(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173199
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】導電タブ、溶接製品、及び、溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/34 20060101AFI20231130BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20231130BHJP
B23K 11/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B23K11/34
H01M50/516
B23K11/00 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085285
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】平松 茂
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA19
5H043FA40
5H043HA16F
5H043JA01F
5H043JA03F
5H043JA11F
5H043LA22F
(57)【要約】
【課題】抵抗溶接時の無効分流を低減する。
【解決手段】導電タブ10は、電極91に抵抗溶接される。導電タブ10は、電極91に抵抗溶接される第1部位(特定部位22BA)を備える第1導電シート20と、電極91に第1部位とともに抵抗溶接される第2部位(特定部位42BA)を備える第2導電シートと、を備える。第1導電シート20の端部R1と第2導電シート40の端部L1とが絶縁層30を介して重なっており、第1導電シード20と第2導電シート40とは、前記第1部位と第2部位との間にスリットHを形成する切り欠き22C、42Cを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象に抵抗溶接される導電タブであって、
前記溶接対象に抵抗溶接される第1部位を備える第1導電シートと、
前記溶接対象に前記第1部位とともに抵抗溶接される第2部位を備える第2導電シートと、を備え、
前記第1導電シートの一部と前記第2導電シートの一部とが絶縁層を介して重なっており、
前記第1導電シートと前記第2導電シートとの少なくとも一方は、前記第1導電シートの前記一部と前記第2導電シートの前記一部とが重なることで、前記第1部位と第2部位との間にスリットを形成する切り欠きを備える、
を備える導電タブ。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記第1導電シートの前記一部からはみ出した形状で前記第1導電シートを前記第2導電シート側から被覆している、
請求項1に記載の導電タブ。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記第2導電シートの前記一部からはみ出した形状で前記第2導電シートを前記第1導電シート側から被覆している、
請求項2に記載の導電タブ。
【請求項4】
前記第1導電シートと前記第2導電シートとの厚み方向を上下方向としたときに、前記絶縁層を挟んだ前記第1導電シート及び前記第2導電シートを上下方向から挟む絶縁材をさらに備える、
請求項1に記載の導電タブ。
【請求項5】
前記導電タブは、前記溶接対象側に突出した皿状の凸部を備え、
前記凸部は、筒状部分と、前記筒状部分から内周方向に延びた、前記第1部位及び前記第2部位を含む底と、を備え、
前記スリットは、前記底内に収まり、前記筒状部分には達していない形状に形成されている、
請求項1に記載の導電タブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の導電タブと、
前記導電タブが抵抗溶接された電極を前記溶接対象として有する電池と、
を備える溶接製品。
【請求項7】
前記電極と前記導電タブとの間に介在し、平面視において前記スリットを囲む筒状のシール部材をさらに備える、
請求項6に記載の溶接製品。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の導電タブを前記溶接対象に抵抗溶接する溶接方法であって、
一対の溶接用電極のうちの一方を前記第1部位に当て、他方を前記第2部位に当てて抵抗溶接を行う、
溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電タブ、溶接製品、及び、溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電タブを電池などの溶接対象に抵抗溶接するときは、溶接電流の一部が、溶接対象部材に流れずに導電タブ内を流れる無効分流(抵抗溶接に寄与しない電流)となってしまうことがある。この無効分流を低減するため、特許文献1には、溶接電流を流す一対の電極をそれぞれ当てる2つの部分の間にスリットを設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようにスリットを設けたとしても、当該スリットを迂回する無効分流が生じることがあり、無効分流の低減が十分でない場合がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、抵抗溶接時の無効分流を効果的に低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る導電タブは、溶接対象に抵抗溶接される導電タブであって、前記溶接対象に抵抗溶接される第1部位を備える第1導電シートと、前記溶接対象に前記第1部位とともに抵抗溶接される第2部位を備える第2導電シートと、を備え、前記第1導電シートの一部と前記第2導電シートの一部とが絶縁層を介して重なっており、前記第1導電シードと前記第2導電シートとの少なくとも一方は、前記第1導電シートの前記一部と前記第2導電シートの前記一部とが重なることで、前記第1部位と第2部位との間にスリットを形成する切り欠きを備える。
【0007】
一例として、前記絶縁層は、前記第1導電シートの前記一部からはみ出した形状で前記第1導電シートを前記第2導電シート側から被覆している。
【0008】
一例として、前記絶縁層は、前記第2導電シートの前記一部からはみ出した形状で前記第2導電シートを前記第1導電シート側から被覆している。
【0009】
一例として、導電タブは、前記第1導電シートと前記第2導電シートとの厚み方向を上下方向としたときに、前記絶縁層を挟んだ前記第1導電シート及び前記第2導電シートを上下方向から挟む絶縁材をさらに備える。
【0010】
一例として、前記導電タブは、前記溶接対象側に突出した皿状の凸部を備え、前記凸部は、筒状部分と、前記筒状部分から内周方向に延びた、前記第1部位及び前記第2部位を含む底と、を備え、前記スリットは、前記底内に収まり、前記筒状部分には達していない形状に形成されている。
【0011】
本発明に係る溶接製品は、上記導電タブと、前記導電タブが抵抗溶接された電極を前記溶接対象として有する電池と、を備える。
【0012】
一例として、前記溶接製品は、前記電極と前記導電タブとの間に介在し、平面視において前記スリットを囲む筒状のシール部材をさらに備える。
【0013】
本発明に係る溶接方法は、上記導電タブを前記溶接対象に抵抗溶接する溶接方法であって、一対の溶接用電極のうちの一方を前記第1部位に当て、他方を前記第2部位に当てて抵抗溶接を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、抵抗溶接時の無効分流が効果的に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る導電タブの平面図である。
【
図4】
図4は、導電タブを電極に抵抗溶接する様子を示す一部断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る電池パックを、上下左右方向に延びる平面で切断したときの切断面を示す一部端面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る導電タブの絶縁層及び第2導電シートの斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る導電タブの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7の導電タブを
図7の一点鎖線Bを通り上下方向に平行な平面で切断したときの切断面を示す端面図である。
【
図9】
図9は、
図7の導電タブを
図7の一点鎖線Cを通り上下方向に平行な平面で切断したときの切断面を示す端面図である。
【
図10】
図10は、変形例に係る導電タブの凸部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図面に示す各要素(特に各要素の厚みなどの寸法)は、模式的に誇張して描かれている。図面の上下左右及び前後の各方向は、便宜上のものであり、実際の天地方向、水平方向などと一致しなくてもよい。図面の上方から見たときのことを平面視という。
【0017】
図1~
