(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173219
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】放電装置及び放電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01T 19/00 20060101AFI20231130BHJP
H01T 21/00 20060101ALI20231130BHJP
H01T 23/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01T19/00
H01T21/00
H01T23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085326
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】堀川 幸司
(72)【発明者】
【氏名】谷口 三奈子
(57)【要約】
【課題】一対の回路基板と、それぞれの回路基板に形成された一対の面電極とによって形成されるコンデンサを小形化する。
【解決手段】放電装置10であって、第1放電電極20と、第2放電電極21と、第1の面電極22と、第2の面電極23と、第3の面電極24とを備える。第1放電電極20は、正電位が印加される。第2放電電極21は、負電位が印加される。第1の面電極22は、第1放電電極20に電気的に接続される。第2の面電極23は、第2放電電極21に電気的に接続される。第3の面電極24は、一部分が第1の面電極22に対向するとともに少なくとも他の一部分が第2の面電極23に対向する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電位が印加される第1放電電極と、
負電位が印加される第2放電電極と、
前記第1放電電極に電気的に接続された第1の面電極と、
前記第2放電電極に電気的に接続された第2の面電極と、
一部分が前記第1の面電極に対向するとともに少なくとも他の一部分が前記第2の面電極に対向する第3の面電極と
を備える、放電装置。
【請求項2】
前記第1放電電極及び前記第1の面電極が設置された第1放電電極基板と、
前記第2放電電極及び前記第2の面電極が設置された第2放電電極基板と、
前記第3の面電極が設置された誘導電極基板と、
前記第1放電電極基板及び前記誘導電極基板の間と、前記第2放電電極基板及び前記誘導電極基板の間とに設けられた絶縁樹脂と
をさらに備える請求項1記載の放電装置。
【請求項3】
前記第1放電電極基板と前記第2放電電極基板とが、1枚の基板の一部分と前記1枚の基板の他の一部分とによって構成されるか、又は別個の2枚の基板で構成されている、請求項2記載の放電装置。
【請求項4】
前記第1放電電極基板及び前記第2放電電極基板を位置決めする第1位置決め部材と、
前記誘導電極基板を位置決めする第2位置決め部材と
をさらに備える請求項2記載の放電装置。
【請求項5】
前記第1放電電極基板と前記第2放電電極基板と前記誘導電極基板とを収容するケーシングをさらに備え、
前記第1位置決め部材と前記第2位置決め部材とは、前記ケーシングを構成する壁に設けられている請求項4記載の放電装置。
【請求項6】
前記壁における前記第1位置決め部材と前記第2位置決め部材とによって階段形状が形成されている請求項5記載の放電装置。
【請求項7】
前記ケーシングは開口を有し、
前記開口を開閉する蓋をさらに備え、
前記蓋は、前記開口を閉じたときに前記第1位置決め部材にて位置決めされている前記第1放電電極基板及び前記第2放電電極基板を押圧固定する第1押圧部材と、前記開口を閉じたときに前記第2位置決め部材にて位置決めされている前記誘導電極基板を押圧固定する第2押圧部材とを備える請求項5記載の放電装置。
【請求項8】
請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の放電装置を製造するに際し、
前記第1位置決め部材によって前記第1放電電極基板及び前記第2放電電極基板を位置決めし、かつ
前記第2位置決め部材によって前記誘導電極基板を位置決めしながら、
前記第1放電電極基板及び前記第2放電電極基板と、前記誘導電極基板との間に絶縁樹脂を充填する、放電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電装置に関し、たとえばイオン発生装置に用いられる放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電装置としてのイオン発生装置は、交流の入力電力をトランスで昇圧し、昇圧した電力を整流及び平滑化した後に放電電極に印加することにより、高圧放電を生じることでイオンを発生する。
