(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173224
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】誤り訂正装置、誤り訂正方法、及び、誤り訂正プログラム
(51)【国際特許分類】
H03M 13/29 20060101AFI20231130BHJP
H03M 13/41 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H03M13/29
H03M13/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085335
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】井戸口 勇介
【テーマコード(参考)】
5J065
【Fターム(参考)】
5J065AB03
5J065AC02
5J065AD10
5J065AD11
5J065AE06
5J065AG05
5J065AH23
(57)【要約】
【課題】高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供する。
【解決手段】畳み込み符号とブロック符号とを含む受信信号に対して畳み込み符号の復号とブロック符号の復号とを行う復号部13と、前記ブロック符号の復号で得られた復号結果及びビットの誤り訂正の成否判定を含む復号補助情報と前記復号補助情報を再符号化した再符号化復号補助情報とを前記復号部へ帰還する帰還部14と、を備え、前記復号部13は、畳み込み符号のビタビ復号における符号列に対応したパスの選択に際し、現在の復号補助情報及び現在の再符号化復号補助情報に対応した現在のパスを基に将来のパスを選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳み込み符号とブロック符号とを含む受信信号に対して畳み込み符号の復号とブロック符号の復号とを行う復号部と、
前記ブロック符号の復号で得られた復号結果及びビットの誤り訂正の成否判定を含む復号補助情報と前記復号補助情報を再符号化した再符号化復号補助情報とを前記復号部へ帰還する帰還部と、を備え、
前記復号部は、
畳み込み符号のビタビ復号における符号列に対応したパスの選択に際し、現在の復号補助情報及び現在の再符号化復号補助情報に対応した現在のパスを基に将来のパスを選択する誤り訂正装置。
【請求項2】
前記復号部は、
現在の復号補助情報及び現在の再符号化復号補助情報に対応したパスかつ過去に選択されたパスに繋がるパスを現在のパスとして選択し、現在のパスに繋がるパスを将来のパスとして選択する請求項1に記載の誤り訂正装置。
【請求項3】
前記復号部は、
前記現在のパスを選択できない場合、過去に選択されたパスに繋がるパスを現在のパスとして選択する請求項2に記載の誤り訂正装置。
【請求項4】
前記帰還部は、
復号補助情報を再符号化したもの又は受信信号の復調結果及び伝送品質の指標に基づく受信信号の復調結果の成否判定結果を再符号化復号補助情報として前記復号部へ帰還し、ビットの誤り訂正が失敗しかつ受信信号の復調結果が正しいと判定される場合に限り、受信信号の復調結果及び復調結果の成否判定結果を帰還する請求項1に記載の誤り訂正装置。
【請求項5】
誤り訂正装置で行う誤り訂正方法において、
復号部が、畳み込み符号とブロック符号とを含む受信信号に対して畳み込み符号の復号とブロック符号の復号とを行い、
帰還部が、前記ブロック符号の復号で得られた復号結果及びビットの誤り訂正の成否判定を含む復号補助情報と前記復号補助情報を再符号化した再符号化復号補助情報とを前記復号部へ帰還し、
前記復号部が、畳み込み符号のビタビ復号における符号列に対応したパスの選択に際し、現在の復号補助情報及び現在の再符号化復号補助情報に対応した現在のパスを基に将来のパスを選択する
誤り訂正方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の誤り訂正装置としてコンピュータを機能させる誤り訂正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤り訂正装置、誤り訂正方法、及び、誤り訂正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
伝送時の雑音等によってデジタル信号に混入した誤りを訂正する技術がある。例えば、地上デジタル放送の誤り訂正方式として、外符号を畳み込み符号とし内符号をRS符号とした畳み込み・RS連接符号が利用されている。
【0003】
畳み込み・RS連接符号では、デジタル信号の符号化時には、RS符号化後にインターリーバを介して畳み込み符号化が行われる。復号時には、VA(ビタビアルゴリズム)復号後にデインターリーバを介してRS(リードソロモン)復号が行われる。
【0004】
具体的には、受信機は、送信機からデジタル情報が一定の拘束長で畳み込んで符号化された信号を受信すると、VA復号法を用いて、受信信号を一定の長さに渡って調べ、その符号列の繋がりから最も確かな符号を選択して復号する。その後、受信機は、送信側のインターリーバによる符号の順番の並び替えと逆の操作をデインターリーバで行い、RS復号法を用いて復号及び誤り訂正を行う。
【0005】
上記一連の復号処理は通常1回行われるが、その復号処理を繰り返し行うことで誤り訂正能力を向上させる技術がある。この繰り返し復号法では、前の繰り返し時の復号処理で得られた復号結果と誤り訂正の成功又は失敗を示す成否判定とが、次の繰り返し時の復号処理を補正するための復号補助情報として用いられる。
【0006】
