するカルボン酸(アシル基)は、置換基を有してもよい。
エステルを構成するカルボン酸は、特に炭素数が6以下の低級脂肪酸であることが好ましく、炭素数が3以下の低級脂肪酸であることがさらに好ましい。
【0298】
なお、セルロースエステル中のアシル基は単一種であってもよいし、複数のアシル基の組み合わせであってもよい。
【0299】
好ましいセルロースエステルの具体例には、ジアセチルセルロース(DAC)、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロースアセテートの他、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが挙げられる。
これらのセルロースエステルは単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0300】
(アシル基の種類・置換度)
セルロースエステルのアシル基の種類及び置換度を調節することによって位相差の湿度変動を所望の範囲に制御することができ、フィルムの厚さの均一性を向上させることができる。
【0301】
セルロースエステルのアシル基の置換度が小さいほど位相差発現性が向上するため、薄膜化が可能となる。
一方で、アシル基の置換度が小さすぎると、耐久性が悪化するおそれがあり好ましくない。
【0302】
一方、セルロースエステルのアシル基の置換度が大きいほど位相差が発現しないため、製膜の際に延伸倍率を増加させる必要があるが、高延伸倍率で均一に延伸させることは難しく、このため、フィルムの厚さのバラつきが大きくなる(悪化する)。
【0303】
また、厚さ方向のリターデーション(位相差)であるRt湿度変動はセルロースのカルボニル基に水分子が配位することで生じるため、アシル基の置換度が高い、すなわち、セルロース中のカルボニル基が多いほど、Rt湿度変動が悪くなる傾向がある。
【0304】
セルロースエステルは、総置換度が2.1~2.5の範囲内であることが好ましい。
当該範囲とすることによって、環境変動(特に湿度によるRt変動)を抑制するとともに、フィルムの厚さの均一性が向上しうる。
【0305】
より好ましくは、製膜の際の流延性及び延伸性を向上させ、フィルムの厚さの均一性が一層向上する観点から、2.2~2.45の範囲内である。
【0306】
より具体的には、セルロースエステルは、下記式(a)及び(b)をともに満足する。下記式(a)及び(b)中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基又はブチリル基の置換度、若しくはその混合物の置換度である。
【0307】
式(a): 2.1≦X+Y≦2.5
式(b): 0≦Y≦1.5
【0308】
セルロースエステルは、セルロースアセテート(Y=0)、及びセルロースアセテートプロピオネート(CAP)(Y;プロピオニル基、Y>0)がより好ましく、さらに好ましくはフィルムの厚さのバラつきを低減させる点からY=0であるセルロースアセテートである。
【0309】
特に好ましく用いられるセルロースアセテートは、位相差発現性、Rt湿度変動、フィルムの厚さのバラつきを所望の範囲とする点から2.1≦X≦2.5(一層好ましくは2.15≦X≦2.45)のセルロースジアセテート(DAC)である。
【0310】
また、Y>0の場合には、特に好ましく用いられるセルロースアセテートプロピオネート(CAP)は、0.95≦X≦2.25、0.1≦Y≦1.2、2.15≦X+Y≦2.45である。
【0311】
上述のセルロースアセテート又はセルロースアセテートプロピオネートを用いることで、リターデーションに優れ、機械的強度、環境変動に優れたフィルムロールが得られる。
【0312】
なお、アシル基の置換度は、1グルコース単位あたりのアシル基の平均数を示し、1グルコース単位の2位、3位及び6位のヒドロキシ基の水素原子のいくつがアシル基に置換されているかを示す。
従って、最大の置換度は3.0であり、この場合には2位、3位及び6位のヒドロキシ基の水素原子が全てアシル基で置換されていることを意味する。
【0313】
これらアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していてもよいし、分布をもって置換していてもよい。
置換度は、ASTM-D817-96に規定の方法により求められる。
【0314】
所望の光学特性を得るために置換度の異なるセルロースアセテートを混合して用いてもよい。
上記の場合、異なるセルロースアセテートの混合比率は特に限定されない。
【0315】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)は、2×104~3×105の範囲内、さらには2×104~1.2×105の範囲内、また、さらには4×104~8×104の範囲内であると、得られるフィルムロールの機械的強度が高くなる観点から好ましい。
【0316】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)は、前述の測定条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた測定により算出する。
