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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173227
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ステータ及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H02K3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085338
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 工
(72)【発明者】
【氏名】寺田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】平林 崇
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA03
5H604CC01
5H604DB01
5H604PC01
5H604QB01
(57)【要約】
【課題】コイルの放熱性の低下を抑制可能としたステータ及び回転電機を提供する。
【解決手段】ステータ11は、ティース23を有するステータコア20と、ティース23に巻回されているコイル40と、コイル40に電気的に接続されるバスバ71と、バスバ71を保持するバスバホルダ60と、コイル40、バスバホルダ60及びバスバ71をまとめて覆う樹脂モールド部50と、を備える。バスバホルダ60は、コイル40とバスバ71との間に配置される介在部としての第1被覆部61を有している。そして、第1被覆部61を含むバスバホルダ60の熱伝導率は、樹脂モールド部50の熱伝導率よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティース(23)を有するステータコア(20)と、
前記ティースに巻回されているコイル(40)と、
前記コイルに電気的に接続されるバスバ(71)と、
前記バスバを保持するバスバホルダ(60)と、
前記コイル、前記バスバホルダ及び前記バスバをまとめて覆う樹脂モールド部(50)と、を備え、
前記バスバホルダは、前記コイルと前記バスバとの間に配置される介在部(61)を有し、
前記介在部を含む前記バスバホルダの熱伝導率は、前記樹脂モールド部の熱伝導率よりも小さい、
ステータ。
【請求項2】
前記バスバは、インサート成形により前記バスバホルダの内部に埋設されている、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記バスバホルダ及び前記バスバは、前記コイルの軸方向の側方に設けられている、
請求項1に記載のステータ。
【請求項4】
前記バスバホルダは、
前記バスバの軸方向の前記コイル側を覆う前記介在部としての第1被覆部(61)と、
軸方向において前記バスバの前記第1被覆部とは反対側を覆う第2被覆部(62)と、
前記バスバの径方向両側を覆う第3被覆部(63)と、
を有している、
請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記コイルと前記介在部とは、互いに離間して配置され、
前記樹脂モールド部は、前記コイルと前記介在部との間に入り込んでいる中間部(53)を有している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項6】
前記バスバホルダは、前記コイルと前記介在部との離間状態を保持する間隔保持部(64)を有している、
請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
複数設けられた前記コイルを互いに電気的に繋ぐ連結部(72)をさらに備え、
前記樹脂モールド部は、前記コイル、前記バスバホルダ及び前記連結部をまとめて覆っており、
前記バスバホルダの前記介在部は、前記連結部と前記コイルとの間に位置している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項8】
前記バスバホルダを前記コイルまたは前記ステータコアに対して拘束する固定帯(73)をさらに備える、
請求項1に記載のステータ。
【請求項9】
前記樹脂モールド部は、前記コイルを覆う第1部位(81)と、前記バスバホルダを覆う第2部位(82)と、を有し、
