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特開2023-173337磁気共鳴イメージング装置、及び、撮像位置決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173337
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、及び、撮像位置決定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
A61B5/055 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085517
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池川 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智宏
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA01
4C096AA08
4C096AB12
4C096AB37
4C096AB38
4C096AC05
4C096AD07
4C096AD14
4C096AD27
4C096BB12
4C096BB18
4C096BB32
4C096BB40
4C096DA19
4C096DC22
4C096DC28
4C096EA01
(57)【要約】
【課題】被検者の呼吸動を考慮した撮像位置の自動設定技術を提供すること、これによりユーザの負担を軽減し且つ臓器位置の変動に対しロバストな撮像を可能にすること。
【解決手段】被検体の周期動の少なくとも1周期に亘って取得したスカウト画像を用いて、撮像条件に応じて本撮像の撮像位置を決定する。その際、スカウト画像から所定の組織を抽出し、当該組織を包含する最小撮像範囲と、当該組織が周期動の周期内で変位する範囲を包含する最大撮像範囲と、を含む複数の撮像範囲を算出し、撮像条件に応じて複数の撮像範囲のいずれかを撮像位置として決定する。周期動が呼吸動の場合、撮像条件は、ユーザによる呼吸方法の指定を含み、指定された呼吸方法に基づいて撮像範囲を選択し、撮像位置(スライス位置)を自動設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核磁気共鳴に基づき被検体の画像を取得する撮像部と、前記被検体の撮像範囲を算出し撮像位置を決定する撮像位置決定部と、を備え、
前記撮像位置決定部は、前記撮像部がスカウトスキャンを実行して取得した画像を用いて、所定の組織を包含する最小撮像範囲と、当該組織が周期動の周期内で変位する範囲を包含する最大撮像範囲と、を含む複数の撮像範囲を算出し、撮像条件に応じて複数の撮像範囲のいずれかを本スキャンの撮像位置として決定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮像位置決定部は、前記スカウトスキャンにより得た画像から、対象臓器の位置及び範囲を検出する組織抽出部を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮像位置決定部は、前記スカウトスキャンにより得た画像から、前記被検体の周期動の位相を算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記周期動は、呼吸動であって、
前記撮像条件として、息止め撮像及び呼吸同期のいずれかを選択させるGUIを表示するUI部をさらに備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮像条件は、息止め撮像を含み、
前記撮像位置決定部は、息止め撮像時に、撮像範囲を最小撮像範囲として、呼吸動の位相に応じた位置で撮像位置を決定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮像条件は、呼吸同期撮像を含み、
前記撮像位置決定部は、呼吸同期撮像時に、撮像範囲を最大撮像範囲として、撮像位置を決定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮像条件は、呼吸同期撮像を含み、
