(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173378
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ファイル
(51)【国際特許分類】
B42F 7/00 20060101AFI20231130BHJP
B42F 13/16 20060101ALI20231130BHJP
B42F 13/24 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B42F7/00 B
B42F13/16 B
B42F13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085589
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎平
【テーマコード(参考)】
2C017
【Fターム(参考)】
2C017QA17
2C017QB01
2C017QB04
2C017UD09
(57)【要約】
【課題】表紙の見開き姿勢及び閉じ姿勢を好適に採り得る構成を有したファイルを提供する。
【解決手段】ファイルは、表紙Aが見開き姿勢(H)と閉じ姿勢とを採り得るように姿勢変更可能に構成されている。綴じ具Bが、開姿勢(P)と閉姿勢とを採り得るように構成された前後の綴じリングR(f)、R(r)と、背表紙3の内面に取り付けられるベース部d2とを備えている。表表紙1及び裏表紙2が、見開き姿勢(H)と閉じ姿勢との間で姿勢変更し得るように前後の綴じリングR(f)、R(r)の通過を許容する第一、第二連通孔a1、a2を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表紙及び綴じ具を備えてなるファイルであって、
前記表紙が、ヒンジ部を介して連結された表表紙、背表紙、及び、裏表紙を有し、前記表表紙及び裏表紙が略面一をなすように展開し得る見開き姿勢と、前記表表紙及び裏表紙の各内面同士が対面し得る閉じ姿勢とを採り得るように姿勢変更可能に構成されたものであり、
前記綴じ具が、開姿勢と閉姿勢とを採り得るように構成された綴じリングと、前記背表紙の内面に取り付けられるベース部とを備えたものであり、
前記表表紙及び裏表紙が、前記見開き姿勢と前記閉じ姿勢との間で姿勢変更し得るように前記綴じリングの通過を許容する連通孔を備えているファイル。
【請求項2】
前記ベース部を前記背表紙の内面に取り付ける取付具を備えたものであって、
前記取付具が、前記背表紙の外面側に配された取付ベースと、この取付ベースから突設され前記背表紙を貫通するとともに前記ベース部に形成された係合部に係合する係合凸部とを備えたものである請求項1記載のファイル。
【請求項3】
前記係合凸部が、前記取付ベースにおける長手方向両端部に突設されたものであり、これら係合凸部が前記係合部に対して嵌め殺し状態に係合する請求項2記載のファイル。
【請求項4】
前記背表紙の横幅寸法が、前記ベース部の横幅寸法と略同じかそれよりも長く設定されたものであり、且つ、前記綴じリングの横幅寸法よりも短く設定されたものである請求項1記載のファイル。
【請求項5】
前記表紙が、前記表表紙及び裏表紙の各外面同士が対面し得る折り返し姿勢を採り得るように姿勢変更可能に構成されたものである請求項1記載のファイル。
【請求項6】
前記綴じ具が、前記ベース部及び当該ベース部から延設され前記綴じリングを構成する第一リング構成部を有した第一綴じ具部材と、前記綴じリングを構成する第二リング構成部が設けられた第二綴じ具部材とを有してなり、
前記第一、第二リング構成部の各先端部分同士が係合した前記閉姿勢と前記第一、第二リング構成部の各先端部分が離間した前記開姿勢とを採り得るように前記第二綴じ具部材が前記第一綴じ具部材に対して回転可能に構成されたものである請求項1記載のファイル。
【請求項7】
前記第一綴じ具部材及び前記第二綴じ具部材のそれぞれが、合成樹脂により形成されたものである請求項6記載のファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表紙と綴じ具とを備えたファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表紙及び綴じ具を備えてなる種々のファイルが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この種のファイルには、背表紙における外面に対して、綴じ具の基部が取り付けられた構成のものがある。
