(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173216
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】汚水浄化装置及び汚水浄化方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/10 20230101AFI20231130BHJP
C02F 3/00 20230101ALI20231130BHJP
C02F 3/06 20230101ALI20231130BHJP
【FI】
C02F3/10 Z
C02F3/00 G
C02F3/00 E
C02F3/00 F
C02F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085321
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直彦
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 司
【テーマコード(参考)】
4D003
4D027
【Fターム(参考)】
4D003AA06
4D003AB12
4D003CA07
4D003EA23
4D003FA02
4D027CA01
4D027CA03
4D027CA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、水を、流れる状態で、十分に浄化することが可能な汚水浄化装置及び汚水浄化方法を提供することを課題とする。
【解決手段】汚水浄化装置は、汚水を浄化するためのカキ殻部を備え、カキ殻部は、カキ殻を備え、カキ殻には、生物菌が植菌されており、水は、カキ殻部を1リットル/時間以上、4リットル/時間以下の流速で通過し、水の生物化学的酸素要求量は、10ミリグラム/リットル以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水を浄化するためのカキ殻部を備え、
前記カキ殻部は、カキ殻を備え、
前記カキ殻には、生物菌が植菌されており、
水は、前記カキ殻部を1リットル/時間以上、4リットル/時間以下の流速で通過し、
前記水の生物化学的酸素要求量は、10ミリグラム/リットル以下である、
汚水浄化装置。
【請求項2】
前記カキ殻の質量は、前記カキ殻部を1時間に通過する水の質量の5%以上である、
請求項1に記載の汚水浄化装置。
【請求項3】
前記カキ殻に、生物菌が植菌されている、
請求項1又は2に記載の汚水浄化装置。
【請求項4】
前記カキ殻部の上流に、ばっ気処理槽が設けられている、
請求項1又は2に記載の汚水浄化装置。
【請求項5】
前記ばっ気処理槽の下流に、沈殿槽が設けられており、
前記沈殿槽に、前記カキ殻部が設けられている、
請求項4に記載の汚水浄化装置。
【請求項6】
前記カキ殻部は、前記沈殿槽の上面に配置されている、
請求項5に記載の汚水浄化装置。
【請求項7】
前記カキ殻部は、前記沈殿槽の内側側面及び底面のうちの少なくとも一方に配置されている、
請求項5に記載の汚水浄化装置。
【請求項8】
カキ殻に生物菌を植菌するステップと、
植菌された前記カキ殻を、汚水浄化装置に配置するステップと、
生物化学的酸素要求量が10ミリグラム/リットル以下である水に、1リットル/時間以上、4リットル/時間以下の流速で、前記カキ殻部を通過させるステップと、を備える、
汚水浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水浄化装置及び汚水浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有効微生物を吸着物質担体に吸着させ、その吸着物質担体に汚水を接触させることで、汚水を浄化する汚水浄化装置が記載されている。しかし、従来の汚水浄化装置には、流れる水を浄化する場合に、有効微生物が水に洗い流され、その結果、浄化作用が長続きしない、との問題がある。
また、汚水をある程度まで浄化することができても、望まれる基準を十分に上回る程度まで、汚水を浄化することが困難である、との問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水を、流れる状態で、十分に浄化することが可能な汚水浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明は、汚水を浄化するためのカキ殻部を備え、前記カキ殻部は、カキ殻を備え、前記カキ殻には、生物菌が植菌されており、水は、前記カキ殻部を1リットル/時間以上、4リットル/時間以下の流速で通過し、前記水の生物化学的酸素要求量は、10ミリグラム/リットル以下である、汚水浄化装置である。