前記撮像位置決定部は、前記呼吸同期撮像において用いるナビゲータエコーの印加位置を決定するナビゲータ位置決定部を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮像位置決定部が算出した撮像範囲に応じて、撮像パラメータの値を調整するパラメータ調整部をさらに備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記パラメータ調整部は、前記撮像範囲によって決まる撮像パラメータと、予め設定された撮像パラメータとを比較し、撮像パラメータ変更の要否を判断することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮像パラメータは、スライス厚、スライス数、及びFOVを含むことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記パラメータ調整部は、撮像条件の優先度に応じて複数のパターンで、撮像パラメータ値の算出を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記パラメータ調整部は、ユーザに撮像条件の優先度を選択させるGUIを提示することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
磁気共鳴イメージングにおいて被検体の撮像位置を決定する方法であって、
スカウトスキャンを実行して取得した画像を用いて、所定の組織を包含する最小撮像範囲と、当該組織が周期動の周期内で変位する範囲を包含する最大撮像範囲と、を含む複数の撮像範囲を算出し、
撮像条件に応じて複数の撮像範囲のいずれかを本スキャンの撮像位置として決定することを特徴とする撮像位置決定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の撮像位置決定方法であって、
撮像範囲を算出後に、撮像パラメータの変更の要否を判断し、変更要の場合に、撮像パラメータの値を算出することを特徴とする撮像位置決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する磁気共鳴イメージング(MRI)装置に関し、特に被検体を撮影する位置を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置を用いた検査では通常、検査部位毎に解剖学的に決まった断面を撮影するが、被検者の体型や体位は検査毎に異なる。このため、同様の撮像シーケンスを実行する場合や解析処理を行う場合であっても、検査の都度、被検者の撮像位置を調整する必要がある。
【0003】
また、被検者には個人差があるため、上記操作は操作者のスキル等によりばらつきが発生する可能性がある。特に腹部は被検者による個人差が大きい部位であり、息止め撮像の場合には呼吸位相による臓器の位置の変動も発生するため、被検者の撮像位置設定の難易度が高い。また、被検者の負担低減の観点から息止め撮像を減らす傾向があるが、この場合は呼吸による臓器位置の変動もあるため、呼吸まで考慮した被検者の撮像位置設定はさらに難易度が高く、操作者によるばらつきも大きくなる。
【0004】
MRI検査では、上述した撮像位置の設定に加え、検査目的に合った撮像パラメータの調整が必要である。従って、撮像位置の設定が適切でなく、設定位置の不良や範囲の不足、それに伴うアーチファクトの発生が生じた場合、再撮像を行うことになりユーザへの負担が増大する。
【0005】
撮像位置の設定におけるユーザ負担を軽減する技術として、例えば、特許文献1には、肝臓を対象とし、エッジ強調画像をもとに臓器のエッジを追跡し、撮像位置を自動検出し設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5660807号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術は、撮像された画像から臓器位置を自動演算するに留まり、被検者の呼吸による臓器位置の変動までは考慮されていない。従って、特許文献1の技術では、撮像位置を検出するために用いた画像と、実際の息止め撮像位置とにずれが生じる可能性があり、このような被検者の臓器位置の変動による撮像失敗を回避することができない。また、撮像中の呼吸動を抑制するために息止め撮像をする必要があり、被検者の負担が大きい。
【0008】
