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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173371
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】給紙装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/00 20060101AFI20231130BHJP
   B65H 11/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B65H1/00 A
B65H11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085569
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 泰治
【テーマコード(参考)】
3F063
3F343
【Fターム(参考)】
3F063AA01
3F063BA02
3F063BA08
3F063BA09
3F063BC04
3F063BC05
3F063CA02
3F343FA02
3F343FB01
3F343GA06
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HD01
3F343KB03
3F343KB17
3F343LA02
3F343LB02
(57)【要約】
【課題】広いスペースを要することなく用紙が長尺シートであっても安定した状態で載置して給紙する。
【解決手段】給紙装置10は、用紙が載置される手差し給紙トレイ60と、手差し給紙トレイ60に載置された用紙を規制する用紙ガイド70とを備える。用紙ガイド70としては、給紙方向Aと直交する用紙の幅方向に移動自在に設けられた側方規制部71と、用紙の長手方向の後端側を保持する後方保持部72とを有する。後方保持部72は、給紙方向Aの上流側に開放された挿入部を有しており、給紙方向Aの上流側から下流側に向けてカールされた用紙の後端側を保持可能に設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙が載置される給紙トレイと、前記給紙トレイに載置された用紙を規制する用紙ガイドとを備える給紙装置であって、
前記用紙ガイドとして、給紙方向と直交する用紙の幅方向に移動自在に設けられて用紙の幅方向の両側端部を規制する側方規制部と、用紙の長手方向の後端側を保持する後方保持部とを備えており、
前記後方保持部は、前記給紙方向の上流側に開放された挿入部を有し、前記給紙方向の上流側から下流側に向けてカールされた用紙の後端側を保持可能に設けられたことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給紙装置において、
前記側方規制部は、前記給紙トレイの用紙載置面に沿って設けられた基板部と、前記基板部に立設された側板部とを備え、
前記後方保持部は、前記側板部に設けられていることを特徴とする給紙装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給紙装置において、
前記後方保持部は、前記挿入部が前記側板部に一体の凹溝状に設けられたことを特徴とする給紙装置。
【請求項4】
請求項2に記載の給紙装置において、
前記後方保持部は、前記基板部に重なり合うように前記側板部に対して回動自在に設けられたことを特徴とする給紙装置。
【請求項5】
請求項1に記載の給紙装置において、
前記給紙トレイの前記給紙方向の下流側端部には給紙口が設けられ、
前記後方保持部は、前記給紙口の上部に設けられたことを特徴とする給紙装置。
【請求項6】
請求項5に記載の給紙装置において、
前記後方保持部は、前記給紙口を開放するように跳ね上げられた開放姿勢と、前記挿入部が前記給紙トレイ上に配置される保持姿勢との間で回動可能に設けられたことを特徴とする給紙装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1つの請求項に記載の給紙装置において、
