(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173263
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1226 20160101AFI20231130BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20231130BHJP
H01M 8/1213 20160101ALI20231130BHJP
H01M 8/1286 20160101ALI20231130BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M8/1226
H01M8/12 101
H01M8/1213
H01M8/1286
H01M4/86 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085400
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】李 新宇
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS02
5H018BB01
5H018EE02
5H018EE12
5H018HH01
5H126AA02
5H126BB06
5H126GG02
5H126GG12
5H126HH01
5H126JJ04
(57)【要約】
【課題】 金属基板の通気性と、アノードと金属基板との密着性と、を両立することができる固体酸化物型燃料電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 固体酸化物型燃料電池は、厚み方向の貫通孔を有する金属基板と、前記金属基板上に設けられ、金属を主成分とする多孔質状の支持体と、前記支持体上に設けられ、金属成分とセラミックス成分とが混合された混合層と、前記混合層上に設けられたアノードと、を備え、前記金属基板の面内方向における前記貫通孔の径は、0.1mm以上、6mm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向の貫通孔を有する金属基板と、
前記金属基板上に設けられ、金属を主成分とする多孔質状の支持体と、
前記支持体上に設けられ、金属成分とセラミックス成分とが混合された混合層と、
前記混合層上に設けられたアノードと、を備え、
前記金属基板の面内方向における前記貫通孔の径は、0.1mm以上、6mm以下である、固体酸化物型燃料電池。
【請求項2】
前記金属基板において、前記貫通孔は複数設けられており、
複数の前記貫通孔の各中心間の距離は、複数の前記貫通孔の径の1.2倍以上、5倍以下である、請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項3】
前記支持体の各空隙の径は、前記貫通孔の径よりも小さい、請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項4】
前記貫通孔の径は、前記支持体の各空隙の平均径の5倍以上、500倍以下である、請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項5】
前記貫通孔に対して露出する前記支持体の空隙数は、50個以上300個以下である、請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項6】
前記支持体の前記金属基板側の表面の金属粒子は、前記支持体との界面が存在しないように融合している、請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項7】
前記混合層の前記セラミックス成分は、イオン電導性セラミックス、イオン電子混合伝導性セラミックス、および電子伝導性セラミックスの中から、少なくとも1種類である、請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項8】
前記アノードは、イオン電導性セラミックス、イオン電子混合伝導性セラミックス、および電子伝導性セラミックスの中の少なくとも1種類を含む、請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項9】
前記アノードは、電極骨格に担持された触媒を備える、請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項10】
厚み方向に貫通し、面内方向における径が0.1mm以上、6mm以下の貫通孔を有する金属基板上に、金属粉末を含む支持体グリーンシート、セラミックス材料粉末および金属材料粉末を含む混合層グリーンシートと、電子伝導性セラミックス材料粉末および酸化物イオン伝導性セラミックス材料粉末を含む電極グリーンシートを積層することで積層体を得る工程と、
前記貫通孔が空隙となるように、前記積層体を焼成する工程と、を含む固体酸化物型燃料電池の製造方法。
【請求項11】
前記貫通孔に樹脂を埋め込んだ状態で前記積層体を焼成することによって、前記貫通孔が空隙となるようにする、請求項10に記載の固体酸化物型燃料電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物型燃料電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池は、高い発電効率を有しているため、CO2削減技術として注目されている。近年、自動車などで使用可能な固体酸化物型燃料電池システムを開発するためには、金属支持体で支持するメタルサポートタイプの固体酸化物型燃料電池が開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-158026号公報