【0004】
ところが、かかる構成のファイルは、一定の大きさをなす基部の存在に起因して、天板等の載置面上において表表紙及び裏表紙が略面一をなすように展開し得る見開き姿勢が安定し難いものとなっている。
【0005】
また、ファイルは、不使用時等において、綴じ具の存在に影響を受けることなく表表紙及び裏表紙の各内面同士が対面し得る閉じ姿勢を好適に採り得るものであることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、表紙の見開き姿勢及び閉じ姿勢を好適に採り得る構成を有したファイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、表紙及び綴じ具を備えてなるファイルであって、前記表紙が、ヒンジ部を介して連結された表表紙、背表紙、及び、裏表紙を有し、前記表表紙及び裏表紙が略面一をなすように展開し得る見開き姿勢と、前記表表紙及び裏表紙の各内面同士が対面し得る閉じ姿勢とを採り得るように姿勢変更可能に構成されたものであり、前記綴じ具が、開姿勢と閉姿勢とを採り得るように構成された綴じリングと、前記背表紙の内面に取り付けられるベース部とを備えたものであり、前記表表紙及び裏表紙が、前記見開き姿勢と前記閉じ姿勢との間で姿勢変更し得るように前記綴じリングの通過を許容する連通孔を備えているファイルである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記ベース部を前記背表紙の内面に取り付ける取付具を備えたものであって、前記取付具が、前記背表紙の外面側に配された取付ベースと、この取付ベースから突設され前記背表紙を貫通するとともに前記ベース部に形成された係合部に係合する係合凸部とを備えたものである請求項1記載のファイルである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記係合凸部が、前記取付ベースにおける長手方向両端部に突設されたものであり、これら係合凸部が前記係合部に対して嵌め殺し状態に係合する請求項2記載のファイルである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記背表紙の横幅寸法が、前記ベース部の横幅寸法と略同じかそれよりも長く設定されたものであり、且つ、前記綴じリングの横幅寸法よりも短く設定されたものである請求項1記載のファイルである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記表紙が、前記表表紙及び裏表紙の各外面同士が対面し得る折り返し姿勢を採り得るように姿勢変更可能に構成されたものである請求項1記載のファイルである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記綴じ具が、前記ベース部及び当該ベース部から延設され前記綴じリングを構成する第一リング構成部を有した第一綴じ具部材と、前記綴じリングを構成する第二リング構成部が設けられた第二綴じ具部材とを有してなり、前記第一、第二リング構成部の各先端部分同士が係合した前記閉姿勢と前記第一、第二リング構成部の各先端部分が離間した前記開姿勢とを採り得るように前記第二綴じ具部材が前記第一綴じ具部材に対して回転可能に構成されたものである請求項1記載のファイルである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記第一綴じ具部材及び前記第二綴じ具部材のそれぞれが、合成樹脂により形成されたものである請求項6記載のファイルである。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、表紙の見開き姿勢及び閉じ姿勢を好適に採り得る構成を有したファイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図16】表紙が折り返し姿勢を採る場合を示す断面図(
図15と同じ切断箇所の断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~16を参照して説明する。なお、本実施形態における上下方向、左右方向、及び、前後方向の設定は説明の便宜上のものである。
【0019】
