IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナブテスコ株式会社の特許一覧

特開2023-173209判定装置、鉄道用ドア装置、判定方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173209
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】判定装置、鉄道用ドア装置、判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B61D 19/02 20060101AFI20231130BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20231130BHJP
   E05F 15/41 20150101ALN20231130BHJP
【FI】
B61D19/02 E
B60J5/00 D
B61D19/02 S
E05F15/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085298
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】李 ダリン
(72)【発明者】
【氏名】木上 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】松田 泰幸
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052DA02
2E052DB02
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC02
2E052GA09
2E052GB06
2E052GB15
2E052KA27
(57)【要約】
【課題】ドアまで駅員や乗務員が行く必要なく、ドアと戸袋の間の介在物の引き込みとドアに対する厚み方向への加圧とのいずれが生じたかを把握する。
【解決手段】電動機の駆動力にて鉄道車両の乗降口を開閉するドアの開動作中に前記電動機に流れる電流値、又は前記ドアの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得部と、取得された前記動作情報のうち、少なくとも前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間に取得された前記動作情報に基づいて、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対する前記ドアの厚み方向への加圧、のいずれが前記ドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定部とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の駆動力にて鉄道車両の乗降口を開閉するドアの開動作中に前記電動機に流れる電流値、又は前記ドアの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得部と、
取得された前記動作情報のうち、少なくとも前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間に取得された前記動作情報に基づいて、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対する前記ドアの厚み方向への加圧、のいずれが前記ドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定部と
を備える判定装置。
【請求項2】
前記特定期間は、
前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けてから所定の距離を移動した後の期間である
請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記特定期間は、
前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けてから所定の時間を経過した後の期間である
請求項1に記載の判定装置。
【請求項4】
前記駆動指令を取得し、取得した前記駆動指令に基づいて前記特定期間を特定する
請求項1に記載の判定装置。
【請求項5】
前記ドアの開動作中に取得された複数時点の前記動作情報から特徴量を算出する特徴量算出部
を備え、
前記判定部は、
算出された前記特徴量を学習済モデルに入力して、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対する前記ドアの厚み方向への加圧か、前記介在物の引き込みも前記ドアの厚み方向への加圧のいずれも生じていないか、のいずれが生じたかを判定する
請求項1に記載の判定装置。
【請求項6】
前記介在物の引き込みが生じたと判定された場合には外部に報知し、前記厚み方向への加圧が生じたと判定された場合には前記外部に報知しない報知部
を備える
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項7】
前記厚み方向への加圧が生じたと判定された場合には、前記駆動指令を変更する
請求項6に記載の判定装置。
【請求項8】
ドアリーフを開閉移動させる電動機と、
前記電動機に駆動指令を送り、前記ドアリーフを開閉制御する制御部と、
前記ドアリーフの開動作中に前記電動機に流れる電流値、又は前記ドアリーフの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得部と、
取得された前記動作情報のうち、少なくとも前記ドアリーフが一定速度で動くように前記駆動指令を前記電動機に送っている際の特定期間に取得された前記動作情報に基づいて、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対して前記ドアの厚み方向へ加圧、のいずれが前記ドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定部と
を備える鉄道用ドア装置。
【請求項9】
前記駆動指令は、前記電動機に供給する電圧のデューティ比を制御するためのPWM信号である
請求項8に記載の鉄道用ドア装置。
【請求項10】
電動機の駆動力にて鉄道車両の乗降口を開閉するドアの開動作中に前記電動機に流れる電流値、又は前記ドアの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得ステップと、
取得された前記動作情報のうち、少なくとも前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間に取得された前記動作情報に基づいて、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対する前記ドアの厚み方向への加圧、のいずれが前記ドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定ステップと
を含む判定方法。
【請求項11】
鉄道車両の乗降口を開閉するドアを電動機の駆動力にて開閉制御する制御器のコンピュータに、
前記ドアの開動作中に前記電動機に流れる電流値、又は前記ドアの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得手順と、
取得された前記動作情報のうち、少なくとも前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間に取得された前記動作情報に基づいて、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対する前記ドアの厚み方向への加圧、のいずれが前記ドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定手順と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置、鉄道用ドア装置、判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用のドアの開動作時に該ドアと戸袋との間への物体の引き込みを検出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
物体の引き込みの検出は、鉄道車両の安全性の確保において重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-206329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の技術は、開動作時のドア速度が指令速度に対してどの程度低下したかを監視することで、物体の引き込みを検出するというものである。
しかしながら、開動作時のドア速度は、ドアの厚み方向への加圧が生じている状態(例えば、混雑によって車両内からドア面が押されている状態、ドアに人がもたれかかっている状態等)においても低下する。つまり、上記文献の技術では、引き込みが生じた状態とドアの厚み方向への加圧が生じた状態とを識別できないため、ドアの厚み方向への加圧のような本来は安全性に問題のない状況であっても引き込みであると検出(誤検出)する。
このため、駅員や乗務員は、本来は安全性に問題のない状況であってもドアまで行って安全性を確認する必要があり、鉄道の定時運行に支障を来たす虞がある。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、ドアまで駅員や乗務員が行く必要なく、ドアと戸袋の間の介在物の引き込みとドアに対する厚み方向への加圧とのいずれが生じたかを把握できる判定装置、鉄道用ドア装置、判定方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、電動機の駆動力にて鉄道車両の乗降口を開閉するドアの開動作中に前記電動機に流れる電流値、又は前記ドアの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得部と、取得された前記動作情報のうち、少なくとも前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間に取得された前記動作情報に基づいて、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対する前記ドアの厚み方向への加圧、のいずれが前記ドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定部と
を備える判定装置である。
上記構成によれば、一定速度でドアが動くように駆動指令を受けている特定期間は、ドアが徐々に戸袋へ収容されていく。ドアと戸袋の間の介在物の引き込みが生じている場合は、ドアが開動作される際の摺動抵抗に変化は無い。一方で、ドアに対する厚み方向への加圧が生じている場合は、加圧されるドアの面積が減るため、ドアに加わる圧力も減っていく。そのため、判定部は、特定期間に取得された動作情報を用いて判定できる。従って、ドアまで駅員や乗務員が行く必要なく、ドアと戸袋の間の介在物の引き込みとドアに対する厚み方向への加圧とのいずれが生じたかを把握できる。これにより、例えば、駅員や乗務員は、引き込みが生じたと判定された場合にはドアへ行って引き込みに対処することで乗客の安全性を確保し、一方で厚み方向への加圧が生じたと判定された場合には何も問題無しと判断することができる。
【0007】
前記判定装置において、前記特定期間は、前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けてから所定の距離を移動した後の期間であってもよい。