具体的には、RS復号では、RS復号の1つの処理であるシンドローム演算が0と1の値をもつシンドロームを算出し、この値により訂正成功と訂正失敗が判定される。繰り返し復号法では、RS復号が出力する復号結果と、当該復号結果が正しいか否かをシンドロームにより判定した成否判定とが、次の繰り返し時の復号補助情報として用いられる。
【0007】
特許文献1では、RS復号後のビット値と矛盾するパスをVA復号時のトレリス線図上のパスから削減することにより、誤り訂正性能を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の繰り返し復号法は、復号補助情報のみを用いてパス削減を行うに留まるため、RS復号後のビット値と矛盾するパス、つまり、復号結果が0又は1であるパスしか削減できず、VA復号時のトレリス線図上のパス削減数の最大数は半分であった。
【0010】
また、パス削減の機会やパス削減数の最大数が少ないので、次時刻でパスを削減できない可能性が高いことから、ある時刻のパス削減の効果は次時刻までに留まる場合が多く、パス削減の効果の時間的な長さが短かった。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様の誤り訂正装置は、畳み込み符号とブロック符号とを含む受信信号に対して畳み込み符号の復号とブロック符号の復号とを行う復号部と、前記ブロック符号の復号で得られた復号結果及びビットの誤り訂正の成否判定を含む復号補助情報と前記復号補助情報を再符号化した再符号化復号補助情報とを前記復号部へ帰還する帰還部と、を備え、前記復号部は、畳み込み符号のビタビ復号における符号列に対応したパスの選択に際し、現在の復号補助情報及び現在の再符号化復号補助情報に対応した現在のパスを基に将来のパスを選択する。
【0013】
本発明の一態様の誤り訂正方法は、誤り訂正装置で行う誤り訂正方法において、復号部が、畳み込み符号とブロック符号とを含む受信信号に対して畳み込み符号の復号とブロック符号の復号とを行い、帰還部が、前記ブロック符号の復号で得られた復号結果及びビットの誤り訂正の成否判定を含む復号補助情報と前記復号補助情報を再符号化した再符号化復号補助情報とを前記復号部へ帰還し、前記復号部が、畳み込み符号のビタビ復号における符号列に対応したパスの選択に際し、現在の復号補助情報及び現在の再符号化復号補助情報に対応した現在のパスを基に将来のパスを選択する。
【0014】
本発明の一態様の誤り訂正プログラムは、上記誤り訂正装置としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】誤り訂正装置を含む受信機の構成を示す図である。
【
図2】復号部及び帰還部の接続構成例を示す図である。
【
図5】再符号化復号結果生成器の構成例を示す図である。
【
図6】再符号化復号結果生成器の動作例を示す図である。
【
図7】再符号化成否判定生成器の構成例を示す図である。
【
図9】畳み込み符号化器の内部状態の状態遷移を示す図である。
【
図10】畳み込み符号化器のトレリス線図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明概要]
[発明概要1]
本発明は、現在の復号補助情報(復号結果、誤り訂正の成否判定)と、その復号補助情報を再符号化したもの又は受信信号の復調に係る事前復号補助情報(受信信号の復調結果、伝送品質の指標に基づく受信信号の復調結果の成否判定)である現在の再符号化復号補助情報(再符号化復号結果、再符号化成否判定)と、に対応した現在のパスを基に、将来のパスを選択する。
【0018】
具体的には、復号補助情報と再符号化復号補助情報を用いてパス限定を行う。このように、復号補助情報に再符号化復号補助情報を組み合わせてパス削減を行うので、パス削減の機会が増加し、パス削減数の最大数が増加する。
【0019】
また、上記パス限定に加えて、現在の選択パスに繋がるパスのみを将来の選択パスとした将来パス選択情報を生成する。詳しくは、ある時刻において、前時刻の選択パスに繋がるパスを選択する。そして、そのパスの中から上記パス限定による選択パスに該当するパスを現時刻のパスとし、現時刻のパスに繋がるパスのみを次時刻の選択パスとする。これにより、パス削減の機会が更に増加し、パス削減数の最大数が更に増加し、パス削減の効果の時間的な長さが長くなる。
【0020】
その結果、従来よりもパス選択を適切に実施可能となり、高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供可能となる。
【0021】
[発明概要2]
本発明は、上記現在のパスを選択できない場合には、復号補助情報及び再符号化復号補助情報による選択パスではなく、過去の選択パスに繋がるパスを現在のパスとして選択する。
【0022】
復号補助情報に再符号化復号補助情報を組み合わせた場合には、再符号化復号補助情報での誤訂正の発生により間違いのパスが選択される可能性がある。一方、ここでは、復号補助情報及び再符号化復号補助情報による選択パスを使用しないので、そのデメリットを抑制できる。その結果、更に高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供可能となる。
【0023】
[発明概要3]
本発明は、RS復号が失敗しかつ受信信号の復調結果が正しいと判定される場合に限り、事前復号補助情報を再符号化復号補助情報として選択し、それ以外の場合には、復号補助情報を再符号化したものを再符号化復号補助情報として選択する。
【0024】
