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特開2023-173169中空フィラーと多孔性フィラーが含まれた機能性ネイルポリッシュの製法
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  • 特開-中空フィラーと多孔性フィラーが含まれた機能性ネイルポリッシュの製法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173169
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】中空フィラーと多孔性フィラーが含まれた機能性ネイルポリッシュの製法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20231130BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 8/72 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q3/02
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085235
(22)【出願日】2022-05-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】522207109
【氏名又は名称】金 榮 洙
【氏名又は名称原語表記】KIM, Young Soo
【住所又は居所原語表記】102dong 1102ho, 266 World cup-daero, Yeonje-gu, Busan Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】金 榮 洙
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB501
4C083AB502
4C083AD011
4C083CC28
4C083DD06
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有機質高分子のベースコート層とトップコート層からなるネイルポリッシュにおいて、ベースコート剤及びトップコート剤の物性が向上し、ネイルの湾曲した形態に適応される可塑性、摩擦に対する物理的耐磨耗性、熱的環境における熱的変形が防止され、耐熱性等が向上した、ネイルポリッシュの製法を提供する。
【解決手段】有機質高分子のベースコート層とトップコート層からなるネイルポリッシュの製法であって、ベースコート剤に、3-(2-アミノメチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン(APTMS)により表面改質処理された無機質シリカ系の内部が中空であるグラスバブルの微粒子からなるフィラーを添加する工程、トップコート剤に、無機質セラミック系の有機-無機混成体からなる洞孔を有する多孔性のフィラーを添加する工程、を含む製法である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機質高分子のベースコート層とトップコート層からなるネイルポリッシュの製造において、
ベースコート剤に、無機質シリカ系の内部が中空(hollow)であるグラスバブル(glass bubble)の微粒子からなるフィラーを、少なくとも0.5~15wt.%量で添加するが、
前記ベースコート剤と前記フィラーとの親和性を高めるために、前記フィラーを、シラン系である(3-(2-アミノメチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン(APTMS)10ml、1Mとクロロホルムの混合液に入れ、常温で12時間反応させてから、濾過した前記フィラーを、クロロホルムとジクロロホルム(1:1容積比)の混合溶液に入れ、40℃で、12時間反応させ、次いで、オーブンで、80℃で12時間反応させ、フィラーの表面を改質処理する第1ステップと、
トップコート剤に、無機質セラミック系のナノサイズの洞空を有する多孔性フィラーを、少なくとも0.1~10wt.%量で添加するが、