この実施形態は、本発明を、綴じ孔j1を有した用紙等の被綴じ物J(以下、単に、「被綴じ物J」という。)を綴じることができるようにした綴じ具B、及び、当該綴じ具Bを有したファイルに適用したものである。
【0020】
ファイルは、表紙Aと、表紙Aにおける背表紙3の内面に対して取り付けられた二つの綴じ具Bを備えている。二つの綴じ具Bはそれぞれ同一構造のものである。二つの綴じ具Bは、互いに離間するように、取付具Gを用いて背表紙3の手前端部(前端部)及び奥端部(後端部)に対して取り付けられている。
【0021】
以下、ファイルの各構成について詳述する。
【0022】
<<表紙A>>
表紙Aは、ヒンジ部Nを介して相対回転可能に連結された表表紙1、背表紙3、及び、裏表紙2を有したものである。表紙Aは、合成樹脂により形成されたシート状をなしている。
【0023】
表紙Aは、表表紙1、背表紙3、及び、裏表紙2が天板等の載置面上において略面一をなすように展開し得る見開き姿勢(H)と、表表紙1及び裏表紙2の各内面同士が対面し得る閉じ姿勢(T)と、表表紙1及び裏表紙2の各外面同士が対面し得る折り返し姿勢(K)を採り得るように姿勢変更可能に構成されている。
【0024】
<表表紙1>
表表紙1は、全体として略矩形板状をなしている。表表紙1は、ヒンジ部Nを介して背表紙3に隣設された基端表表紙部12と、中間ヒンジ部cnを介して基端表表紙部12に連設された表表紙本体部11とを備えている。
【0025】
この実施形態では、表表紙1が、表表紙本体部11、中間ヒンジ部cn、及び、基端表表紙部12によって構成されている。すなわち、表表紙1に中間ヒンジ部cnが設けられている。このため、閉じ姿勢(T)の表表紙1は、綴じ具Bによって綴じられた被綴じ物Jの量や枚数や大きさ等に対応して、表表紙本体部11と基端表表紙部12との相対姿勢が柔軟に変更され得るものとなっている。
【0026】
基端表表紙部12は、背表紙3の横幅寸法w1と略同じかそれよりも短い横幅寸法に設定されている。この実施形態では、基端表表紙部12は、背表紙3の横幅寸法w1よりも短い横幅寸法に設定されている。表表紙本体部11は、表表紙1の主要部を構成するものである。
【0027】
表表紙1は、見開き姿勢(H)と閉じ姿勢(T)との間で姿勢変更し得るように綴じ具Bにおける前後の綴じリングR(f)、R(r)の通過を許容する連通孔である第一連通孔a1を備えている。第一連通孔a1は、前後の綴じリングR(f)、R(r)を構成する左部分すなわち前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)が通過し得るものとなっている。
【0028】
なお、第一連通孔a1は、軸部e2回りに可動する前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)の可動領域に対応して、表表紙1を構成する表表紙本体部11及び基端表表紙部12だけでなく、背表紙3にも亘って設けられたものとなっている。第一連通孔a1の左右方向の寸法w4は、後述する第二連通孔a2の左右方向の寸法w5と比較して、長く設定されている。
【0029】
<裏表紙2>
裏表紙2は、全体として略矩形板状をなしている。裏表紙2は、ヒンジ部Nを介して背表紙3に隣設された基端裏表紙部22と、中間ヒンジ部cnを介して基端裏表紙部22に連設された裏表紙本体部21とを備えている。
【0030】
この実施形態では、裏表紙2が、裏表紙本体部21、中間ヒンジ部cn、及び、基端裏表紙部22によって構成されている。すなわち、裏表紙2に中間ヒンジ部cnが設けられている。このため、閉じ姿勢(T)の裏表紙2は、綴じ具Bによって綴じられた被綴じ物Jの量や枚数や大きさ等に対応して、裏表紙本体部21と基端裏表紙部22との相対姿勢が柔軟に変更され得るものとなっている。
【0031】
基端裏表紙部22は、背表紙3の横幅寸法w1と略同じかそれよりも短い横幅寸法に設定されている。この実施形態では、基端裏表紙部22は、背表紙3の横幅寸法w1よりも短い横幅寸法に設定されている。裏表紙本体部21は、裏表紙2の主要部を構成するものである。
【0032】
裏表紙2は、見開き姿勢(H)と閉じ姿勢(T)との間で姿勢変更し得るように綴じ具Bにおける前後の綴じリングR(f)、R(r)の通過を許容する連通孔である第二連通孔a2を備えている。第二連通孔a2は、前後の綴じリングR(f)、R(r)を構成する右部分すなわち前後の第一リング構成部d1(f)、d1(r)が通過し得るものとなっている。
