(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173283
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】顆粒及びその製造方法、並びに錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/166 20060101AFI20231130BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20231130BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231130BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20231130BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231130BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231130BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231130BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20231130BHJP
【FI】
A61K31/166
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/14
A61P29/00
A23L5/00 D
A23L5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085437
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000112912
【氏名又は名称】フロイント産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】阿井 敬佑
【テーマコード(参考)】
4B035
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B035LC05
4B035LC16
4B035LE01
4B035LG04
4B035LG07
4B035LG18
4B035LG19
4B035LG26
4B035LP24
4B035LP31
4B035LP59
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD38A
4C076DD47C
4C076DD57C
4C076DD68C
4C076EE32B
4C076FF04
4C076FF36
4C076GG09
4C076GG12
4C076GG14
4C206AA01
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4C206GA07
4C206GA22
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA61
4C206MA72
4C206NA03
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することが可能な顆粒及びその製造方法、並びに前記顆粒を用いた錠剤を提供する。
【解決手段】糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む顆粒であって、下記(i)及び(ii)のいずれかを満たす顆粒である。(i)前記顆粒が親水性滑沢剤を更に含み、前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である;(ii)前記顆粒が親水性滑沢剤を含まず、前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む顆粒であって、
下記(i)及び(ii)のいずれかを満たすことを特徴とする顆粒:
(i)前記顆粒が親水性滑沢剤を更に含み、
前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である;
(ii)前記顆粒が親水性滑沢剤を含まず、
前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
【請求項2】
前記親水性滑沢剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記崩壊剤として、2種類の崩壊剤を含む請求項1から2のいずれかに記載の顆粒。
【請求項4】
糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体を噴霧乾燥造粒し、顆粒を得ることを含み、
前記顆粒が、下記(i)及び(ii)のいずれかを満たすことを特徴とする顆粒の製造方法:
(i)前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体が親水性滑沢剤を更に含み、
前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である;
(ii)前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体が親水性滑沢剤を含まず、
前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
【請求項5】
前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体として、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類が懸濁状態である液体を用いる請求項4に記載の顆粒の製造方法。
【請求項6】
前記親水性滑沢剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項4から5のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項7】
前記崩壊剤として、2種類の崩壊剤を含む請求項4から5のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項8】
糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤と、親水性滑沢剤とを含む顆粒を含有する錠剤であって、
