(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173226
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】回転電機用ステータの製造方法及び回転電機用ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/38 20060101AFI20231130BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20231130BHJP
H02K 15/12 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H02K3/38 A
H02K3/50 A
H02K15/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085337
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 武
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604CC01
5H604DB01
5H604PC01
5H604QB01
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP14
5H615PP15
5H615SS41
(57)【要約】
【課題】バスバー部材とコイルエンドとの間の軸方向の位置関係にばらつきが生じうる構成においても、バスバー部材とコイルエンドとの間に、必要な軸方向の絶縁距離を確保しやすくする。
【解決手段】ステータコアと、ステータコイルと、軸方向一端側のコイルエンドに対して軸方向外側に配置され、導体部と絶縁材料部とが一体化された形態であり、導体部の端部が絶縁材料部から露出するバスバー部材と、バスバー部材の導体部の端部と、ステータコイルの端部とを接合する接合部と、軸方向でバスバー部材とコイルエンドとの間に、バスバー部材及びコイルエンドに接合する接合材料部とを備え、絶縁材料部は、コイルエンドに向けて軸方向に突出する突起部を有し、突起部は、軸方向一端側のコイルエンドに軸方向に対向し、かつ、接合材料部の軸方向外側の端部位置よりも軸方向内側まで延在する、回転電機用ステータが開示される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアに装着され、軸方向両端にコイルエンドを有するステータコイルと、
軸方向一端側のコイルエンドに対して軸方向外側に配置され、導体部と絶縁材料部とが一体化された形態であり、前記導体部の端部が前記絶縁材料部から露出するバスバー部材と、
前記バスバー部材の前記導体部の端部と、前記ステータコイルの端部とを接合する接合部と、
前記バスバー部材と前記軸方向一端側のコイルエンドに接合する接合材料部とを備え、
前記絶縁材料部は、前記軸方向一端側のコイルエンドに向けて軸方向に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記軸方向一端側のコイルエンドに軸方向に対向し、かつ、前記接合材料部の軸方向外側の端部位置よりも軸方向内側まで延在する、回転電機用ステータ。
【請求項2】
前記突起部は、軸方向に視て、前記接合材料部と重ならない位置に設けられる、請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項3】
前記接合材料部は、
弾性を有する接着剤保持部材に液状の接着剤を含浸して形成される本体部と、
前記本体部の軸方向外側の表面及び前記絶縁材料部の軸方向内側の表面に接着する両面テープと、を有する、請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項4】
導体部と絶縁材料部とが一体化された形態のバスバー部材であって、前記絶縁材料部が、軸方向の突起部を有するバスバー部材を準備する第1準備工程と、
弾性を有し、液状の接着剤を保持可能な接着剤保持部材を準備する第2準備工程と、
ステータコアにステータコイルを装着し、軸方向両側にコイルエンドを有する組立体を形成する装着工程と、
前記第1準備工程で準備した前記バスバー部材と、前記装着工程で形成した前記組立体と、前記第2準備工程で準備した前記接着剤保持部材とを用いて、前記バスバー部材が軸方向一端側のコイルエンドに対して軸方向外側に位置する配置状態を形成する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記バスバー部材の前記導体部の端部と、前記ステータコイルの端部とを接合しつつ、前記接着剤保持部材が前記軸方向一端側のコイルエンドに軸方向に当接した当接状態を形成する接合工程と、
前記接合工程の後に、前記接着剤保持部材に液状の接着剤を含浸させる含浸工程と、
前記液状の接着剤を硬化させる工程とを含み、
前記配置状態において、前記突起部は、前記軸方向一端側のコイルエンドに軸方向に対向し、かつ、前記接着剤保持部材の軸方向外側の端部位置よりも軸方向内側まで延在する、回転電機用ステータの製造方法。
【請求項5】
前記当接状態は、前記接着剤保持部材は軸方向に圧縮された状態を含む、請求項4に記載の回転電機用ステータの製造方法。
【請求項6】
前記含浸工程は、前記軸方向一端側のコイルエンドが下側に向く姿勢で、軸方向他端側のコイルエンドよりも上方から前記液状の接着剤を滴下することで、前記接着剤保持部材に対して前記突起部よりも前記軸方向他端側から前記液状の接着剤を含浸させることを含む、請求項4に記載の回転電機用ステータの製造方法。
【請求項7】
前記配置工程は、前記第1準備工程で準備した前記バスバー部材に前記第2準備工程で準備した前記接着剤保持部材を接合して形成されるサブ組立体を、前記装着工程で形成した前記組立体に対して配置することを含む、請求項4に記載の回転電機用ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機用ステータの製造方法及び回転電機用ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
