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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173333
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ヘッドホンユニット
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H04R9/02 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085509
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100086335
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 榮一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 博道
(72)【発明者】
【氏名】福島(塩飽) 乃野海
【テーマコード(参考)】
5D012
【Fターム(参考)】
5D012BB01
5D012FA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヘッドホン装置の軽量化を図りながら、振動板の背面から放射される再生音響の振動を制動し、音圧周波数特性の向上をはかる。
【解決手段】ヘッドホンユニット1には、振動板2と磁気回路部5を支持するとともに、振動板2のサブドーム8と対向する領域に再生音響が透過する開口部16が形成された支持フレーム6の背面側に、再生音響の振動を制動する多孔質材料からなる制動部材18が配設されている。制動部材18は、分散配置され、先端部に固定片25が設けられた複数の取り付け片24を介して支持フレーム6の背面側に取り付けられる支持部材20により支持され、外周面が開放された状態で支持フレーム6の背面側に配設される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタードームと前記センタードームの周囲に連続してサブドームが設けられた振動板と、
前記センタードームと前記サブドームの境界部に連結され、前記振動板と一体に振動するボイスコイルと、
マグネットと前記マグネットを支持するヨークと、前記マグネットの先端部側に配設されるとともに、前記ヨークとの間で前記ボイスコイルが挿入される磁気ギャップを構成するポールピースとを備えた磁気回路部と、
中心部に前記ヨークが支持されるヨーク支持部が設けられるとともに、前記ヨーク支持部の外周部に前記ヨーク支持部を囲んで前記振動板のサブドームの外周縁部が支持される振動板支持部が設けられた支持フレームとを備え、
前記磁気回路部は、前記ヨークを前記ヨーク支持部に固定して前記支持フレームに取り付けられ、
前記振動板は、前記支持フレームに取り付けられた磁気回路部の前記磁気ギャップに、前記センタードームと前記サブドームの境界部に連結した前記ボイスコイルを挿入し、前記サブドームの外周縁部を前記支持フレームの振動板支持部に支持され、
前記支持フレームには、前記振動板の前記サブドームと対向する領域に前記振動板から放射される再生音響が透過する開口部が形成されるとともに、前記支持フレームの前記振動板が配設された前面側に対向する背面側に位置し、前記開口部の少なくとも一部を覆って配設され、前記振動板の背面側に放射される再生音響の振動に制動を掛ける制動部材を備え、
前記制動部材は、互いに離間して分散配置された複数の取り付け片を介して前記支持フレームの背面側に取り付けられる支持部材により支持され、外周面の少なくとも一部が開放された状態で前記支持フレームの背面側に配設されていることを
特徴とするヘッドホンユニット。
【請求項2】
前記制動部材は、リング状に形成され、前記支持フレームに支持された前記振動板の前記サブドームに対向する領域を覆って配設されていることを特徴する請求項1記載のヘッドホンユニット。
【請求項3】
前記支持部材は、前記制動部材の外周部を支持するリング状の制動部材支持部と、前記制動部材支持部の外周部から延長され互いに離間して分散形成された複数の取り付け片とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヘッドホンユニット。
【請求項4】
