(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173185
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】原稿搬送装置、画像読取装置および複合機
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20231130BHJP
B65H 31/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H04N1/00 519
B65H31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085264
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】磯田 廉
【テーマコード(参考)】
3F054
5C062
【Fターム(参考)】
3F054AA02
3F054AC01
3F054BC02
3F054BC04
3F054BC07
3F054DA15
3F054DA22
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB08
5C062AB22
5C062AB30
5C062AB32
5C062AB33
5C062AB35
5C062AD02
5C062AD03
5C062AD06
(57)【要約】
【課題】簡単かつ迅速に供給トレイおよび排出トレイを覆い隠すことができる原稿搬送装置を提供する。
【解決手段】
原稿搬送装置21は、原稿搬送路を含む搬送筐体31と、原稿がセットされる供給トレイ33と、排出空間Sを挟んで供給トレイ33の下方に設けられる排出トレイ34と、供給トレイ33および排出トレイ34を開放する開放位置P1と、供給トレイ33および排出トレイ34を覆い隠す閉鎖位置と、の間でスライドするスライドカバー36と、を備え、スライドカバー36は、閉鎖位置に配置された場合に、供給トレイ33を覆う天面板60Aと排出空間Sの正面側を覆う正面板60Bと連結して形成されるカバー本体60と、閉鎖位置に配置された場合に排出空間Sの右方を覆い、閉鎖位置から開放位置P1にスライドされる過程で供給トレイ33に干渉して押し上げられる側面カバー61と、を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送するための原稿搬送路を含む搬送筐体と、
前記搬送筐体から左右方向の一方に延び、前記原稿がセットされる供給トレイと、
排出空間を挟んで前記供給トレイの下方に設けられ、前記供給トレイから送り出されて前記原稿搬送路を搬送されてきた前記原稿が積載される排出トレイと、
前記供給トレイおよび前記排出トレイを内包可能な箱状に形成され、前記供給トレイおよび前記排出トレイを開放する開放位置と、前記供給トレイおよび前記排出トレイを覆い隠す閉鎖位置と、の間で左右方向にスライド可能に設けられるスライドカバーと、を備え、
前記スライドカバーは、
前記閉鎖位置に配置された場合に、少なくとも前記供給トレイを覆う天面板と前記排出空間の正面側を覆う正面板と連結して形成されるカバー本体と、
前記カバー本体の天面側に回動可能に接続され、前記閉鎖位置に配置された場合に前記排出空間の左右方向の一方を覆い、前記閉鎖位置から前記開放位置にスライドされる過程で前記供給トレイに干渉して押し上げられる側面カバーと、を有していることを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
前記供給トレイまたは前記排出トレイには、前記正面板または前記側面カバーに係合し、前記スライドカバーを前記閉鎖位置に保持するロック部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記天面板には、前記原稿を置くための載置部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原稿搬送装置と、
前記原稿搬送路を搬送される前記原稿の画像を読み取る読取部と、を備えていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像読取装置と、
