(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173311
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】弾性波デバイス、フィルタ、マルチプレクサ、および弾性波デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20231130BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20231130BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H3/08
H01L23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085473
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】栗原 倫之
(72)【発明者】
【氏名】土門 啓
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097BB15
5J097CC05
5J097DD29
5J097EE08
5J097FF04
5J097FF05
5J097JJ06
5J097JJ09
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】配線の断線を抑制する弾性波デバイスを提供すること。
【解決手段】弾性波デバイス100は、支持基板10と、支持基板10を貫通し、支持基板10の上面11より突出したビア配線26と、支持基板10上に設けられ、平面視においてビア配線26に重ならない圧電層14と、支持基板10と圧電層14との間に設けられ、平面視においてビア配線26に重ならない絶縁層12と、圧電層14上に設けられた弾性波素子30と、ビア配線26上から圧電層14上にかけて設けられ、ビア配線26と弾性波素子30とを電気的に接続する配線40とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板を貫通し、前記支持基板の上面より突出したビア配線と、
前記支持基板上に設けられ、平面視において前記ビア配線に重ならない圧電層と、
前記支持基板と前記圧電層との間に設けられ、平面視において前記ビア配線に重ならない絶縁層と、
前記圧電層上に設けられた弾性波素子と、
前記ビア配線上から前記圧電層上にかけて設けられ、前記ビア配線と前記弾性波素子とを電気的に接続する配線と、を備える弾性波デバイス。
【請求項2】
前記ビア配線は、平坦な上面と、前記上面の周囲に位置し、前記上面に向かって斜め上方に傾斜した傾斜面と、を有する、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
平面視において前記絶縁層で覆われていない前記支持基板の上面は、前記絶縁層で覆われた前記支持基板の上面に対して凹んでいる、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記ビア配線の上面が前記支持基板の上面から突出した最大の厚さは、前記配線の厚さの2.5倍以下である、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記圧電層は、タンタル酸リチウム層またはニオブ酸リチウム層である、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記支持基板は、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、またはシリコン基板であり、
前記ビア配線は、銅、銀、または金を主成分とする、請求項5に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
平面視において前記弾性波素子を囲んで前記支持基板上に設けられた環状体と、
前記支持基板との間に空隙を挟んで前記環状体上に設けられ、前記弾性波素子を前記空隙内に封止する蓋体と、
前記空隙内において前記ビア配線と前記蓋体との間に設けられ、平面視して前記ビア配線の上面を覆い、前記ビア配線の周囲に位置する下面が前記ビア配線上における前記配線の上面より前記支持基板の近くに位置する柱状体と、を備える、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
請求項1または2に記載の弾性波デバイスを含むフィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【請求項10】
支持基板内にビア配線を形成する工程と、
前記ビア配線を形成した後、前記支持基板上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に圧電層を形成する工程と、
前記圧電層上に弾性波素子を形成する工程と、
平面視において前記ビア配線と重なる領域および前記ビア配線の周囲の領域の前記圧電層および前記絶縁層を除去するとともに、前記ビア配線を前記支持基板の上面より突出させる工程と、