【0003】
たとえば、特許文献1には、上記の平滑のために高圧コンデンサが設けられたイオン発生装置が開示されている。
【0004】
特許文献1のイオン発生装置は、電子部品としての高圧コンデンサを不要としている。特許文献1のイオン発生装置は、一対の回路基板と、それぞれの回路基板に形成された一対の面電極とによってコンデンサを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、一対の回路基板と、それぞれの回路基板に形成された一対の面電極とによって形成されるコンデンサの小形化が可能な放電装置及び放電装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明一局面によれば、放電装置は、第1放電電極と、第2放電電極と、第1の面電極と、第2の面電極と、第3の面電極とを備える。第1放電電極は、正電位が印加される。第2放電電極は、負電位が印加される。第1の面電極は、第1放電電極に電気的に接続される。第2の面電極は、第2放電電極に電気的に接続される。第3の面電極は、一部分が第1の面電極に対向するとともに少なくとも他の一部分が第2の面電極に対向する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対の回路基板と、それぞれの回路基板に形成された一対の面電極とによって形成されるコンデンサを小形化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本実施形態に係る放電装置の構成を示す断面図である。
【
図3】放電装置におけるケーシングの要部の構成を示す立体図である。
【
図4】ケーシングと蓋との組付け構造を示す立体図である。
【
図5】ケーシングと蓋との組付け構造を示す別の立体図である。
【
図6】放電電極基板と誘導電極基板との配置構造を示す立体図である。
【
図7】ケーシングと放電電極基板と誘導電極基板と蓋との組付け構造を示す立体図である。
【
図8】ケーシングと放電電極基板と誘導電極基板と蓋との組付け構造を示す別の立体図である。
【
図9】他の実施形態に係る放電装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
本発明の実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。
【0011】
まず実施形態に係る放電装置の回路構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る放電装置10の回路図である。
【0012】
図1の放電装置10は、イオン発生装置であって、駆動回路11と、トランス12と、高圧回路13とを備える。
【0013】
駆動回路11は、入力された直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換し、変換した交流電圧をトランス12の1次側コイル14に印加することにより、トランス12を駆動する。これに代えて、駆動回路11は、商用電源からの電力をトランス12の1次側コイル14に印加することによりトランス12を駆動する方式であっても差し支えない。
【0014】
トランス12は、1次側コイル14に入力された交流電力を昇圧する。トランス12は、昇圧した交流電力を2次側コイル15から出力する。
【0015】
高圧回路13は、一対のダイオード16、17と、一対のコンデンサ18、19と、第1放電電極20と、第2放電電極21と、第1の面電極22と、第2の面電極23と、第3の面電極としての誘導電極24とを備える。
【0016】
ダイオード16、17は、トランス12からの高圧の交流を整流する。ダイオード16は正の電力を出力し、ダイオード17は負の電力を出力する。コンデンサ18、19は、ダイオード16、17によって生成された脈流を平滑化する。第1放電電極20と第2放電電極21とは、コンデンサ18、19からの平滑化された出力を受けて放電を行う。第1放電電極20は正の電位での放電を行い、第2放電電極21は負の電位での放電を行う。
【0017】