【0317】
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)は、2×104~1×106の範囲内、さらには2×104~1.2×105の範囲内、また、さらには4×104~8×104の範囲内であると得られるフィルムロールの機械的強度が高くなる観点から好ましい。
【0318】
セルロースエステルの原料セルロースは、特に限定されないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を挙げることができる。
また、それらから得られたセルロースエステルは、それぞれ任意の割合で混合使用することができる。
【0319】
セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。
【0320】
一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸等)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸等)、触媒(硫酸等)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。
【0321】
トリエステルにおいては、グルコース単位の三個のヒドロキシ基は、有機酸のアシル酸で置換されている。
【0322】
同時に二種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースエステル、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。
【0323】
次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル置換度を有するセルロースエステル樹脂を合成する。
その後、ろ過、沈殿、水洗、脱水、乾燥等の工程を経て、セルロースエステル樹脂ができあがる。具体的には特開平10-45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0324】
(3.2)その他の添加剤
本発明のフィルムロールは、その他の添加剤として上記熱可塑性樹脂の他に以下のものを含有していてもよい。
【0325】
(3.2.1)可塑剤
本発明のフィルムロールは、例えば偏光板保護フィルム等に加工性を付与する目的で少なくとも一種の可塑剤を含むことが好ましい。
可塑剤は単独で又は二種以上混合して用いることが好ましい。
【0326】
可塑剤の中でも、糖エステル、ポリエステル、及びスチレン系化合物からなる群から選択される少なくとも一種の可塑剤を含むことが、透湿性の効果的な制御及びセルロースエステル等の基材樹脂との相溶性を高度に両立できる観点から好ましい。
【0327】
当該可塑剤は、分子量が15000以下、さらには10000以下であることが、耐湿熱性の改善とセルロースエステル等の基材樹脂との相溶性を両立する観点から好ましい。
【0328】
当該分子量が10000以下である化合物が重合体である場合は、重量平均分子量(Mw)が10000以下であることが好ましい。
好ましい重量平均分子量(Mw)の範囲は100~10000の範囲内であり、更に好ましくは、400~8000の範囲内である。
【0329】
特に本発明の効果を得るためには、当該分子量が1500以下の化合物を、基材樹脂100質量部に対して6~40質量部の範囲内で含有することが好ましく、10~20質量部の範囲内で含有させることがより好ましい。
上記範囲内で含有させることにより、透湿性の効果的な制御と基材樹脂との相溶性を両立することができ、好ましい。
【0330】
(糖エステル)
本発明のフィルムロールには、加水分解防止を目的として、糖エステル化合物を含有させてもよい。
【0331】
具体的には、糖エステル化合物として、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有し、その構造のOH基の全て若しくは一部をエステル化した糖エステルを使用することができる。
【0332】
(ポリエステル)
本発明のフィルムロールには、ポリエステルを含有させることもできる。
【0333】
ポリエステルは特に限定されないが、例えばジカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体とグリコールとの縮合反応により得ることができる末端がヒドロキシ基となる重合体(ポリエステルポリオール)、又は当該ポリエステルポリオールの末端のヒドロキシ基がモノカルボン酸で封止された重合体(末端封止ポリエステル)を用いることができる。
【0334】
なお、ここでいうエステル形成性誘導体とは、ジカルボン酸のエステル化物、ジカルボン酸クロライド、ジカルボン酸の無水物のことである。
【0335】
(スチレン系化合物)
本発明のフィルムロールには、上記糖エステル、ポリエステルに加えて又はこれに代えて、フィルムの耐水性改善を目的として、スチレン系化合物を用いることもできる。
【0336】