前記第1部位と前記第2部位とは、熱伝導率が互いに異なる材料にて形成され、
前記第2部位の熱伝導率は、前記バスバホルダの熱伝導率よりも大きく、かつ、前記第1部位の熱伝導率よりも小さい、
請求項1に記載のステータ。
【請求項10】
複数設けられた前記コイルを互いに電気的に繋ぐ連結部(72)をさらに備え、
前記樹脂モールド部の前記第2部位は、前記バスバホルダ及び前記連結部をまとめて覆っている、
請求項9に記載のステータ。
【請求項11】
ステータ(11)と、前記ステータに対向するロータ(12)と、を備える回転電機(10)であって、
前記ステータは、
ティース(23)を有するステータコア(20)と、
前記ティースに巻回されているコイル(40)と、
前記コイルに電気的に接続されるバスバ(71)と、
前記バスバを保持するバスバホルダ(60)と、
前記コイル、前記バスバホルダ及び前記バスバをまとめて覆う樹脂モールド部(50)と、を備え、
前記バスバホルダは、前記コイルと前記バスバとの間に配置される介在部(61)を有し、
前記介在部を含む前記バスバホルダの熱伝導率は、前記樹脂モールド部の熱伝導率よりも小さい、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及び回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のステータは、ティースを有するステータコアと、ティースに巻回されているコイルと、コイルに電気的に接続されるバスバと、を備える。また、同ステータは、コイル及びバスバをまとめて覆うモールド樹脂を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-268560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなステータでは、バスバの発熱によりモールド樹脂の温度が上昇すると、コイルの温度とモールド樹脂の温度差が小さくなる場合がある。すると、コイルからモールド樹脂への伝熱が鈍化するため、コイルの放熱性能が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、コイルの放熱性の低下を抑制可能としたステータ及び回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するステータは、ティース(23)を有するステータコア(20)と、前記ティースに巻回されているコイル(40)と、前記コイルに電気的に接続されるバスバ(71)と、前記バスバを保持するバスバホルダ(60)と、前記コイル、前記バスバホルダ及び前記バスバをまとめて覆う樹脂モールド部(50)と、を備え、前記バスバホルダは、前記コイルと前記バスバとの間に配置される介在部(61)を有し、前記介在部を含む前記バスバホルダの熱伝導率は、前記樹脂モールド部の熱伝導率よりも小さい。
【0007】
上記課題を解決する回転電機は、ステータ(11)と、前記ステータに対向するロータ(12)と、を備える回転電機(10)であって、前記ステータは、ティース(23)を有するステータコア(20)と、前記ティースに巻回されているコイル(40)と、前記コイルに電気的に接続されるバスバ(71)と、前記バスバを保持するバスバホルダ(60)と、前記コイル、前記バスバホルダ及び前記バスバをまとめて覆う樹脂モールド部(50)と、を備え、前記バスバホルダは、前記コイルと前記バスバとの間に配置される介在部(61)を有し、前記介在部を含む前記バスバホルダの熱伝導率は、前記樹脂モールド部の熱伝導率よりも小さい。
【0008】
上記のステータ及び回転電機によれば、バスバの熱が樹脂モールド部のコイル周辺部位に伝わることを、熱伝導率がより小さいバスバホルダの介在部によって抑制可能となる。これにより、樹脂モールド部のコイル周辺部位における温度上昇を抑制可能となる。したがって、コイルと樹脂モールド部の温度差が小さくなることによる、コイルから樹脂モールド部への伝熱性能の低下を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における回転電機の模式図である。
図2】同形態のステータを部分的に断面で示す斜視図である。
図3】同形態のステータの模式断面図である。
図4】変更例のステータの模式断面図である。
