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特開2023-173245反射ミラー部材、光電センサ、および光測距装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173245
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】反射ミラー部材、光電センサ、および光測距装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20231130BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G02B5/08 A
G01S7/481 A
G02B5/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085369
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000242600
【氏名又は名称】北陽電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】石原 典明
【テーマコード(参考)】
2H042
5J084
【Fターム(参考)】
2H042DA01
2H042DA03
2H042DA05
2H042DA07
2H042DA11
2H042DB01
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA36
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB27
5J084CA03
5J084EA32
(57)【要約】
【課題】効率よく製造することができかつ適切に光を反射することができる反射ミラー部材、ならびにそれを備えた光電センサおよび光測距装置を提供する。
【解決手段】反射ミラー部材は、第1樹脂層部と、第1樹脂層部の一方面側にメッキ被膜によって形成された反射面と、第1樹脂層部の他方面側に設けられた第2樹脂層部と、を備える。第1樹脂層部と第2樹脂層部とは、互いに異なる材料からなり、かつ二色成形によって一体成形されている。第1樹脂層部と第2樹脂層部との接合界面にアンカー部が形成されている。接合界面は、アンカー部を含まない第1接合領域と、アンカー部を含む第2接合領域とを有する。メッキ被膜の厚み方向から見て、反射面は、第1接合領域に重なるように形成された第1反射領域と、第2接合領域に重なるように形成された第2反射領域とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂層部と、
前記第1樹脂層部の一方面側にメッキ被膜によって形成された反射面と、
前記第1樹脂層部の他方面側に設けられた第2樹脂層部と、を備え、
前記第1樹脂層部と前記第2樹脂層部とは、互いに異なる材料からなり、かつ二色成形によって一体成形されており、
前記第1樹脂層部と前記第2樹脂層部との接合界面にアンカー部が形成されており、
前記アンカー部は、前記第1樹脂層部および前記第2樹脂層部のうちの一方に形成された凹部と、前記第1樹脂層部および前記第2樹脂層部のうちの他方に形成されかつ前記凹部に嵌合された凸部とを有し、
前記接合界面は、前記アンカー部を含まない第1接合領域と、前記アンカー部を含む第2接合領域とを有し、
前記メッキ被膜の厚み方向から見て、前記反射面は、前記第1接合領域に重なるように形成された第1反射領域と、前記第2接合領域に重なるように形成された第2反射領域とを有する、
反射ミラー部材。
【請求項2】
前記厚み方向から見て、前記第2反射領域は、前記第1反射領域を囲むように配置されている、
請求項1に記載の反射ミラー部材。
【請求項3】
測定光を射出するとともに物体からの反射光を受光する光電センサにおいて用いられ、
前記第2樹脂層部に、測定光を前記第1反射領域に導くガイド部材を支持する支持部が形成されている、
請求項1に記載の反射ミラー部材。
【請求項4】
前記支持部は、貫通孔を含み、
前記第1樹脂層部には、前記貫通孔およびそれに対応するウェルドラインが形成されていない、
請求項3に記載の反射ミラー部材。
【請求項5】
前記第2樹脂層部に一体的に形成され、前記反射ミラー部材を揺動または回転させる駆動部に接続される接続部をさらに備える、
請求項3に記載の反射ミラー部材。
【請求項6】
測定光を射出する投光部と、
測定対象空間から到達する反射光を受光する受光部と、
前記測定光を所定の方向に偏向させる光偏向部、および/または、前記測定光を所定の方向に走査させる光走査部と、を備え、
前記光偏向部または前記光走査部が、請求項1に記載の反射ミラー部材を含む、光電センサ。
【請求項7】