導体部(バスバー)と絶縁材料部とが一体化された端子台の形態のバスバー部材とコイルエンドとの間の固定強度を確保するために、バスバー部材とコイルエンドとの間に、接着剤を保持できる接着剤保持部材を設ける技術が知られている。この場合、製造工程で接着剤保持部材に保持させた接着剤を硬化させることで、接着剤保持部材が接合材料部としてバスバー部材とコイルエンドとに接合し、両者の固定強度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バスバー部材とコイルエンドとの間の軸方向の位置関係は、各種の製造公差や寸法公差の影響でばらつきが生じやすい。他方、バスバー部材とコイルエンドとの間には、必要な軸方向の絶縁距離が確保されることが有用である。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、バスバー部材とコイルエンドとの間の軸方向の位置関係にばらつきが生じうる構成においても、バスバー部材とコイルエンドとの間に、必要な軸方向の絶縁距離を確保しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、ステータコアと、
前記ステータコアに装着され、軸方向両端にコイルエンドを有するステータコイルと、
軸方向一端側のコイルエンドに対して軸方向外側に配置され、導体部と絶縁材料部とが一体化された形態であり、前記導体部の端部が前記絶縁材料部から露出するバスバー部材と、
前記バスバー部材の前記導体部の端部と、前記ステータコイルの端部とを接合する接合部と、
前記バスバー部材と前記軸方向一端側のコイルエンドに接合する接合材料部とを備え、
前記絶縁材料部は、前記軸方向一端側のコイルエンドに向けて軸方向に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記軸方向一端側のコイルエンドに軸方向に対向し、かつ、前記接合材料部の軸方向外側の端部位置よりも軸方向内側まで延在する、回転電機用ステータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、バスバー部材とコイルエンドとの間の軸方向の位置関係にばらつきが生じうる構成においても、バスバー部材とコイルエンドとの間に、必要な軸方向の絶縁距離を確保しやすくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1B】バスバー部材を取り外した状態のステータの一部を示す斜視図である。
【
図2】組み付け状態の4つの同芯巻きコイルだけを取り出した斜視図である。
【
図3】同芯巻きコイルの単品状態を示す斜視図である。
【
図6】バスバー部材とコイルエンドとの固定構造の一例を説明するための概略的な断面図である。
【
図6A】本実施例による突起部の配置例の説明図であり、絶縁材料部を軸方向内側から視て示す概略的な平面図である。
【
図6B】変形例による突起部の配置例の説明図であり、絶縁材料部を軸方向内側から視て示す概略的な平面図である。
【
図7】成形部の内部を透視図により模式的に示す側面図である。
【
図8】バスバー部材の配置(軸方向の位置)が軸方向内側であるときのバスバー部材とコイルエンドとの軸方向の位置関係を説明するための概略的な断面図である。
【
図9】第1比較例によるバスバー部材とコイルエンドとの固定構造の一例を説明するための概略的な断面図である。
【
図10】第2比較例によるバスバー部材とコイルエンドとの固定構造の一例を説明するための概略的な断面図である。
【
図11】ステータの製造方法の流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図12】単品状態のバスバー部材の概略的な断面図である。
【
図13】
図11の製造方法の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図14】
図11の製造方法の他の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図15】
図11の製造方法の他の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図16】
図11の製造方法の他の一工程を説明する概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。なお、
図1A等では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0010】
図1Aは、ステータ21の一部を示す斜視図である。
図1Bは、バスバー部材70を取り外した状態のステータ21の一部を示す斜視図である。
図2は、組み付け状態の4つの同芯巻きコイル20だけを取り出した斜視図である。
図3は、同芯巻きコイル20の単品状態を示す斜視図である。なお、
図1Aにおいて、Y方向は、径方向に対応し、Y1側が径方向外側に対応し、Y2側が径方向内側(ステータ21の中心軸Iに近い側)を表す。なお、
図1A及び
図1Bでは、バスバー80及びバスバー81に係る後述の成形部60の図示が省略されている。
【0011】
以下の説明において、軸方向とは、ステータ21の中心軸I(
図6等参照)が延在する方向を指し、径方向とは、中心軸Iを中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、中心軸Iから離れる側を指し、径方向内側とは、中心軸Iに向かう側を指す。また、軸方向外側とは、ステータ21の軸方向の中心から離れる側を指し、軸方向内側とは、ステータ21の軸方向の中心に近づく側を指す。また、周方向とは、中心軸Iまわりの回転方向に対応する。
【0012】
ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコア211を備え、ステータコア211の径方向内側には、ステータコイル22が巻回される複数のスロット2111が形成される。スロット2111は、周方向に等間隔に複数形成される。なお、スロット2111の数や形状等は任意である。
【0013】
ステータコイル22は、例えば、
図2及び