媒体に画像を形成する画像形成装置と、を備えていることを特徴とする複合機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を搬送する原稿搬送装置、画像読取装置および複合機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、装置本体の内部に画像形成部が設けられ、装置本体の上部に自動原稿搬送装置とスキャナとが設けられていた。画像形成部とスキャナとの間には、装置本体の正面と左側面とを開口させた胴内排紙部が設けられている。正面の開口の下縁には排紙前カバーが回動可能に設けられ、左側面の開口の下縁には排紙左カバーが回動可能に設けられている。これらのカバーは開口に合うように平板状に形成され、これらのカバーを閉じることで、胴内排紙部から漏れる駆動音が低減されることに加え、印刷物の持ち去り等が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動原稿搬送装置においても、駆動音の漏れや原稿の持ち去り等の問題があるため、原稿の供給口と排出口、供給側と排出側の2つのトレイ等を覆うことが好ましい。しかしながら、装置本体の平らな面に開いた開口を開閉するための板状のカバーでは、自動原稿搬送装置の2つのトレイ等を覆うことはできなかった。また、上記した技術では、ユーザーは2つのカバーを別々に開閉しなければならないため、胴内排紙部の開放と閉塞とを切り替える操作を簡単かつ迅速に行うことができなかった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、簡単かつ迅速に供給トレイおよび排出トレイを覆い隠すことができる原稿搬送装置、画像読取装置および複合機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る原稿搬送装置は、原稿を搬送するための原稿搬送路を含む搬送筐体と、前記搬送筐体から左右方向の一方に延び、前記原稿がセットされる供給トレイと、排出空間を挟んで前記供給トレイの下方に設けられ、前記供給トレイから送り出されて前記原稿搬送路を搬送されてきた前記原稿が積載される排出トレイと、前記供給トレイおよび前記排出トレイを内包可能な箱状に形成され、前記供給トレイおよび前記排出トレイを開放する開放位置と、前記供給トレイおよび前記排出トレイを覆い隠す閉鎖位置と、の間で左右方向にスライド可能に設けられるスライドカバーと、を備え、前記スライドカバーは、前記閉鎖位置に配置された場合に、少なくとも前記供給トレイを覆う天面板と前記排出空間の正面側を覆う正面板と連結して形成されるカバー本体と、前記カバー本体の天面側に回動可能に接続され、前記閉鎖位置に配置された場合に前記排出空間の左右方向の一方を覆い、前記閉鎖位置から前記開放位置にスライドされる過程で前記供給トレイに干渉して押し上げられる側面カバーと、を有している。
【0007】
この場合、前記供給トレイまたは前記排出トレイには、前記正面板または前記側面カバーに係合し、前記スライドカバーを前記閉鎖位置に保持するロック部が設けられもよい。
【0008】
この場合、前記天面板には、前記原稿を置くための載置部が設けられてもよい。
【0009】
本発明に係る画像読取装置は、上記したいずれかの原稿搬送装置と、前記原稿搬送路を搬送される前記原稿の画像を読み取る読取部と、を備えている。
【0010】
本発明に係る複合機は、上記した画像読取装置と、媒体に画像を形成する画像形成装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単かつ迅速に供給トレイおよび排出トレイを覆い隠すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複写機の内部構造を示す概略図(正面図)である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置を示す斜視図(開放位置)である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置を示す斜視図(アンロック状態)である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置を示す斜視図(閉鎖位置、ロック状態)である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置のカバー機構部を示す概略図(正面図)である。
【