図5】変更例のステータの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ステータ及び回転電機の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。
【0011】
図1に示すように、回転電機10は、ステータ11と、ステータ11に対向するロータ12とを備える。ステータ11は、円環状をなしている。ロータ12は、ステータ11の内側に配置される。ロータ12は、回転軸13を有する。ロータ12は、ステータ11に対して例えば径方向に対向している。ステータ11は、円筒状のハウジング14に収容されている。ステータ11は、例えば焼き嵌めによりハウジング14に収容される。
【0012】
(ステータ11の構成)
図1及び図2に示すように、ステータ11は、ステータコア20と、ボビン30と、コイル40と、樹脂モールド部50と、バスバホルダ60と、を備える。なお、図2では、樹脂モールド部50の一部を断面で示している。
【0013】
ステータコア20は、ステータ11の周方向に沿って環状に並ぶ複数の分割コア21を有する。本実施形態のステータコア20は、例えば12個の分割コア21を有する。各分割コア21は、例えば磁性金属材からなる。なお、以下の説明では、ステータ11の周方向、ステータ11の径方向、及びステータ11の軸方向をそれぞれ単に「周方向」、「径方向」及び「軸方向」と言う場合がある。
【0014】
各分割コア21は、コアバック22と、コアバック22から径方向に沿って延出するティース23とを有している。複数の分割コア21は、それぞれのコアバック22が全体で円環状をなすように周方向に沿って配置される。各ティース23は、径方向に沿って延在する。
【0015】
各分割コア21において、ティース23は、例えば、コアバック22の内側面から径方向内側に突出している。ティース23の先端部は、ステータ11の軸線L1を向いている。ティース23の基端部は、ティース23における径方向外側の端部である。
【0016】
図3に示すように、各分割コア21は、軸方向に積層された複数のコアシート24にて形成されている。各コアシート24は、例えば電磁鋼板にて構成されている。各コアシート24は、例えば、接着やかしめやレーザ溶接等により互いに固定されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、各分割コア21が周方向に環状に並んで配置された状態において、各分割コア21のコアバック22は、周方向に沿って環状に並んで配置される。各コアバック22は、周方向両側において隣り合うコアバック22に対してそれぞれ接している。各コアバック22の径方向外側面は、ハウジング14の内周面に接する。各コアバック22の軸方向端面は、例えば、軸線L1に対して垂直な同一平面上に位置している。
【0018】
(ボビン30の構成)
各分割コア21には、ボビン30が設けられている。ボビン30は、例えば、複数の分割コア21にそれぞれ対応して複数設けられている。ボビン30は、ティース23を被覆するティース被覆部31を有している。コイル40は、各ティース被覆部31に例えば集中巻きにて巻回されている。すなわち、ボビン30のティース被覆部31は、分割コア21とコイル40との間に介在されている。これにより、ボビン30は、分割コア21とコイル40との間を電気的に絶縁する。なお、それぞれ1つの分割コア21、ボビン30及びコイル40は、1つの一体部品を構成している。
【0019】
ボビン30は、合成樹脂等の絶縁体にて構成されている。ボビン30の材料としては、例えばエポキシ系樹脂等を用いることができる。ボビン30は、例えば、分割コア21に対してモールド成形されている。すなわち、分割コア21に対して一体に形成されている。これにより、ボビン30が分割コア21に対して密着した状態とすることが可能となる。
【0020】
なお、本実施形態の構成とは異なる構成として、例えば、分割コア21とは別で作製したボビンを分割コア21に後付けで装着する場合には、分割コア21とボビンとの間に大きな隙間が生じる懸念がある。その点、本実施形態のように、ボビン30を分割コア21に対してモールド成形することで、分割コア21とボビン30との間の隙間を無くす、もしくは当該隙間を極めて小さくすることが可能である。
【0021】
図2及び図3に示すように、ティース被覆部31において、ティース23の軸方向端面を被覆する部位には、径方向に沿って延びる溝部32が形成されている。溝部32は、例えば、ティース被覆部31の周方向中央に形成されている。また、溝部32は、例えば、ボビン30の径方向の一端部から他端部まで形成されている。