伝送品質の指標に基づく受信信号の復調結果の成否判定(より正確には正否判定。以下同様。)は必ずしも正しいとは限らないため、事前復号補助情報を使用したことで間違いのパスが選択される可能性がある。一方、ここでは、事前復号補助情報を使用する場合を特定の場合に限定したので、そのデメリットを抑制できる。その結果、更に高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供可能となる。
【0025】
[動作概要]
本実施形態では、RS復号後のビット自体はその誤り訂正の成否判定を含めて正しく、それらを再符号化した符号自体も正しいとみなして、VA復号時のトレリス線図上のパスを限定する。
【0026】
正しいとみなしたビットの成否は、RS復号から得られる復号補助情報より既知の情報として得ることができる。正しいとみなした符号の成否は、復号補助情報に畳み込み処理を施して得られる結果より既知の情報として得ることができる。
【0027】
正しいとみなした符号の成否は、伝送品質の指標から予想することでも得ることができる。伝送品質の指標には、例えば、CNR(搬送波対雑音電力比)やMER(変調誤差比)を利用することができる。伝送品質の指標に対して一定の閾値を設けることで、その閾値からの高低により成否判定を行うことができる。受信信号の復調結果と伝送品質の指標から得た成否判定(事前成否判定)とを合わせて事前復号補助情報とよぶ。
【0028】
ただし、事前復号補助情報は、正しいとみなした再符号化後の符号よりも正しさの精度が劣後するので、必ずしも正しいとは限らない。それ故、事前復号補助情報を用いてVA復号を行う場合には、誤訂正の発生により復号性能が劣化することへの配慮が必要である。
【0029】
上記を前提とし、本実施形態では、RS復号後のビットに係る復号補助情報に畳み込み処理を施すことで符号に係る復号補助情報を得る。また、伝送品質の指標に基づく事前復号補助情報を得る。このとき、事前復号補助情報により確定した符号の総数に、符号に係る復号補助情報により確定した符号の総数を加える(論理和を求める)ことで、より多くのパス限定を行うようにする。
【0030】
そして、符号に係る復号補助情報と事前復号補助情報のうちいずれかを選択して再符号化復号補助情報とし、復号を繰り返し行う毎に、ビットに係る復号補助情報により確定(誤り訂正が成功)したパスと、再符号化復号補助情報により確定したパスと、を踏まえてパス限定を行う。
【0031】
また、本実施形態では、復号補助情報及び再符号化復号補助情報に基づくパス限定に加えて、前時刻の選択パスに繋がるパスのみを現時刻の選択パスとしたパス限定も行い、その2つのパス限定を踏まえた更なるパス限定を行う。
【0032】
このとき、本実施形態では、再符号化復号補助情報を使用することによるデメリット(誤訂正の発生による間違いのパスの選択)を抑制する場合には、復号補助情報及び再符号化復号補助情報に基づくパス限定ではなく、前時刻の選択パスに繋がるパスのみを現時刻の選択パスとしたパス限定を行う。
【0033】
また、本実施形態では、事前復号補助情報を使用することによるデメリット(誤訂正の発生による間違いのパスの選択)を抑制するため、復号補助情報を再符号化したものと事前復号補助情報のうち復号補助情報を再符号化したものを再符号化復号補助情報として選択する。
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0035】
[受信機1の全体構成及び機能説明]
図1は、本実施形態に係る誤り訂正装置を含む受信機1の構成を示す図である。受信機1は、受信部11と、復調部12と、復号部13と、帰還部14と、復調結果判定部15と、データ処理部16と、を備える。
【0036】
受信部11は、送信機から送信された信号を受信する機能を備える。例えば、受信部11は、受信アンテナや受信回路で構成され、空中の無線伝送路や光ケーブル等の有線伝送路を介して信号を受信する。
【0037】
復調部12は、受信信号を復調する機能を備える。受信信号には、送信側で畳み込み符号化及びブロック符号化が行われた送信対象のデジタル情報が含まれている。復調部12は、受信信号に対して復調処理を行い硬判定値又は軟判定値を出力する。
【0038】
復号部13は、復調後の受信信号に対して畳み込み符号の復号とブロック符号の復号とを行う機能を備える。本実施形態において、送信側で利用するブロック符号はRS符号であり、復号部13では、RS符号を復号するRS復号を行う。復号部13は、畳み込み・RS連接符号の復号時の一連の復号処理を行う機能部であり、復調後の受信信号に対してVA復号(ビダビ復号)とRS復号(リードソロモン復号)とをその順に行う。
【0039】
帰還部14は、復号部13の一連の復号処理を繰り返し行うため、ブロック符号の復号処理で復号及び誤り訂正された復号補助情報(復号結果、ビットの誤り訂正の成否判定)を復号部13へ帰還する機能を備える。例えば、帰還部14は、復号部13において前の繰り返し時のRS復号で得られた復号結果と誤り訂正の成功又は失敗を示す成否判定とを、次の繰り返し時のVA復号の復号補助情報として、復号部13に入力する。
【0040】
また、帰還部14は、復号補助情報を復号部13に入力すると共に、その復号補助情報を畳み込み処理して再符号化したものを再符号化復号補助情報(再符号化復号結果、誤り訂正の再符号化成否判定)として生成し、その再符号化復号補助情報も復号部13に入力する機能を備える。
【0041】
また、帰還部14は、復号補助情報を復号部13に入力すると共に、復調結果判定部15から出力された受信信号の復調に係る事前復号補助情報(受信信号の復調結果、伝送品質の指標に基づく受信信号の復調結果の成否判定)を再符号化復号補助情報として生成し、その再符号化復号補助情報も復号部13に入力する機能を備える。
【0042】
