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  • 特開-複層式地下シェルター 図1
  • 特開-複層式地下シェルター 図2
  • 特開-複層式地下シェルター 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173389
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】複層式地下シェルター
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
E04H9/02 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085616
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】522207833
【氏名又は名称】有限会社工協社
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊則
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB22
(57)【要約】
【課題】 地下のスペースを有効活用でき、かつ、短い工期で構築することができる複層式地下シェルターを提供すること。
【解決手段】 地中に鉛直方向に形成された略円形断面の掘削孔の内部スペースにおいて形成される緊急避難用の地下シェルターであって、
前記掘削孔の内周面には、略円形断面のケーシング1を覆設する一方、このケーシング1の内側に床受け部材2を固定し、
この床受け部材2に略円盤状の仕切材3を水平方向に取り付けて、この仕切材3を境界として、避難スペース4と貯蔵スペース5とを複層式に形成するという技術的手段を採用した。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に鉛直方向に形成された略円形断面の掘削孔の内部スペースにおいて形成される緊急避難用の地下シェルターであって、
前記掘削孔の内周面には、略円形断面のケーシング1が覆設されている一方、
このケーシング1の内側に床受け部材2が固定されており、
この床受け部材2に略円盤状の仕切材3が水平方向に取り付けられ、この仕切材3を境界として、避難スペース4と貯蔵スペース5とが複層式に形成されていることを特徴とする複層式地下シェルター。
【請求項2】
前記床受け部材2がリング形状であって、前記ケーシング1の内面側に沿って固定されており、当該床受け部材2の上面に前記仕切材3が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の複層式地下シェルター。
【請求項3】
前記ケーシング1の内面側に昇降用突起6が固定されていることを特徴とする請求項1記載の複層式地下シェルター。
【請求項4】
前記ケーシング1の内面側に断熱材7が覆設され、かつ、この断熱材7の表面に壁面材8が内装されていることを特徴とする請求項1記載の複層式地下シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下シェルターの改良、更に詳しくは、地下のスペースを有効活用でき、かつ、短い工期で構築することができる複層式地下シェルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の我が国の地震や自然災害、および海外での緊迫する社会情勢により、緊急避難所(シェルター)の必要性が高まってきており、それに伴い、国民の意識も高まり、強い関心を見せている。
【0003】
従来、緊急避難用のシェルターとして、地下に設置する構造のものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる構造では、掘削容積が大きいために設置工事が大掛かりになってしまい、工期が長くコストもかかってしまうという問題がある。また、住宅街などの狭小な土地では設置スペースおよび施工スペースが十分に確保できないという問題もある。
【0005】
また、地下に構築するシェルターの場合、内部のデッドスペースが無駄な掘削容積に相当するため、できるだけ少なくすることが好ましい一方で、避難スペース以外にも食料や電源設備などを収容するための貯蔵スペースも確保する必要がある。
【0006】
更にまた、居住空間をできるだけ快適にするためには、床面が水平である必要があるが、レベル出しを行うためには施工精度が要求されて、職人にも技巧と熟練が必要であり、工期が長引くおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-90876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、避難用のシェルターについて研究をしていたところ、掘削工事の作業負担が少なく、かつ、スペースを有効利用できれば、狭小な土地であっても、低コストで収容機能の高いシェルターを構築することができるであろうとの着想を得た。