【特許文献2】特表2004-512651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2では、金属基板に穴を空けてから電極を印刷する方法を開示している。しかしながら、電極を印刷する際にペーストが穴を埋めてしまい、金属基板の通気性が悪くなる。
【0005】
また、特許文献1,2のアノードは、両方ともNiを用いたペーストを用い、印刷してから焼成によって完成される。しかしながら、アノードと金属基板との焼成時の相互拡散を抑えようとすると、アノードと金属基板との密着性が低下し、焼成後にアノードと金属基板との剥がれが発生し、発電できない問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、金属基板の通気性と、アノードと金属基板との密着性と、を両立することができる固体酸化物型燃料電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る固体酸化物型燃料電池は、厚み方向の貫通孔を有する金属基板と、前記金属基板上に設けられ、金属を主成分とする多孔質状の支持体と、前記支持体上に設けられ、金属成分とセラミックス成分とが混合された混合層と、前記混合層上に設けられたアノードと、を備え、前記金属基板の面内方向における前記貫通孔の径は、0.1mm以上、6mm以下である。
【0008】
上記固体酸化物型燃料電池の前記金属基板において、前記貫通孔は複数設けられており、複数の前記貫通孔の各中心間の距離は、複数の前記貫通孔の径の1.2倍以上、5倍以下であってもよい。
【0009】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記支持体の各空隙の径は、前記貫通孔の径よりも小さくてもよい。
【0010】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記貫通孔の径は、前記支持体の各空隙の平均径の5倍以上、500倍以下であってもよい。
【0011】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記貫通孔に対して露出する前記支持体の空隙数は、50個以上300個以下であってもよい。
【0012】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記支持体の前記金属基板側の表面の金属粒子は、前記支持体との界面が存在しないように融合していてもよい。
【0013】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記混合層の前記セラミックス成分は、イオン電導性セラミックス、イオン電子混合伝導性セラミックス、および電子伝導性セラミックスの中から、少なくとも1種類であってもよい。
【0014】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記アノードは、イオン電導性セラミックス、イオン電子混合伝導性セラミックス、および電子伝導性セラミックスの中の少なくとも1種類を含んでいてもよい。
【0015】
上記固体酸化物型燃料電池において、前記アノードは、電極骨格に担持された触媒を備えていてもよい。
【0016】
本発明に係る固体酸化物型燃料電池の製造方法は、厚み方向に貫通し、面内方向における径が0.1mm以上、6mm以下の貫通孔を有する金属基板上に、金属粉末を含む支持体グリーンシート、セラミックス材料粉末および金属材料粉末を含む混合層グリーンシートと、電子伝導性セラミックス材料粉末および酸化物イオン伝導性セラミックス材料粉末を含む電極グリーンシートを積層することで積層体を得る工程と、前記貫通孔が空隙となるように、前記積層体を焼成する工程と、を含む。
【0017】
上記製造方法において、前記貫通孔に樹脂を埋め込んだ状態で前記積層体を焼成することによって、前記貫通孔が空隙となるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属基板の通気性と、アノードと金属基板との密着性と、を両立することができる固体酸化物型燃料電池およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】燃料電池の積層構造を例示する模式的断面図である。
【
図2】支持体、混合層、およびアノードの詳細を例示する拡大断面図である。
【
図4】(a)および(b)は貫通孔を説明するための図である。
【
図7】燃料電池の製造方法のフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0021】
図1は、固体酸化物型の燃料電池100の積層構造を例示する模式的断面図である。
図1で例示するように、燃料電池100は、一例として、金属基板5上に、支持体10、混合層20、アノード30、電解質層40、中間層50、およびカソード60がこの順に積層された構造を有する。複数の燃料電池100を積層させて、燃料電池スタックを構成してもよい。
【0022】
