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特開2023-173342シート、駆動部品、駆動部品の組み立て方法および駆動部品の駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173342
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】シート、駆動部品、駆動部品の組み立て方法および駆動部品の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20231130BHJP
   F16H 21/10 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
B25J15/08 D
F16H21/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085526
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】508236240
【氏名又は名称】公立大学法人公立はこだて未来大学
(71)【出願人】
【識別番号】000173511
【氏名又は名称】公益財団法人函館地域産業振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】三上 貞芳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 滉平
【テーマコード(参考)】
3C707
3J062
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES03
3C707ES07
3C707ET03
3C707EU07
3C707EV07
3C707NS26
3J062AA38
3J062AB27
3J062AC08
3J062BA11
3J062CB02
3J062CB15
3J062CB27
3J062CB32
(57)【要約】
【課題】簡便な組み立てによって駆動部品を作成可能な技術を提供する。
【解決手段】1枚のシートであって、シートは、駆動部品の駆動部を形成するための駆動形成部と、駆動部による力学的な作用に応じて作動する駆動部品の作動部を形成するための作動形成部と、切れ目部と、を備え、駆動形成部は、切れ目部と係合するように構成された駆動係合部を含み、作動形成部は、切れ目部と係合するように構成された作動係合部を含み、駆動部は、駆動係合部が切れ目部と係合することによって形成され、作動部は、作動係合部が切れ目部と係合することによって形成される、駆動部品の組み立て用のシート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のシートであって、
前記シートは、駆動部品の駆動部を形成するための駆動形成部と、前記駆動部による力学的な作用に応じて作動する前記駆動部品の作動部を形成するための作動形成部と、切れ目部と、を備え、
前記駆動形成部は、前記切れ目部と係合するように構成された駆動係合部を含み、
前記作動形成部は、前記切れ目部と係合するように構成された作動係合部を含み、
前記駆動部は、前記駆動係合部が前記切れ目部と係合することによって形成され、
前記作動部は、前記作動係合部が前記切れ目部と係合することによって形成される、
駆動部品の組み立て用のシート。
【請求項2】
前記切れ目部は、前記シートの幅方向の一端側に形成された切れ目を有し、
前記駆動係合部は、前記シートの幅方向の他端側に形成された切れ目を有し、
前記作動係合部は、前記シートの幅方向の他端側に形成された切れ目を有する、
請求項1に記載の駆動部品の組み立て用のシート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシートを用いた駆動部品の組み立て方法であって、
前記駆動係合部を前記切れ目部に係合させる工程と、
前記作動係合部を前記切れ目部に係合させる工程と、を含む、
駆動部品の組み立て方法。
【請求項4】
1枚のシートで構成された駆動部品であって、
駆動部と、
前記駆動部による力学的な作用に応じて作動する作動部と、
切れ目部と、を備え、
前記駆動部は、駆動係合部が前記切れ目部と係合して構成されており、
前記作動部は、作動係合部が前記切れ目部と係合して構成されている、
駆動部品。
【請求項5】
請求項4に記載の駆動部品の駆動方法であって、
前記駆動部を回転させることによって、前記作動部による力学的な作用を前記作動部に加えて前記作動部を作動させることを含み、
前記駆動部は、第1の屈曲部および第2の屈曲部を含み、
前記駆動部を回転させることは、前記第1の屈曲部を支点として、前記第2の屈曲部を作用点として前記駆動部に力を加えることを含む、
