IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三生医薬株式会社の特許一覧

特開2023-173395プラズマローゲンを含有する剤及び組成物
<>
  • 特開-プラズマローゲンを含有する剤及び組成物 図1
  • 特開-プラズマローゲンを含有する剤及び組成物 図2
  • 特開-プラズマローゲンを含有する剤及び組成物 図3
  • 特開-プラズマローゲンを含有する剤及び組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173395
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】プラズマローゲンを含有する剤及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/115 20160101AFI20231130BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 35/618 20150101ALI20231130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 36/16 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 31/685 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A23L33/115
A61P25/00
A61K35/618
A61P43/00 121
A61K31/353
A61P43/00 107
A61K31/202
A61K36/16
A61K31/045
A61K31/685
A61K48/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085624
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】315001213
【氏名又は名称】三生医薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】大川原 正喜
(72)【発明者】
【氏名】黒野 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】又平 芳春
(72)【発明者】
【氏名】大泉 康
(72)【発明者】
【氏名】中島 晶
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C086
4C087
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD07
4B018MD11
4B018MD24
4B018MD45
4B018MD48
4B018MD69
4B018ME14
4B018MF01
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZB221
4C084ZB222
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086DA41
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA01
4C086ZB22
4C087BB27
4C087CA03
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZB22
4C087ZC75
4C088AB02
4C088AC05
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA52
4C088NA05
4C088ZA01
4C088ZB22
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA13
4C206DB09
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZA01
4C206ZB22
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】新規な剤又は組成物を提供する。
【解決手段】プラズマローゲンを含有する剤又は組成物を、下記(1)及び(2)から選択された少なくとも1つの用途等に使用する。
(1)神経突起伸展
(2)神経細胞の転写因子の活性促進
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマローゲンを含有する、神経突起伸展のための剤又は組成物。
【請求項2】
プラズマローゲンを含有する、神経細胞の転写因子を活性化するための剤又は組成物。
【請求項3】
プラズマローゲンを含有する、神経疾患の予防及び/又は治療のための剤又は組成物。
【請求項4】
転写因子が、CRE、SRE、及びAP1 REから選択された少なくとも1種の応答配列である、請求項2記載の剤又は組成物。
【請求項5】
プラズマローゲンが、プラズマローゲン含有動物組織由来である、請求項1~3のいずれかに記載の剤又は組成物。
【請求項6】
プラズマローゲンが、ホヤ由来である、請求項1~3のいずれかに記載の剤又は組成物。
【請求項7】
ホヤ組織を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の剤又は組成物。
【請求項8】
さらに、ノビレチン、ドコサヘキサエン酸、イチョウ葉抽出物、及びβ-クリプトキサンチンから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