前記制動部材は、多孔質の弾性体からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヘッドホンユニット。
【請求項5】
前記支持部材は、前記制動部材の外周部を支持するリング状の制動部材支持部と、前記制動部材支持部の外周部から延長され互いに離間して分散形成された複数の取り付け片とを有し、
前記制動部材は、前記支持部材により圧縮されて前記支持フレームの背面側に支持され、前記支持フレームの背面側に密接して配設されていることを特徴とする請求項4記載のヘッドホンユニット。
【請求項6】
前記制動部材は、ポリウレタンフォーム、グラスウール、不織布のいずれか一により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヘッドホンユニット。
【請求項7】
前記支持部材は、前記制動部材の外周部を支持するリング状の制動部材支持部と、前記制動部材支持部の外周部から延長され互いに離間して分散形成された複数の取り付け片とを有し、
前記制動部材は、前記支持部材により圧縮されて前記支持フレームの背面側に支持され、前記支持フレームの背面側に密接して配設されていることを特徴とする請求項6記載のヘッドホンユニット。
【請求項8】
前記制動部材は、シート状のグラスウール又は不織布を複数枚積層した積層体からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヘッドホンユニット。
【請求項9】
前記支持部材は、前記制動部材の外周部を支持するリング状の制動部材支持部と、前記制動部材支持部の外周部から延長され互いに離間して分散形成された複数の取り付け片とを有し、
前記制動部材は、前記支持部材により圧縮されて前記支持フレームの背面側に支持され、前記支持フレームの背面側に密接して配設されていることを特徴とする請求項8記載のヘッドホンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して再生音響を聴取するようにしたヘッドホン装置に用いられるヘッドホンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドホン装置に用いられる電気音響変換器として、動電型のヘッドホンユニットが用いられている。この種のヘッドホンユニットとして、振動板と、この振動板に一体に連結されたボイスコイルと、磁場を形成するマグネットが設けられた磁気回路部と、磁気回路部を固定支持するとともに振動板を振動可能に支持する支持フレームとを備えている。
【0003】
このヘッドホンユニットを構成する振動板は、中央部に略半球状に膨出形成したセンタードームが設けられ、このセンタードームの外周囲全周に亘ってサブドームが連続して形成されている。サブドームは、断面形状が円弧状とされたリング状に形成されている。この振動板のセンタードームとサブドームの境界部に、円筒状に巻回されたボイスコイルが一体に連結されている。
【0004】
磁気回路部は、磁場を形成するマグネットと、マグネットが固定されたヨークと、マグネットの上端部に固定されたポールピースを備える。ヨークは、扁平なカップ状に形成されている。ポールピースとヨークは、磁気透過率の高い磁性材料を用いて形成されている。マグネットは、リング状に形成され、ヨークの底部に固定される。ヨークは、マグネットを固定する底部からマグネットの周囲を囲むように周壁が立ち上がり形成されている。そして、ヨークの開放側の端面とポールピースの端面はほぼ同一面にあり、ポールピースの外周面とヨークの開放側内周面との間に磁気ギャップを構成する間隙が構成されている。
【0005】
振動板と磁気回路部を支持する支持フレームは、中心部にヨーク固定部が設けられ、このヨーク固定部の外周側に、ヨーク固定部を囲んで振動板支持部が形成されている。振動板支持部の外周側には、ヘッドホン装置のキャビネットとイヤーパッドを支持するためのフランジ部が連続して形成されている。
【0006】
そして、磁気回路部は、ヨーク固定部にヨークを固定して支持フレームに取り付けられている。また、振動板は、磁気回路部の磁気ギャップ内にボイスコルを挿入した状態で、サブドームの外周縁側のエッジ部を、振動板支持部の外周部に固定して支持フレームに支持されている。このように、振動板は、サブドームの外周縁側のエッジ部を振動板支持部の外周側に支持されて支持フレームに取り付けられることにより、円筒状をなすボイスコイルの中心軸と平行な方向に、ボイスコイルと一体に平行移動しながら振動する。
【0007】
