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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173191
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20231130BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L23/48 S
H01L27/06 102A
H01L25/04 C
H01L29/78 655A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655B
H01L29/78 653A
H01L29/78 657D
H01L29/78 652L
H01L29/78 658F
H01L29/91 L
H01L29/91 C
H01L29/91 A
H01L21/52 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085272
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 航大
(72)【発明者】
【氏名】中西 翔
【テーマコード(参考)】
5F047
5F048
【Fターム(参考)】
5F047AA11
5F047BA06
5F047BA41
5F047BA52
5F047BA53
5F047BC01
5F047BC31
5F047CA00
5F048AB10
5F048AC06
5F048AC10
5F048BA01
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC07
5F048BC12
5F048BD07
(57)【要約】
【課題】半導体装置のリーク電流低減を実現する。
【解決手段】半導体装置SDは、リードLSと、半導体基板SB1と、半導体基板SB1とリードLSとの間に設けられた裏面電極BS1と、裏面電極BS1とリードLSとを接続する半田層BP1とを備え、裏面電極BS1は、半導体基板SB1の裏面SB1b上に形成されたシリサイド層SC1と、リードLS上に形成された接合層BL1と、接合層BL1上に形成されたバリア層BR1と、シリサイド層SC1とバリア層BR1との間に形成された応力緩和層SR1とを含み、応力緩和層SR1は、アルミニウムを主成分とする第1金属膜、または、金、銀または銅の何れかを主成分とする第2金属膜からなる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードと、
前記リード上に搭載され、主面および裏面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記裏面と前記リードとの間に設けられた裏面電極と、
前記裏面電極と前記リードとを接続する半田層と、
を備える半導体装置であって、
前記裏面電極は、
前記半導体基板の前記裏面上に形成されたシリサイド層と、
前記リード上に形成された接合層と、
前記接合層上に形成されたバリア層と、
前記シリサイド層と前記バリア層との間に形成された応力緩和層と、
を含み、
前記半田層は、前記リードと前記接合層とを接続し、
前記応力緩和層は、アルミニウムを主成分とする第1金属膜、または、金、銀または銅の何れかを主成分とする第2金属膜からなる半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1金属膜は、添加物としてシリコン、銅、または、シリコンと銅を含有する半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記応力緩和層のビッカース硬度は、前記バリア層または前記接合層の何れのビッカース硬度よりも小さい半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記シリサイド層は、高融点金属を含む半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記応力緩和層内には、前記第1金属膜または前記第2金属膜と、前記高融点金属との合金層が形成されている半導体装置。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記シリサイド層にはバナジウムが含まれている半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記バリア層は、チタン、クロムまたはモリブデンの何れかの第3金属膜からなる、半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記接合層は、ニッケルからなる半導体装置。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体基板には、前記主面側に形成されたP型導電型のアノード領域と、前記裏面側に形成されたN型導電型のカソード領域と、前記アノード領域および前記カソード領域の間に形成されたN型導電型のドリフト領域とを含むファストリカバリダイオードが形成されている半導体装置。
【請求項10】
リードと、
前記リードの第1領域に搭載され、第1主面および第1裏面を備え、前記第1裏面側にN型導電型の第1半導体領域を有する第1半導体基板と、