【0033】
なお、第二連通孔a2は、裏表紙2を構成する裏表紙本体部21及び基端裏表紙部22に亘って設けられたものとなっている。第二連通孔a2の左右方向の寸法w5は、第一連通孔a1の左右方向の寸法w4と比較して、短く設定されている。
【0034】
<背表紙3>
背表紙3は、表表紙1と裏表紙2の間に設けられている。背表紙3の横幅寸法w1は、綴じ具Bを構成するベース部d2の横幅寸法w2よりも長く設定されたものとなっており、且つ、閉姿勢(C)をなす前後の綴じリングR(f)、R(r)の横幅寸法w3よりも短く設定されたものとなっている。
【0035】
背表紙3の前端部(手前側の端部)及び後端部(奥側の端部)には、それぞれ綴じ具Bが離間して取り付けられるようになっている。つまり、ファイルは、背表紙3に対して二つの綴じ具Bが前後方向に離間して配設されている。背表紙3には、各綴じ具Bを取り付けるための取付具Gの係合凸部g2が貫通する貫通孔31が設けられている。
【0036】
<ヒンジ部N・中間ヒンジ部cn>
ヒンジ部N、及び、中間ヒンジ部cnは、いわゆる樹脂ヒンジと称されるものである。すなわち、ヒンジ部N、及び、中間ヒンジ部cnは、表表紙本体部11、基端表表紙部12、背表紙3、裏表紙本体部21、及び、基端裏表紙部22よりも薄肉に成形されており変形し易いようになっている。
【0037】
なお、表表紙1及び裏表紙2は、中間ヒンジ部cnが設けられていない構成のものであってもよい。
【0038】
<<綴じ具B>>
綴じ具Bは、開姿勢(P)と閉姿勢(C)とを採り得るように構成された前後の綴じリングR(f)、R(r)と、前後の綴じリングR(f)、R(r)の基端側に設けられ背表紙3の内面に取り付けられる単一のベース部d2とを備えたものである。
【0039】
綴じ具Bは、前後の綴じリングR(f)、R(r)を構成する前後の第一リング構成部d1(f)、d1(r)が設けられた第一綴じ具部材Dと、前後の綴じリングR(f)、R(r)を構成する前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)が設けられた第二綴じ具部材Eとを有してなる。
【0040】
綴じ具Bは、前後の第一、第二リング構成部d1(f)、d1(r)、e1(f)、e1(r)の各先端部分同士が係合した閉姿勢(C)と、前後の第一、第二リング構成部d1(f)、d1(r)、e1(f)、e1(r)の各先端部分が離間した開姿勢(P)とを採り得るように構成されている。
【0041】
より具体的に言えば、綴じ具Bは、前後の綴じリングR(f)、R(r)が閉ループ状をなす閉姿勢(C)と前後の綴じリングR(f)、R(r)が閉ループ状をなさない開姿勢(P)とを採り得るように第二綴じ具部材Eが第一綴じ具部材Dに対して回転可能に構成されている。
【0042】
<第一綴じ具部材D>
第一綴じ具部材Dは、合成樹脂により一体に形成されたものである。第一綴じ具部材Dは、取付具Gを用いて背表紙3の内面側に取り付けられるものである。
【0043】
第一綴じ具部材Dは、第二綴じ具部材Eの軸部e2を装着し得る少なくとも下方に開放された軸部収容空間spが設けられたベース部d2と、ベース部d2から一体に延設され前後の綴じリングR(f)、R(r)を構成する前後の第一リング構成部d1(f)、d1(r)を有したものである。ベース部d2の軸部収容空間spは、当該ベース部d2の長手方向中央部(前後方向中央部)に設けられている。
【0044】
[ベース部d2]
ベース部d2は、長手方向両端部に設けられ取付具Gの係合凸部g2が係合し得る係合部たる前後の係合孔4f、4rと、第二綴じ具部材Eに設けられた軸部e2の両端部を回転可能に支持し得る前後一対の軸支持部5f、5rと、前の軸支持部5fと後の軸支持部5rとの間に設けられ上下方向に貫通する貫通孔Mと、前後の係合孔4f、4rと貫通孔Mとの間に設けられ第二綴じ具部材Eにおける前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)の基端部との干渉を避けるための前後の切欠部Yを備えている。
【0045】
前後の係合孔4f、4rは、ベース部d2において軸部収容空間spが形成される箇所よりも外側(前側及び後側)に配設されている。前後の係合孔4f、4rは、取付具Gと協働して、ベース部d2の底面側を背表紙3の内面に添接させた状態で当該ベース部d2を背表紙3に対して取り付けるものである。
【0046】