図3に示す本実施形態に係る導電タブ10は、複数の電池90の電極91(ここでは、正電極)を溶接対象とし、この電極91に抵抗溶接されるように構成されている。導電タブ10は、第1導電シート20と、絶縁層30と、第2導電シート40と、を備える。第1導電シート20及び第2導電シート40は、銅又は銅合金などの金属製である。第1導電シート20及び第2導電シート40は、錫などのメッキ層を備えてもよい。絶縁層30は、合成樹脂などの任意の絶縁材料からなる。この絶縁材料としては、耐熱性のあるポリイミドなどが挙げられる。
【0018】
第1導電シート20は、平板状の平板部21と、平板部21から電極91側である下方に突出する、平面視において中心角が180度より大きな弓形の2つの凸部22と、を備える。2つの凸部22は、互いに同形状に形成されており、第1導電シート20の右側部分に前後方向に間隔を空けて配置されている。平面視において、凸部22の前記弓形の弦を構成する辺が第1導電シート20の右辺を構成している。凸部22は、平板を屈曲させた形状に形成されている。凸部22は、平面視において円弧状で、外周から内周に向かって徐々に電極91に近づくように平板部21から下方に延びる傾斜部22Aと、傾斜部22Aの下端から内周側に延びる平板状の底22Bと、を備える。底22Bには、第1導電シート20の右辺に開口した、前後方向に延びる切り欠き22Cが形成されている。第1導電シート20の平板部21は、電池90からの電流を外部に供給するため当該外部と電気的に接続される端子21Aを備える。なお、端子21Aの形状及び位置は任意である。
【0019】
絶縁層30は、第1導電シート20の一部を上側(第2導電シート40側)から被覆する。絶縁層30は、第1導電シート20の平板部21及び2つの凸部22をそれぞれ被覆する平板部31及び2つの凸部32を備える。平板部31は、平板部21の端子21A以外の部分全体を上から覆っている。2つの凸部32は、互いに同形状に形成されている。凸部32は、第1導電シート20の傾斜部22Aを被覆する傾斜部32Aと、底22Bを被覆する底32Bと、を備える。傾斜部32Aは、傾斜部22Aと同様の形状を有する。つまり、傾斜部32Aは、平面視において円弧状で、外周から内周に向かって徐々に電極91に近づくように平板部31から下方に延びている。底32Bは、傾斜部32Aの下端から内周側に延びる平板状に形成されている。底32Bには、切り欠き22Cに重なる、切り欠き22Cと同様の形状の切り欠き32Cと、当該切り欠き32Cから底32Bをさらに切り欠いた切り欠き32Dと、が形成されている。切り欠き32Dは、第1導電シート20の底22Bの特定部位22BAを上方に露出させる。特定部位22BAは、電極91に抵抗溶接される部位である。
【0020】
第2導電シート40は、平面視において、第1導電シート20とほぼ左右対称の形状を有する。第2導電シート40は、平板状の平板部41と、平板部41から下方に突出する、平面視において弓形の2つの凸部42と、を備える。2つの凸部42は、互いに同形状に形成されており、第2導電シート40の左側部分に前後方向に間隔を空けて配置されている。平面視において、凸部42の前記弓形の弦を構成する辺が第2導電シート40の左辺を構成している。凸部42は、平板を屈曲させた形状に形成されている。凸部42は、平面視において円弧状で、外周から内周に向かって徐々に電極91に近づくように平板部41から下方に延びる傾斜部42Aと、傾斜部42Aの下端から内周側に延びる平板状の底42Bと、を備える。底42Bには、第2導電シート40の左辺に開口した、前後方向に延びる切り欠き22Cが形成されている。第2導電シート40の平板部41は、電池90からの電流を外部に供給するため当該外部と電気的に接続される端子41Aを備える。なお、端子41Aの形状及び位置は任意である。
【0021】
第2導電シート40の左側の端部L1(
図2の1点鎖線で区画した部分)は、第1導電シート20の右側の端部R1(
図2の1点鎖線で区画した部分)に絶縁層30の右側の端部R2(
図2の1点鎖線で区画した部分)を介して重なって固定される。各端部R1、R2、及び、L1は、切り欠き22C、32C、及び、42Cによりそれぞれ分断された複数部分からなる。端部R1を被覆する端部R2と端部L1とは、互いに隙間ができないように当接する断面形状を有する。
【0022】