図6】本発明の一実施形態の変形例に係る原稿搬送装置のカバー機構部を示す概略図(正面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0014】
[複合機]
図1を参照して、複合機1について説明する。
図1は複合機1の内部構造を示す概略図(正面図)である。
【0015】
複合機1は、用紙(媒体(図示せず))に電子写真方式で画像を形成する画像形成装置1Aと、原稿の画像を光学的に読み取る画像読取装置1Bと、を備えている。
【0016】
[画像形成装置]
図1に示すように、画像形成装置1Aは、略直方体状の外観を構成する装置本体2を備えている。装置本体2の下部には用紙を収容する給紙カセット3が着脱可能に設けられ、装置本体2の上面には排紙トレイ4が設けられている。また、画像形成装置1Aは、トナーコンテナ10と、感光体ドラム11と、帯電装置12と、現像装置13と、転写ローラー14と、光走査装置15と、定着装置16と、を備えている。
【0017】
トナーコンテナ10は、装置本体2の左上部に配置され、例えば、黒色のトナー(現像剤)を収容している。感光体ドラム11は、給紙カセット3から排紙トレイ4まで延びた第1の搬送路5の中流部に設けられている。帯電装置12、現像装置13および転写ローラー14は感光体ドラム11の周囲に画像形成プロセス順に配置されている。転写ローラー14は、下側から感光体ドラム11に接触して転写ニップを形成している。光走査装置15は、感光体ドラム11よりも上方に設けられている。定着装置16は、第1の搬送路5の下流側に設けられている。
【0018】
第1の搬送路5の上流端部には給紙部17が設けられ、第1の搬送路5の中流部にはレジストローラー対18が設けられている。装置本体2の内部には、第1の搬送路5の下流側で分岐し、第1の搬送路5の上流側に合流する第2の搬送路6が設けられている。なお、第1の搬送路5および第2の搬送路6には、用紙を搬送するための複数の搬送ローラー対が設けられている。
【0019】
複合機1には、様々な制御対象機器を適宜制御するための制御装置7が設けられている。制御装置7は、メモリーに記憶されたプログラムやパラメーターに従って各種の演算処理を実行するプロセッサー等を含んでいる。また、複合機1には、ユーザー(操作者)からの各種の指示を入力するためのタッチパネルやボタン等の表示入力部(図示せず)が設けられている。表示入力部は、制御装置7に電気的に接続され、制御装置7に入力信号を送信したり、制御装置7から電気信号(例えばタッチパネルへの表示情報)を受信したりする。
【0020】
[画像形成処理]
画像形成装置1Aの動作について説明する。制御装置7は、例えば、外部端末から入力された画像データに基づいて、以下のように画像形成処理を実行する。
【0021】
帯電装置12は感光体ドラム11の表面を帯電させ、光走査装置15は画像データに基づいた走査光を出射して感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する。現像装置13は、トナーコンテナ10から供給されたトナーを用いて感光体ドラム11の表面にトナー像を現像する。給紙部17は、給紙カセット3から用紙を1枚ずつ第1の搬送路5に送り出す。用紙は、第1の搬送路5に沿って搬送され、レジストローラー対18でスキュー補正され、転写ニップに進入する。転写ローラー14は転写ニップを通過する用紙に感光体ドラム11上のトナー像を転写し、定着装置16は用紙にトナー像を熱定着させる。片面印刷の場合、用紙は排紙トレイ4に排出される。
【0022】
両面印刷の場合、用紙は、第1の搬送路5の下流端部でスイッチバックされ、第2の搬送路6を搬送されて再び第1の搬送路5に戻される。その後、上記と同様の工程を経て用紙の裏面に画像が形成され、両面印刷された用紙が排紙トレイ4に排出される。
【0023】
[画像読取装置]
図1に示すように、画像読取装置1Bは、読取装置20と、原稿搬送装置21と、を備えている。読取装置20は、装置本体2の上面に取り付けられ、排紙空間を挟んで排紙トレイ4の上方に配置されている。原稿搬送装置21は、読取装置20の上面に取り付けられている。
【0024】
<読取装置>