【0022】
(コイル40の構成)
コイル40は3相結線がなされ、それぞれU相、V相、W相として機能する。コイル40に対して電源供給がなされると、ロータ12を回転駆動するための回転磁界がステータ11にて生じるようになっている。コイル40は、例えば、中性点を有するスター結線にて接続されている。バスバホルダ60の内部に埋設されるバスバ71は、例えば中性点ターミナルとして機能するように、コイル40に電気的に接続される。バスバ71は、周方向に沿った円環状または円弧状をなす。
【0023】
また、ステータ11は、コイル40同士を電気的に繋ぐ連結部72を有している。連結部72は、例えば、コイル40から連続する導線である渡り線、または、コイル40を構成する導線とは別体の導体にて構成されるバスバである。なお、図面では、複数の連結部72が配置される領域を連結部72として図示している。また、図3に示すように、コイル40は、コイル40の軸方向の一端部である第1コイルエンド41と、コイル40の軸方向の他端部である第2コイルエンド42とを有している。
【0024】
(バスバホルダ60の構成)
図3に示すように、バスバホルダ60は、バスバ71を保持している。例えば、バスバ71は、インサート成形によりバスバホルダ60の内部に埋設されている。バスバホルダ60は、例えば合成樹脂にて形成されている。バスバホルダ60の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂や不飽和ポリエステル系樹脂などを用いることができる。
【0025】
バスバホルダ60は、バスバ71を被覆する第1被覆部61、第2被覆部62及び第3被覆部63を有する。第1被覆部61は、バスバ71の軸方向のコイル40側を覆っている。バスバホルダ60において、第1被覆部61は、コイル40とバスバ71との間に配置される介在部として構成される。第2被覆部62は、軸方向においてバスバ71の第1被覆部61とは反対側を覆っている。第3被覆部63は、バスバ71の径方向両側を覆っている。すなわち、径方向に沿った断面において、バスバ71の周囲全体が第1被覆部61、第2被覆部62及び第3被覆部63によって覆われている。
【0026】
バスバホルダ60及びバスバ71は、コイル40の軸方向の側方に設けられている。例えば、バスバホルダ60及びバスバ71は、ステータ11の軸方向において第1コイルエンド41側のみに配置されている。バスバホルダ60の第1被覆部61は、軸方向においてコイル40とバスバ71との間に配置される。また、第1被覆部61は、第1コイルエンド41に対して軸方向に離間している。
【0027】
バスバホルダ60は、第1コイルエンド41と第1被覆部61との離間状態を保持する間隔保持部64を有している。間隔保持部64は、例えば第1被覆部61や第3被覆部63から延出している。間隔保持部64は、周方向において例えば等間隔に複数設けられている。各間隔保持部64の先端は、軸方向において例えばボビン30に当接している。これにより、バスバホルダ60の第1被覆部61と第1コイルエンド41との間の間隔が保持される。
【0028】
連結部72は、軸方向において、バスバホルダ60に対する第1コイルエンド41とは反対側に配置される。すなわち、バスバホルダ60は、軸方向において、連結部72と第1コイルエンド41との間に位置している。
【0029】
ステータ11は、連結部72及びバスバホルダ60を第1コイルエンド41に対して縛り付ける固定帯73を備えている。固定帯73は、複数設けられている。固定帯73の個数は、例えば、コイル40の個数と同数である。固定帯73は、径方向に沿った断面において、連結部72、バスバホルダ60及び第1コイルエンド41をまとめて囲うように設けられている。これにより、各間隔保持部64によってバスバホルダ60と第1コイルエンド41との間の間隔が保持された状態で、バスバホルダ60及び連結部72がコイル40に対して固定される。なお、例えば、各固定帯73は、それぞれ対応するボビン30の溝部32を通ってコイル40の内周側に通されている。
【0030】
(樹脂モールド部50の構成)