【0006】
(2)好ましくは、前記カキ殻の質量は、前記カキ殻部を1時間に通過する水の質量の5%以上である、(1)に記載の汚水浄化装置である。
【0007】
(3)好ましくは、前記カキ殻に、生物菌が植菌されている、(1)又は(2)に記載の汚水浄化装置である。
【0008】
(4)好ましくは、前記カキ殻部の上流に、ばっ気処理槽が設けられている、(1)から(3)の何れか1つに記載の汚水浄化装置である。
【0009】
(5)好ましくは、前記ばっ気処理槽の下流に、沈殿槽が設けられており、前記沈殿槽に、前記カキ殻部が設けられている、(4)に記載の汚水浄化装置である。
【0010】
(6)好ましくは、前記カキ殻部は、前記沈殿槽の上面に配置されている、(5)に記載の汚水浄化装置である。
【0011】
(7)好ましくは、前記カキ殻部は、前記沈殿槽の内側側面及び底面のうちの少なくとも一方に配置されている、(5)又は(6)に記載の汚水浄化装置である。
【0012】
(8)本発明は、カキ殻に生物菌を植菌するステップと、植菌された前記カキ殻を、汚水浄化装置に配置するステップと、生物化学的酸素要求量が10ミリグラム/リットル以下である水に、1リットル/時間以上、4リットル/時間以下の流速で、前記カキ殻部を通過させるステップと、を備える、汚水浄化方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水を、流れる状態で、十分に浄化する汚水浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の汚水浄化装置の全体構成を示す図である。
【
図2】実施例及び比較例について経時によるBODの変化を示す図である。
【
図3】実施例及び比較例について経時によるBODの変化を示す図である。
【
図4】実施例及び比較例について経時によるCODの変化を示す図である。
【
図5】実施例及び比較例について経時によるCODの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。
【0016】
<汚水浄化装置>
図1に基づいて、本発明の汚水浄化装置及び本発明の汚水浄化方法について説明する。
図1は、本発明の汚水浄化装置の一例の全体構成を示す図である。
図1に示す汚水浄化装置1は、汚水を浄化して放流する装置である。
図1に示すように、汚水浄化装置1は、第1沈殿槽2、ばっ気処理槽3、第2沈殿槽4、塩素処理部5、汚泥処理部6及びカキ殻部7を備える。
図1の矢印A、A’及びA’’は、水の流れを示す。なお、「水」は、その状況に応じて、汚水、清澄水、上澄み液等の意味で用いられる場合がある。また、
図1の矢印Bは、汚泥の流れを示す。
汚水は、
図1の矢印A’に沿って汚水浄化装置1に流入する。そして、汚水は、浄化された後、矢印A’’に沿って汚水浄化装置1から排出される。
【0017】
<浄化処理の流れ>
汚水が浄化されて排出されるまでの、浄化処理の流れを説明する。
<第1沈殿槽>
第1沈殿槽2は、汚水に含まれる浮遊物を沈殿させる部分である。
矢印A’に沿って汚水浄化装置1に流入した汚水は、矢印Aに沿って第1配管11を進み、第1沈殿槽2に流入する。第1沈殿槽2に流入した汚水は、第1沈殿槽2に一定期間静置される。又は、汚水は、第1沈殿槽2を低い流速で流れる。これにより、汚水に含まれる浮遊物が沈殿する。
汚水のうち、第1沈殿槽2で沈殿した部分を汚泥とし、沈殿しなかった部分を清澄液とする。
汚泥は、第2配管12を矢印Bに沿って進み、汚泥処理部6に流入する。
一方、清澄液は、第1配管11を矢印Aに沿ってさらに進み、ばっ気処理槽3に流入する。
【0018】
<ばっ気処理槽3>
ばっ気処理槽3は、好気性微生物の有機物分解作用により、清澄液を浄化する部分である。
ばっ気処理槽3は、ばっ気装置3Aを備える。ばっ気装置3Aは、ばっ気処理槽3の中の清澄液に空気を吹き込む装置である。
ばっ気処理槽3の中の清澄液には、好気性微生物が混入されている。ばっ気処理槽3の中の清澄液は、好気性微生物の有機物分解作用により、浄化される。その際、ばっ気装置3Aにより、汚水中に空気が送りこまれる。この空気により、好気性微生物による有機物の分解が促進される。
【0019】
<第2沈殿槽>
第2沈殿槽4は、ばっ気処理槽3で浄化された清澄液から汚泥を分離する部分である。