前記ビア配線を前記支持基板の上面より突出させた後、前記ビア配線上から前記圧電層上にかけて設けられ、前記ビア配線と前記弾性波素子とを電気的に接続する配線を形成する工程と、を備える弾性波デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイス、フィルタ、マルチプレクサ、および弾性波デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の通信機器に用いられる弾性波デバイスとして、支持基板上に圧電層が設けられた構造が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支持基板上に絶縁層を介して圧電層が設けられた構造において、支持基板を貫通するビア配線と圧電層上に設けられた弾性波素子とを電気的に接続させるために、ビア配線上から圧電層上にかけて配線を設けることになる。この場合に、配線がビア配線上から引き出される際に断線が生じてしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、配線の断線を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持基板と、前記支持基板を貫通し、前記支持基板の上面より突出したビア配線と、前記支持基板上に設けられ、平面視において前記ビア配線に重ならない圧電層と、前記支持基板と前記圧電層との間に設けられ、平面視において前記ビア配線に重ならない絶縁層と、前記圧電層上に設けられた弾性波素子と、前記ビア配線上から前記圧電層上にかけて設けられ、前記ビア配線と前記弾性波素子とを電気的に接続する配線と、を備える弾性波デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記ビア配線は、平坦な上面と、前記上面の周囲に位置し、前記上面に向かって斜め上方に傾斜した傾斜面と、を有する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、平面視において前記絶縁層で覆われていない前記支持基板の上面は、前記絶縁層で覆われた前記支持基板の上面に対して凹んでいる構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記ビア配線の上面が前記支持基板の上面から突出した最大の厚さは、前記配線の厚さの2.5倍以下である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記圧電層は、タンタル酸リチウム層またはニオブ酸リチウム層である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記支持基板は、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、またはシリコン基板であり、前記ビア配線は、銅、銀、または金を主成分とする構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、平面視において前記弾性波素子を囲んで前記支持基板上に設けられた環状体と、前記支持基板との間に空隙を挟んで前記環状体上に設けられ、前記弾性波素子を前記空隙内に封止する蓋体と、前記空隙内において前記ビア配線と前記蓋体との間に設けられ、平面視して前記ビア配線の上面を覆い、前記ビア配線の周囲に位置する下面が前記ビア配線上における前記配線の上面より前記支持基板の近くに位置する柱状体と、を備える構成とすることができる。
【0013】
本発明は、上記に記載の弾性波デバイスを含むフィルタである。
【0014】
本発明は、上記に記載のフィルタを含むマルチプレクサである。
【0015】
本発明は、支持基板内にビア配線を形成する工程と、前記ビア配線を形成した後、前記支持基板上に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に圧電層を形成する工程と、前記圧電層上に弾性波素子を形成する工程と、平面視において前記ビア配線と重なる領域および前記ビア配線の周囲の領域の前記圧電層および前記絶縁層を除去するとともに、前記ビア配線を前記支持基板の上面より突出させる工程と、前記ビア配線を前記支持基板の上面より突出させた後、前記ビア配線上から前記圧電層上にかけて設けられ、前記ビア配線と前記弾性波素子とを電気的に接続する配線を形成する工程と、を備える弾性波デバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線の断線を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図、
図1(b)は、
図1(a)の領域Aの拡大図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る弾性波デバイスの一部の平面図である。
【
図3】
図3は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
【
図4】
図4(a)から
図4(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図5】
図5(a)から
図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図6】