本発明は、被検者の呼吸動を考慮した撮像位置の自動設定技術を提供すること、これによりユーザの負担を軽減し且つ臓器位置の変動に対しロバストな撮像を可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、所定のスカウトスキャンを基に、呼吸動を考慮したスライス位置を自動設定する。
【0010】
即ち、本発明のMRI装置は、核磁気共鳴に基づき被検体の画像を取得する撮像部と、前記被検体の撮像範囲を算出し撮像位置を決定する撮像位置決定部と、を備える。撮像位置決定部は、撮像部がスカウトスキャンを実行して取得した画像を用いて、所定の組織を包含する最小撮像範囲と、当該組織が周期動の周期内で変位する範囲を包含する最大撮像範囲と、を含む複数の撮像範囲を算出し、撮像条件に応じて複数の撮像範囲のいずれかを本スキャンの撮像位置として決定する。
【0011】
また本発明の撮像位置決定方法は、被検体の周期動の少なくとも1周期に亘って取得したスカウト画像を用いて、撮像条件に応じて本撮像の撮像位置を決定する。その際、スカウト画像から所定の組織を抽出し、当該組織を包含する最小撮像範囲と、当該組織が周期動の周期内で変位する範囲を包含する最大撮像範囲と、を含む複数の撮像範囲を算出し、撮像条件に応じて複数の撮像範囲のいずれかを撮像位置として決定する。
【0012】
周期動が呼吸動の場合、撮像条件は、ユーザによる呼吸方法の指定を含み、指定された呼吸方法に基づいて撮像範囲を選択し、撮像位置(スライス位置)を自動設定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検者の体型、臓器の位置・範囲および、周期動の位相(呼吸位相)に基づいて撮像位置(スライス位置)を自動で設定するので、ユーザの手動操作の負担を軽減し、操作者のスキル差によるばらつきを低減し、さらに撮像失敗を防止し被検者の負担を低減することができる。
【0014】
またユーザーは、撮像条件として撮像時の呼吸方法を選択することで、選択された呼吸法に対し最適な位置および範囲を自動設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が適用されるMRI装置の全体概要を示す図
図2】本発明のMRI装置による検査の流れを示す図
図3】実施形態1の撮像位置決定部の機能ブロック図
図4】実施形態1の撮像位置決定の処理を示すフロー
図5】呼吸方法を指定するためのGUIの一例を示す図
図6図4の処理の詳細を示すフロー
図7】位置検出手法の一例を説明する図
図8図4の処理S43の詳細を示すフロー
図9】呼吸位相の推定を説明する図
図10】複数の撮像範囲の決定を説明する図
図11】実施形態2の計算機の機能ブロック図
図12】実施形態2の撮像位置決定後のパラメータ調整を示すフロー
図13】パラメータ調整のための選択肢を提示するGUIの一例を示す図
図14】選択肢のユーザ選択があったときの処理を示すフロー
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
本実施形態のMRI装置は、核磁気共鳴に基づき被検体の画像を取得する撮像部と、被検体の撮像範囲を算出し撮像位置を決定する撮像位置決定部と、撮像部を制御し、前記被検体の周期動の一周期以上の動画の取得を含むスカウトスキャンを実行させる計測制御部と、備える。
【0017】
本実施形態が適用される典型的なMRI装置の構成を図1に示す。図示するように、MRI装置は、被検体101が配置される空間(検査空間)に静磁場を発生する磁石102と、検査空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル103と、被検体101の所定の領域に高周波磁場を発生するRFコイル104と、被検体101が発生するMR信号を検出するRFプローブ105とを備えた撮像部100と、撮像部100の制御や撮像に必要な種々の演算などを行う計算機200とを備えている。計算機200は、撮像部100を制御する計測制御部210、画像作成等の演算を行う演算部220、及び、撮像位置決定に関わる種々の演算を行う撮像位置決定部230などの機能を備えている。また計算機200には、ユーザとのインターフェイスを行うための表示装置301や入力装置302を備えたUI部300が接続されている。MRI装置は、さらに、検査空間に被検体を配置するためのベッド112が備えられている。