前記後方保持部は、前記挿入部に弾性部材が備えられ、前記挿入部の内面と前記弾性部材との間に用紙を保持可能に設けられたことを特徴とする給紙装置。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1つの請求項に記載の給紙装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給紙装置およびその給紙装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において用紙を給紙する手法として、給紙装置に備えられた給紙カセットから給紙する手法と、装置本体の側面に備えられた手差し給紙トレイから給紙する手法とがある。給紙カセットには、同一サイズの複数枚の用紙が収納されることが多く、例えば、画像形成処理に用いられる頻度が比較的高い、A4、A3、B4、およびB5等の定形サイズの用紙が収納される。
【0003】
一方、手差し給紙トレイは、画像形成処理に用いられる頻度が比較的低い用紙であって、例えば葉書、封筒、厚紙、長尺シート等の種々の用紙の給紙に使用されている。手差し給紙トレイの用紙載置面には、給紙する用紙のサイズを容易に変更できるようにするため、給紙方向に直交する方向の用紙位置を規制するためのガイド部材が備えられている。
【0004】
この種のガイド部材は、手差し給紙トレイの用紙載置面において、用紙の給紙方向に平行な側端部にそれぞれ当接するように、幅方向に対向して配置されている。また、例えば特許文献1に開示されるように、用紙が長尺シートである場合に対応するために、手差し給紙トレイに複数の延長トレイを取り付け、手差し給紙トレイの用紙載置面から斜め上方に延長トレイを引き延ばして、長尺シートを載せることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-13955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、長尺シート用の延長トレイを使う場合には、延長トレイを引き延ばして設置するための広いスペースを画像形成装置の側面部に確保しておかなければならず、場所をとるという問題点がある。また、長尺シートの用紙の搬送状態が不安定となりやすく、給紙途中で斜め送りが発生したり、紙詰まり等の給紙異常を招いたりする可能性が高まる。そのうえ、長尺シート以外の用紙を手差し給紙トレイから給紙する際には、延長トレイが不要であり、延長トレイが給紙操作の邪魔になるという問題点もある。
【0007】
本開示は、前記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、長尺シートである用紙を給紙する際に広いスペースを要することなく、安定した状態で載置して給紙することを可能にする給紙装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本開示の解決手段は、用紙が載置される給紙トレイと、前記給紙トレイに載置された用紙を規制する用紙ガイドとを備える給紙装置において、前記用紙ガイドとして、給紙方向と直交する用紙の幅方向に移動自在に設けられて用紙の幅方向の両側端部を規制する側方規制部と、用紙の長手方向の後端側を保持する後方保持部とを備えており、前記後方保持部は、前記給紙方向の上流側に開放された挿入部を有し、前記給紙方向の上流側から下流側に向けてカールされた用紙の後端側を保持可能に設けられたことを特徴としている。
【0009】
前記給紙装置において、前記側方規制部は、前記給紙トレイの用紙載置面に沿って設けられた基板部と、前記基板部に立設された側板部とを備え、前記後方保持部は、前記側板部に設けられることが好ましい。
【0010】
また、前記給紙装置において、前記後方保持部は、前記挿入部が前記側板部に一体の凹溝状に設けられることが好ましい。
【0011】
また、前記給紙装置において、前記後方保持部は、前記基板部に重なり合うように前記側板部に対して回動自在に設けられることが好ましい。
【0012】
また、前記給紙装置において、前記給紙トレイの前記給紙方向の下流側端部には給紙口が設けられ、前記後方保持部は、前記給紙口の上部に設けられてもよい。
【0013】
その場合、前記給紙装置において、前記後方保持部は、前記給紙口を開放するように跳ね上げられた開放姿勢と、前記挿入部が前記給紙トレイ上に配置される保持姿勢との間で回動可能に設けられることが好ましい。
【0014】
また、前記給紙装置において、前記後方保持部は、前記挿入部に弾性部材が備えられ、前記挿入部の内面と前記弾性部材との間に用紙を保持可能に設けられてもよい。