駆動部品の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート、駆動部品、駆動部品の組み立て方法および駆動部品の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の製造業において、ロボットハンドなどの装置の導入が期待されている。たとえば特許文献1には、紙またはプラスチックなどのシートを組み立てることによってデバイスを作成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-111633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、デバイスの組み立ての工程が多く、組み立てに時間がかかる。このため、特許文献1に記載の技術では、短時間でデバイスを作成することができなかった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、簡便な組み立てによって駆動部品を作成可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の駆動部品の組み立て用のシートは、1枚のシートであって、シートは、駆動部品の駆動部を形成するための駆動形成部と、駆動部による力学的な作用に応じて作動する駆動部品の作動部を形成するための作動形成部と、切れ目部と、を備え、駆動形成部は、切れ目部と係合するように構成された駆動係合部を含み、作動形成部は、切れ目部と係合するように構成された作動係合部を含み、駆動部は、駆動係合部が切れ目部と係合することによって形成され、作動部は、作動係合部が切れ目部と係合することによって形成される、駆動部品の組み立て用のシート。
【0007】
本発明の別の態様は、駆動部品の組み立て方法である。駆動部品の組み立て方法は、シートを用いた駆動部品の組み立て方法であって、駆動係合部を切れ目部に係合させる工程と、作動係合部を切れ目部に係合させる工程と、を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、駆動部品である。駆動部品は、上記の1枚のシートで構成された駆動部品であって、駆動部品の駆動部を形成するための駆動形成部と、駆動部による力学的な作用に応じて作動する駆動部品の作動部を形成するための作動形成部と、切れ目部と、を備え、駆動形成部は、切れ目部と係合するように構成された駆動係合部を含み、作動形成部は、切れ目部と係合するように構成された作動係合部を含み、駆動部は、駆動係合部が切れ目部と係合して構成されており、作動部は、作動係合部が切れ目部と係合して構成されている。
【0009】
本発明の別の態様は、駆動部品の駆動方法である。駆動部品の駆動方法は、駆動部を回転させることによって、作動部による力学的な作用を作動部に加えて作動部を作動させることを含み、駆動部を回転させることは、駆動部の第1の屈曲部を支点として、駆動部の第2の屈曲部を回転させることを含む。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡便な組み立てによって駆動部品を作成可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る駆動システムを示す図である。
図2】駆動システムの物体を掴むとき状態を示す図である。
図3】本実施形態に係る駆動部品の斜視図である。
図4】本実施形態に係る動力伝導部の斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る駆動部品を組み立てるためのシートを示す図である。
図6】食品把持実験を説明するための図である。
図7】把持力の測定方法を説明するための図である。
図8】可搬質量の測定方法を説明するための図である。
図9】第1変形例に係る駆動部品を示す図である。
図10】第2変形例に係る駆動部品を示す図である。
図11】第3変形例に係る駆動部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0014】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。例えば駆動部品20aおよび駆動部品20bのそれぞれを特に区別しないとき、これらを単に「駆動部品20」と称する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動システム1を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る駆動システム1は、動力伝導部10および2つの駆動部品20a,20bを備える。本実施形態では、駆動システム1が、各種の物体を掴んだり持ち運んだりできるロボットハンドとして機能する例を説明する。なお、本実施形態に係る駆動システム1は、2つの駆動部品20a、20bを備えるが、駆動部品の数はこれに限定されるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0016】
動力伝導部10は、駆動部品20a,20bに動力を伝導するように構成されている。動力伝導部10は、主として、アクチュエータ100、支持軸102、支持部材104、可動軸110、連結部材111、可動部材116,118および回転部材124,126を備える。
【0017】
アクチュエータ100は、可動軸110の軸方向における運動を制御する。アクチュエータ100は、たとえば可動軸110を押し出したり引き込んだりしてよい。アクチュエータ100は、空気圧式アクチュエータ、電気式アクチュエータおよび油圧式アクチュエータなどの公知の装置であってよい。
【0018】