前記トップコート剤と前記フィラーとの親和性を高めるために、界面活性剤である臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTABr)を蒸溜水に溶かし、ここに、HSOを加えて、pH=2またはpH<2に調節し、前記フィラーを入れて撹拌した後、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタンを加え、2時間撹拌し、ここに、NaOH液を加えて、pH.11に調節し、17時間撹拌してから、1~3日間熟成した後、フィラーを蒸溜水で洗浄し、50℃の温度で乾燥させて、無機-有機混成体のフィラーで製造する第2ステップと、からなることを特徴とする中空フィラーが含まれた機能性ネイルポリッシュの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空フィラーと多孔性フィラーが含まれた機能性ネイルポリッシュの製法に係り、さらに詳しくは、有機質高分子のベースコート層とトップコート層からなるネイルポリッシュにおいて、ベースコート剤に、無機質シリカ系の内部が中空(hollow)であるグラスバブル(glass bubble)の微粒子からなるフィラーを含み、前記ベースコート剤との親和性を高めるために、前記フィラーの表面を有機質で改質処理する第1ステップと、前記トップコート剤に、無機質セラミック系のナノサイズの洞空を有する多孔性フィラーを含み、前記トップコート剤との親和性を高めるために、前記フィラーを有機-無機混成体で製造する第2ステップと、からなる。
【0002】
前記ネイルポリッシュのそれぞれの有機質の高分子コート剤は、無機質の内部が中空であるグラスバブルの微粒子からなるフィラーと、洞空を有する多孔性のフィラーとにより、有機質コート剤の物性が改善され、機能性が与えられ、コート層の収縮性が防止され、軽量であり、可塑性が良好であり、ネイルの曲面に安全に付着され、保管時、熱的変性が防止され、接着力が長持ちすることができる。
【背景技術】
【0003】
主に、女性の手足の爪の衛生的な保護及び装飾的な審美感を高めるための様々なネイルポリッシュ、またはネイルシールフィルム等があるが、いくつかの例を挙げると、次の通りである。
【0004】
特許文献1におけるピールオフタイプの水性ネイルポリッシュ組成物は、人体に有害な石油化学系有機溶媒を用いるとともに、付着力及び耐水性に優れ、除去時、きれいに剥がせる水性ネイルポリッシュ組成物は、被膜形成剤として、ポリウレタンエマルジョン、アクリルウレタンエマルジョン、及びアクリル酸共重合体エマルジョンが混合して用いられ、ここに、沈降防止剤、アクリル漸増剤、ウレタン漸増剤、粘度安定剤、ワックスエマルジョン、凍結防止剤、色素分散剤、表面スリップ剤、表面レベリング剤、抗菌剤、及び色素類を含むものとなっている。
【0005】
特許文献2における乾式ネイルシールは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの下部面に形成されたシリコンコート層またはワックスコート層と、前記シリコンコート層またはワックスコート層の下部面に形成されたエナメルを用いた光沢層と、前記光沢層の下部面に形成された色発現層と、前記色発現層の下部面に形成された白色層と、前記白色層の下部面に形成された接着層と、前記接着層に仮接着された離型紙と、で構成されることにより、一般のネイルアート施術に比べて、マニキュアやネイルケアグッズが手に付かず、約7~10日間、長時間維持されることはもとより、自然屈曲を有する爪に極めて良好に密着し、白色の背景色印刷上に明度の低い様々な色で模様を実現することができるという効果がある。
【0006】
特許文献3におけるゲル組成物及びネイルポリッシュは、ゲル組成物において、0.01~40重量%の次の一般式(1)または(2)で表われるプロピレンオキシド鎖及び/またはエチレンオキシド鎖を有する少なくとも一つの陽イオン性界面活性剤と、1~20重量%の次の一般式(3)で表われる陽イオン性界面活性剤とで有機的に変形されたクレイ及び溶媒を含んでいることを特徴として、コート剤の保管中、層分離がなく、コーティング光沢が良好であり、ネイルポリッシュを手足の爪に塗ってから3日後の状態を観察した結果、状態が良好であった。
【0007】
その他、いろいろ様々なネイルシールフィルム、またはネイルポリッシュに関する先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-1768558号公報(2017.08.16.公告)
【特許文献2】大韓民国登録特許第10-1337224号公報(2013.12.05.公告)