【0015】
また、前記の各解決手段に係る給紙装置を備える画像形成装置も本開示の技術的思想の範疇である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、給紙装置の給紙トレイから長尺シートを給紙する際に広いスペースを要することなく、用紙を安定した状態で載置して給紙することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
図2】本開示の実施形態1に係る給紙装置に設けられる手差し給紙トレイを示す斜視図である。
図3】前記手差し給紙トレイの用紙ガイドを拡大して示す斜視図である。
図4】本開示の実施形態2に係る給紙装置に設けられる手差し給紙トレイを示す斜視図である。
図5A】前記手差し給紙トレイに設けられた用紙ガイドを拡大して示す斜視図である。
図5B】前記用紙ガイドの後方保持部を回動させた状態を拡大して示す斜視図である。
図6】本開示の実施形態3に係る給紙装置の手差し給紙トレイに設けられる用紙ガイドを示す斜視図である。
図7】本開示の実施形態3に係る給紙装置の手差し給紙トレイに設けられる用紙ガイドの他の例を示す斜視図である。
図8】本開示の実施形態4に係る給紙装置に設けられる手差し給紙トレイを示す斜視図である。
図9】前記手差し給紙トレイに設けられた用紙ガイドの後方保持部を拡大して示す斜視図である。
図10】前記用紙ガイドの後方保持部を回動させた状態を拡大して示す斜視図である。
図11】参考例としての給紙装置における手差し給紙トレイから長尺シートである用紙を供給する場合の説明図である。
図12】前記用紙をカールさせた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施形態に係る給紙装置および画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する形態は、本開示を具体化する一例であって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す断面図である。
【0020】
画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能などを有する複合機であり、画像読取部18によって読み取られた原稿の画像を外部に送信し、また、読み取られた原稿の画像または外部から受信した画像を、カラーまたは単色で用紙に画像形成する。
【0021】
なお、説明の便宜上、感光体ドラム31の回転軸の軸方向に沿う方向を前後方向(軸方向)Yとして示し、画像形成装置1を図1に示すように正面から見て前記軸方向に交差する左右方向Xとし、左右方向Xに交差する高さ方向を上下方向Z(上側Z1および下側Z2)として説明するが、これによって画像形成装置1の設置形態および使用方向を限定するものではない。
【0022】
画像形成装置1は、画像形成部12等を備える装置本体11、およびその上側Z1に配置される画像読取部18を含む。画像読取部18には、開閉自在に支持された原稿搬送部(ADF)17が設けられている。原稿搬送部17では、画像読取部18の原稿載置台19を開放して原稿を手置きすることができる。また、原稿搬送部17は、載置された原稿を自動で搬送する。画像読取部18は、載置された原稿または原稿搬送部17から搬送された原稿を読み取って画像データを生成する。
【0023】
装置本体11には、CPUやメモリ等を含む図示しない制御部および画像形成部12等が備えられている。画像形成部12は、露光ユニット13、現像ユニット20、感光体ユニット30、中間転写ベルトユニット40、転写ローラ14および定着ユニット50等を備え、給紙装置10の給紙カセット15または手差し給紙トレイ60から搬送される用紙上に画像を形成し、画像形成済みの用紙を排紙トレイ16に排出する。
【0024】
現像ユニット20および感光体ユニット30の2つのユニットは、互いに分離可能に一体化されることでプロセスカートリッジを構成している。このプロセスカートリッジは、現像ユニット20と感光体ユニット30とが一体化された状態で、装置本体11に対して前面側から挿抜可能に形成されている。
【0025】