上記構成によれば、ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けてから所定の距離を移動した後の期間の動作情報を用いて判定するため、好適に判定することができる。
【0008】
前記判定装置において、前記特定期間は、前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けてから所定の時間を経過した後の期間であってもよい。
上記構成によれば、ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けてから所定の時間を経過した後の期間の動作情報を用いて判定するため、好適に判定することができる。
【0009】
前記判定装置において、前記駆動指令を取得し、取得した前記駆動指令に基づいて前記特定期間を特定してもよい。
上記構成によれば、簡便に特定期間を特定することができる。
【0010】
前記判定装置は、前記ドアの開動作中に取得された複数時点の前記動作情報から特徴量を算出する特徴量算出部を備え、前記判定部は、算出された前記特徴量を学習済モデルに入力して、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対する前記ドアの厚み方向への加圧か、前記介在物の引き込みも前記ドアの厚み方向への加圧のいずれも生じていないか、のいずれが生じたかを判定してもよい。
上記構成によれば、学習済モデルを用いて判定するため、例えば、閾値を設けて判定する場合と比べて判定の精度が向上する。
【0011】
前記判定装置は、前記介在物の引き込みが生じたと判定された場合には外部に報知し、前記厚み方向への加圧が生じたと判定された場合には前記外部に報知しない報知部を備えてもよい。
上記構成によれば、例えば、駅員や乗務員は、報知があった場合にはドアへ行って引き込みに対処することで乗客の安全性を確保し、報知がない場合には何も問題無しと判断することができる。
【0012】
前記判定装置は、前記厚み方向への加圧が生じたと判定された場合には、前記駆動指令を変更してもよい。
上記構成によれば、加圧が生じている状況を考慮したドアを開くことができる。
【0013】
本発明の一態様は、ドアリーフを開閉移動させる電動機と、前記電動機に駆動指令を送り、前記ドアリーフを開閉制御する制御部と、前記ドアリーフの開動作中に前記電動機に流れる電流値、又は前記ドアリーフの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得部と、取得された前記動作情報のうち、少なくとも前記ドアリーフが一定速度で動くように前記駆動指令を前記電動機に送っている際の特定期間に取得された前記動作情報に基づいて、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対して前記ドアの厚み方向へ加圧、のいずれが前記ドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定部とを備える鉄道用ドア装置である。
上記構成によれば、上述した判定装置と同様、例えば、駅員や乗務員は、引き込みが生じたと判定された場合にはドアへ行って引き込みに対処することで乗客の安全性を確保し、一方で厚み方向への加圧が生じたと判定された場合には何も問題無しと判断することができる。
【0014】
前記鉄道用ドア装置において、前記駆動指令は、前記電動機に供給する電圧のデューティ比を制御するためのPWM信号であってもよい。
上記構成によれば、例えば、消費電力を抑えることができる。
【0015】
本発明の一態様は、電動機の駆動力にて鉄道車両の乗降口を開閉するドアの開動作中に前記電動機に流れる電流値、又は前記ドアの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得ステップと、取得された前記動作情報のうち、少なくとも前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間に取得された前記動作情報に基づいて、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対する前記ドアの厚み方向への加圧、のいずれが前記ドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定ステップとを含む判定方法である。
上記構成によれば、上述した判定装置と同様、例えば、駅員や乗務員は、引き込みが生じたと判定された場合にはドアへ行って引き込みに対処することで乗客の安全性を確保し、一方で厚み方向への加圧が生じたと判定された場合には何も問題無しと判断することができる。
【0016】
本発明の一態様は、鉄道車両の乗降口を開閉するドアを電動機の駆動力にて開閉制御する制御器のコンピュータに、前記ドアの開動作中に前記電動機に流れる電流値、又は前記ドアの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得手順と、取得された前記動作情報のうち、少なくとも前記ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間に取得された前記動作情報に基づいて、前記ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか、前記ドアに対する前記ドアの厚み方向への加圧、のいずれが前記ドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定手順とを実行させるためのプログラムである。
上記構成によれば、上述した判定装置と同様、例えば、駅員や乗務員は、引き込みが生じたと判定された場合にはドアへ行って引き込みに対処することで乗客の安全性を確保し、一方で厚み方向への加圧が生じたと判定された場合には何も問題無しと判断することができる。また、外部のサーバ等にデータを送信しないため、判定時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、ドアまで駅員や乗務員が行く必要なく、ドアと戸袋の間の介在物の引き込みとドアに対する厚み方向への加圧とのいずれが生じたかを把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】判定装置を内蔵した電気式ドア装置の外観図である。
図2】モータの周辺の構造をより具体的に示す図である。
図3】電気式ドア装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図4】ドアが全閉位置から全開位置まで移動する間のドアの移動位置とドアの移動速度との関係を示したグラフである。
図5】ドアが全閉位置から全開位置まで移動する間のドアの移動位置とモータ電流との関係を示したグラフである。
図6】第1実施形態による判定装置の構成例を示すブロック図である。
図7】第1実施形態による判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態による判定装置の動作の他の例を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態による判定装置の変形例1の構成例を示すブロック図である。
図10】第1実施形態による判定装置の変形例2の構成例を示すブロック図である。
図11】第2実施形態による判定装置の構成例を示すブロック図である。
図12】第2実施形態による判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図13】第2実施形態による判定装置の変形例1の構成例を示すブロック図である。
図14】第2実施形態による判定装置の変形例2の構成例を示すブロック図である。
図15】第3実施形態による判定装置の構成例を示すブロック図である。
図16】第3実施形態による判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図17】第3実施形態による判定装置の変形例1の構成例を示すブロック図である。
図18】第3実施形態による判定装置の変形例2の構成例を示すブロック図である。
図19】第1実施形態による判定装置の変形例3の構成例を示すブロック図である。
図20】第1実施形態の変形例3の学習済モデルについて説明するための概念図である。
図21】モデル生成装置の構成例を示すブロック図である。
図22】学習用データセットについて説明するための概念図である。
図23】第2実施形態による判定装置の変形例3の構成例を示すブロック図である。
図24】第2実施形態の変形例3の学習済モデルについて説明するための概念図である。
図25】第3実施形態による判定装置の変形例3の構成例を示すブロック図である。
図26】第3実施形態の変形例3の学習済モデルについて説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、第1実施形態による判定装置1Aと、第2実施形態による判定装置1Bと、第3実施形態による判定装置1Cとを特に区別しない場合には、判定装置1A、判定装置1B及び判定装置1Cを判定装置1と総称する場合がある。
【0020】
図1は、判定装置1を内蔵した電気式ドア装置(鉄道用ドア装置、自動ドア装置)2の外観図である。電気式ドア装置2は、鉄道車両に搭載される。
【0021】
電気式ドア装置2は、引き戸である一対のドアリーフ3R、RLを備えている。ドアリーフ3R、3Lの上方には、ガイドレール4と、右側のドアリーフ3Rを支持する戸吊装置5Rと、左側のドアリーフ3Lを支持する戸吊装置5Lとが配置されている。戸吊装置5Rとドアリーフ3Rは、ガイドレール4に沿って一体に移動自在とされている。また、戸吊装置5Lとドアリーフ3Lは、ガイドレール4に沿って一体に移動自在とされている。各ドアリーフ3R、3Lの戸先には、軟質の合成ゴム材料で形成された戸先ゴム7が取り付けられている。
【0022】
戸吊装置5R、5Lの内部には、破線で示すように、複数の戸車6が設けられている。各戸車6は、ガイドレール4の上面又は下面に接触しながら転動する。
【0023】
ガイドレール4の上方には、ガイドレール4の延びる方向に沿って右用ラックギア8Rと左用ラックギア8Lが設けられている。右用ラックギア8Rには、右側ブラケット9Rが連結されており、右用ラックギア8Rが左右に移動すると、その移動に伴って右側連結ブラケット9Rが左右に移動する。同様に、左側ラックギア8Lには、左側ブラケット9Lが連結されており、左用ラックギア8Lが左右に移動すると、その移動に伴って左側連結ブラケット9Lが左右に移動する。右側連結ブラケット9Rには戸吊装置5Rが連結されており、右側連結ブラケット9Rの左右の移動に合わせて戸吊装置5Rとドアリーフ3Rが一体に左右に移動する。また、左側連結ブラケット9Lには戸吊装置5Lが連結されており、左側連結ブラケット9Lの左右の移動に合わせて戸吊装置5Lとドアリーフ3Lが一体に左右に移動する。
【0024】
右用ラックギア8Rと左用ラックギア8Lは、ピニオンギア10に噛み合っており、ピニオンギア10の回転運動を直線運動に変換する作用を行う。ピニオンギア10は、モータ11の駆動力で回転する。
【0025】
図2は、モータ11の周辺の構造をより具体的に示す図である。モータ11の回転軸12に取り付けられたサンギア13と、サンギア13の周囲に配置されてサンギア13と噛み合う複数の遊星ギア14と、複数の遊星ギア14の外側に配置されて複数の遊星ギア14と噛み合うアウタギアであるピニオンギア10とが設けられている。
【0026】
このように、モータ11が回転すると、その回転力は、ピニオンギア10を介してラックギア8R、8Lに伝達され、ラックギア8R、8Lがモータ11の回転に応じて左右に移動すると、右側ブラケット9R及び左側ブラケット9Lを介して一対のドアリーフ3R、3Lはガイドレール4に沿って左右に移動する。以下、一対のドアリーフ3R、3Lの一方又は両方を単にドアと称する場合がある。
【0027】