【0009】
そして、全く新しい構造によって同作用を得られないかと思案した結果、仮設工事に使用されているケーシング立坑の築造技術を有効活用して、その立坑の内部スペースに緊急避難所を構築するという解決策を思い付いた。
【0010】
そこで、本発明者は、避難時に不可欠な収容機能を具備できるように、避難スペースと貯蔵スペースとの両方を提供するとともに、立坑が鉛直方向に形成されているという形状的特徴にも着目し、複層式に構成した内部構造を採用してみたところ、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0012】
即ち、本発明は、地中に鉛直方向に形成された略円形断面の掘削孔の内部スペースにおいて形成される緊急避難用の地下シェルターであって、
前記掘削孔の内周面には、略円形断面のケーシング1を覆設する一方、このケーシング1の内側に床受け部材2を固定し、
この床受け部材2に略円盤状の仕切材3を水平方向に取り付けて、この仕切材3を境界として、避難スペース4と貯蔵スペース5とを複層式に形成するという技術的手段を採用したことによって、複層式地下シェルターを完成させた。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記床受け部材2をリング形状にして、前記ケーシング1の内面側に沿って固定し、当該床受け部材2の上面に前記仕切材3を取り付けるという技術的手段を採用することもできる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記ケーシング1の内面側に昇降用突起6を固定するという技術的手段を採用することもできる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記ケーシング1の内面側に断熱材7を覆設して、かつ、この断熱材の表面に壁面材8を内装するという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、地中に鉛直方向に形成された略円形断面の掘削孔の内部スペースにおいて形成される緊急避難用の地下シェルターであって、
前記掘削孔の内周面には、略円形断面のケーシングを覆設する一方、このケーシングの内側に床受け部材を固定し、この床受け部材に略円盤状の仕切材を水平方向に取り付けて、この仕切材を境界として、避難スペースと貯蔵スペースとを複層式に形成することによって、短い工期(約2週間)で構築することができ、かつ、スペースを有効活用できる。
【0017】
また、掘削孔およびケーシングが、略円形断面で鉛直方向に形成されているため、前記仕切材を同型の略円盤状に形成して、ケーシングの断面形状に合致させるように取り付けることによって、仕切材が自然に水平方向に固定されることから、床面の水平レベル出しが容易となり、施工負担を軽減することができることから、産業上の利用価値は頗る大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の複層式地下シェルターを表わす概略平面断面図である。
図2】本発明の実施形態の複層式地下シェルターを表わす概略上面断面図である。
図3】本発明の実施形態の複層式地下シェルターを表わす概略平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。本発明の複層式地下シェルターは、地中に鉛直方向に形成された略円形断面の掘削孔の内部スペースにおいて形成される緊急避難用の地下シェルターである。
【0020】
本発明の複層式地下シェルターを構成するにあっては、まず、前記掘削孔の内周面に、略円形断面のケーシング1を覆設する。本実施形態では、公知のケーシング立坑の構築技術を採用して、掘削孔の形成とケーシング1の設置とを同時に行うことによって施工の効率化が図られている。
【0021】
具体的には、まず、円管状のケーシング1(内径約2.5mの鋼製管)の下端部にジグザグ状の刃先を形成して、この刃先を先行させつつ、重機を用いてケーシング1を揺動または旋回させながら地中に圧入させていき、ケーシング1の内側の土砂を油圧グラブで掘削する。ケーシング1が略円形断面であるため、対称性によって土圧の影響を最小限にできるとともに、この圧入作業が容易になる。
【0022】
そして、土圧とのバランスを取るためにケーシング1の内側に注水を行い、水中掘削により所定の深さまで掘削する。ケーシング1は一本物では運搬や重量に問題があるため、所定の長さ(例えば約2m)に分割されたものを溶接によって結合していき全長を補う。
【0023】