画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の4色のカラー画像に応じたものであり、装置本体11には、各色に応じた4種類の潜像を形成するように4つのプロセスカートリッジが装着されている。4つのプロセスカートリッジは、それぞれの画像ステーションを構成して、中間転写ベルト41の表面の走行方向に沿って配列されている。
【0026】
露光ユニット13は、レーザ出射部および反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)であり、帯電した感光体ドラム31の表面を露光することによって、画像データに応じた静電潜像を感光体ドラム31の表面に形成する。
【0027】
感光体ユニット30は、感光体ドラム31、帯電器32およびクリーナユニット33等を備えている。感光体ドラム31は、導電性を有する円筒状の基体の表面に感光層が形成された静電潜像担持体であり、図示しない駆動部によって軸回りに回転可能とされている。帯電器32は、この感光体ドラム31の表面を所定の電位に帯電させる。クリーナユニット33は、クリーニングブレード等を備え、中間転写ベルト41へのトナー像の転写後において、感光体ドラム31の表面に残留したトナーを除去して回収する。
【0028】
現像ユニット20は、感光体ドラム31の表面に形成された静電潜像を4色(YMCK)のトナーによって顕像化する(トナー像を形成する)ものであって、感光体ドラム31にトナーを供給する現像ローラ21および搬送部材22等を備える。現像ローラ21は、感光体ドラム31に沿うように近接して配置され、図示しない駆動部によって軸回りに回転可能とされる。現像ユニット20の現像ハウジング23内には、トナーおよびキャリア等を含む現像剤が収容され、現像ローラ21を介してトナーが感光体ドラム31に供給される。
【0029】
中間転写ベルトユニット40は、中間転写ベルト41、駆動ローラ42、従動ローラ43および中間転写ローラ44等を備え、感光体ドラム31の上側Z1に配置されている。中間転写ベルト41は、各感光体ドラム31に接触するように設けられており、中間転写ローラ44を用いて、各感光体ドラム31に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト41に順次重ねて転写することによって、中間転写ベルト41上に多色のトナー像を形成する。駆動ローラ42の近傍には、転写ローラ14が配置されており、中間転写ベルト41と、2次転写部の転写ローラ14との間のニップ域を用紙が通過することによって、中間転写ベルト41に形成されたトナー像が用紙に転写される。
【0030】
定着ユニット50は、ヒートローラ51および加圧ローラ52を備え、転写ローラ14の上方に配置される。ヒートローラ51は、所定の定着温度となるように設定されており、ヒートローラ51と加圧ローラ52との間のニップ域を用紙が通過することによって、用紙に転写されたトナー像が溶融、混合および圧接されて、用紙に対してトナー像が熱定着される。
【0031】
また、装置本体11内には、給紙カセット15または手差し給紙トレイ60からの用紙をレジストローラ56、転写ローラ14および定着ユニット50を経由させて排紙トレイ16に送るための第1用紙搬送路501が設けられている。第2用紙搬送路502は、用紙に対して両面印刷を行う際に、片面印刷が終了して定着ユニット50を通過した後の用紙を転写ローラ14の上流側において第1用紙搬送路501に戻すために設けられている。第1用紙搬送路501および第2用紙搬送路502には、用紙に補助的に推進力を与えるための複数の搬送ローラ57が適宜設けられている。
【0032】
給紙装置10の給紙カセット15には、規定のサイズの用紙が収容される。給紙カセット15からは、用紙がピックアップローラ151および給紙ローラ152を介して引き出され、第1用紙搬送路501へと送られる。一方、手差し給紙トレイ60は、装置本体11の側面(図1では図中右側の側面)に開閉可能に設けられている。手差し給紙トレイ6015は、給紙カセット15に収容されている用紙以外の用紙を使用する際に用いられる。手差し給紙トレイ60の基端部側には、手差し給紙トレイ60に載置された用紙を第1用紙搬送路501へと引き込む呼び込みローラ66が配設されている。例示の形態では、手差し給紙トレイ60は、呼び込みローラ66の下側Z2から斜め上方へやや傾斜して延設されている。
【0033】