つまり、ドア(ドアリーフ3R、3L)は、図示の左右方向に移動可能である。鉄道車両の乗降口は、ドアの左右方向の移動によって開閉される。すなわち、鉄道車両の乗降口は、ドアが閉方向(戸先同士が接触する方向)に移動することによって閉じられる。閉方向の移動動作(閉動作)として、ドアは、戸先ゴム7同士が互いに接触し、接触した状態で戸先ゴム7同士がある程度まで収縮してから、停止するようになっている。鉄道車両の乗降口は、ドアが開方向(戸先同士が離れる方向)に移動することにとって開かれる。開方向の移動動作(開動作)として、ドアは、戸先ゴム7も含むドアの全体が車体に形成された戸袋(非図示)に収納されてから、停止するようになっている。
【0028】
判定装置1は、ドアと戸袋の間への介在物の引き込み(以下、単に「引き込み」と称する場合がある)か、ドアに対するドアの厚み方向(ドアの面を押す方向)への加圧(以下、単に「加圧」と称する場合がある)のいずれがドアの開動作中に生じたか否かを判定する。引き込みは、例えば乗客の衣服や傘などの持ち物が、開動作中のドアに接触して連れ動きし、戸袋とドアとの間に引き込まれる(挟み込まれる)ことである。引き込が生じた場合、ドアは衣服や持ち物を引きずって摺動するため、摺動抵抗が増加する。加圧は、例えば満員電車で乗客がドアにもたれかかるなどして、開動作中のドアの側面に体重がかかっている状態である。加圧が生じた場合、体重がかかっている乗客の衣服等に接触して摺動するため、摺動抵抗が増加する。
【0029】
なお、電気式ドア装置2の開閉方式は、必ずしも上述したラックアンドピニオン方式である必要はなく、上記以外の任意の方式(例えば、ベルト式、スクリュー式、リニアモータ式など)でもよい。
【0030】
図3は、電気式ドア装置2の制御系の概略構成を示すブロック図である。電気式ドア装置2の制御系は、図3に示すように、制御器15と、電源部16と、モータモニタ部17とを備えている。
【0031】
電源部16は、架線から供給される交流電圧を直流電圧に変換する電源装置を内蔵する。制御器15は、ドア開閉制御部18と、指令部19と、送信部29とを有する。指令部19は、ドア開閉制御部18に対して、ドアを開閉させるための駆動指令(指令信号)を出力する。ドア開閉制御部18は、駆動指令に基づいて、ドアの開閉を制御する。また、指令部19は、PWM制御部22にどのような駆動指令が出力されているのかを判定装置1が把握可能な情報(例えば、駆動指令であってもよい)を判定装置1に出力してもよい。
【0032】
送信部29は、外部(非図示の管理装置や保守作業員が所持する携帯端末等)に情報を送信する。例えば、送信部29は、判定装置1がドアの開動作中に引き込みか生じたと判定した場合、引き込みが生じた旨の警告情報を外部に送信(報知)する。
【0033】
ドア開閉制御部18は、電源電圧検出部21と、PWM制御部22と、モータ駆動部23と、ホール信号検出器24と、速度検出部25と、判定装置1とを備えている。
【0034】
電源電圧検出部21は、電源部16から出力される直流電圧の電圧レベルを検出する。PWM制御部22は、電源電圧検出部21で検出された直流電圧の電圧レベルと、指令部19からの駆動指令とに基づいて、モータ11を駆動するためのPWM信号を生成する。より詳細には、PWM制御部22は、駆動指令に応じた基準電圧指令パターンと、電源電圧検出部21で検出された直流信号の電圧レベルとに基づいて、モータ11に供給される電圧のデューティ比を制御するためのPWM信号を生成する。
【0035】
モータ駆動部23は、モータ11を駆動させる。より詳細には、モータ駆動部23は、PWM信号に基づいて、モータ11を駆動するトランジスタのオン又はオフを制御する。例えば、モータ11が三相モータ11の場合、モータ駆動部23は、U相、V相及びW相の各トランジスタをオン又はオフさせるためのゲート信号を生成する。
【0036】
モータ11の回転軸12の近傍にはホール素子26が取り付けられており、ホール素子26にてモータ11の回転数が検出される。また、モータ11の近傍には、モータモニタ部17が設けられている。モータモニタ部17は、上述したホール素子26の他に、モータ電流(モータ11に流れる電流値)を検出するためのモータ電流検出器27を有する。
【0037】
ホール信号検出器24は、ホール素子26の検出信号に基づいて、モータ11の回転数を検出する。モータ駆動部23は、ホール信号検出器24で検出されたモータ11の回転数に基づいて、モータ11を駆動する各トランジスタのオン又はオフの制御タイミングを帰還制御することができる。速度検出部25は、ホール信号検出器24にて検出された信号からドアの移動速度を検出する。
【0038】
判定装置1は、開動作に係る動作情報(検出情報)に基づいて、ドアと戸袋の間への介在物の引き込みか加圧のいずれがドアの開動作中に生じたか否かを判定する。動作情報は、ドアの開動作中においてモータ電流検出器27によって検出された電流値(ドアを駆動させるモータに流れる電流値)や、ドアの開動作中において速度検出部25によって検出されたドアの速度値(ドアの開動作中の速度値)である。
【0039】
図4は、ドアが全閉位置から全開位置まで移動する間のドアの移動位置とドアの移動速度との関係を示したグラフである。図4の横軸は、位置(移動位置)である。位置P0は、全閉位置である。位置P3は、全開位置である。図4の縦軸は、速度(移動速度)である。
【0040】
位置P0~位置P1の範囲は、ドアの移動速度が徐々に加速して一定となる加速域である。位置P1~位置P2の範囲は、ドアの移動速度が一定の高速となる高速域である。位置P2~位置P3は、ドアの移動速度が徐々に減速して停止する減速域である。図5においても同様である。加速域、高速域、減速域は、駆動指令に基づくものである。従って、実際には、高速域においてドアの移動速度が一定とならない場合がある(例えば、図4の一点鎖線L3)。
【0041】
位置Paは、高速域の3分の2の位置(位置P1から位置P2に向け3分の2進んだ位置)である。位置Pbは、高速域の終盤の位置である。位置Pcは、減速域の2分の1の位置(位置P2から位置P3に向け2分の1進んだ位置)である。閾値VTh1、閾値VTh2については後述する。
【0042】
図4では、引き込みが生じた場合のドアの移動速度(以下、「引き込みの場合の移動速度」と称する場合がある)と、加圧が生じている場合のドアの移動速度(以下、「加圧の場合の移動速度」と称する場合がある)と、引き込みも加圧も生じていない場合のドアの移動速度(以下、「引き込みも加圧もない場合の移動速度」と称する場合がある)と、を夫々示している。
【0043】
具体的には、図4の実線L1は、引き込みも加圧もない場合の移動速度を示している。長破線L2は、引き込みの場合の移動速度を示している。但し、引き込みの場合の移動速度と、引き込みも加圧もない場合の移動速度(実線L1)との間に差が無い範囲については、長破線L2の記載を省略している。一点鎖線L3は、加圧の場合の移動速度を示している。但し、加圧の場合の移動速度と、引き込みも加圧もない場合の移動速度(実線L1)との間に差が無い範囲については、一点鎖線L3の記載を省略している。
【0044】
なお、図4において引き込みの場合の移動速度をドアが全開位置(位置P3)に到達する迄示したように、図4において移動速度を示した引き込みは、ドアが全開位置まで移動した場面における引き込みである(つまりドアが全開位置に到達できないような引き込みは除外している)。同様に、図4において加圧の場合の移動速度をドアが全開位置に到達する迄示したように、図4において移動速度を示した加圧は、ドアが全開位置まで移動した場面における加圧である(つまりドアが全開位置に到達できないような加圧は除外している)。図5においても同様である。
【0045】
図4に示すように、引き込みの場合の移動速度(長破線L2)は、減速域において、引き込みも加圧もない場合の移動速度(実線L1)よりも小さい(遅い)。なお、加速域や高速域でも、引き込みの場合の移動速度(長破線L2)が、引き込みも加圧もない場合の移動速度(実線L1)よりも遅くなる場合もあるが、減速域に比べて速度低下が顕著ではないため、無視している。
【0046】
図4に示すように、加圧の場合の移動速度(一点鎖線L3)は、加速域及び高速域において、引き込みも加圧もない場合の移動速度(実線L1)よりも小さい。ドアが戸袋に収納されるに連れ、戸袋から露出したドアの面積(すなわち、加圧され得るドアの面積)が減少するため、加圧の場合の移動速度(一点鎖線L3)は、段々と、引き込みも加圧もない場合の移動速度(実線L1)に近づく。
【0047】
図5は、ドアが全閉位置から全開位置まで移動する間のドアの移動位置とモータ電流との関係を示したグラフである。図5の横軸は、位置(移動位置)である。位置P0は、全閉位置である。位置P3は、全開位置である。図5の縦軸は、電流(モータ電流)である。
【0048】
位置Paは、高速域の3分の2の位置である。位置Pbは、高速域の終盤の位置である。閾値IThについては後述する。
【0049】
図5では、引き込みの場合の電流と、加圧の場合の電流と、引き込みも加圧もない場合の電流と、を夫々示している。
【0050】
具体的には、図5の実線L1は、引き込みも加圧もない場合の電流を示している。長破線L2は、引き込みの場合の電流を示している。但し、引き込みの場合の電流と、引き込みも加圧もない場合の電流(実線L1)との間に差が無い範囲については、長破線L2の記載を省略している。一点鎖線L3は、加圧の場合の電流を示している。但し、加圧の場合の電流と、引き込みも加圧もない場合の電流(実線L1)との間に差が無い範囲については、一点鎖線L3の記載を省略している。
【0051】
図5に示すように、引き込みの場合の電流は(長破線L2)は、少なくとも高速域全体で、引き込みも加圧もない場合の電流(実線L1)よりも大きい。図5に示すように、加圧の場合の電流(一点鎖線L3)は、少なくとも高速域の一部(位置P0~位置Pb)において、引き込みも加圧もない場合の電流(実線L1)よりも大きい。なお、加速域や減速域では、電流は、外乱の影響等によって大きく変動する(一時的に上昇する)。
【0052】
(第1実施形態による判定装置1A)
第1実施形態による判定装置1Aは、ドアの開動作中における、ドアを駆動させるモータに流れる電流値、及び、ドアの開動作中の速度値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0053】
図6は、第1実施形態による判定装置1Aの構成例を示すブロック図である。図6に示すように、判定装置1Aは、電流値取得部31と、速度値取得部32と、移動位置(ストローク)検出部33と、所定位置記憶部34と、タイミング検出部36と、判定部39Aとを備えている。
【0054】
電流値取得部31は、モータ電流検出器27から電流値を取得する。速度値取得部32は、速度検出部25から速度値を取得する。移動位置検出部33は、速度値取得部32からの速度値に基づいて開動作によるドアの移動位置を検出する。
【0055】
所定位置記憶部34は、ドアの所定位置を記憶する。例えば、所定位置記憶部34は、所定位置として、図4及び図5に示した位置Pa(詳細は後述)を記憶する。所定位置記憶部34は、所定位置として複数の位置を記憶してもよい。例えば、所定位置記憶部34は、所定位置として、図4及び図5に示した位置Paに加えて位置Pb(詳細は後述)や位置Pbを記憶してもよい。
【0056】
タイミング検出部36は、移動位置検出部33によって検出されたドアの移動位置が、所定位置記憶部34が記憶する所定位置に到達したタイミングを検出する。換言すれば、タイミング検出部36は、開動作中のドアが、所定位置記憶部34が記憶する所定位置に到達したことを検出する。
【0057】