スチレン系化合物は、スチレン系モノマーの単独重合体であってもよいし、スチレン系モノマーとそれ以外の共重合モノマーとの共重合体であってもよい。
【0337】
スチレン系化合物におけるスチレン系モノマー由来の構造単位の含有割合は、分子構造が一定以上の嵩高さを有するためには、好ましくは30~100モル%の範囲内、より好ましくは50~100モル%の範囲内でありうる。
【0338】
スチレン系モノマーの例には、スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のアルキル置換スチレン類;4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン等のハロゲン置換スチレン類;p-ヒドロキシスチレン、α-メチル-p-ヒドロキシスチレン、2-メチル-4-ヒドロキシスチレン、3,4-ジヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン類;ビニルベンジルアルコール類;p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、m-tert-ブトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン類;3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸等のビニル安息香酸類;4-ビニルベンジルアセテート;4-アセトキシスチレン;2-ブチルアミドスチレン、4-メチルアミドスチレン、p-スルホンアミドスチレン等のアミドスチレン類;3-アミノスチレン、4-アミノスチレン、2-イソプロペニルアニリン、ビニルベンジルジメチルアミン等のアミノスチレン類;3-ニトロスチレン、4-ニトロスチレン等のニトロスチレン類;3-シアノスチレン、4-シアノスチレン等のシアノスチレン類;ビニルフェニルアセトニトリル;フェニルスチレン等のアリールスチレン類、インデン類等が含まれる。
スチレン系モノマーは、一種類であっても、二種類以上を組み合わせてもよい。
【0339】
(3.2.2)任意成分
本発明のフィルムロールは、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、マット剤、アクリル粒子、水素結合性溶媒及びイオン性界面活性剤等の他の任意成分を含みうる。
これらの成分は、基材樹脂100質量部に対して0.01~20質量部の範囲内で添加することができる。
【0340】
(酸化防止剤)
本発明のフィルムロールは、酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。
特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系の各化合物を好ましく用いることができる。
【0341】
これらの酸化防止剤等は、フィルムの主原料である樹脂に対して0.05~20質量%の範囲内、好ましくは0.1~1質量%の範囲内で添加される。
これらの酸化防止剤等は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。
例えばラクトン系、リン系、フェノール系及び二重結合系化合物の併用は好ましい。
【0342】
(着色剤)
本発明のフィルムロールは、本発明の効果を損なわない範囲内で、色味調整のために、着色剤を含むことが好ましい。
【0343】
着色剤というのは染料や顔料を意味し、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果又はイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものを指す。
【0344】
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料等が有効である。
【0345】
(紫外線吸収剤)
本発明のフィルムロールは、偏光板の視認側やバックライト側に用いられることもできることから、紫外線吸収機能を付与することを目的として、紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0346】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール系、2-ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0347】
例えば2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン及び2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
上記紫外線吸収剤は、一種単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0348】
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、一般には、基材樹脂に対して、0.05~10質量%の範囲内、好ましくは0.1~5質量%の範囲内で添加される。