前記顆粒が、前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間であることを満たすことを特徴とする錠剤。
【請求項9】
糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と崩壊剤とを含む顆粒と、親水性滑沢剤とを含有する錠剤であって、
前記顆粒が親水性滑沢剤を含まず、
前記顆粒が、前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、前記親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間であることを満たすことを特徴とする錠剤。
【請求項10】
前記親水性滑沢剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項8から9のいずれかに記載の錠剤。
【請求項11】
前記崩壊剤として、2種類の崩壊剤を含む請求項8から9のいずれかに記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品の錠剤を製造するために好適に用いられる顆粒及びその製造方法、並びに前記顆粒を用いた錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品の錠剤の製造方法には、原料を混合後直接打錠する製造方法と、予め原料を造粒しておいて打錠する製造方法がある。予め原料を造粒しておいて打錠する製造方法では、予め造粒することにより、含量均一性が良く、打錠する際の流動性に優れ均一な性能の錠剤が得られるという利点がある。この造粒の方法には、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、乾式造粒等種々の方法がある。これらの中でも、噴霧乾燥造粒は生産性の面から有利である。
【0003】
これまでに、水分の存在下、特に口腔内において迅速に崩壊する錠剤を製造するための直接圧縮性マトリックスに関する技術として、所定量の噴霧マンニトール、及び所定量の架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムからなる共混合物であって、BET表面積が1.5m2/gを超える共混合物(「顆粒」と称することがある。)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来技術における速崩壊性錠剤と比べて、崩壊時間が短く、しかも充分な硬度を有する口腔内速崩壊性錠剤に関する技術として、マンニトールとキシリトールが複合粒子を形成し、無機賦形剤及び崩壊剤が複合粒子中に均質に分散してなる口腔内速崩壊性錠剤用の組成物(「顆粒」と称することがある。)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、これらの提案の技術の顆粒では、成形性は十分とまでは言えず、また、顆粒を用いて製造した錠剤の硬度、崩壊性についての更なる向上も求められている。更に、錠剤には、優れた保存安定性も求められる。
【0006】
したがって、優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することが可能な顆粒の提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2011-524386号公報
【特許文献2】特開2005-139168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することが可能な顆粒及びその製造方法、並びに前記顆粒を用いた錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む顆粒であって、下記(i)及び(ii)のいずれかを満たす顆粒を用いた錠剤は、成形性が良く、錠剤硬度が高いにも関わらず、口腔内での優れた崩壊性を有し、更には優れた保存安定性も有することを知見した。
(i)前記顆粒が親水性滑沢剤を更に含み、
前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である;
(ii)前記顆粒が親水性滑沢剤を含まず、
前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む顆粒であって、
下記(i)及び(ii)のいずれかを満たすことを特徴とする顆粒である。
(i)前記顆粒が親水性滑沢剤を更に含み、
前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である;
(ii)前記顆粒が親水性滑沢剤を含まず、
前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
<2> 前記親水性滑沢剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である前記<1>に記載の顆粒である。
<3> 前記崩壊剤として、2種類の崩壊剤を含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の顆粒である。
<4> 糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体を噴霧乾燥造粒し、顆粒を得ることを含み、
前記顆粒が、下記(i)及び(ii)のいずれかを満たすことを特徴とする顆粒の製造方法である。
(i)前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体が親水性滑沢剤を更に含み、
前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である;
(ii)前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体が親水性滑沢剤を含まず、
前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
<5> 前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体として、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類が懸濁状態である液体を用いる前記<4>に記載の顆粒の製造方法である。