手差し給紙トレイ60には、載置された用紙を規制する用紙ガイドが備えられている。手差し給紙トレイ60の用紙ガイドの構成には複数の形態を例示でき、そのうちの4つの形態について以下説明する。
【0034】
(実施形態1)
図2は、実施形態1に係る給紙装置10における手差し給紙トレイ60を示す斜視図である。図2では、装置本体11に対して開いた状態の手差し給紙トレイ60を示している。
【0035】
手差し給紙トレイ60は、用紙が載置される用紙載置面61を備えている。手差し給紙トレイ60は一方の端辺側が装置本体11に対して回動可能に軸支されて、取手63を把持して適宜開閉することが可能とされている。手差し給紙トレイ60は前後方向Yの両側に配設された支持アーム62を介して、給紙口65の下側Z2に位置するように支持される。開いた手差し給紙トレイ60の上側Z1の面は用紙載置面61とされ、閉じると用紙載置面61の反対側の面が、装置本体11の側面に連なるように配置される。
【0036】
給紙装置10では、用紙が挿通する給紙口65の内側に呼び込みローラ66が軸支されており、呼び込みローラ66が回転することにより、用紙載置面61上の用紙が用紙ガイド70に沿って画像形成部12へ供給される。
【0037】
用紙ガイド70としては、用紙の両側端部を規制する側方規制部71と、用紙の後端側を保持する後方保持部72とが設けられている。側方規制部71は、給紙方向Aと直交する用紙の幅方向(例示の形態では図中Y方向)に移動自在に設けられて、用紙の幅方向の両側端部を規制する。また、後方保持部72は、用紙の長手方向の後端側を保持するように設けられている。
【0038】
用紙ガイド70としての側方規制部71は、用紙の幅方向の端部を両側から挟み込んで規制するため、用紙載置面61に一対で設けられている。側方規制部71は、それぞれ、給紙方向Aと直交する幅方向(Y方向)に移動可能に設けられている。また、側方規制部71は、図示しない機構により手差し給紙トレイ60の中央部に対して対称に連動して移動可能とされている。
【0039】
これにより、一対の側方規制部71の間に挟み込まれた用紙の中央部が、用紙載置面61の中央部に一致するように載置することが可能とされている。定形サイズの用紙であれば、一対の側方規制部71によって用紙の幅方向の端部を規制することで、用紙載置面61上の用紙を給紙方向Aに沿って送ることができる。
【0040】
用紙には、前記したA4、A3、B4、およびB5等の定形サイズの用紙に加えて、給紙方向Aに長く形成された、長尺シートと呼ばれる用紙もある。長尺シートは、一例として、幅が297mmとされ、給紙方向Aの長さは1200mmのサイズとされる。
【0041】
図11および図12は、長尺シートである用紙Pを手差し給紙トレイ92から供給する場合を示す説明図であり、参考例としての給紙装置90における手差し給紙トレイ92を示している。
【0042】
図11に示すように、給紙方向Aに長い長尺シートである用紙Pを手差し給紙トレイ60に載置すると、給紙方向Aの下流側となる用紙Pの前端部P1は給紙口91の近傍に位置する一方、上流側となる後端部P2は手差し給紙トレイ92上には載らず、用紙Pが手差し給紙トレイ92から大きくはみ出した状態となる。そのため、従来であれば、延長トレイを手差し給紙トレイ92に取り付けて用いられることが多かった。しかしながら、用紙Pの幅方向の側端部P3を規制する用紙ガイドだけでは、長尺シートである用紙Pを、給紙方向Aに安定して送ることが困難であり、給紙途中で位置ずれや斜め送り等が発生しやすくなるといった問題点があった。
【0043】
例えば、図12に示すように、長尺シートである用紙Pの後端部P2側を、給紙方向Aの上流側から下流側に向けてカールさせ、用紙ガイドによって保持することができれば、用紙Pを給紙方向Aに沿って安定的に供給し得るものとなる。
【0044】
そこで、本開示に係る給紙装置10では、用紙の後端部を給紙方向Aの上流側から下流側に向けてカールさせて配置し、その用紙の後端部を用紙ガイドで保持することで、位置ずれや斜め送り等の発生を抑制し得るように構成している。
【0045】
図3は、実施形態1に係る給紙装置10における用紙ガイド70の構成を示す斜視図である。具体的には、用紙ガイド70としての側方規制部71は、それぞれ、手差し給紙トレイ60の用紙載置面61に沿って設けられて幅方向(Y方向)に移動可能とされた基板部711と、この基板部711に立設された側板部712とを備えている。基板部711が用紙載置面61を移動されることで、側板部712が用紙Pの側端部P3に当接して、用紙Pを給紙方向Aに沿って送るように規制するものとなる。
