(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173253
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】配線回路基板、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20231130BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20231130BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20231130BHJP
H05K 3/42 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H05K3/40 K
H05K1/11 N
H05K3/42 630
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085380
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】榎木 雅人
(72)【発明者】
【氏名】松富 亮人
【テーマコード(参考)】
5E317
5E338
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB03
5E317BB12
5E317BB13
5E317BB14
5E317BB15
5E317CC25
5E317CC31
5E317CD32
5E317GG03
5E317GG11
5E338BB13
5E338BB16
5E338BB22
5E338BB25
5E338CC01
5E338CC05
5E338CD02
5E338CD13
5E338EE13
5E338EE27
(57)【要約】
【課題】 信号線に対するシールド性に優れ、かつ部品実装部における耐剥離性にも優れる配線回路基板の提供。
【解決手段】 信号線を有する配線部と、
前記信号線と電気的に接続される電子部品を実装するための部品実装部と、
を備える配線回路基板であって、
前記配線部が、更に、前記信号線に沿って配列された複数のシールド用導体ビアと、前記複数のシールド用導体ビアと電気的に接続しかつ前記部品実装部に延在する導体層と、前記信号線と前記導体層との間に介在する絶縁層とを有し、
前記部品実装部が、前記部品実装部における前記導体層と電気的に接続する補強用ビアを有する、
配線回路基板。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線を有する配線部と、
前記信号線と電気的に接続される電子部品を実装するための部品実装部と、
を備える配線回路基板であって、
前記配線部が、更に、前記信号線に沿って配列された複数のシールド用導体ビアと、前記複数のシールド用導体ビアと電気的に接続しかつ前記部品実装部に延在する導体層と、前記信号線と前記導体層との間に介在する絶縁層とを有し、
前記部品実装部が、前記部品実装部における前記導体層と電気的に接続する補強用ビアを有する、
配線回路基板。
【請求項2】
前記信号線に沿って配列された前記複数のシールド用導体ビアの間隔(G)と、前記シールド用導体ビアの直径(R)との比率(G/R)が、1.5~5.0である、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記補強用ビアが、前記部品実装部に格子状に配置されている、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記部品実装部が、前記電子部品を実装する実装部位を有し、
前記部品実装部において前記補強用ビアが占める面積が、前記実装部位の面積の3%~50%である、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記絶縁層が、多孔質絶縁層である、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の配線回路基板を製造する、配線回路基板の製造方法であって、
前記配線回路基板において、前記絶縁層が、前記部品実装部に延在しており、
前記複数のシールド用導体ビアの形成が、前記絶縁層に形成されたビア孔に導体が充填されることにより行われ、
前記補強用ビアの形成が、前記部品実装部に延在する前記絶縁層に形成されたビア孔に導体が充填されることにより行われ、
前記複数のシールド用導体ビアを形成する際の前記ビア孔への前記導体の充填と、前記補強用ビアを形成する際の前記ビア孔への前記導体の充填とが、同時に行われる、
配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路基板の一例として、シールド用導体ビアを有する高周波フィルタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線回路基板には、信号線に対するシールド性に加えて、部品実装部における耐剥離性が求められる。