<6> 前記親水性滑沢剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である前記<4>から<5>のいずれかに記載の顆粒の製造方法である。
<7> 前記崩壊剤として、2種類の崩壊剤を含む前記<4>から<6>のいずれかに記載の顆粒の製造方法である。
<8> 糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤と、親水性滑沢剤とを含む顆粒を含有する錠剤であって、
前記顆粒が、前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間であることを満たすことを特徴とする錠剤である。
<9> 糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と崩壊剤とを含む顆粒と、親水性滑沢剤とを含有する錠剤であって、
前記顆粒が親水性滑沢剤を含まず、
前記顆粒が、前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、前記親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間であることを満たすことを特徴とする錠剤である。
<10> 前記親水性滑沢剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である前記<8>から<9>のいずれかに記載の錠剤である。
<11> 前記崩壊剤として、2種類の崩壊剤を含む前記<8>から<10>のいずれかに記載の錠剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することが可能な顆粒及びその製造方法、並びに前記顆粒を用いた錠剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、試験例1における製造直後のエテンザミド錠剤の硬度を測定した結果を示す図である。
【
図2】
図2は、試験例1における製造直後のエテンザミド錠剤の崩壊試験1(JP崩壊試験)の結果を示す図である。
【
図3】
図3は、試験例1における製造直後のエテンザミド錠剤の崩壊試験2(口腔内崩壊試験)の結果を示す図である。
【
図4】
図4は、試験例1におけるエテンザミド錠剤の経時での錠剤硬度を測定した結果を示す図である。
【
図5】
図5は、試験例1におけるエテンザミド錠剤の経時での崩壊試験1(JP崩壊試験)の結果を示す図である。
【
図6】
図6は、試験例1におけるエテンザミド錠剤の経時での崩壊試験2(口腔内崩壊試験)の結果を示す図である。
【
図7】
図7は、試験例2における製造直後のエテンザミド錠剤の硬度を測定した結果を示す図である。
【
図8】
図8は、試験例2における製造直後のエテンザミド錠剤の崩壊試験1(JP崩壊試験)の結果を示す図である。
【
図9】
図9は、試験例2における製造直後のエテンザミド錠剤の崩壊試験2(口腔内崩壊試験)の結果を示す図である。
【
図10】
図10は、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した実施例2の顆粒の一例の画像である。
【
図11】
図11は、SEMで撮影した実施例5の顆粒の一例の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(顆粒及びその製造方法)
本発明の顆粒の第1の態様は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤と、親水性滑沢剤とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分とを含む。
本発明の顆粒の第2の態様は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分とを含む。前記第2の態様の顆粒は、顆粒中に親水性滑沢剤を含まず、錠剤を製造する際の打錠用粉末に親水性滑沢剤と共に配合して用いられる。
本発明の顆粒は、いずれも本発明の顆粒の製造方法により好適に製造することができる。即ち、本発明の顆粒は、噴霧乾燥造粒して得られた顆粒(以下、「噴霧乾燥顆粒」と称することがある。)であることが好ましい。
以下、本発明の顆粒の製造方法の説明と併せて、本発明の顆粒についても説明する。
【0014】
<顆粒の製造方法>
本発明の顆粒の製造方法は、噴霧乾燥造粒工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0015】
<<噴霧乾燥造粒工程>>
前記噴霧乾燥造粒工程は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体を噴霧乾燥造粒し、顆粒を得る工程である。
【0016】
-糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含む液体-
前記液体(以下、「調製液」と称することがある。)は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分とを含む。
前記第1の態様の顆粒を製造する場合、前記調製液は、親水性滑沢剤を含む。
前記第2の態様の顆粒を製造する場合、前記調製液は、親水性滑沢剤を含まない。
【0017】
--糖及び/又は糖アルコールからなる糖類--
前記糖類としては、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蔗糖、乳糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、イソマルト、ラクチトール、スクロース、グリセリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、より優れた効果が得られる点で、糖アルコールが好ましく、マンニトールがより好ましい。
前記糖類は、市販品を使用することができる。
【0018】
前記調製液における前記糖類の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0019】
--崩壊剤--