読取装置20は、光学走査ユニット22と、反射ユニット23と、読取部24と、を有している。光学走査ユニット22は、コンタクトガラス25Aやプラテンガラス25Bに載せられた原稿に光を照射する。反射ユニット23は、原稿で反射した光を読取部24に向けて反射させる。プラテンガラス25B上の原稿を読み取る場合、光学走査ユニット22と反射ユニット23とは、原稿から読取部24までの光路長が一定となるように移動する。読取部24は、入力された光を光電変換するイメージセンサーである。なお、読取装置20は第2の読取部26(イメージセンサー)を有しており、第2の読取部26は後述する原稿搬送装置21の搬送筐体31の内部に設けられている。
【0025】
<原稿搬送装置>
【0026】
原稿搬送装置21は、原稿押え部30と、搬送筐体31と、搬送機構部32と、供給トレイ33と、排出トレイ34と、を有している。なお、画像読取装置1Bの説明においては、原稿が搬送される方向を「搬送方向」と呼び、「上流」および「下流」並びにこれらに類する用語は、搬送方向における「上流」および「下流」並びにこれらに類する概念を指すものとする。
【0027】
原稿押え部30は、読取装置20の上面後部にヒンジ(図示せず)を介して回動可能(開閉可能)に取り付けられている。搬送筐体31は、略直方体形状に形成され、主に原稿押え部30の略左半分に配置されている。搬送機構部32は、搬送筐体31に内蔵されている。供給トレイ33は、搬送筐体31(の右上部)から右方(左右方向の一方)に向かって斜め上方に延びている。供給トレイ33には、原稿の前後両端に当接して原稿を揃える一対のカーソル33Aが前後方向に移動可能に設けられている。排出トレイ34は、原稿押え部30の上面に形成され、排出空間Sを挟んで供給トレイ33の下方に設けられている。供給トレイ33には画像を読み取りたい原稿がセットされ、排出トレイ34には画像を読み取られた原稿が排出(積載)される。
【0028】
(搬送筐体)
搬送筐体31は、支持部40と、筐体カバー41と、を有している。搬送筐体31の右側面には、供給トレイ33と排出トレイ34とに対応して供給口42と排出口43とが形成されている。
【0029】
支持部40(搬送筐体31の内部)には、原稿を搬送するための原稿搬送路45が形成されている。原稿搬送路45は、供給口42と排出口43とを結ぶ略U字状に形成されている。筐体カバー41は支持部40を覆うように配置され、筐体カバー41の一部分は支持部40に回動可能に支持されている。筐体カバー41の一部分を跳ね上げることで、原稿搬送路45が開放され、詰まった原稿を除去することができる(図示せず)。
【0030】
また、原稿押え部30の略右半分の後部には、供給トレイ33および排出トレイ34の後端を支持する延長部44が設けられている。延長部44は、搬送筐体31(筐体カバー41)と一体に形成され、排出空間Sの背面側を閉塞している。つまり、排出空間Sは正面側と右側面側が開放され、排出トレイ34に排出された原稿は前方または右方に取り出される。なお、原稿押え部30および延長部44は、搬送筐体31の一部であると捉えてもよい。また、排出トレイ34は、原稿押え部30の上面に形成されていることから、原稿押え部30の一部であると捉えてもよいし、搬送筐体31の一部であると捉えてもよい。つまり、搬送筐体31には、原稿押え部30、排出トレイ34および延長部44が含まれると捉えてもよい。
【0031】
(搬送機構部)
搬送機構部32は、搬送筐体31(支持部40)に支持されている。搬送機構部32は、ピックアップローラー50と、分離ユニット51と、補正用ローラー52と、補正部53と、排出ローラー対54と、を有している。なお、原稿搬送路45の適所には、複数の原稿搬送ローラー対55が設けられている(
図2参照)。排出ローラー対54および原稿搬送ローラー対55は、原稿を挟みながら回転することで原稿を搬送する。
【0032】
ピックアップローラー50は、原稿搬送路45の上流端部(供給口42の近傍)に設けられている。分離ユニット51は、ピックアップローラー50の下流側近傍に設けられている。分離ユニット51は、2つのプーリーに掛けられたベルトと、ベルトに接触する分離ローラーと、を有している。補正用ローラー52は、シェーディング補正を行う反射面を有し、原稿搬送路45の上側に配置されている。上記した第2の読取部26は、補正用ローラー52に下方から対向するように配置されている。補正部53は、シェーディング補正を行う反射板であって、コンタクトガラス25Aの上に配置されている。排出ローラー対54は、原稿搬送路45の下流端部(排出口43の近傍)に設けられている。
【0033】
[画像読取処理]