食品である、請求項1~3のいずれかに記載の剤又は組成物。
【請求項10】
健康食品である、請求項1~3のいずれかに記載の剤又は組成物。
【請求項11】
保健機能食品である、請求項1~3のいずれかに記載の剤又は組成物。
【請求項12】
プラズマローゲンを含有する、剤又は組成物を、摂取対象に摂取し、神経突起を伸展させる方法。
【請求項13】
プラズマローゲンを含有する、剤又は組成物を、摂取対象に摂取し、神経細胞の転写因子を活性化させる方法。
【請求項14】
プラズマローゲンを含有する、剤又は組成物を、摂取対象に摂取し、神経疾患を予防又は治療する方法。
【請求項15】
摂取量が、プラズマローゲンとして1日当たり1~1000μg/kg体重である、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
さらに、ノビレチン、ドコサヘキサエン酸、イチョウ葉抽出物、及びβ-クリプトキサンチンから選ばれる少なくとも1種を、プラズマローゲン1質量部に対して、0.001質量部以上の割合で摂取する、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
Gap43、SNAP25、ARCから選択された少なくとも1種の産生の増加を伴わない、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマローゲンを含有する剤又は組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマローゲンは、脳のシグナル伝達への関与や、脳内における抗酸化物質としての機能について、数多く報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、プラズマローゲンが脳神経細胞新生効果を有することが報告されており、特許文献2では、プラズマローゲンが中枢神経系炎症を改善する効果を有することが報告されている。
【0004】
また最近では、プラズマローゲンを投与したマウスにおいて、学習記憶能力が増強されたことが報告されている(特許文献3)。
さらに、特許文献4には、言語記憶能力及び/又は視覚記憶能力を増強するための、プラズマローゲンを含有する組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/083827号
【特許文献2】国際公開第2012/039472号
【特許文献3】特開2016-210696号公報
【特許文献4】国際公開第2020/040291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、プラズマローゲンは、中枢神経系炎症を改善する効果や学習記憶能力増強作用など、生体内で多岐にわたる機能を有することが報告されている。しかしながら、プラズマローゲンの機能は、その全容が未だ解明されていない。そのため、プラズマローゲンは、未だ公知となっていないその他の有益な機能を有する。
【0007】
本発明の目的は、プラズマローゲンを含有する新規な剤又は組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、プラズマローゲン(特に、ホヤ等に由来するプラズマローゲン)やプラズマローゲンを含有する成分(例えば、ホヤ組織)が、神経突起伸展(神経細胞の神経突起伸展)や神経細胞の転写因子(例えば、神経突起伸展に係る転写因子)の活性促進に有効であること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記発明等に関する。
[1]
プラズマローゲンを含有する、神経突起伸展のための剤(伸展促進剤、伸展増強剤)又は組成物。
[2]
プラズマローゲンを含有する、神経細胞の転写因子を活性化するための剤(活性化剤、活性促進剤)又は組成物。
[3]
プラズマローゲンを含有する、神経疾患の予防及び/又は治療(改善)のための剤又は組成物。
[4]
転写因子が、CRE(cAMP応答配列)、SRE(血清応答配列)、及びAP1 RE(アクチベータータンパク質1応答配列)から選択された少なくとも1種の応答配列である、[2]記載の剤又は組成物。
[5]
プラズマローゲンが、プラズマローゲン含有動物組織由来である、[1]~[4]のいずれかに記載の剤又は組成物。
[6]
プラズマローゲンが、ホヤ由来である、[1]~[5]のいずれかに記載の剤又は組成物。
[7]
(プラズマローゲンを含む)ホヤ組織(ホヤ抽出物、ホヤ成分)を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の剤又は組成物。
[8]
さらに、ノビレチン、ドコサヘキサエン酸、イチョウ葉抽出物、及びβ-クリプトキサンチンから選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]
食品(組成物)である、[1]~[8]のいずれかに記載の剤又は組成物。
[10]
健康食品である、[1]~[9]のいずれかに記載の剤又は組成物。
[11]
保健機能食品である、[1]~[10]のいずれかに記載の剤又は組成物。
[12]
[1]~[11]のいずれかに記載の剤又は組成物(例えば、プラズマローゲンを含有する、剤又は組成物)を、摂取対象に摂取(投与)し、神経突起を伸展させる(神経突起の伸展を促進する)方法。
[13]
[1]~[11]のいずれかに記載の剤又は組成物(例えば、プラズマローゲンを含有する、剤又は組成物)を、摂取対象に摂取(投与)し、神経細胞の転写因子を活性化させる(神経細胞の転写因子の活性化を促進する)方法。
[14]