可動軸110は、その一端がアクチュエータ100に接続されており、その他端が連結部材111に接続されている。連結部材111は、可動軸110の垂直方向に延びて構成されており、可動軸110と連動して、可動軸110の軸方向に移動できる。連結部材111の一端には、可動部材116が回転可能に接続されており、他端には、可動部材118が回転可能に接続されている。
【0019】
支持軸102は、その一端がアクチュエータ100に固定されており、その他端が支持部材104に固定されている。支持部材104は、支持軸102の軸方向に垂直な方向に延びて構成されており、その一端には回転部材124が回転可能に接続されており、その他端には回転部材126が回転可能に接続されている。
【0020】
可動部材116および回転部材124は、回転可能に互いに接続されており、可動部材118および回転部材126は、回転可能に互いに接続されている。回転部材124の両端には、駆動部品20aと接続される接続部130,132が設けられている。また、回転部材126の両端には、駆動部品20bと接続される接続部134,136が設けられている。
【0021】
駆動部品20aは、駆動部200および作動部220を備える。駆動部200および作動部220は、連結部210を介して互いに連結されている。なお、駆動部品20bは、駆動部品20aと実質的に同一の構成を有するため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0022】
本実施形態に係る駆動部200は、動力伝導部10に接続されており、動力伝導部10による動力に応じて変形しながら、作動部220に力学的な作用を加える。駆動部200は、主として、接続面202、上面204、下面206および前面208を有する。
【0023】
接続面202の一端は、回転部材124の一端に設けられた接続部130に接続されており、接続面202の他端は、回転部材124の他端に設けられた接続部132に接続されている。本実施形態では、接続面202の接続部130に接続された部分は作用点203を構成し、接続面202の接続部132に接続された部分は支点205を構成する。
【0024】
作動部220は、駆動部200による力学的な作用に応じて作動する。本実施形態に係る作動部220は、作用面222、上面224および下面226を有する。なお、図1では、駆動部200の前面208と作動部220の作用面222とが互いに離れているが、作用面222および前面208は、全面または一部において互いに接触してよい。
【0025】
図2は、駆動システム1の物体を掴むときの状態を示す図である。可動軸110がアクチュエータ100から押し出されると、それに応じて連結部材111および可動部材116,118がアクチュエータ100から離れる方向に移動する。このとき、支持部材104は動かず、回転部材124,126は、支持部材104と接続されている部分を中心として回転する。
【0026】
回転部材124が回転すると、これと連動して、駆動部品20aが備える駆動部200の接続面202は、支点205を中心として回転する。これにより、上面204が前面208を押し、前面208は、作動部220の作用面222と接触して、前面208に力を加える。
【0027】
作用面222は、前面208から力学的な作用を受けて、上面224および下面226は、駆動部品20b側に移動するように変形する。このとき、駆動部品20bは、駆動部品20aと同様に動作し、この結果、図2に示すように、駆動部品20aおよび駆動部品20bが、握りこむように動作する。
【0028】
図3は、本実施形態に係る駆動部品20の斜視図である。本実施形態に係る駆動部品20は、1枚のシートで構成されており、駆動部200および作動部220は、連結部210において連結されている。また、駆動部品20を構成するシートには、切れ目212が形成されている。駆動部200は、駆動部200の前面208の先端部209が切れ目212に係合することによって形成される。また、作動部220は、作用面222の先端部229が切れ目212に係合することによって形成される。
【0029】
図4は、本実施形態に係る動力伝導部10の斜視図である。図4では、図1および図2に示す構成と実質的に同一の構成には同一の符号を付し、必要に応じてそれらの構成の説明を省略する。本実施形態に係る接続部130,132,134,136は、円柱状であり、スリット131,133,135,137を有している。駆動部品20aの駆動部200は、スリット131,133に挿入されることにより、接続部130,132に接続される。また、駆動部品20bの駆動部は、スリット135,137に挿入されることにより、接続部134,136に接続される。
【0030】
(駆動部品を組み立てるためのシート)
図5は、本発明の一実施形態に係る駆動部品20を組み立てるためのシート30を示す図である。本実施形態に係るシート30は、短冊形の形状を有しており、主として、駆動部200を形成するための駆動形成部300および作動部220を形成するための作動形成部320と、切れ目S2(切れ目部)を有する。また、この切れ目S2と同一線上には、シート30を折り曲げることによって屈曲部Cが形成されている。
【0031】