【0349】
(微粒子)
本発明のフィルムロールは、フィルムロールに滑り性を付与する微粒子を添加することが好ましい。
特に、本発明に係るフィルム表面の滑り性を向上し、巻取り時の滑り性を向上し、傷の発生やブロッキングの発生を防止する観点からも、微粒子を添加することは有効である。
【0350】
微粒子としては、得られるフィルムロールの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機微粒子又は有機微粒子どちらでもよいが、無機微粒子がより好ましい。
これらの微粒子は、単独でも二種以上併用しても使用できる。
【0351】
粒径や形状(例えば針状と球状等)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。
【0352】
上記微粒子を構成する化合物の中でも、前記シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂やセルロースエステル系樹脂と屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。
【0353】
二酸化ケイ素の具体例としては、アエロジル(登録商標)200V、アエロジル(登録商標)R972V、アエロジル(登録商標)R972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル株式会社製)、シーホスター(登録商標)KEP-10、シーホスター(登録商標)KEP-30、シーホスター(登録商標)KEP-50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック(登録商標)100(富士シリシア株式会社製)、ニップシール(登録商標)E220A(日本シリカ工業株式会社製)及びアドマファイン(登録商標)SO(株式会社アドマテックス製)等の商品名を有する市販品等が好ましく使用できる。
【0354】
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムロールの透明性を良好にできるので好ましい。
【0355】
粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。
【0356】
粒子の大きさが小さすぎると滑り性が改善されない場合があるので、80~180nmの範囲内であることが特に好ましい。
なお、粒子の大きさとは、粒子が一次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。
また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
【0357】
微粒子は、基材樹脂に対して、0.05~10質量%の範囲内、好ましくは0.1~5質量%の範囲内で添加されることが好ましい。
【0358】
4.偏光板
本発明のフィルムロールの一部のフィルムは、偏光板に具備されることで好適に用いることができる。
偏光板は、一般に、偏光子フィルム(「偏光フィルム」又は「偏光子膜」ともいう。)とその両面に、積層された透明な樹脂フィルムとで構成されており、本発明のフィルムロールの一部のフィルムは、例えば当該樹脂フィルムとして偏光板に具備されうる。
【0359】
偏光板としては、例えば偏光子フィルムを用いた偏光子層と、樹脂フィルムを用いた偏光板保護フィルムと、それらの間に配置された接着層とを有した構成のものが挙げられる。
【0360】
(4.1)偏光子層
上記の偏光子層は、少なくとも偏光子フィルムからなる層である。
ここで、「偏光子」とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子をいう。
【0361】
偏光フィルムとしては、例えばポリビニルアルコール系の偏光フィルムやセルロースエステル系の偏光フィルムが挙げられるが、ポリビニルアルコール系の樹脂はセルロースエステル系樹脂に比べ、透明性、光学特性、耐久性等に優れている点から好ましい。
【0362】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
【0363】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素又は二色性染料で染色したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよいし、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素又は二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、さらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。
偏光子層の吸収軸は、通常、最大延伸方向と平行である。
【0364】