前記測定光が、前記反射ミラー部材の前記反射面の前記第1反射領域で反射して前記測定対象空間に射出され、かつ、前記測定対象空間からの前記反射光が、前記反射面で反射して前記受光部に受光されるように構成された、
請求項6に記載の光電センサ。
【請求項8】
前記第2反射領域で反射した前記測定対象空間からの前記反射光が、前記受光部に受光されるように前記反射ミラー部材の前記反射面が形成されている、
請求項7に記載の光電センサ。
【請求項9】
請求項6に記載の光電センサと、
前記投光部および前記受光部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部が、前記測定光および前記反射光に基づいて前記測定対象空間における物体との距離を算出する、
光測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射ミラー部材ならびにこれを備える光電センサおよび光測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の分野において、レーザ光を用いて物体を検出する装置が利用されている。例えば、特許文献1に開示された光測距装置は、光電センサと光走査部とを備えている。光走査部は、光電センサから出力された測定光を監視領域に向けて偏向するとともに、物体からの反射光を光電センサに導く偏向ミラーと、偏光ミラーを回転駆動するモータとを備えている。
【0003】
上記の光測距装置では、測定光の出力時期および反射光の検出時期から、光電センサと物体間の光の伝播時間が算出される。また、当該伝播時間と光の速度とに基づいて、光電センサから物体までの距離が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-34136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記のような偏向ミラーを製造する際には、一般に、蒸着によって基材の表面に金属薄膜を成膜することによって、光を反射する反射面を形成していた。蒸着によって反射面を形成することによって、反射面の面精度を高くすることができる。一方で、蒸着によって反射面を形成する場合には、製造効率を向上させることが難しいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的の一例は、効率よく製造することができかつ適切に光を反射することができる反射ミラー部材、ならびにそれを備えた光電センサおよび光測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するため、本発明の一側面における反射ミラー部材は、第1樹脂層部と、第1樹脂層部の一方面側にメッキ被膜によって形成された反射面と、第1樹脂層部の他方面側に設けられた第2樹脂層部と、を備え、第1樹脂層部と第2樹脂層部とは、互いに異なる材料からなり、かつ二色成形によって一体成形されており、第1樹脂層部と第2樹脂層部との接合界面にアンカー部が形成されており、アンカー部は、第1樹脂層部および第2樹脂層部のうちの一方に形成された凹部と、第1樹脂層部および第2樹脂層部のうちの他方に形成されかつ凹部に嵌合された凸部とを有し、接合界面は、アンカー部を含まない第1接合領域と、アンカー部を含む第2接合領域とを有し、メッキ被膜の厚み方向から見て、反射面は、第1接合領域に重なるように形成された第1反射領域と、第2接合領域に重なるように形成された第2反射領域とを有する、ことを特徴とする。
【0008】
この反射ミラー部材では、反射面がメッキ被膜によって形成されている。この場合、蒸着によって反射面を形成する場合に比べて、効率よく反射ミラー部材を製造することができる。また、アンカー部を含まない第1接合領域に重なるように第1反射領域が設けられ、アンカー部を含む第2接合領域に重なるように第2反射領域が設けられている。この場合、第1反射領域の面精度を、第2反射領域の面精度よりも高くすることができる。したがって、例えば、光電センサにおいて、面精度が高い第1反射領域によって測定光を反射し、第1反射領域に比べて面精度が低い第2反射領域によって反射光を反射することによって、光電センサの検出精度を向上させることができる。このように、用途に応じて光を適切に反射することができる。
【0009】
(2)上記(1)の反射ミラー部材において、メッキ被膜の厚み方向から見て、第2反射領域は、第1反射領域を囲むように配置されていてもよい。この場合、第2反射領域の面積を大きくしやすい。したがって、例えば、光電センサにおいて反射ミラー部材を用いる場合には、集光レンズの集光量を向上させることができる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)の反射ミラー部材は、測定光を射出するとともに物体からの反射光を受光する光電センサにおいて用いられ、第2樹脂層部に、測定光を第1反射領域に導くガイド部材を支持する支持部が形成されていてもよい。