【0018】
傾斜磁場コイル103は、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源109からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイル104はRF送信部110の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFプローブ105の信号は、信号検出部106で検出され、信号処理部107で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。
【0019】
傾斜磁場電源109、RF送信部110、信号検出部106は、パルスシーケンスと呼ばれるタイムチャートに従って撮像を行う。撮像では、高周波磁場を印加することで被検体の組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴現象を生じさせて、その応答として被検体から発する核磁気共鳴信号(エコー信号)を検出する。その際、各方向の傾斜磁場を適宜組み合わせて印加するにより、エコー信号に異なる位相エンコードを与え、信号検出部106がそれぞれの位相エンコードで得られるエコー信号を収集する。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり128、256、512等の値が選ばれる。各エコー信号は通常128、256、512、1024個のサンプリングデータからなる時系列信号として得られる。計算機200は、これらのデータを2次元フーリエ変換して1つのMR画像を作成し、表示装置301に表示する。
【0020】
計算機200は、メモリ及びCPUやGPUを備え、計測制御部210、演算部(画像生成/画像処理)220、撮像位置決定部230の各機能は、それらを実現するプログラムをCPU等がアップロードすることで実行される。但し計算機200で実現される機能の一部は、ASICやFPGAなどのプログラマブルICにおいて実現される場合も含み、本発明ではこれらも計算機200の一部として扱う。
【0021】
次に上記構成のMRI装置における撮像位置の設定を含む検査の流れを説明する。図2に計測制御部210による制御のフローチャートを示す。まず検査情報を登録し(S21)、スカウト画像を撮像する(S22)。検査情報は、被検体に関する情報、検査部位(対象疾患)、検査プロトコル(撮像種や順序など)を含み、ユーザーインタフェースを介してユーザが入力する場合と予め記録媒体等に格納された情報を読み込む場合がある。スカウト画像は、撮像位置を決めるための被検体の広範囲を対象とする比較的低分解能画像である。スカウト画像は、2D画像と被検体の周期動の少なくとも一周期に亘って取得される動画とを含む。ここでは2D画像を動画と区別して、2Dスカウト画像という。
【0022】
撮像位置決定部230は、スカウト画像を用いて撮像範囲の自動算出を行い(S23)、スカウト画像上で位置決め(撮像範囲調整)を実施する(S24)。撮像範囲の自動算出とその調整については後述する実施形態において詳述する。撮像範囲調整に伴って、必要に応じてマニュアル或いはシステム内でパラメータ調整を行い(S25)、検査用のメインスキャンを実行する(S26)。パラメータ調整(S25)は、主としてパルスシーケンスを決定する撮像パラメータ、即ちスライス厚、スライス数、マトリクスサイズ、繰り返し時間TR、等であり、撮像範囲を調整したことに伴って調整が必要な場合に実行される。
【0023】
本実施形態のMRI装置は、撮像位置決定部230が、撮像部100が取得したスカウト画像を用いて、所定の組織を包含する最小撮像範囲と、当該組織が周期動の周期内で変位する範囲を包含する最大撮像範囲と、を含む複数の撮像範囲を算出し、撮像条件に応じて複数の撮像範囲のいずれかを本撮像の撮像位置として決定することが特徴である。
【0024】
以下、撮像位置決定部230の処理の具体的な実施形態を説明する。
【0025】
<実施形態1>
本実施形態では、呼吸動(呼吸に起因する動き)が発生する部位に撮像位置を設定する場合を例に、撮像位置設定部230の処理を説明する。呼吸動が発生する部位は主として腹部であり、ここでは撮像部位が腹部である場合を例に説明を行う。
【0026】