図3に示すような、いわゆる同芯巻きコイル20の形態であり、それぞれ、所定巻回数で巻回された平角線が曲げ加工されることにより成形されるカセットコイルである。ステータコイル22は、断面が矩形状(具体的には、長方形)に形成された平角線を含む。この平角線は、導電性の高い例えば銅やアルミニウム等の金属により構成されてよい。ステータコイル22は、平角線が絶縁性の被覆により覆われてよい。
【0014】
図2に示す例では、周方向に90度ずつ離れた4つの同芯巻きコイル20が、一の同芯巻きコイル20の第2渡り線240が、当該一の同芯巻きコイル20に隣接する他の一の同芯巻きコイル20の第3渡り線250に接合する関係で、互いに接続されている。
【0015】
各同芯巻きコイル20はそれぞれ、所定巻回数で巻回された形態のカセットコイルである。なお、所定巻回数は任意であり、
図1A及び
図1Bに示すような、より多い巻回数であってもよい。
【0016】
各同芯巻きコイル20はそれぞれ、
図3に示すように、スロット収容部230、232と、第1渡り線234、236と、第2渡り線240と、第3渡り線250とを有している。なお、スロット収容部230、232及び第1渡り線234、236は、同芯巻きコイル20の本体部(略六角形状の閉ループ部)を形成する。第1渡り線236は、第2渡り線240及び第3渡り線250とともに、軸方向一方側(リード側)のコイルエンドを形成し、第1渡り線234は、軸方向一方側(反リード側)のコイルエンドを形成する。なお、
図3に示す例では、一の同芯巻きコイル20は、スロット収容部230、232、第1渡り線234、236をそれぞれ複数含むのに対して、第2渡り線240及び第3渡り線250はそれぞれ1つだけ含む。
【0017】
スロット収容部230、232はそれぞれ、ステータコア211のスロット2111内に挿入(収容)される、そのスロット2111を軸方向に貫くように略直線状に延びる部位である。同一の同芯巻きコイル20において、スロット収容部230とスロット収容部232とは、ステータコア211の周方向に所定距離離れた互いに異なるスロット2111に収容される。
【0018】
第1渡り線234、236はそれぞれ、スロット収容部230、232に接続するとともに、ステータコア211の軸方向端面から軸方向外側に向けて突出した、周方向に離れた2つのスロット収容部230、232同士を繋ぐ部位である。第1渡り線236は、頂部2361と、斜行部2362、2363とを含む。なお、第1渡り線234についても同様であるが、ここでは符合を付していない。
【0019】
第2渡り線240及び第3渡り線250は、周方向に離れた2つの同芯巻きコイル20のスロット収容部230、232同士を繋ぐ。
【0020】
第2渡り線240は、
図3に示すように、複数の曲げ加工を介して成形されてよい。具体的には、第2渡り線240は、第1斜行部2402と、第1エッジワイズ曲げ部2404と、第1直線部2406と、第1フラットワイズ曲げ部2408と、第2直線部2410と、第2エッジワイズ曲げ部2412と、第3直線部2414と、第3エッジワイズ曲げ部2416と、第4直線部2418とを含む。なお、第1斜行部2402は、スロット収容部230の端部2302から形成される。スロット収容部230の端部2302は、スロット収容部230の軸方向外側に延在する部位を周方向外側(周方向でスロット収容部230、232間の中心から離れる側)に向けてエッジワイズ曲げして形成される。
図3に示す例では、第1斜行部2402は、直線的に延在する直線部であるが、エッジワイズ曲げ部を含む階段状の形態で全体として斜め方向に延在してもよい。
【0021】
第3渡り線250は、
図3に示すように、複数の曲げ加工を介して成形されてよい。具体的には、第3渡り線250は、第2斜行部2502と、第4エッジワイズ曲げ部2504と、第5直線部2506と、第2フラットワイズ曲げ部2508と、第6直線部2510とを含む。なお、第2斜行部2502は、スロット収容部232の端部2322から形成される。スロット収容部232の端部2322は、スロット収容部232の軸方向外側に延在する部位を周方向外側(周方向でスロット収容部230、232間の中心から離れる側)に向けてエッジワイズ曲げして形成される。
図3に示す例では、第2斜行部2502は、直線的に延在する直線部であるが、エッジワイズ曲げ部を含む階段状の形態で全体として斜め方向に延在してもよい。
【0022】
このようにして、第2渡り線240及び第3渡り線250は、各種の曲げ部(第1エッジワイズ曲げ部2404等)を有する。なお、ここでは、同芯巻きコイル20の特定の構成について説明したが、同芯巻きコイル20の詳細な構成については、任意である。例えば、第2渡り線240及び第3渡り線250の形状等は任意である。
【0023】
また、各同芯巻きコイル20のうち、後述するバスバー部材70と接合する同芯巻きコイル20は、
図3(
図2)に示した形態と若干異なる形態を有してよい。例えば、第2渡り線240は、第1フラットワイズ曲げ部2408から第3エッジワイズ曲げ部2416までの部分が曲げ成形されない形態であってもよい。
【0024】
また、同芯巻きコイル20のような同芯巻きコイルとは異なる形態のコイル片(例えばU字状の形態のコイル片)がステータコイル22を形成してもよい。以下では、ステータコイル22は、平角線が絶縁性の被覆により覆われた構成であるとし、「一のコイル導線22a」とは、特に言及しない限り、ステータコイル22を形成する複数のコイル導線のうちの、任意の一のコイル導線を指す。
【0025】
複数のコイル導線22aは、上述したように(
図1Aも参照)、ステータコア211のスロット2111に収容され、かつ、スロット2111よりも軸方向外側に延在する端部同士が接合される。
図2及び
図3に示す同芯巻きコイル20では、スロット収容部230、232がステータコア211のスロット2111に収容され、かつ、スロット2111よりも軸方向外側に延在する第2渡り線240と第3渡り線250の端部同士(第4直線部2418の端部と第6直線部2510の端部)が接合される。コイル導線22aの端部同士の接合は、溶接等により実現されてよい。この場合、コイル導線22aの端部は、少なくとも一部の被覆が除去された状態(すなわち端部の導体部22A(