なお、前後の係合孔4f、4r近傍のベース部d2形状、すなわち、ベース部d2における前端部形状及び後端部形状は、取付作業時における姿勢誤認抑制の便宜のために互いに視認可能に異なったものとなっている。
【0047】
前後の軸支持部5f、5rは、略円柱状をなす軸部e2の両端部を回転可能に支持し得るものである。前後の軸支持部5f、5rは、軸部収容空間spを介して左右に離間して配設された左右の軸支持壁体部51、52と、下面側に軸部収容空間spを臨むように左右の軸支持壁体部51、52の上端部間を繋ぐ上の軸支持壁体部53と、右の軸支持壁体部52の内面から左の軸支持壁体部51側に突設された抜け止め突起vと備えている。
【0048】
第二綴じ具部材Eの軸部e2は、ベース部d2の下方側から軸部収容空間sp内に収容されると、前後の軸支持部5f、5rを構成する抜け止め突起vにより抜け止めされ、軸部収容空間spから離脱し難いものとなっている。
【0049】
貫通孔Mは、軸部収容空間spを介して左右に離間して配設された左右の中間壁体部6、7と、左の中間壁体部6における前端部及び後端部と右の中間壁体部7との間を繋ぐ前後の連結部8とによって形成されている。
【0050】
左右の中間壁体部6、7の前後方向中間部には、第二綴じ具部材Eが閉姿勢(C)と開姿勢(P)との間で回転する過程において、軸部e2の凸部tによって押圧される被押圧係合面61、71が設けられている。
【0051】
左の中間壁体部6は、前後の連結部7を介して右の中間壁体部71に対して片持ち的に支持されたものとなっている。
【0052】
[前後の第一リング構成部d1(f)、d1(r)]
前後の第一リング構成部d1(f)、d1(r)は、ベース部d2から延設された部分環状のものである。前後の第一リング構成部d1(f)、d1(r)の先端部には互いに相向く方向に係合爪x1が突設されている。すなわち、前の第一リング構成部d1(f)の先端部には内方(後方)を向くように係合爪x1が突設されており、後の第一リング構成部d1(r)の先端部には内方(前方)を向くように係合爪x1が突設されている。
【0053】
<第二綴じ具部材E>
第二綴じ具部材Eは、合成樹脂により一体に形成されたものである。第二綴じ具部材Eは、第一綴じ具部材Dに対して回転可能に支持されている。
【0054】
第二綴じ具部材Eは、ベース部d2に対して回転可能に支持された軸部e2と、軸部e2から一体に延設され前後の綴じリングR(f)、R(r)を構成する前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)とを備えたものである。
【0055】
[軸部e2]
軸部e2は、前後方向に延びてなる棒状のものである。軸部e2における少なくとも長手方向両端部は前後の軸支持部5f、5rに対して回転可能に係合し得るような円柱状をなしている。
【0056】
軸部e2の長手方向中間部には、軸心sに対して直交する方向に突出した凸部tが一体に設けられている。凸部tは、第二綴じ具部材Eが閉姿勢(C)から開姿勢(P)に姿勢変更する過程において、貫通孔Mを形成する対をなす壁体部すなわち左右の中間壁体部6、7の離間幅を一時的に拡張させ得るものとなっている。
【0057】
すなわち、第二綴じ具部材Eが閉姿勢(C)及び開姿勢(P)にある場合における左右の中間壁体部6、7の離間幅w7よりも、第二綴じ具部材Eが閉姿勢(C)と開姿勢(P)との間の姿勢すなわち中間姿勢(U)にある場合における左右の中間壁体部6、7の離間幅w8が長くなるように構成されている。
【0058】
凸部tは、軸部e2に対して互いに相反する異なる方向に突出するように対をなして設けられている。一対の凸部tは、軸部e2の軸心sに対して直交する仮想直線q上に突出端t1部分が略合致するように設けられている。
【0059】
一対の凸部tは、第二綴じ具部材Eが閉姿勢(C)及び開姿勢(P)にある場合において、軸部e2から斜め方向に突出するようになっている。
【0060】
一対の凸部tは、第二綴じ具部材Eが中間姿勢(U)にある場合において、軸部e2から略水平方向に突出するようになっている。
【0061】
この実施形態では、軸部e2及び凸部tが設けられている箇所は、横断面視において略レモン形状をなしている。
【0062】
[前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)]