図2及び図3に示すように、樹脂モールド部50は、例えば、複数のコイル40、バスバ71を含むバスバホルダ60、及び連結部72をまとめて覆っている。樹脂モールド部50は、第1コイルエンド41側を覆う第1モールド部51と、第2コイルエンド42側を覆う第2モールド部52とを有している。第1モールド部51は、第1コイルエンド41、バスバ71を含むバスバホルダ60、連結部72、及び各固定帯73をまとめて覆っている。第1モールド部51は、第1コイルエンド41の径方向両側を覆っている。また、第1モールド部51は、バスバホルダ60の径方向両側を覆っている。また、第1モールド部51は、連結部72の軸方向外側及び径方向両側を覆っている。第2モールド部52は、第2コイルエンド42の軸方向外側及び径方向両側を覆っている。
【0031】
図3に示すように、第1モールド部51は、第1コイルエンド41とバスバホルダ60の第1被覆部61との間に入り込んでいる中間部53を有している。中間部53は、第1コイルエンド41及び第1被覆部61にそれぞれ密着している。
【0032】
第1モールド部51は、溝部32に入り込んでいる充填部54を有している。充填部54は、第1コイルエンド41とボビン30のティース被覆部31との間に介在している。充填部54は、溝部32の表面及び第1コイルエンド41の内周面にそれぞれ密着している。
【0033】
第1モールド部51及び第2モールド部52の各々の外周面は、例えば、ハウジング14の内周面に対して離間している。これにより、樹脂モールド部50が形成されたステータコア20をハウジング14に収容する場合において、ハウジング14が第1モールド部51及び第2モールド部52に干渉することを抑制可能となる。
【0034】
図1及び図2に示すように、樹脂モールド部50は、周方向に隣り合うティース23の間を通って第1モールド部51と第2モールド部52とを繋ぐ第3モールド部55を有している。第3モールド部55は、複数のティース23の各間に充填されている。第1モールド部51と第2モールド部52とは、複数の第3モールド部55によって互いに連結されている。
【0035】
ステータ11では、例えば、分割コア21、ボビン30及びコイル40を含む一体部品を環状に配置する。その後、バスバ71を含むバスバホルダ60を第1コイルエンド41側に配置し、各コイル40をバスバ71に電気的に接続する。その後、固定帯73により、バスバホルダ60及び連結部72を第1コイルエンド41に対して固定する。その後、各コイル40、各ボビン30、バスバホルダ60及び連結部72をまとめて覆うように、樹脂モールド部50をモールド成形する。
【0036】
樹脂モールド部50の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂や不飽和ポリエステル系樹脂にアルミナ粉末等を混合した材料を用いることができる。樹脂モールド部50の熱伝導率は、例えば、2.0(W/m・K)以上に設定される。
【0037】
第1被覆部61を含むバスバホルダ60の熱伝導率は、樹脂モールド部50の熱伝導率よりも小さく設定される。本実施形態では、バスバホルダ60の熱伝導率は、2.0(W/m・K)未満に設定される。
【0038】
また、ボビン30の熱伝導率は、樹脂モールド部50の熱伝導率よりも小さく設定される。本実施形態では、ボビン30の熱伝導率は、例えば、1.0(W/m・K)以下に設定される。
【0039】
本実施形態の作用について説明する。
各コイル40への通電によりステータ11で発生する回転磁界との相互作用によって、ロータ12が回転する。このとき、通電によりコイル40は発熱する。コイル40の熱の一部は、樹脂モールド部50を介して外部に放出される。放熱経路の一例としては、例えば、コイル40から樹脂モールド部50を介してステータコア20に達する放熱経路である。さらに、樹脂モールド部50は、ボビン30よりも熱伝導率が高い材料にて形成されることで、放熱性をより向上させることが可能となる。
【0040】
また、各コイル40への通電によりバスバ71が発熱する。バスバ71の主部分は、バスバホルダ60の内部に埋設されている。そして、バスバホルダ60は、樹脂モールド部50よりも熱伝導率が小さく設定されている。バスバ71から樹脂モールド部50への伝熱が、バスバホルダ60によって鈍化されるようになっている。
【0041】
本実施形態の効果について説明する。
(1)バスバホルダ60の熱伝導率は、樹脂モールド部50の熱伝導率よりも小さい。この構成によれば、バスバ71の熱が樹脂モールド部50のコイル周辺部位に伝わることを、熱伝導率がより小さいバスバホルダ60によって抑制可能となる。これにより、樹脂モールド部50のコイル周辺部位における温度上昇を抑制可能となる。したがって、コイル40と樹脂モールド部50の温度差が小さくなることによる、コイル40から樹脂モールド部50への伝熱性能の低下を抑制可能となる。