【0011】
この場合、ガイド部材を支持するための支持部(貫通孔等)を第1樹脂層部に形成する必要がない。これにより、第1樹脂層部の成形時に、第1樹脂層部にウェルドラインが形成されることを防止することができる。その結果、第1樹脂層部上に形成された反射面の面精度がウェルドラインによって低下することを防止することができる。
【0012】
(4)上記(3)の反射ミラー部材において、支持部は、貫通孔を含み、第1樹脂層部には、上記貫通孔およびそれに対応するウェルドラインが形成されていなくてもよい。この場合、支持部となる貫通孔を形成する際に第1樹脂層部にウェルドラインが形成されない。これにより、第1樹脂層部に反射面(メッキ被膜)を形成する際に、ウェルドラインによる反射面の面精度の低下を防止することができる。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれかの反射ミラー部材において、第2樹脂層部に一体的に形成され、反射ミラー部材を揺動または回転させる駆動部に接続される接続部をさらに備えていてもよい。この場合、接続部を介して、駆動部によって反射ミラー部材を揺動または回転させることができる。
【0014】
(6)本発明の一側面における光電線センサは、測定光を射出する投光部と、測定対象空間から到達する反射光を受光する受光部と、測定光を所定の方向に偏向させる光偏向部、および/または、測定光を所定の方向に走査させる光走査部と、を備え、光偏向部または光走査部が、上記(1)から(5)のいずれかの反射ミラー部材を含む、ことを特徴とする。
【0015】
この光電センサでは、面精度が高い第1反射領域によって測定光を反射し、第1反射領域に比べて面精度が低い第2反射領域によって反射光を反射することによって、検出精度を向上させることができる。
【0016】
(7)上記(6)の光電センサにおいて、測定光が、反射ミラー部材の反射面の第1反射領域で反射して測定対象空間に射出され、かつ、測定対象空間からの反射光が、反射面で反射して受光部に受光されるように構成されていてもよい。この場合、測定対象空間内の物体を精度良く検出することができる。
【0017】
(8)上記(6)または(7)の光電センサにおいて、第2反射領域で反射した測定対象空間からの反射光が主に受光部に受光されるように反射ミラー部材の反射面が形成されていてもよい。この場合、測定対象空間内の物体を精度良く検出することができる。
【0018】
(9)本発明の一側面の光測距装置は、上記(6)から(8)のいずれかの光電センサと、投光部および受光部を制御する制御部と、を備え、制御部が、測定光および反射光に基づいて測定対象空間における物体との距離を算出する、ことを特徴とする。
【0019】
この光測距装置では、面精度が高い第1反射領域によって測定光を反射し、第1反射領域に比べて面精度が低い第2反射領域によって反射光を反射することによって、測定対象空間内の物体を精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、反射ミラー部材を効率よく製造することができ、かつ当該反射ミラー部材を用いて適切に光を反射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る光測距装置の構成を示す概略図である。
図2図2は、反射ミラー部材およびガイド部材の概略構造を示す断面図である。
図3図3は、反射ミラー部材を示す概略斜視図(上下を反転させて置いた図1の反射ミラー部材を斜め上方から見た図)である。
図4図4は、上下を反転させて置いた反射ミラー部材を図2に矢印Aで示す方向から見た図である。
図5図5は、図4のB-B部分を示す概略断面図である。
図6図6は、第2樹脂層部および接続部を示す概略図である。
図7図7は、アンカー部の他の例を示す図である。
図8図8は、アンカー部の他の例を示す図である。
図9図9は、アンカー部の他の例を示す図である。
図10図10は、アンカー部の他の例を示す図である。
図11図11は、反射ミラー部材の他の例を示す図である。
図12図12は、反射ミラー部材の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るミラー部材ならびにそれを備えた光電センサおよび光測距装置について、図面を用いて説明する。
【0023】
(光測距装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る光測距装置100の構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態では、光測距装置100は、ケーシング102に収容されている。光測距装置100は、光電センサ10と、制御部12とを備えている。光測距装置100は、所定の監視領域(測定対象空間)内の物体を検出し、物体までの距離を測定する装置である。