前記リードの前記第1領域と異なる第2領域に搭載され、第2主面および第2裏面を備え、前記第2裏面側にP型導電型の第2半導体領域を有する第2半導体基板と、
前記第1半導体基板の前記第1裏面と前記リードとの間に設けられた第1裏面電極と、
前記第2半導体基板の前記第2裏面と前記リードとの間に設けられた第2裏面電極と、
前記第1裏面電極と前記リードとを接続する第1半田層と、
前記第2裏面電極と前記リードとを接続する第2半田層と、
を備える半導体装置であって、
前記第1裏面電極は、
前記リード上に形成された第1接合層と、
前記第1接合層上に形成された第1バリア層と、
前記第1バリア層上に形成された第1応力緩和層と、
前記第1応力緩和層と前記第1半導体領域との間に形成され、前記第1応力緩和層と前記第1半導体領域とを接続する、高融点金属からなるシリサイド層と、
を含み、
前記第2裏面電極は、
前記リード上に形成された第2接合層と、
前記第2接合層上に形成された第2バリア層と、
前記第2バリア層と前記第2半導体領域との間に形成され、前記第2バリア層と前記第2半導体領域とを接続する第2応力緩和層と、
を含み、
前記第1半田層は、前記リードと前記第1接合層とを接続し、
前記第2半田層は、前記リードと前記第2接合層とを接続し、
前記第1応力緩和層および前記第2応力緩和層は、アルミニウムを主成分とする金属膜からなる半導体装置。
【請求項11】
(a)主面と裏面とを備える半導体基板を準備する工程、
(b)前記裏面上にシリサイド層を形成する工程、
(c)前記シリサイド層上に応力緩和層を形成する工程、
(d)前記応力緩和層上にバリア層を形成する工程、
(e)前記バリア層上に接合層を形成する工程、
(f)前記半導体基板をリード上に搭載し、前記リードと前記接合層とを半田層で接続する工程、
を備え、
前記応力緩和層は、アルミニウムを主成分とする第1金属膜、または、金、銀、銅の何れかを主成分とする第2金属膜からなる半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1金属膜は、添加物としてシリコン、銅、または、シリコンと銅を含有する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)は、
(c1)前記半導体基板の前記裏面上に高融点金属膜を形成する工程、
(c2)前記半導体基板に熱処理を施して前記裏面上に前記シリサイド層を形成する工程、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記シリサイド層には、バナジウムが含まれている半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程と、前記(f)工程との間に、さらに、
(g)前記接合層上に金または銀からなる酸化防止層を形成する工程、
を備える半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、ファストリカバリダイオードを内蔵する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータやモータを駆動するパワーデバイスとして絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と称す)が有力である。IGBTによるインバータやモータ駆動アプリケーションでは、スイッチング時に発生する逆流電流を流す経路としてダイオードを併用している。このダイオードは還流ダイオードと呼ばれ、一般的にはファストリカバリダイオード(以下FRD(Fast Recovery Diode)と称す)が用いられる。還流ダイオードに求められる特性の一つは高速性であり、逆回復時間trrが短いことである。スイッチング時のターンオン損失はリカバリ電流の影響が大きいことから、損失低減のために逆回復時間trrが短いFRDが有効である。その為、パッケージ内にIGBTおよびFRDを内蔵した半導体装置が準備されている。
【0003】
この半導体装置は、IGBTおよびFRDを内蔵する封止体と、外部端子である複数のリードとを有する。リードは封止体内に延在しており、封止体内のダイパッドと呼ばれる領域にIGBTおよびFRDが搭載されている。IGBTおよびFRDにはそれぞれ、複数の金属層が積層された裏面電極が形成されており、この裏面電極とリードとを半田層で接続している。
【0004】
特許文献1には、IGBTチップの裏面電極の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-5368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者の検討によれば、FRDの裏面電極構造に起因してFRDに逆バイアスを印加した際のリーク電流が増加することが判明した。
【0007】
FRDを内蔵した半導体装置において、リーク電流の低減が求められている。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、
次のとおりである。
【0010】