第1の面電極22及び第2の面電極23と、誘導電極24とは、コンデンサ18とコンデンサ19とを構成する。第1の面電極22と第2の面電極23とは、互いの極性すなわち電位の正負が逆である。これに対し誘導電極24は、コンデンサ18とコンデンサ19とで同電位である。
【0018】
なお、
図1では符号24が3つ記載されているが、これは回路図を作成するための便宜によるものである。構造上は、誘導電極24は単一の部材によって構成される。誘導電極24の構造の詳細は後述する。
【0019】
図2を参照して、放電装置10の構造を説明する。
図2は、本実施形態に係る放電装置10の構成を示す断面図である。
【0020】
図2に示すように、放電装置10は、
図1の回路図に示した各部材のほかに、ケーシング27と、第1放電電極基板28aと、第2放電電極基板28bと、誘導電極基板29と、誘電体としての絶縁樹脂30とをさらに備える。
【0021】
ケーシング27は、絶縁性を有する合成樹脂で箱形に形成されている。ケーシング27は、箱形を構成する一つの面に開口32が設けられている。第1放電電極基板28aと、第2放電電極基板28bと、誘導電極基板29とは、ケーシング27の内部に収容されている。
図1の例では、開口32は、ケーシング27の上端に形成されている。
【0022】
第1放電電極20と第1の面電極22とは、互いに導通した状態で第1放電電極基板28aに取り付けられている。第2放電電極21と第2の面電極23とは、互いに導通した状態で第2放電電極基板28bに取り付けられている。
【0023】
図2に示すように、第1放電電極基板28aと第2放電電極基板28bとを1枚の放電電極基板28で構成することができる。あるいは、図示は省略するが、第1放電電極基板28aと第2放電電極基板28bとを、別々の2枚の基板によって構成することもできる。
図2に示すように、第1放電電極基板28aと第2放電電極基板28bとを1枚の放電電極基板28で構成する場合は、放電電極基板28の一部分によって第1放電電極基板28aが構成されるとともに、放電電極基板28の他の一部分によって第2放電電極基板28bが構成される。
【0024】
第3の面電極としての1枚の面構造の誘導電極24が、誘導電極基板29に取り付けられている。
【0025】
図2において、放電電極基板28と誘導電極基板29とは、互いに距離をおいて対向した状態で配置されている。また放電電極基板28と誘導電極基板29とは、第1の面電極22及び第2の面電極23と、誘導電極24とが、互いに距離をおいて平行に対向した状態となるように配置されている。
【0026】
誘電体としての絶縁樹脂30は、ケーシングの27の内部に充填されている。絶縁樹脂30は、特に第1の面電極22及び第2の面電極23と、第3の面電極としての誘導電極24との間に充填されることで、誘電体としての機能を発揮する。絶縁樹脂4を形成する樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0027】
放電電極基板28及び誘導電極基板29は、矩形状の回路基板である。放電電極基板28は、ケーシング27の底壁33の上方に、底壁33から間隔をおいて配置されている。放電電極基板28と誘導電極基板29とは、エポキシ樹脂などの電気絶縁性の樹脂によって形成される。
【0028】
第1放電電極20と第2放電電極21とは、放電電極基板28の面方向に所定の間隔をおいて実装されている。第1放電電極20と第2放電電極21とは、放電電極基板28の表面から垂直に立ち上がるように、放電電極基板28に取り付けられ、絶縁樹脂30の表面から突出している。第1放電電極20及び第2放電電極21は、先端が鋭く尖った形状とされた針状の電極である。第1放電電極20及び第2放電電極21は、針状の電極に限らず、先端がブラシ状に形成された電極であってもよい。
【0029】
第1の面電極22及び第2の面電極23は、放電電極基板28の面方向に沿って配置された状態で、放電電極基板28に取り付けられている。詳細には、第1の面電極22及び第2の面電極23は、互いに間隔をあけた状態で、放電電極基板28に貼り付けられて固定されている。上述のように、第1の面電極22は第1放電電極20に導通され、第2の面電極23は第2放電電極21に導通されている。
【0030】
第3の面電極としての誘導電極24は、誘導電極基板29に貼り付けられて固定されている。
図2に示すように、誘導電極24は、面方向に沿った一部分が第1の面電極22に対向するとともに、面方向に沿った少なくとも他の一部分が第2の面電極23に対向するように形成されている。「少なくとも他の一部分」と規定したのは、他の部分のすべてが第2の面電極23に対向するように形成されている構成を含む趣旨である。