前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)は、軸部e2から延設された部分環状のものである。前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)の先端部分には互いに相反する方向に係合爪x2が突設されている。すなわち、前の第二リング構成部e1(f)の先端部分には外方(前方)を向くように係合爪x2が突設されており、後の第二リング構成部e1(r)の先端部分には外方(後方)を向くように係合爪x2が突設されている。
【0063】
使用者は、手指を使用して、前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)を相寄る方向に一時的に弾性変形させて、当該前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)の先端部分と前後の第一リング構成部d1(f)、d1(r)の先端部分との係わり合いを解き、その後、第二綴じ具部材Eを第一綴じ具部材Dに対して回転させることにより、閉姿勢(C)をなす前後の綴じリングR(f)、R(r)を開姿勢(P)方向に姿勢変更することができるものとなっている。
【0064】
<<取付具G>>
取付具Gは、ベース部d2を背表紙3の内面に取り付けるためのものである。取付具Gは、合成樹脂により形成されている。
【0065】
取付具Gは、背表紙3の外面側に配された取付ベースg1と、取付ベースg1から突設され背表紙3に設けられた貫通孔31を貫通するとともにベース部d2に形成された係合部たる前後の係合孔4f、4rに係合する係合凸部g2とを備えたものである。
【0066】
取付ベースg1は、背表紙3の外面に添接するものである。取付ベースg1は、背表紙3の長手方向に沿うように延びた矩形板状をなしている。取付ベースg1の横幅寸法w6は、背表紙3の横幅寸法w1よりも短く設定されている。
【0067】
取付ベースg1における左右の側端部には、可動リング部である前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)との干渉を避けるための切欠部g11が設けられている。
【0068】
なお、取付具Gは、左右対称形状をなしているため、左右反転させても綴じ具Bのベース部d2に対して適切に係合し得るものとなっている。
【0069】
係合凸部g2は、取付ベースg1における長手方向両端部に突設されている。係合凸部g2は、互いに離間した二つの爪部分g21により構成されている。係合凸部g2を構成する二つの爪部分g21の先部には戻り止め突起tkが形成されている。
【0070】
取付ベースg1に設けられた二つの係合凸部g2は、綴じ具Bのベース部d2に形成された前後の係合孔4f、4rに対して嵌め殺し状態に係合するものとなっている。
【0071】
続いて、閉姿勢(C)にある前後の綴じリングR(f)、R(r)が、中間姿勢(U)経て開姿勢(P)に姿勢変更される際の綴じ具Bの作動について説明する。
【0072】
まず、前後の綴じリングR(f)、R(r)が閉姿勢(C)にあるときは、前後の第一リング構成部d1(f)、d1(r)における各先端部分である係合爪x1と前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)における各先端部分である係合爪x2とが互いに係合したものとなっている。
【0073】
その状態から、使用者は、手指を使用して、係合状態にある係合爪x1、x2の係合を解くように前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)を相寄る方向に一時的に弾性変形させつつ、各係合部x1、x2が左右方向に互いに離れる方向に、当該前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)を有した第二綴じ具部材Eを第一綴じ具部材Dに対して回転させる操作を行う。
【0074】
このとき、軸部e2に設けられた一対の凸部tは、第二綴じ具部材Eが閉姿勢(C)から中間姿勢(U)に姿勢変更する過程において、貫通孔Mを形成する左右の中間壁体部6、7の離間幅を一時的に拡張させるものとなっている。
【0075】
すなわち、右の中間壁体部7に対して前後の連結部8を介して片持ち的に支持された左の中間壁体部6は、閉姿勢(C)から中間姿勢(U)に姿勢変更する際の凸部tに押圧されることにより、右の中間壁体部5から遠ざかる方向に一時的に弾性変位し得るものとなっている。
【0076】