圧入掘削が完了した後、トレミー管を使用して水中コンクリートを打設して底盤コンクリートCを形成する。底盤コンクリートCの上には薄鉄板および防水シートを敷設する。このようにして、掘削孔の内周面へのケーシング1の設置が完了する。
【0024】
そして、このケーシング1の内側に床受け部材2を固定する。この床受け部材2は、複数の部品で仕切材3を支持できるものであっても良いし、リング形状に一体に構成しても良い。また、床受け部材2を鋼鉄製にすることによって、ケーシング1の内周面に溶接等によって直接固定することができる。
【0025】
次に、この床受け部材2に略円盤状の仕切材3を水平方向に取り付ける。取り付け方法としては、溶接や載置、金具による止着などを採用することができる。なお、本実施形態では、掘削孔およびケーシング1が、略円形断面で鉛直方向に形成されているため、前記仕切材3を同形状の略円盤状に形成して、ケーシング1の断面形状に合致させるように取り付けることによって、仕切材3が自然に水平方向に固定されることから、床面の水平レベル出しが容易となり、施工負担を軽減することができる。
【0026】
そして、この仕切材3を境界として、避難スペース4と貯蔵スペース5とを複層式に形成する。避難スペース4には、適宜、照明設備(LED)や電源コンセント、二段ベッド、換気設備Aなどを設置することができる。また、貯蔵スペース5には、食料品や簡易トイレ、電源設備B、換気設備、排水設備などを収容することができる。本実施形態では、前記貯蔵スペース5を最地下階に設けることができ、最地下階にすることによって、室内の温度変化をできるだけ小さくすることもできる。なお、床受け部材2の設置レベルを複数設け、それぞれ仕切材3を設けることによって、複数層の避難スペース4を有する構造にすることも可能である(図3参照)。
【0027】
なお、本実施形態では、前記床受け部材2をリング形状にして、前記ケーシング1の内面側に沿って固定することができる。こうすることによって、ケーシング1の土圧等による変形を防止して、形態が安定するよう補強することができる。また、床受け部材2の部品点数を減らして固定作業の負担を軽減して施工性を向上できるとともに、仕切材3の外周縁部に沿うことにより安定的に支持することができる。更に、床受け部材2の断面をL字型にすることによって、当該床受け部材2の上面に前記仕切材3を載置することもできる。
【0028】
また、本実施形態では、前記ケーシング1の内面側に昇降用突起6を固定することができる。昇降用突起6は、例えば、屈曲棒材を複数設けることによって、ハシゴ状の足場として構成することができる。昇降用突起6を鋼鉄材料で成形することにより、ケーシング1の内周面に溶接等によって直接固定することができ、より強固に一体化して脱落を防止することができる。
【0029】
更にまた、本実施形態では、前記ケーシング1の内周面に断熱材7を覆設して、かつ、この断熱材7の表面に壁面材8を内装することもできる。断熱材7としては、例えば、発泡ウレタン(厚さ約100mm)を採用することができ、注入して硬化させることによって簡単に施工することができる。また、壁面材8としては、曲面状に形成された木製合板(厚さ約25mm)を採用することができ、調湿作用を付与することができるとともに、外観的にも木のぬくもりが感じられて、避難時の精神的不安を軽減することができる。
【0030】
更にまた、掘削孔の天井部位には、埋戻しコンクリート打設によるコンクリート天井部9を形成して、適宜、このコンクリート天井部9の上面に覆工板を載置することができる。このコンクリート天井部9には必要最小限の大きさ(内径約600mm)の出入口91を設けることができ、内部空間側には軽量素材の水密性の蓋を設置し、地表側には鉄製の密閉型の蓋を設置することができる。
【0031】
また、必要に応じて、酸素濃度計センサーSや湿度管理センサーMなどを置き、換気ブロワーと排気ファン、パイプ(塩ビ管)を設置し、換気設備Aおよび換気口を設けることができ、自動探知により換気、排気を行い、居住空間内の環境を整えることができる。
【0032】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、床受け部材2の形状および数量は、仕切材3を安定的に支持できるものを適宜採用することができる。
【0033】
また、仕切材3は、十分な強度を有していれば、一体であっても分割式であっても良く、施工性を向上させることもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0034】
1 ケーシング
2 床受け部材
3 仕切材
4 避難スペース
5 貯蔵スペース
6 昇降用突起
7 断熱材
8 壁面材
9 コンクリート天井部
91 出入口
A 換気設備
B 電源装置
C 底盤コンクリート
L 照明設備
M 湿度管理センサー
S 酸素濃度計センサー
図1
図2
図3