【0046】
本実施形態では、用紙ガイド70としての後方保持部72は側板部712の上部に設けられている。また、後方保持部72は、給紙方向Aの上流側に開放された挿入部721を備えている。この場合、後方保持部72は、挿入部721が側板部712に一体の凹溝状に設けられている。挿入部721は、左右方向Xには給紙方向Aの上流側に向けて開放された断面略コ字状に設けられ、かつ用紙Pの幅方向(Y方向)の中央に向けて開放された断面略コ字状に設けられている。
【0047】
後方保持部72は、幅方向に移動可能な側方規制部71に一体に設けられているので、側方規制部71を移動させることで用紙Pの幅に合わせて配置される。給紙方向Aの下流側にカールされた用紙Pの後端部P2を挿入部721に配置するだけで用紙Pの後端部P2が保持される。
【0048】
これにより、図3に示すように、用紙Pの前端部P1側では、側方規制部71の側板部712によって用紙Pの前端部P1側で幅方向(Y方向)への移動が規制される。また、給紙方向Aの上流側から下流側に向けてカールされた用紙Pの後端部P2は後方保持部72に保持され、挿入部721の内面に用紙Pの後端部P2側の側端部P3が当接して幅方向(Y方向)への移動が規制される。また、挿入部721により、用紙Pの後端部P2側の給紙方向Aへの移動も規制される。これにより、用紙Pの位置ずれが抑制され得るものとなる。
【0049】
呼び込みローラ66が回転することにより、用紙載置面61上の用紙Pが用紙ガイド70の側方規制部71に沿って給紙方向Aへ送られ、用紙Pの前端部P1は第1用紙搬送路501へと搬送されていく。用紙Pは幅方向の側端部P3が側方規制部71に規制されながら給紙方向Aへ移動する。給紙に伴って、手差し給紙トレイ60上の用紙Pのカールが徐々に変化し、用紙Pの後端部P2が後方保持部72の挿入部721から離脱すると、用紙載置面61上に沿うように用紙Pの後端部P2側が載置され、その後、側方規制部71に沿って給紙方向Aへ送られることとなる。
【0050】
したがって、このような用紙ガイド70を備える給紙装置10においては、長尺シートである用紙を供給する際に発生しやすかった位置ずれ、がたつき、および斜め送り(斜行、スキュー)等を抑制することが可能となる。長尺シートであっても、給紙装置10の手差し給紙トレイ60から供給された用紙に対して、装置本体11の画像形成部12等を通じて良好な画像形成が可能となる。
【0051】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係る給紙装置10における手差し給紙トレイ60を示す斜視図であり、図5Aおよび図5Bは、手差し給紙トレイ60の用紙ガイド70を拡大して示す斜視図である。図4では、装置本体11に対して開いた状態の手差し給紙トレイ60を示している。なお、以下の実施形態に係る給紙装置10は、用紙ガイド70の構成に特徴を有するものであることから、実施形態1と共通するその他の構成部分には共通の参照符号により示して、重複する説明を省略している。
【0052】
実施形態2に係る給紙装置10では、用紙ガイド70の後方保持部73が、側方規制部71の側板部712に対して回動自在に設けられている。図5Bに示すように、側方規制部71は、側板部712に切欠部713が設けられている。この場合、切欠部713は、側板部712において、給紙方向Aの上流側寄りに配置され、上方に開放された矩形溝状に設けられている。また、側板部712の上辺部には規制片714が、用紙載置面61の中央に向けて延設されている。
【0053】
後方保持部73は、側板部712の切欠部713に納まるように設けられた回動板732と、回動板732の外面に突設された挿入部731とを備えている。図5Aおよび図5Bに示すように、回動板732は下端部が側板部712に回動可能に支持されており、側板部712と平行な立設状態から、基板部711との間に1mm以上の隙間をあけて重なり合う状態に回動させることが可能とされている。
【0054】
挿入部731は、回動板732に対して略L字状に設けられている。図5Bに示すように、回動板732が基板部711側に回動されると、挿入部731は給紙方向Aの上流側および用紙の幅方向の中央に向けて開放された凹溝部を構成するものとなる。
【0055】