例えば特開2003-248123号公報、特開2003-342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1~4モル%、重合度2000~4000、けん化度99.0~99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが用いられる。
【0365】
偏光子層の厚さは、5~30μmであることが好ましく、偏光板を薄型化するため等から、5~20μmであることがより好ましい。
【0366】
(4.2)偏光板保護フィルム
本発明のフィルムロールの一部のフィルムは、偏光子層の少なくとも一方の面(少なくとも液晶セルと対向する面)に配置することができ、偏光板保護フィルム又は位相差フィルムとして用いることができる。
偏光板保護フィルムの偏光子層が積層される面は、後述の活性化処理を施してもよい。
【0367】
本発明のフィルムロールの一部のフィルムが、偏光板保護フィルムとして偏光子層の一方の面のみに配置されている場合、偏光子層の他方の面には、位相差フィルム等の他の光学フィルムが配置され得る。
【0368】
他の光学フィルムの例には、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY-HA、KC2UA、KC4UA、KC6UA、KC8UA、KC2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フィルム(株)製)などが含まれる。
【0369】
他の光学フィルムの厚さは、例えば5~100μm、好ましくは40~80μmであり得る。
【0370】
(4.3)接着層
接着層は、本発明のフィルムロールの一部のフィルム(又は他の光学フィルム)と偏光子層との間に配置された、水系接着剤又は紫外線硬化型接着剤を乾燥させたものである。
【0371】
接着層の厚さは、例えば0.01~10μm、好ましくは0.03~5μm程度でありうる。
【0372】
(水系接着剤)
水系接着剤の例には、ビニル系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系などが含まれる。
【0373】
偏光子層にポリビニルアルコール系偏光フィルムが用いられた場合には、接着性が得られやすい観点等から、ビニル系樹脂を含む水系接着剤が好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂を含む水系接着剤(完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液など)がより好ましい。
【0374】
ポリビニルアルコール系樹脂を含む水系接着剤は、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などの水溶性架橋剤をさらに含んでもよい。
【0375】
(紫外線硬化型接着剤)
紫外線硬化型接着剤は、光ラジカル重合性組成物であってもよいし、光カチオン重合性組成物であってもよい。
中でも、光カチオン重合性組成物が好ましい。
【0376】
光カチオン重合性組成物は、エポキシ系化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む。
【0377】
エポキシ系化合物とは、分子内に1以上、好ましくは2以上のエポキシ基を有する化合物である。
【0378】
エポキシ系化合物の例には、脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させて得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1以上有する脂環式エポキシ系化合物が含まれる。
エポキシ系化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0379】
光カチオン重合開始剤は、例えば芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩;鉄-アレーン錯体などでありうる。
【0380】
光カチオン重合開始剤は、必要に応じてオキセタン、ポリオールなどのカチオン重合促進剤、光増感剤、溶剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0381】
(4.4)偏光板の製造方法
本発明に係る偏光板の製造方法は、1)偏光板保護フィルムの表面に、活性化処理を施す工程と、2)偏光板保護フィルムの活性化処理が施された表面に、水系接着剤又は紫外線硬化型接着剤を介して偏光子層(偏光フィルム)を積層する工程と、3)得られた積層物を乾燥させる工程と有する。
【0382】
1)の工程について
偏光板保護フィルムの表面(偏光子層と貼り合わせる面)に活性化処理を施す。
それにより、偏光子層との接着性を得られやすくする。
【0383】
具体的には、活性化処理により、偏光板保護フィルムに含まれる特定のグラフト重合体の側鎖のシロキサン結合やエーテル結合、3級炭素原子などを親水化させて、水系接着剤との親和性を高めたり、相互作用させやすくしたりすることで、偏光板保護フィルムと偏光子層とを接着させやすくする。
【0384】
