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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173366
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】シリーズスポット溶接用ガン
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20231130BHJP
   B23K 11/31 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B23K11/11 510
B23K11/31
B23K11/11 550Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085561
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】313015100
【氏名又は名称】OBARA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 武宏
(72)【発明者】
【氏名】菅野 考司
(72)【発明者】
【氏名】早藤 健司
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165BA01
4E165BA05
4E165BA08
4E165BB02
4E165BB14
(57)【要約】
【課題】シリーズスポット溶接用ガンにおいて、電極間のピッチを拡大しても小型化や軽量化の妨げとならないようにする。
【解決手段】シリーズスポット溶接用ガン100は、並列して設けられた固定側溶接ガン10及び可動側溶接ガン20と、これら2つの溶接ガン10,20の電極チップ18a,28a間の間隔を可変とするように、軸C回りに、2つの溶接ガン10,20を相対的に回転させる回転装置50と、固定側溶接ガン10とともに設けられた単一のトランス30と、軸Cと同軸に設けられた軸部材43と、軸部材43を回転自在に支持する軸受け部材41及び軸部材43と軸受け部材41とにそれぞれ接触するリング状のコイルスプリング44とを有する軸給電部40と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列して設けられた2つの溶接ガンと、
前記2つの溶接ガンの電極の電極チップ間の間隔を可変とするように、所定の軸回りに、前記2つの溶接ガンを相対的に回転させる回転装置と、
前記2つの溶接ガンのうち一方の溶接ガンとともに設けられた単一のトランスと、
前記所定の軸と同軸に設けられた軸部材と、前記軸部材を回転自在に支持する軸受け部材と、前記軸部材と前記軸受け部材とにそれぞれ接触するリング状のコイルスプリングと、を有する軸給電部と、を備えたシリーズスポット溶接用ガン。
【請求項2】
前記トランスの2つの出力端子の一方の出力端子が、前記一方の溶接ガンに接続され、
前記トランスの2つの出力端子の他方の出力端子が、前記軸給電部を介して、他方の溶接ガンに接続されている、請求項1に記載のシリーズスポット溶接用ガン。
【請求項3】
前記回転装置は、前記一方の溶接ガン及び前記トランスを固定して支持する固定ブラケット部材と、前記他方の溶接ガンを固定して支持する回転ブラケット部材と、を備え、
前記軸受け部材及び前記軸部材のうち一方が、前記トランスの前記一方の出力端子に接続され、
前記軸受け部材及び前記軸部材のうち他方が前記回転ブラケット部材に固定されて、前記他方の溶接ガンに接続されている、請求項2に記載のシリーズスポット溶接用ガン。
【請求項4】
前記軸受け部材は、孔の形成された板状体と、前記孔に挿入されたボスを有する、前記軸部材を回転自在に支持する軸受けとを備え、
前記コイルスプリングは、前記板状体の前記孔に挿入して配置された状態で、前記軸受け部材と接し、前記コイルスプリングのリングの内周部が、前記軸部材に接する、請求項1から3のうちいずれか1項に記載のシリーズスポット溶接用ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズスポット溶接用ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗溶接装置の溶接ガンは、固定電極と可動電極とが互いに対向して配置され、可動電極を、加圧駆動部によって固定電極に対して進退させるように構成されている。このように構成された溶接ガンは、可動電極を固定電極に向けて前進させ、固定電極と可動電極との間に配置された溶接対象物を、両電極によって挟んで加圧し、両電極間に短時間に大電流を流すことで、溶接対象物を接合する。