このヘッドホンユニットは、ボイスコイルに音響信号に応じた駆動電流が供給されると、ボイスコイルに流れる駆動電流と磁気ギャップ内に発生する磁束との協働作用によりボイスコイルに駆動力が発生する。振動板は、ボイスコイルに発生する駆動力により振動され、音響信号にしたがった音響再生を実行している。
【0008】
そして、この種の動電型のヘッドホンユニットにあっては、高音質で良好な音圧周波数特性を実現するため、振動板が、ボイスコイルに入力される音響信号の正確に追随して駆動変位することが望ましい。
【0009】
ところで、動電型のヘッドホンユニットにおいて、振動板の背面側から放射される再生音響は、ヘッドホンユニット内、あるいはヘッドホンユニットを収納したヘッドホンハウジング内で反射され反射音響となる。この反射音響の一部はノイズ成分となって振動板に入力される。ノイズ成分となる反射音響が振動板に入力すると、振動板に共振を生じさせ、あるいは振動板の再生出力を減衰させるなどして再生音響特性を劣化させてしまう。
【0010】
そこで、この種の動電型のヘッドホンユニットには、再生音響特性を劣化させ、再生音響の音質を悪化させるおそれがある振動板の背面側から放射される再生音響の振動を制動し減衰させるための制動部材が配設されている。
【0011】
制動部材は、ポリウレタンフォームなどの多孔質材料により形成され、振動板を支持した支持フレームの背面側に配設している。この制動部材は、振動板の背面側から放射される再生音響を透過させるように支持フレームに形成された開口部を閉塞して前記支持フレームの背面側に密接して支持されている。
【0012】
開口部を介して支持フレームの背面側に放射される再生音響は、制動部材に入射されることにより減衰される。支持フレームの背面側に放射される再生音響の振動が制動部材により減衰され制動されることにより、再生音響特性の劣化を抑制することができる。
【0013】
多孔質材料からなる制動部材は、再生音響の振動に高い制動を掛けるため、頭部に装着して用いられるヘッドホン装置に用いられるヘッドホンユニットの大きさに比し容量の大きなものが用いられている。制動部材は、支持フレームの背面側から放射される再生音響を確実に制動するため、支持フレームの背面に密接されることが望ましい。
【0014】
そこで、制動部材は、支持フレームの背面側に固定されるカップ状のカバー部材に収納されるようにして前記支持フレームの背面側に密接して配設される。
【0015】
制動部材は、カバー部材に収納するように支持されることにより、圧縮して容量を小さくして支持フレームに配設することができる。このような制動部材の支持構造を採用したヘッドホンユニットを、大きさに制限がある頭部装着型のヘッドホン装置に用いることにより、この種のヘッドホン装置の再生音声特性の劣化を抑制することができる。
【0016】
なお、ヘッドホンユニットに配設された振動板の背面側に構成される音響容量の影響をなくし、音圧周波数特性の劣化を防止するようにしたヘッドホンユニットを開示した文献として特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2013-13021号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上述したヘッドホンユニットの制動部材を支持するカバー部材は、制動部材を収納し、この制動部材の外周側の全面を覆う大きさのカップ状に形成されている。このような大きなカバー部材を用いたヘッドホンユニットは重量が大きくなり、このヘッドホンユニットを用いたヘッドホン装置を重くしてしまう。
【0019】
また、制動部材の外周面のほぼ全面をカバー部材で覆うことにより、ヘッドホンユニットの内部に音響容量が構成される。音響容量は、磁気回路部の磁気ギャップ中の音響質量と相俟って共振を発生させて、再生音響の音圧周波数特性を劣化させてしまうおそれがある。
【0020】
また、制動部材内に入射された再生音響の位相の一部が乱されてヘッドホンユニット内に戻り再生音響に重畳され、再生音響の音質を変化させてしまう。
【0021】
本発明の技術課題は、頭部装着型のヘッドホン装置の軽量化を図りながら、振動板の背面から放射される再生音響の振動を制動し、音圧周波数特性の向上を実現するヘッドホンユニットを提供することにある。
【0022】
また、本発明の技術課題は、再生音響の音質の変化を抑制し、聴感上良好な音質の音響再生を実現可能とするヘッドホンユニットを提供することになる。
【0023】