【0031】
図1に示されるコンデンサ18は、第1の面電極22と、誘導電極24と、第1の面電極22及び誘導電極24の間に充填された絶縁樹脂30とによって形成される。
図1に示されるコンデンサ19は、第2の面電極23と、誘導電極24と、第2の面電極23及び誘導電極24の間に充填された絶縁樹脂30とによって形成される。
【0032】
その一方で、誘導電極24は、本来は、第1放電電極20及び第2放電電極21との間に放電を生じさせるための電極である。第1放電電極20は、誘導電極24との間で正イオンを発生させる。第2放電電極21は、誘導電極24との間で負イオンを発生させる。
【0033】
つまり、誘導電極24は、イオンを発生させるための本来の誘導電極としての機能と、コンデンサ18、19の電極つまり極板としての機能を兼備する。
【0034】
図2に示した構成では、第3の面電極としての誘導電極24は、イオンを発生させるための本来の誘導電極としての機能を発揮する部分と、コンデンサ18、19の電極としての機能を発揮する部分とが一体となっている。しかし、誘導電極としての機能を発揮する部分と、コンデンサ18、19の電極としての機能を発揮する部分とが別体であっても差し支えない。別体である場合には、誘導電極としての機能を発揮する部分と、コンデンサ18の電極としての機能を発揮する部分及びコンデンサ19の電極としての機能を発揮する部分とは、導体にて電気的に接続されて導通されることなどにより同電位とされていればよい。
【0035】
図2に示した構成によれば、1つの誘導電極24が、コンデンサ18を構成する電極とコンデンサ19を構成する電極とを兼ねているため、コンデンサ18を構成する電極とコンデンサ19を構成する電極とを別体で構成する場合に比べて、小形にすることができる。
【0036】
図2に示すように、放電電極基板28である第1放電電極基板28a及び第2放電電極基板28は、ケーシング27の壁部に備えられた第1位置決め部材35によって、ケーシング27に対して、特にケーシングの深さ方向に、位置決めが行われている。誘導電極基板29は、ケーシング27の壁部に備えられた第2位置決め部材36によって、ケーシング27に対して、特にケーシング27の深さ方向に、位置決めが行われている。
【0037】
位置決めが行われていることで、コンデンサ18、19の極板を構成する第1の面電極及び第2の面電極23と、誘導電極24との距離が安定するとともに、第1の面電極及び第2の面電極23と、誘導電極24との面方向の位置が安定する。コンデンサ18、19の極板を構成する第1の面電極及び第2の面電極23と、誘導電極24との距離が安定するとともに、第1の面電極及び第2の面電極23と、誘導電極24との面方向の位置が安定することで、静電容量などのコンデンサ18、19の特性が安定する。
【0038】
なお、
図2においては、第1位置決め部材35と第2位置決め部材36とは、簡略化して図示されている。以下、第1位置決め部材35及び第2位置決め部材36の詳細を、
図3~
図8を参照して説明する。
【0039】
図3は、放電装置10におけるケーシング27の要部の構成を示す立体図である。
図4はケーシング27と蓋37との組付け構造を示す立体図である。
図5は、ケーシング27と蓋37との組付け構造を示す別の立体図である。
図6は、放電電極基板28と誘導電極基板29との配置構造を示す立体図である。
図7は、ケーシング27と放電電極基板28と誘導電極基板29と蓋37との組付け構造を示す立体図である。
図8は、ケーシング27と放電電極基板28と誘導電極基板29と蓋37との組付け構造を示す別の立体図である。
【0040】
図3には、ケーシング27の底壁33とケーシング27の側壁38との交差部が、部分的に描かれている。換言すると、
図3には、箱形状のケーシング27の底のコーナ部が、部分的に描かれている。
【0041】
図3に示される部分は、階段形状とされている。階段形状は、ケーシング27を構成する材料によって、ケーシング27の壁と一体に形成されている。階段形状は、最下段39と、下から2段目40と、下から3段目41と、最上段42とを備える。
【0042】
最下段39は、底壁33によって形成されている。
【0043】
下から2段目40は、最下段39から適宜の距離をおいて形成されている。
【0044】