【0003】
また、2つの溶接ガンを異なる軸上に並列に備えたシリーズスポット溶接用ガンがある。シリーズスポット溶接用ガンは、各溶接ガンが固定電極を備えずに可動電極だけを備え、2つの可動電極の電極チップを、それぞれ、溶接対象物の異なる位置に押し当てた状態で電極チップ間に電流を流すことで、2つの電極がそれぞれ接触した部分の溶接対象物にスポット溶接を行う。
【0004】
シリーズスポット溶接用ガンには、両溶接ガンの電極チップ間の間隔(ピッチ)を可変とした可変ピッチのシリーズスポット溶接用ガンがある。可変ピッチのシリーズスポット溶接用ガンは、一方を固定側溶接ガン、他方を可動側溶接ガンと称し、可動側溶接ガンを、固定側溶接ガンに対して直線移動可能又は回動可能に構成することで、両溶接ガンの電極チップ間のピッチを可変としている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-319485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリーズスポット溶接用ガンは、2つの電極に同時に電流を流すため、給電用のトランスを1つだけ備えた構成とすることができる。
【0007】
そして、可変ピッチのシリーズスポット溶接用ガンは可動側溶接ガンが動くため、トランスが例えば固定側溶接ガンと一体に設けられている構成では、ピッチの変化に応じて、トランスと可動側溶接ガンとの距離が変わる。この距離の変化があっても、トランスの出力端子と可動側溶接ガンの電極との電気的導通を確保するために、トランスと可動側溶接ガンとは、距離の変化に応じて撓みが変化する可撓性のシャントによって接続される。
【0008】
しかし、ピッチの可変量を拡大する場合、シャントの長さを長くする必要があり、シリーズスポット溶接用ガンの小型化や軽量化の妨げとなる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、電極チップ間のピッチの可変量を拡大しても、小型化や軽量化の妨げとならないようにすることができるシリーズスポット溶接用ガンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、並列して設けられた2つの溶接ガンと、前記2つの溶接ガンの電極の電極チップ間の間隔を可変とするように、所定の軸回りに、前記2つの溶接ガンを相対的に回転させる回転装置と、前記2つの溶接ガンのうち一方の溶接ガンとともに設けられた単一のトランスと、前記所定の軸と同軸に設けられた軸部材と、前記軸部材を回転自在に支持する軸受け部材と、前記軸部材と前記軸受け部材とにそれぞれ接触するリング状のコイルスプリングと、を有する軸給電部と、を備えたシリーズスポット溶接用ガンである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシリーズスポット溶接用ガンによれば、電極間のピッチを拡大しても、小型化や軽量化の妨げとならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】可変ピッチのシリーズスポット溶接用ガンを示す斜視図であり、固定側溶接ガンの可動電極の電極チップと可動側溶接ガンの可動電極の電極チップとの間隔(ピッチ)が最小(ピッチP1)の状態を示す。
図2】可変ピッチのシリーズスポット溶接用ガンを示す斜視図であり、固定側溶接ガンの可動電極の電極チップと可動側溶接ガンの可動電極の電極チップとのピッチが最大(ピッチP2)の状態を示す。
図3図1におけるシリーズスポット溶接用ガンの矢視Aによる底面図である。
図4図3におけるB-B線に沿った面によるシリーズスポット溶接用ガンの断面を示す断面図である。
図5図2におけるシリーズスポット溶接用ガンの矢視Aによる底面図である。
図6図5におけるD-D線に沿った面によるシリーズスポット溶接用ガンの断面を示す断面図である。
図7図6における軸給電部の詳細を示す拡大断面図である。
図8】軸受け部材の溝と軸部材の軸部とに拘束された状態のリング状のコイルスプリングを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るシリーズスポット溶接用ガンの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
<構成>