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルセルロース(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)等のセルロース誘導体、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、コーンスターチ等のデンプンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルセルロース(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)等のセルロース誘導体が好ましく、より優れた効果が得られる点で、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
【0020】
前記顆粒は、2種類の崩壊剤を含むことが好ましく、クロスカルメロースナトリウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含むことがより好ましい。前記クロスカルメロースナトリウムと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとの質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、より優れた効果が得られる点で、3:1~1:3(クロスカルメロースナトリウム:低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)が好ましい。
【0021】
前記崩壊剤は、市販品を使用することができる。
【0022】
前記調製液における前記崩壊剤の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0023】
--親水性滑沢剤--
前記親水性滑沢剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。前記親水性滑沢剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記親水性滑沢剤は、市販品を使用することができる。
【0024】
前記調製液における前記親水性滑沢剤の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0025】
--その他の成分--
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結合剤、無機添加剤、前記糖類以外の賦形剤等の医薬品の添加剤として公知のものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用することができる。
前記調製液におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、ゼラチン、部分α化デンプン、アラビアガム、プルラン、デキストリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記結合剤は、市販品を使用することができる。
【0027】
前記調製液における前記結合剤の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0028】
前記無機添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、マグネシウム、及びカルシウムのいずれかを含有する医薬上許容される無機化合物などが挙げられる。
前記無機添加剤のより具体的な例としては、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ハイドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
前記無機添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機添加剤は、市販品を使用することができる。
【0029】
前記調製液における前記無機添加剤の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0030】
前記糖類以外の賦形剤等の医薬品の添加剤として公知のものとしては、例えば、結晶セルロース、トウモロコシデンプン等の賦形剤、流動化剤、甘味剤、吸湿剤、除湿剤、コーティング剤、色素、矯味矯臭剤、溶解補助剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記糖類以外の賦形剤等の医薬品の添加剤として公知のものは、市販品を使用することができる。
【0031】
前記調製液における前記糖類以外の賦形剤等の医薬品の添加剤として公知のものの含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0032】
--調製--
前記調製液を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、メタノール等の医薬的に許容される溶媒に上記した各成分を添加、混合する方法などが挙げられる。
【0033】
前記調製液は、添加した各成分が溶解した状態のものであってもよいし、懸濁した状態のものであってもよいが、より優れた効果が得られる点で、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類が懸濁状態であることが好ましい。前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類が懸濁状態であるとは、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類が完全に溶解していなければよく、一部が溶解している状態であってもよい。
【0034】
--噴霧乾燥造粒--
前記噴霧乾燥造粒の方法としては、特に制限はなく、公知の装置を用いて実施することができる。
前記噴霧乾燥造粒の条件としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記噴霧乾燥造粒により得られた造粒物は、必要に応じて篩過してもよい。
【0035】
<<その他の工程>>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む液体を調製する調製工程などが挙げられる。
【0036】
<顆粒>
本発明の顆粒は、優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することができる。また、前記第1の態様の顆粒は、錠剤の製造時に滑沢剤の添加が不要であり、混合作業性にも優れる。