【特許文献3】大韓民国登録特許第10-0132721号公報(1998.04.13.公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、ネイルシールフィルムやネイルポリッシュの有機質高分子の主剤には、物性の改善のために、無機質フィラーが添加され、殆ど、ネイルシールのカラー印刷層の発現を高めるために、主に、酸化チタン(TiO)の白色粉末が添加されている。
【0010】
前記TiOのフィラーは、結晶構造ではなく、アナターゼ、またはルチル型結晶構造を有する白色粉末であって、ベースコーティングは、製造上、厚さが厚くて、乾燥時間が長くかかり、高い温度が要求される。
【0011】
また、流通過程で発生し得る流通経路や保管時の高い熱による変性や接着性の低下等の問題が発生することがある。
【0012】
また、TiOは、密度が大きいので、沈降防止剤を添加しなければならず、これにより、熱的環境でのコート剤の有機物性の変化を引き起こしてしまうという問題点がある。
【0013】
本発明は、上記した問題点を解決することを課題とする。
【0014】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであって、ネイルポリッシュのベースコート剤には、有機質により表面改質処理された無機質シリカ系の内部が中空であるグラスバブルの微粒子からなるフィラーを含み、トップコート剤には、無機質セラミック系の有機-無機混成体からなる洞孔を有する多孔性のフィラーを含んで製造することにより、ベースコート剤及びトップコート剤の物性が向上し、ネイルの湾曲した形態に適応される可塑性、摩擦に対する物理的耐磨耗性、熱的環境における熱的変形が防止され、耐熱性等が向上した中空フィラーと多孔性フィラーが含まれた機能性ネイルポリッシュの製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
有機質高分子素材からなる接着剤層、ベースコート層、カラー印刷層、及びトップコート剤からなるネイルポリッシュにおいて、前記ベースコート剤のフィラーとして、無機質シリカ系のグラスバブルの微粒子からなるフィラーを含み、前記フィラーと前記有機質ベースコート剤との親和性を高めるために、前記ベースコート剤との親和性がある有機質で、前記フィラーの表面を改質処理する第1ステップと、前記トップコート剤のフィラーとして、無機質セラミック系の多孔性ナノサイズの微粒子からなるフィラーを含み、前記フィラーとトップコート剤との親和性を高めるために、前記フィラーを有機-無機混成体多孔性で製造する第2ステップと、からなる。
【0017】
本発明の上記した第1ステップは、ネイルポリッシュのベースコート剤の主剤が、アクリル樹脂とシラン系の高分子素材で組成されているので、前記ベースコート剤と前記無機質グラスバブルのフィラーとの親和性を高めるために、(3-(2-アミノメチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン(APTMS)を用いて、前記グラスバブルの微粒子の表面が改質されるように処理することである。
【0018】
前記グラスバブルのフィラーの表面は、類脂質で改質されているので、前記ベースコート剤との親和性が良好であり、ベースコート剤に前記グラスバブルのフィラーを混合すると、拡散性が良好であり、均一な分布で拡散して、フィラーがベースコート剤と一体で組成される。
【0019】
したがって、ベースコート剤は、添加されたフィラーにより、有機質物性が改善されて、ベースコート層の収縮が防止され、軽量であり、可塑性によりネイルの形態に沿った密着性が良好であり、貯蔵時の熱的変形が防止され、耐熱性が向上して、使用の便利性と保管性が良好になる。
【0020】
本発明の上記した第2ステップは、ベースコート剤のように、アクリルとシラン系の有機質高分子からなるトップコート剤との親和性を高めるために、無機質セラミック系のナノサイズの洞空を有する多孔性フィラーを有機-無機混成体で製造することである。
【0021】
多孔性をなすものは、ゾル-ゲル法を用いて、有機-混成モノマとして、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタンまたは1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン等が用いられる。
【0022】
製造された有機-無機混成体の微粒子のフィラーは、ナノサイズの洞空を有する多孔性からなるので、比重が軽く、前記トップコート剤と容易に混合され、前記ベースコート剤とともにトップコート剤の物性が向上する。