【0024】
光電センサ10は、投光部14、投光レンズ16、光走査部18、集光レンズ20、および受光部22を備えている。なお、投光部14、投光レンズ16、集光レンズ20および受光部22については、公知の種々の光測距装置の構成を利用できるので、以下においては簡単に説明する。
【0025】
投光部14は、レーザーダイオード等の発光素子を含み、測定光(レーザー光)を射出する。投光レンズ16は、投光部14から射出された測定光を平行光に整形する。詳細は後述するが、光走査部18は、投光レンズ16によって平行光に整形された測定光を、監視領域に向けて偏向する。また、光走査部18は、監視領域の物体で反射した測定光(反射光)を集光レンズ20に向けて偏向する。集光レンズ20は、光走査部18によって偏向された反射光を集光する。受光部22は、アバランシェフォトダイオード等の受光素子を含み、集光レンズ20によって集光された反射光を受光し、受光した反射光の光強度を電気信号に変換する。
【0026】
制御部12は、投光部14および受光部22を制御する。本実施形態では、制御部12は、例えば、投光部14の発光素子をパルス駆動するとともに、受光部22の受光素子の駆動電圧を制御する。また、制御部12は、投光部14における測定光の投光時刻と受光部22における反射光の受光時刻との時間差に基づいて、光測距装置100と監視領域内の物体との距離を算出する測距部を有している。本実施形態では、制御部12の測距部は、例えば、TDC(time to digital converter)回路を含み、光の飛行時間(上記時間差)を検出し、検出した光の飛行時間と光速とに基づいて、光測距装置100と物体との距離を算出する。なお、制御部12としては、TOF(Time of Flight)方式を用いた公知の光測距装置の構成を利用できるので、詳細な説明は省略する。
【0027】
光走査部18は、反射ミラー部材30、ガイド部材32、および駆動部34を備えている。図2は、反射ミラー部材30およびガイド部材32の概略構造を示す断面図であり、図3は、反射ミラー部材30を示す概略斜視図(上下を反転させて置いた図1の反射ミラー部材30を斜め上方から見た図)である。また、図4は、上下を反転させて置いた反射ミラー部材30を図2に矢印Aで示す方向から見た図であり、図5は、図4のB-B部分を示す概略断面図である。
【0028】
図1図4に示すように、反射ミラー部材30は、第1樹脂層部40と、第2樹脂層部42と、接続部44とを備えている。本実施形態では、接続部44は、第2樹脂層部42と一体成形されている。
【0029】
図5に示すように、第1樹脂層部40の厚み方向における一方面側には、メッキ被膜46が形成されている。第2樹脂層部42は、第1樹脂層部40の厚み方向における他方面側に設けられている。なお、図5においては、メッキ被膜46が形成されていることを理解しやすくするために、メッキ被膜46の厚みを大きくしている。また、図5においては、第1樹脂層部40の一方面側のみにメッキ被膜46が形成されているが、第1樹脂層部40の側面にもメッキ被膜46が形成されていてもよい。メッキ被膜46の厚みは、例えば、20~30μmである。
【0030】
図1および図2に示すように、本実施形態では、メッキ被膜46の表面60が、投光部14から射出された測定光およびその反射光を反射させる反射面として機能する。以下、メッキ被膜46の表面60を、反射面60と記載する。メッキ被膜46の材料としては、例えば、銅、金、ニッケル、またはクロムが用いられる。反射ミラー部材30の製造コストを抑制する観点からは、メッキ被膜46は、例えば、銅を用いて形成される。
【0031】
第1樹脂層部40と第2樹脂層部42とは、互いに異なる材料からなる。また、第1樹脂層部40および第2樹脂層部42は、二色成形によって一体成形されている。本実施形態では、第1樹脂層部40は、メッキ被膜46の材料と親和性の高い材料からなる。また、第2樹脂層部42は、第1樹脂層部40に比べて、メッキ被膜46の材料と親和性の低い材料からなる。これにより、第1樹脂層部40および第2樹脂層部42をメッキ液に浸漬した際に、第2樹脂層部42の表面にメッキ被膜が形成されることを防止することができる。この場合、マスキングを省略または簡略化できるので、反射ミラー部材30の製造効率が向上する。本実施形態では、例えば、第1樹脂層部40は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂を用いて形成され、第2樹脂層部42は、PC(ポリカーボネート)樹脂を用いて形成される。
【0032】