画像読取装置1Bの動作について説明する。なお、供給トレイ33に積載される原稿はシート状であるが、プラテンガラス25Bに積載される原稿はシート状に限らず、冊子等の厚みのある原稿であってもよい。
【0034】
<プラテンガラス上の原稿の読み取り>
ユーザーは、原稿押え部30を開いてプラテンガラス25B上に原稿をセットし、原稿押え部30を閉じてボタン等の表示入力部を操作して画像の読み取りを指示(入力)する。制御装置7は入力を受け、以下のように各種制御対象を制御して画像読取処理を実行する。光学走査ユニット22は、右方向に移動しながらプラテンガラス25B上の原稿に光を照射する。原稿で反射した光が読取部24に入力されて電気信号に変換されることで、原稿の画像が画像データとして読み取られる。
【0035】
<供給トレイにセットした原稿の読み取り>
ユーザーは、原稿押え部30を閉じた状態で原稿を供給トレイ33にセットし、表示入力部を操作して画像の読み取りを指示(入力)する。制御装置7は、入力を受け、以下のように各種制御対象を制御して画像読取処理を実行する。
【0036】
ピックアップローラー50は、供給トレイ33に積載された原稿を原稿搬送路45に送り出す。原稿は、仮に2枚以上重なっていたとしても、分離ユニット51によって1枚ずつに分離されて下流側に送られる。原稿搬送ローラー対55等は、原稿を原稿搬送路45に沿って下流に向けて搬送し、第2の読取部26は、搬送される原稿の裏面の画像を光学的に読み取る。原稿は、原稿搬送ローラー対55によってコンタクトガラス25A上に搬送される。光学走査ユニット22は、コンタクトガラス25A上を通過する原稿の表面に光を照射し、原稿で反射した光は読取部24に入力されて電気信号に変換される。原稿は、原稿搬送路45に沿って更に下流へ搬送され、排出ローラー対54は、原稿搬送路45を搬送されてきた原稿を排出口43から排出トレイ34に向けて排出する。排出された原稿は、排出トレイ34上に積載される。
【0037】
以上のように原稿の表裏両面の画像が画像データとして読み取られる。読み取られた画像データは制御装置7のメモリーに記憶され、制御装置7は既に説明した画像形成処理(印刷)を実行する。また、画像データは、印刷されずに、外部端末に保存されることもある。なお、以上説明した画像読取処理では、原稿の表裏両面の画像を読み取っていたが、原稿の表面の画像のみを読み取るのであれば、第2の読取部26を動作させなくてもよい。また、例えば、画像読取装置1Bを原稿の表面の画像のみを読み取る仕様とするのであれば、第2の読取部26は省略されてもよい。つまり、(少なくとも)原稿搬送路45を搬送される原稿の画像を読み取る読取部24を備えていればよい。
【0038】
ところで、原稿搬送装置21では、原稿搬送時に、供給口42および排出口43から搬送機構部32が発する駆動音(作動音)が漏れ出すことがある。また、例えば、大量の原稿(原稿の束)を供給トレイ33にセットして画像読取処理を実行する場合、画像読取処理が完了するまで時間がかかるため、ユーザーは一時的に複合機1から離れることがある。このため、第三者が、原稿を覗き見たり、原稿の一部を差し替えたり、持ち去ったりすることが可能になる。そこで、本実施形態に係る原稿搬送装置21では、駆動音の漏れや原稿の持ち去り等を抑制するカバー機構部35を備えている。
【0039】
[カバー機構部]
図2ないし
図5を参照して、カバー機構部35について説明する。
図2は原稿搬送装置21を示す斜視図(開放位置P1)である。
図3は原稿搬送装置21を示す斜視図(アンロック状態)である。
図4は原稿搬送装置21を示す斜視図(閉鎖位置P2、ロック状態)である。
図5はカバー機構部35を示す概略図(正面図)である。なお、先に説明で参照した
図1では、便宜上、カバー機構部35の図示を省略している。
【0040】
図2に示すように、カバー機構部35は、スライドカバー36と、ロック部37と、を有している。
【0041】
<スライドカバー>
図2ないし
図4に示すように、スライドカバー36は、供給トレイ33および排出トレイ34を内包可能な箱状に形成されている。スライドカバー36は、供給トレイ33および排出トレイ34を開放する開放位置P1(
図2参照)と、供給トレイ33および排出トレイ34を覆い隠す閉鎖位置P2(
図4参照)と、の間で左右方向にスライド可能に設けられている。原稿を供給トレイ33にセットしたり排出トレイ34から取り出したりする場合、スライドカバー36は開放位置P1に配置される(