【0005】
そこで、本発明は、信号線に対するシールド性に優れ、かつ部品実装部における耐剥離性にも優れる配線回路基板、及び前記配線回路基板を効率的に製造できる配線回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決する為、鋭意検討を行った結果、上記の課題を解決出来ることを見出し、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を包含する。
【0007】
[1] 信号線を有する配線部と、
前記信号線と電気的に接続される電子部品を実装するための部品実装部と、
を備える配線回路基板であって、
前記配線部が、更に、前記信号線に沿って配列された複数のシールド用導体ビアと、前記複数のシールド用導体ビアと電気的に接続しかつ前記部品実装部に延在する導体層と、前記信号線と前記導体層との間に介在する絶縁層とを有し、
前記部品実装部が、前記部品実装部における前記導体層と電気的に接続する補強用ビアを有する、
配線回路基板。
[2] 前記信号線に沿って配列された前記複数のシールド用導体ビアの間隔(G)と、前記シールド用導体ビアの直径(R)との比率(G/R)が、1.5~5.0である、[1]に記載の配線回路基板。
[3] 前記補強用ビアが、前記部品実装部に格子状に配置されている、[1]又は[2]に記載の配線回路基板。
[4] 前記部品実装部が、前記電子部品を実装する実装部位を有し、
前記部品実装部において前記補強用ビアが占める面積が、前記実装部位の面積の3%~50%である、[1]から[3]のいずれかに記載の配線回路基板。
[5] 前記絶縁層が、多孔質絶縁層である、[1]から[4]のいずれかに記載の配線回路基板。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載の配線回路基板を製造する、配線回路基板の製造方法であって、
前記配線回路基板において、前記絶縁層が、前記部品実装部に延在しており、
前記複数のシールド用導体ビアの形成が、前記絶縁層に形成されたビア孔に導体が充填されることにより行われ、
前記補強用ビアの形成が、前記部品実装部に延在する前記絶縁層に形成されたビア孔に導体が充填されることにより行われ、
前記複数のシールド用導体ビアを形成する際の前記ビア孔への前記導体の充填と、前記補強用ビアを形成する際の前記ビア孔への前記導体の充填とが、同時に行われる、
配線回路基板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信号線に対するシールド性に優れ、かつ部品実装部における耐剥離性にも優れる配線回路基板を提供することができる。
また、本発明によれば、本発明の配線回路基板を効率的に製造できる配線回路基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、実施例1及び実施例2のクロストーク測定結果である。
【
図1B】
図1Bは、実施例1及び実施例2の放射ノイズ測定結果である。
【
図2A】
図2Aは、配線回路基板の一実施形態を第三方向(厚み方向)から見た概略図(上面図)である。
【
図3A】
図3Aは、配線回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための図である(その1)。
【
図3B】
図3Bは、配線回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための図である(その2)。
【
図3C】
図3Cは、配線回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための図である(その3)。
【
図3D】
図3Dは、配線回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための図である(その4)。
【
図3E】
図3Eは、配線回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための図である(その5)。
【
図3F】
図3Fは、配線回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための図である(その6)。
【
図3G】
図3Gは、配線回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための図である(その7)。
【
図3H】
図3Hは、配線回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための図である(その8)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(配線回路基板)
本発明の配線回路基板は、配線部と、部品実装部とを備える。