[1]~[11]のいずれかに記載の剤又は組成物(例えば、プラズマローゲンを含有する、剤又は組成物)を、摂取対象に摂取(投与)し、神経疾患を予防又は治療(改善)する方法。
[15]
摂取量が、プラズマローゲンとして1日当たり1~1000μg/kg体重である、[12]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
さらに、ノビレチン、ドコサヘキサエン酸、イチョウ葉抽出物、及びβ-クリプトキサンチンから選ばれる少なくとも1種を、プラズマローゲン1質量部に対して、0.001質量部以上の割合で摂取(投与)する、[12]~[15]のいずれかに記載の方法。
[17]
Gap43、SNAP25、ARCから選択された少なくとも1種の産生の増加を伴わない、[12]~[16]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、プラズマローゲンを含有する新規な剤又は組成物等を提供できる。
【0011】
このような剤又は組成物は、神経突起伸展(神経細胞の神経突起伸展)や神経細胞の転写因子(例えば、神経突起伸展に係る転写因子)の活性促進といった用途に適用しうる。
【0012】
このように、神経突起の伸展や神経細胞の転写因子活性の促進により、神経細胞の成長、突起形成や活動賦活を促進できる。
【0013】
ところで、神経疾患によって神経損傷が起こると、神経細胞は細胞死に至り、それに代わる新たな細胞が出現しないために、高次神経機能は重篤な障害を被る。損傷した神経回路網の再生のためには、神経細胞の神経突起を標的細胞へ向かって十分に伸展させることが必要とされる。神経突起の再生を行うことにより神経回路網を再構築することは、近年、増えつつある神経疾患における種々の神経細胞の萎縮、脱落に対して有効であり、このことは、神経細胞の神経突起伸展や神経細胞の転写因子(特に、神経突起伸展に係る転写因子)活性の促進作用を有する有効成分が、アルツハイマー病などの神経性疾患の予防及び治療に貢献できること示唆するものである。
【0014】
従って、本発明の剤又は組成物は、神経疾患(例えば、アルツハイマー病等)の予防や治療(改善)のために使用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は実施例1で得られた位相差顕微鏡写真[細胞の形態(サンプル濃度10μg/mL、24時間後)の写真]である。
図2図2は実施例2で得られた位相差顕微鏡写真[細胞の形態(24時間後)の写真]である。
図3図3は比較例1で得られた位相差顕微鏡写真[細胞の形態(24時間後、サンプル濃度10μg/mL)の写真]である。
図4図4は比較例2で得られた位相差顕微鏡写真[細胞の形態(24時間後)の写真]である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[用途・機能]
本発明の剤又は組成物は、種々の機能(作用)を付与する目的で(用途において)使用しうる。特に、本発明の剤又は組成物は、下記(1)及び(2)から選択された少なくとも1つの目的(機能、用途)に使用してもよい。
【0017】
(1)神経突起伸展(神経細胞の神経突起伸展)
(2)神経細胞の転写因子(例えば、神経突起伸展に係る転写因子)の活性促進
【0018】
(2)において、転写因子としては、例えば、CRE(cAMP応答配列)、SRE(血清応答配列)、AP1 RE(アクチベータータンパク質1応答配列)から選択された少なくとも1種の応答配列などが挙げられる。
【0019】
CRE及びSREは神経突起伸展の促進を担う転写因子に結合し、遺伝子発現を制御し、AP1 REは神経成長因子(NGF)に応答する転写因子である。
神経栄養因子には、神経突起を伸展する作用や神経伝達物質の産生を調節する作用があり、神経細胞に対して再生作用を示すことが知られている。
CREとSREは同様の作用を持ち、いずれもAP1の上流に存在するようである。また、AP1発現が増加すると、アポトーシスが抑制され、分化(突起伸展)が促進される。
【0020】
前記のように、上記(1)や(2)の機能(用途)は、神経細胞の成長(増殖及び/又は分化)、突起形成や活動賦活を促進でき、そうすると、神経疾患(神経性疾患)の改善効果も期待できる。
【0021】
そのため、本発明の剤又は組成物は、(3)神経疾患の予防及び/治療(改善)を目的として使用することもできる。
【0022】
神経疾患としては、例えば、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症)、免疫性神経疾患(例えば、多発性硬化症、視神経脊髄炎、重症筋無力症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群、フィッシャー症候群、ビッカースタッフ(Bickerstaff)脳幹脳炎、トロサ・ハント(Tolosa-Hunt)症候群、サルコイドーシス、ベーチェット病、中枢神経ループス(Lupus))等が挙げられる。
【0023】
[プラズマローゲン及びその組成物]
本発明の剤又は組成物は、プラズマローゲンを含む。
【0024】
プラズマローゲンは、通常、グリセロール骨格の1位(sn-1位)にビニルエーテル結合を介した長鎖アルケニル基をもつグリセロリン脂質であってもよく、例えば、下記式で示すものであってもよい。
【0025】
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ、同一の又は異なる脂肪族炭化水素基、Xは極性基を示す。)
【0026】
は、脂肪族炭化水素基であり、通常、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であってもよい。
としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ドデシル基(C12)、テトラデシル基(C14)、ヘキサデシル基(C16)、オクタデシル基(C18)、オクタデセル基(C18:1)、イコサニル基(C20)(好ましくは、ヘキサデシル基(C16)、オクタデシル基(C18)、イコサニル基(C20)、より好ましくは、オクタデシル基(C18))などが挙げられる。
【0027】
は、脂肪族炭化水素基であり、通常、脂肪酸の脂肪族炭化水素部分に相当する基であってもよい。
としては、これらに限定されるものではないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、エイコセン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの脂肪酸の脂肪族炭化水素部分に相当する基が挙げられる。
【0028】
より詳細には、R-CO-は、例えば、パルミチン酸由来の基(CH(CH14-CO-)、ステアリン酸由来の基(CH(CH16-CO-)、オレイン酸由来の基(CH(CHCH=CH(CH-CO-)、オクタデカジエン酸由来の基(例えば、CH(CH(CH=CHCH(CH-CO-)、オクタデカトリエン酸由来の基(例えば、CHCH(CH=CHCH(CH-CO-)、エイコセン酸由来の基(CH(CHCH=CHCH(CH-CO-)、エイコサテトラエン酸由来の基(例えば、CH(CH(CH=CHCH(CH-CO-)、エイコサペンタエン酸由来の基(例えば、CHCH(CH=CHCH(CH-CO-)、ドコサテトラエン酸由来の基(例えば、CH(CH(CH=CHCH(CH-CO-)、ドコサペンタエン酸由来の基(例えば、CHCH(CH=CHCH(CH-CO-、CH(CH(例えば、CH=CHCHCH-CO-)、ドコサヘキサエン酸由来の基(例えば、CHCH(CH=CHCHCH-CO-)などが挙げられる。
【0029】
Xは、極性基を示し、これらに限定されるものではないが、例えば、-CHCH、-CHCH(CH、-CHCH(NH)COOH(好ましくは、-CHCH、-CHCH(CH)などが挙げられる。
【0030】
上記一般式において、Xが、-CHCHの場合、エタノールアミンプラズマローゲンを示し、Xが、-CHCH(CHの場合、コリンプラズマローゲンを示す。
【0031】
本発明の剤又は組成物は、プラズマローゲンとしてエタノールアミンプラズマローゲン及び/又はコリンプラズマローゲン(例えば、少なくともエタノールアミンプラズマローゲン、特にエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲン)を含んでいてもよい。
【0032】
プラズマローゲンが、少なくともエタノールアミンプラズマローゲン(特にエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲン)を含む場合、エタノールアミンプラズマローゲンとコリンプラズマローゲンとの質量比は、特に限定されるものではないが、例えば、5:5~10:0、好ましくは6:4~9.5:0.5、より好ましくは7:3~9:1、さらに好ましくは8:2~8.8:1.2(例えば、7:3~9:1)程度であってもよい。
【0033】
本発明の一実施態様では、プラズマローゲンに含まれるエタノールアミンプラズマローゲンが、sn-1位にオクタデシル基を有する(即ち、上記一般式中のRが、オクタデシル基である)ものを含む。
【0034】
本発明の一実施態様では、プラズマローゲンに含まれるコリンプラズマローゲンが、sn-1位にオクタデシル基を有する(即ち、上記一般式中のRが、オクタデシル基である)ものを含む。
【0035】
本発明の好ましい一実施態様では、プラズマローゲンに含まれるエタノールアミンプラズマローゲンが、sn-1位にオクタデシル基を有する(即ち、上記一般式中のRが、オクタデシル基である)ものを含み、かつ、該プラズマローゲンに含まれるコリンプラズマローゲンが、sn-1位にオクタデシル基を有する(即ち、上記一般式中のRが、オクタデシル基である)ものを含む。
【0036】
本発明の一実施態様では、プラズマローゲンに含まれるエタノールアミンプラズマローゲンが、sn-2位に(即ち、上記一般式中のR-CO-として)オレイン酸由来の基、オクタデカジエン酸由来の基、エイコセン酸由来の基、エイコサテトラエン酸由来の基、エイコサペンタエン酸由来の基又はドコサヘキサエン酸由来の基(好ましくは、オレイン酸由来の基、エイコサテトラエン酸由来の基、エイコサペンタエン酸由来の基又はドコサヘキサエン酸由来の基)を有するものを少なくとも1以上含む。
【0037】
本発明の一実施態様では、プラズマローゲンに含まれるコリンプラズマローゲンが、sn-2位にパルミチン酸由来の基、オクタデカトリエン酸由来の基、エイコサペンタエン酸由来の基又はドコサペンタエン酸由来の基を有するものを少なくとも1以上含む。
【0038】
特に、前記の目的・機能等の観点で、プラズマローゲン(例えば、プラズマローゲンに含まれるコリンプラズマローゲン及び/又はエタノールアミンプラズマローゲン)として、sn-2位に[R(R-CO-)として]ドコサヘキサエン酸由来の基を含むものを好適に使用してもよい。なお、このようなプラズマローゲンは、例えば、ホヤ由来のプラズマローゲンが有していてもよい。
【0039】