つまり、一対の凸部tを有した軸部e2は、第二綴じ具部材Eが閉姿勢(C)から中間姿勢(U)に姿勢変更する過程において、左右の中間壁体部6、7をそれぞれ外方に突っ張るように押圧することになる。
【0077】
閉姿勢(C)において斜め方向に突出した一対の凸部tは、中間姿勢(U)において略水平方向に突出するものとなる。中間姿勢(U)における一対の凸部tを有した軸部e2は、閉姿勢(C)の時よりも横幅方向が長いものとなる。このため、一対の凸部tを有した軸部e2は、左の中間壁体部6が元の位置に戻ろうとする部材の弾性復帰力に抗して左の中間壁体部6を外方に押圧し、左右の中間壁体部6、7間の離間距離が一時的に拡張されることになる。
【0078】
その状態から、一対の凸部tを有した軸部e2がさらに回転すると、すなわち、中間姿勢(U)から開姿勢(P)方向に回転すると、左の中間壁体部6が元の位置に戻ろうとする弾性復帰力により一方側の凸部tにおける頂部以外の部分を押圧することになる。付勢力を受けた第二綴じ具部材Eは、開姿勢(P)方向に付勢されて最終的な開姿勢(P)に至るまで回転する。
【0079】
以上の過程を経て、第二綴じ具部材Eは、閉姿勢(C)から中間位置(U)を経て、開姿勢(P)を採り、且つ、最終的な開姿勢(P)において逆戻りし難い状態に安定し得るものなっている。
【0080】
なお、第二綴じ具部材Eは、使用者による操作力を用いて上述した順序の逆の手順を行うことにより、第二綴じ具部材Eを開姿勢(P)から中間姿勢(U)を経て、閉姿勢(C)に回転させることができるものとなっている。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係るファイルは、表紙A及び綴じ具Bを備えてなるものである。
【0082】
そして、表紙Aが、ヒンジ部Nを介して連結された表表紙1、背表紙3、及び、裏表紙2を有し、表表紙1及び裏表紙2が略面一をなすように展開し得る見開き姿勢(H)と、表表紙1及び裏表紙2の各内面同士が対面し得る閉じ姿勢(T)とを採り得るように姿勢変更可能に構成されたものである。
【0083】
綴じ具Bが、開姿勢(P)と閉姿勢(C)とを採り得るように構成された前後の綴じリングR(f)、R(r)と、背表紙3の内面に取り付けられるベース部d2を備えたものであり、表表紙1及び裏表紙2が、見開き姿勢(H)と閉じ姿勢(T)との間で姿勢変更し得るように前後の綴じリングR(f)、R(r)の通過を許容する連通孔である第一連通孔a1及び第二連通孔a2を備えている。
【0084】
このため、本実施形態に係るファイルであれば、背表紙3の内面に綴じ具Bが配設された構成のものにおいて、表紙Aの見開き姿勢(H)だけでなく閉じ姿勢(T)をも好適に採り得る構成を有したファイルを提供することができる。
【0085】
つまり、綴じ具Bのベース部d2が背表紙3の内面に取り付けられているものであるため、表紙Aの見開き姿勢(H)を天板等の載置面上において好適に採り得るものとなっている。
【0086】
また、表紙Aの閉じ姿勢(T)も好適に採り得るものとなっている。すなわち、表表紙1及び裏表紙2に第一連通孔a1及び第二連通孔a2が設けられている。第一連通孔a1及び第二連通孔a2の存在により、表表紙1及び裏表紙2は、綴じ具Bにおける前後の綴じリングR(f)、R(r)に干渉し難いものとなる。
【0087】
換言すれば、第一連通孔a1及び第二連通孔a2が設けられているため、表表紙1及び裏表紙2の整然とした閉じ姿勢(T)が損なわれ難いものとなっている。閉じ姿勢(T)をなす表紙Aは、表表紙1及び裏表紙2との協働によって、全体的に薄い形態をなすような外観を好適に採り得るものとなっている。
【0088】
ベース部d2を背表紙3の内面に取り付ける取付具Gを備えたものである。そして、取付具Gが、背表紙3の外面側に配された取付ベースg1と、取付ベースg1から突設され背表紙3を貫通するとともにベース部d2に形成された係合部たる前後の係合孔4f、4rに係合する係合凸部g2とを備えたものである。
【0089】
このため、取付具Gを用いて、綴じ具Bを背表紙3の内面側に好適に取り付けることができるものとなっている。
【0090】
係合凸部g2が、取付ベースg1における長手方向両端部に突設されたものである。そして、これら係合凸部g2が前後の係合孔4f、4rに対して嵌め殺し状態に係合するようになっている。
【0091】
このため、取付具Gにより背表紙3に対して取り付けられた綴じ具Bは、容易に離脱しないものとなっている。