配線部は、信号線を有する。
部品実装部は、信号線と電気的に接続される電子部品を実装するための部である。
配線部は、更に、複数のシールド用導体ビアと、導体層と、絶縁層とを有する。
複数のシールド用導体ビアは、配線部において信号線に沿って配列されている。
導体層は、複数のシールド用導体ビアと電気的に接続する。また、導体層は、部品実装部に延在する。
絶縁層は、信号線と導体層との間に介在する。
部品実装部は、部品実装部における導体層と電気的に接続する補強用ビアを有する。
【0011】
配線部が信号線に沿って配列された複数のシールド用導体ビアを有することにより、信号線に対するシールド性が向上する。
また、部品実装部が補強用ビアを有することにより、部品実装部における耐剥離性が優れる。ここで、耐剥離性とは、電子部品が部品実装部から剥離しにくいことを指す。
【0012】
<信号線>
信号線の材質としては、特に制限されず、例えば、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、ニッケル、それらの合金(ステンレス、青銅)などが挙げられる。好ましくは、銅が挙げられる。
信号線の幅としては、特に制限されず、例えば、0.05mm以上であり、0.1mm以上が好ましく、また、例えば、3mm以下であり、2mm以下が好ましい。
なお、信号線の幅とは、
図2A~
図2Cにおける第二方向(幅方向)の長さに相当する。
信号線の厚みとしては、特に制限されず、例えば、5μm以上であり、10μm以上が好ましく、また、例えば、100μm以下であり、80μm以下が好ましい。
なお、信号線の厚みとは、
図2A~
図2Cにおける第三方向(厚み方向)の長さに相当する。
【0013】
<シールド用導体ビア>
シールド用導体ビアの材質としては、特に制限されず、例えば、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、ニッケル、それらの合金(ステンレス、青銅)などが挙げられる。好ましくは、銅が挙げられる。
シールド用導体ビアの大きさとしては、特に制限されないが、直径(R)としては、例えば、50μm以上が好ましく、75μm以上がより好ましく、また、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
信号線に沿って配列された複数のシールド用導体ビアの間隔(G)と、シールド用導体ビアの直径(R)との比率(G/R)は、例えば、1.1~10.0であり、1.5~5.0であることが好ましい。比率(G/R)が、5.0以下であることで、シールド特性がより優れる。他方、比率(G/R)が1.5以上であると、複数のシールド用導体ビア同士が近くなりすぎず、高い精度のビア加工が求められないことから、ビア加工がしやすくなる。また、比率(G/R)が1.5以上であると、配線部が破損しにくくなる。
なお、間隔(G)及び直径(R)の測定箇所は、
図2Cの説明の際に述べる。
また、シールド用導体ビアの断面形状(
図2A~
図2Dにおける、第三方向(厚み方向)に直交する平面における断面形状)が、円形ではない場合、直径(R)は、相当直径を意味するものとする。相当直径とは、シールド用導体ビアの断面積を円の面積とした際の当該円の直径を意味する。断面が円以外の場合、その断面の面積を求め、それを円の面積の公式((r’/2)
2×π)(r’は円の直径)を用いて求めたr’が、相当直径である。
【0014】
ここで、比率(G/R)が3.0の時のシールド特性と、比率(G/R)が6.7の時のシールド特性とを比較した結果を示す。
図1Aにクロストーク特性を示す。
図1Bに放射ノイズ特性を示す。
実施例1は、直径(R)が150μm、間隔(G)が1mm、比率(G/R)が6.7のサンプルの測定結果である。
実施例2は、直径(R)が100μm、間隔(G)が0.3mm、比率(G/R)が3.0のサンプルの測定結果である。
図1A及び
図1Bから、実施例2の方が、クロストーク特性及び放射ノイズ特性共に、実施例1よりも良好になっていることが分かる。
【0015】
<導体層>
導体層の材質としては、特に制限されず、例えば、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、ニッケル、それらの合金(ステンレス、青銅)などが挙げられる。好ましくは、銅が挙げられる。
導体層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、5μm以上であり、10μm以上が好ましく、また、例えば、100μm以下であり、80μm以下が好ましい。
なお、導体層の厚みとは、
図2A~
図2Cにおける第三方向(厚み方向)の長さに相当する。
【0016】
<絶縁層>