判定部39Aは、電流値取得部31によって取得された電流値、及び、速度値取得部32によって取得されたドアの速度値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。具体的には、判定部39Aは、タイミング検出部36によって示されたタイミングにおける電流値及び速度値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0058】
判定部39Aは、引き込みか生じたと判定した場合、引き込みが生じた旨を送信部29に出力する。なお、送信部29は、当該出力に基づいて、引き込みが生じた旨の警告情報を外部に送信する。
【0059】
図7は、第1実施形態による判定装置1Aの動作の一例を示すフローチャートである。判定装置1Aは、例えば、図7に示すように、ドアの開動作中に、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定してもよい。
【0060】
判定装置1Aは、ドアが位置Paに到達したか否かを判断する(ステップS1)。判定装置1Aは、ドアが位置Paに到達していないと判断した場合(ステップS1:NO)、繰り返し、ドアが位置Paに到達したか否かを判断する(ステップS1)。
【0061】
判定装置1Aは、ドアが位置Paに到達したと判断した場合(ステップS1:YES)、位置Paにおける電流値IPaが閾値ITh未満であるかを判断する(ステップS2)。閾値IThは、図5に示したように、引き込みも加圧もない場合(実線L1)の位置Paにおける電流値よりも大きく、引き込みの場合(長破線L2)や加圧の場合(一点鎖線L3)の位置Paにおける電流値よりも小さい値として予め定めた数値である。閾値IThは、判定装置1Aが参照可能な位置(判定装置1A内、又は、判定装置1A外)に記憶されていればよい。
【0062】
判定装置1Aは、電流値IPaが閾値ITh未満でないと判断した場合(ステップS2:NO)、位置Paにおける速度VPaが閾値VTh1未満であるかを判断する(ステップS3)。閾値VTh1は、図4に示したように、引き込みも加圧もない場合(実線L1)や引き込みの場合(長破線L2)の位置Paにおける速度値よりも小さく、加圧の場合(一点鎖線L3)の位置Paにおける速度値よりも大きい値として予め定めた数値である。閾値VTh1は、判定装置1Aが参照可能な位置に記憶されていればよい。
【0063】
判定装置1Aは、速度VPaが閾値VTh1未満でないと判断した場合(ステップS3:NO)、引き込みが生じたと判定し(ステップS4)、引き込みが生じた旨を出力する(ステップS5)。そして本フローチャートは終了する。
【0064】
判定装置1Aは、速度VPaが閾値VTh1未満であると判断した場合(ステップS3:YES)、加圧が生じたと判定する(ステップS6)。そして本フローチャートは終了する。
【0065】
判定装置1Aは、電流値IPaが閾値ITh未満であると判断した場合(ステップS2:YES)、本フローチャートは終了する。つまり、判定装置1Aは、電流値IPaが閾値ITh未満であると判断した場合(ステップS2:YES)、引き込みも加圧も生じていないと判定する。
【0066】
図8は、第1実施形態による判定装置1Aの動作の他の例を示すフローチャートである。判定装置1Aは、例えば、図8に示すように、ドアの開動作中に、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定してもよい。
【0067】
判定装置1Aは、図7のステップS1と同様、ドアが位置Paに到達したか否かを判断する(ステップS11)。判定装置1Aは、ドアが位置Paに到達していないと判断した場合(ステップS11:NO)、繰り返し、ドアが位置Paに到達したか否かを判断する(ステップS11)。
【0068】
判定装置1Aは、ドアが位置Paに到達したと判断した場合(ステップS11:YES)、図7のステップS2と同様、位置Paにおける電流値IPaが閾値ITh未満であるかを判断する(ステップS12)。
【0069】
判定装置1Aは、電流値IPaが閾値ITh未満でないと判断した場合(ステップS12:NO)、ドアが位置Pcに到達したか否かを判断する(ステップS13)。判定装置1Aは、ドアが位置Pcに到達していないと判断した場合(ステップS13:NO)、繰り返し、ドアが位置Pcに到達したか否かを判断する(ステップS13)。
【0070】
判定装置1Aは、ドアが位置Pcに到達したと判断した場合(ステップS13:YES)、位置Pcにおける速度VPcが閾値VTh2未満であるかを判断する(ステップS14)。閾値VTh2は、図4に示したように、引き込みも加圧もない場合(実線L1)や加圧の場合(一点鎖線L3)の位置Pcにおける速度値よりも小さく、引き込みの場合(長破線L2)の位置Pcにおける速度値よりも大きい値として予め定めた数値である。閾値VTh2は、判定装置1Aが参照可能な位置に記憶されていればよい。
【0071】
判定装置1Aは、速度VPcが閾値VTh2未満であると判断した場合(ステップS14:YES)、図7のステップS4及びステップS5と同様、引き込みが生じたと判定し(ステップS15)、引き込みが生じた旨を出力する(ステップS16)。そして本フローチャートは終了する。
【0072】
判定装置1Aは、速度VPbが閾値VTh1未満でないと判断した場合(ステップS14:YES)、図7のステップS6と同様、加圧が生じたと判定する(ステップS17)。そして本フローチャートは終了する。
【0073】
判定装置1Aは、電流値IPaが閾値ITh未満であると判断した場合(ステップS12:NO)、本フローチャートは終了する。つまり、判定装置1Aは、電流値IPaが閾値ITh未満であると判断した場合(ステップS12:NO)、引き込みも加圧も生じていないと判定する。
【0074】
(第1実施形態による判定装置1Aの変形例1)
第1実施形態による判定装置1Aの変形例1について説明する。図9は、第1実施形態による判定装置1Aの変形例1の構成例を示すブロック図である。
【0075】
図9に示すように、変形例1の判定装置1Aは、電流値取得部31と、速度値取得部32と、所定時間記憶部35と、タイミング検出部37と、判定部39Aとを備えている。なお、図9に示した電流値取得部31、速度値取得部32及び判定部39Aは、図6に示した電流値取得部31、速度値取得部32及び判定部39Aと同様であるため説明の一部又は全部を省略する。
【0076】
所定時間記憶部35は、所定時間(ドアの開動作の開始時点からの経過時間と比較される時間)を記憶する。例えば、所定時間記憶部35は、所定時間として、引き込みも加圧も生じていない場合にドアが位置Paに到達する迄の時間を記憶する。所定時間記憶部35は、所定時間として複数の時間を記憶してもよい。例えば、所定時間記憶部35は、所定時間として、ドアが位置Paに到達する迄の時間に加えて、ドアが位置Pbに到達する迄の時間やドアが位置Pcに到達する迄の時間を記憶してもよい。
【0077】
タイミング検出部37は、指令部19が駆動指令を出力してからの経過時間が、所定時間記憶部35が記憶する所定時間に到達したタイミングを検出する。換言すれば、タイミング検出部37は、ドアの開動作の開始時点からの経過時間が、所定時間記憶部35が記憶する所定時間に到達したことを検出する。
【0078】
判定部39Aは、タイミング検出部37によって示されたタイミングにおける電流値及び速度値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0079】
続いて、変形例1の構成(図9の構成)と図7及び図8のフローチャートとの関係について補足説明する。引き込みも加圧も生じていない場合にドアが位置Paに到達する迄の時間をTPaする。引き込みも加圧も生じていない場合にドアが位置Pcに到達する迄の時間をTPcとする。
【0080】
引き込みも加圧も生じていない場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は、当然に、位置Paである。引き込みが生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Paである。一方、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Paよりも手前側(T0側)となる。
【0081】
図5に示すように、引き込みも加圧も生じていない場合の位置Paの電流値は閾値IThよりも小さく、引き込み又は加圧が生じている場合の位置Paの電流値は閾値IThよりも大きくなるため、図6の構成における図7のステップS2(図8のステップS12も同様)の処理では、位置Paの電流値と閾値IThとを比較し、引き込みも加圧も生じていないか、引き込み又は加圧が生じているかを判断している。
【0082】
図9の構成では、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は位置Paよりも手前側となるものの、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置(位置Paよりも手前側の位置)の電流値は、図5によれば、閾値IThよりも大きい。従って、図9の構成における図7のステップS2(図8のステップS12も同様)の処理は、図6の構成における図7のステップS2(図8のステップS12も同様)の処理と同様に実行可能である。
【0083】
図4に示すように、引き込みが生じている場合の位置Paの速度値は閾値VTh1よりも大きく、加圧が生じている場合の位置Paの速度値は閾値VTh1よりも小さくなるため、図6の構成における図7のステップS3の処理では、位置Paの速度値と閾値VTh1とを比較し、引き込みが生じているか、加圧が生じているかを判断している。
【0084】
図9の構成では、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は位置Paよりも手前側となるものの、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置(位置Paよりも手前側の位置)の速度値は、図4によれば、閾値VTh1よりも小さい。従って、図9の構成における図7のステップS3の処理は、図6の構成における図7のステップS3の処理と同様に実行可能である。
【0085】
引き込みも加圧も生じていない場合の時間TPcにおけるドアの到達位置は、当然に、位置Pcである。一方、引き込みが生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Pcよりも手前側となる。同様に、加圧が生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置は、図5によれば、位置Pcよりも手前側となる。なお、引き込みが生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置も、加圧が生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置も、位置Pcよりも手前側となるが、引き込みが生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置と、加圧が生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置とは、偶然一致する場合もあるが、同一ではない。
【0086】
図4に示すように、引き込みが生じている場合の位置Pcの速度値は閾値VTh2よりも小さく、加圧が生じている場合の位置Pcの速度値は閾値VTh2よりも大きくなるため、図6の構成における図8のステップS14の処理では、位置Pcの速度値と、閾値VTh2とを比較し、引き込みが生じているか、加圧が生じているかを判断している。
【0087】
図9の構成では、引き込みが生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置の速度と、加圧が生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置の速度との間の値を、閾値VTh2として設定すればよい。つまり、図9の構成における図8のステップS14の処理は、好適な値を閾値VTh2に設定すれば、実行可能である。