図7参照)が露出した状態)で重ね合わされ、被覆が除去された部分同士が溶接により接合されてよい。この場合、溶接は、レーザ溶接やTIG溶接のような任意の方法で実現されてよい。以下、このようにして端部同士が重ね合わされて接合されたコイル導線22aの2つの端部を、「接合部402」とも称する。
【0026】
複数のコイル導線22aは、接合部402に成形材料の成形部60を有してよい。成形部60は、複数のコイル導線22aの接合部402全体を覆う。成形部60は、複数のコイル導線22aの接合部402に係る電気的な絶縁性を確保する機能を有する。すなわち、複数のコイル導線22aの接合部402は、上述したように接合の際に被覆が除去されるので、成形部60は、当該被覆が除去された部分全体を覆うことで、被覆と同様の機能を果たす。この機能を実現するために、成形材料は、導電性のない材料である。例えば、成形材料は、樹脂材料(PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)を含む樹脂材料)であり、成形部60は、樹脂材料の成形部である。成形部60は、樹脂材料の射出成形により形成されてよい。
【0027】
図4は、成形部60の説明図である。なお、
図4において、X方向は、周方向に沿った方向に対応する。
図5は、他の態様の成形部60Aの説明図である。
図5において、Z方向は軸方向に平行な方向を表し、Z1側が、
図5に示すコイルエンドに対する軸方向外側に対応する。
【0028】
成形部60は、周方向に隣り合う2組の接合部402に対して1つずつ設けられる。なお、
図4では、成形部60は、周方向に隣り合う2組の接合部402ごとに1つずつ設けられるが、1組の接合部402ごとに1つずつ設けられてもよいし、周方向に隣り合う3組以上の接合部402ごとに1つずつ設けられてもよい。なお、
図4では、成形部60は、上下方向に型締めされて成形されるが、
図5に示す成形部60Aのように、径方向に型締めされて形成される形態であってもよい。
【0029】
ここで、
図1Aを再度参照するに、リード側コイルエンドには、バスバー部材70が配置される。
【0030】
バスバー部材70は、バスバー80、81と絶縁材料部90とが一体化された形態であり、バスバー80、81が絶縁材料部90から径方向に延在する。絶縁材料部90は、例えば樹脂材料により形成される部位である。この場合、バスバー部材70は、インサート成形により形成されてもよい。
【0031】
バスバー80は、絶縁材料部90から露出した部分が径方向内側に延在する。バスバー80は、絶縁材料部90から露出した部分が周方向に並ぶ態様で、複数設けられる。バスバー80のそれぞれは、その端部801がコイル導線22aの端部(導体部22A)に接合される。なお、バスバー80の端部801とコイル導線22aの端部との間の接合についても、上述したコイル導線22aの端部同士の接合方法と同様の方法で実現されてよい。また、バスバー80の端部801とコイル導線22aの端部との間の接合部402には、
図5に示す成形部60Aと同様の成形部60A(後出の
図6参照)が形成されてよい。
【0032】
バスバー81は、絶縁材料部90から露出した部分が径方向外側に延在する。バスバー81は、絶縁材料部90から露出した部分が周方向に並ぶ態様で、複数設けられる。バスバー81のそれぞれは、その端部811がコイル導線22aの端部(導体部22A)に接合される(
図7参照)。なお、バスバー81の端部811とコイル導線22aの端部との間の接合についても、上述したコイル導線22aの端部同士の接合方法と同様の方法で実現されてよい。また、バスバー81の端部811とコイル導線22aの端部との間の接合部402には、
図4に示す成形部60と同様の成形部60(
図6や
図7参照)が形成されてよい。
【0033】
なお、バスバー部材70に保持されるバスバー80、81は、絶縁材料部90から露出する端部が動力線接続端子又は中性線接続端子を形成してよい。複数のバスバー80、81のうちの、動力線接続端子を形成するバスバー80、81は、バスバー部材70内において3相の外部端子71に電気的に接続される。また、複数のバスバー80、81のうちの、中性線接続端子を形成する対のバスバー80、81は、バスバー部材70内において互いに電気的に接続される。なお、中性線接続端子を形成する各対のバスバー80、81は、それぞれ一ピースのバスバー(板金部材)により形成されてもよい。
【0034】
次に、
図6以降を参照して、本実施例のバスバー部材70とコイルエンドとの固定構造について詳説する。
【0035】
図6は、バスバー部材70とコイルエンドとの固定構造の一例を説明するための概略的な断面図であり、中心軸Iを通る平面による断面図である。
図6Aは、本実施例による突起部92の配置例の説明図であり、絶縁材料部90を軸方向内側から視て示す概略的な平面図である。
図6Bは、変形例による突起部92Aの配置例の説明図であり、絶縁材料部90を軸方向内側から視て示す概略的な平面図である。
図6A及び
図6Bには、接合材料部50、50Aの配置範囲の一例が点線で模式的に示されている。
図7は、成形部60の内部を透視図で模式的に示す側面図である。
【0036】
なお、本実施例では、
図2及び
図3を参照して上述したように、ステータコイル22のコイルエンドは、リード側において、ステータコア211の軸方向一方側で周方向に延在する第1渡り線236と、第2渡り線240と、第3渡り線250とを含む。バスバー部材70が設けられる周方向範囲では、
図6に概略的に示すように、第2渡り線240は、第1渡り線236の径方向内側で軸方向に延在し、軸方向外側の端部がバスバー80の端部801と接合する。また、バスバー部材70が設けられる周方向範囲では、
図6及び
図7に概略的に示すように、第3渡り線250は、第1渡り線236の径方向外側で、径方向外側に延在し、径方向外側の端部がバスバー81の端部811と接合する。
図7には、第3渡り線250の第6直線部2510の導体部22Aとバスバー81の端部811との間の接合部402が透視図により模式的に示されている。なお、バスバー80と第2渡り線240との間の接合部402についても、図示しないが、基本的に同様である。
【0037】
本実施例では、