ばっ気処理槽3で浄化された清澄液は、浮遊物などの清澄液に溶けない物質を含んでいる。好気性微生物などが有機物等を分解すると、新たな物質が生成される。それが、新たな浮遊物となるからである。そこで、第2沈殿槽4で、新たに生じた浮遊物等を沈殿させる。
清澄液のうち、第2沈殿槽4で沈殿した部分を汚泥とし、沈殿しなかった部分を上澄み液とする。
汚泥は、第2配管12を矢印Bに沿って進み、汚泥処理部6に流入する。
一方、上澄み液は、第1配管11を矢印Aに沿ってさらに進み、塩素処理部5に流入する。
【0020】
<汚泥処理部>
汚泥処理部6は、汚泥を乾燥させ、搬出可能にする部分である。
汚泥処理部6には、汚泥が、第2配管12を介して集められる。汚泥には、第1沈殿槽2で沈殿した汚泥と、第2沈殿槽4で沈殿した汚泥とが含まれる。集められた汚泥は、汚泥処理部6で、脱水され、乾燥させられる。これにより、汚泥は、搬出可能な状態になる。
【0021】
<塩素処理部5>
塩素処理部5は、上澄み液を消毒し、放流可能にする部分である。
塩素処理部5では、第2沈殿槽4から流入した上澄み液に、次亜塩素酸ナトリウムが加えられる。次亜塩素酸ナトリウムは、消毒剤として機能する。上澄み液の中の病原性細菌等は、次亜塩素酸ナトリウムにより殺菌される。
殺菌された上澄み液は、矢印A’’に沿って汚水浄化装置1から排出される。
【0022】
<カキ殻部>
本実施形態の汚水浄化装置1では、第2沈殿槽4にカキ殻部7が備えられている。
カキ殻部7とは、生物菌が植菌されたカキ殻が配置された部分をいう。
【0023】
<カキ殻部の位置>
カキ殻部7は、第2沈殿槽4の上面、より具体的には第2沈殿槽4の中の上澄み液の表層に配置されている。カキ殻部7は、植菌したカキ殻と浮体とがネットに入れられたもの、として構成されている。このカキ殻と浮体とが入れられたネットを、上澄み液に浮かし、流水により移動しないように固定することで、カキ殻部7は第2沈殿槽4に配置されている。このように、カキ殻部7は、上澄み液に浸漬された状態で、第2沈殿槽4に固定されている。
【0024】
<水の流量>
カキ殻部7を流れる上澄み液の流速は、1L/時間以上、4L/時間以下であることが好ましい。
【0025】
流速が遅くなると、カキ殻の利用効率が低下する。
カキ殻は、所定の期間で取り換えることが好ましい。カキ殻に植菌された生物菌が劣化したりするからである。流速が遅いと、カキ殻を取り換えるまでにカキ殻を通過する上澄み液の量が低下する。そのため、カキ殻の利用効率が低下する。
【0026】
また、カキ殻部7を流れる上澄み液の流速は、第2沈殿槽4を流れる上澄み液の流速と同じである。カキ殻部7は、第2沈殿槽4内に備えられているからである。そのため、カキ殻部7を流れる上澄み液の流速を遅くすると、汚水浄化装置1の処理効率が低下する。
以上より、カキ殻部7を流れる上澄み液の流速は、1L/時間以上とすることが好ましい。
【0027】
なお、カキ殻部7を流れる上澄み液の流速を4L/時間以下とすることが好ましい理由については後述する。
【0028】
<カキ殻の量>
カキ殻部7に備えられるカキ殻の質量は、カキ殻部7を1時間に通過する上澄み液の質量の5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
例えば、第2沈殿槽4を流れる上澄み液の流速が1リットル/時間である場合、カキ殻部7を1時間に通過する上澄み液の質量は、約1キログラムとなる。この場合、上澄み液の質量に対するカキ殻の質量を10%にしたときには、カキ殻の質量は、100グラム以上とすることが好ましい。
【0029】
<上澄み液のBOD>
カキ殻部7による水の浄化は、浄化がある程度進んだ水を対象とすることが好ましい。
具体的には、カキ殻部7に接する上澄み液の生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand)は、10ミリグラム/リットル以下であることが好ましい。また、カキ殻部7に接する上澄み液のBODは、5ミリグラム/リットル以下であることが、より好ましい。
なお、本実施形態においては、カキ殻部7に接する上澄み液と、第2沈殿槽4に流入する上澄み液とは、同じ意味である。
【0030】
カキ殻部7に接する水を、浄化がある程度進んだ水にするために、カキ殻部7は、汚水の浄化が進む部分の下流に配置されることが好ましい。汚水の浄化が進む部分とは、例えば、ばっ気処理槽3である。
また、それらの部分での浄化の程度は、浄化後の水のBODが10ミリグラム/リットル以下となる程度であることが好ましい。より好ましくは、5ミリグラム/リットル以下である。これにより、カキ殻部7に接する上澄み液のBODを、容易に10ミリグラム/リットル以下とすることができる。