一実施の形態における半導体装置は、リードと、半導体基板と、半導体基板とリードとの間に設けられた裏面電極と、裏面電極とリードとを接続する半田層とを備える。裏面電極は、半導体基板の裏面上に形成されたシリサイド層と、リード上に形成された接合層と、接合層上に形成されたバリア層と、シリサイド層とバリア層との間に形成された応力緩和層とを含む。応力緩和層は、アルミニウムを主成分とする第1金属膜、または、金、銀または銅の何れかを主成分とする第2金属膜からなる。
【0011】
一実施の形態における半導体装置の製造方法は、主面と裏面とを備える半導体基板を準備する工程、裏面上にシリサイド層を形成する工程、シリサイド層上に応力緩和層を形成する工程、応力緩和層上にバリア層を形成する工程、バリア層上に接合層を形成する工程、半導体基板をリード上に搭載し、リードと接合部とを半田層で接続する工程、を備える。応力緩和層は、アルミニウムを主成分とする第1金属膜、または、金、銀、銅の何れかを主成分とする第2金属膜からなる。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、半導体装置のリーク電流の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態の半導体装置の断面図である。
図2】本実施の形態の半導体装置の等価回路図である。
図3】本実施の形態の半導体装置の概略図である。
図4】本実施の形態の半導体装置の断面図である。
図5】本実施の形態の半導体装置の製造工程を示すプロセスフロー図である。
図6】本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図7図6に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図8図7に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図9】本実施の形態の半導体装置の電気特性を示す図面である。
図10】関連技術の半導体装置の断面図である。
図11】関連技術の半導体装置の製造工程を示すプロセスフロー図である。
図12】関連技術の半導体装置の電気特性を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0015】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0016】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0017】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0018】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0019】
また、以下の実施の形態において、P型はP型導電型、N型はN型導電型を意味する。
【0020】
<関連技術の説明>
本明細書でいう関連技術とは、公知技術ではないが、本発明者が見出した課題を有する技術であって、本願発明の前提となる技術である。
【0021】
図10は関連技術の半導体装置の断面図、図11は関連技術の半導体装置の製造工程を示すプロセスフロー図、図12は関連技術の半導体装置の電気特性を示す図面である。関連技術の半導体装置SD0はFRDを有し、図10はFRDの断面図、図11はFRDの製造工程を示すプロセスフロー図、図12はFRDの電気特性を示している。
【0022】
図10に示すように、FRDとして機能する半導体チップCP0は半導体基板SB0と裏面電極BS0とを有する。シリコンからなる半導体基板SB0の裏面SB0b側にはN型半導体領域であるカソード領域CAが形成され、半導体基板SB0の裏面SB0b上には裏面電極BS0が形成されている。そして、半導体チップCP0は、リードLSのダイパッドDPと呼ばれる領域に搭載され、裏面電極BS0とリードLSとが半田層BP0で接続されている。
【0023】
裏面電極BS0は、積層された複数層の金属膜で構成されており、半導体基板SB0の側からシリサイド層SC0、バリア層BR0、接合層BL0および酸化防止層AOL0を含む。接合層BL0はニッケル(Ni)層、半田層BP0は鉛フリー半田であり、例えば、錫(Sn)+銅(Cu)、錫(Sn)+銀(Ag)、錫(Sn)+銀(Ag)+銅(Cu)などの合金で、錫(Sn)を主成分(90%以上)とする。半導体チップCP0をリードLSに電気的および機械的に接続する「半田実装」工程では、半田層BP0を高温で溶融させ、接合層BL0のニッケル(Ni)と半田層BP0の錫(Sn)が合金層(Ni-Sn)を形成する。
【0024】
次に、図11を用いて、本発明者が見出した関連技術の課題を説明する。「半導体基板SB0準備」工程から「ウエハテスト」工程までは、多数個の半導体チップCP0が配置された円板状の半導体ウエハで各工程が実施される。「個片化」工程で半導体ウエハ内の複数の半導体チップCP0は個々の半導体チップCP0に分割される。「半田実装」工程では、個片化された半導体チップCP0を半田層BP0でリードLSに接着する。さらに、「封止」工程では、半導体チップCP0とリードLSとを封止体で封止する。そして、封止された半導体チップCP0(言い換えると、FRD)に対して「FT」が実施される。「ウエハテスト」工程では、テスト装置のステージ上に半導体ウエハを真空吸着した状態で、FRDに所定値の逆バイアス電圧を印加して半導体ウエハに形成されたFRDのリーク電流を測定する。FT(Final Test)は信頼性試験であり、FRDに逆バイアス電圧を印加してリーク電流挙動を測定するものである。