図6(a)は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図、
図6(b)は、
図6(a)の領域Aの拡大図である。
【
図7】
図7(a)から
図7(c)は、比較例に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図8】
図8は、比較例に係る弾性波デバイスで生じる課題を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面図である。
【
図10】
図10(a)は、実施例2に係る弾性波デバイスの平面図、
図10(b)は、
図9における柱状体近傍を拡大した断面図である。
【
図12】
図12は、実施例4に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例0019】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の断面図、
図1(b)は、
図1(a)の領域Aの拡大図である。
図1(a)に示すように、支持基板10上に圧電層14が設けられている。支持基板10と圧電層14との間に絶縁層12が設けられている。絶縁層12は、支持基板10上に設けられた境界層16と、境界層16上に設けられた温度補償層18と、を含む。圧電層14上に金属膜20が設けられている。金属膜20は、弾性波素子30を形成する。弾性波素子30を覆うように保護膜22が設けられている。支持基板10を貫通するビア配線26が設けられている。ビア配線26は、支持基板10を貫通する孔28内に埋め込まれている。支持基板10の下面にビア配線26に電気的に接続される端子24が設けられている。
【0020】
領域29において圧電層14および絶縁層12が除去されている。領域29は平面視においてビア配線26と重なる。絶縁層12で覆われていない支持基板10の上面11は、絶縁層12で覆われた支持基板10の上面11に対して凹んでいる。絶縁層12で覆われた支持基板10の上面11に対する、絶縁層12で覆われていない支持基板10の上面11の凹み量Dは、例えば0.5μm~5μm程度である。支持基板10の上面11は、絶縁層12で覆われた部分および覆われていない部分の両方において凹凸面となっていてもよい。支持基板10の上面11が凹凸面である場合、凹み量Dは例えば凹凸の最上点と最下点の中点を通る面により算出される。領域29内のビア配線26上から絶縁層12および圧電層14の側面を介し圧電層14上にかけて配線40が設けられている。配線40は、密着層42と、密着層42上に設けられ、密着層42より電気抵抗率の小さい低抵抗層44と、を有する。配線40は、弾性波素子30とビア配線26とを電気的に接続する。電気的に接続とは、直流および交流のいずれか一方で導通があるように接続されていればよい。
【0021】
図1(b)に示すように、領域29においてビア配線26の上面25は支持基板10の上面11より突出している。ビア配線26は、支持基板10の上面11より突出した面として、略平坦な上面25と、上面25の周囲に位置し、上面25に向かって盛り上がるように傾斜した傾斜面27と、を有する。傾斜面27の傾斜角度θは例えば5°~45°程度である。配線40は、ビア配線26の上面25および傾斜面27に沿って形成されている。
【0022】
ビア配線26の上面25が支持基板10の上面11から突出した最大の厚さHは例えば0.5μm~5μmである。支持基板10の上面11が凹凸面である場合、最大の厚さHは例えば凹凸の最上点と最下点の中点を通る面により算出される。配線40の密着層42の厚さは例えば100nm~300nm程度であり、低抵抗層44の厚さは例えば800nm~1200nm程度である。配線40の厚さTは例えば1000nm~1500nm程度である。ビア配線26の上面25が支持基板10の上面11から突出した最大の厚さHは、例えば配線40の厚さTの2.5倍以下である。なお、ビア配線26と密着層42との間にチタン層等の金属層が設けられていてもよい。金属層の厚さは1000nm程度であってもよい。金属層は、平面視においてビア配線26を完全に覆って設けられていてもよい。
【0023】
支持基板10は、例えば厚さが50μm~500μmのサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、またはシリコン基板であり、一例として厚さが75μmのサファイア基板である。サファイア基板は単結晶のAl2O3を主成分とする基板であり、アルミナ基板は多結晶のAl2O3を主成分とする基板であり、スピネル基板は単結晶または多結晶のMgAl2O4を主成分とする基板である。石英基板はアモルファスのSiO2を主成分とする基板であり、水晶基板は単結晶のSiO2を主成分とする基板であり、シリコン基板は、単結晶または多結晶のSiを主成分とする基板である。絶縁層12は、例えば厚さが1μm~40μm程度であり、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または酸化アルミニウム膜等の単層または複合層の無機絶縁膜である。境界層16は、一例として厚さが1.1μm~1.35μmの酸化アルミニウム膜であり、温度補償層18より音速の速い膜である。温度補償層18は、一例として厚さが450nm~660nmの酸化シリコン膜であり、例えばフッ素等の不純物を含む酸化シリコン膜または無添加の酸化シリコン膜である。温度補償層18の弾性定数の温度係数の符号は圧電層14の弾性定数の温度係数の符号と反対である。