図1,2は可変ピッチのシリーズスポット溶接用ガン100(以下、単に溶接用ガン100という。)を示す斜視図であり、図1は固定側溶接ガン10(一方の溶接ガンの一例)の可動電極18の電極チップ18aと可動側溶接ガン20(他方の溶接ガンの一例)の可動電極28の電極チップ28aとの間隔(ピッチ)が最小(ピッチP1)の状態を示し、図2は固定側溶接ガン10の可動電極18の電極チップ18aと可動側溶接ガン20の可動電極28の電極チップ28aとのピッチが最大(ピッチP2(>P1))の状態を示す。
【0015】
また、図3図1における溶接用ガン100の矢視Aによる底面図、図4図3におけるB-B線に沿った面による溶接用ガン100の断面を示す断面図、図5図2における溶接用ガン100の矢視Aによる底面図、図6図5におけるD-D線に沿った面による溶接用ガン100の断面を示す断面図である。
【0016】
図示の溶接用ガン100は、本発明に係るシリーズスポット溶接用ガンの一実施形態であり、2つの溶接ガン10,20と、1つの給電用のトランス30と、軸給電部40と、回転装置50と、を一体に備えている。
【0017】
(回転装置)
回転装置50は、フランジ部材55と、固定ブラケット部材51と、回転ブラケット部材52と、モータ53と、を備えている。回転装置50には、後述する軸給電部40が一体に取り付けられている。フランジ部材55と、固定ブラケット部材51と、回転ブラケット部材52とは、軸Cに沿って並んで設けられている。
【0018】
フランジ部材55は、溶接用ガン100がロボットアームに組み付けて使用される場合に、ロボットアームの先端に固定される部分である。固定ブラケット部材51は、フランジ部材55に固定された部分である。固定ブラケット部材51は、トランス30と一方の溶接ガン10を固定して支持している。
【0019】
回転ブラケット部材52は、フランジ部材55及び固定ブラケット部材51に対して、軸C(所定の軸)回りに回転自在に設けられている。回転ブラケット部材52は、モータ53と他方の溶接ガン20を固定して支持している。
【0020】
モータ53は、サーボモータであり、回転ブラケット部材52を、フランジ部材55及び固定ブラケット部材51に対して軸C回りに回転させ、図1に示した状態と図2に示した状態との間で、2つの溶接ガン10,20の相対的な位置関係を変化させる。具体的には、モータ53は、回転ブラケット部材52を回転させることにより、2つの溶接ガン10,20の電極18,28の電極チップ18a,28a間の間隔を可変とする。
【0021】
(溶接ガン)
2つの溶接ガン10,20は、並列して設けられ、互いに平行に配置されている。2つの溶接ガン10,20のうち、固定ブラケット部材51に支持された溶接ガン10を固定側溶接ガン10と称し、回転ブラケット部材52に支持された溶接ガン20を可動側溶接ガン20と称するものとする。
【0022】
固定側溶接ガン10は、モータ12と、加圧装置11と、可動電極18と、導電部材13,14,15と、を備えている。モータ12はサーボモータであり、加圧装置11を作動させる。加圧装置11は、モータ12の回転によって、内部に配置された加圧軸を軸方向に進退させる。
【0023】
可動電極18は、先端に、溶接対象物のワークに接する電極チップ18aを備えている。可動電極18は、加圧装置11の加圧軸の進退に従って軸方向に進退し、加圧装置11の加圧軸が軸方向に前進することにより図1,2の下方に進み、電極チップ18aがワークに押し当てられ、ワークを加圧する。可動電極18は、ワークを加圧した状態から、加圧装置11の加圧軸が軸方向に後退することにより、図1,2に示す上方の位置に戻り、電極チップ18aがワークから離れる。
【0024】
導電部材13,14,15は、後述するトランス30によって発生した電流を可動電極18に導く導電体である。導電部材13は、図3に示すように、トランス30の一方の出力端子31に接合された導電体である。導電部材15は、可動電極18に接合された導電体である。
【0025】
導電部材14は、厚さの薄い銅板を複数枚重ねて略U字状に撓ませて形成された可撓性のシャントである。導電部材14のU字の一端は導電部材13に接合され、U字の他端は導電部材15に接合されている。導電部材14は、U字状の撓みの位置が移動することで、可動電極18の進退による動きを吸収する。
【0026】
可動側溶接ガン20も固定側溶接ガン10と基本的な構成は同じである。溶接ガン20は、モータ22と、加圧装置21と、可動電極28と、導電部材23,24,25と、を備えている。モータ22はサーボモータであり、加圧装置21を作動させる。加圧装置21は、モータ22の回転によって、内部に配置された加圧軸を軸方向に進退させる。