本実施形態は、呼吸動が発生する部位に、撮像条件に応じた適切な撮像位置を設定するために、2Dスカウト画像及び動画像のそれぞれを用いる。これら画像から、撮像対象の位置及び位置の変動の推定を行い、これら推定結果を用いて、複数の撮像範囲を算出する。さらに算出した撮像範囲をもとに、ユーザが所望する、呼吸動に関連する撮像手法に応じた撮像範囲或いはナビゲーターエコー取得位置などを決定する。
【0027】
この機能を実現するため、本実施形態の撮像位置決定部230は、スカウトスキャンで取得した画像を用いて、撮像対象である臓器を抽出する組織抽出部と、動画を用いて被検体の周期動の位相を算出する位相算出部と、組織抽出部が抽出した臓器位置及び位相算出部が算出した周期動の位相を用いて、最小撮像範囲及び最大撮像範囲を含む複数の撮像範囲を算出する撮像範囲算出部と、を含み、撮像条件に応じて複数の撮像範囲のいずれかを本スキャンの撮像位置として決定する。
【0028】
撮像位置決定部230の機能ブロック図の一例を図3に示す。図示するように撮像位置決定部230は、画像に対しフィルタ処理などを行う前処理部231、前処理後の画像から所望の撮像部位を抽出する組織抽出部233、抽出した撮像部位から撮像範囲を算出する撮像範囲算出部235、動画像から抽出された時相毎の撮像部位に基づいて呼吸位相を算出する呼吸位相算出部237、及びナビゲータ位置決定部239を備える。
【0029】
次に、図4のフローを参照して、撮像位置決定部230の処理の流れを説明する。なお必要に応じて図2のフローを参照する。
【0030】
まず検査情報の登録(図2:S21)の際に、UI部300を介して、撮像条件の一つとして被検体の呼吸方法の指定20を受け付ける(S41)(図2:S27)。呼吸方法とは、息止めとするか、自然呼吸とするか、のいずれかであり、被検体の状態や撮像手法などを考慮してユーザーが決定する。被検体の呼吸方法の指定により、呼吸方法に応じた撮像方法が決まる。表示装置301に表示される被検者の呼吸方法の指定を受け付ける画面の一例を図5に示す。図示する例では、息止め撮像、呼吸同期撮像(自然呼吸)の選択、さらに息止め撮像の場合には、吸気時の息止めか、呼気時の息止めかを選択を受け付ける。
【0031】
撮像位置決定部230は、ユーザ指定の呼吸方法とともに、撮像部100が取得したスカウト画像、高速に連続撮像した動画像、検査情報を入力し、これらを用いて、ユーザーが指定した呼吸方法に合わせて、システムが撮像対象部位を過不足なく含む撮像範囲を自動算出することができる(S42~S44)。
【0032】
自動算出処理は、大きく分けて、2Dスカウト画像に対する処理(S42)、動画像に対する処理(S43)、撮像範囲算出処理(S44)、撮像位置決定処理(S45)からなる。以下、各処理の詳細を説明する。
【0033】
<スカウト画像の処理S42>
腹部撮像における2Dスカウト画像は、被検体の体軸方向に沿って取得したCOR断面を含む低分解能の2次元画像である。必要に応じてAX断面及びSAG断面を含む場合もある。
前処理部231は、まず、図6に示すように、取得した2Dスカウト画像に対してノイズ除去のためにフィルタ処理を実行し(S421)、さらに解剖のコントラストの強調のためにエッジ強調処理を実行る(S422)。
【0034】
次に、組織抽出部233がエッジ強調スカウト画像を用いて撮像対象部位を抽出する。このため、まず、エッジ強調スカウト画像を判別分析法等を用いて2値化し、被検体の存在領域が1、非存在領域が0として表されるマスクを作成する(S423)。このマスクから、被検者の存在範囲を推定する。例えば撮像対象が腹部の場合、スカウト画像では、腹部と上肢が同時に撮像される可能性があり、腹部と上腕の位置をそれぞれ推定する。腹部の位置が推定されたならば、腹部のマスク画像を用いて正中を推定する(S424)。腹部と上腕とは、例えば、複数ある画素値1の領域の各面積や位置関係(画像の中央からの距離など)から自動的に判別でき、公知の自動判別アルゴリズムを用いることができる。また正中の推定についても、例えば、原画像とその反転画像を重ね合わせ、原画像る重心と反転画像の重心の垂直二等分線を画像の正中線とする手法など、一般的なアルゴリズムが確立しており、それを用いることができる。
【0035】