電解質層40は、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を主成分とする固体酸化物電解質層であり、ガス不透過性を有する緻密層である。電解質層40は、スカンジア・イットリア安定化酸化ジルコニウム(ScYSZ)、YSZ(イットリア安定化酸化ジルコニウム)、Gd(ガドリニウム)がCeO2にドープされたGDC(Gdドープセリア)などを主成分とすることが好ましい。ScYSZを用いる場合、Y2O3+Sc2O3の濃度は6mol%~15mol%の間で酸化物イオン伝導性が最も高く、この組成の材料を用いることが望ましい。また、電解質層40の厚みは、20μm以下であることが好ましく、より望ましいのは10μm以下である。電解質は薄いほど良いが、両側のガスが漏れないように製造するためには、1μm以上の厚みが望ましい。
【0023】
カソード60は、カソードとしての電極活性を有する電極であり、電子伝導性および酸化物イオン伝導性を有する。例えば、カソード60は、電子伝導性および酸化物イオン伝導性を有するセラミックス材料を主成分とする。当該セラミックス材料として、例えば、LaCoO3系材料、LaMnO3系材料、LaFeO3系材料などを用いることができる。例えば、LaCoO3系材料として、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)などを用いることができる。LSCは、Sr(ストロンチウム)がドープされたLaCoO3である。
【0024】
中間層50は、電解質層40とカソード60との反応を防止する成分を主成分とする反応防止層である。中間層50の構成材料は、電解質層40の構成材料と異なっている。中間層50は、酸化物イオン伝導性を有しているが、カソードとしての電極活性を有していない。例えば、中間層50は、セリア(CeO2)に添加物が添加された構造を有している。添加物は、特に限定されるものではない。例えば、中間層50は、GDC(例えば、Ce0.8Gd0.2O2-x)などを主成分とする。一例として、電解質層40がScYSZを含有し、カソード60がLSCを含有する場合には、中間層50は、以下の反応を防止する。
Sr+ZrO2→SrZrO3
La+ZrO3→La2Zr2O7
【0025】
図2は、支持体10、混合層20、およびアノード30の詳細を例示する拡大断面図である。
【0026】
支持体10は、ガス透過性を有するとともに、混合層20、アノード30、および電解質層40を支持可能な部材である。支持体10は、複数の空隙を有する金属多孔体であり、例えば、Fe-Cr合金の多孔体などである。
【0027】
アノード30は、アノードとしての電極活性を有する電極であり、セラミックス材料の多孔体(電極骨格)を有する。多孔体には、金属成分が含まれていない。この構成では、高温還元雰囲気での焼成時に、金属成分の粗大化によるアノードの空隙率の低下が抑制される。また、支持体10の金属成分との合金化が抑制され、触媒機能低下が抑制される。
【0028】
アノード30の多孔体は、電子伝導性および酸化物イオン伝導性を有している。アノード30の多孔体は、電子伝導性セラミックス31を含有している。電子伝導性セラミックス31として、例えば、組成式がABO3で表されるペロブスカイト型酸化物であって、AサイトがCa、Sr、Ba、Laの群から選ばれる少なくとも1種であり、BサイトがTi、Crから選ばれる少なくとも1種であるペロブスカイト型酸化物を用いることができる。AサイトとBサイトのモル比は、B≧Aであってもよい。具体的には、電子伝導性セラミックス31として、LaCrO3系材料、SrTiO3系材料などを用いることができる。
【0029】
また、アノード30の多孔体は、酸化物イオン伝導性セラミックス32を含有している。酸化物イオン伝導性セラミックス32は、ScYSZなどである。例えば、スカンジア(Sc
2O
3)が5mol%~16mol%で、イットリア(Y
2O
3)が1mol%~3mol%の組成範囲を有するScYSZを用いることが好ましい。スカンジアとイットリアの添加量が合わせて6mol%~15mol%となるScYSZがさらに好ましい。この組成範囲で、酸化物イオン伝導性が最も高くなるからである。なお、酸化物イオン伝導性セラミックス32は、例えば、酸化物イオンの輸率が99%以上の材料である。酸化物イオン伝導性セラミックス32として、GDCなどを用いてもよい。
図2の例では、酸化物イオン伝導性セラミックス32として、電解質層40に含まれる固体酸化物と同じ固体酸化物を用いている。
【0030】
図2で例示するように、アノード30において、例えば、電子伝導性セラミックス31と酸化物イオン伝導性セラミックス32とが多孔体を形成している。この多孔体によって、複数の空隙が形成される。空隙部分の多孔体の表面には、アノード触媒が担持されている。したがって、空間的に連続して形成されている多孔体において、複数のアノード触媒が空間的に分散して配置されている。アノード触媒として、複合触媒を用いることが好ましい。例えば、複合触媒として、酸化物イオン伝導性セラミックス33と、触媒金属34とが、多孔体の表面に担持されていることが好ましい。酸化物イオン伝導性セラミックス33として、例えば、YがドープされたBaCe
1-xZr
xO
3(BCZY、x=0~1)、YがドープされたSrCe
1-xZr
xO
3(SCZY、x=0~1)、SrがドープされたLaScO
3(LSS)、GDCなどを用いることができる。触媒金属34として、Niなどを用いることができる。酸化物イオン伝導性セラミックス33は、酸化物イオン伝導性セラミックス32と同じ組成を有していてもよいが、異なる組成を有していてもよい。なお、触媒金属34として機能する金属は、未発電時には化合物の形態をとっていてもよい。例えば、Niは、NiO(酸化ニッケル)の形態をとっていてもよい。これらの化合物は、発電時には、アノード30に供給される還元性の燃料ガスによって還元され、アノード触媒として機能する金属の形態をとるようになる。例えば、アノード触媒のD50%粒径は、10nm以上、1μm以下である。