つまり、帰還部14は、RS復号後のビットに係る復号補助情報と符号に係る再符号化復号補助情報を復号部13に帰還する。このとき、帰還部14は、原則的には、再符号化復号補助情報として再符号化後の復号補助情報又は事前復号補助情報を選択して帰還するが、伝送品質の指標に基づく確率的な事前復号補助情報は必ずしも正しいとは限らないので、所定の場合に限り事前復号補助情報を選択し、それ以外の場合は再符号化後の復号補助情報を優先選択する。
【0043】
復調結果判定部15は、伝送品質の指標を用いて受信信号の復調結果の成否判定を行う機能を備える。例えば、復調結果判定部15は、CNRやMER等の伝送品質の指標に対して一定の閾値を設け、その閾値に対する受信信号の伝送品質値の高低により復調の成否判定を行う。復調結果判定部15は、受信信号の復調結果と伝送品質の指標から得た復調の成否判定(事前成否判定)とを事前復号補助情報として帰還部14に出力する。
【0044】
データ処理部16は、復号部13で繰り返し行われた受信信号の復号結果を用いて、所定の処理を行う機能部である。例えば、データ処理部16は、復号後のデジタル信号を用いて地上デジタル放送の映像や文字情報を再構築して画面に出力する。
【0045】
[復号部13及び帰還部14の全体構成及び全体動作]
図2は、復号部13及び帰還部14の接続構成例を示す図である。複数の復号部13と複数の帰還部14が交互に直列接続される。ここでは、軟判定値であるLLR(対数尤度比)を例にとり、全体構成及び全体動作を下記説明する。
【0046】
複数の復号部13は、入力されるLLRに対して互いに並列であり、各復号部13のLLR入力端間に設けられたLLR入力遅延用のバッファ17を介してLLRをそれぞれ入力する。復号部13は、LLRと復号補助情報と再符号化復号補助情報を用いて受信信号の復号を行い、復号補助情報を直後の帰還部14に出力する。
【0047】
複数の帰還部14は、入力される事前復号補助情報に対して互いに並列であり、各帰還部14の事前復号補助情報入力端間に設けられた事前復号補助情報入力遅延用のバッファ18を介して事前復号補助情報をそれぞれ入力する。帰還部14は、復号補助情報と事前復号補助情報を用いて再符号化復号補助情報を生成し、復号補助情報と再符号化復号補助情報を直後の復号部13に帰還する。
【0048】
図2において、最上段の帰還部14aは、事前復号補助情報を入力すると、復号補助情報(初期値)と再符号化復号補助情報を次段の復号部13aに入力する。
【0049】
復号部13aは、LLRを入力すると、上記2つの補助情報を基にVA復号時のトレリス線図上のパスを限定した上でVA復号を行い、続いてRS復号を行った後に、復号補助情報を同段の帰還部14bに出力する。帰還部14bは、復号部13aからの復号補助情報と、再符号化復号補助情報(復号部13aからの復号補助情報を再符号化したもの又は事前復号補助情報)と、を次次段の復号部13bに入力する。
【0050】
復号部13bは、復号部13aにおいて前の繰り返し時のRS復号で得られた復号補助情報と、その復号補助情報を再符号化したもの又は事前復号補助情報である再符号化復号補助情報と、を基に、前時刻の選択パスに繋がる1つ以上の選択パス候補の中から現時刻のパスを選択する。その後、復号部13bは、VA復号とRS復号を行い、復号補助情報を同段の帰還部14cに出力する。
【0051】
帰還部14cは、帰還部14bと同じ処理を行う。更なる後段の複数の復号部13と複数の帰還部14は、復号部13bと帰還部14bと同じ処理をそれぞれ行う。最後に直列接続された最下段の復号部13nは、これまでの複数の復号部13で繰り返し行われた復号結果をデータ処理部に出力する。
【0052】
[復号部13の構成例]
図3は、復号部13の構成例を示す図である。復号部13は、VA復号器131と、デインターリーバ132と、RS復号器133と、現在パス選択情報生成器134と、将来パス選択情報生成器135と、を備える。
【0053】
現在パス選択情報生成器134は、前時刻で生成された将来パス選択情報に含まれる将来パスを現時刻の選択パス候補Aとする。そして、現在パス選択情報生成器134は、復号補助情報及び再符号化復号補助情報を基に現時刻の選択パス候補Bを選択するパス限定を行い、選択パス候補Aに含まれる選択パスを選択パス候補Bの選択パスで更に限定するパス限定を行い、その限定後の選択パスを含む現在パス選択情報を生成する。
【0054】
将来パス選択情報生成器135は、現在パス選択情報に含まれる選択パスに繋がるパスのみを1つ後の時刻の将来パスとして選択するパス限定を行い、将来パスを含む将来パス選択情報を生成する。
【0055】
VA復号器131は、現在パス選択情報を用いてLLRに基づき算出した各パスのBM(ブランチメトリック)を変更する。そして、VA復号器131は、変更後のBMをこれまでに求めた各パスのPM(パスメトリック)にそれぞれ加算し、各パスのPM同士の大小の比較結果に基づきパス選択を行う。その後、VA復号器131は、パス選択の情報に基づいて最尤パスを求め、最尤パスに紐づくビットを出力する。
【0056】
デインターリーバ132は、VA復号器131の出力に対して送信側のインターリーバで行われた符号の順番の並び替えと逆の操作を行う。送信側のインターリーバでは、伝送性能を向上させるため、意味あるデジタル情報のビット列をあえて不連続に配置している。デインターリーバ132は、送信側で行われたデジタル情報のビット列の配置を元の本来の配置に戻している。
【0057】
RS復号器133は、硬判定値である0又は1のビットに基づいてRS復号を行い、その復号結果と誤り訂正の成否判定とを生成する。なお、RS復号は、ブロック符号の復号法の例であり、RS復号器以外の復号器を用いてもよい。
【0058】
[帰還部14の構成例]