各端部R1、R2、及び、L1が重なることで、導電タブ10には、平板状の平板部11と、平面視において円形で平板部11から下方(電極91側)に突出した皿状の2つの凸部12が形成される。平板部11は、平板部21、31、及び、41から構成されている。2つの凸部12は、互いに同形状に形成されている。凸部12は、凸部22、32、及び、42から構成されている。凸部12は、円錐台の側面形状かつ外周から内周に向かって徐々に電極91に近づく形状で、平板部11から電極91側に延びた筒状部分12Aと、筒状部分12Aから内周方向に延びた底12Bとを備える。筒状部分12Aは、傾斜部22A、32A、42Aから構成されており、底12Bは、底22B、32B、42Bから構成されている。底12Bには、切り欠き22D、32D、42Dにより前後方向に長尺なスリットHが形成されている。スリットHは、底12B内に収まり、筒状部分12Aには達していない。
【0023】
導電タブ10は、例えば、下記のような方法で形成される。まず、第1導電シート20及び絶縁層30の組み合わせを、インサート成形などにより形成する。第1導電シート20及び絶縁層30の組み合わせは、絶縁層30を絶縁シートとして形成し、第1導電シート20に絶縁層30を、両面テープ又は接着材などによる貼り付け、又は、熱圧着により固定することで形成されてもよい。これら方法により形成した当該組み合わせに対して、両面テープ又は接着材などによる貼り付け、又は、熱圧着などにより第2導電シート40を固定する。これにより、導電タブ10が形成される。他の例として、平板状の第1導電シート20、絶縁層30、及び、第2導電シート40の組み合わせを形成したあと、エンボス加工、プレス加工などにより、凸部12などが形成されてもよい。
【0024】
導電タブ10の凸部12は、電池90の電極91に抵抗溶接される。ここでは、凸部12一つにつき、電極91一つが抵抗溶接される。
図4に示すように、抵抗溶接のための一対の溶接用の電極E1及びE2は、スリットHが間に位置することで互いに離れた、第1導電シート20の特定部位22BAと第2導電シート40の凸部42の底42Bの特定部位42BAとにそれぞれ同じ方向つまり上側から当てられる。特定部位42BAは、特定部位22BAのスリットHを挟んで左右対称の位置に設定される(
図1の一点鎖線で囲まれた領域)。その後、一対の電極E1及びE2は、特定部位22BA及び特定部位42BA、つまり、導電タブ10を電池90の電極91に押し付けながら、通電する。これにより、例えば電極E1からの溶接電流Iが、第1導電シート20の特定部位22BA、電池90の電極91、及び、第2導電シート40の特定部位42BAを順に経由して電極E2に流れ、導電タブ10の特定部位22BA及び特定部位42BAが同時に電池90の電極91に抵抗溶接される。導電タブ10が銅などである場合、導電タブ10は抵抗溶接により電極91に拡散接合される。
【0025】
抵抗溶接時、平面視においてスリットHを取り囲む筒状のシール部材70を導電タブ10と電池90との間に介在させるとよい。シール部材70は、弾性を有するゴム材、合成樹脂などから構成される。一対の電極E1及びE2が導電タブ10を電池90の電極91に押し付けたとき、シール部材70は弾性変形して、導電タブ10(特に、凸部12の底12B)及び電極91に密着する。このようなシール部材70により、スリットHから電池90側に侵入した水などの液体が電池90の周囲に回り込むことが抑制される。このような効果は、例えば、
図5に示すような、電池90と、電池90を溶接した導電タブ10と、これらを収容する筐体110と、筐体110と導電タブ10との間をシールするシール部材120と、を備える電池パック100などにおいて特に有効である。シール部材70により、電池90と筐体110との間に液体が侵入すること、及び、これに伴う腐食などが抑制される。
【0026】
以上説明したように、第1導電シート20の端部R1と第2導電シート40の端部L1とは、絶縁層30を介して重なっており、第1導電シート20と第2導電シート40とが互いに絶縁されている。さらに、第1導電シート20と第2導電シート40とは、切り欠き22C及び42CによりスリットHを形成し、抵抗溶接時、一対の電極E1及びE2は、スリットHを挟んで、導電タブ10の特定部位22BA及び特定部位42BAにそれぞれ当てられる。このような構成により、抵抗溶接時、電極E1から第1導電シート20の特定部位22BAに流れ、その後、電極91を流れずに直接第2導電シートの特定部位22BAに流れる無効分流(つまり抵抗溶接に寄与しない電流)の発生が抑制される。特に、この実施の形態では、絶縁層30により、スリットHを迂回するような無効分流の発生が抑制される。このように、本実施の形態では、無効分流が効果的に抑制される。
【0027】