【0027】
可動電極28は、先端に、溶接対象物のワークに接する電極チップ28aを備えている。可動電極28は、加圧装置21の加圧軸の進退に従って軸方向に進退し、加圧装置21の加圧軸が軸方向に前進することにより図1,2の下方に進み、電極チップ28aがワークに押し当てられ、ワークを加圧する。可動電極28は、ワークを加圧した状態から、加圧装置21の加圧軸が軸方向に後退することにより、図1,2に示す上方の位置に戻り、電極チップ28aがワークから離れる。
【0028】
導電部材23,24,25は、トランス30によって発生し、トランス30の他方の出力端子32から軸給電部40に導かれた電流を、可動電極28に導く導電体である。導電部材23は、図3に示すように、軸給電部40の延長片42に接合された導電体である。導電部材25は、可動電極28に接合された導電体である。
【0029】
導電部材24は、導電部材14と同様の可撓性のシャントである。導電部材24のU字の一端は導電部材23に接合され、U字の他端は導電部材25に接合されている。導電部材24は、U字状の撓みの位置が移動することで、可動電極28の進退による動きを吸収する。
【0030】
2つの溶接ガン10,20は、上述したように回転装置50にそれぞれ支持されていて、図1,2に示すように、回転ブラケット部材52が固定ブラケット部材51に対して回転中心となる軸C回りに回転することにより、固定側溶接ガン10の電極チップ18aと可動側溶接ガン20の電極チップ28aとの間隔を、図1に示した最小のピッチP1と図2に示した最大のピッチP2との間で可変としている。
【0031】
(トランス)
トランス30は、固定側溶接ガン10及び可動側溶接ガン20に、溶接用の給電を行うものである。トランス30は、出力端子31,32を備えている。図3~6に示すように、一方の出力端子31は、固定側溶接ガン10の導電部材13に接合され、他方の出力端子32は、軸給電部40の軸受け部材41に接合されている。
【0032】
(軸給電部)
図7図6における軸給電部40の詳細を示す拡大断面図、図8は外周部44bが軸受け部材41の溝41bに拘束され、内周部44aが軸部材43の軸部43aに拘束された状態のリング状のコイルスプリング44を示す平面図である。なお、図8は、コイルスプリング44のリング状の一部のみを実線で表し、他の部分は省略して外周部44bと内周部44aとをそれぞれ二点鎖線によって表示している。
【0033】
軸給電部40は、トランス30からの給電を可動側溶接ガン20の電極28に導く導電体である。軸給電部40は、図4,6に示すように、回転装置50の回転ブラケット部材52に取り付けられている。軸給電部40は、図7に示すように、軸部材43と、軸受け部材41と、コイルスプリング44と、延長片42と、を備えている。
【0034】
軸部材43は、導電性の部材で形成され、回転装置50の軸Cと同軸に配置された軸部43aを有し、回転ブラケット部材52に固定されている。したがって、軸部材43は回転ブラケット部材52と一体に、軸C回りに回転する。軸部材43には、導電性の部材で形成された延長片42の一端が接合されている。延長片42の他端は、導電部材23に接合されている。
【0035】
軸受け部材41は、導電性の部材で形成され、図4,6に示すように断面が略L字状に形成された板状体である固定片41dと、図7に示す2つの軸受けキャップ41cと、を備えている。固定片41dは、L字を形成する長短の板部のうち短い側の板部が、図4,6に示すように、トランス30の出力端子32に接合されている。固定片41dの、L字を形成する長短の板部のうち長い側の板部には、軸部材43の軸部43aの外径よりも大きい直径の孔41aが形成されている。
【0036】
孔41aには、図7に示すように、固定片41dの表裏面よりも内側に、孔41aの直径よりも大きい直径となるリング状の溝41bが形成されている。溝41bには、図8に示すリング状のコイルスプリング44が嵌め合わされている。コイルスプリング44は、導電体の線状部材を螺旋状に巻き、線状部材の始端側と終端側とを接続して全体としてリング状に形成されている。
【0037】
溝41bの輪郭を形成する固定片41dの内周面とコイルスプリング44の主に外周部44bとが接触することで、軸受け部材41とコイルスプリング44とは、電気的に導通した状態となっている。
【0038】