【0031】
なお、燃料電池100は例えば600℃~900℃の高温で発電するため、アノード30の多孔体を構成するセラミックス粒子が小さすぎると発電温度で当該セラミックス粒子が焼結し、ガスを流すための空隙が少なくなるおそれがある。そこで、断面において、アノード30の多孔体を構成するセラミックス粒子のD50%径に下限を設けることが好ましい。例えば、アノード30の多孔体を構成するセラミックス粒子のD50%径は、0.5μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。なお、アノード30の多孔体を構成するセラミックス粒子とは、電子伝導性セラミックス31および酸化物イオン伝導性セラミックス32のことである。
【0032】
一方、アノード30の多孔体を構成するセラミックス粒子が大きすぎると、比表面積が低下し、電極反応に寄与する三相界面が減少し、発電特性が低下するおそれがある。そこで、断面において、アノード30の多孔体を構成するセラミックス粒子のD50%径に上限を設けることが好ましい。例えば、アノード30の多孔体を構成するセラミックス粒子のD50%径は、3μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。
【0033】
アノード30が薄すぎると、電極反応に寄与する三相界面が少なくなり、発電特性が低下するおそれがある。そこで、アノード30の厚みに、下限を設けることが好ましい。たとえば、アノード30の厚みは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。
【0034】
一方、アノード30が厚すぎると、発電反応に利用されるガスがより長い距離を拡散しなければならない。このガス拡散抵抗を抑えるために、アノード30の厚みに、上限を設けることが好ましい。例えば、アノード30の厚みは、15μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
アノード30の厚みは、例えば、異なる10点の厚みの平均値を算出することによって得ることができる。
【0036】
アノード30全体における空隙率が低すぎると、燃料ガスが十分に反応せず、発電性能が低下するおそれがある。そこで、アノード30の断面の全体における空隙率に下限を設けることが好ましい。例えば、アノード30全体における空隙率は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
【0037】
一方、アノード30全体における空隙率が高すぎると、層間の密着性が低下し、はがれるおそれがある。そこで、アノード30全体における空隙率に上限を設けることが好ましい。例えば、アノード30全体における空隙率は、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
アノード30全体の空隙率は、断面写真において、アノード30の全体に対する、各空孔の合計面積の比率を算出することによって得ることができる。
【0039】
アノード30において、電子伝導性セラミックス31および酸化物イオン伝導性セラミックス32の代わりに、イオン電子混合伝導性セラミックスを用いてもよい。
【0040】
混合層20は、金属材料21とセラミックス材料22とを含有する。混合層20において、金属材料21とセラミックス材料22とがランダムに混合されている。したがって、金属材料21の層とセラミックス材料22の層とが積層されたような構造が形成されているわけではない。混合層20においても、複数の空隙が形成されている。金属材料21は、金属であれば特に限定されるものではない。
図2の例では、金属材料21として、支持体10と同じ金属材料が用いられている。セラミックス材料22として、電子伝導性セラミックス31、酸化物イオン伝導性セラミックス32などを用いることができる。例えば、セラミックス材料22として、ScYSZ、GDC、SrTiO
3系材料、LaCrO
3系材料などを用いることができる。SrTiO
3系材料およびLaCrO
3系材料は高い電子伝導性を有するため、混合層20におけるオーム抵抗を小さくすることができる。なお、電子伝導性セラミックス31および酸化物イオン伝導性セラミックス32の代わりに、イオン電子混合伝導性セラミックを用いてもよい。
【0041】
図2で例示するように、混合層20において、例えば、金属材料21とセラミックス材料22とが多孔体を形成している。この多孔体によって、複数の空隙が形成される。空隙部分の多孔体の表面には、複数の改質触媒が担持されている。改質触媒として、複合触媒を用いることが好ましい。例えば、複合触媒として、酸化物イオン伝導性セラミックス23と、触媒金属24とが、多孔体の表面に担持されている。したがって、金属材料21およびセラミックス材料22によって空間的に連続して形成されている多孔体において、複数の酸化物イオン伝導性セラミックス23および触媒金属24が空間的に分散して配置されている。改質触媒は、炭化水素ガスを水素ガスに改質することができるものであれば特に限定されるものではない。触媒金属24と酸化物イオン伝導性セラミックス23との組み合わせとして、例えば、NiとGDCとの組み合わせ、NiとYSZとの組み合わせ、NiとSDC(サマリアドープドセリア)との組み合わせなどを用いることができる。Niは、NiO(酸化ニッケル)の形態をとっていてもよい。これらの化合物は、発電時には、アノード30に供給される還元性の燃料ガスによって還元され、改質触媒として機能する金属の形態をとるようになる。酸化物イオン伝導性セラミックス23は、酸化物イオン伝導性セラミックス33と同じ材料とすることが好ましい。触媒金属24は、触媒金属34と同じ材料とすることが好ましい。