次にマスクを用いて抽出された腹部の画像(マスク画像という)について、正中に分けた右半身と左半身それぞれ画像について、頭尾方向の一次元投影像を作成し、肺野と横隔膜の境界位置を推定する(S426)。図7を用いて、この処理S426を詳述する。マスク画像生成ステップS423で、図7に示すような腹部のマスク701が得られたとする。このマスク701とスカウト画像とを乗算することで腹部のマスク画像(不図示)が得られる。この腹部のマスク画像を体軸に直交する方向に投影し、頭尾方向の一次元投影像702を得る。図示するように、被検体部分の画像は、肺野と横隔膜との間に信号値の大幅な変化がある。そこで投影像の被検体部分について傾き703を求め、最大ピークが得られる位置を、肺野と横隔膜の境界位置(x,y)と推定する。推定したピクセルを起点として、マスク画像と背景の境界をピクセル毎に探索することで、肺野と横隔膜の境界ラインを検出する。
【0036】
続いて横隔膜の境界位置(x,y)を起点として撮像部位(例えば肝臓)の位置を抽出する(S427)。臓器位置抽出には、Active Shape ModelやRegion Growing法などの公知の画像処理手法を用いることができる。
【0037】
以上で、2次元のスカウト画像に対する処理(S42)が完了する。
【0038】
<動画像の処理S43>
動画像は、撮像部100が被検体の呼吸動の少なくとも一周期に亘って撮像を行うことにより取得した画像で、複数のフレーム画像から構成される。
【0039】
本ステップS43の詳細を図8に示す。図示するように、本ステップでは、動画像についても、前処理部231による処理(ノイズ除去及びエッジ強調)を行った後、2Dスカウト画像の処理(S423~S426)と同様に、エッジ強調処理を行った動画像の最初のフレーム画像において、横隔膜の境界位置(x,y)を算出する(S431)。
【0040】
次いで、呼吸位相算出部237は、次の処理を行う。即ち、境界位置(x,y)の特徴量を持つピクセルについて、フレーム毎の移動量をOptical Flow等を用い、算出する(S432)。この移動量は、呼吸による横隔膜の移動量に相当する。この処理を呼吸1周期以上のフレーム画像に対し実行することで、図9に示すように、移動量の変動900が得られる。図9は、横隔膜の位置を含む頭尾方向の複数ピクセル(図示する例では、1×7ピクセル)について、フレーム毎の境界位置(輝度が白から黒に変化する境界の位置)の変動から呼吸周期を推定する例を示している。このような移動量の変動から、被検者の自由呼吸における呼吸位相を推定する(S433)。
【0041】
ナビゲータ位置決定部239は、ステップS432で算出した横隔膜の境界位置(x, y)をナビゲーターエコーの印加位置とする(S434)。この情報40は、撮像条件として指定された呼吸方法(図2:20)が呼吸同期撮像である場合、撮像部100に渡され、撮像部100は、例えば横隔膜の境界位置を横切る領域からナビゲータエコーを取得する撮像を実行する。呼吸方法として、息止め撮像が選択されていない場合には、このステップS434は省略してもよい。
【0042】
<撮像範囲算出S44>
この処理では、上述したステップS427で抽出した臓器位置をもとに撮像範囲を算出する。マスクの上下左右端を含む最小の矩形範囲を被検者の存在範囲として算出し、FOV、矩形FOV、anti aliasing sizeを算出する。この処理を、図10を参照して説明する。
【0043】
図10は、臓器位置抽出の結果の例である。まず抽出された肝臓位置画像901を用いて、肝臓の上端(x_lt, y_lt)、下端(x_lb, y_lb)、左端(x_ll, y_ll)、右端(x_lr, y_lr)を算出する。これら4点に外接する矩形範囲、即ち(x_ll, y_lt) (x_lr, y_lt) (x_ll, y_lb) (x_lr, y_lb)で結ばれる矩形範囲を最小撮像範囲として算出する。
【0044】
動画像の処理(S43)で得た呼吸位相から、吸気の位相及び呼気の位相それぞれのフレーム画像についても、肝臓位置抽出を行い、吸気及び呼気それぞれについて矩形範囲902-1、902-2を求め、呼気の矩形範囲の上辺(x_ll, y_lt) (x_lr, y_lt)と吸気の矩形範囲の下辺(x_ll, y_lb) (x_lr, y_lb)で結ばれる範囲を最大撮像範囲903として算出する。なお吸気及び呼気の矩形範囲を、それらの位相のフレーム画像から求める代わりに、ステップS432で得られたフレーム毎の横隔膜の移動量を用いてもよい。この場合には、移動量の変動から、臓器位置抽出を行ったスカウト画像の呼吸位相を特定し、それと吸気及び呼気のときの移動量との差を、肝臓位置画像901から求めた矩形範囲に加える。