駆動形成部300は、駆動部200の接続面202を形成するための接続面部302、駆動部200の上面204を形成するための上面部304、駆動部200の下面206を形成するための下面部306、駆動部200の前面208を形成するための前面部308および駆動部200の先端部209を形成するための先端部309(駆動係合部)を有する。駆動形成部300には、シート30の幅方向の折り目で構成された3つの屈曲部D,E,Fが設けられている。また、先端部309には、シート30の幅方向の切れ目S2が設けられている側と反対側に切れ目S3が設けられている。
【0032】
作動形成部320は、作動部220の作用面222を形成するための作用面部322、作動部220の上面224を形成するための上面部324、作動部220の下面226を形成するための下面部326および作動部220の先端部229を形成するための先端部329(作動係合部)を有する。本実施形態に係る作動形成部320は、シート30の幅方向の折り目で構成された2つの屈曲部A,Bが設けられている。また、先端部329には、シート30の幅方向の切れ目S2が設けられている側と反対側に切れ目S1が設けられている。
【0033】
本実施形態に係る駆動部品20は、シート30を屈曲部で折り曲げつつ、シート30に設けられた切れ目部に駆動係合部および作動係合部を係合させることによって組み立てられる。具体的には、屈曲部A,Bを谷折りで折り曲げ、切れ目S2に切れ目S1がかみ合うように先端部329を切れ目S1に係合させる。これによって、作動部220が形成される。また、屈曲部D,E,Fを谷折りで折り曲げ、切れ目S3を切れ目S2がかみ合うように先端部309を切れ目S2に係合させる。これによって、駆動部200が形成され、図3に示した駆動部品20が完成する。
【0034】
本実施形態に係るシート30によれば、5カ所の屈曲部で折り曲げ、3カ所の切れ目で相互に係合させるだけで、2関節の指と同様な包み込み特性を持った劣駆動マニピュレータ(たとえば劣駆動型ロボットハンドなど)を作成できる。このため、短時間(たとえば十数秒程度)で簡便にロボットハンドを組み立てることが可能である。なお、劣駆動マニピュレータとは、閉リンク機構などのように、入力の数よりも動く関節の数が多いマニピュレータである。
【0035】
本実施形態に係るシート30を用いた駆動部品20は、使用の際に汚れたり劣化したりする場合には、捨てることができるディスポーザブルなロボットハンドとして利用できる。このため、食品などを掴むことによって油などの汚れが駆動部品20に付着した場合には、新しい駆動部品20に交換すればよいため、製造現場においてロボットハンドの洗浄に時間を費やす必要がなくなる。
【0036】
また、本実施形態に係るシート30によれば、強度の強い駆動部品20を提供でき、使用中に駆動部品20の破片が生じることが抑制される。また、本実施形態に係る駆動部品20は、接着剤などを用いてシート30を接着する必要がない。このため、たとえば食品を扱う場合には、接着剤などが食品に付着することがない。
【0037】
また、本実施形態に係るシート30には、紙などの柔らかい素材を利用できるため、駆動部品20は、食品などをソフトに把持できる。また、駆動部品20は、物体(床面や食器など)に接触しても、物体を破損させないため、安全性が高い。さらに、シート30には、紙などの安価な材料が利用できるため、駆動部品20を安価に用意することが可能である。
【0038】
また、本実施形態に係る駆動部品20は、支点205を支持しつつ作用点203に力を加えるという簡便な動作によって駆動させることが可能である。また、力が加わる領域から、把持する際に物体に接触する領域までの距離が近いため、より強く物体を把持することが可能となる。
【0039】
本実施形態において説明した駆動部品20は、各種の分野において利用可能である。例えば、駆動部品20は、食品加工現場におけるベルトコンベア上において搬送される食品のハンドリング、医療現場などにおける危険のある使用済み廃棄物のハンドリング、および生物(たとえば人体など)の安全なハンドリングに利用され得る。
【0040】
(食品把持実験)
上述の駆動システム1で構成されたロボットハンドの性能を評価するため、様々な食品に対する把持実験を行った。具体的には、図6に示すように、食品40を左右の駆動部品20a,20bで挟み込むようにして、食品40を把持できるかどうかを評価した。駆動部品20(短冊紙ハンド)の素材には、紙コップ等に一般的に用いられるPE(ポリエチレン)ラミネート加工された厚紙を用いた。
【0041】
また、図5に示したシート30のように、厚紙に屈曲部および切れ目を形成した。厚紙の設計は、長さ方向について、全長を240mm、A-B区間を35mm、L-A区間を20mm、L-S1区間を5mm、B-C区間を30mm、B-D区間を80mm、D-E区間を25mm、E-F区間を60mm、F-R区間を20mm、S3-R区間を5mmとした。また、厚紙の幅方向の長さを30mmとした。また、食材のサイズの違いに対応するために、C-D区間およびE-F区間の長さを6/7、5/6に縮小した小型の駆動部品20も用意し、比較を行った。把持の対象とした食品には、利用形態を想定して小規模な食品工場での定型動作でのハンドリングを行える食品を選定した。使用した食品の重量と形状および状態を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