【0042】
燃料電池100は、以下の作用によって発電する。カソード60には、空気などの、酸素を含有する酸化剤ガスが供給される。カソード60においては、酸素と、外部電気回路から供給される電子とが反応して酸化物イオンになる。酸化物イオンは、電解質層40を伝導してアノード30側に移動する。
【0043】
一方、金属基板5には、炭化水素ガス、水蒸気などを含有する燃料ガスが供給される。燃料ガスは、支持体10の空隙を介して混合層20に到達する。燃料ガスは、混合層20の触媒金属24の触媒作用により、水素ガスを含む改質ガスに改質される。改質反応は、例えば、下記式で表すことができる。
2CH4 + 2H2O → CO + 6H2 + CO2
【0044】
改質ガスは、混合層20の空隙を介してアノード30に到達する。アノード30に到達した水素は、アノード30において電子を放出するとともに、カソード60側から電解質層40を伝導してくる酸化物イオンと反応して水(H2O)になる。放出された電子は、外部電気回路によって外部に取り出される。外部に取り出された電子は、電気的な仕事をした後に、カソード60に供給される。以上の作用によって、発電が行われる。
【0045】
以上の発電反応において、触媒金属24は、改質反応の触媒として機能する。触媒金属34は、水素と酸化物イオンとの反応における触媒として機能する。電子伝導性セラミックス31は、水素と酸化物イオンとの反応によって得られる電子の伝導を担う。酸化物イオン伝導性セラミックス32は、電解質層40からアノード30に到達した酸化物イオンの伝導を担う。
【0046】
このように、本実施形態に係る燃料電池100では、燃料ガスの改質と発電とが燃料電池100の内部で行なわれている。
【0047】
図3は、金属基板5の斜視図である。金属基板5の材料は、例えば、SUS430、SUS304、Crofer22などである。金属基板5の厚みは、例えば、0.1mm以上1mm以下である。
図3で例示するように、金属基板5は、厚み方向に貫通する1または複数の貫通孔51を有している。貫通孔51は、空隙になっていて気体以外の物質が存在していないことが好ましいが、他の部材が部分的に延在してきていてもよい。貫通孔51が備わっていることで、燃料ガスの通気性が向上する。ただし、貫通孔51が小さすぎると、金属基板5が十分な通気性を実現しないおそれがある。そこで、本実施形態においては、貫通孔51のサイズに下限を設ける。具体的には、金属基板5の面内方向において、貫通孔51の径を0.1mm以上とする。一方、貫通孔51が大きすぎると、支持体10を形成するためのペーストが貫通孔51内に入り込んで十分な通気性が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、貫通孔51のサイズに上限を設ける。具体的には、貫通孔51の径を6mm以下とする。
【0048】
また、本実施形態においては、金属基板5上に、多孔質状の支持体10が設けられていることから、ガスの透過性を実現しつつ、金属基板5と混合層20との密着性が向上する。さらに、支持体10とアノード30との間に、金属成分およびセラミックス成分の両方を備える混合層20が設けられていることから、支持体10とアノード30との密着性が向上する。したがって、金属基板5とアノード30との密着性が向上する。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る燃料電池100は、金属基板5とアノード30との密着性と、金属基板5の通気性とを両立することができる。
【0050】
例えば、貫通孔51は、
図4(a)で例示するように、金属基板5に対する平面視で円形状を有している。金属基板5に対する平面視において、当該円形状は、0.1mm以上、6mm以下の直径を最大長さLとして有している。
図4(b)で例示するように、貫通孔51は、金属基板5に対する平面視で矩形状などの他の形状を有していてもよい。この場合には、貫通孔51は、0.1mm以上、6mm以下の対角線を最大長さLとして有している。これらのように、貫通孔51の径とは、金属基板5に対する平面視において、最大長さのことを意味する。
【0051】
良好な通気性を得る観点から、貫通孔51の径は、0.1mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。また、支持体10を形成するためのペーストが貫通孔51内に入り込むことを抑制する観点から、貫通孔51の径は、6mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましい。
【0052】
金属基板5に複数の貫通孔51が設けられている場合には、各貫通孔51の径の平均値が、0.1mm以上であり、1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましく、6mm以下であり、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。
【0053】
金属基板5の面内において、貫通孔51同士の距離(ピッチP)が短いと、金属基板5の強度が低下し、燃料電池スタックを組み立てる際に割れるおそれがある。そこで、貫通孔51同士のピッチPに下限を設けることが好ましい。本実施形態においては、ピッチPとは、所定の貫通孔51に着目した場合に、当該所定の貫通孔51の中心Oと、隣りの貫通孔51の中心Oとの距離を意味する。ピッチPは、当該所定の貫通孔51の径の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましい。なお、貫通孔51の中心とは、最大長さの中心のことを意味する。