【0025】
「ウエハテスト」の結果、要求された値よりもリーク電流値が高いため不良品と判定される半導体チップCP0が多数個検出された。また、不良品と判定された半導体チップCP0を別のテスト方法(「ウエハテスト」に比べ弱い真空吸着)でテストすると、良品と判定された。これにより、本来なら良品と判定されるべき半導体チップCP0が不良品と判定されていることが分かった。
【0026】
「FT」工程では、要求されたリーク電流特性が得られず低い逆バイアス電圧でリーク電流が増大する半導体チップCP0が多数個検出された。「FT」工程における不良品解析のために、半導体チップCP0を封止体およびリードLSから取り外し、半導体チップCP0に付着している半田層BP0を除去する処理を施した後、半導体チップCP0(FRD)の逆方向バイアス電圧-リーク電流を測定した。その結果、半田層BP0がリーク電流に影響を及ぼしていることが判明した。図12は、関連技術のFRDの逆方向バイアス電圧-リーク電流の関係を示している。図12のRef.は要求されるFRDの電気特性であり、(1)は封止された状態のサンプルの電気特性を示し、(2)は封止体およびリードLSから取り外した半導体チップCP0に半田層BP0の除去処理を1回実施したサンプルの電気特性を示し、(3)はリードLSから取り外した半導体チップCP0に半田層BP0の除去処理を2回実施したサンプルの電気特性を示す。つまり、半導体チップCP0に付着している半田層BP0の量が少ないほど、要求されるFRDの電気特性に近づくことが判明した。
【0027】
本願発明者の検討によれば、半導体基板SB0へのストレスに起因してピエゾ効果によりリーク電流が増大していることが判明した。
【0028】
「ウエハテスト」工程では、半導体ウエハがステージに真空吸着されていることで、半導体基板SB0にストレスが印加されている。半導体ウエハの膜厚は300μm以下であり、半導体ウエハには「反り」が発生している。「反り」を有する半導体ウエハを平坦なステージに真空吸着することで半導体ウエハに局所的にストレスが発生するため、その位置に配置された半導体チップCP0のリーク電流が増大していると考えられる。
【0029】
また、「半田実装」工程では、半田層BP0を高温(200℃以上)で溶融した後に冷却(例えば室温まで)させて半田層BP0を硬化させるため、半田層BP0が膨張、収縮することで半導体チップCP0にストレスが発生すると考えられる。
【0030】
そこで、本実施の形態では、半導体チップCP1(FRD)の裏面電極BS1に応力緩和層を設けることで、半導体基板SB1が受けるストレスを緩和し、半導体チップCP1(FRD)のリーク電流を低減している。
【0031】
(実施の形態)
<半導体装置の構造>
図1は本実施の形態の半導体装置の断面図、図2は本実施の形態の半導体装置の等価回路図、図3は本実施の形態の半導体装置の概略図、図4は本実施の形態の半導体装置の断面図である。本実施の形態の半導体装置SDは、IGBTとFRDとを有する。
【0032】
図1に示すように、半導体装置SDは、半導体チップCP1およびCP2と、ダイパッド、コレクタ端子およびエミッタ端子を含むリードLSと、封止体MRとを備える。半導体チップCP1はFRDであり、半導体チップCP2はIGBTである。半導体チップCP1およびCP2は、リードLSのダイパッドDP上に搭載され、半導体チップCP1は半田層BP1により、半導体チップCP2は半田層BP2によりダイパッドDP(リードLS)に接続され、ダイパッドDPはコレクタ端子CT(リードLS)に接続されている。また、半導体チップCP1およびCP2は、接続端子TRを介してエミッタ端子ET(リードLS)に接続されている。半導体チップCP1は半田層BP1により、半導体チップCP2は半田層BP2により接続端子TRに接続されている。絶縁性樹脂(例えばエポキシ樹脂)からなる封止体MRは、半導体チップCP1およびCP2、半田層BP1およびBP2、接続端子TR、ダイパッドDP、コレクタ端子CT、ならびに、エミッタ端子ETを覆っている。ただし、コレクタ端子CTおよびエミッタ端子ETとなるリードLSは、封止体MRの外部に突出している。また、ダイパッドDPの半導体チップCP1およびCP2の搭載面と反対側の面は封止体MRから露出している。ダイパッドDP、リードLSおよび接続端子TRは、銅板または銅箔で形成されており、ダイパッドDPの膜厚はコレクタ端子CTの膜厚よりも厚い。なお、図示していないが、封止体MR内には半導体チップCP2(IGBT)に接続されたゲート端子GT(図3参照)が設けられており、ゲート端子GTとなるリードLSも封止体MRの外部に突出している。
【0033】
図2に示すように、IGBTとFRDとは並列接続されている。IGBTはコレクタ端子CT、エミッタ端子ETおよびゲート端子GTを有し、エミッタ端子ETにはFRDのアノードが、コレクタ端子CTにはFRDのカソードが接続されている。
【0034】
図3に示すように、FRDとして機能する半導体チップCP1は、半導体基板SB1に形成されており、半導体基板SB1は、主面SB1aと裏面SB1bとを備える。半導体基板SB1の主面SB1a側にはP型半導体領域であるアノード領域AN、裏面SB1b側にはN型半導体領域であるカソード領域CAが設けられており、アノード領域ANとカソード領域CAとの間にはN型半導体領域であるドリフト領域ND1が配置されている。