下から3段目41は、下から2段目40から、放電電極基板28と誘導電極基板29との間隔に対応した距離だけ上の位置に形成されている。下から3段目41は、下から2段目40と比べて、ケーシング27の側壁38に沿った長さが短く形成されている。つまり、図示のように、下から2段目40の次に、下から3段目41を経ずに、いきなり最上段42となる部分が形成されている。いきなり最上段42となる部分は、下から3段目41が欠き取られた欠き取り部43を形成した構成である。
【0045】
最上段42は、ケーシング27の側壁38の上端面44によって形成されている。開口32は、上端面44の内周縁によって形成されている。
【0046】
以上によって階段形状部45が形成されている。
【0047】
第1位置決め部材35は、下から2段目40によって形成されている。第2位置決め部材36は、下から3段目41によって形成されている。
【0048】
図4及び
図5には、階段形状部45とともに、
図3に示されたケーシング27の開口32を塞ぐ蓋37が描かれている。
【0049】
蓋37は、蓋としての機能を発揮する板状体47と、板状体47から下向きに突出する突起48とが一体に形成されている。突起48は、第2押圧部材としての短突起49と、第1押圧部材としての長突起50とを備える。
図4に詳しく示すように、短突起49は、蓋37によってケーシング27の開口32を塞いだときに、階段形状部45の下から3段目41との間に空間51を形成する。長突起50は、蓋37によってケーシング27の開口32を塞いだときに、階段形状部45の下から2段目40との間に、
図3に示す欠き取り部43に対応した空間52を形成する。
【0050】
空間51と空間52とは、ケーシング27の底壁33からの距離が相違する。換言すると、空間51と空間52とは、ケーシング27における異なった高さの位置に形成される。空間51よりも空間52の方が底壁33に近い位置に形成される。
【0051】
図6は、放電電極基板28の端部と誘導電極基板29の端部との構造を示す。放電電極基板28は、凸部53を有する。凸部53は、第1位置決め部材35によって放電電極基板28が所定の位置に設置されたときに、長突起50と階段形状部45の下から2段目40との間の空間52に入り込むことができる。誘導電極基板29は、凸部54を有する。凸部54は、第2位置決め部材36によって誘導電極基板29が所定の位置に設置されたときに、短突起49と階段形状部45の下から3段目41との間の空間51に入り込むことができる。
【0052】
図7及び
図8は、放電電極基板28と誘導電極基板29とが第1位置決め部材35と第2位置決め部材36とによって所定の位置に設置されたうえで、蓋37がケーシング27に被せられたときの構造を示す。
【0053】
図7では、放電電極基板28の凸部53が、長突起50と階段形状部45の下から2段目40との間の空間52(
図4及び
図5参照)に入り込んだ状態が描かれている。このとき、誘導電極基板29は、凸部54が形成された部分以外の端部57が、蓋37の長突起50の側面58に対応して位置している。このとき、放電電極基板28と誘導電極基板29との間に絶縁樹脂30を注入することが必要である。このため、特に、放電電極基板28と誘導電極基板29との間の空間への絶縁樹脂30の流入口の近傍では、放電電極基板28や誘導電極基板29の一部分と、ケーシング27などの他の部材とが接触している部分の近傍に、絶縁樹脂30を流入させるための隙間を形成しておくことが好ましい。
【0054】
放電電極基板28は、凸部53が空間52に入り込んだ状態で、長突起50と、第1位置決め部材35としての、階段形状部45の下から2段目40との間に挟み込まれて固定される。つまり、放電電極基板28は、ケーシング27の深さ方向に沿った所定の位置に位置決めされた状態で、固定される。放電電極基板28は、固定されることで、放電電極基板28の面方向にも位置決めされる。
【0055】
あるいは、放電電極基板28は、凸部53が階段形状部45の下から3段目41の側端面に接触することで放電電極基板28の面方向に位置決めされ、そのうえで長突起50と階段形状部45の下から2段目40との間に挟み込まれて固定される構造であっても構わない。
【0056】
図8では、誘導電極基板29の凸部54が、短突起49と階段形状部45の下から3段目41との間の空間51(
図4及び
図5参照)に入り込んだ状態が描かれている。このとき、放電電極基板28は、
図7に描かれている凸部53が形成された部分以外の端部55が、階段形状部45の下から3段目41の側面56に対応して位置している。このときも、放電電極基板28と誘導電極基板29との間に絶縁樹脂30を注入することが必要である。このため、特に、放電電極基板28と誘導電極基板29との間の空間への絶縁樹脂30の流入口の近傍では、放電電極基板28や誘導電極基板29の一部分と、ケーシング27などの他の部材とが接触している部分の近傍に、絶縁樹脂30を流入させるための隙間を形成しておくことが好ましい。