さらに、本発明の技術課題は、薄い振動板を用い、小さな駆動力で音響再生を行うヘッドホンユニットの音圧周波数特性の改善を容易に行うことを可能とするヘッドホンユニットを提供することにある。
【0024】
さらにまた、本発明の技術課題は、聴取される再生音響の音圧周波数特性の改善とともに、再生音響の音質の制御を容易に行うことができるヘッドホンユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述した技術課題に鑑みて提案される技術手段は、頭部に装着して再生音響の聴取を行うために用いられるヘッドホン装置に組み込まれるヘッドホンユニットに関する。このヘッドホンユニットは、センタードームと前記センタードームの周囲に連続してサブドームが設けられた振動板と、前記センタードームと前記サブドームの境界部に連結され、前記振動板と一体に振動するボイスコイルと、マグネットとこのマグネットを支持するヨークと、前記マグネットの先端部側に配設されるとともに、前記ヨークとの間で前記ボイスコイルが挿入される磁気ギャップを構成するポールピースとを備えた磁気回路部と、中心部に前記ヨークが支持されるヨーク支持部が設けられるとともに、前記ヨーク支持部の外周部に前記ヨーク支持部を囲んで前記振動板のサブドームの外周縁部が支持される振動板支持部が設けられた支持フレームを備える。
【0026】
前記磁気回路部は、前記ヨークを前記ヨーク支持部に固定して前記支持フレームに取り付けられている。前記振動板は、前記支持フレームに取り付けられた磁気回路部の前記磁気ギャップに、前記センタードームと前記サブドームの境界部に連結した前記ボイスコイルを挿入し、前記サブドームの外周縁部を前記支持フレームの振動板支持部に支持されている。
【0027】
前記支持フレームには、前記振動板の前記サブドームと対向する領域に前記振動板から放射される再生音響が透過する開口部が形成されるとともに、前記支持フレームの前記振動板が配設された前面側に対向する背面側に位置し、前記開口部の少なくとも一部を覆って制動部材が配設されている。この制動部材は、前記振動板の背面側に放射される再生音響の振動を制動する。そして、前記制動部材は、互いに離間して分散配置された複数の取り付け片を介して前記支持フレームの背面側に取り付けられる支持部材により支持され、外周面の少なくとも一部が開放された状態で前記支持フレームの背面側に配設されている。
【0028】
前記制動部材は、リング状に形成され、前記支持フレームに支持された前記振動板の前記サブドームに対向する領域を覆って配設されている。
【0029】
前記制動部材を支持する支持部材は、前記制動部材の外周部を支持するリング状の制御部材支持部と、前記制動部材支持部の外周部から延長され互いに離間して分散形成された複数の取り付け片とを有する。
【0030】
そして、前記制動部材は、多孔質の弾性体からなるものが用いれる。この制動部材は、前記支持部材により圧縮されて前記支持フレームの背面側に支持され、前記支持フレームの背面側に密接して配設することが望ましい。
【0031】
さらに、前記制動部材は、ポリウレタンフォーム、グラスウール、不織布のいずれか一により形成されたものが用いられる。
【0032】
また、前記制動部材は、シート状のグラスウール又は不織布を複数枚積層した積層体からなるものを用いることができる。
【発明の効果】
【0033】
上述の技術手段を構成するヘッドホンユニットは、互いに離間して分散配置された複数の取り付け片を設けた支持部材により制動部材を支持することにより、従来のヘッドホンユニットに比し軽量化が図られながら、振動板の背面から放射される再生音響の振動を制動するとともに、内部に音響容量が形成されることを抑制し、再生音響の音圧周波数特性の向上を実現する。
【0034】
さらに、前記ヘッドホンユニットは、再生音響を制動する制動部材が、外周面を解放した状態で支持フレームの背面に配設されることにより、再生音響の音質の変化を抑制し、聴感上良好な音質の音響再生を実現する。
【0035】
さらにまた、前記ヘッドホンユニットは、多孔質部材を圧縮し、外周面を解放した状態で支持フレームに配設される制動部材を用いることにより、薄い振動板を用い、小さな駆動力で音響再生を行うヘッドホンユニットの音圧周波数特性の改善を容易に行うことを可能とし、さらに、聴取される再生音響の音質の制御を容易に行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施の形態に係るヘッドホンユニットの背面側を示す図である。