図6に模式的に示すように、軸方向で第1渡り線236とバスバー部材70との間に、接合材料の部位50(以下、「接合材料部50」と称する)が設けられる。接合材料部50は、軸方向で第1渡り線236とバスバー部材70との間に設けられ、第1渡り線236とバスバー部材70とに接合する。
【0038】
本実施例では、接合材料部50は、絶縁性を有し、本体部501と、両面テープ502とを含む。
【0039】
本体部501は、弾性を有する接着剤保持部材(
図12の接着剤保持部材51参照)に液状の接着剤を含浸して形成される。この場合、接着剤保持部材は、液状の接着剤が浸透された状態で当該接着剤を保持可能に構成される。すなわち、接着剤保持部材は、液状の接着剤が浸透可能な網目状構造又は多孔質構造を有する。このような接着剤保持部材としては、ここでの参照により本願明細書に組み込まれる特開2019-115178号公報に開示されるような接着剤保持部材を好適に用いることができる。また、接着剤保持部材は、不織布により形成されてもよく、あるいは、不織布を含んで形成されてもよい。なお、液状の接着剤は、絶縁性を有する接着剤であり、例えばワニスであってよい。本体部501は、
図11以降を参照して後述する製造方法に関連して説明するように、圧縮された状態の接着剤保持部材に含浸された液状の接着剤が硬化されることで、形成されてよい。
【0040】
両面テープ502は、本体部501の軸方向外側の表面及びバスバー部材70の絶縁材料部90の軸方向内側の表面(以下、「接合面910」とも称する)に接着する。両面テープ502は、絶縁性を有し、かつ適切な耐油性及び耐熱性を有する任意の材料により形成されてもよい。両面テープ502は、例えば熱硬化性樹脂材料を含んでもよい。この場合、両面テープ502は、例えば、ここでの参照により本願明細書に組み込まれる特開2019-103314号公報や特開2019-115170号公報に開示されるような熱硬化性樹脂組成物シート等を含む態様で形成されてもよい。このような両面テープ502を有することで、後述する製造方法による製造時の組み付け性が向上する。
【0041】
接合材料部50は、軸方向で第1渡り線236とバスバー部材70との間に延在し、かつ、第1渡り線236とバスバー部材70とに接合することで、第1渡り線236とバスバー部材70との間で生じうる振動を無くす又は低減する機能(以下、「振動低減機能」と称する)を有する。
【0042】
接合材料部50は、好ましくは、バスバー部材70の周方向全長にわたって振動低減機能を発現できるように、バスバー部材70の周方向全長にわたって周方向に延在してよい。同様に、接合材料部50は、好ましくは、バスバー部材70の径方向全長にわたって振動低減機能を発現できるように、バスバー部材70の径方向全長にわたって径方向に延在してよい。
【0043】
本実施例では、接合材料部50は、軸方向に視て、バスバー部材70に重なる範囲内に延在する。この場合、後述するように、接着剤保持部材に液状の接着剤(例えばワニス)を含浸させる際に、バスバー部材70側を下側にする下向き姿勢で、上側(バスバー部材70が設けられる軸方向一方側に対して軸方向逆側)から液状の接着剤を滴下することで、液状の接着剤を接着剤保持部材に浸透させることができる。
【0044】
ただし、変形例では、接合材料部50は、軸方向に視て、バスバー部材70よりも径方向内側に延在してもよい。この場合、接着剤保持部材に液状の接着剤(例えばワニス)を含浸させる際に、軸方向に視て、バスバー部材70よりも径方向内側の位置から液状の接着剤を滴下して、液状の接着剤を接着剤保持部材に浸透させることができる。あるいは、他の変形例では、接着剤保持部材は、軸方向に視て、バスバー部材70よりも径方向内側に延在することに代えて又は加えて、バスバー部材70よりも径方向外側に延在してもよい。この場合も、軸方向に視て、バスバー部材70よりも径方向外側の位置から液状の接着剤を滴下して、液状の接着剤を接着剤保持部材に浸透させることができる。
【0045】
ところで、特に、車両環境においては、路面からの入力や、内燃機関を搭載する車両では内燃機関からの入力等に起因して、ステータ21を含む回転電機が加振されやすい。また、特に、バスバー部材70は、第2渡り線240等に比べて有意に大きい質量を有し、振動しやすい。バスバー部材70が振動すると、バスバー部材70のバスバー80、81とコイル導線22aの端部との間の接合部402(
図7の接合部402参照)の信頼性が低下するおそれがある。
【0046】
本実施例によれば、上述したように、軸方向で第1渡り線236とバスバー部材70との間に接合材料部50が設けられるので、接合材料部50の振動低減機能によって、接合部402の際(きわ)やその近傍での応力集中を低減でき、バスバー部材70のバスバー80、81とコイル導線22aの端部との間の接合部402の信頼性を高めることができる。
【0047】
次に、
図6、
図6A、
図8から
図10を参照して、本実施例の更なる特徴的な構成及び更なる効果について説明する。
【0048】
図8は、バスバー部材70とコイルエンドとの軸方向の位置関係の一例を説明するための概略的な断面図であり、中心軸Iを通る平面による断面図である。
図8は、
図6に比べて、バスバー部材70の配置(コイルエンドに対する軸方向の位置)が、軸方向内側である点が異なる。
図9は、第1比較例によるバスバー部材70’とコイルエンドとの固定構造の一例を説明するための概略的な断面図であり、中心軸Iを通る平面による断面図である。
【0049】
本実施例では、
図6、
図6A及び
図8に示すように、バスバー部材70の絶縁材料部90は、コイルエンドに向けて軸方向に突出する突起部92を有する。突起部92は、コイルエンドに軸方向に対向する。すなわち、突起部92は、軸方向に視て、コイルエンドに重なる態様で設けられる。突起部92は、接合面910から高さH10を有する態様で、軸方向に突出する。なお、突起部92は、絶縁材料部90と一体に形成されるが、別ピースとして形成され、絶縁材料部90と一体化されてもよい。
【0050】
突起部92は、後述するように、バスバー部材70とコイルエンド(ステータコイル22)との間に、必要な軸方向の絶縁距離を確保する機能を有する。より具体的には、突起部92は、絶縁材料部90中のバスバー81、82と、ステータコイル22の軸方向最も外側のコイル導線22aとの間の軸方向の離間距離(以下、単に、「バスバー81、82とコイルエンドとの間の軸方向の離間距離」とも称する)を、必要な軸方向の絶縁距離以上に維持する機能を有する。