図2参照)。上記した画像読取処理の実行中には、スライドカバー36は閉鎖位置P2に配置される(
図4参照)。
【0042】
スライドカバー36は、カバー本体60と、側面カバー61と、を有している。
【0043】
(カバー本体)
カバー本体60は、天面板60Aと正面板60Bとを連結して側方から見て略L字状に形成されている。カバー本体60は、搬送筐体31(筐体カバー41)にスライド可能に支持されている。カバー本体60は、搬送筐体31に設けられた一対のレール62に沿って左右方向に往復移動する。一対のレール62は、左右方向に延びており、互いに平行に配置されている。一方のレール62は、筐体カバー41の上面後部から延長部44の上面にかけて設けられ、他方のレール62は、原稿押え部30の前面に設けられている。各々のレール62は略L字状の断面を有しており、天面板60Aの後端部および正面板60Bの下端部は一対のレール62にスライド可能に嵌合している。
【0044】
天面板60Aは、開放位置P1に配置された場合に筐体カバー41(搬送筐体31)の上面に重なり(
図2参照)、閉鎖位置P2に配置された場合に供給トレイ33(の上側)を覆う(
図3および
図4参照)。正面板60Bは、開放位置P1に配置された場合に搬送筐体31(原稿押え部30)の前面に重なり(
図2参照)、閉鎖位置P2に配置された場合に排出空間Sの正面側(供給トレイ33と排出トレイ34との前面(原稿押え部30の前面))を覆う(
図3および
図4参照)。
【0045】
天面板60Aには、原稿を置くための載置部63が設けられている。載置部63は、天面板60Aの上面から突き出し、矩形環状に形成された壁部63Aと、壁部63Aの上端の左側に架設された板部63Bと、を有している。原稿は、板部63Bの下側に差し込まれ、壁部63Aで囲まれた範囲内に収容される。
【0046】
(側面カバー)
側面カバー61は、略平板状に形成され、カバー本体60の天面側に回動可能に接続されている。具体的には、側面カバー61は、天面板60Aの右後部および正面板60Bの右上部に開閉軸61Aを介して支持されている。側面カバー61は、閉鎖位置P2に配置された場合に、天面板60Aの右端部(開閉軸61A)から垂れ下がる姿勢(起立姿勢)となって排出空間Sの右側(左右方向の一方)を覆う(
図4参照)。側面カバー61は、開放位置P1に配置された場合に、天面板60Aの右端部(開閉軸61A)から右方(横方向)に延びる姿勢(横臥姿勢)となって供給トレイ33の略左半分(一対のカーソル33A)を覆うように配置される(
図2参照)。側面カバー61は、一対のカーソル33Aの上端面に当接して支持されている。
【0047】
<ロック部>
図2ないし
図4に示すように、ロック部37は、排出トレイ34(原稿押え部30)の右端部に設けられ、側面カバー61に係合し、スライドカバー36を閉鎖位置P2に保持する。
【0048】
詳細には、
図5に示すように、ロック部37は、シリンダーキー64を差し込むことで回動可能になるシリンダー65と、シリンダー65に連動して回動するデッドボルト66と、を有している。側面カバー61の下部には、スライドカバー36を閉鎖位置P2に配置した状態で、シリンダー65を露出させる開口部61Bが形成されている(
図2ないし
図4も参照)。デッドボルト66は、略L字状に屈曲した形状であり、ロック軸66Aを中心に回動可能に支持されている。デッドボルト66は、原稿押え部30から突出して開口部61Bに差し込まれる位置と、原稿押え部30内に収容されて開口部61Bから離脱する位置と、の間で移動する。なお、シリンダーキー64は、複合機1の所定位置に備え付けられている。
【0049】
[カバー機構部の使用法]
次に、
図2ないし
図5を参照して、カバー機構部35の使用法の一例について説明する。
【0050】
<開放位置から閉鎖位置へのスライド>
ユーザーは、スライドカバー36を開放位置P1に配置した状態(
図2参照)で原稿を供給トレイ33にセットした後、スライドカバー36を右方(閉鎖位置P2に向けて)スライドさせる(
図3参照)。側面カバー61は、横臥姿勢でカバー本体60と共に右方にスライドし、カバー本体60が供給トレイ33等を覆い隠す位置まで移動すると、自重によって開閉軸61Aを中心に下方に回動する(
図3の実線矢印や
図5の二点鎖線参照)。