【0088】
(第1実施形態による判定装置1Aの変形例2)
第1実施形態による判定装置1Aの変形例2について説明する。図10は、第1実施形態による判定装置1Aの変形例2の構成例を示すブロック図である。
【0089】
図10に示すように、変形例2の判定装置1Aは、電流値取得部31と、速度値取得部32と、所定位置記憶部34と、タイミング検出部38と、判定部39Aとを備えている。なお、図10に示した電流値取得部31、速度値取得部32、所定位置記憶部34及び判定部39Aは、図6に示した電流値取得部31、速度値取得部32、所定位置記憶部34及び判定部39Aと同様であるため説明の一部又は全部を省略する。
【0090】
タイミング検出部38は、駆動指令に基づいてドアの移動位置を算出(駆動指令の速度値を時間で積分して算出)し、算出したドアの移動位置が、所定位置記憶部34が記憶する所定位置に到達したタイミングを検出する。
【0091】
判定部39Aは、タイミング検出部38によって示されたタイミングにおける電流値及び速度値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0092】
続いて、変形例2の構成(図10の構成)と図7及び図8のフローチャートとの関係について補足説明する。タイミング検出部38が、引き込みも加圧も生じていない場合に、位置Paへのドアの到達を検出するタイミングをtPa、位置Pcへのドアの到達を検出するタイミングをtPcとする。
【0093】
引き込みも加圧も生じていない場合のタイミングtPaにおけるドアの到達位置は、当然に、位置Paである。引き込みが生じている場合のタイミングtPaにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Paである。一方、加圧が生じている場合のタイミングtPaにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Paよりも手前側となる。つまり、図9の構成の場合と同様である。
【0094】
従って、図9の構成の場合と同様、図10の構成における図7のステップS2(図8のステップS12も同様)の処理は、図6の構成における図7のステップS2(図8のステップS12も同様)の処理と同様に実行可能である。
【0095】
引き込みも加圧も生じていない場合のタイミングtPcにおけるドアの到達位置は、当然に、位置Pcである。一方、引き込みが生じている場合のタイミングtPcにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Pcよりも手前側となる。同様に、加圧が生じている場合のタイミングtPcにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Pcよりも手前側となる。なお、引き込みが生じている場合のタイミングtPcにおけるドアの到達位置も、加圧が生じている場合のタイミングtPcにおけるドアの到達位置も、位置Pcよりも手前側となるが、引き込みが生じている場合のタイミングtPcにおけるドアの到達位置と、加圧が生じている場合のタイミングtPcにおけるドアの到達位置とは、偶然一致する場合もあるが、同一ではない。つまり、図9の構成の場合と同様である。
【0096】
従って、図9の構成の場合と同様、図10の構成における図8のステップS14の処理は、好適な値を閾値VTh2に設定すれば、実行可能である。
【0097】
(第1実施形態による判定装置1Aの変形例3)
変形例3の判定装置1Aは、ドアを駆動させるモータに流れる電流値の特徴量、及び、ドアの開動作中の速度値の特徴量を学習済モデルに入力し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。詳細は、後述する。
【0098】
(第2実施形態による判定装置1B)
第2実施形態による判定装置1Bは、ドアの開動作中における、ドアを駆動させるモータに流れる電流値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0099】
図11は、第2実施形態による判定装置1Bの構成例を示すブロック図である。図11に示すように、判定装置1Bは、電流値取得部31と、速度値取得部32と、移動位置検出部33と、所定位置記憶部34と、タイミング検出部36と、判定部39Bとを備えている。なお、図11に示した電流値取得部31、速度値取得部32、移動位置検出部33、所定位置記憶部34及びタイミング検出部36は、図6に示した電流値取得部31、速度値取得部32、移動位置検出部33、所定位置記憶部34及びタイミング検出部36と同様であるため説明の一部又は全部を省略する。
【0100】
判定部39Bは、電流値取得部31によって取得された電流値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。具体的には、判定部39Bは、タイミング検出部36によって示されたタイミングにおける電流値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。判定部39Bは、引き込みか生じたと判定した場合、引き込みが生じた旨を送信部29に出力する。
【0101】
図12は、第2実施形態による判定装置1Bの動作の一例を示すフローチャートである。判定装置1Bは、例えば、図12に示すように、ドアの開動作中に、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定してもよい。
【0102】
判定装置1Bは、図7のステップS1と同様、ドアが位置Paに到達したか否かを判断する(ステップS21)。判定装置1Bは、ドアが位置Paに到達していないと判断した場合(ステップS21:NO)、繰り返し、ドアが位置Paに到達したか否かを判断する(ステップS21)。
【0103】
判定装置1Bは、ドアが位置Paに到達したと判断した場合(ステップS21:YES)、図7のステップS2と同様、位置Paにおける電流値IPaが閾値ITh未満であるかを判断する(ステップS22)。
【0104】
判定装置1Bは、電流値IPaが閾値ITh未満でないと判断した場合(ステップS22:NO)、ドアが位置Pbに到達したか否かを判断する(ステップS23)。判定装置1Bは、ドアが位置Pbに到達していないと判断した場合(ステップS23:NO)、繰り返し、ドアが位置Pbに到達したか否かを判断する(ステップS23)。
【0105】
判定装置1Bは、ドアが位置Pbに到達したと判断した場合(ステップS23:YES)、位置Pbにおける電流値IPbが閾値ITh未満であるかを判断する(ステップS24)。
【0106】
判定装置1Bは、電流値IPbが閾値ITh未満でないと判断した場合(ステップS24:NO)、引き込みが生じたと判定し(ステップS25)、引き込みが生じた旨を出力する(ステップS26)。そして本フローチャートは終了する。
【0107】
判定装置1Bは、電流値IPbが閾値ITh未満であると判断した場合(ステップS24:YES)、加圧が生じたと判定する(ステップS27)。そして本フローチャートは終了する。
【0108】
判定装置1Bは、電流値IPaが閾値ITh未満であると判断した場合(ステップS22:YES)、本フローチャートは終了する。つまり、判定装置1Bは、電流値IPaが閾値ITh未満であると判断した場合(ステップS22:YES)、引き込みも加圧も生じていないと判定する。
【0109】
なお、第1実施形態(変形例1、変形例2も同様)では、高速域の3分の2の位置である位置Paに到達したら判定する例を説明したが(図7図8)、高速域の開始時点である位置P1に到達したら判定してもよい。ドアの開動作が進むにつれて、加圧され得るドアの面積(戸袋から露出したドアの面積)は減少するため、高速域に到達した位置P1において加圧の場合の電流(一点鎖線L3)が減少し始める可能性があるため(図5では位置Pa付近から加圧の場合の電流が減少し始めているが、位置P1付近から加圧の場合の電流が減少し始める可能性があるため)、位置P1~位置Paの間の任意の位置に到達したら判定してもよい。また、図4によれば、位置P1~位置Paの間の任意の位置において、引き込みも加圧もない場合の移動速度(実線L1)、引き込みの場合の移動速度(長破線L2)、加圧の場合の移動速度(一点鎖線L3)の関係性(大小関係)は、変わらない。
【0110】
つまり、判定装置1Aは、位置Paの動作情報(電流値、速度値)を用いて判定することに代えて、位置P1~位置Paの間の任意の位置の動作情報(電流値、速度値)を用いて判定してもよい。第2実施形態(変形例1、変形例2も含む)の判定装置1B(後述)、第3実施形態(変形例1、変形例2も含む)の判定装置1C(後述)についても同様である。
【0111】
(第2実施形態による判定装置1Bの変形例1)
第2実施形態による判定装置1Bの変形例1について説明する。図13は、第2実施形態による判定装置1Bの変形例1の構成例を示すブロック図である。
【0112】
図13に示すように、変形例1の判定装置1Bは、電流値取得部31と、所定時間記憶部35と、タイミング検出部37と、判定部39Bとを備えている。なお、図13に示した電流値取得部31及び判定部39Bは、図11に示した電流値取得部31及び判定部39Bと同様であるため説明の一部又は全部を省略する。また、図13に示した所定時間記憶部35及びタイミング検出部37は、図9に示した所定時間記憶部35及びタイミング検出部37と同様であるため説明の一部又は全部を省略する。なお、変形例1の判定装置1Bは、速度値取得部32を備えないため、ドア開閉制御部18(図3参照)は、速度検出部25を備えなくてもよい。
【0113】
判定部39Bは、タイミング検出部37によって示されたタイミングにおける電流値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0114】
続いて、変形例1(図13の構成)と図12のフローチャートとの関係について補足説明する。引き込みも加圧も生じていない場合にドアが位置Paに到達する迄の時間をTPaする。引き込みも加圧も生じていない場合にドアが位置Pbに到達する迄の時間をTPbとする。
【0115】
引き込みも加圧も生じていない場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は、当然に、位置Paである。引き込みが生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Paである。一方、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Paよりも手前側となる。
【0116】
図13の構成では、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は位置Paよりも手前側となるものの、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置(位置Paよりも手前側の位置)の電流値は、図5によれば、閾値IThよりも大きい。従って、図13の構成における図12のステップS22の処理は、図11の構成における図12のステップS22の処理と同様に実行可能である。
【0117】
引き込みも加圧も生じていない場合の時間TPbにおけるドアの到達位置は、当然に、位置Pbである。引き込みが生じている場合の時間TPbにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Pbである。一方、加圧が生じている場合の時間TPbにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Pbよりも手前側となる。
【0118】