【0024】
圧電層14は、例えば単結晶タンタル酸リチウム層または単結晶ニオブ酸リチウム層であり、一例として厚さが0.75μm~1.1μmの回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層である。支持基板10と絶縁層12との界面は鏡面でもよいし凹凸面でもよい。支持基板10の上面11の表面粗さRaは例えば100nm~500nm程度でもよい。温度補償層18と圧電層14との間に、温度補償層18と圧電層14とを接合する接合層が設けられていてもよい。接合層は、一例として厚さが10nmの酸化アルミニウム膜である。
【0025】
金属膜20は、例えばアルミニウム膜、アルミニウム合金膜、またはモリブデン膜である。保護膜22は、例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜等の絶縁膜である。配線40の密着層42は、例えばチタン層またはチタンタングステン層であり、一例として厚さが200nmのチタン層である。低抵抗層44は、例えば金層であり、一例として厚さが1000nmの金層である。ビア配線26は、例えば最大径が20μm~60μm程度の銅層、銀層、または金層であり、一例として最大径が40μmの銅層である。ビア配線26の上面25の表面粗さRaは例えば0.1nm~0.5nm程度である。端子24は、一例として支持基板10側から厚さが2μmの銅膜、厚さが5μmのニッケル膜、および厚さが0.3μmの金膜が積層されている。
【0026】
図2は、実施例1に係る弾性波デバイス100の一部の平面図である。
図2では、ビア配線26の近傍を示している。
図2に示すように、圧電層14および絶縁層12(
図2では不図示)が除去された領域29においてビア配線26が支持基板10に設けられている。配線40の幅は例えばビア配線26より大きい。平面視において配線40はビア配線26を覆って設けられている。配線40は、ビア配線26を完全に覆って設けられている場合でもよいし、ビア配線26の一部は覆わずに設けられている場合でもよい。この場合、配線40の幅はビア配線26より小さい場合でもよい。
【0027】
図3は、実施例1における弾性波素子30の平面図である。
図3に示すように、弾性波素子30は弾性表面波共振器である。圧電層14上にIDT(Interdigital Transducer)32と反射器34が形成されている。IDT32は、互いに対向する1対の櫛型電極36を有する。櫛型電極36は、複数の電極指37と複数の電極指37を接続するバスバー38とを有する。反射器34は、IDT32の両側に設けられている。IDT32は圧電層14に弾性表面波を励振する。弾性波の波長は1対の櫛型電極36の一方の櫛型電極36の電極指37のピッチにほぼ等しい。すなわち、弾性波の波長は1対の櫛型電極36の電極指37のピッチの2倍にほぼ等しい。
【0028】
[製造方法]
図4(a)から
図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を示す断面図である。
図4(a)に示すように、支持基板10に孔28を形成する。なお、この時点では孔28は支持基板10を貫通していなくてもよい。孔28は例えばレーザ光を照射することにより形成する。孔28内および支持基板10上に金属層を例えばめっき法を用い形成する。支持基板10上の金属層を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い除去する。これにより、孔28内にビア配線26が形成される。
【0029】
図4(b)に示すように、支持基板10上に、境界層16および温度補償層18を含む絶縁層12を形成する。絶縁層12の形成には例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いる。絶縁層12上に圧電基板を接合する。絶縁層12上に絶縁層12と圧電基板とを接合するための接合層を形成してもよい。圧電基板の接合には例えば表面活性化法を用いる。圧電基板の上面を例えばCMP法を用い研磨することで所望の厚さの圧電層14を形成する。
【0030】
図4(c)に示すように、圧電層14上に金属膜20を形成することで弾性波素子30を形成する。弾性波素子30は、例えば真空蒸着法およびリフトオフ法、または、スパッタリング法およびエッチング法を用い形成する。圧電層14上に弾性波素子30を覆うように保護膜22を形成する。保護膜22は例えばCVD法を用い形成する。
【0031】