また、この実施の形態では、絶縁層30が、第1導電シート20の特定部位22BA及び端子21A以外の部分を第2導電シート40側から被覆することで、第1導電シート20の端部R1からはみ出した形状で第1導電シート20を被覆している。仮に、絶縁層30が端部R1と平面視において同形状とすると、第1導電シート20と第2導電シート40との間の絶縁層30の沿面距離が絶縁層30の厚み(上下方向の長さ)となって短くなってしまい、抵抗溶接時に沿面放電による無効分流が発生する可能性がある。絶縁層30が、第1導電シート20の端部R1からはみ出した形状で第1導電シート20を被覆することで、絶縁層30の沿面距離を、絶縁層30を端部R1と平面視において同形状とするよりも長くすることができ、無効分流がより効果的に抑制される。
【0028】
上記と同様の観点から、絶縁層30が、第2導電シート40の端部L1からはみ出した形状で第2導電シート40を第1導電シート20側から被覆するとよい。これによっても、絶縁層30の沿面距離を、絶縁層30を端部L1と平面視において同形状とするよりも長くすることができ、無効分流がより効果的に抑制される。このような場合、
図6に示すように、絶縁層30は、第2導電シート40の特定部位42BA及び端子41A以外の部分を第1導電シート20側つまり下方から被覆する形状に形成されてもよい。
図6の絶縁層30は、凸部12を構成する、凸部39を備える。凸部39の底には、スリットHを構成し、かつ、第1導電シート20の特定部位22BA及び第2導電シート40の特定部位42BAを露出させる貫通孔30Zが形成されている。
【0029】
上記実施の形態のように、スリットHが底12B内に配置され筒状部分12Aに達していないことで(
図1など)、スリットHの縁を全周に渡って電極91に押し付けることができ、スリットHから電極91と導電タブ10との間に侵入する液体を低減することができる。
【0030】
また、シール部材70により、スリットHから電池90側に侵入した液体が電池90の周囲に回り込むことが抑制される。
【0031】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態に対する様々な変更が含まれる。以下、変形例を例示するが、各変形例を組み合わせてもよい。
【0032】
(1)
図7~
図9に示すように、変形例に係る導電タブ210は、第1実施形態と同様の第1導電シート20と第2導電シート40とを備えるほか、絶縁層30と同様の機能を有する絶縁層230と、第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252を備える絶縁材250とを備える。
【0033】
絶縁層230は、第1導電シート20と第2導電シート40とが重なる3つの領域(端部R1及びL1を構成する3つの領域)にのみ形成されており、これら3つの領域にそれぞれ配置された3つの部位231~233からなる。絶縁層230は、部位231~233の一部により形成された屈曲部T1~T2を備える。屈曲部T1~T2は、第1導電シート20の凸部22及び第2導電シート40の凸部42とともに凸部12を構成するように凸部22及び42の形状に合わせて屈曲している。
【0034】
絶縁材250は、第1導電シート20、第2導電シート40、及び絶縁層230の組み合わせからなるユニットAを上下方向(厚み方向)から挟む形状に形成されている。絶縁材250は、ユニットAを上方向から被覆する第1絶縁シート251と、ユニットAを下方向から被覆する第2絶縁シート252と、を備える。第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252は、ユニットAのうち、スリットHと、第1導電シート20の特定部位22BA及び端子21Aと、第2導電シート40の特定部位42BA及び端子41Aと、を避け、残りの部分全部を被覆する。
【0035】
第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252は、ユニットAから外周側にはみ出す形状に形成され、第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252の外側面などを被覆する。さらに、第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252は、ユニットAに密着し、絶縁層230の側面なども被覆する。
【0036】
第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252は、凸部12を上下方向から挟んで被覆する凸部251A及び252Aをそれぞれ備える。凸部251A及び252Aの底には、スリットHと、特定部位22BAと、特定部位42BAと、を上方又は下方に露出させる貫通孔251H及び252Hがそれぞれ設けられている。
【0037】