【0031】
<カキ殻への植菌>
カキ殻への植菌について説明する。カキ殻への植菌は、前処理、菌への浸漬、後処理の順で行われる。
【0032】
<前処理>
前処理は、カキ殻の洗浄と乾燥とを内容とする。
前処理では、まず、カキ殻を手洗いなどによって洗浄する。その後、カキ殻を、野晒しなどにより乾燥させる。カキ殻を野晒しで乾燥させる場合、6日以上野晒しにすることが好ましい。
【0033】
<菌への浸漬>
まず、菌を培養するための培養液を用意する。培養液としては、例えば、池の水や雨水や市水などの水を用いることができる。水は、培養液として用いる前に、オートクレーブで殺菌処理をすることが好ましい。
オートクレーブで処理した培養液に、植菌する菌を添加する。菌の添加の濃度は、例えば10ppmとすることができる。
次に、菌が添加された培養液に、カキ殻を浸漬させる。浸漬する際の培養液の温度は、例えば、25度とすることができる。また、浸漬する時間は、例えば、24時間とすることができる。
また、培養液に対するカキ殻の量は、例えば、4.5リットルの培養液に、カキ殻900グラムとすることができる。
【0034】
<後処理>
菌への浸漬を終えた後、カキ殻を乾燥させる。乾燥は、例えば、25度などの室温での、5日間の自然乾燥とすることができる。
前述の菌への浸漬と、後処理とを2回繰り返し、カキ殻への植菌を行う。これにより、カキ殻にバイオフィルムが形成される。
【0035】
<菌の種類>
菌は、種々の菌を用いることができる。菌は、複数種類を用いることが好ましい。菌は、好気性の細菌であることが好ましい。
また、菌として、市販の環境バイオ製剤を用いることもできる。環境バイオ製剤とは、複数種類の有効なバクテリア等が配合された製剤をいう。
市販の環境バイオ製剤としては、例えば、「バイオ湖沼浄化用好気性液体バイオ「FMPO4」(「FMPO4」は商品名。有限会社バイオフューチャー製)」や、「浄化槽用液体バイオ「ST」(「ST」は商品名。有限会社バイオフューチャー製)」などがある。
【0036】
<実施例と比較例>
本実施形態の実施例及び比較例について説明する。
図2及び
図3は、実施例及び比較例について経時によるBODの変化を示す図である。
図4及び
図5は、実施例及び比較例について経時によるCODの変化を示す図である。
【0037】
<試料の作成条件等>
実施例及び比較例では、以下のように試料を作成し、評価した。
実施例は、植菌したカキ殻による汚水の浄化効果を示す。実施例1と実施例2とでは、植菌した菌の種類が異なる。比較例は、植菌していないカキ殻による汚水の浄化効果を示す。
(菌の種類)
実施例1では、菌として、「バイオ湖沼浄化用好気性液体バイオ「FMPO4」(「FMPO4」は商品名。有限会社バイオフューチャー製)」を用いた。
実施例2では、菌として、「浄化槽用液体バイオ「ST」(「ST」は商品名。有限会社バイオフューチャー製)」を用いた。
(植菌前の前処理)
実施例及び比較例共に、カキ殻を手洗いで洗浄し、その後の6日間の野晒しをして乾燥させた。
(菌への浸漬)
実施例では、池の水を培養液とした。まず、池の水をオートクレーブで殺菌処理し、その水に、菌を10ppmの濃度になるように添加した。
カキ殻を、菌が添加された培養液に浸漬し、25度で24時間、浸漬を続けた。
培養液に対するカキ殻の量は、4.5リットルの培養液に対して、カキ殻900グラムとした。
(後処理)
実施例では、培養液への浸漬を終えた後、カキ殻を乾燥させた。乾燥は、25度で、5日間の自然乾燥とした。
【0038】
実施例は、(菌への浸漬)と、(後処理)とを2回繰り返し、試料とした。
比較例は、(植菌前の前処理)のみで、試料とした。
【0039】
(カキ殻の設置)
実施例及び比較例共に、試験用汚水が入った容器を準備した。カキ殻と浮体とをネットに入れ、試験用汚水の上面から浸漬させた。
(試験用汚水の量)
容器に入れた試験用汚水の量は3リットルとした。
(カキ殻の量)
ネットに入れたカキ殻の質量は、300グラムとした。
(評価)
試験用汚水の温度を20度として、開始後、20分後、40分後及び60分後に、BOD及びCODを評価した。また、60分後に、全窒素量(T-N:Total Nitrogen)及び全リン量(T-P:Total Phosphorus)を評価した。
【0040】
<評価結果>
(BOD)
図2及び