【0042】
(2)バスバ71は、インサート成形によりバスバホルダ60の内部に埋設されている。この構成によれば、バスバ71を被覆するバスバホルダ60によって、バスバ71から樹脂モールド部50への伝熱をより好適に鈍化させることが可能となる。
【0043】
(3)バスバホルダ60及びバスバ71は、コイル40の軸方向の側方に設けられている。この構成によれば、ステータ11の径方向の小型化に有利な構成となる。
(4)バスバホルダ60は、第1被覆部61、第2被覆部62及び第3被覆部63を有する。第1被覆部61は、バスバ71の軸方向のコイル40側を覆っている。バスバホルダ60において、第1被覆部61は、コイル40とバスバ71との間に配置される介在部として構成される。第2被覆部62は、軸方向においてバスバ71の第1被覆部61とは反対側を覆っている。第3被覆部63は、バスバ71の径方向両側を覆っている。この構成によれば、第1被覆部61、第2被覆部62及び第3被覆部63を含むバスバホルダ60によって、バスバ71から樹脂モールド部50への伝熱をより好適に鈍化させることが可能となる。
【0044】
(5)バスバホルダ60の第1被覆部61とコイル40とは、互いに離間して配置されている。そして、樹脂モールド部50は、コイル40と第1被覆部61との間に入り込んでいる中間部53を有している。この構成によれば、コイル40の熱を樹脂モールド部50の中間部53に放熱させることが可能となる。中間部53は、樹脂モールド部50の一部であり、熱伝導率がバスバホルダ60よりも大きい。このため、中間部53を含む樹脂モールド部50によって、コイル40の熱を効率良く放熱することが可能となる。
【0045】
(6)バスバホルダ60は、コイル40と第1被覆部61との離間状態を保持する間隔保持部64を有している。この構成によれば、間隔保持部64によりコイル40と第1被覆部61との間隔が保持されることで、中間部53を好適に形成することが可能となる。
【0046】
(7)ステータ11は、複数設けられたコイル40を互いに電気的に繋ぐ連結部72を備える。樹脂モールド部50は、コイル40、バスバホルダ60及び連結部72をまとめて覆っている。そして、第1被覆部61を含むバスバホルダ60は、連結部72とコイル40との間に位置している。この構成によれば、連結部72の熱が樹脂モールド部50のコイル周辺部位に伝わることを、バスバホルダ60によって抑制することが可能となる。
【0047】
(8)ステータ11は、バスバホルダ60及び連結部72をコイル40に対して拘束する固定帯73を備える。この構成によれば、樹脂モールド部50が成形される前において、バスバホルダ60及び連結部72を固定帯73によってコイル40に仮固定することが可能となる。このため、樹脂モールド部50の成形時の充填圧でバスバホルダ60及び連結部72の位置がずれることを抑制可能となる。
【0048】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
図4に示すように、樹脂モールド部50は、コイル40を覆う第1部位81と、バスバホルダ60を覆う第2部位82と、を有する。第1部位81と第2部位82とは、熱伝導率が互いに異なる材料にて形成されている。第1部位81は、第1コイルエンド41を覆っている。第2部位82は、バスバホルダ60及び連結部72をまとめて覆っている。第2部位82は、第1部位81に対して軸方向に重なっている。第1部位81と第2部位82との境界は、第1コイルエンド41とバスバホルダ60との間に設定されている。すなわち、第1コイルエンド41とバスバホルダ60との間に介在される中間部53は、第1部位81の一部と第2部位82の一部とによって形成されている。また、第1部位81は、溝部32に入り込む充填部54を含んでいる。
【0050】
図4に示すような構成において、第2部位82の熱伝導率は、バスバホルダ60の熱伝導率よりも大きく、かつ、第1部位81の熱伝導率よりも小さい。この構成によれば、バスバ71の熱がコイル40を覆う第1部位81に伝わることを、バスバホルダ60及び第2部位82によって抑制可能となる。これにより、樹脂モールド部50の第1部位81における温度上昇を抑制可能となる。したがって、コイル40と第1部位81の温度差が小さくなることによる、コイル40から第1部位81への伝熱性能の低下を抑制可能となる。また、第2部位82の熱伝導率がバスバホルダ60の熱伝導率よりも大きいため、第2部位82からの放熱性を確保することが可能となる。その結果、樹脂モールド部50の放熱性能の悪化を抑制することが可能となる。