図4は、帰還部14の構成例を示す図である。帰還部14は、2つのインターリーバ141a、141bと、2つのセレクタ142a、142bと、再符号化復号結果生成器143と、再符号化成否判定生成器144と、を備える。
【0059】
インターリーバ141aは、復号補助情報の復号結果に対して並び替えを行う。
【0060】
インターリーバ141bは、復号補助情報の成否判定に対して並び替えを行う。
【0061】
セレクタ142aは、VA復号の繰り返し回数が0回の場合には、0(初期値)を選択し、VA復号の繰り返し回数が1回以上の場合には、インターリーバ141aによる並び替え後の復号結果を選択し、選択したものを復号結果として復号部13に入力すると共に、その復号結果を再符号化復号結果生成器143にも入力する。
【0062】
セレクタ142bは、VA復号の繰り返し回数が0回の場合には、0(初期値)を選択し、VA復号の繰り返し回数が1回以上の場合には、インターリーバ141bによる並び替え後の誤り訂正の成否判定を選択し、選択したものを成否判定として復号部13に入力すると共に、その成否判定を再符号化成否判定生成器144にも入力する。
【0063】
再符号化復号結果生成器143は、2つのセレクタ142a、142bから復号結果と成否判定とをそれぞれ入力すると共に、復調結果判定部15から事前復号補助情報の復調結果及び事前成否判定を入力し、その4つの情報を基に再符号化後の再符号化復号結果を生成して復号部13に入力する。
【0064】
再符号化成否判定生成器144は、セレクタ142bから成否判定を入力すると共に、復調結果判定部15から事前復号補助情報の事前成否判定を入力し、その2つの情報を基に再符号化後の成否判定を生成して復号部13に入力する。
【0065】
[再符号化復号結果生成器143の構成例及び動作]
図5は、再符号化復号結果生成器143の構成例を示す図である。再符号化復号結果生成器143は、畳み込み符号化器1431と、2つのセレクタ1432a、1432bと、を備える。
【0066】
畳み込み符号化器1431は、セレクタ142aからの復号結果を畳み込み処理(再符号化)し、再符号化後の復号結果を2つのセレクタ1432a、1432bに入力する。
図5には、符号長が255シンボル、データ長が239シンボルの畳み込み符号化器を例示したが、それ以外の畳み込み符号化器でもよい。
【0067】
2つのセレクタ1432a、1432bは、それぞれ、再符号化後の復号結果と成否判定と復調結果と事前成否判定とを基に、再符号化復号結果を生成する。
【0068】
図6は、再符号化復号結果生成器143の動作例を示す図である。
【0069】
ステップS101;
まず、セレクタ1432が、事前成否判定が1(成功)か0(失敗)かを判定する。
【0070】
ステップS102;
次に、セレクタ1432は、事前成否判定が1の場合には、成否判定が1(成功)か0(失敗)かを判定する。
【0071】
ステップS103;
次に、セレクタ1432は、ステップS101で事前成否判定が0の場合、又は、ステップS102で成否判定が1の場合には、再符号化後の復号結果と復調結果のうち再符号化後の復号結果を再符号化復号結果として出力する。
【0072】
ステップS104;
一方、セレクタ1432は、ステップS102で成否判定が0の場合には、再符号化後の復号結果と復調結果のうち復調結果を再符号化復号結果として出力する。
【0073】
つまり、セレクタ1432は、事前成否判定の成否に関わらず成否判定が1であれば再符号化後の復号結果を選択し、事前成否判定が1かつ成否判定が0であれば復調結果を選択し、成否判定と事前成否判定がどちらも0であれば再符号化後の復号結果を選択する。
【0074】
すなわち、再符号化復号結果生成器143は、伝送品質の指標に基づく事前成否判定は必ずしも正しいとは限らないため、成否判定が1であれば再符号化後の復号結果を選択し、事前成否判定が1かつ成否判定が0である場合に限り復調結果を選択する。これにより、VA復号時の復号性能の劣化を抑制可能となる。
【0075】
[再符号化成否判定生成器144の構成例]
図7は、再符号化成否判定生成器144の構成例を示す図である。再符号化成否判定生成器144は、畳み込み符号化器1441と、2つの論理回路1442a、1442bと、を備える。
【0076】
畳み込み符号化器1441は、セレクタ142bからの成否判定を畳み込み処理(再符号化)し、再符号化後の成否判定を2つの論理回路1442a、1442bに入力する。
図7には、符号長が255シンボル、データ長が239シンボルの畳み込み符号化器を例示したが、それ以外の畳み込み符号化器でもよい。
【0077】
2つの論理回路1442a、1442bは、それぞれ、再符号化後の成否判定と事前成否判定との論理和を計算し、その論理和を再符号化成否判定として出力する。論理和を計算する理由を下記説明する。
【0078】
成否判定や事前成否判定の結果がそもそも間違っているかを判断することは困難なので、上述した通り、本実施形態では、成否判定も事前成否判定も正しい結果が得られていることを前提としている。
【0079】
この場合、成功と判定された符号の総数はパス選択時において単純に増やした方がよいので、成否判定と事前成否判定との少なくともいずれか一方が成功と判定されたものを漏れなく検出するため、論理和を計算している。
【0080】
ただし、どこが誤訂正かは分からないものの、どこかに誤訂正が起こる確率の大きさは成否判定よりも事前成否判定の方が高いので、再符号化復号結果生成器143による再符号化復号結果の選択については、復調結果ではなく再符号化後の復号結果を優先選択する。
【0081】
[復号部13の動作]
まず、VA復号のトレリス線図について説明する。
【0082】
図8は、畳み込み符号化器の例を示す図である。畳み込み符号化器は、シフトレジスタ(D,D)と、排他的論理和(XOR)と、を備える。時刻iにおいて、ビットb