図13の構成では、加圧が生じている場合の時間TPbにおけるドアの到達位置は位置Pbよりも手前側となるものの、加圧が生じている場合の時間TPbにおけるドアの到達位置(位置Pbよりも手前側の位置)の電流値は、図5によれば、閾値IThよりも小さい。従って、図13の構成における図12のステップS24の処理は、図11の構成における図12のステップS24の処理と同様に実行可能である。
【0119】
(第2実施形態による判定装置1Bの変形例2)
第2実施形態による判定装置1Bの変形例2について説明する。図14は、第2実施形態による判定装置1Bの変形例2の構成例を示すブロック図である。
【0120】
図14に示すように、変形例2の判定装置1Bは、電流値取得部31と、所定位置記憶部34、タイミング検出部38と、判定部39Bとを備えている。なお、図14に示した電流値取得部31、所定位置記憶部34及び判定部39Bは、図11に示した電流値取得部31、所定位置記憶部34及び判定部39Bと同様であるため説明の一部又は全部を省略する。また、図14に示したタイミング検出部38は、図10に示したタイミング検出部38と同様であるため説明の一部又は全部を省略する。なお、変形例2の判定装置1Bは、速度値取得部32を備えないため、ドア開閉制御部18(図3参照)は、速度検出部25を備えなくてもよい。
【0121】
判定部39Bは、タイミング検出部38によって示されたタイミングにおける電流値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0122】
続いて、変形例2(図14の構成)と図12のフローチャートとの関係について補足説明する。タイミング検出部38が、引き込みも加圧も生じていない場合に、位置Paへのドアの到達を検出するタイミングをtPa、位置Pbへのドアの到達を検出するタイミングをtPbとする。
【0123】
引き込みも加圧も生じていない場合のタイミングtPaにおけるドアの到達位置は、当然に、位置Paである。引き込みが生じている場合のタイミングtPaにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Paである。一方、加圧が生じている場合のタイミングtPaにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Paよりも手前側となる。つまり、図13構成の場合と同様である。
【0124】
従って、図13の構成の場合と同様、図14の構成における図12のステップS22の処理は、図11の構成における図12のステップS22の処理と同様に実行可能である。
【0125】
引き込みも加圧も生じていない場合のタイミングtPbにおけるドアの到達位置は、当然に、位置Pbである。引き込みが生じている場合のタイミングtPbにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Pbである。一方、加圧が生じている場合のタイミングtPbにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Pbよりも手前側となる。つまり、図13構成の場合と同様である。
【0126】
従って、図13の構成の場合と同様、図14の構成における図12のステップS24の処理は、図11の構成における図12のステップS24の処理と同様に実行可能である。
【0127】
(第2実施形態による判定装置1Bの変形例3)
変形例3の判定装置1Bは、ドアを駆動させるモータに流れる電流値の特徴量を学習済モデルに入力し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。詳細は、後述する。
【0128】
(第3実施形態による判定装置1C)
第3実施形態による判定装置1Cは、ドアの開動作中における、ドアの開動作中の速度値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0129】
図15は、第3実施形態による判定装置1Cの構成例を示すブロック図である。図15に示すように、判定装置1Cは、速度値取得部32と、移動位置検出部33と、所定位置記憶部34と、タイミング検出部36と、判定部39Cとを備えている。なお、図15に示した速度値取得部32、移動位置検出部33、所定位置記憶部34及びタイミング検出部36は、図6に示した速度値取得部32、移動位置検出部33、所定位置記憶部34及びタイミング検出部36と同様であるため説明の一部又は全部を省略する。なお、判定装置1Cは、電流値取得部31を備えないため、モータモニタ部17(図3参照)は、モータ電流検出器27を備えなくてもよい。
【0130】
判定部39Cは、タイミング検出部36によって示されたタイミングにおける速度値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。判定部39Cは、引き込みか生じたと判定した場合、引き込みが生じた旨を送信部29に出力する。
【0131】
図16は、第3実施形態による判定装置1Cの動作の一例を示すフローチャートである。判定装置1Cは、例えば、図16に示すように、ドアの開動作中に、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定してもよい。
【0132】
判定装置1Cは、図7のステップS1と同様、ドアが位置Paに到達したか否かを判断する(ステップS31)。判定装置1Cは、ドアが位置Paに到達していないと判断した場合(ステップS31:NO)、繰り返し、ドアが位置Paに到達したか否かを判断する(ステップS31)。
【0133】
判定装置1Cは、ドアが位置Paに到達したと判断した場合(ステップS31:YES)、図7のステップS3と同様、位置Paにおける速度VPaが閾値VTh1未満であるかを判断する(ステップS32)。
【0134】
判定装置1Cは、速度VPaが閾値VTh1未満であると判断した場合(ステップS32:YES)、図7のステップS6と同様、加圧が生じたと判定する(ステップS33)。そして本フローチャートは終了する。
【0135】
判定装置1Cは、速度VPaが閾値VTh1未満でないと判断した場合(ステップS32:NO)、図8のステップS13と同様、ドアが位置Pcに到達したか否かを判断する(ステップS34)。判定装置1Cは、ドアが位置Pcに到達していないと判断した場合(ステップS34:NO)、繰り返し、ドアが位置Paに到達したか否かを判断する(ステップS34)。
【0136】
判定装置1Cは、ドアが位置Pcに到達したと判断した場合(ステップS34:YES)、図8のステップS14と同様、位置Pcにおける速度VPcが閾値VTh2未満であるかを判断する(ステップS35)。
【0137】
判定装置1Cは、速度VPcが閾値VTh2未満であると判断した場合(ステップS35:YES)、図7のステップS4及びステップS5と同様、引き込みが生じたと判定し(ステップS36)、引き込みが生じた旨を出力する(ステップS37)。そして本フローチャートは終了する。
【0138】
判定装置1Cは、速度VPcが閾値VTh2未満でないと判断した場合(ステップS35:NO)、本フローチャートは終了する。つまり、判定装置1Cは、速度VPcが閾値VTh2未満でないと判断した場合(ステップS35:NO)、引き込みも加圧も生じていないと判定する。
【0139】
(第3実施形態による判定装置1Cの変形例1)
第3実施形態による判定装置1Cの変形例1について説明する。図17は、第3実施形態による判定装置1Cの変形例1の構成例を示すブロック図である。
【0140】
図17に示すように、変形例1の判定装置1Cは、速度値取得部32と、所定時間記憶部35と、タイミング検出部37と、判定部39Cとを備えている。なお、図17に示した速度値取得部32及び判定部39Cは、図15に示した速度値取得部32及び判定部39Cと同様であるため説明の一部又は全部を省略する。また、図17に示した所定時間記憶部35及びタイミング検出部37は、図9に示した所定時間記憶部35及びタイミング検出部37と同様であるため説明の一部又は全部を省略する。なお、変形例1の判定装置1Cは、電流値取得部31を備えないため、モータモニタ部17(図3参照)は、モータ電流検出器27を備えなくてもよい。
【0141】
判定部39Cは、タイミング検出部37によって示されたタイミングにおける速度値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0142】
続いて、変形例1(図17の構成)と図16のフローチャートとの関係について補足説明する。引き込みも加圧も生じていない場合にドアが位置Paに到達する迄の時間をTPaする。引き込みも加圧も生じていない場合にドアが位置Pcに到達する迄の時間をTPcとする。
【0143】
図17の構成では、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置は位置Paよりも手前側となるものの、加圧が生じている場合の時間TPaにおけるドアの到達位置(位置Paよりも手前側の位置)の速度値は、図4によれば、閾値IThよりも小さい。従って、図17の構成における図16のステップS32の処理は、図15の構成における図16のステップS32の処理と同様に実行可能である。
【0144】
図17の構成では、引き込みが生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置の速度と、引き込みも加圧も生じていない場合の時間TPcにおけるドアの到達位置の速度との間の値を、閾値VTh2として設定すればよい。つまり、図17の構成における図16のステップS35の処理は、好適な値を閾値VTh2に設定すれば、実行可能である。
【0145】
(第3実施形態による判定装置1の変形例2)
第3実施形態による判定装置1Cの変形例3について説明する。図18は、第3実施形態による判定装置1Cの変形例3の構成例を示すブロック図である。
【0146】
図18に示すように、変形例2の判定装置1Cは、速度値取得部32と、所定位置記憶部34と、タイミング検出部38と、判定部39Cとを備えている。なお、図18に示した速度値取得部32及び判定部39Cは、図15に示した速度値取得部32及び判定部39Cと同様であるため説明の一部又は全部を省略する。また、図18に示した所定位置記憶部34及びタイミング検出部38は、図10に示した所定位置記憶部34及びタイミング検出部38と同様であるため説明の一部又は全部を省略する。なお、変形例2の判定装置1Cは、電流値取得部31を備えないため、モータモニタ部17(図3参照)は、モータ電流検出器27を備えなくてもよい。
【0147】
判定部39Cは、タイミング検出部38によって示されたタイミングにおける速度値に基づいて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0148】
続いて、変形例3(図18の構成)と図16のフローチャートとの関係について補足説明する。タイミング検出部38が、引き込みも加圧も生じていない場合に、位置Paへのドアの到達を検出するタイミングをtPa、位置Pcへのドアの到達を検出するタイミングをtPcとする。
【0149】
図18の構成では、加圧が生じている場合のタイミングtPaにおけるドアの到達位置は、図4によれば、位置Paよりも手前側となる。つまり、図17構成の場合と同様である。従って、図17の構成の場合と同様、図18の構成における図16のステップS32の処理は、図15の構成における図16のステップS32の処理と同様に実行可能である。
【0150】
図18の構成では、図17の構成の場合と同様、引き込みが生じている場合の時間TPcにおけるドアの到達位置の速度と、引き込みも加圧も生じていない場合の時間TPcにおけるドアの到達位置の速度との間の値を、閾値VTh2として設定すればよい。つまり、図17の構成における図16のステップS35の処理は、好適な値を閾値VTh2に設定すれば、実行可能である。