軸受け部材41とコイルスプリング44との電気的な導通の安定のために、コイルスプリング44の外径は、溝41bの直径以上に形成されていることが好ましい。
【0039】
溝41bにコイルスプリング44が嵌め合わされた状態の固定片41dの表裏面には、図7に示すように、それぞれ軸受けキャップ41cが固定されている。軸受けキャップ41cは、固定片41dの表裏面からそれぞれ、ボス状に突出した部分が孔41aに挿入されることで、固定片41dに固定される。
【0040】
軸受けキャップ41cは、図7に示すように、軸部材43の軸部43aが通された状態で、軸部材43の軸部43aを、軸C回りに回転自在に支持する。また、軸受けキャップ41cは、溝41bに嵌め合わされたコイルスプリング44が、軸部43aを通される以前において、溝41bから脱落するのを防止する。
【0041】
なお、外力が作用していない自然状態のコイルスプリング44は、外形が略真円のリング状であり、その自然状態での外径は孔41aの直径よりも大きいが、リング状の形状を容易に弾性変形させることができる。したがって、弾性変形された状態のコイルスプリング44を、孔41aに挿入するのは容易であり、コイルスプリング44を溝41bに容易に配置することができる。
【0042】
軸受けキャップ41cの、孔41aに嵌め合わされたボスの内径は、コイルスプリング44の内径よりも大きく形成されている。これにより、コイルスプリング44の内周部44aは、軸受けキャップ41cのボスの内周面よりも半径方向の内側に突出している。
【0043】
したがって、軸受けキャップ41cのボスの内周面に略接して孔41aに挿入された軸部43aは、コイルスプリング44の内周部44aに接しながら、コイルスプリング44の内周部44aを軸部43aの外径まで押し広げた状態とする。これにより、軸部材43とコイルスプリング44とは、電気的に導通した状態となっている。
【0044】
軸部材43は、軸部43aが孔41aに挿入された状態で、軸C回りに、軸受け部材41に対して回転自在であるが、孔41aに対する軸部材43の任意の回転角度位置において、軸部材43とコイルスプリング44との電気的な導通が維持される。
【0045】
なお、図8に示したコイルスプリング44は、固定片41dの溝41bに嵌め合わされ、かつ、コイルスプリング44の内周部44aに、弾性変形前の自然状態の内周部44aの直径よりも大きな外径の軸部43aが嵌め合わされた状態を示している。このため、内周部44aが軸Cを中心とする半径方向の外側に押されて弾性変形し、コイルスプリング44の螺旋の傾きは、自然状態に比べて、少なくとも部分的に変化したものとなっている。
【0046】
このように、コイルスプリング44は、リングの外周部44bが溝41bに拘束され、リングの内周部44aが軸部材43の軸部43aに拘束されることにより、リング状の形状が弾性変形し、この弾性変形による復元力が、軸受け部材41とコイルスプリング44の外周部44bとを接触した状態に付勢する荷重として作用し、かつ軸部材43とコイルスプリング44の内周部44aとを接触した状態に付勢する荷重として作用する。したがって、軸受け部材41と軸部材43とは、コイルスプリング44を介して、電気的な導通を維持する。
【0047】
<作用>
以上のように構成された本実施形態の溶接用ガン100は、モータ53を動作させることにより、固定ブラケット部材51に対して回転ブラケット部材52を軸C回りに回転させることができる。これにより、溶接用ガン100は、固定側溶接ガン10に対して可動側溶接ガン20を、軸C回りに回転させることができる。
【0048】
この結果、溶接用ガン100は、固定側溶接ガン10の電極チップ18aと可動側溶接ガン20の電極チップ28aとのピッチを、図1,3に示した最小のピッチP1と図2,5に示した最大のピッチP2との間で、任意に変化させることができる。
【0049】
そして、溶接用ガン100は、回転装置50によって、固定側溶接ガン10に対して可動側溶接ガン20を軸C回りに回転させて、電極チップ18a,28a間のピッチが、ピッチP1とピッチP2との間の任意のピッチに設定された状態とする。この状態で、溶接用ガン100は、固定側溶接ガン10のモータ12及び可動側溶接ガン20のモータ22を回転させる。
【0050】
これにより、固定側溶接ガン10の可動電極18及び可動側溶接ガン20の可動電極28が、ワークに近づく方向に進み、両可動電極18,28の電極チップ18a,28aが、固定されたワークに上方から接した状態で、各可動電極18,28がワークを下方に加圧する。
【0051】