【0037】
前記第1の態様の顆粒は、下記(i)を満たす。
(i)前記顆粒が親水性滑沢剤を更に含み、
前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
【0038】
前記第2の態様の顆粒は、下記(ii)を満たす。
(ii)前記顆粒が親水性滑沢剤を含まず、
前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
【0039】
前記成形は、例えば、前記第1の態様の顆粒では、顆粒とエテンザミドとをミクロ型透視式V型混合機(筒井理化学器械社製)にて混合し、得られた粉体をロータリー打錠機(VERGO、菊水製作所社製)にて、回転数30rpmの条件により打錠(打錠圧:6.0kN)して、直径8mm、厚み4mm、湾曲率(R)10、200mgのエテンザミド錠剤とする。
また、前記第2の態様の顆粒では、顆粒とエテンザミドとをミクロ型透視式V型混合機(筒井理化学器械社製)にて混合した後、親水性滑沢剤を加えてミクロ型透視式V型混合機にて混合し、得られた粉体をロータリー打錠機(VERGO、菊水製作所社製)にて、回転数30rpmの条件により打錠(打錠圧:6.0kN)して、直径8mm、厚み4mm、湾曲率(R)10、200mgのエテンザミド錠剤とする。
【0040】
前記硬度は、例えば、錠剤硬度測定装置(Tablet Tester 8M、Pharmatron Dr.schleuniger社製)を用いて測定することができる。
【0041】
前記崩壊時間は、例えば、崩壊錠測定装置(NT-400、富山産業社製)を用い、第18日本薬局方の条件で試験液に精製水を用いて測定することができる。
【0042】
前記口腔内崩壊時間は、例えば、口腔内(速)崩壊錠測定装置(トリコープテスタ、岡田精工社製)を用い、吐出速度6.0mL/分の条件で試験液に調製した人工唾液を用いて測定することができる。
【0043】
上記した錠剤の各物性は、錠剤を製造した直後に測定した物性であってもよいし、所定期間保管後に測定した物性であってもよいが、製造した直後及び所定期間保管後の両方において測定した物性が上記(i)又は(ii)を満たすことが好ましい。
【0044】
本明細書において、所定期間保管後とは、下記の条件で保管した後のことをいう。
前記錠剤30錠をガラス軽量規格瓶(No.1K)に入れ、開放系にて、温度40℃、相対湿度75%で1週間又は1か月間保管する。
【0045】
前記第1の態様の顆粒における前記糖類の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、87質量%~98質量%が好ましい。
【0046】
前記第1の態様の顆粒における前記崩壊剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%~10質量%が好ましい。
【0047】
前記第1の態様の顆粒における前記親水性滑沢剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%~3質量%が好ましい。
【0048】
前記第2の態様の顆粒における前記糖類の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90質量%~99質量%が好ましい。
【0049】
前記第2の態様の顆粒における前記崩壊剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%~10質量%が好ましい。
【0050】
前記第1及び第2の顆粒における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第1の顆粒は、前記糖類、前記崩壊剤、及び前記親水性滑沢剤のみからなるものであってもよい。
前記第2の顆粒は、前記糖類及び前記崩壊剤のみからなるものであってもよい。
【0051】
前記顆粒の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm~150μmが好ましい。本明細書において、平均粒子径とは、体積平均粒子径のことをいう。
【0052】
本発明の顆粒は、賦形剤等として医薬品や食品の錠剤の製造等に好適に用いることができる。
【0053】
(錠剤)
本発明の錠剤は、本発明の顆粒を少なくとも含み、食品素材又は活性成分や必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0054】
第1の態様の錠剤は、上記した第1の態様の顆粒を少なくとも含む。即ち、第1の態様の錠剤は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤と、親水性滑沢剤とを含む顆粒であって、下記条件を満たす顆粒を含む。
前記顆粒70質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
【0055】
前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類、前記崩壊剤、及び前記親水性滑沢剤は、上記した顆粒及びその製造方法の項目に記載したものと同様である。
【0056】
前記第1の態様の錠剤における前記顆粒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%~99.9質量%が好ましく、50質量%~99.9質量%がより好ましく、70質量%~99.9質量%が更に好ましい。
【0057】
第2の態様の錠剤は、上記した第2の態様の顆粒と、親水性滑沢剤とを少なくとも含む。即ち、第2の態様の錠剤は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む顆粒であって、下記条件を満たす顆粒を含む。
前記顆粒が親水性滑沢剤を含まず、
前記顆粒が、前記顆粒67.9質量部~69.9質量部と、前記親水性滑沢剤0.1質量部~2.1質量部と、エテンザミド30質量部とを配合した打錠用粉体を打錠圧6.0kNで成形したときの錠剤の物性が、硬度30N~150N、崩壊時間10秒間~120秒間、及び口腔内崩壊時間10秒間~120秒間である。
【0058】
前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類、前記崩壊剤、及び前記親水性滑沢剤は、上記した顆粒及びその製造方法の項目に記載したものと同様である。
【0059】