本発明の好ましい一実施態様では、プラズマローゲンに含まれるエタノールアミンプラズマローゲンが、sn-2位にオレイン酸由来の基、オクタデカジエン酸由来の基、エイコセン酸由来の基、エイコサテトラエン酸由来の基、エイコサペンタエン酸由来の基又はドコサヘキサエン酸由来の基(好ましくは、オレイン酸由来の基、エイコサテトラエン酸由来の基、エイコサペンタエン酸由来の基又はドコサヘキサエン酸由来の基、例えば、少なくともドコサヘキサエン酸由来の基)を有するものを少なくとも1以上含み、かつ、該プラズマローゲンに含まれるコリンプラズマローゲンが、sn-2位にパルミチン酸由来の基、オクタデカトリエン酸由来の基、エイコサペンタエン酸由来の基又はドコサペンタエン酸由来の基(例えば、少なくともドコサヘキサエン酸由来の基)を有するものを少なくとも1以上含む。
【0040】
プラズマローゲン(又はプラズマローゲンを含有する組成物)は、これらに限定されるものではないが、例えば、公知又は周知の方法により合成したプラズマローゲン(又はプラズマローゲンを含有する組成物)であってもよいし、公知若しくは周知の方法により又は後述する方法などにより生体組織から得たプラズマローゲン(又はプラズマローゲンを含有する組成物)であってもよい。
【0041】
生体組織(プラズマローゲン含有組織)としては、これらに限定されるものではないが、例えば、プラズマローゲン含有動物組織、プラズマローゲン含有微生物組織{例えば、微生物[例えば、Acidaminococcaceae科の細菌;ルーメン細菌;プロピオニバクテリウム・アシディプロピオニシ(P.acidipropionici)、プロピオニバクテリウム・アクネス(P.acnes)などのPropionibacterium属に属する微生物等]そのもの、微生物から分離(単離)したもの(例えば、細胞膜等)}等が挙げられるが、好ましくは、プラズマローゲン含有動物組織である。
【0042】
プラズマローゲン含有動物組織は、プラズマローゲンを含有する動物組織である限り、特に限定されるものではなく、動物の個体全体であってもよいし、動物の筋肉組織、脂肪組織、神経組織、内臓組織、皮膚組織、卵、外殻、血液など動物から単離された組織であってもよいし、個体全体と単離組織との組み合わせ又は複数の単離組織の混合物であってもよい。
【0043】
プラズマローゲン含有動物組織としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、カモなどの陸産脊椎動物(但し、ヒトを除く);クロマグロ、サケ、サンマ、カツオ、イワシ、タラなどの水産脊椎動物;ホヤ(マボヤ、アカボヤ等)、キヒトデ、イトマキヒトデ、キタムラサキウニ、バフンウニ、ナマコ、ミドリイソギンチャク、ヨロイイソギンチャク、ホタテ、ヒザラガイ、レイシガイ、チヂミボラ、クボガイ、サルアワビ、ムラサキイガイ、ムラサキインコガイ、マガキ、タコ、イカ、カニ、エビなどの水産無脊椎動物などに由来するものが挙げられ、これらは、個体全体を用いてもよいし、単離組織を用いてもよいし、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
好ましいプラズマローゲンは、水産無脊椎動物由来のものであり、より好ましくは、脊索動物門尾索動物亜門の水産無脊椎動物由来のものである。
【0045】
脊索動物門尾索動物亜門の水産無脊椎動物としては、例えば、脊索動物門尾索動物亜門ホヤ綱、脊索動物門尾索動物亜門タリア綱、脊索動物門尾索動物亜門オタマボヤ綱などの水産無脊椎動物が挙げられる。
【0046】
さらに好ましい実施態様では、上記水産無脊椎動物は、脊索動物門尾索動物亜門ホヤ綱の水産無脊椎動物である。
【0047】
特に好ましい実施態様では、上記脊索動物門尾索動物亜門ホヤ綱の水産無脊椎動物は、Halocynthia属の水産無脊椎動物である。好ましいHalocynthia属の水産無脊椎動物は、ホヤ(例えば、マボヤ、アカボヤ)である。
【0048】
なお、ホヤ由来のプラズマローゲンは、通常、前記のような特徴を有するプラズマローゲン(例えば、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを特定の量的割合で含むプラズマローゲン等)である場合が多い。
このようなホヤ由来のプラズマローゲンによれば、より一層、本発明の機能を効率よく発揮しうる。
【0049】
また、本発明の剤又は組成物は、プラズマローゲンを含む組成物の形態で、プラズマローゲンを含有していてもよい。
【0050】
このような組成物としては、例えば、プラズマローゲン含有組織が挙げられる。プラズマローゲン含有組織としては、前述のもの(例えば、プラズマローゲン含有動物組織、プラズマローゲン含有微生物組織)が挙げられ、代表的にはプラズマローゲン含有動物組織であってもよい。
【0051】
プラズマローゲン含有動物組織は、前記のように、動物の個体全体であってもよいが、通常、個体の一部(個体から分離された組織)であってもよい。
【0052】
好ましい組成物(プラズマローゲン含有動物組織)には、前述の動物組織が挙げられ、特に水産無脊椎動物[例えば、ホヤ(例えば、マボヤ、アカボヤ)等のHalocynthia属の水産無脊椎動物]の組織が挙げられる。
【0053】
このような組織には、その由来する生体(さらには、その部位、分離方法等)に応じて、プラズマローゲン(例えば、特定の脂肪酸組成を有するプラズマローゲン)が含まれている。
【0054】
また、組織に由来して、プラズマローゲン以外の成分についても異なる場合がある。例えば、ホヤ由来のプラズマローゲン含有組織には、その他の動物(例えば、鶏、ホタテ、ムラサキイガイ等)に由来する組織に比べて、特定の脂肪酸(例えば、EPA、DHA、オレイン酸等)が豊富に含まれる傾向がある。
【0055】
なお、このような組織(分離された組織)は、動物の種類やプラズマローゲンの存在位置等に応じて、適当な分離方法により得ることができる。
【0056】
一例を挙げると、例えば、組織[例えば、ホヤの組織(ホヤから分離した組織)]は、動物本体又はその一部(例えば、ホヤ)の抽出物(抽出液から溶媒成分を除去したもの)であってもよい。