図5(a)に示すように、平面視においてビア配線26と重なる領域およびビア配線26の周囲の領域を含む領域29における圧電層14および絶縁層12を除去する。圧電層14および絶縁層12の除去には例えばドライエッチング法を用いる。例えば圧電層14がタンタル酸リチウム層またはニオブ酸リチウム層である場合、アルゴンガスを主成分とするエッチングガスを用いて圧電層14をドライエッチングにより除去する。絶縁層12が酸化シリコンおよび/または酸化アルミニウムを主成分とする場合、アルゴンガスを主成分とするエッチングガスから塩素系のガスを主成分とするエッチングガスに切り替え、絶縁層12をドライエッチングにより除去する。例えば支持基板10がサファイア基板である場合、絶縁層12の除去に続いて、塩素系のガスを主成分とするエッチングガスを用いたドライエッチングを行うことで、支持基板10のエッチング速度がビア配線26のエッチング速度より速くなる。これにより、ビア配線26の上面25が支持基板10の上面11から突出するように形成される。このように、支持基板10のエッチング速度がビア配線26のエッチング速度よりも速くなるような条件により支持基板10をエッチングすることで、ビア配線26の上面25を支持基板10の上面11から突出させる。なお、アルゴンガスを主成分とするエッチングガスから塩素系ガスを主成分とするエッチングガスへの切り替えは、絶縁層12のエッチング途中または絶縁層12が除去されて支持基板10およびビア配線26が露出した瞬間に行ってもよい。
【0032】
図5(b)に示すように、ビア配線26上から絶縁層12および圧電層14の側面を介し圧電層14上にかけて配線40を形成する。配線40は、例えば密着層42と密着層42上のシード層と(不図示)をスパッタリング法を用い形成し、シード層上に低抵抗層44を電解めっき法を用い形成する。
【0033】
図5(c)に示すように、支持基板10の下面を研磨または研削する。これにより、支持基板10の下面にビア配線26が露出する。支持基板10の下面にビア配線26と接続する端子24を形成する。これにより、実施例1に係る弾性波デバイスが形成される。
【0034】
[比較例]
図6(a)は、比較例に係る弾性波デバイス500の断面図、
図6(b)は、
図6(a)の領域Aの拡大図である。
図6(a)および
図6(b)に示すように、比較例に係る弾性波デバイス500では、ビア配線26が支持基板10の上面11から凹んで設けられている。支持基板10の上面11からビア配線26の上面25までの凹みの深さDは例えば3μm~10μm程度である。その他の構成は実施例1の
図1(a)および
図1(b)と同じであるため説明を省略する。
【0035】
図7(a)から
図7(c)は、比較例に係る弾性波デバイス500の製造方法を示す断面図である。まず、実施例1の
図4(a)から
図4(c)で説明した工程と同じ工程を行う。その後、
図7(a)に示すように、平面視においてビア配線26と重なる領域およびビア配線26の周囲の領域を含む領域29における圧電層14および絶縁層12を除去する。圧電層14および絶縁層12の除去は、例えばアルゴンガスを主成分とするエッチングガスを用いたドライエッチングにより行う。このときに、絶縁層12が残存することを抑制するためにオーバーエッチングを行う。支持基板10は例えばサファイア基板であり、ビア配線26は例えば銅を主成分とする場合、アルゴンガスを主成分としたドライエッチングでは、ビア配線26のエッチング速度は支持基板10のエッチング速度に比べて速くなる。このため、ビア配線26が支持基板10の上面11に対して凹んで形成される。
【0036】
図7(b)に示すように、ビア配線26上から絶縁層12および圧電層14の側面を介し圧電層14上にかけて配線40を形成する。
【0037】
図7(c)に示すように、支持基板10の下面を研磨または研削し、支持基板10の下面にビア配線26を露出させる。支持基板10の下面にビア配線26と接続する端子24を形成する。これにより、比較例に係る弾性波デバイスが形成される。
【0038】
図8は、比較例に係る弾性波デバイス500で生じる課題を示す断面図である。
図8に示すように、比較例に係る弾性波デバイス500では、ビア配線26が支持基板10の上面11から凹んで形成されている。ビア配線26が支持基板10の上面11から凹むのはオーバーエッチングによるものであることから、この凹みの深さは一定に形成されるものではなく、深く形成される場合がある。配線40は、ビア配線26の上面25からビア配線26より突出した支持基板10の上面11に引き出されて形成される。この場合に、ビア配線26の上面25が支持基板10の孔28の側面に接触する箇所において、配線40の厚さが薄くなり配線40に断線50が生じることがある。例えば、支持基板10の上面11からのビア配線26の凹み量が大きい場合や、ビア配線26の上面25が外周領域に比べて中央領域が盛り上がった形状である場合等に、ビア配線26の上面25と支持基板10の孔28との境界近傍において配線40に断線50は生じやすくなる。
【0039】
一方、実施例1によれば、
図1(a)および
図1(b)のように、ビア配線26が支持基板10の上面11より突出して設けられている。これにより、ビア配線26上から圧電層14上にかけて設けられた配線40に対して、厚さが薄くなる箇所が生じることを抑制できる。よって、配線40に断線が生じることを抑制できる。
【0040】
また、実施例1によれば、
図5(a)のように、平面視においてビア配線26と重なる領域およびビア配線26の周囲の領域を含む領域29の圧電層14および絶縁層12を除去するとともに、ビア配線26を支持基板10の上面11より突出させる。その後、
図5(b)のように、ビア配線26上から圧電層14上にかけて配線40を形成する。これにより、配線40に厚さが薄くなる箇所が生じることを抑制でき、配線40に断線が生じることを抑制できる。
