IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キョーラク株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ホース 図1
  • 特開-ホース 図2
  • 特開-ホース 図3
  • 特開-ホース 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173306
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/118 20060101AFI20231130BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F16L11/118
F16L1/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085467
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】江口 鉄明
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA42
3H111CA46
3H111CA47
3H111CB06
3H111CB09
3H111CB14
3H111CB22
3H111CB23
3H111CB24
3H111CB30
(57)【要約】
【課題】キンクしにくくすることと、悪臭の発生を抑制することとの両立を図ることが可能なホースを提供する。
【解決手段】本発明によれば、内部を液体が流通可能なホースであって、径方向外側に凸となる山部と径方向内側に凸となる谷部とが長手方向に沿って交互に形成されたコルゲート形状を有し、液体と接する最内層と、最内層の外側に配置されたガスバリア層とを備え、最内層には、滑落材および抗菌剤が添加されているホースが提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を液体が流通可能なホースであって、
径方向外側に凸となる山部と径方向内側に凸となる谷部とが長手方向に沿って交互に形成されたコルゲート形状を有し、
前記液体と接する最内層と、前記最内層の外側に配置されたガスバリア層とを備え、
前記最内層には、滑落材および抗菌剤が添加されている、ホース。
【請求項2】
請求項1に記載のホースであって、
前記ガスバリア層の外側に配置され、エラストマーを含んで構成されるエラストマー層を備える、ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、洗濯機や洗面台に設けられる排水ホースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-99544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような排水ホース内には汚水が流れるため、排水ホースから悪臭が漏れ出すという問題がある。そこで、エチレン・ビニルアルコール樹脂(EVOH)などで構成されるガスバリア層を排水ホースに設けることによって、ホースからの悪臭の漏れ出しを抑制することが考えられる。
【0005】
しかし、ガスバリア層は、一般に可撓性が低いためにガスバリア層を設けたオーバーフローホースは、固くなりキンクしやすくなる、つまり折れ曲がりやすくなる。そのため、キンクしにくくするため、コルゲート形状を排水ホースに形成することが考えられる。
【0006】
しかしながら、コルゲート形状を排水ホースに形成する場合、外周面だけでなく内周面にも凹凸が存在するため、内周面の凹み部分に汚れが付着して溜まりやすく、その汚れにより雑菌が繁殖して悪臭の発生が促進され、その結果、ホースからの悪臭が却って増大してしまう場合がある。このため、排水ホースにおいて、キンクしにくくすることと、悪臭の発生を抑制することとの両立を図ることが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、キンクしにくくすることと、悪臭の発生を抑制することとの両立を図ることが可能なホースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)内部を液体が流通可能なホースであって、径方向外側に凸となる山部と径方向内側に凸となる谷部とが長手方向に沿って交互に形成されたコルゲート形状を有し、前記液体と接する最内層と、前記最内層の外側に配置されたガスバリア層とを備え、前記最内層には、滑落材および抗菌剤が添加されている、ホース。
(2)(1)に記載のホースであって、前記ガスバリア層の外側に配置され、エラストマーを含んで構成されるエラストマー層を備える、ホース。
【0009】
このような構成とすることにより、ガスバリア層によって雑菌の繁殖による悪臭の発生を防止することができる。また、ホースのコルゲート形状によってホースをキンクしにくくすることができる。また、最内層に添加されている滑落材によって、コルゲート形状に起因するホースの内周面の凹み部分に汚れが付着しにくくするとともに、仮に凹み部分に汚れが付着したとしても最内層に添加されている抗菌剤によって当該汚れによる雑菌の繁殖を抑えることができる。以上より、キンクしにくくすることと、悪臭の発生を抑制することとの両立を図ることが可能なホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】洗面台の下において取り付けられたホース1を示す図である。
図2】ホース1の要部を示す一部断面構成図である。
図3】ホース1の層構成図である。
図4】ホース1の要部を示す一部断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.ホースの構成
【0013】