【0057】
抽出物において、抽出溶媒としては、例えば、アルコール含有溶媒等が挙げられる。
アルコール含有溶媒(アルコールを含有する溶媒)は、アルコールのみからなる溶媒であってもよいし、アルコールと他の溶媒との混合溶媒であってもよい。
【0058】
アルコールとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、1-ブタノールなどの第一級アルコール;イソプロパノール、2-ブタノールなどの第二級アルコール;tert-ブタノールなどの第三級アルコールなどが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
他の溶媒としては、これらに限定されるものではないが、例えば、水(例えば、常水、天然水、水道水、硬水、軟水、イオン交換水、精製水、滅菌水、注射用水などが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい);酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、オレイン酸などの脂肪酸又はそのエステル;これら以外のアセトンなどの親水性有機溶媒;クロロホルム、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの疎水性有機溶媒などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
アルコールと他の溶媒との混合溶媒を用いる場合、アルコールと他の溶媒との混合比は、特段限定されるものではないが、例えば、アルコール:その他の溶媒の比は、容量比で、通常、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは99:1~50:50、より好ましくは99:1~60:40、更により好ましくは99:1~90:10程度であってもよい。
【0061】
なお、抽出液を得る際に使用するアルコールを含有する溶媒の量は、特段限定されるものではないが、例えば、プラズマローゲン含有動物組織(ホヤ等)1kgに対して、約1~約100Lであることが好ましく、約3~約50Lであることがより好ましく、約5~約20Lであることがより更に好ましく、約5~約10Lであることがなお更により好ましい。
【0062】
なお、抽出温度は、特に限定されず、例えば、1~50℃(例えば、20~50℃)程度であってもよい。
【0063】
抽出液は、そのまま使用してもよく、抽出液から溶媒を分離(除去)してもよい。分離方法は、特に限定されず、慣用の濃縮方法等を利用できる。
【0064】
[他の成分、形態等]
本発明の剤又は組成物は、プラズマローゲン{又はその組成物[例えば、ホヤの組織(例えば、ホヤの抽出物)]、以下同様}を含む限り、特に限定されず、プラズマローゲンをそのまま剤又は組成物としてもよく、プラズマローゲンを他の成分とともに含有する形態(組成物)であってもよい。
【0065】
まず、本発明の剤又は組成物は、神経疾患の予防及び/治療(改善)等に有用であると認識されている公知の成分を含んでいてもよい。
【0066】
このような成分の中でも、本発明の剤又は組成物は、特に、ノビレチン、ドコサヘキサエン酸、イチョウ葉抽出物、β-クリプトキサンチンから選択された少なくとも1種の成分(成分Aということがある)等を好適に含んでいてもよい。
【0067】
なお、このような成分は、プラズマローゲンを含む組成物(例えば、プラズマローゲン含有組織)に含まれていてもよい。例えば、ホヤの組織(ホヤの抽出物等)等には、通常、プラズマローゲンに加え、ドコサヘキサエン酸等が含まれている。
【0068】
このような成分をプラズマローゲンと組み合わせることで、前記機能[例えば、(1)神経突起伸展(神経細胞の神経突起伸展)、(2)神経細胞の転写因子(例えば、神経突起伸展に係る転写因子)の活性促進等]をより一層効率よく発揮しうる。
【0069】
このような成分(例えば、成分A)を使用する場合、その割合は特に限定されないが、例えば、プラズマローゲン1質量部に対して、0.001質量部以上(例えば、0.005質量部以上、0.01質量部以上、0.03質量部以上等)、好ましくは0.05質量部以上(例えば、0.1質量部以上、0.3質量部以上)等であってもよく、1質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、100質量部以上、150質量部以上、200質量部以上、5000質量部以下(例えば、3000質量部以下、2000質量部以下、1500質量部以下、1000質量部以下、800質量部以下、500質量部以下、300質量部以下、200質量部以下)、100質量部以下(例えば、80質量部以下、50質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、1質量部以下)等であってもよい。
このような割合は、他の成分の種類ごとに選択してもよい。
例えば、プラズマローゲン1質量部に対して、それぞれ、
ノビレチンは1質量部以上(例えば、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、30~3000質量部等)、
ドコサヘキサエン酸は10質量部以上(例えば、50質量部以上、100質量部以上、150質量部以上、200質量部以上、240~2550質量部等)、
イチョウ葉抽出物は5質量部以上(例えば、10質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、500質量部以下、80~180質量部等)、