【0151】
(第3実施形態による判定装置1の変形例3)
変形例3の判定装置1Cは、ドアの開動作中の速度値の特徴量を学習済モデルに入力し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。詳細は、後述する。
【0152】
以下、学習済モデルを利用した判定について説明する。
【0153】
(第1実施形態による判定装置1Aの変形例3)
図19は、第1実施形態による判定装置1Aの変形例3の構成例を示すブロック図である。図20は、第1実施形態の変形例3の学習済モデル1000Aを説明するための概念図である。変形例3の判定装置1Aは、電流値の特徴量、及び、速度値の特徴量を学習済モデル1000Aに入力し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0154】
図19に示すように、変形例3の判定装置1Aは、電流値取得部31と、速度値取得部32と、特徴量算出部40と、記憶部43と、判定部49Aとを備えている。なお、図19に示した電流値取得部31及び速度値取得部32は、図6に示した電流値取得部31及び速度値取得部32と同様である。
【0155】
特徴量算出部40は、電流値取得部31から得られる電流値の特徴量を算出する。例えば、特徴量算出部40は、電流値の特徴量1~特徴量9(下記)を算出する。特徴量算出部40は、速度値取得部32から得られる速度値の特徴量を算出する。例えば、特徴量算出部40は、速度値の特徴量1~特徴量9(下記)を算出する。
【0156】
特徴量1:区間に対する分析信号の隙間容積係数(ピーク値と絶対値の振幅の平方根平均の二乗の比)
特徴量2:区間に対する分析信号の波高率(ピーク値とRMSの比値)
特徴量3:区間に対する分析信号のインパルス係数(ピーク値と平均値の比)
特徴量4:区間に対する分析信号の最大値と最小値のギャップ(ピークtoピーク)
特徴量5:区間に対する分析信号の最大値
特徴量6:区間に対する分析信号の最小値
特徴量7:区間に対する分析信号の平均値
特徴量8:区間に対する分析信号の二乗平均平方根(RMS)
特徴量9:区間に対する分析信号の標準偏差
【0157】
上記特徴量1~特徴量9の説明において、区間とは、ドアの開動作中の期間のうちの一部の期間又は全部の期間である。分析信号とは、電流値、速度値の夫々である。ドアの開動作中の期間のうちの一部の期間は、例えば、位置Pa~位置P3であってもよい。この場合、特徴量算出部40は、位置Pa~位置P3について、電流値、速度値の夫々の特徴量1~特徴量9(電流値の特徴量1、電流値の特徴量2、…、電流値の特徴量9、速度値の特徴量1、速度値の特徴量2、…、速度値の特徴量9)を算出する。
【0158】
記憶部43は、学習済モデル1000Aを記憶する。学習済モデル1000Aは、決定木を用いて機械学習されたモデル(以下、決定木モデルと称する)である。決定木モデルとは、節点と葉を有する木構造のモデルである。決定木モデルは、各節点が分岐先を決定するための評価関数を有し、葉に分類結果(判定結果)が関連付けられる。なお、学習済モデル1000Aは、機械学習として、アンサンブル学習の手法(例えば、バギング、ブースティング、スタッキング)を用いて生成された学習済モデルであってもよい。
【0159】
決定木モデルである学習済モデル1000Aは、例えば、図20(A)に示すように、特徴量(電流値の特徴量1、電流値の特徴量2、…、電流値の特徴量9、速度値の特徴量1、速度値の特徴量2、…、速度値の特徴量9)を入力すると、判定結果として、引き込みが生じた旨の情報(例えば値1)、又は、加圧が生じた旨の情報(例えば値2)、又は、引き込みも加圧も生じていない旨の情報(例えば値0)の何れかを出力する。
【0160】
判定部49Aは、特徴量算出部40によって算出された特徴量を、記憶部43に記憶されている学習済モデル1000Aに入力し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。判定部49Aは、引き込みか生じたと判定した場合、引き込みが生じた旨を送信部29に出力する。
【0161】
なお、学習済モデル1000Aは、決定木モデルに限定されない。例えば、学習済モデル1000Aは、ニューラルネットワークを用いて機械学習されたモデル(以下、ニューラルネットワークモデルと称する)であってもよい。ニューラルネットワークモデルは、信号を伝搬する複数のニューロンを備える。夫々のニューロンは、夫々の出力信号の値を決定する伝達関数を有し、最下流(出力層)のニューロンからの出力信号として分類結果(判定結果)が出力される。
【0162】
ニューラルネットワークモデルである学習済モデル1000Aは、例えば、図20(B)に示すように、特徴量(電流値の特徴量1、電流値の特徴量2、…、電流値の特徴量9、速度値の特徴量1、速度値の特徴量2、…、速度値の特徴量9)を入力すると、判定結果として、引き込みが生じた確率(尤度)と、加圧が生じた確率と、引き込みも加圧も生じていない確率とを出力する。判定部49Aは、確率が最も高い1つを特定し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0163】
続いて、学習済モデル1000Aの生成について簡単に説明する。学習済モデル1000Aは、モデル生成装置100によって生成される。モデル生成装置100は、例えば、パーソナルコンピュータであってもよい。
【0164】
図21は、モデル生成装置100の構成例を示すブロック図である。図22は、学習用データセット900Aについて説明するための概念図である。図21に示すように、モデル生成装置100は、取得部101と、記憶部102と、モデル生成部103と、出力部104とを備えている。
【0165】
取得部101は、外部から学習用データセット900Aを取得し、記憶部102に記憶する。取得部101は、記憶媒体(USBメモリ等)を用いて外部から学習用データセット900Aを取得してもよいし、通信によって外部から学習用データセット900Aを取得してもよい。
【0166】
学習用データセット900Aは、図22に示すように、複数の学習用サンプル(学習用サンプル1~学習用サンプルN)から構成される。夫々の学習用サンプルは、入力サンプルと出力サンプルを含む。入力サンプルの夫々は、電流値の特徴量1~電流値の特徴量9、速度値の特徴量1~速度値の特徴量9を含む。なお、特徴量は、特徴量算出部(特徴量算出部40と同様の機能を有する特徴量算出部)を備える他の装置によって算出されるが、モデル生成装置100が特徴量算出部を備え、特徴量を算出してもよい。夫々の出力サンプルは、夫々の入力サンプルに対応する教師データ(正解ラベル)である。
【0167】
モデル生成部103は、記憶部102に記憶されている学習用データセット900Aを用いて学習済モデル1000Aを生成する。例えば、決定木モデルである学習済モデル1000Aを生成する場合、モデル生成部103は、分岐前後で不純度がなるべく減少するような(つまり分岐による情報利得がなるべく大きくなるような)説明変数(特徴量)と閾値(該特徴量と比較される閾値)とを選択し、評価関数を決定する処理を、決定木の複数の節点について実行することで、学習済モデル1000Aを生成する。また、ニューラルネットワークモデルである学習済モデル1000Aを生成する場合、モデル生成部103は、夫々の入力サンプルを入力したときの出力値と、夫々の入力サンプルに対応する出力サンプルとの誤差がなるべく小さくなるように、例えば誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)によって各ニューロンの伝達関数を更新し、学習済モデル1000Aを生成する。
【0168】
モデル生成部103は、生成した学習済モデル1000Aを記憶部102に記憶する。出力部104は、記憶部102に記憶されている学習済モデル1000Aを外部に出力する。出力部104は、記憶媒体を用いて学習済モデル1000Aを外部に出力してもよいし、通信によって学習済モデル1000Aを外部に出力してもよい。つまり、学習済モデル1000Aは、最終的に、図19に示した判定装置1Aの記憶部43に記憶されればよい。
【0169】
(第2実施形態による判定装置1Bの変形例3)
図23は、第2実施形態による判定装置1Bの変形例3の構成例を示すブロック図である。図24は、第2実施形態の変形例3の学習済モデル1000Bについて説明するための概念図である。変形例3の判定装置1Bは、電流値の特徴量を学習済モデル1000Bに入力し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0170】
図23に示すように、変形例3の判定装置1Bは、電流値取得部31と、特徴量算出部41と、記憶部44と、判定部49Bとを備えている。なお、図23に示した電流値取得部31は、図6に示した電流値取得部31と同様である。
【0171】
特徴量算出部41は、電流値取得部31から得られる電流値の特徴量を算出する。例えば、特徴量算出部41は、電流値の特徴量1~電流値の特徴量9を算出する。
【0172】
記憶部44は、学習済モデル1000Bを記憶する。学習済モデル1000Bは、決定木モデルである。学習済モデル1000Bは、機械学習として、アンサンブル学習の手法を用いて生成された学習済モデルであってもよい。
【0173】
決定木モデルである学習済モデル1000Bは、例えば、図24(A)に示すように、特徴量(電流値の特徴量1、電流値の特徴量2、…、電流値の特徴量9)を入力すると、判定結果として、引き込みが生じた旨の情報、又は、加圧が生じた旨の情報、又は、引き込みも加圧も生じていない旨の情報の何れかを出力する。
【0174】
判定部49Bは、特徴量算出部41によって算出された特徴量を、記憶部44に記憶されている学習済モデル1000Bに入力し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。判定部49Bは、引き込みか生じたと判定した場合、引き込みが生じた旨を送信部29に出力する。
【0175】
なお、学習済モデル1000Bは、決定木モデルに限定されない。例えば、学習済モデル1000Bは、ニューラルネットワークモデルであってもよい。
【0176】
ニューラルネットワークモデルである学習済モデル1000Bは、例えば、図24(B)に示すように、特徴量(電流値の特徴量1、電流値の特徴量2、…、電流値の特徴量9)を入力すると、判定結果として、引き込みが生じた確率と、加圧が生じた確率と、引き込みも加圧も生じていない確率とを出力する。判定部49Bは、確率が最も高い1つを特定し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0177】
なお、学習済モデル1000Bの生成については、学習済モデル1000Aの生成と基本的に同様であるため(学習済モデル1000Aの生成では電流値及び速度値を用いるのに対して学習済モデル1000Bの生成では電流値を用いるが速度値を用いない点が異なるだけであるため)、説明を省略する。
【0178】
(第3実施形態による判定装置1の変形例3)
図25は、第3実施形態による判定装置1Cの変形例3の構成例を示すブロック図である。図26は、第3実施形態の変形例3の学習済モデル1000Cについて説明するための概念図である。判定装置1Cは、速度値の特徴量を学習済モデル1000Cに入力し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0179】
図26に示すように、変形例3の判定装置1Cは、速度値取得部32と、特徴量算出部42と、記憶部45と、判定部49Cとを備えている。なお、図25に示した速度値取得部32は、図6に示した速度値取得部32と同様である。
【0180】
特徴量算出部42は、速度値取得部32から得られる速度値の特徴量を算出する。例えば、特徴量算出部42は、速度値の特徴量1~速度値の特徴量9を算出する。
【0181】