図6は、第2樹脂層部42および接続部44を示す概略図である。図6に示すように、第2樹脂層部42には、複数の凹部42aおよび複数の支持部42bが形成されている。本実施形態では、凹部42aおよび支持部42bはそれぞれ、貫通孔である。図4に示すように、本実施形態では、第2樹脂層部42に形成された複数の支持部42bが露出するように、第2樹脂層部42上に第1樹脂層部40が形成されている。
【0033】
図5に示すように、第1樹脂層部40には、複数の凹部42aに嵌合する複数の凸部40aが形成されている。本実施形態では、凸部40aおよび凹部42aによって、第1樹脂層部40および第2樹脂層部42の接合界面41に、アンカー部50が形成されている。より具体的には、一対の凸部40aおよび一対の凹部42aによって、一対のアンカー部50が形成されている。
【0034】
本実施形態では、接合界面41のうち、アンカー部50を含まない所定の領域を第1接合領域とし、アンカー部50を含む所定の領域を第2接合領域とする。図4に示すように、本実施形態では、例えば、接合界面41の中心部の所定の領域が第1接合領域41aに設定され、接合界面41のうち第1接合領域41aを除く領域が第2接合領域41bに設定される。
【0035】
また、本実施形態では、メッキ被膜46の厚み方向から見て、反射面60のうち第1接合領域41aを覆う領域を第1反射領域60aとし、第2接合領域41bを覆う領域を第2反射領域60bとする。本実施形態では、第2反射領域60bは、第1反射領域60aを囲むように配置されている。
【0036】
図1および図2に示すように、ガイド部材32は、内部を測定光が通ることができるように筒状に形成されている。本実施形態では、ガイド部材32は、略直角に屈曲した筒状部32aと、筒状部32aを反射ミラー部材30に取り付けるための複数のフック部32bとを有している。本実施形態では、第2樹脂層部42の複数の支持部42b(図3参照)に対応するように、ガイド部材32に複数のフック部32bが設けられている。本実施形態では、複数のフック部32bを複数の支持部42bに引っかけることによって、ガイド部材32が反射ミラー部材30の第2樹脂層部42に支持される。
【0037】
なお、図6に示すように、第2樹脂層部42を成形する際に、樹脂の流れによって、貫通孔である支持部42bの近傍にウェルドライン42cが形成される場合がある。一方で、第1樹脂層部40には、支持部としての貫通孔は形成されていない。このため、支持部42b(貫通孔)を形成する際に形成されるウェルドラインも第1樹脂層部40には形成されていない。本実施形態では、ウェルドライン42cの少なくとも一部を覆うように第1樹脂層部40が形成される。
【0038】
図2に示すように、ガイド部材32(筒状部32a)のうち、略直角に屈曲した部分に開口部32cが形成されている。本実施形態では、開口部32cにおいて第1反射領域60aがガイド部材32内に露出するように、ガイド部材32が第2樹脂層部42に支持される。このような構成により、投光レンズ16(図1参照)を通過してガイド部材32(筒状部32a)の一端部からガイド部材32に進入した測定光は、ガイド部材32(筒状部32a)によって第1反射領域60aに導かれる。第1反射領域60aに導かれた測定光は、第1反射領域60aにおいて偏向された後、ガイド部材32(筒状部32a)の他端部から出射される。
【0039】
図1に示すように、駆動部34は、反射ミラー部材30の接続部44に取り付けられ、回転軸X周りに接続部44を回転させる。これにより、反射ミラー部材30が回転軸X周りに回転する。本実施形態では、反射ミラー部材30の回転軸心上(回転軸Xの延長線上)に第1反射領域60a(図2参照)が位置付けられる。なお、反射ミラー部材30の反射面60は、回転軸Xに対して45°傾斜するように設けられている。本実施形態では、駆動部34として電磁モータが用いられ、電磁モータのローターに接続部44が固定されている。
【0040】
本実施形態に係る光測距装置100では、駆動部34によって反射ミラー部材30を回転させつつ、投光部14から測定光を射出することによって、光測距装置100の周囲の所定の監視領域に測定光を走査することができる。
【0041】
(作用効果)
本実施形態に係る反射ミラー部材30では、反射面60を、メッキ被膜46によって形成している。この場合、蒸着によって反射面を形成する場合に比べて、効率よく反射ミラー部材30を製造することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る光電センサ10では、メッキ被膜46の厚み方向から見て、アンカー部50を含まない第1接合領域41aに重なるように第1反射領域60aが設けられ、アンカー部50を含む第2接合領域41bに重なるように第2反射領域60bが設けられている。この場合、第1反射領域60aの面精度を、第2反射領域60bの面精度よりも高くすることができる。本実施形態では、面精度が高い第1反射領域60aによって測定光を偏向し、第1反射領域60aに比べて面精度が低い第2反射領域60bによって反射光を偏向している。