第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252は、ポリイミドなどの各種の絶縁材料により形成される。平坦な第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252をユニットAに熱圧着することで、絶縁材250が形成されてもよい。ユニットAを金型にインサートするインサート成型により、絶縁材250が形成されてもよい。このような場合、第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252は、一体成型される。絶縁材250は、絶縁層30と一体的に形成されてもよい。例えば、第1導電シート20及び第2導電シート40を厚み方向に間をあけて金型にインサートするインサート成型により、絶縁材250が、絶縁層30と一体に形成されてもよい。
【0038】
このような実施の形態では、第1導電シート20及び第2導電シート40が極力絶縁材250により被覆されるので、沿面放電、トラッキング又はマイグレーションなどが効果的に抑制される。
【0039】
絶縁材250は、第1導電シート20及び第2導電シート40の、スリットHの内壁を構成している側面を覆うように、スリットHの一部または全部を埋めるように構成されてもよい。絶縁材250(第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252)は、スリットHと、特定部位22BAと、特定部位42BAとのそれぞれを個別に露出させる複数の貫通孔を備えてもよい。これら絶縁材250の構造は、絶縁層30に採用されてもよい。
【0040】
絶縁材250(第1絶縁シート251及び第2絶縁シート252)は、複数のユニットAを上下方向から挟み、複数のユニットAを互いに絶縁させた状態で連結してもよい。
【0041】
絶縁材250が省略され、第1導電シート20と第2導電シート40とが重なる部分(端部R1及びL1)にのみに設けられた絶縁層230のみが設けられてもよい。
【0042】
(2)第1導電シート20を端子21A及び特定部位22BAを避けて上下方向から挟む第1絶縁材と、第2導電シート40を端子41A及び特定部位42BAを避けて上下方向から挟む第2絶縁材と、が設けられてもよい。この場合、第1絶縁材と第2絶縁材とが重なる部分が第1導電シート20と第2導電シート40との間の絶縁層を構成する。
【0043】
(3)スリットHを形成する切り欠きは、第1導電シート20と第2導電シート40の一方のみに設けられてもよい。例えば、
図10に示すように、第2導電シート40側のみに切り欠く42が形成され、スリットHが形成されてもよい。
図10の例では、
図1などの例と同様に、絶縁層30が、第1導電シート20の第2導電シート40と重ない部分も被覆しているが、絶縁層30は、変形例(1)と同様に、第1導電シート20と第2導電シート40との重なる部分にのみ形成されてもよい。この場合、絶縁材250が形成されてもよい。
【0044】
(4)上記各要素の形状は、適宜変更可能である。例えば、凸部12は、円形でなく、四角形状などであってもよい。従って、筒状部分12Aは、円筒形状などでもよく、四角筒形状などであってもよい。また、導電タブ10などは、凸部12が形成されない平坦形状であってもよい。
【0045】
(5)上記実施の形態では、第1導電シート20と第2導電シート40とが別体に設けられ、互いに接触せずに絶縁されているが、第1導電シート20の端子21Aと第2導電シート40の端子41Aとが、溶接などにより電気的に接続されていてもよい。第1導電シート20と第2導電シート40とは、端子21Aと端子41Aとが繋がった一枚の導電シートを変形させることで形成してもよい。
【0046】
(6)導電タブ10の溶接対象は、電池90以外の部品又は製品であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…導電タブ、11…平板部、12…凸部、12A…筒状部分、12B…底、20…第1導電シート、21…平板部、21A…端子、22…凸部、22A…傾斜部、22B…底、22BA…特定部位、30…絶縁層、30Z…貫通孔、31…平板部、32…凸部、32A…傾斜部、32B…底、39…凸部、40…第2導電シート、41…平板部、41A…端子、42…凸部、42A…傾斜部、42B…底、42BA…特定部位、70…シール部材、90…電池、91…電極、100…電池パック、110…筐体、120…シール部材、210…導電タブ、230…絶縁層、231~233…部位、T1~T2…屈曲部、絶縁材…250、251…第1絶縁シート、251A…凸部、251H…貫通孔、252…第2絶縁シート、252A…凸部、252H…貫通孔、A…ユニット、E1…電極、E2…電極、H…スリット、I…溶接電流、L1…端部、R1…端部、R2…端部。