【0035】
IGBTとして機能する半導体チップCP2は、半導体基板SB2に形成されており、半導体基板SB2は、主面SB2aと裏面SB2bとを備える。半導体基板SB2の主面SB2a側には、N型半導体領域であるエミッタ領域NEと、エミッタ領域NEを平面視および断面視にて取り囲むように配置されたP型半導体領域であるボディ領域PBとが配置されており、ボディ領域PBの下にはN型半導体領域であるドリフト領域ND2が配置されている。主面SB2aから裏面SB2bに向かって、エミッタ領域NEおよびボディ領域PBを貫通し、ドリフト領域ND2に達するトレンチ溝TGが設けられており、トレンチ溝TG内にはゲート絶縁膜GFを介してゲート電極GEが形成されている。半導体基板SB2の裏面SB2b側にはP型半導体領域であるコレクタ領域PCが配置されており、ドリフト領域ND2とコレクタ領域PCとの間にはN型半導体領域であるバッファ領域NSが配置されている。
【0036】
半導体チップCP1(FRD)のカソード領域CAと半導体チップCP2(IGBT)のコレクタ領域PCとがコレクタ端子CTに接続されている。そして、半導体チップCP1(FRD)のアノード領域ANと、半導体チップCP2(IGBT)のエミッタ領域NEおよびボディ領域PBとがエミッタ端子ETに接続されている。また、ゲート電極GEはゲート端子GTに接続されている。
【0037】
図4は、リードLSのダイパッドDP上に半田実装された半導体チップCP1(FRD)および半導体チップCP2(IGBT)を示している。半導体チップCP1は、半導体基板SB1と、半導体基板SB1の裏面SB1b上に形成された裏面電極BS1とを有する。そして、裏面電極BS1が半田層BP1によりリードLSに接続されている。同様に、半導体チップCP2は、半導体基板SB2と、半導体基板SB2の裏面SB2b上に形成された裏面電極BS2とを有する。そして、裏面電極BS2が半田層BP2によりリードLSに接続されている。
【0038】
裏面電極BS1は、半導体基板SB1の裏面SB1b上に順に形成されたシリサイド層SC1、応力緩和層SR1、バリア層BR1、接合層BL1および酸化防止層AOL1で構成されている。裏面電極BS2は、半導体基板SB2の裏面SB2b上に順に形成された応力緩和層SR2、バリア層BR2、接合層BL2および酸化防止層AOL2で構成されている。裏面電極BS2には、裏面電極BS1のシリサイド層SC1に相当する層が設けられておらず、応力緩和層SR2が半導体基板SB2の裏面SB2bに接触している。応力緩和層SR2を、後述のアルミニウム(Al)を主成分とする金属膜とする場合、半導体基板SB2の裏面SB2b側には、P型半導体領域であるコレクタ領域PCが設けられているため、応力緩和層SR2と半導体基板SB2との間がオーミック接触となり、シリサイド層SC1に相当する層を省略することができる。従って半導体チップCP2(IGBT)の製造工程を簡略化できる。裏面電極BS2を構成する応力緩和層SR2、バリア層BR2、接合層BL2および酸化防止層AOL2は、裏面電極BS1を構成する応力緩和層SR1、バリア層BR1、接合層BL1および酸化防止層AOL1と同様であるため、裏面電極BS1の説明をもって代用する。
【0039】
なお、裏面電極BS1およびBS2の各層に言及する際に、半導体基板SB1およびSB2の裏面SB1bおよびSB2bからダイパッドDP(リードLS)に向かう、紙面の下向きを「上」と表現する場合がある。
【0040】
シリサイド層SC1は、高融点金属(例えば、ニッケル(Ni)またはチタン(Ti))とシリコンSiとの合金層であり、シリサイド層SC1は、裏面SB1b上に形成されるだけでなく、裏面SB1bから半導体基板SB1の内部(カソード領域CA)にも形成されている。シリサイド層SC1が形成されることで、裏面電極BS1と、半導体基板SB1の裏面SB1b側に形成されたN型半導体領域であるカソード領域CAと、をオーミック接触にすることができる。例えば、シリサイド層SC1は、20~400nmの膜厚とする。
【0041】
シリサイド層SC1上には応力緩和層SR1が形成されている。応力緩和層SR1は、裏面電極BS1の接合層BL1の側から半導体基板SB1に印加されるストレスを緩和するための層である。従って、応力緩和層SR1は、バリア層BR1の膜厚よりも厚くするのが好ましく、その膜厚は400~1000nmとする。応力緩和層SR1は、アルミニウム(Al)を主成分(90%以上)とする金属膜であり、添加物としてシリコン(Si)、銅(Cu)またはシリコン(Si)と銅(Cu)とを含む。例えば、Al‐Si(Si:0.5~1%)、Al‐Cu(Cu:0.5~1%)またはAl‐Si(Si:0.5~1%)‐Cu(Cu:0.5~1%)である。また、応力緩和層SR1として金(Au)、銀(Ag)または銅(Cu)を主成分とする金属膜を用いることもできる。
【0042】
また、応力緩和層SR1は、比較的柔軟な材料で構成するのが好ましい。応力緩和層SR1のビッカース硬度は、バリア層BR1または接合層BL1の何れのビッカース硬度よりも低い。例えば、バリア層BR1をチタン(Ti)、接合層BL1をニッケル(Ni)とした場合、ビッカース硬度は、チタン(Ti):0.97Gpa、ニッケル(Ni):0.638Gpaである。一方、応力緩和層SR1を構成する金属膜は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属膜:0.167~0.4Gpa、金(Au):0.216Gpa,銀(Ag):0.251Gpa、銅(Cu):0.369Gpaである。