【0045】
この処理により、息止めの際の最小撮像範囲902-1、902-2と、自由呼吸時の撮像範囲903の合計3つの撮像範囲が算出される。このように息止めか自由呼吸かに応じて、最適な撮像範囲を設定することができる。
【0046】
<撮像位置決定S45>
最後に撮像位置決定部230が検査情報と入力された呼吸方法に応じて撮像位置を算出する。撮像位置は、スライス位置及び角度を含む。
【0047】
具体的には、S41において、呼気での息止めの撮像が選択された場合は、撮像範囲を最小撮像範囲920とし、撮像範囲の上端が呼気位相の位置となるようにスライス位置を算出する。同様に、吸気での息止め撮像が選択された場合、撮像範囲を最小撮像範囲920とし、撮像範囲の上端が吸気位相の位置となるようにスライス位置を算出する。
【0048】
また、S41において、呼吸同期(自由呼吸)での撮像が選択された場合、撮像範囲を最大撮像範囲930とし、撮像範囲の上端が呼気位相の位置となるようにスライス位置を算出する。
【0049】
撮像位置決定部230は、上記処理S45で算出した撮像位置を決定するパラメータ及び数値(スライス位置、撮像範囲、FOV或いはRFOV、anti-aliasing size等)50を計測制御部210或いは表示装置301に出力する。撮像位置決定部230は、ユーザー指定の呼吸方法に合わせた撮像範囲に合わせて、スライスラインの位置・角度を自動設定する(S45)。また呼吸誘導が指定されたスキャンタスクの場合に、ナビゲーターエコー印加位置を自動設定する。
【0050】
以上、説明したように、本実施形態のMRI装置は、スカウト画像と動画像とを用いて呼吸動による臓器位置の変動(呼吸位相)を検出し、その結果を用いて最小撮像範囲と最大撮像範囲を算出し、呼吸方法に合わせて撮像範囲を自動的に設定する。これにより、息止め撮像、自由呼吸時撮像のいずれにも対応することができ、また任意の呼吸位相での息止め撮像について適切な撮像範囲での撮像を行うことができる。これにより撮像位置設定に伴うユーザの負担を軽減でき、また撮像失敗を防止し、被検体及びユーザの負担軽減を図ることができる。
【0051】
<実施形態2>
実施形態1では、スカウト画像を用いて撮像範囲を自動設定することにより、被検者の体型に応じた撮像範囲の設定を可能にしたが、被検者の体型に応じて撮像範囲(FOV,スライス数,スラブ厚など)を変更すると、関連するパラメータの値を変更する必要性が生じる場合がある。関連するパラメータの値を変えると、設定していた所望の撮像条件が意図せず変わる場合がある。例えば、撮像時間の延長が生じたり、空間分解能が低下するなどがある。
【0052】
本実施形態では、撮像範囲の自動設定に伴って、撮像パラメータを調整することが必要になった場合に、ユーザが所望の撮像条件となるように、撮像パラメータの調整の要否を決定し、パラメータ調整を自動的に行う機能を追加したことが特徴である。
【0053】
上記機能が追加された計算機200の機能ブロック図を図11に示す。図11において、撮像位置決定部230は、図3に示す構成と同じである。図示するように、本実施形態では計算機200に、パラメータ調整部240が追加される。以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態の撮像位置決定部230及びパラメータ調整部240の処理を、図12を参照して説明する。
【0054】
本実施形態でも、スカウト画像を撮像し(S61)、スカウト画像上で撮像範囲を算出し、必要に応じて調整を行い撮像位置を決定すること(S62)は、実施形態と同様である。決定した撮像範囲によって決まる撮像パラメータは、実際に検査画像を撮像するタスクのパラメータに反映される(S63)。
【0055】
この時点で、撮像範囲に関連するパラメータ60は、ユーザーが手動で設定した値、もしくは、システムが自動で算出した値となっている。
【0056】