図4に示すように、スライドカバー36が閉鎖位置P2に配置され、側面カバー61が垂れ下がる姿勢になると、ロック部37のシリンダー65が側面カバー61の開口部61Bに露出する。
【0051】
ユーザーは、シリンダーキー64をシリンダー65に差し込みロックする方向に回動させる(
図5参照)。すると、デッドボルト66は、外側に回動して開口部61Bを貫通し、開口部61Bの上縁に係合する(
図4および
図5の二点鎖線参照)。この状態で、側面カバー61は開放不能にロックされ、スライドカバー36は閉鎖位置P2から開放位置P1への移動を規制される。
【0052】
その後、既に説明したように、ユーザーが表示入力部を操作することで、画像読取処理が実行される。なお、ユーザーは、画像読取処理が完了するまでの間、シリンダーキー64を所持し続ける。
【0053】
<閉鎖位置から開放位置へのスライド>
画像読取処理が完了した後、ユーザーは、シリンダーキー64をシリンダー65に差し込みロックを解除する方向(ロックする方向とは逆方向)に回動させる(
図5参照)。すると、デッドボルト66は、開口部61Bから離脱する(
図5の実線参照)。この状態で、側面カバー61は開放可能(アンロック)となり、スライドカバー36は閉鎖位置P2から開放位置P1への移動を許容される。
【0054】
ユーザーは、スライドカバー36を閉鎖位置P2から開放位置P1にスライドさせる。側面カバー61は、閉鎖位置P2から開放位置P1にスライドされる過程で供給トレイ33に干渉して押し上げられる(
図3の破線および
図5の実線参照)。詳細には、側面カバー61は、左方へのスライドに伴って供給トレイ33の右端部に突き当たることで相対的に押され、開閉軸61Aを中心に上方に回動する。そして、側面カバー61は、供給トレイ33に沿った横臥姿勢となってカバー本体60と共に左方にスライドする。ユーザーは、スライドカバー36を開放位置P1(
図2参照)に配置した後、排出トレイ34から原稿を取り出す。なお、ユーザーは、シリンダーキー64を複合機1の所定位置に戻す。
【0055】
以上説明した本実施形態に係る原稿搬送装置21では、スライドカバー36が、供給トレイ33および排出トレイ34を内包可能な箱状に形成され、開放位置P1と閉鎖位置P2との間でスライド可能に設けられていた。この構成によれば、スライドカバー36を開放位置P1から閉鎖位置P2にスライドさせることで、簡単かつ迅速に供給トレイ33および排出トレイ34を覆い隠すことができる。これにより、原稿搬送装置21からの駆動音の漏れや原稿の持ち去り等を抑制することができる。また、スライドカバー36が、側面カバー61を供給トレイ33に接触させて上方に回動させながら閉鎖位置P2から開放位置P1にスライドする構成とした。この構成によれば、ユーザーに対して特別な操作を要求することなく、閉鎖位置P2にあるスライドカバー36を簡単に開放位置P1に移動させることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る原稿搬送装置21によれば、スライドカバー36がロック部37によって閉鎖位置P2に保持されるため、原稿の持ち去りを有効に抑制することができる。
【0057】
例えば、ある原稿(原稿の束)を読み取った後、別の原稿(原稿の束)を読み取りたい場合がある。この場合、ユーザーは、スライドカバー36を開放位置P1にスライドさせ、先に読み取った原稿を排出トレイ34から取り出し、次に読み取りたい原稿を供給トレイ33にセットし、スライドカバー36を閉鎖位置P2にスライドさせた後に画像読取処理を実行させる。この際、ユーザーは、先の原稿を手に持ったままでは、次の原稿を供給トレイ33にセットしたりスライドカバー36を閉じたりする作業を安定して行うことができない。この点、本実施形態に係る原稿搬送装置21によれば、天面板60Aに載置部63が設けられているため、先に読み取った原稿を一時的に載置部63に置くことができるため、ユーザーは供給トレイ33にセットしたりスライドカバー36を閉じたりする作業を安定して行うことができる。
【0058】
なお、本実施形態に係る原稿搬送装置21では、カバー本体60が天面板60Aと正面板60Bとで略L字状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、カバー本体60は、天面板60Aと正面板60Bに加えて背面板(図示せず)を有し、2つの板60A,60Bおよび背面板が連結されて略U字状に形成されてもよい(図示せず)。この場合、一方のレール62は、原稿押え部30の後面、または筐体カバー41の後面から延長部44の後面にかけて設けられるとよい(図示せず)。