【0051】
ところで、バスバー部材70の軸方向の位置(及びそれに関連してコイルエンドとバスバー部材70の間の軸方向の位置関係)は、各種の製造公差や寸法公差の影響でばらつきが生じやすい。特に、バスバー部材70の軸方向の位置は、主に、バスバー80と第2渡り線240との間の接合部402の位置、及び、バスバー81と第3渡り線250との間の接合部402の位置に依存する。これらの接合部402の位置は、各種の製造公差や寸法公差の影響で、比較的大きくばらつきやすい。
【0052】
この点、
図9に示す第1比較例によるバスバー部材70’の場合、絶縁材料部90’が突起部92を備えていないため、バスバー81、82とコイルエンドとの間の軸方向の離間距離が、必要な軸方向の絶縁距離未満となるおそれがある。なお、
図9に示す例では、バスバー部材70’の接合面910とコイルエンドとは軸方向でわずかに離れているが、バスバー81、82とコイルエンドとの間の軸方向の離間距離が実質的にゼロになる場合もありうる。
【0053】
これに対して、本実施例では、突起部92は、接合材料部50の軸方向外側の端部位置(すなわち、接合面910の軸方向位置)よりも軸方向内側まで延在する。従って、本実施例によれば、少なくとも突起部92の高さH10分は、
図9に示す第1比較例に比べて、バスバー81、82とコイルエンドとの間の軸方向の離間距離を広げることができる。このようにして、本実施例によれば、バスバー部材70とコイルエンドとの間の軸方向の位置関係にばらつきが生じうる構成においても、バスバー部材70とコイルエンドとの間に、必要な軸方向の絶縁距離を確保しやすくすることができる。
【0054】
本実施例において、突起部92の高さH10は、バスバー81、82とコイルエンドとの間の軸方向の離間距離に関する必要な軸方向の絶縁距離に基づいて、当該必要な軸方向の絶縁距離が確保されるように設定されてよい。例えば、バスバー81、82の軸方向最も内側の端部と接合面910との間の距離をL1(図示せず)とし、バスバー81、82とコイルエンドとの間の軸方向の離間距離に関する必要な軸方向の絶縁距離を、L2(図示せず)としたとき、H10≧L2-L1とされてよい。この場合、
図8に示すように、突起部92の軸方向端面がコイルエンドに当接する場合でも、突起部92の高さH10よりも大きい絶縁距離を確保できる。なお、
図8に示す例では、
図6に示す例で確保されている隙間Δ(突起部92の軸方向端面とコイルエンドとの間の隙間Δ)が実質的にゼロになっているが、かかる隙間Δが0よりもわずかに大きくなるように、突起部92の高さH10が各種の公差等に応じて適合されてもよい。
【0055】
ここで、本実施例において、突起部92は、好ましくは、上述した機能(バスバー81、82とコイルエンドとの間に、必要な軸方向の絶縁距離を確保する機能)を適切に実現する観点から、径方向に2点以上設定され、かつ、周方向に2点以上設定される。この場合、突起部92は、
図6Aに示すように、接合材料部50の径方向両側で、周方向に連続する凸条の形態であってもよい。なお、
図6Aに示す例では、突起部92は、周方向に分断することなく連続するが、
図6Bに示すように、複数の凸条の形態に分断されてもよい。具体的には、
図6Aに示す例では、突起部92は、一の接合材料部50を囲繞する態様で周方向の凸条部921及び径方向の凸条部922を有するが、
図6Bに示す例では、絶縁材料部90Aの突起部92Aは、複数(この場合、4つ)の接合材料部50Aのそれぞれを囲繞する態様で周方向の凸条部921A及び径方向の凸条部922Aを有する。なお、
図6Bに示す例において、周方向の凸条部921A及び径方向の凸条部922Aの一部は省略されてもよい。また、突起部92は、ピン状の形態であってもよく、複数の箇所に分散して形成されてもよい。
【0056】
また、本実施例において、突起部92は、好ましくは、接合材料部50の配置を妨げない態様で設けられる。具体的には、突起部92は、好ましくは、軸方向に視て、接合材料部50と重ならない位置に設けられる。この場合、突起部92は、接合材料部50の径方向両側に配置されてよい。これにより、バスバー部材70の接合面910と接合材料部50との間で、突起部92に起因した浮き等が生じない態様で、信頼性の高い接合を実現できる。
【0057】
図10は、第2比較例によるバスバー部材70”とコイルエンドとの固定構造の一例を説明するための概略的な断面図であり、中心軸Iを通る平面による断面図である。
【0058】
第2比較例によるバスバー部材70”では、絶縁材料部90”は、突起部92を有さないものの、軸方向の厚みが有意に大きく、絶縁材料部90”の厚み自体で、バスバー81、82とコイルエンドとの間の軸方向の離間距離に関する必要な軸方向の絶縁距離を確保する。
【0059】
このような第2比較例によれば、本実施例と同様に、バスバー部材70”とコイルエンドとの間の軸方向の位置関係にばらつきが生じうる構成においても、バスバー部材70”とコイルエンドとの間に、必要な軸方向の絶縁距離を確保できる。しかしながら、第2比較例では、絶縁材料部90”の質量が有意に大きくなり、材料コストの増加のみならず、バスバー部材70”の振動が大きくなりやすい(その結果、上述した接合部402の応力が大きくなりやすい)。
【0060】
これに対して、本実施例によれば、突起部92が絶縁材料部90の軸方向内側の表面に“突起”の形態で局所的に設けられるので、第2比較例で生じる不都合を低減できる。すなわち、本実施例によれば、バスバー部材70の質量の増加を防止しつつ、バスバー部材70とコイルエンドとの間に、必要な軸方向の絶縁距離を確保しやすくすることができる。
【0061】
次に、
図11以降を参照して、上述したステータ21の製造に好適な製造方法について説明する。
【0062】
以下の説明において、特に言及しない限り、第1渡り線236とは、ステータコア211の軸方向外側で周方向に延在する上述したリード側の複数の第1渡り線236の全体(集合)を指す。従って、第1渡り線236の表面(軸方向外側表面)とは、複数の第1渡り線236の全体の表面(軸方向外側表面)であり、第1渡り線236のそれぞれの表面(軸方向外側表面)の集合を表す。