記憶部45は、学習済モデル1000Cを記憶する。学習済モデル1000Cは、決定木モデルである。学習済モデル1000Cは、機械学習として、アンサンブル学習の手法を用いて生成された学習済モデルであってもよい。
【0182】
決定木モデルである学習済モデル1000Cは、例えば、図26(A)に示すように、特徴量(速度値の特徴量1、速度値の特徴量2、…、速度値の特徴量9)を入力すると、判定結果として、引き込みが生じた旨の情報、又は、加圧が生じた旨の情報、又は、引き込みも加圧も生じていない旨の情報の何れかを出力する。
【0183】
判定部49Cは、特徴量算出部42によって算出された特徴量を、記憶部45に記憶されている学習済モデル1000Cに入力し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。判定部49Cは、引き込みか生じたと判定した場合、引き込みが生じた旨を送信部29に出力する。
【0184】
なお、学習済モデル1000Cは、決定木モデルに限定されない。例えば、学習済モデル1000Cは、ニューラルネットワークモデルであってもよい。
【0185】
ニューラルネットワークモデルである学習済モデル1000Cは、例えば、図26(B)に示すように、特徴量(速度値の特徴量1、速度値の特徴量2、…、速度値の特徴量9)を入力すると、判定結果として、引き込みが生じた確率と、加圧が生じた確率と、引き込みも加圧も生じていない確率とを出力する。判定部49Cは、確率が最も高い1つを特定し、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定する。
【0186】
なお、学習済モデル1000Cの生成については、学習済モデル1000Aの生成と基本的に同様であるため(学習済モデル1000Aの生成では電流値及び速度値を用いるのに対して学習済モデル1000Cの生成では速度値を用いるが電流値を用いない点が異なるだけであるため)、説明を省略する。
【0187】
なお、第1実施形態による変形例3において、特徴量を算出する区間は、複数であってもよい。例えば、区間1を位置P1~Paとし、区間2を位置Pa~位置P2として、区間3を位置P2~位置P3としてもよい。この場合、特徴量算出部40は、夫々の区間(区間1~区間3)について、電流値、速度値の夫々の特徴量1~特徴量9を算出する。第2実施形態による変形例3、第3実施形態による変形例3においても同様である。
【0188】
また、第1実施形態による変形例3において、特徴量1~特徴量9のうちの少なくとも1つを含む1以上の特徴量を用いてもよい。第2実施形態による変形例3、第3実施形態による変形例3においても同様である。
【0189】
(判定部による判定後の他の処理)
上記では、判定部39A(判定部39B、39C、49A、49B、49Cも同様)は、引き込みか生じたと判定した場合には引き込みが生じた旨を送信部29に出力し、送信部29は、当該出力に基づいて引き込みが生じた旨の警告情報を外部に送信すると説明した。上記に加え、判定部39A(判定部39B、39C、49A、49B、49Cも同様)は、加圧が生じたと判定した場合には加圧が生じた旨を指令部19に出力し、指令部19は、当該出力に基づいて駆動指令を変更してもよい。
【0190】
指令部19は、加圧が生じた旨の出力があった場合、例えば、次回の開動作(例えば次の駅での開動作)の駆動指令を変更(例えば、全閉位置から全開位置まで移動する時間が短くなるように駆動指令を変更)してもよい。これにより、例えば、複数の駅に亘って満員状態であるときに、鉄道の定時運行に支障を来たさないようにすることができる。駆動指令のパターン毎に、図4図5に示した期間や閾値を予め記憶しておき、判定装置1(判定装置1A、判定装置1B、判定装置1C)は、変更後の駆動指令のパターンに対応する期間や閾値を用いて、引き込みか加圧のいずれが生じたか否かを判定してもよい。
【0191】
上記実施形態等において説明した内容は、少なくとも例えば以下の構成を含む。
(1)動作情報(電流値取得部32が取得する電流値、及び、速度値取得部31が取得する速度値)のうち、少なくともドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間(高速域の一部の期間)に取得された動作情報に基づいて、引き込みか加圧のいずれがドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定部(判定部39A、判定部49A)を備える判定装置(図6図9図10図19に示した判定装置1A)。
(2)動作情報(電流値取得部32が取得する電流値)のうち、少なくともドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間(高速域の一部の期間)に取得された動作情報に基づいて、引き込みか加圧のいずれがドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定部(判定部39B、判定部49B)を備える判定装置(図11図13図14図23に示した判定装置1B)。
(3)動作情報(速度値取得部31が取得する速度値)のうち、少なくともドアが一定速度で動くように駆動指令を受けている際の特定期間(高速域の一部の期間)に取得された動作情報に基づいて、引き込みか加圧のいずれがドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定部(判定部39C、判定部49C)を備える判定装置(図15図17図18図25に示した判定装置1A)。
【0192】
(4)特定期間は、ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けてから所定の距離(図6の判定装置1Aや図11の判定装置1Bや図15の判定装置1Cの所定位置記憶部34に記憶した所定位置迄の距離)を移動した後の期間(例えば、位置Pa~位置P2)である。
(5)特定期間は、ドアが一定速度で動くように駆動指令を受けてから所定の時間(図9の判定装置1Aや図13の判定装置1Bや図17の判定装置1Cの所定時間記憶部35に記憶した時間)を経過した後の期間(例えば、位置Pa~位置P2)である。
(6)駆動指令に基づいて特定期間を特定する(図9図10に示した判定装置1A、図13図14に示した判定装置1B、図17図18に示した判定装置1C)。
【0193】
(7)ドアの開動作中に取得された複数時点の動作情報(電流値取得部32が取得する電流値、及び、速度値取得部31が取得する速度値)から特徴量を算出する特徴量算出部(特徴量算出部40)を備え、判定部(判定部49A)は、算出された特徴量を学習済モデル(図20に示した学習済モデル1000A)に入力して、引き込みか加圧のいずれがドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定装置(図19に示した判定装置1A)。
(8)ドアの開動作中に取得された複数時点の動作情報(電流値取得部32が取得する電流値)から特徴量を算出する特徴量算出部(特徴量算出部41)を備え、判定部(判定部49B)は、算出された特徴量を学習済モデル(図24に示した学習済モデル1000B)に入力して、引き込みか加圧のいずれがドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定装置(図23に示した判定装置1B)。
(9)ドアの開動作中に取得された複数時点の動作情報(速度値取得部31が取得する速度値)から特徴量を算出する特徴量算出部(特徴量算出部42)を備え、判定部(判定部49C)は、算出された特徴量を学習済モデル(図26に示した学習済モデル1000C)に入力して、引き込みか加圧のいずれれがドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定装置(図25に示した判定装置1C)。
【0194】
(10)引き込みが生じたと判定された場合には外部に報知(引き込みが生じた旨の警告情報を送信)し、加圧が生じたと判定された場合には外部に報知しない報知部(送信部29)を備える、判定装置(判定装置1A、1B、1C)。
(11)厚み方向への加圧が生じたと判定された場合には、駆動指令を変更(加圧が生じたと判定した判定部39A(判定部39B、39C、49A、49B、49Cも同様)が、加圧が生じた旨を指令部19に出力し、指令部19が、当該出力に基づいて駆動指令を変更)する判定装置(判定装置1A、1B、1C)。
【0195】
(12)ドアリーフを開閉移動させる電動機(モータ11)と、電動機に駆動指令を送り、ドアリーフを開閉制御する制御部(PWM制御部22、ドア開閉制御部15、又は、制御器15)と、ドアリーフの開動作中に電動機に流れる電流値、又はドアリーフの開動作中の速度値の少なくとも一つを示す動作情報を取得する取得部(電流値取得部31、速度値取得部32)と、取得された動作情報のうち、少なくともドアリーフが一定速度で動くように駆動指令を電動機に送っている際の特定期間に取得された動作情報に基づいて、引き込みか加圧のいずれがドアの開動作中に生じたか否かを判定する判定部(判定部39A、判定部39B、判定部39C、判定部49A、判定部49B、判定部49C)と、を備える鉄道用ドア装置(電気式ドア装置2)。
【0196】
(13)PWM制御部22は、電動機に供給される電圧のデューティ比を制御するためのPWM信号を生成する。
【0197】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0198】
例えば、本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0199】
以上に示した実施形態に係る装置(例えば、判定装置1、電気式ドア装置2)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶して、この記憶媒体に記憶されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティングシステム(OS:Operating System)あるいは周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0200】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合の情報処理装置やクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)あるいは電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記憶されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0201】
1、1A、1B、1C:判定装置
2:電気式ドア装置
3R、3L:ドアリーフ
4:ガイドレール
5R、5L:戸吊装置
6:戸車
7:戸先ゴム
8R、8L:ラックギア
9R、9L:ブラケット
10:ピニオンギア
11:モータ
12:回転軸
13:サンギア
14:遊星ギア
15:制御器
16:電源部
17:モータモニタ部
18:ドア開閉制御部
19:指令部、
21:電源電圧検出部
22:PWM制御部
23:モータ駆動部
24:ホール信号検出器
25:速度検出部
26:ホール素子
27:モータ電流検出器
31:電流値取得部
32:速度値取得部
33:移動位置検出部
34:所定位置記憶部
35:所定時間記憶部
36、37、38:タイミング検出部
39A、39B、39C:判定部
40、41、42:特徴量算出部
43、44、45:記憶部
49A、49B、49C:判定部
100:モデル生成装置
101:取得部
102:記憶部
103:モデル生成部
104:出力部
900A:学習用データセット
1000A、1000B、1000C:学習済モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26