前記第2の態様の錠剤における前記顆粒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%~99.9質量%が好ましく、50質量%~99.9質量%がより好ましく、67.9質量%~99.9質量%が更に好ましい。
【0060】
前記第2の態様の錠剤における前記親水性滑沢剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.1質量%~3質量%がより好ましく、0.1質量%~1.5質量%が更に好ましい。
【0061】
<食品素材又は活性成分>
-食品素材-
前記食品素材としては、食品に用いることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコサミン、アミノ酸、ビタミン類、コンドロイチン、ミネラル類、コラーゲン、ウコン、イチョウ葉、ブルーベリー、大豆イソフラボン、ローヤルゼリー、クロレラなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記食品素材は、市販品を使用することができる。
【0062】
-活性成分-
前記活性成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高血圧薬、狭心薬、気管支拡張薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、抗パーキンソン薬、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、強心薬、解熱鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、制酸薬、生薬、降圧薬、抗生物質、抗菌剤、不整脈用薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用薬、利胆薬、ホルモン薬、痛風治療薬、抗リウマチ薬、化学療法薬、糖尿病用薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、骨粗鬆症用薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、泌尿器科用薬、胃腸薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、呼吸促進薬、血管収縮薬、鎮暈薬、去痰薬、中枢神経作用用薬、潰瘍治療薬、胃粘膜修復薬、鎮痛鎮痙薬等に使用される医薬品有効成分などが挙げられる。
具体的には、エテンザミド、アセトアミノフェン、テモカプリル塩酸塩、カベルゴリン、ベシル酸アムロジピン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ファモチジン、ラフチジン、エカベトナトリウム、クエン酸モサプリド、レバミピド、ボグリボース、リスペリドン、イミダプリル塩酸塩、メロキシカム、ミルナシプラン塩酸塩、レボフロキサシン、クラリスロマイシン、サルポグレラート塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩、タムスロシン塩酸塩、ミゾリビン、タクロリムス水和物、フルボキサミンマレイン酸塩、グリメピリド、ラモセトロン塩酸塩、ニコランジル、ドネペジル塩酸塩、酒石酸ゾルピデム、ピオグリタゾン塩酸塩、アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、アトルバスタチンカルシウム水和物、フルバスタチンナトリウム、ロラタジン、ロサルタンカリウム、パロキセチン塩酸塩水和物、ラベプラゾールナトリウム、リバビリン、コハク酸スマトリプタン、ペロスピロン塩酸塩水和物、フマル酸クエチアピン、オロパタジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エバスチン、セフジトレンピボキシル、塩酸セフカペンピボキシル、バルサルタン、ビカルタミド、アカルボースなどが挙げられる。
前記活性成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記活性成分は、市販品を使用することができる。
【0063】
前記錠剤における食品素材又は活性成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%~80質量%が好ましく、0.1質量%~30質量%がより好ましい。
【0064】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した医薬品の添加剤として公知のものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用することができる。
【0065】
前記錠剤の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、素錠(裸錠)、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、徐放錠、口腔内崩壊錠(OD錠)、舌下錠、チュアブル錠などが挙げられる。本発明の顆粒は、前記錠剤の中でも、口腔内崩壊錠(「口腔内速崩性錠剤」と称することもある。)に好適に用いることができる。
【0066】
前記錠剤の製造方法としては、第1の態様の錠剤では本発明の第1の態様の顆粒を用い、第2の態様の錠剤では本発明の第2の態様の顆粒と親水性滑沢剤を用いる以外は、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
【実施例0067】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0068】
(試験例1)
<実施例1>
<<調製液の作製>>
精製水2,737gとマンニトール(Pearlitol 50C ROQUETTE社製)1,500gを撹拌混合し、懸濁液とした。この懸濁液を撹拌しながら、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウム(旭化成社製)31.0g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製)15.5gと、親水性滑沢剤であるラウリル硫酸ナトリウム(ナカライテスク社製)1.5gとを添加して均一な調製液を作製した。
【0069】
<<噴霧乾燥>>