【0051】
また、樹脂モールド部50の第2部位82は、バスバホルダ60及び連結部72をまとめて覆っている。この構成によれば、連結部72の熱がコイル40を覆う第1部位81に伝わることを、第2部位82によって抑制可能となる。なお、図4の例において、バスバホルダ60及び連結部72をコイル40に対して拘束する固定帯73を設けてもよい。
【0052】
図5に示すように、バスバ71を含むバスバホルダ60が、第1コイルエンド41に対して径方向に並ぶように配置してもよい。このような構成によれば、ステータ11の軸方向の小型化に寄与できる。なお、図5の例では、バスバホルダ60は、第1コイルエンド41の径方向外側に配置されている。バスバホルダ60は、第1コイルエンド41とバスバ71との径方向の間に介在される介在部91を含んで構成されている。コイル40及びバスバホルダ60を覆う樹脂モールド部50は、第1コイルエンド41と介在部91との間に入り込んでいる中間部92を有している。このような構成によっても、バスバ71の熱が樹脂モールド部50のコイル周辺部位に伝わることを、熱伝導率がより小さいバスバホルダ60によって抑制可能となる。
【0053】
なお、図5の例では、バスバホルダ60を第1コイルエンド41の径方向外側に配置しているが、これに限らず、バスバホルダ60を第1コイルエンド41の径方向内側に配置してもよい。
【0054】
また、図5の例において、コイル40同士を電気的に繋ぐ連結部72を樹脂モールド部50内に設けてもよい。この場合、連結部72をバスバホルダ60の径方向外側に配置することで、バスバホルダ60が連結部72とコイル40との間に配置される。これにより、連結部72の熱が樹脂モールド部50のコイル周辺部位に伝わることを、バスバホルダ60によって抑制することが可能となる。
【0055】
・上記実施形態では、間隔保持部64の先端がボビン30に当接しているが、これに以外に例えば、間隔保持部64の先端がステータコア20の例えばコアバック22に当接する構成であってもよい。
【0056】
・上記実施形態において、バスバホルダ60から間隔保持部64を省略してもよい。この場合、例えば、軸方向に延びる柱部をボビン30に形成し、当該柱部の先端をバスバホルダ60に当接させる構成としてもよい。このような構成によっても、当該柱部によってコイル40とバスバホルダ60との離間状態を保持することが可能となり、その結果、中間部53を好適に形成することが可能となる。
【0057】
・上記実施形態では、バスバホルダ60及び連結部72が固定帯73によりコイル40に対して拘束されるが、これに特に限定されるものではない。例えば、バスバホルダ60及び連結部72が固定帯73によりステータコア20またはボビン30に対して拘束される構成であってもよい。
【0058】
・連結部72がバスバホルダ60の内部に設けられる構成としてもよい。また、連結部72が樹脂モールド部50の外部に設けられる構成としてもよい。
・バスバ71がバスバホルダ60の内部に埋設される構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態のバスバホルダ60から第2被覆部62及び第3被覆部63を省略してもよい。この場合、バスバホルダ60は、第1被覆部61のみでバスバ71を保持する。このような構成によっても、バスバ71の熱が樹脂モールド部50のコイル周辺部位に伝わることを、第1被覆部61によって抑制可能となる。
【0059】
・上記実施形態のボビン30は、ステータコア20に対してモールド成形されるが、これに限らず、例えば、別途作製したボビンをステータコア20に装着する構成としてもよい。
【0060】
・第1モールド部51及び第2モールド部52の各々の外周面が、ハウジング14の内周面に接触する構成であってもよい。この構成によれば、第1モールド部51及び第2モールド部52の熱をハウジング14に好適に伝えることが可能となる。その結果、コイル40の放熱性のより一層の向上に寄与できる。
【0061】
・分割コア21ならびにティース23の数は、上記実施形態に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更可能である。