【0057】
誘導電極基板29は、凸部54が空間51に入り込んだ状態で、短突起49と、第2位置決め部材36としての、階段形状部45の下から3段目41との間に挟み込まれて固定される。つまり、誘導電極基板29は、ケーシング27の深さ方向に沿った所定の位置に位置決めされた状態で、固定される。誘導電極基板29は、固定されることで、誘導電極基板29の面方向にも位置決めされる。
【0058】
あるいは、誘導電極基板29は、凸部54が長突起50の側端面に接触することで誘導電極基板29の面方向に位置決めされ、そのうえで短突起49と階段形状部45の下から3段目41との間に挟み込まれて固定される構造であっても構わない。
【0059】
以上によって、放電電極基板28と誘導電極基板29との間の距離が所要の値に設定される。換言すると、
図2に示される第1の面電極22及び第2の面電極23と、誘導電極24との間隔が確実に所要の値に設定される。
【0060】
このように放電電極基板28と誘導電極基板29とが位置決め状態で固定されているとき、ケーシング27の内部に溶融状態の絶縁樹脂30を注入する。その後に絶縁樹脂30を固化させることで、容易に放電装置10を製造することができる。絶縁樹脂30の注入は、蓋37に形成された貫通孔(図示せず)を通して行われる。絶縁樹脂30の注入に際しては、特に、第1の面電極22及び第2の面電極23と誘導電極24との間に、絶縁樹脂30を隙間なく充填させることが必要である。コンデンサ18とコンデンサ19とに所要の性能を発揮させるためである。
【0061】
詳細に説明すると、コンデンサ18とコンデンサ19とは、第1の面電極22及び第2の面電極23と、誘導電極24とが重なっている部分の面積や、絶縁樹脂30の厚みによって容量が変化する。コンデンサ18とコンデンサ19とを大容量にするためには、放電電極基板28と誘導電極基板29との間の距離を小さくする必要がある。しかし、放電電極基板28と誘導電極基板29とが接近しすぎると、ショートする懸念がある。
【0062】
そのため、コンデンサ18及びコンデンサ19を形成する、第1の面電極22及び第2の面電極23を備えた放電電極基板28と、誘導電極24を備えた誘導電極基板29との位置関係が変化しないように、ケーシング27の内部に設けた階段形状部45を用いて、放電電極基板28と誘導電極基板29とが配置されている。
【0063】
さらに、蓋37に形成された長さの異なる短突起49と長突起50とによって、放電電極基板28及び誘導電極基板29を階段形状部45との間に挟み込んで固定している。放電電極基板28と誘導電極基板29とを挟み込んで固定することで、放電電極基板28と誘導電極基板29との間隔方向及び面方向のずれを低減することができる。その結果、デバイス間でばらつきが小さく、かつ可能な限り大容量のコンデンサ18及びコンデンサ19を実現することが可能である。
【0064】
コンデンサ18及びコンデンサ19のばらつきを低減するためには、コンデンサ18及びコンデンサ19を構成する第1の面電極22及び第2の面電極23と誘導電極24とのできるだけ近傍の位置で、放電電極基板28と誘導電極基板29とを支持して固定することが好ましい。ここで「できるだけ近傍」とは、構造上可能な限り最短の距離の位置という意味である。
【0065】
ただし、絶縁樹脂30が第1の面電極22及び第2の面電極23と誘導電極24とに隙間なく密着していることも、放電電極基板28と誘導電極基板29との間の距離を所定の値にするのと同じくらいに重要である。コンデンサ18とコンデンサ19との静電容量を所要の値にするためである。このため、放電電極基板28と誘導電極基板29とを支持して固定するための構造部材は、放電電極基板28と誘導電極基板29との間への絶縁樹脂30の流入にできるだけ影響が出にくい位置に、たとえば上記のようにケーシング27の底壁33や側壁38に、配置することが好ましい。
【0066】
階段形状部45を採用したことで、まずケーシング27内の底側に放電電極基板28を適正位置に配置し、そのうえで放電電極基板28よりも開口32側の適正位置に誘導電極基板29を配置することができる。さらに蓋37によって放電電極基板28と誘導電極基板29とを適正位置に固定したうえで、蓋37を通して絶縁樹脂30の注入を行うことができる。