【0043】
ここで、反射面60の面精度は、反射面60によって反射された光の平行度に影響する。この点に関して、第1反射領域60aと検出対象となる物体との距離は、例えば、数m~数十mと長い。このため、第1反射領域60aで偏向された測定光の平行度が低い場合には、検出対象となる物体に照射される測定光の密度が低くなる。これにより、測定精度が低下する。
【0044】
一方、検出対象となる物体によって反射した反射光は拡散光のため、そもそも光密度が低い。このため、第2反射領域60bの面精度が比較的低い場合でも、集光レンズ20の集光量には大きく影響しない。言い換えると、第2反射領域60bの面精度が比較的低い場合でも、測定精度の低下は抑制される。
【0045】
そこで、本実施形態では、面精度が高い第1反射領域60aによって測定光を偏向し、第1反射領域60aに比べて面精度が低い第2反射領域60bによって反射光を偏向している。このようにして、測定光および反射光を反射ミラー部材30において適切に反射することができる。もちろん、面精度が高い第1反射領域60aによって反射光を集光レンズ20に偏向してもよい。主に第2反射領域60bによって反射光を偏向し、受光部22に受光されるようにすればよい。言い換えると、第2反射領域60bで反射した測定対象空間からの反射光が、第1反射領域60aで反射した測定対象空間からの反射光よりも多く受光部22に受光されるように、反射ミラー部材30の反射面60が形成されていればよい。なお、本実施形態では、投光部14から射出された測定光が、第2反射領域60bでは反射せず、第1反射領域60aでのみ反射するように、反射面60が形成されている。
【0046】
なお、測定光の波長が短いほど、反射面60の面精度が測定精度に与える影響が大きくなる。言い換えると、測定光の波長(λ=600~1550nm。例えば、本実施例の場合は905nm。)が短いほど、本発明による上記の効果が顕著に表れる。
【0047】
第1反射領域60aの面精度(PV:Peak to Valley)は、例えば、λ/4~λ/2であることが好ましく、第2反射領域60bの面精度(PV:Peak to Valley)は、例えば、2λ~4λであることが好ましい(ただし、λは測定光の波長を示す)。なお、面精度は、走査型白色干渉法を利用したZygo社製の三次元光学プロファイラーシステム(NewView6300)および付属の解析ソフト(MetroPro)を用いて測定することができる。測定条件は、LED波長:380~780μm(白色)、測定エリア:30mm×30mmとする。
【0048】
本実施形態では、第1反射領域60aを囲むように、第2反射領域60bが設けられている。この場合、第2反射領域60bの面積を大きくしやすいので、集光レンズ20の集光量を向上させることができる。
【0049】
本実施形態では、ガイド部材32を支持するための支持部42bが、第2樹脂層部42に形成されている。この場合、ガイド部材32を支持するための支持部(貫通孔)を第1樹脂層部40に形成する必要がない。これにより、第1樹脂層部40の成形時に、第1樹脂層部40にウェルドラインが形成されることを防止することができる。その結果、第1樹脂層部40上に形成された反射面60の面精度がウェルドラインによって低下することを防止することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、第2樹脂層部42に形成されたウェルドライン42cの一部を覆うように第1樹脂層部40が形成され、第1樹脂層部40上に反射面60(メッキ被膜46)が形成されている。この場合、ウェルドライン42cと反射面60(メッキ被膜46)との間に設けられた第1樹脂層部40によって、ウェルドライン42cによる反射面60の面精度の低下を防止することができる。
【0051】
(変形例)
上述の実施形態では、アンカー部50を構成する凹部42aが貫通孔である場合について説明したが、図7に示すように、凹部42aが第2樹脂層部42を貫通していなくてもよい。
【0052】
上述の実施形態では、第2樹脂層部42に形成された凹部42aと、凹部42aに嵌合するように第1樹脂層部40に形成された凸部40aとによってアンカー部50が構成される場合について説明したが、アンカー部50の構成は上述の例に限定されない。具体的には、図8に示すように、第1樹脂層部40に形成された凹部40cと、凹部40cに嵌合するように第2樹脂層部42に形成された凸部42dとによってアンカー部50が構成されてもよい。なお、図示は省略するが、凹部40cが第1樹脂層部40を貫通していなくてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、一対のアンカー部50が設けられる場合について説明したが、アンカー部50の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。