長尺シートではない用紙を手差し給紙トレイ60から供給する場合には、図5Aに示すように、側方規制部71の側板部712と、後方保持部73の回動板732とが平行に配設された状態で用いて、用紙の側端部を規制することができる。
【0056】
長尺シートである用紙を手差し給紙トレイ60から供給する場合には、図5Aに示す状態から図5Bに示す状態となるように、後方保持部73の回動板732を回動させて用いることができる。長尺シートである用紙をセットした状態では、用紙の前端部(P1)側は、基板部711と回動板732との間に載置される。給紙方向Aの上流側から下流側に向けてカールさせた用紙の後端部(P2)は、挿入部731内に保持することができる。
【0057】
給紙されることで、用紙は基板部711と回動板732との間の隙間を通って給紙口65へ送られていく。このように、用紙が長尺シートであっても、給紙装置10の手差し給紙トレイ60から供給された用紙に対して、位置ずれや斜め送り等を抑制することが可能となり、装置本体11の画像形成部12等を通じて良好な画像形成が可能となる。
【0058】
(実施形態3)
図6および図7は、実施形態3に係る給紙装置10の手差し給紙トレイ60に設けられる用紙ガイド70をそれぞれ示す斜視図である。
【0059】
この形態に係る給紙装置10の用紙ガイド70においても、基板部711と側板部712とを有する側方規制部71に、後方保持部72が一体に設けられている。図6に示すように、後方保持部72は、側板部712の内面に備えられ、挿入部721が、給紙方向Aの上流側および用紙の幅方向の中央に向けて開放された凹溝状に設けられている。さらに、後方保持部72の挿入部721には、弾性部材752が備えられている。
【0060】
図6に示す形態では、弾性部材752は、挿入部721の上片を挟み込んで係止された板バネ部材であり、平板状のバネ部753が挿入部721の下片に当接されて下方に付勢されている。これにより、挿入部721の内面と、弾性部材752のバネ部753との間に、用紙の後端部を保持可能とされている。弾性部材752のバネ部753は、挿入部721の手前側(開放側)から給紙方向Aに向かって下り勾配で傾斜させて設けられているので、用紙の後端部を容易に差し挟むことができて、その弾性力の作用で安定的に保持させることが可能であり、また用紙の後端部を給紙方向Aの反対方向には容易に引き抜くことが可能とされている。
【0061】
また、図7に示すように、挿入部721の手前側(開放側)に、ゴム、スポンジ、その他の弾性力を発揮する素材のいずれかで構成され、所定の厚みを持ったブロック状の弾性部材754が備えられてもよい。弾性部材754は、挿入部721における給紙方向Aの上流側を狭めるように設けられ、差し込まれた用紙の後端部を安定的に保持するものとなる。
【0062】
手差し給紙トレイ60の用紙ガイド70として、このような構成を有する後方保持部72が設けられることにより、給紙方向Aの上流側から下流側に向けてカールさせた用紙の後端部を挿入部721内に容易に保持することができ、位置ずれや斜め送り等を抑制することが可能となる。したがって、長尺シートであっても、給紙装置10の手差し給紙トレイ60から供給された用紙に対して、装置本体11の画像形成部12等を通じて良好な画像形成が可能となる。
【0063】
なお、後方保持部72に備えられる弾性部材としては例示したような形状を有する部材であるに限られず、また、弾性力の作用を有する部材であればコイルスプリング等の他の弾性部材であってもよい。
【0064】
(実施形態4)
図8は、実施形態4に係る給紙装置10の手差し給紙トレイ60を示す斜視図であり、図9および図10は、手差し給紙トレイ60の用紙ガイド70としての後方保持部74を拡大して示す斜視図である。
【0065】
手差し給紙トレイ60における給紙方向Aの下流側端部には給紙口65が設けられており、この形態に係る給紙装置10では、用紙ガイド70としての後方保持部74は、給紙口65の上側Z1に設けられている。用紙ガイド70としての側方規制部71は、用紙載置面61の両側端部にそれぞれ幅方向に移動可能に配置されている。
【0066】
図8に示すように、給紙口65の上側Z1には装置本体11の前後方向Yに延びるフレーム部材64が設けられて給紙口65の上縁部を構成し、その略中央部にカバー部材641が備えられている。カバー部材641の内側には呼び込みローラ66が配置されている。後方保持部74は、給紙方向Aに長い回動板742を備えており、この回動板742がカバー部材641に取り付けられて、給紙口65の上側Z1から給紙方向Aの上流側に向かって延びる板状に構成されている。