【0054】
金属基板5に3以上の貫通孔51が設けられている場合には、隣り合う貫通孔51同士の中心間距離(ピッチP)の平均値は、各貫通孔51の径の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましい。
【0055】
金属基板5の面内において、ピッチPが長いと十分な通気性が得られないおそれがある。そこで、ピッチPに上限を設けることが好ましい。例えば、ピッチPは、当該所定の貫通孔51の径の5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることがさらに好ましい。
【0056】
金属基板5に3以上の貫通孔51が設けられている場合には、隣り合う貫通孔51同士の中心間距離(ピッチP)の平均値は、各貫通孔51の径の5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることがさらに好ましい。
【0057】
図5は、積層方向に沿った断面図である。
図5で例示するように、支持体10には空隙11が形成されている。燃料ガスは、この空隙11を通過して混合層20に到達する。ガスの流れを均等に発電層に到達させる観点から、支持体10の空隙11の径は、貫通孔51の径よりも小さいことが好ましい。ここで、空隙11の径とは、積層方向に沿った断面における最大長さのことである。
【0058】
ガス拡散抵抗を抑える観点から、各貫通孔51の径は、支持体10の空隙11の平均径の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましく、30倍以上であることがさらに好ましい。一方、空隙が大きすぎると構造が崩れやすくなる観点から、各貫通孔51の径は、支持体10の空隙11の平均径の500倍以下であることが好ましく、300倍以下であることがより好ましく、200倍以下であることがさらに好ましい。
【0059】
ガス拡散抵抗を抑える観点から、各貫通孔51に対して露出する空隙11の個数は、50個以上であることが好ましく、100個以上であることがより好ましく、150個以上であることがさらに好ましい。一方、空隙が多すぎると構造が崩れやすくなる観点から、各貫通孔51に対して露出する空隙11の個数は、300個以下であることが好ましく、200個以下であることがより好ましく、100個以下であることがさらに好ましい。
【0060】
また、
図6で例示するように、支持体10の金属粒子12のうち、金属基板5側の表面の金属粒子12は、支持体10との界面が存在しないように融合していることが好ましい。この構成では、金属基板5と支持体10との密着性が向上する。
【0061】
金属基板5の厚みは、例えば、0.1mm以上1mm以下であり、0.2mm以上0.8mm以下であり、0.3mm以上0.6mm以下である。
【0062】
以下、燃料電池100の製造方法について説明する。
図7は、燃料電池100の製造方法のフローを例示する図である。
【0063】
(金属基板の作製工程)
厚み0.2mm~1mmのステンレス板(例えば、SUS430、SUS304など)などの金属基板5を用い、機械加工で0.1mm以上6mm以下の貫通孔51を一定間隔で形成する。その後、カーボン、樹脂粒子など、焼成する過程で消失する材料を用い、アクリルあるいはPVBバインダと混合し、ペーストを作製する。スクリーン印刷を用い、貫通孔51を埋める。
【0064】
(支持体用材料の作製工程)
支持体用材料として、金属粉末(例えば、粒径が10μm~100μm)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、消失材(有機物)、バインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してペーストとする。支持体用材料は、支持体10を形成するための材料として用いる。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と金属粉末との体積比は、例えば1:1~20:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。
【0065】
(支持体用材料の印刷工程)
次に、金属基板5上に、スクリーン印刷によって支持体用材料を印刷する。その後、例えば乾燥機において、100℃で溶剤を蒸発させ、乾燥させる。
【0066】
(混合層用材料の作製工程)
混合層用材料として、セラミックス材料22の原料であるセラミックス材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)、金属材料21の原料である小粒径の金属材料粉末(例えば、粒径が1μm~10μm)、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、消失材(有機物)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と、セラミックス材料粉末および金属材料粉末と、の体積比は、例えば1:1~5:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。また、空隙の孔径は、消失材の粒径を調整することによって制御される。セラミックス材料粉末は、電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末とを含んでいてもよい。この場合、電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末との体積比率は、例えば、1:9~9:1の範囲とすることが好ましい。また、電子伝導性材料の代わりに電解質材料ScYSZ、GDCなどを用いても界面のはがれが無く、セルの作製が可能である。ただし、オーム抵抗を小さくする観点から、電子伝導性材料と金属粉末とを混合することが好ましい。