図2図1に示すヘッドホンユニットA-A線断面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るヘッドホンユニットの制動部材が配設された背面側の分解斜視図である。
図4図3に示すヘッドホンユニットの制動部材が配設される背面側を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明が適用されたヘッドホンユニットの一実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下において説明される実施形態のみに限定されるものではなく、その特徴的構成を変更しない範囲で適宜変更される実施の形態を含む。
【0038】
本実施の形態に係るヘッドホンユニットは、頭部に装着して再生音響の聴取を行うヘッドホン装置に用いられるヘッドホンユニットである。
【0039】
本実施の形態に係るヘッドホンユニット1は、動電型の電気音響変換器として構成されたものであって、図1図2に示すように、振動板2と、この振動板1に一体に連結されたボイスコイル3と、磁場を形成するマグネット4が設けられた磁気回路部5と、この磁気回路部5を固定支持するとともに振動板2をボイスコイル3と一体にと振動可能に支持する支持フレーム6とを備えている。
【0040】
このヘッドホンユニット1を構成する振動板2は、図2に示すように、中央部を略半球状に膨出形成したセンタードーム7が設けられ、このセンタードーム7の外周囲全周に亘ってサブドーム8が連続して形成されている。サブドーム8は、断面形状が円弧状とされたリング状に形成されている。この振動板2のセンタードーム7とサブドーム8の境界部には、円筒状に巻回されたボイスコイル3が一体に連結されている。
【0041】
磁気回路部5は、磁場を形成するマグネット4と、このマグネット4が固定されたヨーク9と、マグネット4の上端部に固定されたポールピース10を備える。ポールピース10は、磁性材料を用いて、マグネット4とほぼ同径のリング状に形成されている。
【0042】
マグネット4は、リング状に形成され、厚さ方向に着磁されている。このマグネット4の上端部に固定されるポールピース10は、磁性材料を用いて形成され、マグネット4とほぼ同径のリング状に形成されている。
【0043】
ヨーク9は、磁性材料を用いて、扁平なカップ状に形成されている。マグネット4は、ヨーク9の底壁9a上に固定して取り付けられている。ヨーク9の底壁9aの外周囲には、マグネット4の外周面を囲むように円筒状の周壁11が立ち上がり形成されている。ヨーク9の周壁11の上端面には、ポールピース10の外周面を囲むようにしてリング状に形成された補助ヨーク12が取り付けられている。補助ヨーク12とポールピース10と同一平面上に位置するように、ヨーク9の周壁11の上端面とマグネット8の上端面にそれぞれ配設されている。
【0044】
そして、補助ヨーク12の内周面と、ポールピース11の外周面との間には、ボイスコイル3が進退可能に移動するに足る間隔を有する磁気ギャップGが構成される。したがって、補助ヨーク12は、ポールピース11の外周面との間に上述の磁気ギャップGを形成するに足る大きさの内周径を有するリング状に形成されている。
【0045】
振動板2と磁気回路部5を支持する支持フレーム6は、中心部に円筒状のヨーク固定部13が設けられている。磁気回路部5は、ヨーク9の周壁11をヨーク固定部13に嵌合して取り付けられている。このとき、磁気回路部5は、ヨーク固定部13の上端側内周部に突設した位置決め片に14に補助ヨーク12を突き当てることにより、ヨーク固定部13に位置決めされて取り付けられる。これにより、小型で薄型に構成されるヘッドホンユニット1の磁気回路部5を高精度に位置決めして支持フレーム6に取り付けることができる。
【0046】
そして、ヨーク固定部13の外周側には、図2に示すように、ヨーク固定部13を囲んで振動板支持部15が形成されている。
【0047】
振動板2は、支持フレーム6に固定された磁気回路部5の磁気ギャップG内にボイスコル3を挿入した状態で、サブドーム8の外周縁側のエッジ部8aを、振動板支持部15の外周部に固定して支持フレーム6に支持されている。このように、振動板2は、サブドーム8の外周縁側のエッジ部8aが振動板支持部15の外周側に支持されて支持フレーム6に取り付けられることにより、円筒状をなすボイスコイル3の中心軸と平行な方向に、ボイスコイル3と一体に平行移動可能に支持されている。
【0048】