図1は、本発明の一実施形態のホース1の要部を示す一部断面構成図を示す。図1に示すように、ホース1は、可撓性を有し、内部を液体(例えば、水)が流通可能な管状体である。ホース1は、洗面台10の下において、当該洗面台での水位が所定以上になったときに排水するオーバーフローホースや、排水設備の配管の途中に設けられ下水道の悪臭やガスが屋内へ侵入するのを防ぐ排水用トラップホースとして使用される。なお、ホース1は、オーバーフローホースや排水用トラップホース以外の用途で使用されても良い。
【0014】
図2に示すように、ホース1は、径方向(図中の上下方向)外側に凸となる山部1aと径方向内側に凸となる谷部1bとが長手方向(図中の左右方向)に沿って交互に形成されたコルゲート形状を有する。ホース1の肉厚は、例えば1.0~2.5mmであり、具体的には例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9,2.0,2.1、2.2、2.3、2.4、2.5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ホース1の内径d1は、例えば25mmである。ホース1の内径は、例えば、10~100mmであり、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60,70,80、90、100mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。ホース1の径方向における山部1a(または谷部1b)の高さ(深さ)d2は、例えば1.0~10mmであり、具体的には例えば、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0,10.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ホース1の径方向における山部1a(または谷部1b)の高さ(深さ)d2は、ホース1の肉厚より大きいことが好ましい。ホース1の長手方向における山部1a(または谷部1b)の形成間隔d3は、例えば1~20mmであり、具体的には例えば、1、2、4、6、8、10、12、14、16,18、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ホース1は、ブロー成形によって形成されたブロー成形体である。ブロー成形の詳細は後述する。
【0015】
ホース1の山部1aおよび谷部1b、ホース1の全域に設けられても良いが、部分的に設けられても良い。特に、排水パイプとの接続口付近(水平に近くなる箇所、図1の符号Aを参照)においては、ホース1は、コルゲート形状を有しない方が好ましい。ホース1においてコルゲート形状を有しない範囲(平坦な筒部分)は、全体として例えば40%以下、洗面台10の下に取り付けたときの水平からのホース1の角度が例えば15度以下となる範囲であることが好ましい。
【0016】
ホース1は、多層構成(4種5層)を有する。図2は、ホース1の層構成の一例であり、ホース1の内面側から順に、最内層2と、接着樹脂層3と、ガスバリア層4と、接着樹脂層5と、最外層6(本発明の「エラストマー層」に対応)とを備える。なお、ホース1の層構成は、これらの層に別の層を備えるものであっても良い。また、ホース1の層構成を、最内層2、ガスバリア層4および最外層6の多層構成としても良い。
【0017】
ホース1がガスバリア層4を備えることによって、ホース1内において雑菌が繁殖しにくくなり悪臭の発生を防止することができる。ただし、ガスバリア層4を備えるホース1は、特に外径(ホース径)が大きくなると固くなりキンクしやすくなる、つまり折れ曲がりやすくなる。そのため、ホース1をキンクしにくくする(具体的には、ホース1を曲げた場合、曲げたホース1の内径側の曲率Rが55になってもキンクしにくくする)ため、ホース1にコルゲート形状を形成している。しかし、コルゲート形状をホース1に形成した場合、外周面だけでなく内周面にも凹凸が存在するため、内周面の凹み部分に汚れが付着して溜まりやすく、その汚れにより雑菌が繁殖して悪臭が発生する。
【0018】
そこで最内層2には、滑落材および抗菌剤が添加されている。このような構成とすることにより、最内層2に添加されている滑落材によって、コルゲート形状に起因するホース1の内周面の凹み部分に汚れが付着しにくくするとともに、仮に凹み部分に汚れが付着したとしても最内層2に添加されている抗菌剤によって当該汚れによる雑菌の繁殖を抑えることができる。以上より、キンクしにくくすることと、悪臭の発生を抑制することとの両立を図ることが可能なホース1を提供することができる。
【0019】
ホース1(側壁)の厚さに対する各層の厚さの比率は、例えば、以下の通りである。
最内層2:15%
接着樹脂層3:5%
ガスバリア層4:5%
接着樹脂層5:5%
最外層6:70%
【0020】
以下、各層について説明する。
【0021】
(最内層2)
最内層2は、ホース1の最も内側に配置され、ホース1の内部を流通する液体(例えば、排水)と接する層であり、例えば有機系シリコーン等の滑落材と、銀をはじめとする抗菌性金属を各種の無機物担体に担持した抗菌剤とが添加され、オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物で構成される。オレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン(PE)であり、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好適である。最内層2の曲げ弾性率は、特にオレフィン系樹脂がポリエチレン(PE)である場合、120MPa以下であることが好ましい。この曲げ弾性率は、例えば、10~120MPaであり、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。本明細書において、曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して25℃で測定することができる。