活性化処理の例には、コロナ処理、プラズマ処理及び鹸化処理が含まれ、好ましくはコロナ処理及びプラズマ処理であり、より好ましくはコロナ処理である。
【0385】
活性化処理条件は、特定のグラフト重合体の側鎖に含まれるシロキサン結合やエーテル結合、3級炭素原子などを十分に活性化させうる程度であればよい。
活性化処理がコロナ処理である場合、照射量は、100~1000[W・min/m2]の範囲内であることが好ましく、150~900[W・min/m2]の範囲内であることがより好ましい。
【0386】
2)の工程について
次いで、偏光板保護フィルムの活性化処理が施された面に、水系接着剤又は紫外線硬化型接着剤を介して偏光子層を積層する。
【0387】
3)の工程について
次いで、得られた積層物を乾燥させて、偏光板を得る。
【0388】
乾燥は、加熱乾燥によって行うことができる。
乾燥温度は、水系接着剤又は紫外線硬化型接着剤が十分に乾燥する温度であればよく、例えば60~100℃の範囲内としうる。
【0389】
5.表示装置
本発明のフィルムロールの一部のフィルムは、表示装置に具備されることで好適に用いることができる。
前記表示装置としては、液晶表示装置、有機EL表示装置等の各種画像表示装置が挙げられる。
以下に本発明のフィルムロールの一部のフィルムの使用例として、偏光板保護フィルムとして偏光子及び液晶表示装置に具備された場合について説明する。
【0390】
(5.1)液晶表示装置
本発明の表示装置としては、具体的には、例えば液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板とを含む液晶表示装置が挙げられる。
【0391】
図18は、本発明の液晶表示装置の構成の一例を示した模式図である。
図18に示されるように、液晶表示装置(300)は、液晶セル(220)と、それを挟持する第1の偏光板(210)及び第2の偏光板(230)と、バックライト(240)とを含む。
【0392】
液晶セル(220)の表示モードは、例えばSTN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS等の種々の表示モードであってよく、高いコントラストを得るためにはVA(MVA、PVA)モードであることが好ましい。
【0393】
第1の偏光板(210)は、第1の偏光子(212)と、第1の偏光子(212)の液晶セルとは反対側の面に配置された偏光板保護フィルム(211)と、第1の偏光子(212)の液晶セル側の面に配置された偏光板保護フィルム(213)とを含む。
【0394】
第2の偏光板(230)は、第2の偏光子(232)と、第2の偏光子(232)の液晶セル側の面に配置された偏光板保護フィルム(231)と、第2の偏光子(232)の液晶セルとは反対側の面に配置された偏光板保護フィルム(233)とを含む。偏光板保護フィルム(213)と(231)の一方は、必要に応じて省略されうる。
【0395】
そして、偏光板保護フィルム(211)と(233)の少なくとも一方が、本発明に係る樹脂フィルムでありうる。
【0396】
(5.2)その他の用途
本発明のフィルムロールの一部のフィルムは、液晶表示装置の偏光板保護フィルムとしてだけでなく、タッチパネルを備えた画像表示装置や、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイ等の画像表示装置等の保護フィルムとしても好ましく用いることができる。
【0397】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0398】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0399】
[A フィルムロールの作製]
[A.1 フィルムロールNo.1の作製]
フィルムの製膜には、溶液流延製膜法を用いた。
【0400】
(ドープ調製工程〔S1〕)
〈環状ポリオレフィン重合体〔P-1〕の合成〉
精製トルエン100質量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100質量部を撹拌装置に投入した。
【0401】
次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート-Ni25mモル%(対モノマー質量)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225モル%(対モノマー質量)及びトルエンに溶解したトリエチルアルミニウム0.25モル%(対モノマー質量)を撹拌装置に投入した。
室温で撹拌しながら18時間反応させた。
【0402】
反応終了後過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物沈殿を生成させた。
沈殿を精製し得られた重合体を真空乾燥で65℃にて24時間乾燥することにより環状ポリオレフィン重合体〔P-1〕を合成した。
【0403】
〈環状ポリオレフィン溶液(ドープ〔D-1〕)の調製〉