【0041】
また、実施例1では、
図5(a)のように、圧電層14および絶縁層12を除去することと、ビア配線26を支持基板10の上面11より突出させることとを、エッチングにより行っている。これにより、連続した処理が可能となり、製造工程の複雑化が抑制できかつ製造工数を低減できる。
【0042】
また、実施例1では、
図1(b)のように、ビア配線26は、略平坦な上面25と、上面25の周囲に位置し、上面25に向かって斜め上方に傾斜した傾斜面27と、を有する。これにより、配線40に厚さが薄くなる箇所が生じることを抑制でき、配線40に断線が生じることを抑制できる。配線40の断線を抑制する点から、傾斜面27の傾斜角度θは5°以上45°以下の場合が好ましく、5°以上40°以下の場合がより好ましく、5°以上30°以下の場合が更に好ましい。
【0043】
また、実施例1では、
図1(a)のように、圧電層14および絶縁層12で覆われていない支持基板10の上面11は、圧電層14および絶縁層12で覆われた支持基板10の上面11に対して凹んでいる。これにより、ビア配線26を支持基板10の上面11より突出させることができ、配線40に断線が生じることを抑制できる。絶縁層12および圧電層14で覆われた支持基板10の上面11に対する、絶縁層12および圧電層14で覆われていない支持基板10の上面11の凹み量Dは、0.5μm~5μmの場合でもよいし、0.5μm~4μmの場合でもよいし、0.5μm~3μmの場合でもよい。
【0044】
また、実施例1では、
図1(b)のように、ビア配線26の上面25が支持基板10の上面11から突出した最大の厚さHは、配線40の厚さTの2.5倍以下である。これにより、配線40に厚さが薄くなる箇所が生じることを抑制でき、配線40に断線が生じることを抑制できる。配線40の断線を抑制する点から、最大の厚さHは、配線40の厚さTの2倍以下が好ましく、1.5倍以下がより好ましく、1倍以下が更に好ましい。
【0045】
また、実施例1では、圧電層14はタンタル酸リチウム層またはニオブ酸リチウム層である。この場合、圧電層14はアルゴンガスを主成分とするエッチングガスを用いたドライエッチングにより除去することが行われる。製造工程の複雑化を抑えるために、絶縁層12も引き続きアルゴンガスを主成分とするエッチングガスを用いたドライエッチングにより除去すると、比較例の
図7(a)のように、ビア配線26が支持基板10の上面11より凹んで形成されることがある。この場合、配線40に断線50が生じることがある。したがって、圧電層14がタンタル酸リチウム層またはニオブ酸リチウム層である場合、配線40の断線を抑制するために、ビア配線26を支持基板10の上面11より突出させることが好ましい。
【0046】
また、実施例1では、支持基板10はサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、またはシリコン基板であり、ビア配線26は銅、銀、または金を主成分とする。この場合、比較例の
図7(a)のように、オーバーエッチングによってビア配線26が支持基板10の上面11から凹んで形成されやすく、配線40に断線50が生じることがある。したがって、このような場合に、配線40の断線を抑制するために、ビア配線26を支持基板10の上面11より突出させることが好ましい。なお、ある層がある元素を主成分とするには、ある層に主成分以外の意図的な、または、意図しない不純物が含まれることを許容する。ある層においてある元素が主成分である場合、ある元素の濃度は例えば50原子%以上であり、例えば80原子%以上である。
環状体62上に、支持基板10との間に空隙64を挟んでリッド70(蓋体)が設けられている。リッド70は、例えば金属製であり、一例として厚さが30μm程度のコバール板である。リッド70の下面に金属層72が設けられている。金属層72は例えば金層である。環状体62と金属層72とは半田層66により接合されている。半田層66は例えば厚さが4μm程度のAuSn層である。環状体62とリッド70とにより弾性波素子30は空隙64内に封止される。環状体62はビア配線26を介しグランド用の端子24に電気的に接続される。
空隙64内においてビア配線26とリッド70との間に柱状体60が設けられている。柱状体60は、例えば高さが20μm~35μm程度の金層または銅層等の金属層であり、一例として高さが20μm程度の銅層である。柱状体60の直径は例えば60μm程度である。柱状体60は、配線40を介してビア配線26上に設けられている。柱状体60は、例えば金属層72に接触している。柱状体60は、ビア配線26を介しグランド用の端子24に電気的に接続される。柱状体60は、リッド70の潰れの抑制、および/または、リッド70のグランド強化のために設けられている。
実施例2によれば、空隙64内においてビア配線26とリッド70との間に柱状体60が設けられている。柱状体60は、平面視してビア配線26の上面を覆って設けられ、ビア配線26の周囲に位置する下面61がビア配線26上における配線40の上面41より支持基板10の近くに位置している。これにより、柱状体60と配線40との間にアンカー効果が生じ、柱状体60と配線40との間の密着強度を向上できる。