【0043】
また、応力緩和層SR1のシリサイド層SC1側には、シリサイド層SC1に含まれる高融点金属と応力緩和層SR1に含まれる金属との合金層ALY1が形成されている。この合金層ALY1は、応力緩和層SR1、バリア層BR1、接合層BL1および酸化防止層AOL1を形成する工程(スパッタ法による金属膜の堆積工程)で半導体ウエハの温度が上昇することで形成される。合金層ALY1が形成されていることでシリサイド層SC1と応力緩和層SR1との接続が強固となり、シリサイド層SC1と応力緩和層SR1との間の剥がれを防止または低減することができる。合金層ALY1は、シリサイド層SC1に含まれる高融点金属が応力緩和層SR1内に拡散することで形成されたものである。例えば、シリサイド層SC1がニッケルシリサイド(NiSi)で、応力緩和層SR1がアルミニウム(Al)を主成分とする金属膜である場合、合金層ALY1は、ニッケル‐アルミニウム(Ni‐Al)合金層である。なお、合金層ALY1による効果が得られれば、合金層ALY1は膜や層に限定されない。合金層ALY1は、応力緩和層SR1の一部に形成され、且つシリサイド層SC1に接する合金のクラスタであっても良い。合金のクラスタが形成されていない領域では、応力緩和層SR1はシリサイド層SC1と接している。
【0044】
応力緩和層SR1上にはバリア層BR1が形成されている。バリア層BR1は、半導体基板SB1を構成するシリコン(Si)が接合層BL1に拡散するのを防止するために設けられている。バリア層BR1の膜厚は、50~300nmであり、バリア層BR1として、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)またはモリブデン(Mo)が用いられる。
【0045】
バリア層BR1の上には接合層BL1が形成されている。接合層BL1は、半田層BP1と合金層を形成し、リードLSと裏面電極BS1との強固な接続を確保するための層である。接合層BL1の膜厚は、200~1500nmであり、接合層BL1として、例えば、ニッケル(Ni)が用いられる。接合層BL1は、例えば、バリア層BR1よりも厚い膜にするのが好ましい。接合層BL1の下部は半田層BP1に覆われており、接合層BL1の上部は半田層BP1から露出していることが好ましい。接合層BL1を厚くすることで、半田層BP1からのストレスの起点を半導体基板SB1から遠ざけることができるからである。
【0046】
接合層BL1の上には酸化防止層AOL1が形成されている。酸化防止層AOL1は、接合層BL1の表面(接合層BL1のリードLSと対向する面)が酸化するのを防止するための層である。酸化防止層AOL1の膜厚は、100~2000nmである。酸化防止層AOL1の膜厚は、半田層BP1の膜厚未満である。酸化防止層AOL1として、例えば、金(Au)または銀(Ag)が用いられる。図4は、半導体チップCP1が半田層BP1でリードLSに実装された状態を示しているが、この状態では、酸化防止層AOL1は半田層BP1内に拡散しているため、接合層BL1とリードLSとの間に酸化防止層AOL1が層として残っているわけではない。
【0047】
酸化防止層AOL1または接合層BL1の上には半田層BP1が形成されており、半田層BP1は半導体チップCP1をリードLSに接続している。半田層BP1は鉛フリー半田であり、例えば、錫(Sn)+銅(Cu)、錫(Sn)+銀(Ag)、または、錫(Sn)+銀(Ag)+銅(Cu)などの合金で、錫(Sn)を主成分(90%以上)とする。半田層BP1は、半導体チップCP1をリードLSに電気的および機械的に接続しており、半田層BP1内では、接合層BL1のニッケル(Ni)と半田層BP1の錫(Sn)が合金層(Ni-Sn)を形成している。半田層BP1の上端は、接合層BL1と接している。半田層BP1の上端は、接合層BL1の上面と接合層BL1の下面の間に位置している。
【0048】
なお、本実施の形態の半導体装置SDでは、裏面電極BS1に応力緩和層SR1を設けたが、裏面電極BS1が半導体基板SB1に与える応力は関連技術の半導体装置SD0の場合と同等であることを確認した。
【0049】
<半導体装置の製造方法>
図5は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示すプロセスフロー図、図6図8は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。「半導体基板SB1準備」工程から「ウエハテスト」工程までは、多数個の半導体チップCP1が配置された円板状の半導体ウエハで各工程が実施される。「個片化」工程で半導体ウエハ内の複数の半導体チップCP1は個々の半導体チップCP1に分割され、「半田実装」工程では、個片化された半導体チップCP1を半田層BP1でリードLS上に接着し、さらに、「封止」工程では、半導体チップCP1とリードLSとを封止体MRで封止する。
【0050】
図5に示す「半導体基板SB1準備」工程では、半導体基板SB1に図3に示すFRDが作り込まれた半導体チップCP1が行列状に多数個配置された半導体ウエハを準備する。
【0051】