下記組成物〔1〕をミキシングタンクに投入し、撹拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過して環状ポリオレフィン溶液(ドープ〔D-1〕)を調製した。
【0404】
《組成物〔1〕》
・環状ポリオレフィン重合体〔P-1〕 25質量部
・ジクロロメタン 65質量部
・エタノール 10質量部
【0405】
〈微粒子分散液〔1〕の調製〉
次に下記組成物〔2〕を分散機に投入し、添加剤としての微粒子分散液〔1〕を調製した。
【0406】
《組成物〔2〕》
・微粒子(アエロジルR812:日本アエロジル社製、一次平均粒子径:7nm、見掛け比重50g/L) 4質量部
・ジクロロメタン 76質量部
・エタノール 20質量部
【0407】
〈製膜用ドープ〔1〕の調製〉
上記環状ポリオレフィン溶液(ドープ〔D-1〕)100質量部と微粒子分散液〔1〕0.75質量部とを混合し、製膜用ドープ〔1〕(樹脂組成物 シクロオレフィン系樹脂:COP)を調製した。
【0408】
(流延工程〔S2〕)
ドープ調製工程〔S1〕で調製された製膜用ドープ〔1〕(樹脂組成物 シクロオレフィン系樹脂:COP)を、加圧型定量ギアポンプを通して、導管によって流延ダイに送液し、無限に移送する回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体上の流延位置に流延ダイからドープを製膜ラインで1800mm幅で流延し、ドープが自己支持性を持つまで、支持体上で加熱し、支持体から剥離ローラーによって流延膜が剥離可能になるまで溶媒を蒸発させることにより乾燥させ、流延膜を形成した。
【0409】
(剥離工程〔S3〕)
流延工程〔S2〕にて、流延膜を形成した後、流延膜を支持体から剥離ローラーによって自己支持性をもたせたまま剥離した。
【0410】
(収縮工程〔S4〕)
フィルムを幅手保持しない状態で高温処理して、フィルムの密度を高めることによりフィルムを幅手方向に収縮率7%で収縮させた。
【0411】
(第1乾燥工程〔S5〕)
その後、フィルムを支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させた。
フィルムの残留溶媒量を下記の方法により測定したところ、5質量%以下であった。
【0412】
〈残留溶媒量測定〉
残留溶媒量は、ガスクロマトグラフィーにより下記のように質量分析した。
すなわち、任意の場所のフィルム片を採取し、フィルム中に残留している溶媒の揮発を防ぐため、速やかにバイアル瓶に確保して栓をした。
次に、バイアル瓶に針を差し込み、ガスクロマトグラフ(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いて質量分析した。
【0413】
なお、残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量[質量%]={(M-N)/N}×100
なお、上記式中のMは、流延膜又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量[g]であり、上記式中のNは、上記試料を115℃で1時間の加熱した後の質量[g]である。
【0414】
(第1延伸工程〔S6〕)
その後、フィルムをテンター延伸装置内で搬送させ、横延伸した。
【0415】
(第1切断工程〔S7〕)
延伸されたフィルムの幅手方向の両端部を切断した。
【0416】
(第2延伸工程〔S8〕)
第1延伸工程と同様に、フィルムをテンター延伸装置により延伸した。
フィルムの残留溶媒量を上記の方法により測定したところ、1~5質量%であった。
【0417】
(第2切断工程〔S9〕)
第1切断工程と同様に、延伸されたフィルムの幅手方向の両端部を切断した。
【0418】
(第2乾燥工程〔S10〕)
第1乾燥工程と同様に、フィルムを支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させた。
フィルムの残留溶媒量を上記の方法により測定したところ、0.1~2質量%であった。
【0419】
(第3切断工程〔S11〕)
第1切断工程及び第2切断工程と同様に、延伸されたフィルムの幅手方向の両端部を切断した。
【0420】
(巻取工程〔S12〕)
上記のフィルムを巻取速度(フィルムを搬送するラインスピード)60m/分にてフィルムロール幅は2000mmとし、巻き長は10000m巻き取った。
巻取り時のフィルムの厚さを測定したところ、40μmであった。
【0421】
また、巻取り装置及びTR(タッチローラー)を使用して、巻取り時の巻き芯周辺部のタッチ圧を16.0N/m、張力を40N/mに調整し、巻き中央部のタッチ圧を16.0N/m、張力を40N/mに調整し、巻き外周辺部のタッチ圧を15.2N/m、張力を40N/mに調整し、テーパー70%、及びコーナー25%にて実施した。
【0422】
フィルムの厚さは、インラインリターデーション・膜厚測定装置RE-200L2T-Rth+膜厚(大塚電子(株)製)によって1612箇所測定し、フィルムの表面に形成された凹凸構造の最も高い部分と最も低い部分との高さの差を算出し、その平均値とした。
このとき、トラバース移動速度は100mm/secで行った。