【0063】
図11は、ステータ21の製造方法の流れを概略的に示すフローチャートである。
図12から
図16は、
図11を参照して説明する各工程のいくつかの説明図である。
図12は、単品状態のバスバー部材70の概略的な断面図であり、
図13から
図16は、製造途中のワーク(組立体)を中心軸Iを通る平面で切断した際の概略的な断面図である。なお、
図11のフローチャートは、ステータ21の製造方法の流れの一例を示しているにすぎず、各ステップの処理順序は適宜、前後されてもよいし、並行的に又は同時に実現されてもよい。
【0064】
本製造方法は、まず、ステップS110において、上述したバスバー部材70を準備するとともに、上述した接合材料部50を形成するための接着剤保持部材51を準備する工程(第1準備工程及び第2準備工程の一例)を含む。また、本製造方法は、ステップS111において、複数の同芯巻きコイル20が円環状に配置されたコイル組立体を形成する工程を含む。なお、上述した通り、変形例では、同芯巻きコイル20とは異なる任意の形態のコイル片が利用されてもよい。
【0065】
次に、本製造方法は、
図12に示すように、ステップS112において、接合材料部50を形成するための接着剤保持部材51を、バスバー部材70に組み付ける工程(セット工程)を含む。接着剤保持部材51は、上述したとおりである。接着剤保持部材51は、両面テープ502を介してバスバー部材70に容易に固定できる。このようにして接着剤保持部材51がバスバー部材70に両面テープ502を介して固定されると、接着剤保持部材51及びバスバー部材70は、組立体(サブ組立体の一例)となり、後続のステップS114における組付け性が向上する。
【0066】
次に、本製造方法は、
図13に示すように、ステップS113において、コイル組立体2をステータコア211に組み付ける工程(装着工程)を含む。本工程は、例えば、インサータ等の治具により、コイル組立体2を形成する各スロット収容部230、232をステータコア211のスロット2111に挿入することで実現されてよい。これにより、ステータコイル22がステータコア211に巻装されたステータ組立体であって、軸方向両側にコイルエンドを有するステータ組立体が形成される。
【0067】
次に、本製造方法は、ステップS114において、接着剤保持部材51を組み付けたバスバー部材70を、ステータ組立体におけるリード側のコイルエンド上に、載置する工程(配置工程)を含む。すなわち、接着剤保持部材51を組み付けたバスバー部材70を、リード側のコイルエンド上にセットする。この場合、接着剤保持部材51を組み付けたバスバー部材70は、コイルエンドの軸方向外側の表面(すなわち第1渡り線236の表面)に接着剤保持部材51が軸方向に当接する態様で、載置される。なお、接着剤保持部材51は、両面テープ502を介してバスバー部材70に接着されているので、バスバー部材70とともに接着剤保持部材51をステータコア211に対して容易に組み付けることができる。
【0068】
次に、本製造方法は、ステップS115において、ステータコア211に巻装された複数の同芯巻きコイル20において、バスバー部材70が配置されない周方向範囲において、軸方向に重なる対の渡り線である第2渡り線240と第3渡り線250の端部同士を溶接により接合する工程を含む。また、本製造方法は、
図14に示すように、ステップS115において、バスバー部材70が配置される周方向範囲において、第2渡り線240及び第3渡り線250の各端部とバスバー部材70のバスバー80及びバスバー81の各端部801、811とを溶接により接合する工程を含む。これにより、
図14に模式的に示すように、第2渡り線240及び第3渡り線250の各端部とバスバー部材70のバスバー80及びバスバー81の各端部801、811との間の接合部402がそれぞれ形成される。
【0069】
このようにして接合部402が形成されると、接着剤保持部材51が軸方向に圧縮された状態となり(
図14の矢印R140参照)、ステータコア211(及びそれに伴いコイルエンド)に対するバスバー部材70の軸方向の位置関係が決まる。
図14に示す例では、一例として、0よりも有意に大きい隙間Δが確保されている。なお、隙間Δが小さくなるほど、接着剤保持部材51の軸方向の圧縮量は増加する。なお、上述したように、公差等に起因して隙間Δが0に近づく場合でも、突起部92により、バスバー部材70とコイルエンドとの間に、必要な軸方向の絶縁距離を確保しやすくすることができる。
【0070】
次に、本製造方法は、ステップS116において、バスバー部材70が配置されない周方向範囲において、第2渡り線240と第3渡り線250の間の接合部(図示せず)に成形部60(
図4参照)を形成する工程を含む。また、本製造方法は、ステップS116において、バスバー部材70が配置される周方向範囲において、
図15に示すように、第2渡り線240及び第3渡り線250の各端部とバスバー部材70のバスバー80及びバスバー81の各端部801、811との間の各接合部402に成形部60、60Aを形成する工程を含む。
【0071】
次に、本製造方法は、ステップS117において、ステータコア211及び同芯巻きコイル20を予備加熱する工程を含む。これにより、後述するステップS118においてワニスをスムーズに同芯巻きコイル20を構成するコイル導線22a同士の間等に浸透させることが可能になる。
【0072】
次に、本製造方法は、
図16に示すように、ステップS118において、バスバー部材70が配置された側を下側として、同芯巻きコイル20にワニス(図示せず)を滴下する(
図16の矢印R160参照)含浸工程を含む。具体的には、バスバー部材70が配置された側を下側とする向きにワークをセットした状態で、ステータコア211に配置された各同芯巻きコイル20に対して、ノズル1600(