【0059】
また、本実施形態に係る原稿搬送装置21では、供給トレイ33等が延長部44の前方に設けられ、排出空間Sの背面側が延長部44で閉塞されていたが、本発明はこれに限定されない。延長部44は省略されてもよい(図示せず)。この場合、スライドカバー36のカバー本体60は、上記したように背面板を加え、排出空間Sの正面側および背面側を覆うように略U字状に形成されるとよい(図示せず)。
【0060】
また、本実施形態に係る原稿搬送装置21では、ロック部37が排出トレイ34(原稿押え部30)の右端部に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ロック部37は、供給トレイ33の右端部に設けられてもよい(図示せず)。また、例えば、ロック部37は、供給トレイ33の前面または排出トレイ34(原稿押え部30)の前面に設けられ、カバー本体60の正面板60Bに係合してもよい(図示せず)。この場合、側面カバー61を開くことが可能になるが、排出トレイ34上の原稿を容易に目視することができないため、原稿の覗き見を防止することはできる。また、排出トレイ34上の原稿を容易には取り出すことができないため、原稿の持ち去り等を抑制する効果を期待することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る原稿搬送装置21では、ロック部37が、シリンダーキー64を用いる機械式のシリンダー65を採用していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、他のロック部38は、シリンダー65(シリンダーキー64)を省略し、デッドボルト66を移動させる電動モーター等の駆動源67と、RFID(Radio Frequency Identifier)タグやID(Identifier)チップ等を内蔵したカードや電子キー等の端末68と、端末と無線通信する情報読取部69と、を有してもよい(図示せず)。この場合、制御装置7のメモリーには、端末68の識別情報が予め記憶され、駆動源67および情報読取部69は、制御装置7に電気的に接続されて適宜制御されるとよい。ユーザーは所持した端末68を情報読取部69にかざし、制御装置7は情報読取部69で読み取った情報を照合し、記憶された識別情報と一致する場合に駆動源67を駆動させ、デッドボルト66を移動させてもよい。例えば、アンロック状態で端末68を情報読取部69にかざすとロックされ、ロック状態で端末68を情報読取部69にかざすとアンロックされてもよい。
【0062】
また、他にも、ロック部は、供給トレイ33と側面カバー61とに開口させた穴に通してロックする南京錠であってもよい(図示せず)。また、ロック部37,38は省略されてもよい(図示せず)。ロック部37,38を省略した場合、スライドカバー36を自由に開くことができるが、原稿の覗き見を防止する一定の効果は期待できる。
【0063】
また、本実施形態に係る原稿搬送装置21では、スライドカバー36の天面板60Aに載置部63が設けられていたが、これに限らず、載置部63は省略されてもよい(図示せず)。
【0064】
また、本実施形態に係る画像形成装置1Aは、モノクロプリンターであったが、これに限らず、カラープリンター、コピー機、ファクシミリ等であってもよい。また、画像形成装置1Aの画像形成方式が、電子写真式であったが、これに限らず、インクジェット式であってもよい。
【0065】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る原稿搬送装置、画像読取装置および複合機における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施態様に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0066】
1 複合機
1A 画像形成装置
1B 画像読取装置
21 原稿搬送装置
24 イメージセンサー(読取部)
26 第2の読取部
33 供給トレイ
34 排出トレイ
36 スライドカバー
37,38 ロック部
45 原稿搬送路
60 カバー本体
60A 天面板
60B 正面板
61 側面カバー
64 載置部
P1 開放位置
P2 閉鎖位置
S 排出空間