【0023】
したがって、ネイルポリッシュは、有機高分子素材の熱的脆弱性が補強され、耐熱性が向上して、外部からの熱的変性を防ぎ、コート剤の収縮が防止され、重量減少の効果及び可塑性により、爪が曲面に沿って安全に付着される。
【0024】
また、輸出時、倉庫に長期間貯蔵しても、ネイルポリッシュの接着性の低下がなく、熱的変性がないので、品質低下の恐れがない。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、ベースコート層とトップコート層からなるネイルポリッシュにおいて、有機質高分子のベースコート剤に含まれる無機質シリカ系の内部が中空であるグラスバブルの微粒子からなるフィラーの表面を、前記ベースコート剤との親和性を高めるために、有機質で改質処理する第1ステップと、有機質高分子からなる前記トップコート剤に含まれる無機質セラミック系のナノサイズの洞空を有する多孔性のフィラーを、前記トップコート剤との親和性を高めるために、有機-無機混成体で製造する第2ステップと、で製造されたので、従来、TiOの白色粉末をフィラーとして用いたものに比べて、別途の沈降防止剤の添加なしで、製造工程がそれほど容易であり、有機コート剤と無機フィラーが均一な分布で良好に結合されるので、ネイルポリッシュの物性がさらに向上する。
【0026】
したがって、耐熱性が向上して、長期保管時に熱的変形が防止され、軽くて、可塑性が良好であり、ネイルの曲面に沿って付着性がよく、軽量であり、爪を締め付けることがなく、ネイルに対するポリッシュの付着感が殆どなく、何回も繰り返して使用しても、接着性の低下がない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】グラスバブルフィラーの表面改質処理のIRデータを示すグラフである。
図2】洞空を有する多孔性フィラーの結晶構造を示すグラフである。
図3】多孔性フィラーの窒素ガスの吸・脱着等温線を示すグラフである。
図4】トップコート剤の多孔性フィラーの断面写真である。
図5】トップコート剤の耐熱性実験のグラフである。
図6】トップコート剤のフィラーの赤外線(IR)スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施例について、添付図面によって詳細に説明する。
【0029】
本実施例は、有機質高分子のベースコート剤のフィラーとして、無機質シリカ系の内部が中空であるグラスバブルの微粒子からなるフィラーを含み、前記フィラーと前記ベースコート剤との親和性を高めるために、前記フィラーの表面を、前記ベースコート剤との親和性がある有機質で改質処理する第1ステップと、有機質高分子の前記トップコート剤に含まれるフィラーとして、無機質セラミック系のナノサイズの洞空を有する多孔性微粒子からなるフィラーを含み、前記フィラーと前記トップコート剤との親和性を高めるために、前記トップコート剤との親和性がある有機質を用いて、前記フィラーを有機-無機混成体で製造する第2ステップと、で実施される。
【0030】
前記第1ステップのベースコート剤のフィラーの表面個質処理は、アクリル樹脂とシラン系を用いてなる有機質高分子のベースコート剤に含まれる無機質シリカ系の内部が中空であるグラスバブルの微粒子からなるフィラーとベースコート剤との親和性を高めるために、前記フィラーの表面を、前記ベースコート剤との親和性がある有機質を用いて改質処理する。
【0031】
前記フィラーの表面改質処理のために、前記ベースコート剤のシラン系との親和性があるアミノシランを表面の改質媒体とし、アミノシランは、(3-(2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン(CHO)Si(CH)3NHCHCHNH)97% Aldrich社製品)を用い、前記グラスバブルは、ソーダと石灰及びボロシリケートで製造された平均粒子の直径が16~65マイクロメーターであり、内部が空いている中空状態のグラスバブル(glass bubble)(3M社製品)を適用した。
【0032】
反応容器にアミノシラン10ml、1Mと乾燥したクロロホルム溶媒を加えた後、グラスバブル0.1gを入れ、常温で12時間反応させる。反応後、濾過して、クロロホルムとジクロロホルム(1:1容積比)で、40℃の温度で、12時間反応させる。
【0033】
以降、オーブンで、80℃の温度で、12時間反応させて、表面が改質されたグラスバブルのベースコート剤のフィラーを得る。
【0034】