【0092】
背表紙3の横幅寸法w1が、ベース部d2の横幅寸法w2と略同じかそれよりも長く設定されたものであり、且つ、前後の綴じリングR(f)、R(r)の横幅寸法w3よりも短く設定されたものである。
【0093】
このため、綴じ具Bにおけるベース部d2の横幅寸法w2は、背表紙3に対して好適に取り付けられる値に設定されているものであり、且つ、綴じ具Bにおける前後の綴じリングR(f)、R(r)は、被綴じ物Jを好適に綴じることができるものとなっている。
【0094】
表紙Aが、表表紙1及び裏表紙2の各外面同士が対面し得る折り返し姿勢(K)を採り得るように姿勢変更可能に構成されたものである。
【0095】
このため、ファイルは、表紙Aを折り返し姿勢(K)にさせることにより、使用者の利便性に優れた形態を採り得るものとなっている。
【0096】
綴じ具Bが、ベース部d2及び当該ベース部d2から延設され綴じリングたる前後の綴じリングR(f)、R(r)を構成する前後の第一リング構成部d1(f)、d1(r)を有した前後の第一綴じ具部材Dと、前後の綴じリングR(f)、R(r)を構成する前後の第二リング構成部e1(f)、e1(r)が設けられた第二綴じ具部材Eとを有してなるものである。
【0097】
そして、前後の第一、第二リング構成部d1(f)、d1(r)、e1(f)、e1(r)の各先端部分同士が係合した閉姿勢(C)と前後の第一、第二リング構成部d1(f)、d1(r)、e1(f)、e1(r)の各先端部分が離間した開姿勢(P)とを採り得るように第二綴じ具部材Eが第一綴じ具部材Dに対して回転可能に構成されたものである。
【0098】
このため、綴じ具Bは、第一、第二綴じ具部材D、Eにより、被綴じ物Jを綴じることができる好適な構成を備えたものとなっている。
【0099】
第一綴じ具部材D及び前記第二綴じ具部材Eのそれぞれが、合成樹脂により形成されたものである。
【0100】
このため、綴じ具Bは、弾性変形の柔軟性、及び、軽量化及び複雑な形状を形成し得る設計の自由度に優れたものとなっている。
【0101】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0102】
第一綴じ具部材のベース部には、上下方向に貫通する貫通孔ではなく、上方向に開放された凹部が設けられたものであってもよい。かかる構成のものであっても、第二綴じ具部材の凸部が、凹部を形成する対をなす壁体部の離間幅を一時的に拡張させ得るものとなり、所期の目的を達成し得るものとなる。
【0103】
第一綴じ具部材と第二綴じ具部材は、相対回転可能に構成されたものに限られない。例えば、第一綴じ具部材と第二綴じ具部材とがスライド移動等により相対変位し、第一、第二リング構成部の各先端部分同士が係合した閉姿勢と第一、第二リング構成部の各先端部分が離間した開姿勢とを採るものであってもよい。
【0104】
凸部は、軸部に設けられたものに限られるものではない。凸部は、第二綴じ具部材に設けられたものであればよい。
【0105】
表表紙及び裏表紙に備えた連通孔の形状は種々の形状を採り得るものであり、上述した実施形態に示されたものに限られるものではない。
【0106】
綴じ具のベース部が背表紙の内面に取り付けられる態様は、適宜の態様を採り得るものである。例えば、ベース部が、取付具ではなく接着剤を用いて背表紙の内面に取り付けられたものであってもよい。
【0107】
取付具は、単一のものであってもよいし、二以上の複数のものであってもよい。換言すれば、二つの綴じ具を一つの取付具を用いて表紙の背表紙に対して取り付けるようにしてもよいし、一つの綴じ具を二以上の取付具を用いて表紙の背表紙に対して取り付けるようにしてもよい。
【0108】
係合凸部は、係合部に対して嵌め殺し状態に係合しないものであってもよい。
【0109】
係合部は、係合孔に限られるものではなく、係合凸部に係合し得る構造のものであればどのような形状のものであってもよい。
【0110】
背表紙の横幅寸法が、ベース部の横幅寸法と略同じに設定されたものであってもよい。
【0111】
表紙が、表表紙及び裏表紙の各外面同士が対面し得る折り返し姿勢が採れない構成のものであってもよい。
【0112】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0113】
A…表紙
1…表表紙
2…裏表紙
3…背表紙
B…綴じ具
D…第一綴じ具部材
E…第二綴じ具部材
G…取付具