β-クリプトキサンチンは0.005質量部以上(例えば、0.01質量部以上、0.03質量部以上、0.05質量部以上、10質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、1質量部以下、0.05~0.3質量部等)等であってもよい。
【0070】
本発明の剤又は組成物は、その他、これらに限定されるものではないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤、界面活性剤、可溶化剤、溶解補助剤、保存剤、pH調整剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、酸化防止剤などの添加剤を含むことができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0071】
本発明の剤又は組成物は、自体公知の方法により、例えば、錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、チュアブル剤、ソフト錠剤などに製剤化してもよい。
【0072】
本発明の剤又は組成物の一実施態様は、食品(組成物)又は医薬(組成物、医薬部外品を含む)であり、好ましい実施態様は、食品(組成物)である。
食品(組成物)は、健康食品であってもよく、特に保健機能食品(例えば、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品)であってもよい。
【0073】
本発明の剤又は組成物の摂取対象は、特に限定されず、非ヒト動物(例えば、イヌ、ネコ等のペット動物)であってもよいが、代表的にはヒトであってもよい。
【0074】
本発明の剤又は組成物の摂取量は、例えば、プラズマローゲンとして、1日当たり1~1000μg/kg体重(例えば、10~100μg/kg体重、12~25μg/kg体重、15~24μg/kg体重)等であってもよい。
【0075】
その他、本発明の剤の組成物の摂取量は、プラズマローゲンとして、摂取対象に対して、1日当たり0.01~100mg(例えば、0.1~10mg、0.5~5mg、1mg等)であってもよい。
【0076】
本発明の剤又は組成物の1日当たりの摂取回数は、例えば、1回であってもよく、複数回(例えば、2~5回、2~3回等)であってもよい。
【実施例0077】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
[ホヤ由来プラズマローゲンの製造方法]
ホヤ抽出物(10%)
殻つきのマボヤを2等分し、冷風乾燥機内で、約45℃の風を約24時間当てて乾燥させた(冷風乾燥機内の温度は、約45℃になる)。乾燥させたものにエタノールと水の混液(95容量%:5容量%)を加え、約40℃で約2時間、撹拌抽出した。固液をステンレスストレーナー(200メッシュ)により、固相1と液相1とに分離した。液相1を吸引濾過して、固形物を取り除いて、液相2を得た。固相1にはエタノールと水との混液(95容量%:5容量%)を加え、室温で約10時間、浸漬した後に、固液をステンレスストレーナー(200メッシュ)により、固相2と液相3とに分離した。液相3を吸引濾過して、固形物を取り除いて、液相4を得た。液相2と液相4を合わせ、約45℃で約24時間、減圧濃縮した。濃縮したものを、約5℃で約8日間、窒素バブリング下で、密閉状態にて保管した。その後、水を加えて希釈し、約4℃で約3日間、静置した。その後、約4℃でデカント処理をすることで上清を除去して液相5を回収し、液相5中のプラズマローゲン含量を高速液体クロマトグラフィー法にて測定した。プラズマローゲンの含有量が10質量%となるように、液相5に中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオグループ株式会社製)を加えて、ホヤ抽出物(10%)を得た。
【0079】
ホヤ由来プラズマローゲン(1%)
ホヤ由来プラズマローゲン(1%)は、ホヤ抽出物(10%)を中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、日清オイリオグループ株式会社製)で濃度調整することにより製造した。高速液体クロマトグラフィー法で分析したプラズマローゲンの含有量は1%である。
【0080】
[神経細胞突起伸展作用1]
<試験サンプル>
実施例1:ホヤ由来プラズマローゲン(1%)
比較例1:中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、日清オイリオグループ株式会社製)
比較例2:エタノール(コントロール)
なお、実施例1,2及び比較例1の試験サンプルは、エタノールに所定の濃度(エタノール以外の成分の濃度)となるように溶解したものを使用した。
【0081】
<試験方法>
PC12細胞は、24 well plate (Corning Biocoat Mouse CollagenIV, BD Biosciences)中、4×10細胞/wellで播種し、翌日、低血清培地に置換し、分化誘導した。
分化誘導の翌日、各試験サンプルを適用した。なお、適用量は培地に対して試験サンプル0.3質量%とした。24時間の培養ののち、PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。細胞の形態は、位相差顕微鏡下(×100)で評価した。
30μm以上の突起が1本以上ある細胞を有突起細胞とし、単位面積(800×600μm)当たりの細胞数に対する割合を有突起細胞率として評価した。また、単位面積当たりの最長突起長の平均(n=5)も算出した。
【0082】
<試験結果>