【0067】
(混合層用材料の印刷工程)
次に、印刷された支持体用材料上に、スクリーン印刷によって混合層用材料を印刷する。その後、例えば乾燥機において、100℃で溶剤を蒸発させ、乾燥させる。
【0068】
(アノード用材料の作製工程)
アノード用材料として、電極骨格を構成するセラミックス材料粉末、溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、消失材(有機物)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。電極骨格を構成するセラミックス材料粉末として、電子伝導性セラミックス31の原料である電子伝導性材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)、酸化物イオン伝導性セラミックス32の原料である酸化物イオン伝導性材料粉末(例えば、粒径が100nm~10μm)などを用いてもよい。有機成分(消失材、バインダ固形分、可塑剤)と電子伝導性材料粉末との体積比は、例えば1:1~5:1の範囲とし、空隙率に応じて有機成分量を調整する。また、空隙の孔径は、消失材の粒径を調整することによって制御される。電子伝導性材料粉末と酸化物イオン伝導性材料粉末との体積比率は、例えば、1:9~9:1の範囲とする。
【0069】
(アノード用材料の印刷工程)
次に、印刷された混合層用材料上に、スクリーン印刷によってアノード用材料を印刷する。その後、例えば乾燥機において、100℃で溶剤を蒸発させ、乾燥させる。
【0070】
(焼成工程)
支持体用材料、混合層用材料、およびアノード用材料が印刷された金属基板5に対して、酸素分圧が10-20atm以下の還元雰囲気において800℃~1000℃程度の温度範囲で焼成工程を実施する。炉内に流す還元ガスは、H2(水素)を不燃ガス(Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)、N2(窒素)など)で希釈したガスであってもよく、H2が100%のガスであってもよい。安全を考慮して、爆発限界までの上限を設けることが好ましい。例えば、H2とArの混合ガスの場合には、H2の濃度は4体積%以下であることが好ましい。この焼成工程によって、金属基板5上に、支持体10、混合層20、およびアノード30が形成される。
【0071】
(電解質層の形成工程)
次に、アノード30上に、酸化物イオン伝導性材料(例えば、ScYSZ、YSZなど)を溶射法、PVD法、CVD法などによって成膜することによって、電解質層40を形成する。
【0072】
(中間層形成工程)
中間層50に含まれる酸化物イオン伝導性セラミックス(GDC、SDCなど)を、例えばPVDにより電解質層40上に成膜することで、中間層50を成膜する。
【0073】
(アノード含浸工程)
次に、酸化物イオン伝導性セラミックス33および触媒金属34の原料を、アノード30の電極骨格内に含浸させる。例えば、還元雰囲気で所定の温度で焼成するとGdドープセリアあるいはSc,YドープジルコニアとNiが生成するように、Zr、Y、Sc、Ce、Gd、Niの各硝酸塩または塩化物を水またはアルコール類(エタノール、2-プロパノール、メタノールなど)に溶かし、ハーフセルを含浸、乾燥させ、熱処理を必要回数繰り返す。
【0074】
(カソード用材料の作製工程)
カソード用材料として、ランタンストロンチウムコバルタイト(LSC:LaSrCoO3)等の導電性セラミックス粉末を溶剤(トルエン、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、ターピネオール、酢酸ブチル、エタノールなどで、粘度に応じて20wt%~30wt%)、可塑剤(例えば、シートの密着性を調整するため、1wt%~6wt%まで調整)、およびバインダ(PVB、アクリル樹脂、エチルセルロースなど)を混合してスラリとする。有機成分(バインダ固形分、可塑剤)と、LSC粉末との体積比は、例えば6:4~1:4の範囲とする。
【0075】
(カソードの形成工程)
中間層上に、スクリーン印刷によって、作製したカソード用材料を印刷する。その後、窒素などの中性雰囲気において1000℃で焼成する。以上の工程により、酸化物系燃料電池が完成する。
【0076】
本実施形態に係る製造方法によれば、金属基板5に0.1mm以上6mm以下の貫通孔51を形成することから、十分な通気性が得られる。また、金属基板5上に、多孔質状の支持体10が設けられていることから、ガスの透過性を実現しつつ、金属基板5と混合層20との密着性が向上する。さらに、支持体10とアノード30との間に、金属成分およびセラミックス成分の両方を備える混合層20が設けられていることから、支持体10とアノード30との密着性が向上する。したがって、金属基板5とアノード30との密着性が向上する。以上のように、本実施形態に係る燃料電池100は、金属基板5とアノード30との密着性と、金属基板5の通気性とを両立することができる。
【0077】