【0423】
以上の工程により、フィルムロールNo.1の作製を行った。
【0424】
[A.2 フィルムロールNo.2~13の作製]
ドープ調製工程〔S1〕において、製膜用ドープ(樹脂組成物)の種類、巻取工程〔S12〕における巻き長[m]、巻取速度[m/分]、フィルムの厚さ[μm]、巻取り時の巻き芯周辺部のタッチ圧[N/m]及び張力[N/m]、巻き中央部のタッチ圧[N/m]及び張力[N/m]、巻き外周辺部のタッチ圧[N/m]及び張力[N/m]を表Iのように変更した以外は、フィルムロールNo.1と同様にフィルムロールNo.2~13を作製した。
【0425】
【0426】
[B 巻き芯周辺部、巻き中央部及び巻き外周辺部の空隙層の厚さの算出]
作製した各フィルムロールを40℃・80%RH下で1週間保存した後、前述した(空隙層の厚さの算出方法の一例)にて巻き芯周辺部、巻き中央部及び巻き外周辺部の空隙層の厚さを算出した。
【0427】
以下にフィルムロールNo.1を用いて巻き芯周辺部の空隙層の厚さを算出した具体的な方法を示す。
【0428】
1週間保存後のフィルムロールNo.1の幅手方向側面部の巻き径20%となる位置(P
20)を中心として、当該側面部を撮影し、前記画像データを取得し、取得した画像データに対してエッジ強調処理を行い
図5のような空隙層の厚さを算出するための加工画像を得た。
【0429】
その後、加工画像の中心(P20)を始点とし、フィルム面に垂直に巻き外側に向かって第100層目にある位置の点を終点として半径方向長さを測定し、下記式(A)を用いて巻き芯周辺部の空隙層の厚さX[μm]を算出した。
【0430】
式(A) 空隙層の厚さX[μm]=〔半径方向の長さ[μm]-(膜厚計で測定したフィルム層の1層あたりの平均厚さ[μm])×(層数)〕÷(層数)
【0431】
測定した値を代入すると、フィルムロールNo.1の空隙層の厚さX[μm]=〔4020μm-40.00μm×100〕÷100=0.20μmとなった。
【0432】
巻き中央部の空隙層の厚さについては、幅手方向側面部の巻き径50%となる位置(P50)を中心として、当該側面部を撮影し、加工画像の中心(P50)を始点としたこと以外は巻き芯周辺部の空隙層の厚さと同様にして算出した。
【0433】
巻き外周辺部の空隙層の厚さについては、幅手方向側面部の巻き径80%となる位置(P80)を中心として、当該側面部を撮影し、加工画像の中心(P80)を始点としたこと以外は巻き芯周辺部の空隙層の厚さと同様にして算出した。
【0434】
[C 評価]
[C.1 巻きズレの量による評価]
(評価方法)
上記の1週間保存後の各フィルムロールを輸送環境記録計「タフロガーTR-1000」(IMV株式会社製)にセットし、振動試験にてフィルムロールの幅手方向に5.8m/s2の加速度を30分間与え、フィルムロールの幅手方向の端面の左右のズレ量を測定し、以下の評価基準に基づいて、評価した。結果を表Iに示す。
【0435】
以下において、上記の「左右のズレ量」について説明する。
図19は、フィルムロールの幅手方向に直交する方向から見たフィルムロールの幅手方向の端面の左右のズレ量を表す概念図である。
【0436】
フィルムロール(30)は、振動試験を行う前は幅手方向の端面が左右にずれておらず、このときの端面をフィルムロールの幅手方向の端面のうち最も短い端面(SS)とする。
【0437】
また、フィルムロールに振動試験を行ったことにより
図19のようにフィルムロールの端面にそれぞれズレが生じ、そのうちの最もズレが大きく生じた端面をフィルムロールの幅手方向のうちもっとも長い端面(S
L)とする。
【0438】
そして、上記のフィルムロールの幅手方向の端面のうち最も短い端面(SS)とフィルムロールの幅手方向のうちもっとも長い端面(SL)との幅手方向へのズレの長さを「フィルムロールの幅手方向の端面の左右のズレ量」とした。
【0439】
(評価基準)
○:ズレ量が2mm未満であった。
△:ズレ量が2mm以上、10mm未満であった。
×:ズレ量が10mm以上であった。
【0440】
[C.2 長期保管時の貼り付き故障の程度による評価]
(評価方法)
上記の各フィルムロールを常温の倉庫にて一ヶ月間保管し、その後各フィルムロールのフィルムを一部巻きほぐして、フィルムとフィルムロールの状態を目視観察し、以下の評価基準に基づいて、評価した。結果を表Iに示す。
【0441】
(評価基準)
◎:フィルムどうしの貼り付きが見られず、シワ及び変形等の変化がない。
〇:フィルムどうしの貼り付きがややあり、フィルムロールの表面にわずかなシワが見られるが、変形は認められない。
△:フィルムどうしの貼り付きがあり、フィルムロールの表面にシワが見られ、一部に変形が認められるが、実用上問題ない。
×:フィルムどうしに強い貼り付きがあり、フィルムロールの表面から内部にかけて強いシワが見られ、当該フィルムロールの表面に強い変形が認められ、内部まで変形が認められる。
【0442】
[D まとめ]
表Iに示した条件及び評価結果等から明らかなように、本発明の実施例は、比較例に対し、振動試験実施時に巻きズレがなく、長期保管時においても貼り付き故障がないことがわかる。