【0067】
(他の実施形態)
他の実施形態を、
図9を参照しながら説明する。
図9は、本発明の他の実施形態に係る放電装置10の構成を示す断面図である。
【0068】
図9に示される放電装置10は、
図2に示される放電装置10と比べて、ケーシング27の天地が逆転した構成となっている。
【0069】
詳細には、
図9に示される放電装置10において、第1放電電極20、第2放電電極21、第1の面電極22、第2の面電極23、誘導電極24、放電電極基板28、誘導電極基板29、絶縁樹脂30の構成及び配置は、
図2に示される放電装置10と同じである。詳細な図示は省略するが、階段形状部を用いた第1位置決め部材35及び第2位置決め部材36による放電電極基板28及び誘導電極基板29の位置決め・固定構造も同じである。
【0070】
図9に示される放電装置10では、誘導電極基板29がケーシング27の底壁33に対向する位置に配置され、第1放電電極20及び第2放電電極21がケーシング27の底壁33を貫通して配置され、放電電極基板28がケーシング27の開口32の側に配置されている点が、
図2に示される放電装置10と相違する。開口32が図示を省略した蓋によって塞がれる点は、
図2に示される放電装置と共通する。
【0071】
図9に示される放電装置10は、
図2に示される放電装置10と比べて、特にケーシング27の構成が相違する。しかし、
図9に示される放電装置10の動作は、
図2に示される放電装置10の動作と共通する。
【0072】
(その他)
放電装置10は、上記したイオン発生装置のみならず、それ以外の放電装置、すなわち放電生成因子を発生させることができる放電装置としても、実施することができる。放電生成因子としては、例えばイオン又は活性種が挙げられる。イオンとしては、正イオン(例えば、H+(H2O)m(mは任意の整数))又は負イオン(例えば、O2
-(H2O)n(nは任意の整数))又はこれらの組み合わせが挙げられる。活性種としては、ヒドロキシラジカル(・OH)又は水素ラジカル(・H)又は酸素ラジカル(・O)又はヒドロペルオキシラジカル(・HO2)又は過酸化水素(H2O2)又はオゾン(O3)などが挙げられる。
【0073】
放電電極基板28、放電電極基板28a、放電電極基板28bと、誘導電極基板29とを位置決めして固定する構成は、上述の階段形状部45と短突起49及び長突起50とを用いたものが、簡単かつ確実で、しかも良好な位置決め精度のもとで、放電電極基板28、放電電極基板28a、放電電極基板28b、誘導電極基板29を設置できる利点がある。しかし、これに限られるものではなく、他の適宜の位置決め構造及び固定構造を採用することもできる。
【0074】
コンデンサ18及びコンデンサ19を構成する誘電体は、絶縁樹脂30だけではなく、放電電極基板28と誘導電極基板29との少なくともいずれか一方を、誘電体として用いることも可能である。放電電極基板28と誘導電極基板29との少なくともいずれか一方を誘電体として用いる場合には、放電電極基板28に配置された第1の面電極22及び第2の面電極23と、誘導電極基板29に配置された誘導電極24との少なくともいずれか一方を、電極が設けられている基板において、相手方の基板とは反対側の面に設置すればよい。その結果、放電電極基板28と誘導電極基板29との少なくともいずれか一方が、第1の面電極22及び第2の面電極23と、誘導電極24との間に配置されて、コンデンサ18、19のための誘電体として機能する。場合によっては、絶縁樹脂30を用いずに、第1の面電極22及び第2の面電極23と、誘導電極24とを、1枚の基板の一方の面と他方の面とに配置することによって、コンデンサ18及びコンデンサ19を構成することもできる。
【0075】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、放電装置を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0077】
10 放電装置
18 コンデンサ
19 コンデンサ
20 第1放電電極
21 第2放電電極
22 第1の面電極
23 第2の面電極
24 誘導電極(第3の面電極)
27 ケーシング
28 放電電極基板
28a 第1放電電極基板
28b 第2放電電極基板
28 放電電極基板
29 誘導電極基板
30 絶縁樹脂
32 開口
33 底壁
35 第1位置決め部材
36 第2位置決め部材
37 蓋
38 側壁
45 階段形状部
49 短突起(第2押圧部材)
50 長突起(第1押圧部材)