ここで、ユーザが撮像パラメータとして設定されたタスクを選択すると(S64)、パラメータ調整部240がパラメータの整合性チェックを実行する(S65)。この処理S65(整合性チェック)では、撮像範囲に係るパラメータ60がデフォルト値から変わったことで、連動して変更必要なパラメータの有無、変更が必要な場合に設定する値の算出処理を実行する。パラメータ60のうち、連動して変更必要なパラメータ有無のチェックは、参照テーブルなどシステムに設定した情報を用いて実施する。例えばパラメータ60のFOVがデフォルト値より大きな値の場合は(S66)、FOVを大きくすることで撮像ができなくなることはない、即ち変更が必要となるパラメータは無いため、パラメータ60の値に変更されるだけとなる(S67)。一方、FOVがデフォルト値より小さな値の場合は、パラメータ60の値はデフォルト値のままとする。
【0057】
また、算出されたパラメータ60のうち、スライス数がデフォルト値より大きな値の場合は(S68)、撮像スライス数が増えるので、撮像はできるものの撮像時間が延長する。この場合、そのまま撮像を開始するのではなく、撮像時間を優先するか、或いは撮像時間の延長が許容可能かなどユーザが所望するであろうケースに応じて、他のパラメータの変更の要否を判断する必要がある。
【0058】
このような場合、各ケースに対応するパターン毎に、変更可能なパラメータと設定値を算出し、表示装置301の操作画面上に表示する(S611~S613)。この際、ユーザに対し、どのケース(パターン)を選択するかについて判断基準となる選択肢(Suggestion)を提示する(S611)。Suggestionの表示例を図13に示す。この例では、(1)タスクの総時間が延びても、設定した分解能を落とすことなく必要な領域を撮りきる、(2)時間を延長せず、低分解能になっても必要な領域をカバーする、(3)パラメータチェックでNGにならない範囲でスライス数増を反映する、(4)元(デフォルト)のパラメータにする、という4つの選択肢が提示されている。このようなSuggenstionを表示することでユーザの優先度に従ったパラメータの調整を行うことができる。なお(1)~(4)のSuggenstionとともに、従来から行われているSuggestion項目(例えば、TRを変更する)などを表示し、これら項目を追加的に選択可能にしてもよい。
【0059】
ユーザが表示装置301に表示された選択肢(suggestion)から所望のケースを選ぶと(S612)、選択されたケースについて算出されたパラメータの値に、パラメータの値が変更され(S613)、撮像が実行される(S69)。上述した4つの選択肢に従って、パラメータ調整部240が自動算出する処理の流れを図14に示す。
【0060】
Suggestionが表示され(S71)、ユーザが、ケース(1)を選択した場合(S72)、撮像を複数回に分割するパラメータ調整が実行される(S77)。ケース(2)を選択した場合(S73)、2D撮像か3D撮像に応じて(S75)、2Dであれば、スライス厚を増やし、スライス間隔を自動計算し(S78)、3Dであれば、スラブ厚を増やす(S79)。ケース(3)を選択した場合(S74)、2D撮像/3D撮像共(S76)にスライス数(2D)/スライスエンコード数(3D)を増やす(S710)。ケース(4)を選択した場合は(S74)、何も変更せずに元の状態を保持する(S711)。その際、撮像範囲も調整前の値に戻す。
【0061】
本実施形態によれば、実施形態1と同様の効果に加えて、撮像範囲変更に連動してパラメータを自動で計算することができ、ユーザの手間を低減できるという効果が得られる。また、パラメータ設定の操作者依存性が低下し、検査不成立につながる設定ミスが低減する。さらに、自動計算結果とともに、ユーザが分かりやすい表現で複数の選択肢を提示するため、ユーザが所望の変更内容を選択することで、それに応じたパラメータ設定が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
100:撮像部、200:計算機、210:計測制御部、220:演算部(画像生成部)、230:撮像位置決定部、231:前処理部、233:組織抽出部、235:撮像範囲算出部、237:呼吸位相算出部、239:ナビゲータ位置決定部、240:パラメータ調整部、300:UI部、301:表示装置、302:入力装置。
図1
図2
図3
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図5
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図14