なお、アンカー部50は、第1樹脂層部40および第2樹脂層部42が、第1樹脂層部40(第2樹脂層部42)の厚み方向に直交する方向に互いにずれることを防止できるように構成されていればよい。したがって、アンカー部50の形状および形成位置は、適宜変更することができる。例えば、図9に示すように、メッキ被膜46の厚み方向から見て、アンカー部50が円形状を有していてもよい。また、上述の実施形態では、アンカー部50において、凸部の全周が凹部に覆われているが、図10に示すアンカー部50のように、凸部の外周の一部が、凹部によって覆われていなくてもよい。言い換えると、凸部の外周の一部が、凹部から露出していてもよい。
【0054】
本発明が適用される反射ミラー部材の形状は上述の例に限定されず、例えば、図11および図12に示すようなポリゴン型の反射ミラー部材にも本発明を適用できる。以下、ポリゴン型の反射ミラー部材について簡単に説明する。
【0055】
図11に示す反射ミラー部材70は、第1樹脂層部72と第2樹脂層部74とを備えている。また、第1樹脂層部72と第2樹脂層部74との接合界面には、複数のアンカー部76が形成されている。反射ミラー部材70は、略三角柱形状を有し、外周面を構成する3つの側面にそれぞれ、反射面を形成する一対のメッキ被膜78a,78bが形成されている。メッキ被膜78a,78bは、互いに離隔するように、かつ長方形状を有するように形成されている。本実施形態では、メッキ被膜78aの表面のうちの一部(一点鎖線で囲まれた領域)が、測定光を偏向する第1反射領域に設定され、メッキ被膜78bの全面が反射光を偏向する第2反射領域に設定される。なお、詳細な説明は省略するが、本実施形態においても、第1樹脂層部72と第2樹脂層部74との接合界面は、アンカー部76を含まない第1接合領域と、アンカー部76を含む第2接合領域とを有し、第1反射領域は、第1接合領域を覆うように形成され、第2反射領域は、第2接合領域を覆うように形成されている。
【0056】
図12に示す反射ミラー部材80は、第1樹脂層部82と第2樹脂層部84とを備えている。また、第1樹脂層部82と第2樹脂層部84との接合界面には、複数のアンカー部86が形成されている。反射ミラー部材80は、略四角柱形状を有し、外周面を構成する4つの側面にそれぞれ、反射面を形成するメッキ被膜88が形成されている。本実施形態では、一点鎖線で示すように、メッキ被膜88の表面は、測定光を偏向する第1反射領域88a、反射光を偏向する第2反射領域88b、ならびに測定光の一部および反射光の一部を偏向する第3反射領域88cを含む。なお、詳細な説明は省略するが、本実施形態においても、第1樹脂層部82と第2樹脂層部84との接合界面は、アンカー部86を含まない第1接合領域と、アンカー部86を含む第2接合領域とを有している。第1反射領域88aおよび第3反射領域88cは、メッキ被膜88の厚み方向から見て、第1接合領域に重なるように形成され、第2反射領域88bは、第2接合領域に重なるように設けられている。
【0057】
なお、詳細な説明は省略するが、直角プリズムミラー等の他の種々のミラー部材に本発明を適用してもよい。
【0058】
上述の実施形態では、駆動部34が反射ミラー部材30を回転駆動する場合について説明したが、駆動部によって反射ミラー部材が揺動駆動される光測距装置において本発明を適用してもよい。この場合も、反射ミラー部材は、上述の実施形態と同様に、第1樹脂層部と、メッキ被膜によって形成された反射面と、第2樹脂層部とを備える。また、駆動部は、第2樹脂層部に一体的に形成された接続部に接続される。また、上述の実施形態では、測定光を所定方向に偏向走査する光走査部18を備えた光測距装置100について説明したが、測定光を所定の一方向に偏向する光偏向部を備えた光測距装置に本発明を適用してもよい。また、光走査部と光偏向部の両方を備えた光測距装置に本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、反射ミラー部材を効率よく製造することができるので、光電センサおよび光測距装置の製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 光電センサ
12 制御部
14 投光部
16 投光レンズ
18 光走査部
20 集光レンズ
22 受光部
30,70,80 反射ミラー部材
32 ガイド部材
34 駆動部
40 第1樹脂層部
41 接合界面
41a 第1接合領域
41b 第2接合領域
42 第2樹脂層部
42b 支持部
44 接続部
46 メッキ被膜
50 アンカー部
60 反射面
60a 第1反射領域
60b 第2反射領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12