【0022】
最内層2を構成する材料は、耐薬品性および柔軟性に優れ、滑落材および抗菌剤がブリードアウトしやすくなるように添加剤は無添加であることが好ましい。本実施形態では、滑落材および抗菌剤は、マスターバッチ(MB)に含まれてオレフィン系樹脂に添加される。最内層2におけるマスターバッチの配合量は、例えば5質量%以下である。滑落材を含むマスターバッチとしては、例えば有機系シリコーンを樹脂に高濃度(シリコーン濃度:50%)で混在させ、粒状に形成したマスターバッチ(ヘキサケミカル社製、商品名:ML-950)が使用される。また、抗菌剤を含むマスターバッチとしては、例えば抗菌機能が高く安全性の高い銀系抗菌剤(銀系無機物)を樹脂に混在させ、粒状に形成したマスターバッチ(東京インキ株式会社製、商品名:PEX CLA-73 AL)が使用される。
【0023】
なお、抗菌剤を含むマスターバッチを5部、PLA(ポリ乳酸)樹脂に添加したものをサンプルとし、サンプルに試験菌株としての大腸菌および黄色ブドウ球菌を接種し、接種から24時間後の試験菌株数の変化を確認する抗菌性試験をJIS-Z-2801(試験方法)に基づいて行った。その結果、接種から24時間後における大腸菌および黄色ブドウ球菌の試験菌株数の減少を確認した。
【0024】
(最外層6)
最外層6は、ホース1の最も外側に配置される層であり、ホース1をよりキンクしにくくするため、柔軟性に優れる熱可塑性エラストマー(熱可塑性樹脂)を含む樹脂組成物で構成される。熱可塑性樹脂は、オレフィン系、スチレン系の熱可塑性エラストマーであることが好ましい。最外層6の引張強さは10MPa以下であることが好ましい。なお、最外層6は、オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物で構成されても良い。この場合、オレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン(PE)であり、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好適である。樹脂組成物は、樹脂のみを含んでも良く、樹脂と添加剤を含んでも良い。添加剤としては、滑剤やフィラーなどが挙げられる。
【0025】
(ガスバリア層4)
ガスバリア層4は、ガスバリア性が高い樹脂で構成される。このような樹脂としては、エチレン・ビニルアルコール樹脂(EVOH)や芳香族ポリアミド等が挙げられる。ガスバリア層4を設けることによって、ホース1内において雑菌が繁殖しにくくなり悪臭の発生を防止することができる。ホース1の耐屈曲性を向上させる観点から、ガスバリア層4は、柔軟性に優れたエチレン・ビニルアルコール樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:SF7503B)で構成されることが好ましい。ガスバリア層4のエチレン含量は、例えば29mol~50%であることが好ましく、具体的には例えば29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であることが好ましい。ガスバリア層4の曲げ弾性率は2500MPa以下であることが好ましい。この曲げ弾性率は、例えば、1500~2500MPaであり、具体的には例えば、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
(接着樹脂層3,5)
接着樹脂層3,5は、接着性樹脂で構成される。接着性樹脂としては、ホース1の屈曲により剥がれない程度の強度が求められ、酸変性ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。接着樹脂層3,5を設けることによってガスバリア層4と、最外層6または最内層2との接着性が向上する。
【0027】
2.ホース1の製造方法
ホース1は、例えば押出機から筒状に押し出された多層樹脂に対してコルゲーターによってコルゲート形状を成形することによって形成することができる。コルゲーターでは、一対のベルト車を作動させて、それぞれの側の分割型を同一方向に同一速度で移動させる。それぞれの側の分割型は、一対のベルト車の間で型合わせされて管状成形金型を構成するが、押出機の押出口から管状成形金型内に供給された溶融チューブは、バキューム機構により吸引されて又はエアーを吹き込むことによって管状成形金型の内面に押し付けられ、管状体(ホース1)に順次成形されて、型離れ位置から順次送り出される。なお、押出機から多層樹脂を押し出して、成形用回転軸上に螺旋状に捲回し、成形用回転軸上に捲回された多層樹脂を一体に溶着することで、当該多層樹脂をホース状に成形しても良い。ホース1は、例えばパリソンのダイレクトブロー成形によっても形成することができる。ダイレクトブロー成形では、押出機から押し出された溶融状態の筒状パリソンを一対の分割金型(具体的には、ホース1のコルゲート形状に対応する山部と谷部とが内面に設けられた金型)で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込んで分割金型の内面にパリソンを密着させることによってホース1を製造する。パリソンの層構成は、ホース1の層構成と同様である。多層のパリソンは、共押出成形等によって形成可能である。
【0028】
なお、上記実施形態において、図4に示すように、ホース1において山部1aの肉厚は、谷部1bの肉厚より小さくて良い。山部1aの肉厚が谷部1bの肉厚より小さいことによってホース1は曲がりやすくなる。
【符号の説明】
【0029】
1 :ホース
1a :山部
1b :谷部
2 :最内層
3 :接着樹脂層
4 :ガスバリア層
5 :接着樹脂層
6 :最外層
10 :洗面台
図1
図2
図3
図4