図16参照)からワニスを滴下する。この際、ノズル1600は、反リード側のコイルエンドよりも上方に位置し、軸方向に視て、反リード側のコイルエンドに対向する。例えば、ステータコア211の軸方向が上下方向に沿うようにステータコア211が配置されている場合(平置きの場合)、ワニスは、好ましくは、第1渡り線236の表面(軸方向外側表面)に直接滴下されてよい。これにより、ワニスの自重と比較的高い流動性と毛細管現象とによって、スロット収容部230、232や反リード側の第1渡り線236のみならず(矢印R161参照)、接着剤保持部材51にもワニスを行き渡せることができる(矢印R162参照)。
【0073】
本実施例によれば、バスバー部材70が配置された側を下側として、ワニスを接着剤保持部材51に浸透させることができるので、接着剤保持部材51は、上述したように、軸方向に視て、バスバー部材70に重なる位置(あるいは、突起部92よりも径方向内側)に配置できる。これにより、突起部92に起因して接着剤保持部材51にワニスが浸透し難くなることもなく(突起部92や接着剤保持部材51の配置自由度を高めつつ)、接着剤保持部材51全体にワニスを保持させることが可能である。
【0074】
なお、ワニスの滴下は、反リード側を上にして実行した上で、更に、リード側を上にして(すなわち、ステータコア211を上下反転した状態で)実行されてもよい。この場合、順序を逆にしてもよい。すなわち、ワニスの滴下は、リード側を上にして実行してから、反リード側を上にして実行してもよい。
【0075】
次に、本製造方法は、ステップS119において、同芯巻きコイル20を構成するコイル導線22a同士の間に保持(含浸)されるワニスとともに、接着剤保持部材51に保持(含浸)されるワニスを硬化する工程を含む。接着剤保持部材51に保持されるワニスを硬化することで、接着剤保持部材51を上述した接合材料部50に変化させることができる。すなわち、接合材料部50が完成する。具体的には、ステータコア211及び同芯巻きコイル20を加熱することにより、接着剤保持部材51に保持されるワニスと、コイル導線22aの間及び同芯巻きコイル20とスロット2111との間に浸透しているワニスとを同時に硬化させる。
【0076】
なお、両面テープ502が、上述した熱硬化性樹脂組成物シートを含む態様で形成される場合、同芯巻きコイル20を構成するコイル導線22a同士を固定するワニスが硬化する硬化温度範囲内に含まれる硬化温度により熱硬化性樹脂組成物シートを硬化させることができる。このようにして、両面テープ502が、上述した熱硬化性樹脂組成物シートを含む態様で形成される場合、熱硬化性樹脂組成物シートは、ワニスとともに硬化させることができる。
【0077】
このようにして、本製造方法によれば、軸方向でバスバー部材70と第1渡り線236の表面の間に、バスバー部材70に係合しかつ第1渡り線236の表面に接合する接合材料部50を形成できる。これにより、接合材料部50を介してバスバー部材70とコイルエンドとを強固に接合でき、バスバー部材70のバスバー80、81とコイル導線22aの端部との間の接合部の信頼性を高めることができる。この結果、加振されるような環境下でも耐久性の高いステータ21を得ることができる。
【0078】
また、本製造方法によれば、上述した突起部92を有する絶縁材料部90、及び、弾性を有する接着剤保持部材51を利用することで、
図8等を参照して上述したとおり、バスバー部材70とコイルエンドとの間の接合強度を高めつつ、必要な絶縁距離を確保しやすくすることができる。すなわち、ステップS115において接合部402が形成されると、バスバー部材70とコイルエンドとの間の軸方向の位置関係が、ワークごとのばらつきを有する態様で決まる。この際、本製造方法によれば、接着剤保持部材51の軸方向の圧縮により、バスバー部材70とコイルエンドとの間の軸方向の位置関係のばらつきを吸収しつつ、突起部92により、バスバー部材70とコイルエンドとの間の軸方向の過度の接近を機械的に防止できる。
【0079】
また、本製造方法によれば、接着剤保持部材51に保持されるワニスと、コイル導線22aの間等のワニスとを同時に硬化させることで、バスバー部材70と係合する接合材料部50を効率的に形成できる。これにより、バスバー部材70と接合材料部50との間の接合強度を効率的に高めることができる。
【0080】
なお、上述した本製造方法において、ステップS112では、バスバー部材70に接着剤保持部材51を両面テープ502を介して接合することに代えて、コイルエンドに接着剤保持部材51を、同様の両面テープを介して接合してもよい。ただし、この場合、バスバー部材70が配置された側を下側として、ワニスを接着剤保持部材51全体に浸透させることができるように、接着剤保持部材51の軸方向内側の表面のうちの一部だけに両面テープが貼り付けられてもよい。
【0081】
この点、上述した本製造方法では、接着剤保持部材51の軸方向外側の表面全体に両面テープ502を貼り付けた場合でも、ステップS118において、バスバー部材70が配置された側を下側として、ワニスを接着剤保持部材51に浸透させることができる。すなわち、ステップS118において、両面テープ502が接着剤保持部材51へのワニスの浸透を妨げることもない。換言すると、本実施例では、接着剤保持部材51の軸方向外側の表面全体に両面テープ502を貼り付けることで、接着剤保持部材51(及びそれに伴い接合材料部50)とバスバー部材70との間の接合強度を効果的に高めつつ、ワニスを接着剤保持部材51全体に浸透させることが容易となる。
【0082】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0083】
例えば、上述した実施例では、両面テープ502が接合材料部50に含められるが、両面テープ502は省略されてもよい。
【0084】
また、上述した実施例では、突起部92の高さH10は、位置に関係なく一定であるが、位置に応じて異なってもよい。また、本実施例では、
図6Aに示すように、突起部92は、絶縁材料部90全体の外周に沿って形成されているが、より内側に形成されてもよい。これは、
図6Bに示す例についても同様である。
【符号の説明】
【0085】
21・・・ステータ(回転電機用ステータ)、211・・・ステータコア、22・・・ステータコイル、50・・・接合材料部、501・・・本体部、502・・・両面テープ、51・・・接着剤保持部材、70・・・バスバー部材、80、81・・・バスバー(導体部)、90・・・絶縁材料部、92・・・突起部