次に、図5に示す「高融点金属膜HM形成」工程では、図6に示すように、半導体基板SB1の裏面SB1b上に高融点金属膜HMをスパッタ法により堆積させる。半導体基板SB1の裏面SB1bには、N型半導体領域であるカソード領域CAが形成されており、このカソード領域CAと接触するように高融点金属膜HMを形成する。高融点金属膜HMは、例えば、ニッケル(Ni)またはチタン(Ti)であり、その膜厚は10~100nmとする。
【0052】
次に、図5に示す「シリサイド層SC1形成」工程では、図7に示すように、半導体基板SB1の裏面SB1b上にシリサイド層SC1を形成する。シリサイド層SC1は、半導体基板SB1の裏面SB1b上および半導体基板SB1(正確には、カソード領域CA)内に形成され、その膜厚は20~400nmとする。シリサイド層SC1は、高融点金属膜HMが形成された半導体基板SB1(言い換えると、半導体ウエハ)に熱処理を施して形成する。シリサイド層SC1は、ニッケルシリサイド(NiSi)またはチタンシリサイド(TiSi)等であり、高融点金属とシリコンとの化合物である。
【0053】
次に、図5に示す「応力緩和層SR1形成」、「バリア層BR1形成」、「接合層BL1形成」および「酸化防止層AOL1形成」の各工程を順に実施する。図8に示すように、シリサイド層SC1上には、順に、応力緩和層SR1,バリア層BR1、接合層BL1および酸化防止層AOL1が形成される。各工程は、マルチチャンバを備えたスパッタ装置を用いたスパッタ法により連続的に実施される。前述の応力緩和層SR1内に形成された合金層ALY1は、「バリア層BR1形成」、「接合層BL1形成」および「酸化防止層AOL1形成」を形成するスパッタリング工程で半導体ウエハの温度が上昇することで形成される。
【0054】
次に、図5に示す「ウエハテスト」工程では、テスト装置のステージ上に半導体ウエハを真空吸着した状態で、FRDに所定値の逆バイアス電圧を印加して半導体ウエハに形成されたFRDのリーク電流を測定する。
【0055】
次に、図5に示す「個片化」工程では、半導体ウエハにダイシング処理を施し、半導体ウエハを個々の半導体チップCP1に分割する。
【0056】
次に、図5に示す「半田実装」工程では、図4に示すように、「ウエハテスト」工程で良品と判定され、「個片化」工程で分割された半導体チップCP1をリードLSのダイパッドDP上に搭載し、半田層BP1で半導体チップCP1をリードLSに接続する。例えば、リードLSのダイパッドDP上に半田層BP1を塗布した後、半田層BP1上に半導体チップCP1を搭載し、半田層BP1に200~400℃程度の熱処理を施して半田層BP1を溶融させた後に室温まで冷却することで半田層BP1を硬化させる。
【0057】
次に、図1に示すように、図5に示す「封止」工程では、半導体チップCP1およびリードLSを封止体MRで封止する。封止体MRは、例えば、絶縁性のエポキシ樹脂で構成されている。
【0058】
次に、図5に示す「FT」工程を実施する。「FT」工程では、封止体MRで封止されたFRDに逆バイアスを印加した際のリーク電流を測定する。
【0059】
なお、図4に示す半導体チップCP2(IGBT)の製造工程のプロセスフローは、図5に示す「高融点金属膜HM形成」工程および「シリサイド層SC1形成」工程を除く工程を順次実施するものである。
<本実施の形態の半導体装置の特徴>
本実施の形態の半導体装置SDは、半導体チップCP1の裏面電極BS1に応力緩和層SR1を備えているため、「ウエハテスト」工程におけるリーク電流を低減することができ、半導体装置SDの製造歩留まりを向上することができる。「ウエハテスト」工程において、半導体ウエハがテスト装置のステージに真空吸着されることで半導体ウエハ内に発生するストレスが、裏面電極BS1に設けた応力緩和層SR1で緩和されるため、リーク電流が低減している。図9は、本実施の形態の半導体装置の電気特性を示す図面である。具体的には、「ウエハテスト」工程におけるFRDのリーク電流値の分布であり、1枚の半導体ウエハ内に形成された多数個の半導体チップCP1(FRD)のリーク電流値の分布を示している。図9の(A)は本実施の形態の半導体装置SD、(B)は関連技術の半導体装置SD0のリーク電流値分布である。関連技術の半導体装置SD0に比べ、本実施の形態の半導体装置SDでは、リーク電流値のばらつきが低減されていること、ガウス分布の中心のリーク電流値が下がっていること、が明確である。従って、半導体装置SDの製造歩留まりを向上できるだけでなく、半導体装置SDの性能が向上している。
【0060】
本実施の形態の半導体装置SDは、半導体チップCP1の裏面電極BS1に応力緩和層SR1を備えているため、封止された半導体チップCP1の「FT」工程および半導体装置SDの実使用時においてリーク電流を低減することができ、半導体装置SDの製造歩留まり向上、および性能向上を達成できる。リードLSに半田層BP1で接続された半導体チップCP1は、半田層BP1からストレスを受けるが、応力緩和層SR1でこのストレスを緩和し、半導体基板SB1が受けるストレスを緩和できるため、リーク電流を低減できる。
【0061】
本実施の形態の半導体装置SDは、シリサイド層SC1とバリア層BR1との間に応力緩和層SR1を設けている。つまり、半田層BP1から極力離れた位置に応力緩和層SR1を配置しているため、応力緩和層SR1をバリア層BR1と接合層BL1との間に設けた場合に比べて、信頼性を向上させることができる。応力緩和層SR1をバリア層BR1と接合層BL1との間に設けた場合、半田層BP1の膜厚ばらつき等に起因して、半田層BP1が応力緩和層SR1の側壁を覆ってしまう危険性がある。その場合、応力緩和層SR1が持つ応力緩和効果が低減するためである。