食品把持の結果を表2に示す。安定した包み込み把持を行っていた場合を◎、包み込み把持を行わず先端で挟むように持ち上げた場合を〇、不安定な状態で持ち上げた場合を△、持ち上げられなかった場合を×とする。1/1、6/7、5/6の表記は、C-D区間およびE-F区間の長さの縮小率を表す。
【0044】
【表2】
【0045】
クロワッサンおよび唐揚げのようにフィンガー部(駆動部品20)のサイズよりも小さいものについては、安定した包み込み把持が行われた。一方で卵焼きのような比較的角ばった形状のものは、食品の下にフィンガー部を滑り込ませることができず、挟むような形で持ち上げられた。またフライドチキンは、ロボットハンドの開閉幅が足りず、包み込み把持を行えなかった。重い総菜パンを把持した際には、ロボットハンドの接触面積が最も大きかったが、半径が大きいために、ロボットハンドを閉じた際の角度が小さいために、フィンガー部に過大な力がかかり破損してしまった。5/6サイズのみにおいて、卵焼き(大)が包み込み把持ではないが、安定した把持を行えていた。これは5/6サイズのフィンガー部の接触面積が、他のサイズのフィンガー部よりも接触面積が大きかったためであると考察できる。以上のことから、本ロボットハンドは、(1)フィンガー部のサイズを大幅に超えず、(2)先端を食品の下に滑り込ませることができる物であれば、包み込み把持を行うことができることが判明した。
【0046】
以上の食品把持実験により、指関節と同様な握りこみリンクを紙の柔軟素材で率直に実現した形状であるため、手と同様なやわらかなタッチで食品の握りこみが実現できていることがわかった。
【0047】
(把持力及び可搬質量の測定)
本ロボットハンドの能力評価として、把持力及び可搬質量の測定を行った。把持力は図7に示すように、直径50mmの円筒部材42にロードセルを貼り付け、ロボットハンドで横から挟みこむことで測定を行った。アクチュエータ100にはエアシリンダを用いた。なお、エアシリンダの空気圧と把持力の関係を確認するため、空気圧を0.05MPaから0.40MPaまで0.05MPa刻みで測定を行った。把持力の測定結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
また、可搬質量は図8に示すように紙コップ44内に分銅46(80,90,100,110g)を入れて紙コップ44を横から挟んで持ち上げ、目視観察し下方に紙コップ44が滑り動かない最大の質量を可搬質量とした。なお、可搬質量を超えた場合には目視でも明らかに滑りが観察された。ここで、可搬質量の測定時の空気圧も把持力の測定と同様に0.05MPaから0.40MPaまで0.05MPa刻みで測定を行った。可搬質量の測定結果を表4に示す。判断基準として、持ち上げた際に滑ることなく把持できた場合を”○”、僅かに滑りながら把持できた場合を”△”、把持できなかった場合を”×”とする。
【0050】
【表4】
【0051】
把持力は、表3より空気圧の大きさにかかわらず3.4~3.6Nとほぼ一定の値を示した。可搬質量は、表4より90gであり、空気圧を増減しても可搬質量の変化は見られなかった。なお、この可搬質量に関してはあらかじめJISP8147を参考として紙の摩擦係数を導出し、摩擦力の計算を行った結果から妥当性を確認した。これらの結果から、一定の把持力を作用するロボットハンドという特性を示した。
【0052】
(強度増強実験)
フィンガー部の強度向上を図るために、紙を複数枚重ねて組み立てることで、疑似的に厚い紙でのロボットハンドの製作を試み、効果を実施した。フィンガー部の製作にあたって紙の厚さ約0.3mmの紙容器の紙を用いた。本実験では、1枚重ね、2枚重ね、3枚重ね、4枚重ねのフィンガー部を製作し、把持力の測定を前述の把持力測定実験と同様に行った。その結果を表5に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
把持力は、表5より紙を重ねる毎に増加する結果が得られた。これはフィンガー部の強度が高まったことで、エアシリンダの推力伝達の割合が増加したためと考えられる。また、空気圧と把持力との関係に着目すると、1枚重ねの場合は空気圧を大きくしても把持力は常にほぼ一定の値を示し、変化が見られなかった。しかし、2~4枚重ねた場合、0.05MPaから0.10MPaに増圧すると把持力も増加し、その後は把持力にほぼ変化が見られない結果となった。この結果より、本ロボットハンドについて、フィンガー部の紙の厚みを厚くする等、強度を高めることによって、把持力を向上することができ、また、一定の強度まで高めることで、把持力を制御することが可能であると言える。
【0055】
次に、4枚重ねロボットハンドにおいて可搬質量の測定を前述の可搬質量測定実験と同様行った。その結果を表6に示す。
【0056】
【表6】
【0057】