図3に示すように、60分後の評価において、実施例1及び実施例2は、比較例を大きく下回るBODを示した。また、実施例1及び実施例2では、開始時から60分後まで、BODの経時的な減少傾向がみられた。
一方、比較例では、40分後で、BODが実施例1及び実施例2を多少下回ったものの、60分後にBODが大きく上昇した。また、比較例では、開始時から60分後まで、BODの経時的な減少傾向はみられなかった。
(COD)
図4及び
図5に示すように、実施例及び比較例共に、開始時から60分後まで、CODに大きな変化は見られなかった。
(T-N及びT-P)
実施例及び比較例共に、開始時から60分後まで、T-N及びT-Pに大きな変化は見られなかった。
【0041】
(まとめ)
実施例1及び実施例2では、60分後に、BODの有意な低下がみられた。
また、実施例1及び実施例2では、開始時から60分後まで、BODの経時的な減少傾向がみられた。この減少傾向から推察して、実施例1及び実施例2では、50分以降で、比較例よりもBODが低下していると考えられる。
【0042】
なお、上記の評価は、バッチ式で行った。すなわち、試験中に、試験用汚水が容器に新たに入ったり、試験用汚水が容器から出たりはしていない。
上記のバッチ式の評価の条件を、試験用汚水の処理速度、すなわち、試験用汚水の流速に換算すると以下のようになる。
すなわち、各評価時間について、20分後は、3リットル/20分により、9リットル/時間の流速に換算される。
同様に、40分後は、3リットル/40分により、4.5リットル/時間の流速に、また、60分後は、3リットル/60分により、3.0リットル/時間の流速に換算される。
さらに、50分後は、3リットル/50分により、3.6リットル/時間の流速に換算される。
【0043】
以上より、実施例1及び実施例2は、4.0リットル/時間又は3.6リットル/時間以下の流速で、比較例に対して、有意なBOD低減効果を示したと言える。さらには、実施例1及び実施例2は、3.0リットル/時間以下の流速で、比較例に対して、より有意なBOD低減効果を示したと言える。
【0044】
<カキ殻部の他の配置>
前述の汚水浄化装置1では、カキ殻部7は、浮体やネットを用いて、第2沈殿槽4の上澄み液の表層に配置されていた。カキ殻部7の配置の仕方は、このような仕方に限定されない。
カキ殻部7の他の配置の仕方としては、上澄み液の表層ではなく、上澄み液の液中に配置することが考えらえる。
カキ殻部7を上澄み液の液中に配置する方法としては、第2沈殿槽4の内側側面や底面に、カキ殻を配置する方法が考えられる。
又は、第2沈殿槽4の深さ方向に延伸する支持体に、カキ殻を配置することが考えられる。また、この支持体は、第2沈殿槽4の深さ方向に加えて、それと直交する方向に延伸していてもよい。すなわち、支持体は、網目状に形成されていてもよい。このような支持体を用いることで、上澄み液の液中に、広い面積で、カキ殻を配置することができる。
また、カキ殻を第2沈殿槽4の内側側面や底面、又は支持体に固定する際、カキ殻をネットに入れて、そのネットを内側側面等に固定してもよい。又は、ネットを用いず、例えば、カキ殻にひもやワイヤを通し、そのひもなどを介して、カキ殻を内側側面等に固定してもよい。
また、カキ殻部7の配置の仕方は、上述の配置の仕方を複数個組み合わせたものとしてもよい。
【0045】
さらに、カキ殻部7を配置する位置は、第2沈殿槽4に限定されない。例えば、カキ殻部7を、ばっ気処理槽3と第2沈殿槽4との間の第1配管11に配置することもできる。
また、カキ殻部7を、第2沈殿槽4よりも下流の位置に配置することもできる。例えば、カキ殻部7を、第2沈殿槽4と塩素処理部5との間の第1配管11に配置することもできる。さらには、カキ殻部7を、塩素処理部5に配置することもできる。
<汚水浄化装置の他の例>
【0046】
また、カキ殻部7が備えられる汚水浄化装置1は、例えば、地方公共団体などが有する下水処理システムとすることができるが、それには限定されない。例えば、工場などが有する、排水処理システムで用いることもできる。
また、カキ殻部7が備えられる汚水浄化装置1の規模も特には限定されない。例えば、大規模な下水処理システムから、小規模な水再利用システムまで、種々の範囲で用いることができる。小規模な水再利用システムとしては、例えば、小型のトイレ排水循環再利用システムなどがある。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 汚水浄化装置
2 第1沈殿槽
3 ばっ気処理槽
3A ばっ気装置
4 第2沈殿槽
5 塩素処理部
6 汚泥処理部
7 カキ殻部
11 第1配管
12 第2配管