iの入力に対応した畳み込み符号(c
i
(1),c
i
(0))が出力される状況を示している。
【0083】
つまり、この畳み込み符号化器では、1ビットの入力に対して2ビットで構成される符号が出力される。時刻iにおけるシフトレジスタs(1),s(0)の値をsi
(1),si
(0)と表す。si
(1),si
(0)を畳み込み符号化器の内部状態とよぶ。
【0084】
図8の畳み込み符号化器の内部状態の移り変わりは、
図9の状態遷移図で表すことができる。例えば、時刻tにおける内部状態をs
t
(1)=0,s
t
(0)=0とすると、破線のビットb
t=1の入力に対して当該破線上に示した符号(c
t
(1),c
t
(0))=(1,1)が出力されることになり、時刻t+1において内部状態はs
t+1
(1)=1,s
t+1
(0)=0に遷移することになる。
【0085】
図9の状態遷移図を時間方向に展開すると、
図10のトレリス線図が得られる。〇印で表現したトレリスのノードは畳み込み符号化器の内部状態を表し、ノード間の実線パスと破線パスはそれぞれに対応するビットが0と1であることを表し、パス上のラベルは割り当てられた符号であることを表す。
【0086】
トレリス線図にVAを適用して復号を行うことをVA復号という。なお、
図9と
図10は、
図8に例示した畳み込み符号化器に対応する状態遷移図とトレリス線図である。状態遷移図及びトレリス線図は、畳み込み符号化器の構成により異なる。
【0087】
次に、復号部13の動作を説明する。
図11は、復号部13の動作例を示す図である。復号部13は、主として、畳み込み符号のVA復号における符号列に対応したパスの選択に際し、現在の復号補助情報及び現在の再符号化復号補助情報に対応した現在のパスを基に将来のパスを選択する処理を繰り返す。その動作を下記詳述する。
【0088】
ステップS201;
まず、将来パス選択情報生成器135が、有効ノードN1に繋がるパスを初期化する。有効ノードN1とは、前時刻の選択パスの接続先となるノードである。
【0089】
ステップS202;
次に、現在パス選択情報生成器134が、現時刻において、復号補助情報及び再符号化復号補助情報が存在するか否かを判定する。現在パス選択情報生成器134は、その2つの補助情報が存在する場合にはステップS203に進み、その2つの補助情報が存在しない場合には処理を終了する。
【0090】
ステップS203;
次に、現在パス選択情報生成器134は、復号補助情報及び再符号化復号補助情報を基にパスを限定する。具体的には、現在パス選択情報生成器134は、復号補助情報と再符号化復号補助情報の組み合わせパタンに対応するパスを現時刻の選択パス候補Bとして選択(限定)する。パスの限定方法を下記説明する。
【0091】
図10のトレリス線図の場合、現在パス選択情報生成器134は、復号補助情報及び再符号化復号補助情報に基づくVA復号のトレリス線図上のパス限定を
図12のように行うことができる。
図12は、パス限定例を示す図であり、復号補助情報と再符号化復号補助情報を組み合わせパタン毎に、削減可能なパスを灰色で表し、限定後の選択パスを黒色で表している。
【0092】
パタン1~パタン3は復号結果が確定(成否判定が1)した場合であり、パタン4~パタン6は復号結果が未確定(成否判定が0)の場合である。パタン1とパタン4は再符号化復号結果が確定(再符号化成否判定が11)した場合であり、パタン2とパタン5は再符号化復号結果のいくつかが確定(再符号化成否判定が01又は10)した場合であり、パタン3とパタン6は再符号化復号結果が未確定(再符号化成否判定が00)の場合である。
【0093】
図12において、成否判定でも再符号化成否判定でも1となっている箇所があれば、対応するビットが1又は0に確定していることを意味する。例えば、成否判定が1で復号結果が0であれば、ビットが0であることが確定する。再符号化成否判定が01で再符号化復号結果が01であれば、符号の右から1ビット目が1であることが確定する。それ故、成否判定及び再符号化成否判定を基にビットを確定することで、確定したビットに係るパスのみを選択し、それ以外のパスを削減可能となる。
【0094】
具体的には、成否判定が1である場合には、復号結果が0であれば、0という復号結果が確定しているので、デジタル信号のビット値が0(b=0)であることを表す全ての実線パスを選択でき、デジタル信号のビット値が1(b=1)であることを表す全ての破線パスを除外できる。一方、復号結果が1であれば、1という復号結果が成功しているので、全ての破線パスを選択でき、全ての実線のパスを除外できる。これにより、ある時刻でのトレリス線図上のパス削減数の最大数を半分まで増やすことができる。この点は、従来技術と同じである。
【0095】
一方、本実施形態では、復号補助情報に再符号化復号補助情報を組み合わせてパス削減を行う。再符号化成否判定が01である場合には、再符号化復号結果が01であれば、右から1ビット目が1である符号に対応するパスを選択でき、右から1ビット目が0である符号に対応するパスを除外できる。その理由を下記説明する。
【0096】
図8の畳み込み符号化器では、ある時刻tにおいて、1ビットb
tの入力に対して2ビットで構成される符号(c
t
(1),c
t
(0))が出力される。この符号は00,01,10,11のうちいずれかが正しいが、再符号化復号結果が01である場合、右から1ビット目のc
t
(0)が1であるため、正解は01又は11になる。それ故、c
t
(0)が0のパスを除外できる。その結果、00と10の各パスを除外可能となり、01と11の各パスを選択すれば足りる。
【0097】