可搬質量は、把持力の測定と同様に空気圧を高くすると、増加することが表6から確認できる。表5の結果では0.10MPaと0.15MPaで把持力に大きな差は見られないが、表6の0.10MPaと0.15MPaの可搬質量の結果を比較すると、0.10MPaの時は可搬質量が160gであるのに対して、0.15MPaは170gと増えている。これは、0.05MPaから0.15MPaまで加圧する際には、フィンガー部が把持物に対して回り込むように動き、接触面積が増加していることが要因であると考える。一方、0.15MPaから0.20MPaに加圧してもフィンガー部はこれ以上回り込む動きをしないので、接触面積に変化がなく、可搬質量にも変化は見られない。0.20MPa以上加圧した場合もフィンガー部は回り込まず、可搬質量は一定であった。
【0058】
以上の結果より、紙を重ね厚くする等によって強度を上げることができれば、空気圧によって把持力の制御が可能であると考える。また、本ロボットハンドは空気圧を増圧することで把持力を増加するだけでなく、接触面積も増すので、可搬質量が大きくなることが分かった。
【0059】
(第1変形例)
図9は、第1変形例に係る駆動部品50を示す図である。第1変形例に係る駆動部品50は、図3に示す駆動部品20と異なり、駆動部500の先端部509および作動部520の先端部526が内部に位置するように形成された凹部510を有する。凹部510は、駆動部500の下面502に屈曲部508を設けることによって形成された凹部形成面504と、作動部520の下面522に屈曲部528を設けることによって形成された凹部形成面524とによって形成されている。
【0060】
第1変形例に係る駆動部品50によれば、凹部510に先端部509,526が位置するため、駆動部品50を用いて物体(たとえば食品など)を掴む際に、先端部509,526がその物体に接触して損傷を与えることが抑制される。
【0061】
(第2変形例)
図10は、第2変形例に係る駆動部品60を示す図である。第2変形例に係る駆動部品60は、駆動部600および作動部620に折り曲げ部を設けることによって、その強度が高められている。具体的には、駆動部600の上面602には、幅方向に2カ所の切り込みを入れ、それらの切り込みの間を上向きに折り曲げることによって折り曲げ部604が形成されている。また、その幅方向の反対側には、同様にして折り曲げ部606が形成されている。これにより、上面602の強度が高められる。また、下面608には、折り曲げ部610,612が形成されており、これにより下面608の強度が高められる。
【0062】
さらに、作動部620の上面622には、折り曲げ部624,626が形成されており、これによって上面622の強度が高められる。なお、作動部620の下面628に折り目部を形成してよい。これにより、下面628の強度を高めることが可能となる。
【0063】
(第3変形例)
図11は、第3変形例に係る駆動部品70を示す図である。図11(a)に示すように、第3変形例に係る駆動部品70は、その前方がスプーンのように丸みを帯びるように折り曲げて構成されている。具体的には、図11(b)に示すように、作動部720は、その先端731の中央から側部に向かう直線の折れ目732,734で折り曲げることによって、折り曲げ部736,738が形成されている。第3変形例に係る作動部720が折り曲げ部736,738を有することにより、側面からの物体のこぼれ落ちを防止する効果が得られる。
【0064】
[補足]
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0065】
上記実施形態では、切れ目部は、1つの切れ目を有し、駆動係合部および作動係合部が同一の切れ目に係合することによって駆動部200および作動部220が形成される例について説明した。これに限らず、切れ目部は、複数の切れ目を有してよい。たとえば、切れ目部は、互いに離間した位置に設けられた2つの切れ目を有し、一方の切れ目に駆動係合部が係合し、他方の切れ目に作動係合部が係合してよい。このように、駆動係合部と作動係合部を互いに異なる切れ目に係合させることによって、それぞれの係合部が干渉することが抑制され、より簡便な組み立てが可能となる。
【0066】
また、駆動部品20を駆動させる機構は、上記実施形態において説明した動力伝導部10に限定されるものではない。たとえば、互いに結合した2枚のプレートで接続面202を両面から挟み込み、これらのプレートを回転させることにより、接続面202に回転トルクを与えてよい。このとき、プレートの回転は、手動によって行われてもよいし、プレートにギアを設け、そのギアを回転させることによって行われてもよい。
【0067】
上記実施形態では、シート30に切れ目S2に切れ目S1およびS3を係合させる例を説明した。シート30の切れ目部を駆動係合部および作動係合部に係合させる方法は、これに限定されるものではない。たとえば、シートの側部には切れ目を入れず、シートの中央に切れ目を形成し、その切れ目に、シートの長さ方法の一端および他端を係合させてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 駆動システム、20,50,60,70 駆動部品、200 駆動部、203 作用点、205 支点、220 作動部、222 作用面、30 シート、300 駆動形成部、320 作動形成部、510 凹部
図1
図2
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図6
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図9
図10
図11