噴霧乾燥機(OC-16型、大川原化工機社製)を用いて、ディスク式アトマイザ(MC-65)により調製液を供給しながら、146℃の噴霧乾燥雰囲気下にて噴霧乾燥を実施し、噴霧乾燥造粒物を得た。得られた噴霧乾燥造粒物を目開き500μmで篩過し、平均粒子径39μmの実施例1の顆粒を得た。
【0070】
<実施例2>
<<調製液の作製>>
精製水4,448gとマンニトール(Pearlitol 50C ROQUETTE社製)2,450gを撹拌混合し、懸濁液とした。この懸濁液を撹拌しながら、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウム(旭化成社製)51.0g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製)25.5gと、親水性滑沢剤であるフマル酸ステアリルナトリウム(日本曹達社製)25.5gとを添加して均一な調製液を作製した。
【0071】
<<噴霧乾燥>>
前記調製液を用いた以外は実施例1と同様に噴霧乾燥して、実施例2の顆粒(平均粒子径46μm)を得た。
【0072】
<実施例3>
<<調製液の作製>>
精製水4,835gとマンニトール(Pearlitol 50C ROQUETTE社製)2,100gを撹拌混合し、懸濁液とした。この懸濁液を撹拌しながら、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウム(旭化成社製)43.3g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製)21.6gを添加して均一な調製液を作製した。
【0073】
<<噴霧乾燥>>
前記調製液を用いた以外は実施例1と同様に噴霧乾燥して、実施例3の顆粒(平均粒子径38μm)を得た。
【0074】
<実施例4>
<<調製液の作製>>
精製水4,835gとマンニトール(Pearlitol 50C ROQUETTE社製)2,100gを撹拌混合し、懸濁液とした。この懸濁液を撹拌しながら、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウム(旭化成社製)43.3g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製)21.6gを添加して均一な調製液を作製した。
【0075】
<<噴霧乾燥>>
前記調製液を用いた以外は実施例1と同様に噴霧乾燥して、実施例4の顆粒(平均粒子径38μm)を得た。
【0076】
<比較例1>
<<調製液の作製>>
精製水4,413gとマンニトール(Pearlitol 50C ROQUETTE社製)2,100gを撹拌混合した後、この懸濁液を撹拌しながら、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウム(旭化成社製)43.8g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製)21.9gと、滑沢剤(親水性ではない)であるステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製)21.9gとを添加して均一な調製液を作製した。
【0077】
<<噴霧乾燥>>
前記調製液を用いた以外は実施例1と同様に噴霧乾燥して、比較例1の顆粒(平均粒子径41μm)を得た。
【0078】
<比較例2>
マンニトール(Pearlitol 50C ROQUETTE社製)336gと、クロスカルメロースナトリウム(旭化成社製)7gと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製)3.5gとを粉末状態のまま混合して、比較例2の顆粒を得た。
【0079】
<評価>
<<打錠1>>
実施例1~2又は比較例1の顆粒350gと、モデル薬剤としてエテンザミド(粉末タイプ、山本化学工業社製)150gとをミクロ型透視式V型混合機(筒井理化学器械社製)にて混合し、得られた粉体をロータリー打錠機(VERGO、菊水製作所社製)にて、回転数30rpmの条件により打錠(打錠圧:4.9kN、5.4kN、6kN、8kN、又は10kN)して、直径8mm、厚み4mm、湾曲率(R)10、200mgのエテンザミド錠剤を得た。
【0080】
<<打錠2>>
実施例3の顆粒349.65gと、モデル薬剤としてエテンザミド(粉末タイプ、山本化学工業社製)150gとをミクロ型透視式V型混合機にて混合した後、親水性滑沢剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.35gを加えてミクロ型透視式V型混合機にて混合した。得られた粉体を打錠1と同様の条件(但し打錠圧は、4.2kN、6kN、8kN、又は10kNとした。)にて製錠し、エテンザミド錠剤を得た。
【0081】
<<打錠3>>
実施例4又は比較例2の顆粒346.5gと、モデル薬剤としてエテンザミド(粉末タイプ、山本化学工業社製)150gとをミクロ型透視式V型混合機にて混合した後、親水性滑沢剤としてのフマル酸ステアリルナトリウム3.5gを加えてミクロ型透視式V型混合機にて混合した。得られた粉体を打錠1と同様の条件(但し打錠圧は、4.6kN、6kN、8kN、又は10kNとした。)にて製錠し、エテンザミド錠剤を得た。
但し、比較例2の顆粒を用いた場合には、顆粒の流動性が低く、打錠時に臼への顆粒の供給が困難であり、エテンザミド錠剤が得られなかった。
【0082】
<<錠剤硬度>>
錠剤硬度測定装置(Tablet Tester 8M、Pharmatron Dr.schleuniger社製)を用いて、製造直後の前記各錠剤の硬度を測定した(n=10)。結果を
図1に示す。
図1中、縦軸は錠剤硬度、横軸は打錠圧を示し、●は実施例1の顆粒を用いた錠剤、◆は実施例2の顆粒を用いた錠剤、○は実施例3の顆粒を用いた錠剤、◇は実施例4の顆粒を用いた錠剤、□は比較例1の顆粒を用いた錠剤の結果を示す。
【0083】
<<崩壊試験1(JP崩壊試験)>>
崩壊錠測定装置(NT-400、富山産業社製)を用い、第18日本薬局方の条件で試験液に精製水を用いて、製造直後の前記各錠剤の崩壊時間を測定した(n=6)。結果を
図2に示す。
図2中、縦軸は崩壊時間、横軸は錠剤硬度を示し、●は実施例1の顆粒を用いた錠剤、◆は実施例2の顆粒を用いた錠剤、○は実施例3の顆粒を用いた錠剤、◇は実施例4の顆粒を用いた錠剤、□は比較例1の顆粒を用いた錠剤の結果を示す。
【0084】
<<崩壊試験2(口腔内崩壊試験)>>