一方、再符号化復号結果が11であれば、その2ビットのどちらも正しいと分かっていることとなり、再符号化復号結果に含まれる全てのビットが確定していることになるので、事前にct
(1)が1でct
(0)が1であることがわかっていれば、トレリス線図上のパスのラベルが11以外のパスを除外すればよい。事前にわかっていなければ、パスを除外しないようにすればよい。
【0098】
現在パス選択情報生成器134は、成否判定及び再符号化成否判定に基づき除外可能なパスをパスの選択肢から除外し、残るパスのみを選択して現時刻の選択パス候補Bとする。このように、復号補助情報に再符号化復号補助情報を組み合わせてパス削減を行うので、パス削減数の最大数を半分以上に増加可能となる。以降、その2つの補助情報により選択されるパスの接続元のノードを選択ノードN2とよぶ。
【0099】
ステップS204;
以降、現在パス選択情報生成器134は、前時刻の選択パスから想定できる現時刻の選択パス候補Aと、復号補助情報及び再符号化復号補助情報に基づく現時刻の選択パス候補Bと、を用いて、新たなパス選択を行う。なお、現時刻の選択パス候補Aとは、前時刻に生成された将来パス選択情報に含まれる選択パスであり、前時刻の後述するステップS207において、将来パス選択情報生成器135により生成されている。
【0100】
改めて説明するが、前時刻の選択パスの接続先となるノードを有効ノードN1とし、この有効ノードN1に繋がるパスを現時刻の選択パス候補Aとよぶ。また、復号補助情報及び再符号化復号補助情報に基づき選択されるパスを現時刻の選択パス候補Bとし、この選択パス候補Bの接続元のノードを選択ノードN2とよぶ。
【0101】
本実施形態では、有効ノードN1に繋がるパスかつ選択ノードN2に繋がるパスを選択する規則aと、規則aに該当するパスが存在しないなら有効ノードN1に繋がるパスを選択する規則bと、に従ってパスを限定する。
【0102】
そこで、まずは、現在パス選択情報生成器134は、規則aに該当するパスが存在するか否かを判定する。現在パス選択情報生成器134は、規則aに該当するパスが存在する場合にはステップS205に進み、規則aに該当するパスが存在しない場合にはステップS206に進む。
【0103】
ステップS205;
現在パス選択情報生成器134は、規則aに従い、有効ノードN1に繋がるパスかつ選択ノードN2に繋がるパスを現時刻の選択パスとして選択し、その現時刻の選択パスを含む現在パス選択情報を生成(更新)する。
【0104】
図13A及び
図13Bは、規則aに該当する例である。その2つの例の違いは、規則aに該当するパスがどれほど限定されるかにある。
図13Aはパタン6に当てはまるパス限定を行った場合であり、
図13Bはパタン5に当てはまるパス限定を行った場合である。
【0105】
例えば、パタン5に当てはまるパス限定を行った場合には、現在パス選択情報生成器134は、現時刻の選択パス候補A内の有効ノードN1に繋がる2つのパスの中から現時刻の選択パス候補B内の選択ノードN2にも繋がる符号が11の実線のパスを選択する。
【0106】
このように、復号補助情報及び再符号化復号補助情報に基づきパタン1~5に当てはまるパス選択が行われる場合は、
図13Bのように、規則aに該当する選択パス候補Aのパスをより限定できる場合がある。また、
図12のパタン3、4に当てはまるパス選択が行われる場合は、現時刻の復号結果が未確定(成否判定が0)であっても、
図13Bのように、新たなパス選択により現時刻の復号結果を確定できる場合がある。
【0107】
図12からわかるように、現時刻の復号結果が確定できた場合(成否判定が1)には、たとえ次の時刻の復号結果と再符号化復号結果が未確定(成否判定が0、再符号化成否判定が00)であっても、次時刻のパスを半分以上削減可能となる。また、現時刻の復号結果が確定できなかった場合(成否判定が0)には、たとえ次の時刻の復号結果と再符号化復号結果が未確定(成否判定が0、再符号化成否判定が00)であっても、次時刻のパスをいくらか削減可能となる。
【0108】
現時刻以降も
図13のようなパス限定が行われ続けるなら、次時刻以降もパスの削減が行われ続けることになる。ただし、
図12のパタン1、2、4、5に当てはまるパス限定が行われる場合には、再符号化復号補助情報に含まれる誤訂正により間違いのパスが選択される場合がある。
【0109】
ステップS206;
復号補助情報及び再符号化復号補助情報に基づき
図12のパタン1、2、4、5に当てはまるパス限定が行われる場合には、規則bに該当する場合がある。この場合、上述の通り、再符号化復号補助情報に含まれる誤訂正により間違いのパスが選択される場合があるため、再符号化復号補助情報によらずにパスを選択する。
【0110】
具体的には、現在パス選択情報生成器134は、規則bに従い、有効ノードN1に繋がるパスを現時刻の選択パスとして選択し、その現時刻の選択パスを含む現在パス選択情報を生成(更新)する。
【0111】
図14は、規則bに該当する例である。現在パス選択情報生成器134は、復号補助情報及び再符号化復号補助情報に基づき
図12のパタン4に当てはまるパス限定を行ったが、有効ノードN
1に繋がる2つのパスはいずれもパタン4に当てはまらないので、有効ノードN
1に繋がる2つのパスを選択する。
【0112】
ステップS207;
その後、将来パス選択情報生成器135は、現在パス選択情報生成器134により生成された現時刻の選択パスを含む現在パス選択情報から、次時刻の選択パスを含む将来パス選択情報を生成(更新)する。
【0113】
具体的には、将来パス選択情報生成器135は、現時刻の選択パスの接続先となるノード(=有効ノードN1)に繋がるパスのみを将来の選択パス候補とするパス限定を行い、そのパスを含む将来パス選択情報を生成する。この将来の選択パス候補が、ステップS204~ステップS206において次時刻の選択パス候補Aとして用いられることになる。