振動板2を支持した振動板支持部15には、振動板2の背面側から放射される再生音響を支持フレーム6の外部に放射する複数の開口部16が形成されている。これら開口部16は、振動板支持部15のサブドーム8と対向する円周状の領域に形成されている。
【0049】
このヘッドホンユニット1は、ボイスコイル3に音響信号に応じた駆動電流が供給されることにより、ボイスコイル3に流れる駆動電流と磁気ギャップG内に発生する磁束との協働作用によりボイスコイル3に駆動力が発生する。振動板2は、ボイスコイル3に発生する駆動力により振動され、音響信号に応じた音響再生を実行している。
【0050】
振動板2が振動することにより発生する再生音響は、支持フレーム6の振動板2が配設された前面側と対向する磁気回路部5が支持された背面側に放射される。
【0051】
なお、支持フレーム6に形成した振動板支持部15の外周側には、フランジ部17が連続して形成されている。このフランジ部17には、図示しないが、ヘッドホン装置を構成するキャビネットとイヤーパッドが取り付けられる。
【0052】
そして、支持フレーム6の振動板2が配設された前面側に対向する背面側の外周面には、図1図2に示すように、制動部材18が配設されている。
【0053】
本実施の形態において、制動部材18は、図3図4に示すように、多孔質で弾性を有するポリウレタンフォームによりリング状に形成されている。この制動部材18は、図1図2に示すように、支持フレーム6に支持された振動板2のサブドーム8に対向する領域を覆って、支持フレームに設けた複数の開口部16を覆うに足る大きさのリング状に形成されている。
【0054】
また、制動部材18は、支持フレーム6の背面側に突出して形成されたたヨーク固定部13の高さに比し十分に大きな厚さを有するリング状に形成されている。そして、制動部材18は、図2に示すように、支持フレーム6に支持された振動板2の背面側に構成される音響空間Sに比し、十分に大きな容量を有して形成されている。
【0055】
制動部材18は、支持フレーム6の背面側に固定される支持部材20により支持されて支持フレーム6の背面側に取り付けられる。
【0056】
制動部材18を支持する支持部材20は、図3図4に示すように、制動部材18の一端面から外周面に亘るコーナー部を支持する制動部材支持部21が設けられている。この制動部材支持部21は、図3に示すように、制動部材18の一端面を押圧支持するリング状をなす押圧支持片22と、制動部材18の一端側外周面に係止し、制動部材18の取り付け位置を規制する取り付け位置規制片23とを備える。押圧支持片22は、制動部材18の外周側部分のみを支持し、内周側を解放した状態で支持する大きさのリング状に形成されている。取り付け位置規制片23は、押圧支持片22の外周縁から垂下するように突出し、制動部材18の一端側の外周面を支持する円筒状に形成されている。
【0057】
そして、制動部材支持部21の外周縁には、離間して複数の取り付け片24が分散配置して設けられている。複数の取り付け片24は、図3に示すように、制動部材支持部21に対しほぼ直角に折り曲げられ形成されている。本実施の形態では、取り付け片24は、リング状に形成された制動部材支持部21の外周囲の円周方向に等間隔で三片が設けられている。これら取り付け片24の先端部には、支持部材20を支持フレーム6に固定するための固定片25が設けられている。
【0058】
本実施の形態において、制動部材18は、図1図3に示すように、取り付け片24の高さHより厚さDを厚くして形成されている。
【0059】
そして、制動部材18は、図3に示すように、一端側の外周側を円筒状に形成された取り付け位置規制片23に嵌合するように係止させて支持部材20に保持される。制動部材18を保持した支持部材20は、図2図4に示すように、制動部材18の他端部側をヨーク固定部13の外周側に嵌合するようにして支持フレーム6の背面側に配設される。
【0060】
このとき、制動部材18は、押圧支持片22により押圧され圧縮されることにより、一端面18aを支持フレーム6の背面側に密接して配設される。制動部材18を押圧支持した支持部材20は、取り付け片24の先端に形成した固定片25を支持フレーム6の背面側に形成した支持部材固定部26に突き当て、この固定片25を固定ネジ27などの固定部材を用いて固定することにより支持フレーム6の背面側に取り付けられる。
【0061】