口腔内(速)崩壊錠測定装置(トリコープテスタ、岡田精工社製)を用い、吐出速度6.0mL/分の条件で試験液に調製した人工唾液を用いて、製造直後の前記各錠剤の口腔内崩壊時間を測定した(n=5)。結果を
図3に示す。
図3中、縦軸は口腔内崩壊時間、横軸は錠剤硬度を示し、●は実施例1の顆粒を用いた錠剤、◆は実施例2の顆粒を用いた錠剤、○は実施例3の顆粒を用いた錠剤、◇は実施例4の顆粒を用いた錠剤、□は比較例1の顆粒を用いた錠剤の結果を示す。
【0085】
<<保存安定性>>
-物性-
打錠1~3で製造した錠剤(錠剤硬度:45N、49N、又は52Nのもの)を各30錠ずつガラス軽量規格瓶(No.1K)に取り、開放系にて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の定める安定性試験ガイドラインに従い、温度40℃、相対湿度75%の恒温恒湿槽で保存し、1週間後及び1か月後の錠剤の硬度と崩壊性を、上記した<<錠剤硬度>>、<<崩壊試験1(JP崩壊試験)>>、及び<<崩壊試験2(口腔内崩壊試験)>>と同様にして測定して保存安定性を確認した。
【0086】
図4に錠剤硬度の測定結果(縦軸:錠剤硬度、横軸:保存期間)を示し、
図5に崩壊試験1の結果(縦軸:崩壊時間、横軸:保存期間)を示し、
図6に崩壊試験2の結果(縦軸:口腔内崩壊時間、横軸:保存期間)を示す。各図中、●は実施例1の顆粒を用いた錠剤、◆は実施例2の顆粒を用いた錠剤、○は実施例3の顆粒を用いた錠剤、◇は実施例4の顆粒を用いた錠剤の結果を示す。
【0087】
イニシャル(製造直後)の錠剤の物性及び保存後の錠剤の安定性をまとめた結果を下記の表1に示す。
【0088】
なお、イニシャルの錠剤の各評価は下記の評価基準に従って評価した。
〔評価基準〕
・ 作業性
○ ・・・ 滑沢混合は不要であり、2成分(薬物、造粒顆粒)の秤量のみのため作業性が良好である。
△ ・・・ 滑沢混合は必要であり、3成分(薬物、造粒顆粒、滑沢剤)の秤量を行うが、作業性が許容範囲内である。
× ・・・ 滑沢混合は必要であり、5成分の秤量のため、作業性が劣る。
・ 成形性
○ ・・・ 硬度が高い錠剤が得られ、成形性が良好である。
△ ・・・ 十分な硬度の錠剤が得られ、成形性が許容範囲内である。
× ・・・ 十分な硬度の錠剤が得られず、成形性が劣る。
- ・・・ 錠剤が作製できず、評価不可。
・ JP崩壊試験
○ ・・・ 崩壊時間が短く、崩壊性が良好である。
△ ・・・ 崩壊時間が許容範囲内である。
× ・・・ 崩壊時間が長く、崩壊性が劣る。
- ・・・ 錠剤が作製できず、評価不可。
・ 口腔内崩壊試験
○ ・・・ 崩壊時間が短く、崩壊性が良好である。
△ ・・・ 崩壊時間が許容範囲内である。
× ・・・ 崩壊時間が長く、崩壊性が劣る。
- ・・・ 錠剤が作製できず、評価不可。
【0089】
また、保存後の錠剤の安定性は、下記の評価基準に従って評価した。
・ 成形性
○ ・・・ 錠剤硬度の経時での変化が小さい。
△ ・・・ 錠剤硬度の経時での変化があるが許容範囲内である。
× ・・・ 錠剤硬度の経時での変化が大きい。
- ・・・ イニシャルでの物性の評価が低いため、未評価。
・ JP崩壊試験
○ ・・・ 崩壊時間の経時での変化が小さい。
△ ・・・ 崩壊時間の経時での変化があるが許容範囲内である。
× ・・・ 崩壊時間の経時での変化が大きい。
- ・・・ イニシャルでの物性の評価が低いため、未評価。
・ 口腔内崩壊試験
○ ・・・ 崩壊時間の経時での変化が小さい。
△ ・・・ 崩壊時間の経時での変化があるが許容範囲内である。
× ・・・ 崩壊時間の経時での変化が大きい。
- ・・・ イニシャルでの物性の評価が低いため、未評価。
【0090】
【0091】
表1に示したように、実施例1~4の顆粒を用いた場合は、エテンザミド錠剤のイニシャルの成形性及び崩壊性のいずれも良好であった。また、保存後では崩壊性の低下はなく、錠剤硬度の上昇も抑えられ、保存安定性にも優れた錠剤が得られることが確認された。また、実施例1~2の顆粒を用いた場合は、作業性にも優れるものであった。
一方、比較例1の顆粒を用いた場合は、エテンザミド錠剤のイニシャルの成形性及び崩壊性の評価が低く、錠剤の性能が非常に劣ることが確認された。比較例2の顆粒を用いた場合は、顆粒の流動性が低く、打錠時に臼への顆粒の供給が困難であり、エテンザミド錠剤が得られなかった。
【0092】
(試験例2)
<実施例5>
<<調製液の作製>>
精製水5,500gとマンニトール(Pearlitol 50C ROQUETTE社製)2,400gを撹拌混合し、加熱してマンニトールを完全に溶解させ、溶解液とした。マンニトールが溶解した状態を維持しつつ、この溶解液を撹拌しながら、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウム(旭化成社製)50g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製)25gと、親水性滑沢剤であるフマル酸ステアリルナトリウム(日本曹達社製)25gとを添加して均一な調製液を作製した。
【0093】
<<噴霧乾燥>>
前記調製液を用いた以外は実施例1と同様に噴霧乾燥して、実施例5の顆粒(平均粒子径36μm)を得た。
【0094】
<評価>
実施例5の顆粒を用いた以外は、試験例1における<<打錠1>>と同様にして、エテンザミド錠剤を得た。
製造直後のエテンザミド錠剤について、試験例1における<<錠剤硬度>>、<<崩壊試験1(JP崩壊試験)>>、及び<<崩壊試験2(口腔内崩壊試験)>>と同様にして、各評価を行った。
実施例5の顆粒を用いた錠剤の結果を、上記した試験例1における実施例2の顆粒を用いた錠剤の結果と併せて、
図7~9に示す(
図7:錠剤硬度、
図8:崩壊試験1(JP崩壊試験)、
図9:崩壊試験2(口腔内崩壊試験))。
図7~9中、◆は実施例5の顆粒を用いた錠剤、●は実施例2の顆粒を用いた錠剤の結果を示す。
また、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した、実施例2の顆粒の一例の画像を
図10に、実施例5の顆粒の一例の画像を
図11に示す。
【0095】
図7~9に示したように、成形性は、実施例2の顆粒を用いた場合と、実施例5の顆粒を用いた場合とで同等であった。一方、崩壊性については、実施例2の顆粒を用いた場合の方が優れていることが確認された。
これは、
図10~11に示したように、顆粒の形状の違いが、錠剤内部の導水路の差となり、崩壊時間に影響したと考えられる。