下記表に、各試験サンプルにおける有突起細胞率および最長突起長の平均を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
上記表に示すように、実施例1において、神経細胞の突起伸展が確認され、その傾向は概ね濃度依存的であった。
【0085】
[神経細胞突起伸展作用2]
試験サンプルとして、ホヤ抽出物(10%)(実施例2)又はエタノール(比較例2)を使用し、サンプル濃度を3μg/mL、培養を24、48及び72時間の培養としたこと以外は、[神経細胞突起伸展作用1]と同様にして、各試験サンプルにおける有突起細胞率および最長突起長の平均を測定した。
【0086】
結果を下記表に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例1及び2、比較例1及び2で得られた位相差顕微鏡写真[細胞の形態(いずれも24時間後のもの、実施例1及び比較例2のサンプル濃度はサンプル濃度10μg/mL)の写真]を、それぞれ、図1図4に示す。
【0089】
[神経細胞突起伸展作用3]
試験サンプルとして、ホヤ由来プラズマローゲン(1%)及びノビレチン(実施例3)、ノビレチン(比較例3)を使用したこと以外は、[神経細胞突起伸展作用1]と同様にして、各試験サンプルにおける有突起細胞率および最長突起長の平均を測定した。
なお、実施例3及び比較例3において、エタノールに溶解後のノビレチンの濃度は10μMとした。
【0090】
結果を下記表に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
上記表に示すように、神経細胞の突起伸展が確認され、プラズマローゲンとノビレチンとの併用効果も確認できた。
【0093】
[転写因子活性作用]
<試験サンプル>
ホヤ抽出物(10%)
【0094】
<試験方法>
PC12細胞は、96 well plate中、4×10細胞/wellで播種した。翌日に、0.2mgのpCRE、pSREまたはpAP1 REの各種レポータープラスミド(Clontech製)、および0.04mgのウミシイタケルシフェラーゼphRG-TKプラスミド(promega製)を内部標準として、LipofectAMINE(Invitrogen製)を用いてトランスフェクトした。
5時間後に、低血清培地に置換し、一晩インキュベートした。その後、細胞を各種濃度の試験サンプルで5、24、48、72時間刺激した。なお、試験サンプルは、エタノールに所定の濃度(エタノール以外の成分の濃度)となるように溶解したものを使用した。
発光は、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(Promega製)を用い、製造元の指示に従い、プレートリーダー(APPLISKAN, Thermo製)で測定した(n=4)。ホタルルシフェラーゼ活性は、対応するウミシイタケルシフェラーゼ活性に標準化した。
【0095】
<試験結果>
下記表に結果を示す。
【0096】
【表4】
【0097】
上記表の通り神経成長因子(NGF)の投与なしに、ホヤ抽出物単独で、CRE、SRE、AP1 RE依存性転写活性の増強が確認された。
【0098】
CRE依存性転写活性の増強効果は投与後48時間後が最も効果が大きく、SRE依存性転写活性の増強効果は投与後5時間の比較的早い段階で最も大きな効果が表れた。
【0099】
確認されたAP1 REの増強作用は、投与後24~72時間に強い増強作用が見られたことから、ホヤ抽出物は、内在するNGFに対する感受性を増強したと考えられる。
【0100】
また、各転写活性の増強ピークは時系列が異なり、SRE(5時間)<CREおよびAP1 RE(48時間)であることが確認された。実施例2より、投与後72時間で突起長が著しく伸展していることから、SRE依存性転写活性増強後の遺伝子発現が、CREおよびAP1 REの活性を誘導するのに必須である可能性が示された。
【0101】
[関連タンパク発現量]
<試験サンプル>
ホヤ由来プラズマローゲン(1%)
エタノール(コントロール)
なお、試験サンプルは、エタノールに20μg/mL(エタノール以外の成分の濃度)となるように溶解したものを使用した。
【0102】
<試験方法>
PC12細胞は、24 well plate (Corning Biocoat Mouse CollagenIV, BD Biosciences)中、4×10細胞/wellで播種し、翌日、低血清培地に置換し、分化誘導した。
分化誘導の翌日、各試験サンプルを適用した。なお、適用量は培地に対して試験サンプル0.3質量%とした。24時間後にGap43、ARC、SNAP25の発現量をELISA法で測定し、発現量をコントロール(エタノール)との相対値で算出した。
【0103】
<試験結果>
下記表に結果を示す。
【0104】
【表5】
上記表の通り、ホヤ由来プラズマローゲン(1%)は、GAP43、ARC、SNAP25の産生を抑制することが示された。
【0105】
Gap43(神経成長関連タンパク)は、神経細胞の可塑性と生存に有益な効果を示すタンパク、SNAP25(シナプス前性タンパク)は開口放出による神経伝達物質やホルモンの放出、神経突起の伸長に関与するタンパク、ARC(Activity-regulated cytoskeleton-associated protein、活動依存的遺伝子産物)は中枢神経系に高い発現を示す最初期遺伝子として、それぞれ、知られるものであるが、ホヤ由来プラズマローゲンによる前記の作用(神経細胞突起伸展作用)が、これらの発現に起因するものでないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明では新規な剤又は組成物等を提供できる。
図1
図2
図3
図4