絶縁層の材質としては、例えば、樹脂が挙げられる。樹脂の種類は、限定されない。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、フッ化ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマーなどが挙げられる。好ましくは、ポリイミド樹脂、液晶ポリマーが挙げられる。
【0017】
絶縁層としては、多孔質絶縁層が好ましい。
多孔質絶縁層は多孔質である。多孔質絶縁層は、独立気泡及び/又は連続気泡を有する。
多孔質絶縁層における空孔率は、例えば、50%以上、好ましくは、60%以上、より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上である。なお、多孔質絶縁層の空孔率は、例えば、100%未満、さらには、99%以下である。多孔質絶縁層の空孔率は、多孔質絶縁層の材質がポリイミド樹脂である場合には、下記式に基づく計算により求められる。
【0018】
多孔質絶縁層の誘電率=空気の誘電率×空孔率+ポリイミドの誘電率×(1-空孔率)
ここで、空気の誘電率は1、ポリイミド樹脂の誘電率は3.5であるため、
多孔質絶縁層の誘電率=空孔率+3.5(1-空孔率)
空孔率(%)=[(3.5-多孔質絶縁層の誘電率)/2.5]×100
【0019】
多孔質絶縁層の周波数60GHzにおける誘電率は、例えば、2.5以下、好ましくは、1.9以下、より好ましくは、1.6以下であり、また、例えば、1.0超過である。多孔質絶縁層の誘電率は、周波数の60GHzを用いる共振器法により、実測される。
【0020】
多孔質絶縁層の周波数60GHzにおける誘電正接は、例えば、0.006以下であり、また、例えば、0超過である。多孔質絶縁層2の誘電正接は、周波数の60GHzを用いる共振器法により、実測される。
【0021】
絶縁層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、5μm以上であり、10μm以上が好ましく、また、例えば、100μm以下であり、80μm以下が好ましい。
なお、絶縁層の厚みとは、
図2A~
図2Cにおける第三方向(厚み方向)の長さに相当する。
【0022】
<補強用ビア>
補強用ビアの材質としては、特に制限されず、例えば、導体が挙げられる。導体としては、例えば、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、ニッケル、それらの合金(ステンレス、青銅)などが挙げられる。好ましくは、銅が挙げられる。
補強用ビアの大きさとしては、特に制限されないが、直径としては、例えば、50μm以上が好ましく、75μm以上がより好ましく、また、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
補強用ビアの直径は、例えば、シールド用導体ビアの直径と同様に、
図2Cの説明で述べるように、第三方向(厚み方向)に直交する平面であって、かつ信号線が存在する平面で測定される。
【0023】
補強用ビアは、部品実装部に格子状に配置されていることが好ましい。格子状とは、いわゆる格子縞のように、複数の縦の線と横の線が交差した状態(形状)になっていることをいうものである。縦の線と横の線とは、90°で交差していることが好ましい。
補強用ビアが部品実装部に格子状に配置されていることにより、導体層の電位安定、導体層間の電位差縮小、及び部品実装部の剛性向上による電子部品の剥離強度の向上、といった効果が得られる。
【0024】
補強用ビアに関しては、部品実装部において補強用ビアが占める面積が、実装部位の面積の3%~50%であることが好ましい。そうすることにより、補強用ビアが高密度に配置され、部品実装部における耐剥離性がより優れるものとなる。
ここで、実装部位とは、部品実装部のうち電子部品が実装される部位を意味する。
部品実装部において補強用ビアが占める面積は、部品実装部全体における補強用ビアの断面積の合計を、第三方向(厚み方向)から見た実装部位の面積で割ることにより求めることができる。補強用ビアの断面積は、第三方向(厚み方向)に直交する平面であって、かつ信号線が存在する平面で測定される。
【0025】
また、補強用ビアに関しては、部品実装部において補強用ビアが占める面積が、部品実装部の面積の2%~15%であることが好ましい。
部品実装部において補強用ビアが占める面積は、補強用ビアの断面積の合計を、第三方向(厚み方向)から見た部品実装部の面積で割ることにより求めることができる。補強用ビアの断面積は、第三方向(厚み方向)に直交する平面であって、かつ信号線が存在する平面で測定される。
【0026】
配線回路基板は、接着層、カバー絶縁層などを有していてもよい。
カバー絶縁層は、例えば、導体層を被覆する。カバー絶縁層は、例えば、接着層を介して導体層を被覆していてもよい。
カバー絶縁層の材質としては、例えば、前述した絶縁層の材質が挙げられる。
【0027】
接着層の材料としては、特に限定されず、ホットメルト型接着剤、熱硬化型接着剤など、種々の型の接着剤が挙げられ、具体的には、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤などが挙げられる。好ましくは、アクリル系接着剤が挙げられる。