・ステータコア20は、複数の分割コア21で形成される構成に限らず、一体部品で形成されてもよい。
【0062】
・ロータ12とステータ11とが軸方向に対向する構成であってもよい。
・上記実施形態の回転電機10は、ロータ12がステータ11の内周側に配置されるインナロータ型の回転電機であるが、これ以外に例えば、ロータがステータの外周側に配置されるアウタロータ型の回転電機に適用してもよい。
【0063】
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0064】
(付記)
本発明の特徴を以下の通り示す。
[1]ティース(23)を有するステータコア(20)と、前記ティースに巻回されているコイル(40)と、前記コイルに電気的に接続されるバスバ(71)と、前記バスバを保持するバスバホルダ(60)と、前記コイル、前記バスバホルダ及び前記バスバをまとめて覆う樹脂モールド部(50)と、を備え、前記バスバホルダは、前記コイルと前記バスバとの間に配置される介在部(61)を有し、前記介在部を含む前記バスバホルダの熱伝導率は、前記樹脂モールド部の熱伝導率よりも小さい、ステータ。
【0065】
[2]前記バスバは、インサート成形により前記バスバホルダの内部に埋設されている、上記[1]に記載のステータ。
[3]前記バスバホルダ及び前記バスバは、前記コイルの軸方向の側方に設けられている、上記[1]または[2]に記載のステータ。
【0066】
[4]前記バスバホルダは、前記バスバの軸方向の前記コイル側を覆う前記介在部としての第1被覆部(61)と、軸方向において前記バスバの前記第1被覆部とは反対側を覆う第2被覆部(62)と、前記バスバの径方向両側を覆う第3被覆部(63)と、を有している、上記[3]に記載のステータ。
【0067】
[5]前記コイルと前記介在部とは、互いに離間して配置され、前記樹脂モールド部は、前記コイルと前記介在部との間に入り込んでいる中間部(53)を有している、上記[1]から[4]のいずれか1つに記載のステータ。
【0068】
[6]前記バスバホルダは、前記コイルと前記介在部との離間状態を保持する間隔保持部(64)を有している、上記[5]に記載のステータ。
[7]複数設けられた前記コイルを互いに電気的に繋ぐ連結部(72)をさらに備え、前記樹脂モールド部は、前記コイル、前記バスバホルダ及び前記連結部をまとめて覆っており、前記バスバホルダの前記介在部は、前記連結部と前記コイルとの間に位置している、上記[1]から[6]のいずれか1つに記載のステータ。
【0069】
[8]前記バスバホルダを前記コイルまたは前記ステータコアに対して拘束する固定帯(73)をさらに備える、上記[1]から[7]のいずれか1つに記載のステータ。
[9]前記樹脂モールド部は、前記コイルを覆う第1部位(81)と、前記バスバホルダを覆う第2部位(82)と、を有し、前記第1部位と前記第2部位とは、熱伝導率が互いに異なる材料にて形成され、前記第2部位の熱伝導率は、前記バスバホルダの熱伝導率よりも大きく、かつ、前記第1部位の熱伝導率よりも小さい、上記[1]から[8]のいずれか1つに記載のステータ。
【0070】
[10]複数設けられた前記コイルを互いに電気的に繋ぐ連結部(72)をさらに備え、前記樹脂モールド部の前記第2部位は、前記バスバホルダ及び前記連結部をまとめて覆っている、上記[9]に記載のステータ。
【0071】
[11]ステータ(11)と、前記ステータに対向するロータ(12)と、を備える回転電機(10)であって、前記ステータは、ティース(23)を有するステータコア(20)と、前記ティースに巻回されているコイル(40)と、前記コイルに電気的に接続されるバスバ(71)と、前記バスバを保持するバスバホルダ(60)と、前記コイル、前記バスバホルダ及び前記バスバをまとめて覆う樹脂モールド部(50)と、を備え、前記バスバホルダは、前記コイルと前記バスバとの間に配置される介在部(61)を有し、前記介在部を含む前記バスバホルダの熱伝導率は、前記樹脂モールド部の熱伝導率よりも小さい、回転電機。
【符号の説明】
【0072】
10…回転電機、11…ステータ、12…ロータ、20…ステータコア、23…ティース、40…コイル、50…樹脂モールド部、53…中間部、60…バスバホルダ、61…第1被覆部(介在部)、62…第2被覆部、63…第3被覆部、64…間隔保持部、71…バスバ、72…連結部、73…固定帯、81…第1部位、82…第2部位、91…介在部、92…中間部。
図1
図2
図3
図4
図5