制動部材18は、互いに離間して分散配置された3つの取り付け片24を介して支持フレーム6の背面側に取り付けられる支持部材20により支持されているので、外周面18cを外部に開放した状態で支持フレーム6の背面側に配設された状態となる。
【0062】
また、制動部材18は、一端面を支持フレーム6の背面側に直接接触させて配設されているので、支持フレーム6に形成した開口部16を介してサブドーム8の背面側に連通している。
【0063】
本実施の形態に係るヘッドホンユニット1において、振動板2が駆動されサブドーム8の背面側に放射される再生音響は、支持フレーム6に形成した開口部16を介して多孔質の制動部材18に入射される。制動部材18に入射された再生音響は、多孔質の制動部材18を通過することによってその振動が制動される。
【0064】
そして、制動部材18は、外周面から一端面側を解放した状態で支持フレーム6に配設されているので、サブドーム8の背面側に放射される再生音響の振動に制動を掛けながらヘッドホンユニット1の外部に透過する。
【0065】
本実施の形態に係るヘッドホンユニット1の制動部材18は、外周面から一端面側を解放した状態で支持フレーム6の背面側に支持されているので、ヘッドホンユニット1内のサブドーム8の背面側に音響容量が構成されることを抑制できる。
【0066】
本実施の形態では、ヘッドホンユニット1の内部に音響容量が構成されることを抑制し、サブドーム8の背面側に放射される再生音響の振動を制動することができるので、音圧周波数特性の向上を実現する。
【0067】
また、本実施の形態の制動部材18は、支持フレーム6の背面側に密接して配設されているので、サブドーム8の背面側から放射される再生音響の一部が支持フレーム6の外部に漏れ反射して、サブドーム8の背面側に入射する反射音響を抑制する。このようなサブドーム8の背面側に入射する反射音響を抑制することにより、振動板2から放射される再生音響の音質の変化を抑制し、聴感上良好な音質の音響再生を実現する。
【0068】
本実施に形態に係る制動部材18は、圧縮されて支持フレーム6の背面側に取り付けられることにより内部に形成された多数の孔の孔径が均一化され、振動の制動むらを抑え、いずれの方向から入射される再生音響の振動に対してもほぼ均等に制動を掛けることができる。
【0069】
本実施の形態に係るヘッドホンユニット1は、上述したように、多孔質部材を圧縮し、その外周面を解放した状態で支持フレーム6に配設される制動部材18を用いることにより、薄い振動板2を用い、小さな駆動力で音響再生を行うヘッドホンユニットの音圧周波数特性の改善を容易に行うことを可能とし、さらに、聴取される再生音響の音質の制御を容易に行うことを可能とする。
【0070】
上述した実施の形態では、制動部材18は、リング状に形成された制動部材支持部21の外周囲に等間隔で三片の取り付け片24を設けた支持部材20により支持されることにより外周面が大きく解放された状態で支持されている。支持部材20は、少なくとも外周面の50%以上を解放して制動部材18を支持するように構成されたものであればよく、制動支持部材21から延長される取り付け片24の数やその幅は、機械的な強度などを考慮し適宜選択される。
【0071】
なお、本実施の形態では、支持部材20は、金属板を打ち抜き折り曲げ加工して形成されたものが用いられる。
【0072】
本実施の形態に用いられる制動部材18は、再生音響の振動に所望の制動を掛けるため、適宜の密度を有するものが選択される。また、制動部材18は、支持部材20により圧縮されて支持されたときの密度の変化に応じて、厚さや大きさが選択される。
【0073】
本実施の形態では、再生音響の振動を制動する制動部材18を適宜選択することができるので、ヘッド生装置に求められる特性に応じた再生音響特性を調整し、再生音響の音質を選択することを可能とする。
【0074】
さらに記制動部材18は、多孔質ものであれば、ウレタンフォームのほか、グラスウール、不織布のいずれか一により形成されたものであってもよい。
【0075】
また、制動部材18は、シート状のグラスウール又は不織布を複数枚積層した複合の積層体からなるものを用いたものであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 ヘッドホンユニット、2 振動板、3ボイスコイル、4 マグネット、5 磁気回路部、6 支持フレーム、7 センタードーム、8 サブドーム、9 ヨーク、13 ヨーク固定部、15 振動板支持部、16 開口部、18 制動部材、20 支持部材、21 制動部材支持部、24 取り付け片
図1
図2
図3
図4