接着層の厚みは、例えば、2μm以上であり、5μm以上が好ましく、また、例えば、50μm以下であり、25μm以下が好ましい。
【0028】
配線回路基板の部品実装部に実装される電子部品としては、例えば、表面実装コネクタどが挙げられる。
【0029】
複数のシールド用導体ビアと補強用ビアとは、同時に形成されることが好ましい。そうすることにより、信号線に対するシールド性に優れ、かつ部品実装部における耐剥離性にも優れる配線回路基板を効率的に製造することができる。
そのような点から、本発明の回路配線基板の製造方法は、以下の(I)~(IV)を満たす製造方法であることが好ましい。
(I):配線回路基板において、絶縁層が、部品実装部に延在しいる。
(II):複数のシールド用導体ビアの形成が、絶縁層に形成されたビア孔に導体が充填されることにより行われる。
(III):補強用ビアの形成が、部品実装部に延在する絶縁層に形成されたビア孔に導体が充填されることにより行わる。
(IV):複数のシールド用導体ビアを形成する際のビア孔への導体の充填と、補強用ビアを形成する際のビア孔への導体の充填とが、同時に行われる。
【0030】
以下、図を用いて、本発明の配線回路基板の一実施形態について説明する。
図2A~
図2Dは、本発明の配線回路基板の一実施形態の概略図である。
図2Aは、配線回路基板1を第三方向(厚み方向)から見た概略図(上面図)である。
配線回路基板1は、配線部2と、2つの部品実装部3とを備える。2つの部品実装部3の片方は、配線部2の第一方向(長手方向)の一方側の端部に位置し、2つの部品実装部3の他方は、配線部2の第一方向(長手方向)の他方側の端部に位置する。2つの部品実装部3は、配線部2よりも第二方向(幅方向)の長さが長い。言い換えれば、2つの部品実装部3の幅は、配線部2の幅よりも広い。
配線部2は、2つの信号線4を有する。2つの信号線4は、配線部2の第一方向(長手方向)に伸びている。2つの信号線4は、2つの部品実装部3を電気的に接続している。
配線部2は、更に、複数のシールド用導体ビア5と、導体層6(
図2B、及び
図2Cで説明する)と、絶縁層7とを有する。
複数のシールド用導体ビア5は、配線部2において信号線4に沿って配列している。
部品実装部3は、部品実装部3における導体層と電気的に接続する補強用ビア11を有する。
なお、
図2Aにおいて、信号線4、シールド用導体ビア5、及び補強用ビア11は、破線で示している。これは、
図2B~
図2Dで示すように、配線回路基板1においては、信号線4、シールド用導体ビア5、及び補強用ビア11は、配線部2、及び部品実装部3の内部に存在し、通常、第三方向(厚み方向)からは、視認できないためである。
なお、
図2A~
図2Dにおいて、第一方向、第二方向、及び第三方向は互いに直交している。
【0031】
図2Bは、
図2Aの配線回路基板1のA-A’断面図である。
図2Bは、配線部2の断面図である。
図2Bにおいて、配線部2は、第三方向(厚み方向)の他方側から一方側に向かって、カバー絶縁層8、導体層6、絶縁層7、接着層9、絶縁層7、導体層6、及びカバー絶縁層8をこの順で有する。
配線部2において、信号線4は、接着層9に埋もれている。
配線部2において、シールド用導体ビア5は、第三方向(厚み方向)の一方側の導体層6と他方側の導体層6とを電気的に接続するように、第三方向(厚み方向)の一方側の絶縁層7、接着層9、及び第三方向(厚み方向)の他方側の絶縁層7を貫通している。
【0032】
図2Cは、
図2Aの配線回路基板1のB-B’断面図である。
図2Cは、配線部2の断面図である。
図2Cにおいても、
図2Bと同様に、配線部2は、第三方向(厚み方向)の他方側から一方側に向かって、カバー絶縁層8、導体層6、絶縁層7、接着層9、絶縁層7、導体層6、及びカバー絶縁層8をこの順で有する。
図2Cにおいても、
図2Bと同様に、配線部2において、シールド用導体ビア5は、第三方向(厚み方向)の一方側の導体層6と他方側の導体層6とを電気的に接続するように、第三方向(厚み方向)の一方側の絶縁層7、接着層9、及び第三方向(厚み方向)の他方側の絶縁層7を貫通している。
信号線4に沿って配列している複数のシールド用導体ビア5の間隔(G)は、シールド用導体ビアの直径(R)の3.0倍である。即ち、G/Rは3.0である。
なお、間隔(G)及び直径(R)の測定は、例えば、第三方向(厚み方向)に直交する平面であって、かつ信号線4が存在する平面で測定される数値である。
【0033】
図2Dは、
図2Aの配線回路基板1のC-C’断面図である。
図2Dは、部品実装部3の断面図である。
図2Dにおいて、部品実装部3は、第三方向(厚み方向)の他方側から一方側に向かって、カバー絶縁層8、導体層6、絶縁層7、接着層9、絶縁層7、導体層6、及びカバー絶縁層8をこの順で有する。