焼成の過程で消失する材料を貫通孔51に埋めておくことによって、貫通孔51に十分な空隙を形成することができる。それにより、通気性が向上する。また、アノード30の焼成後に、酸化物イオン伝導性セラミックス33および触媒金属34を含浸させるため、焼成時に触媒が他の部材と反応することなどが防止される。
【実施例0078】
上記実施形態に係る製造方法に従って、燃料電池100を作製した。
【0079】
(実施例1)
機械加工で金属基板に直径3mmの貫通孔を10mmピッチ(中心間距離)で形成した。その後、樹脂材料で作製したペーストを用いて金属基板の貫通孔を埋めてから、支持体用材料のペーストを印刷した。乾燥を行った後、混合層用材料のペーストを印刷した。乾燥を行った後、アノード用材料のペーストを印刷した。その後、脱バインダ処理を行ない、焼成した。焼成したアノードの上に、溶射法で緻密な電解質層を成膜した。電解質層上に、中間層として、GDCをPVD法で成膜した。中間層上に、LSCのペーストを印刷し、N2雰囲気において1000℃で焼成した。積層方向に沿った断面を観察したところ、金属基板の各貫通孔において、支持体の空隙の数を調べたところ、112個であった。また、支持体における空隙の平均径は、31μmであった。発電評価を行い、インピーダンス測定で分離した低周波数側のガス拡散抵抗は、0.21Ω・cm2であった。
【0080】
(実施例2)
機械加工で金属基板に直径1mmの貫通孔を10mmピッチで形成した。その他の条件は、実施例1と同様とした。積層方向に沿った断面を観察したところ、金属基板の各貫通孔において、支持体の空隙の数を調べたところ、35個であった。また、支持体における空隙の平均径は、33μmであった。発電評価を行い、インピーダンス測定で分離した低周波数側のガス拡散抵抗は、0.46Ω・cm2であった。実施例1と比べ、金属基板の貫通孔の直径が小さいため、ガスが拡散しにくくなり、拡散抵抗が増大したと考えられる。
【0081】
(実施例3)
レーザ加工で金属基板に直径0.1mmの貫通孔を0.25mmピッチで形成した。その他の条件は、実施例1と同様とした。積層方向に沿った断面を観察したところ、金属基板の各貫通孔において、支持体の空隙の数を調べたところ、5個であった。また、支持体における空隙の平均径は、31μmであった。発電評価を行い、インピーダンス測定で分離した低周波数側のガス拡散抵抗は、0.52Ω・cm2であった。実施例1と比べ、金属基板の貫通孔の直径が非常に小さいため、ガスが拡散しにくくなり、拡散抵抗が増大したと考えられる。
【0082】
(実施例4)
機械加工で金属基板に直径6mmの貫通孔を10mmピッチで形成した。その他の条件は、実施例1と同様とした。積層方向に沿った断面を観察したところ、金属基板の各貫通孔において、支持体の空隙の数を調べたところ、226個であった。また、支持体における空隙の平均径は、30μmであった。発電評価を行い、インピーダンス測定で分離した低周波数側のガス拡散抵抗は、0.15Ω・cm2であった。実施例1と比べ、金属基板の径が大きいため、ガスが拡散しやすくなり、拡散抵抗が低下したと考えられる。しかしながら、10回程度昇降温繰り返し発電を行うと、金属基板と支持体との界面で剥離が観察された。これは、金属基板の貫通孔の径が大きくなったからであると考えられる。
【0083】
(比較例1)
機械加工で金属基板に直径3mmの貫通孔を10mmピッチで形成した。その後、樹脂材料で作製したペーストを用いて金属基板の貫通孔を埋めてから、支持体用材料のペーストを印刷した。乾燥を行った後、混合層用材料のペーストを印刷せずに、アノード用材料のペーストを印刷した。その他の条件は、実施例1と同様とした。混合層を設けなかったため、支持体とアノードとの密着性が悪く、支持体からアノードが剥離し、セルを作れなかった。積層方向に沿った断面を観察したところ、金属基板の各貫通孔において、支持体の空隙の数を調べたところ、109個であった。また、支持体における空隙の平均径は、32μmであった。
【0084】
(比較例2)
機械加工で金属基板に直径3mmの貫通孔を10mmピッチで形成した。その後、樹脂材料で作製したペーストを用いて金属基板の貫通孔を埋めてから、支持体用材料のペーストを印刷せずに、混合層用材料のペーストを印刷した。その他の条件は、実施例1と同様とした。多孔質の支持体を設けなかったため、金属基板と、混合層およびアノードとの密着性が悪く、金属基板から混合層が剥離、セルを作れなかった。
【0085】
(比較例3)
機械加工で金属基板に直径3mmの貫通孔を10mmピッチで形成した。その後、支持体用材料のペーストを印刷し、金属基板の貫通孔にも支持体用材料のペーストを充填した。その他の条件は、実施例1と同様とした。積層方向に沿った断面を観察したところ、金属基板の各貫通孔において、支持体の空隙の数を調べたところ、121個であった。また、支持体における空隙の平均径は、31μmであった。発電評価を行い、インピーダンス測定で分離した低周波数側のガス拡散抵抗は、0.63Ω・cm
2であった。実施例1と比べ、金属基板の貫通孔が支持体用材料のペーストで充填されたため、ガスが拡散しにくくなり、拡散抵抗が増大したと考えられる。
【表1】
【0086】
以上のように、比較例3と比較して実施例1~4ではガス拡散抵抗が低くなった。これは、金属基板に、径が0.1mm以上、6mm以下の空隙の貫通孔を設けたからであると考えられる。また、実施例1~4では、比較例1,2と比較して剥離が抑制された。これは、金属基板上に多孔質状の金属の支持体を設け、支持体上に金属成分とセラミックス成分とが混合された混合層を設け、混合層上にアノードを設けることで密着性が向上したからであると考えられる。
【0087】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。