【0114】
その後、ステップS202へ戻り、復号部13は、復号補助情報及び再符号化復号補助情報が存在する限り、前時刻の選択パスに繋がるパスを現時刻の選択パス候補Aとして限定するパス限定(ステップS207)と、その2つの補助情報に基づくパスを現時刻の選択パス候補Bとして限定するパス限定(ステップS203)と、それら2つのパス限定を用いた更なるパス限定(ステップS205)と、を繰り返し行う。
【0115】
その後、復号部13において、VA復号器131は、現在パス選択情報を基にVA復号を行う。VA復号では、入力となる硬判定値又は軟判定値に基づいて算出した各パスのBMを用いて最尤パスを選択することで復号を行う。パスの選択は、パスの選択状況によって各パスのBMを適宜変更することで行う。
【0116】
例えば、VA復号器131は、入力に硬判定値の復調結果を用いる場合には、選択パスのBMを取り得る最小値に置き換えたり、除外パスのBMを取り得る最大値に置き換えたりする。VA復号器131は、入力に軟判定値であるLLRを用いる場合には、選択パスのBMを取り得る最大値に置き換えたり、除外パスのBMを取り得る最小値に置き換えたりする。その後、VA復号器131は、変更後のBMを各パスのPMにそれぞれ加算し、各パスのPM同士の大小の比較結果に基づいて最尤パスを求め、最尤パスに紐づくビットを出力する。
【0117】
ここまで、復号部13の動作について説明した。
【0118】
復号部13の動作を纏めると、復号部13は、規則aに該当する場合には、前時刻に生成された将来パス選択情報によるパス限定と現時刻の2つの補助情報によるパス限定とにより絞り込んだ現在パス選択情報を生成し、現在パス選択情報に含まれる現時刻のパスに繋がるパスを次時刻のパスとして限定した将来パス選択情報を生成することを、繰り返し行う。
【0119】
一方、復号部13は、規則bに該当する場合には、前時刻に生成された将来パス選択情報により絞り込んだ現在パス選択情報を生成し、現在パス選択情報に含まれる現時刻のパスに繋がるパスを次時刻のパスとして限定した将来パス選択情報を生成することを、繰り返し行う。
【0120】
これらにより、前時刻と現時刻のパス限定の結果が、次時刻のパス限定に影響を及ぼすことになる。このようなVA復号を繰り返すことにより、復号結果が確定しないことにより選ばれるパスや事前復号補助情報に含まれる可能性がある誤訂正により選ばれるパス等、不適当と思われるパスを削減していくことで、正しいパスがより選択されやすいようになる。
【0121】
[効果]
本実施形態によれば、復号部13が、畳み込み符号のVA復号における符号列に対応したパスの選択に際し、現在の復号補助情報及び現在の再符号化復号補助情報に対応した現在のパスを基に将来のパスを選択するので、パス削減の機会が増加し、パス削減数の最大数が増加し、パス削減の効果の時間的な長さが長くなる。その結果、従来よりもパス選択を適切に実施可能となり、高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供可能となる。
【0122】
また、本実施形態によれば、復号部13は、現在の復号補助情報及び現在の再符号化復号補助情報に対応したパスかつ過去に選択されたパスに繋がるパスを現在のパスとして選択し、現在のパスに繋がるパスを将来のパスとして選択するので、パス削減の機会が更に増加し、パス削減数の最大数が更に増加し、パス削減の効果の時間的な長さが更に長くなる。その結果、パス選択をより適切に実施可能となり、より高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供可能となる。
【0123】
また、本実施形態によれば、復号部13は、現在のパスを選択できない場合、過去に選択されたパスに繋がるパスを現在のパスとして選択するので、再符号化復号補助情報での誤訂正の発生により間違いのパスが選択されるデメリットを抑制できる。その結果、更に高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供可能となる。
【0124】
また、本実施形態によれば、帰還部14は、復号補助情報を再符号化したもの又は事前復号補助情報を再符号化復号補助情報として復号部13へ帰還し、ビットの誤り訂正が失敗しかつ受信信号の復調結果が正しいと判定される場合に限り、事前復号補助情報を帰還するので、事前復号補助情報を使用したことで間違いのパスが選択されるデメリットを抑制できる。その結果、更に高い誤り訂正能力を備えた誤り訂正技術を提供可能となる。
【0125】
[その他]
本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の要旨の範囲内で数々の変形が可能である。本実施形態に係る誤り訂正装置は、本実施形態で説明した機能を実行するハードウェアの回路で実現してもよいし、その機能を実行するソフトウェアプログラムの機能部で実現してもよい。
【符号の説明】
【0126】
1:受信機(誤り訂正装置)、11:受信部、12:復調部、13:復号部、14:帰還部、15:復調結果判定部、16:データ処理部、17:LLR入力遅延用のバッファ、18:事前復号補助情報入力遅延用のバッファ、131:VA復号器、132:デインターリーバ、133:RS復号器、134:現在パス選択情報生成器、135:将来パス選択情報生成器、141a,141b:インターリーバ、142a,142b:セレクタ、143:再符号化復号結果生成器、144:再符号化成否判定生成器、1431:畳み込み符号化器、1432a,1432b:セレクタ、1441:畳み込み符号化器、1442a,1442b:論理回路、