図1において、(a)は、グラスバブルの表面改質処理を行っていないものであり、(b)(c)は、表面改質処理が行われたものであって、赤外線(IR)実験において、表面改質されなかった(a)に比べて、表面が改質された(b)(c)は、波数(wave number)2870cm-1と2960cm-1で、CHストレッチングが示され、1558cm-1で、NHピークが確認された。
【0035】
グラスバブルのフィラーは、TiOのフィラーに比べて、重量が軽く、表面積がさらに大きく、ミクロスフェア構造を有しており、断熱効果及び外部からの衝撃緩衝効果を有し、重量の減少、製造過程での流動性、コート剤の収縮性の防止等の長所がある。
【0036】
また、前記グラスバブルの表面改質処理により、フィラーとベースコート剤が均一な分布で分散し易い。
【0037】
また、ベースコート剤へのグラスバブルのフィラーの添加により、ベース有機質コート剤の物性が改善して品質が向上する。
【0038】
すなわち、前記ベースコート剤に、無機質シリカ系の内部が中空であるグラスバブルの微粒子からなるフィラーが、少なくとも0.5~15wt.%量で添加され、前記ベースコート剤との親和性を高めるために、前記フィラーの表面を有機質で改質処理することが最も好ましい。
【0039】
前記第2ステップのトップコート剤の有機-無機混成体フィラーの製造は、有機質高分子からなる前記トップコート剤に含まれる無機質セラミック系のナノサイズの洞空を有する多孔性微粒子からなるフィラーが含まれ、前記有機質トップコート剤との親和性を高めるために、前記多孔性フィラーを有機-無機混成体のフィラーで製造する。
【0040】
すなわち、前記トップコート剤に、無機質セラミック系のナノサイズの洞空を有する多孔性フィラーが、少なくとも0.1~10wt.%量で添加され、前記トップコート剤との親和性を高めるために、前記フィラーを、多孔性の有機-無機混成体フィラーで製造することが最も好ましい。
【0041】
実施例1
有機-無機混成モノマを用いて、多孔性セラミックフィラーを製造する。
【0042】
セラミックフィラーの多孔化は、ゾル-ゲル法を用いて、有機-無機混成モノマとして、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタンまたは1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン等が用いられ、多孔性のサイズは、所望のサイズに合う界面活性剤を用いる。
【0043】
界面活性剤である臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTABr)を蒸溜水に溶かしてから、HSOを加えて、pH=2またはpH<2に合わせ、十分に撹拌した後、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタンを加え、テフロン瓶に入れて、2時間撹拌する。その後、前記テフロン瓶にNaOH(aq)を加えて、pH.11に調節して合わせ、pH=9付近から沈殿物が生じ始める。この混合物を、17時間撹拌した後、常温で1~3日間熟成させる。生成物を吸い込んで濾過した後、蒸溜水で洗浄し、50℃の温度で乾燥させて、多孔性の有機-無機混成体のフィラーを得る。
【0044】
実施例2
オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドを、蒸溜水に少しの熱を加えて溶かしてから、NaOHを加えて、pH=11またはpH>11に調節して合わせた後、十分に撹拌する。この混合物をテフロン瓶に移し、ここに、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタンをゆっくり加えた後、2時間撹拌する(pHは、約13)。この混合物を、16時間撹拌した後、常温で、1~3日間熟成させる。得られた生成物を蒸溜水で洗浄し、50℃の温度で乾燥して、多孔性の有機-無機混成体のフィラーを得る。
【0045】
前記第2ステップの第1実施例及び第2実施例で得られた有機-無機混成体から界面活性剤を除去するために、合成された有機-無機混成体のフィラー1gを、蒸溜水150mlと塩酸35wt% 3mlの混合液に加え、60℃で、一日間還流させ、濾過後、さらにエタノール150mlを加えて、抽出過程を繰り返す。試料を濾過した後、純粋なエタノールで十分に洗浄し、50℃で乾燥させて、細孔の多孔性の有機-無機混成体のフィラーを得る。
【0046】