【0062】
本実施の形態の半導体装置SDは、FRDとして機能する半導体チップCP1では、半導体基板SB1の裏面SB1bにシリサイド層SC1を介して応力緩和層SR1を形成しているのに対し、IGBTとして機能する半導体チップCP2では、半導体基板SB2の裏面SB2bに直接応力緩和層SR2を形成している。従って、半導体チップCP1(FRD)と半導体チップCP2(IGBT)とを備える半導体装置SDの製造工程を低減できるため、製造コストの低減および歩留まり向上を実現できる。
【0063】
<変形例>
変形例1は、図4図6および図7に関する。図4において、シリサイド層SC1がニッケルシリサイド(NiSi)層で、応力緩和層SR1がアルミニウムシリコン(AlSi)層であり、ニッケルシリサイド(NiSi)層がバナジウム(V)を添加物として含有する場合を例に説明する。ニッケルシリサイド(NiSi)層に含まれるバナジウム(V)は、ニッケルシリサイド(NiSi)層とアルミニウムシリコン(AlSi)層との界面に偏析する。拡散係数が大きいニッケル(Ni)はアルミニウムシリコン(AlSi)層に拡散するため、ニッケルシリサイド(NiSi)層の中に空孔が発生し、そこにアルミニウム(Al)が拡散することとなるが、拡散係数が小さいバナジウム(V)がニッケルシリサイド(NiSi)層とアルミニウムシリコン(AlSi)層との界面に偏析しているため、アルミニウム(Al)の拡散を防止することができる。アルミニウム(Al)が半導体基板SB1に拡散するとスパイクと呼ばれる局所的な相互拡散が生じリーク電流の要因となるが、変形例では、このリーク電流の発生を防止することができる。
【0064】
具体的には、図6に示すように図5の「高融点金属膜HM形成」工程で、例えば、半導体基板SB1の裏面SB1b上にバナジウム(V)を添加(7%程度)したニッケル(Ni)膜を形成する。次に、図7に示すように図5の「シリサイド層SC1形成」工程を実施することで、シリサイド層SC1と応力緩和層SR1との界面にバナジウム(V)を偏析させることができる。
【0065】
また、接合層BL1に添加物としてバナジウム(V)を含有させることもできる。接合層BL1中のバナジウム(V)は、バリア層BR1(例えば、チタン(Ti))の接合層BL1への拡散を防止することができる。接合層BL1に対してチタン(Ti)の拡散が進行すると,接合層BL1と半田層BP1との接合性悪化のリスクが高まる。従って、接合層BL1にバナジウム(V)を添加することで接合層BL1と半田層BP1の密着性を向上できる。
【0066】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0067】
その他、上記実施の形態に記載された内容の一部を以下に記載する。
[付記1]
(a)主面と裏面とを備え、FRDが作り込まれたウエハ状の半導体基板を準備する工程、
(b)前記裏面上に応力緩和層を形成する工程、
(c)前記応力緩和層上にバリア層を形成する工程、
(d)前記バリア層上に接合層を形成する工程、
(e)前記半導体基板をテスト装置のステージに真空吸着した状態で前記FRDのテストをする工程、
を備え、
前記応力緩和層は、アルミニウムを主成分とする第1金属膜、または、金、銀、銅の何れかを主成分とする第2金属膜からなる半導体装置の製造方法。
[付記2]
(a)主面と裏面とを備え、FRDとして機能する半導体チップが多数個配置されたウエハ状の半導体基板を準備する工程、
(b)前記裏面上に応力緩和層を形成する工程、
(c)前記応力緩和層上にバリア層を形成する工程、
(d)前記バリア層上に接合層を形成する工程、
(e)前記ウエハ状の半導体基板を多数個の前記半導体チップに個片化する工程、
(f)前記半導体チップをリード上に搭載し、前記リードと前記接合層とを半田層で接続する工程、
(g)前記(f)工程の後に、前記FRDのテストをする工程、
を備え、
前記応力緩和層は、アルミニウムを主成分とする第1金属膜、または、金、銀、銅の何れかを主成分とする第2金属膜からなる半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0068】
ALY1 合金層
AN アノード領域
AOL0,AOL1,AOL2 酸化防止層
BL0,BL1,BL2 接合層
BP0,BP1,BP2 半田層
BR0,BR1,BR2 バリア層
BS0,BS1,BS2 裏面電極
CA カソード領域
CP0,CP1,CP2 半導体チップ
CT コレクタ端子
DP ダイパッド
ET エミッタ端子
GE ゲート電極
GF ゲート絶縁膜
GT ゲート端子
HM 高融点金属膜
LS リード
MR 封止体
ND1,ND2 ドリフト領域
NE エミッタ領域
NS バッファ領域
PB ボディ領域
PC コレクタ領域
SB0,SB1,SB2 半導体基板
SB1a,SB2a 主面
SB1b,SB2b 裏面
SC0,SC1 シリサイド層
SD,SD0 半導体装置
SR1,SR2 応力緩和層
TG トレンチ溝
TR 接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12