【0067】
後方保持部74の回動板742の上流側端部(給紙方向Aの上流側に位置する端部)には、挿入部741が設けられている。挿入部741は、板状である回動板742の厚みを分割するスリット状に形成され、給紙方向Aの上流側および用紙の幅方向に開放された凹溝部として設けられている。
【0068】
さらに、後方保持部74は、図9に示すように、挿入部741が手差し給紙トレイ60上に配置される保持姿勢と、図10に示すように、回動板742が給紙口65を開放するように跳ね上げられた開放姿勢との間を回動可能に設けられている。図9に示すように、後方保持部74の回動板742の下流側端部はカバー部材641の取り付け部642に回動可能に軸支されている。
【0069】
後方保持部74は、給紙方向Aに長い回動板742の長さ方向の途中部で屈曲され、開放姿勢とされたときにカバー部材641に沿って配置される形状を有している。図9に示される保持姿勢とされた後方保持部74の表面743は、図10に示すように後方保持部74が開放姿勢とされることでカバー部材641に当接し、裏面744が露出する形態となる。
【0070】
手差し給紙トレイ60に載置される用紙が長尺シートである場合には、載置された用紙に対して側方規制部71を移動させて幅方向の両側端部を規制し、後方保持部74を開放姿勢から保持姿勢に回動させて、給紙方向Aの下流側へカールさせた用紙の後端部を挿入部741に挟み込むことで、用紙を保持することが可能とされる。呼び込みローラ66が回転することにより、用紙載置面61上の用紙が側方規制部71に沿って給紙方向Aへ送られ、それに伴って、用紙載置面61上の用紙のカールが徐々に変化し、用紙の後端部が後方保持部74の挿入部741から離脱すると、用紙載置面61上に沿うように用紙の後端部側が載置される。その後、用紙は、用紙載置面61と、保持姿勢にある後方保持部74との間を通過しながら側方規制部71に沿って給紙方向Aへ安定して送られることとなる。
【0071】
したがって、本実施形態に係る給紙装置10においても、長尺シートである用紙を供給する際に発生しやすかった位置ずれ、がたつき、および斜め送り等を効果的に抑制することが可能となり、手差し給紙トレイ60から供給される用紙に対して良好な画像形成が可能となる。
【0072】
以上のように構成される給紙装置10およびその給紙装置10を備える画像形成装置1においては、手差し給紙トレイ60から長尺シートである用紙を供給する際に、延長トレイ等の広いスペースを要する部材を用いることなく、長尺シートを安定した状態で載置し得て、位置ずれや斜め送り等が発生するのを抑制することが可能となる。
【0073】
なお、本開示に係る前記構成は、手差し給紙トレイだけでなく、画像形成装置に備えられる他の給紙部に備えられてもよい。画像形成装置1としては、複合機を例に挙げて示したが、本開示の画像形成装置はこれに限定されるものではなく、プリンタ装置、ファクシミリ装置、あるいは複写機等の種々の画像形成を行う装置であってもよい。
【0074】
本開示は前記の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想に含まれる技術的事項のすべてが本開示の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能であり、そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成装置
10 給紙装置
11 装置本体
15 給紙カセット
20 現像ユニット
30 感光体ユニット
40 中間転写ベルトユニット
50 定着ユニット
60 手差し給紙トレイ(給紙トレイ)
61 用紙載置面
62 支持アーム
63 取手
64 フレーム部材
641 カバー部材
65 給紙口
66 呼び込みローラ
70 用紙ガイド
71 側方規制部
711 基板部
712 側板部
713 切欠部
72、73、74 後方保持部
721、731、741 挿入部
732、742 回動板
743 表面
744 裏面
752、754 弾性部材
A 給紙方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12