図2において、(a)は、第2ステップで、界面活性剤を鋳型として用いて製造された有機-無機混成体のセラミック構造を示し、(b)は、内部に鋳型として用いられた界面活性剤を除去し、細孔が空いている有機-無機混成体の多孔性セラミック構造を示すものである。
【0047】
鋳型として用いられたオクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドによる有機-無機混成体からなるトップコート剤のフィラーは、多孔性の細孔が、六面体構造において予想される(1 0 0)、(1 1 0)、(2 0 0)のピークを通じて、広い範囲にわたって六面体構造が形成されていることを示し、鋳型として用いられた界面活性剤が除去された後も、中空の細孔が壊れていないことを示す。
【0048】
図3において、窒素ガス等温吸着-脱着曲線を通じて計算された中間細孔のサイズのセラミックフィラーのBET(Brunauer-Emmett-Teller)表面積が799m-1であり、細孔サイズは、約30Åの中間細孔の規模(scale)を有することが確認される。
【0049】
図4は、前記第2ステップの実施例2で得られた有機-無機混成体の多孔性セラミックフィラーのTEM写真であり、多孔性の中間細孔が規則的な六面体で配列されていることが分かり、このようなナノサイズのフィラーの添加により、トップコート剤に機能性が与えられる。
【0050】
図5は、トップコート剤の熱分析グラフであって、有機-無機混成体からなる多孔性セラミックフィラーが添加されたトップコート剤は、380~800℃にわたって、骨格内に直接的に参加しているエチレン基(-CHCH-)鎖の熱分解が起こり、アルキル基の熱分解により、10~25%の重さ変化が徐々に起きていることが分かる。
【0051】
また、除去されていない界面活性剤が、200~800℃の温度範囲にわたって分解が起きる。
【0052】
図6は、トップコート剤のフィラーの赤外線(IR)スペクトルであって、(a)は、有機-無機混成体セラミックフィラーであり、(b)は、界面活性剤が除去された直後の有機-無機混成体の多孔性セラミックのスペクトルである。
【0053】
界面活性剤が除去される前のIRスペクトルによれば、3000cm-1付近で、脂肪族C-Hの伸縮振動モードが示される。これは、界面活性剤(ODTMA)にあるC-Hと骨格に参加しているエチレン基鎖(-CHCH-)のC-Hの振動モードに相当し、このバンドは、グラフから見られるように、界面活性剤が除去された後、急速に減少することが分かる。
【0054】
1140cm-1付近でSi-Cの結合モードに相当するバンドが、Si-O-Siの伸縮振動領域(1000~1200cm-1)内で示されていることが分かり、界面活性剤が除去された後も相変わらず存在していることが分かる。
【0055】
また、CH2とCH3の結合振動モードに相当するバンドが、1475、1410cm-1付近で示されることが分かる。
【0056】
このような結果から、ナノ構造の多孔性有機-無機混成体セラミックの多孔性フィラーが含まれたトップコート剤は、最低300℃以上で熱分解されることにより、それほど耐熱性が良好であることが確認される。
【0057】
【表1】
【0058】
上記した本発明による中空フィラーと多孔性フィラーが含まれた機能性ネイルポリッシュの製法は、耐熱性が向上して、長期保管時に熱的変形が防止され、軽くて、可塑性が良好であり、ネイルの曲面に沿って付着性がよく、軽量であり、爪を締め付けることがなく、ネイルに対するポリッシュの付着感が殆どなく、何回も繰り返して使用しても、接着性の低下がないという効果を有しており、産業上の利用可能性が極めて高い発明である。
【0059】
以上、説明された本発明による中空フィラー及び多孔性フィラーが含まれた機能性ネイルポリッシュの製法の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、これに基づき、様々な変形及び均等な他の実施例が可能であることがよく分かる。このため、本発明は、上記した詳細な説明で言及される形態にのみ限定されるものではないことが理解されるであろう。したがって、本発明の真正な技術的な保護範囲は、添付された特許請求の範囲の技術的思想により定められなければならないであろう。
【0060】
また、本発明は、添付された請求の範囲により定められる本発明の精神及びその範囲内の全ての変形物と均等物及び代替物を含むものと理解されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6