カバー絶縁層8、導体層6、絶縁層7、接着層9、絶縁層7、導体層6、及びカバー絶縁層8は、配線部2から延在している。
部品実装部3において、補強用ビア11は、第三方向(厚み方向)の一方側の導体層6と他方側の導体層6とを電気的に接続するように、第三方向(厚み方向)の一方側の絶縁層7、接着層9、及び第三方向(厚み方向)の他方側の絶縁層7を貫通している。
【0034】
部品実装部3は、電子部品を実装する実装部位12(二点鎖線で囲まれた部位)を有する(
図2A)。実装部位12は、部品実装部3のうち電子部品が実装される部位であり、例えば、
図2Aの実装部位12には、第三方向(厚み方向)から見た際に、二点鎖線で囲まれた実装部位12と同形状の電子部品が実装される。
【0035】
次に、図を用いて、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態について説明する。
図3A~
図3Hは、配線回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための図である。
図3Hは、
図2Bの断面図と対応している。
まず、導体層6Aと、絶縁層7と、接着層9Aと、信号線作成用導体層4Aとがこの順で積層された積層体を用意する(
図3A)。導体層6Aの材質としては、例えば、シールド用導体ビアの形成に用いられる導体の材質と同じ材質が挙げられる。そのような材質としては、銅が好ましい。また、
図3Aに示す積層体に代えて、導体層と、接着層又はスキン層と、絶縁層と、接着層又はスキン層と、信号線作成用導体層とを有する積層体を用いてもよい。これらに用いられる接着層及びスキン層は、例えば、導体層と絶縁層との接着力向上のために用いられる。また、絶縁層に多孔質絶縁層を用いる場合、例えば、スキン層として非多孔質の絶縁層(例えば、非多孔質のポリイミド層)が用いられる。
次に、信号線作成用導体層4Aをフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ(例えば、サブトラクティブ法)によってパターニングすることにより、信号線4及び導体5Aを形成する(
図3B)。なお、信号線4は、
図2Aに示すように、第一方向(長手方向)に沿って伸びるように形成される。導体5Aは、後の工程でシールド用導体ビア5の一部となるように、円形状に形成される。
次に、導体層6Aと、絶縁層7と、接着層9Aとがこの順で積層された積層体を用意する(
図3C)。導体層6Aの材質としては、例えば、シールド用導体ビアの形成に用いられる導体の材質と同じ材質が挙げられる。そのような材質としては、銅が好ましい。また、
図3Cに示す積層体に代えて、導体層と、接着層又はスキン層と、絶縁層と、接着層又はスキン層とを有する積層体を用いてもよい。
次に、
図3Bの積層体と、
図3Cで用意した積層体とを、2つの接着層9Aが対向するように配置して、接着層9A同士を貼り合せる(
図3D)。
そうすることにより、第三方向(厚み方向)の他方側から一方側に向かって、導体層6A、絶縁層7、接着層9、絶縁層7、及び導体層6Aをこの順で有する積層体が得られる(
図3E)。このとき、信号線4及び導体5Aは、接着層9に埋もれている。
次に、第三方向(厚み方向)の一方向及び他方向から、導体層6A、絶縁層7及び接着層9に、導体5Aに達する孔(ビアホール)を開ける(
図3F)。孔の形成方法としては、例えば、穿孔加工が挙げられる。穿孔加工としては、例えば、レーザー加工、ドリル加工、ブラスト法などが挙げられる。好ましくは、レーザー加工が挙げられる。形成される孔は、導体層6Aの表面から導体5Aに向かって断面積が次第に減少するテーパ形状を有していてもよい。
次に、導体層6A、絶縁層7及び接着層9の孔並びに導体層6Aの表面にメッキを施す。そうすることにより、導体層6A、絶縁層7及び接着層9の孔に導体が充填され、シールド用導体ビア5が形成される。また、導体層6Aと導体層6A上のメッキによる導体の層とが一緒になって導体層6が形成される(
図3G)。なお、
図3Gにおいて、シールド用導体ビア5は、中実構造であるが、シールド用導体ビア5は、絶縁層7及び接着層9の孔の内周面に形成された中空構造であってもよい。
次に、2つの導体層6のそれぞれの表面にカバー絶縁層8を形成する。
以上により、配線回路基板が得られる(
図3H)。
なお、
図3A~
図3Hに示す工程を、部品実装部においても行うことにより、
図2Dに示す部品実装部が得られる。特に、
図3F及び
図3Gに示す工程を配線部と部品実装部とで同時に行うことにより、シールド用導体ビアと補強用ビアとを同時に形成することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 配線回路基板
2 配線部
3 部品実装部
4 信号線
4A 信号線作成用導体層
5 シールド用導体ビア
5A 導体
6 導体層
6A 導体層
7 絶縁層
8 カバー絶縁層
9 接着層
9A 接着層
11 補強用ビア
12 実装部位