電極チップ18aと電極チップ28aがともにワークに接した状態で、トランス30の入力端子に所定の電流を入力し、出力端子31,32間に、溶接用の電流を出力する。
【0052】
ここで、一方の出力端子31は、導電部材13,14,15により、固定側溶接ガン10の可動電極18に接続され、他方の出力端子32は、軸受け部材41、コイルスプリング44、軸部材43、延長片42及び導電部材23,24,25により、可動側溶接ガン20の可動電極28に接続された状態となっている。
【0053】
そして、固定側溶接ガン10の電極チップ18aと可動側溶接ガン20の電極チップ28aとがともにワークに接していることで、ワークを介して、トランス30の出力端子31,32間が閉回路を形成し、出力端子31,32間に高電流が流れ、ワークの、電極チップ18aが加圧している部分と、電極チップ28aが加圧している部分とをそれぞれスポット溶接する。
【0054】
このように、本実施形態の溶接用ガン100は、軸給電部40によって、固定側溶接ガン10の電極チップ18aと可動側溶接ガン20の電極チップ28aとに、単一のトランス30からの給電を行うことができる。
【0055】
そして、溶接用ガン100は、回転装置50によって、電極チップ18a,28a間のピッチの可変量を任意に拡大し、最小のピッチP1と最大のピッチP2との間で任意のピッチとなるように、可動側溶接ガン20を固定側溶接ガン10に対して軸C回りに回転させても、溶接用ガン100の小型化や軽量化を妨げることが無い。
【0056】
つまり、溶接用ガン100は、固定側溶接ガン10に対して可動側溶接ガン20が軸C回りに回転することで、固定側溶接ガン10と一体に固定されたトランス30と、可動側溶接ガン20と、の相対的な位置関係は変化する。
【0057】
ここで、トランス30と可動側溶接ガン20との相対的な位置関係の変化を吸収するために、トランス30と可動側溶接ガン20の可動電極28とを、可撓性のシャントや導線を用いて導通させた構成の溶接用ガン(本発明が適用されない溶接用ガン)は、電極チップ18a,28a間の可変ピッチの可変量を拡大するために、可撓性のシャントや導線の長さを長くする必要がある。そして、そのような溶接用ガンは、これら長い可撓性のシャントや導線を備えることで、小型化や軽量化を妨げられる。
【0058】
これに対して、本実施形態の溶接用ガン100は、可動電極28とトランス30とを軸給電部40によって導通させていて、可撓性のシャントや導線を用いていないため、電極チップ18a,28a間の可変ピッチの可変量を拡大しても、溶接用ガン100の小型化や軽量化を妨げることがない。
【0059】
しかも、軸給電部40は、回転装置50と一体で、回転装置50の回転中心である軸Cと同軸に回転自在であるため、電極チップ18a,28a間のピッチ差を拡大する目的で回転装置50の回転角度を拡大しても、軸給電部40の大きさを大きくする必要がない。
【0060】
また、本実施形態の溶接用ガン100は、軸受け部材41の孔41aに形成された、孔41aの内径より大きい直径の溝41bにコイルスプリング44が嵌め合わされた状態で、固定片41dの表裏面からそれぞれ、孔41aに、孔41aの直径よりも小さい内径のボスが形成された軸受けキャップ41cが嵌め合わされている。
【0061】
これにより、溝41bに嵌め合わされたコイルスプリング44が、孔41aから脱落するのを防止することができるとともに、軸部材43の軸部43aを回転自在に支持することができる。
【0062】
なお、本実施形態の溶接用ガン100は、軸給電部40の軸受け部材41を、トランス30の出力端子32に接続し、軸部材43を、延長片42及び導電部材23,24,25を通じて可動側溶接ガン20の可動電極28に接続した構成であるが、これとは反対の構成を適用してもよい。
【0063】
つまり、溶接用ガン100は、軸受け部材41を回転ブラケット部材52に固定し、この軸受け部材41を、延長片42及び導電部材23,24,25を通じて可動側溶接ガン20の可動電極28に接続し、軸部材43を、トランス30の出力端子32に接続した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 固定側溶接ガン
18,28 可動電極
18a,28a 電極チップ
20 可動側溶接ガン
30 トランス
40 軸給電部
41 軸受け部材
43 軸部材
43a 軸部
44 コイルスプリング
50 回転装置
100 シリーズスポット溶接用ガン
C 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8