IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2023-173408情報処理装置、情報処理方法、プログラム
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム 図2
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム 図6
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム 図7
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム 図8
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、プログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173408
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/525 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B41J2/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085642
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 薫
【テーマコード(参考)】
2C262
【Fターム(参考)】
2C262AA02
2C262AB17
2C262BA14
2C262DA07
2C262EA11
2C262EA18
(57)【要約】
【課題】印刷条件の設定の自由度が低く、ユーザーにとっての利便性が低かった。
【解決手段】インクを吐出するヘッドを用いて印刷される複数の層である印刷層であって、特色インクで形成される前記層とカラーインクで形成される前記層とを含む前記印刷層から、前記ヘッドによる1回の走査で印刷される複数の前記層である層群を決定する層群決定部と、前記印刷層に含まれる、前記層群、及び、前記層群に含まれない0個以上の前記層である他層それぞれについて、印刷条件の入力を受け付ける受付部と、前記層群について入力された前記印刷条件の第1の入力値を前記層群に適用し、前記他層について入力された前記印刷条件の第2の入力値を前記他層に適用する設定を行う設定部と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するヘッドを用いて印刷される複数の層である印刷層であって、特色インクで形成される前記層とカラーインクで形成される前記層とを含む前記印刷層から、前記ヘッドによる1回の走査で印刷される複数の前記層である層群を決定する層群決定部と、
前記印刷層に含まれる、前記層群、及び、前記層群に含まれない0個以上の前記層である他層それぞれについて、印刷条件の入力を受け付ける受付部と、
前記層群について入力された前記印刷条件の第1の入力値を前記層群に適用し、前記他層について入力された前記印刷条件の第2の入力値を前記他層に適用する設定を行う設定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記ヘッドは、副走査方向に異なる位置に、前記カラーインクの吐出部と、前記特色インクに含まれるホワイトインクの吐出部と、前記特色インクに含まれるバーニッシュインクの吐出部と、を備え、1回の走査において、前記カラーインク、前記ホワイトインク、前記バーニッシュインクのうちの複数を吐出可能である請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記層群決定部は、前記層群の決定の方針が指定された場合、指定された前記方針に従って、前記層群を決定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記層群決定部は、印刷速度を優先する前記方針が指定された場合、印刷結果の画質よりも印刷速度を優先するよう前記層群を決定する請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記層群決定部は、印刷速度を優先する前記方針が指定された場合、前記層群に含める対象としてバーニッシュインクで形成された前記層を含めるように、前記層群を決定する請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記層群決定部は、印刷結果の画質を優先する前記方針が指定された場合、印刷速度よりも印刷結果の画質を優先するよう前記層群を決定する請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記層群決定部は、印刷結果の画質を優先する前記方針が指定された場合、前記層群に含める対象としてバーニッシュインクで形成された前記層を含めないように、前記層群を決定する請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1の入力値と第2の入力値とを、前記印刷層と同じ層構成の印刷対象に適用可能な前記印刷条件のプリセット値として記憶媒体に登録する登録部を更に備え、
前記設定部は、前記印刷層に対して、前記登録部により登録された前記プリセット値のうち選択された前記プリセット値を設定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記印刷条件は、印刷品質を含み、
前記印刷品質は、インクの濃度を示す濃度値と、印刷速度に関するパラメーターと、を含む請求項1乃至8の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
インクを吐出するヘッドを用いて印刷される複数の層である印刷層であって、特色インクで形成される前記層とカラーインクで形成される前記層とを含む前記印刷層から、前記ヘッドによる1回の走査で印刷される複数の前記層である層群を決定する層群決定ステップと、
前記印刷層に含まれる、前記層群、及び、前記層群に含まれない0個以上の前記層である他層それぞれについて、印刷条件の入力を受け付けるステップと、
前記層群について入力された前記印刷条件の第1の入力値を前記層群に適用し、前記他層について入力された前記印刷条件の第2の入力値を前記他層に適用する設定を行う設定ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項11】
コンピューターに、
インクを吐出するヘッドを用いて印刷される複数の層である印刷層であって、特色インクで形成される前記層とカラーインクで形成される前記層とを含む前記印刷層から、前記ヘッドによる1回の走査で印刷される複数の前記層である層群を決定する層群決定ステップ、
前記印刷層に含まれる、前記層群、及び、前記層群に含まれない0個以上の前記層である他層それぞれについて、印刷条件の入力を受け付けるステップ、
前記層群について入力された前記印刷条件の第1の入力値を前記層群に適用し、前記他層について入力された前記印刷条件の第2の入力値を前記他層に適用する設定を行う設定ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カラーインクで形成される層と、特色インクで形成される層と、を含む積層された複数の層を印刷する印刷装置がある。以下では、カラーインクで形成される層と、特色インクで形成される層と、を含む積層された複数の層を印刷することを、多層印刷とする。特許文献1には、複数の層を印刷する際に、複数のインクを指定順序で噴射する印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-230738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、印刷条件の設定の自由度が低く、ユーザーにとっての利便性が低かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、情報処理装置は、インクを吐出するヘッドを用いて印刷される複数の層である印刷層であって、特色インクで形成される前記層とカラーインクで形成される前記層とを含む前記印刷層から、前記ヘッドによる1回の走査で印刷される複数の前記層である層群を決定する層群決定部と、前記印刷層に含まれる、前記層群、及び、前記層群に含まれない0個以上の前記層である他層それぞれについて、印刷条件の入力を受け付ける受付部と、前記層群について入力された前記印刷条件の第1の入力値を前記層群に適用し、前記他層について入力された前記印刷条件の第2の入力値を前記他層に適用する設定を行う設定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】情報処理装置等の構成の一例を示す図である。
図2】印刷される複数の層の一例の概要を示す図である。
図3】印刷ヘッドを説明する図である。
図4】層群の印刷を説明する図である。
図5】入力画面の一例を示す図である。
図6】入力画面の一例を示す図である。
図7】入力画面の一例を示す図である。
図8】登録処理の一例を示すフローチャートである。
図9】層群決定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施形態について説明する。
(1)第1の実施形態:
(1-1)情報処理装置の構成:
(1-2)登録処理:
(2)第2の実施形態:
(3)第3の実施形態:
(4)第4の実施形態:
(5)他の実施形態:
【0008】
(1)第1の実施形態:
(1-1)情報処理装置の構成:
図1は、本実施形態にかかる情報処理装置100、印刷装置200の構成の一例を示す図である。本実施形態の情報処理装置100は、印刷装置200を制御する情報処理装置であって、例えば、パーソナルコンピューター、タブレット装置、スマートフォン等である。印刷装置200は、情報処理装置100からの指示に応じて、印刷媒体(例えば、透明、又は不透明なアクリル板、ガラス板、樹脂製の媒体(例えば、樹脂製のスマホケース等)、印刷用紙等)に画像を印刷する印刷装置である。本実施形態では、印刷装置200は、既定のインクを用いて印刷媒体への印刷を行う。本実施形態では、この既定のインクは、カラーインク(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のインク)、及び、特色インクである。特色インクは、カラーインクで表現できない色の表現や、艶等の効果の付与に用いられるインクであり、本実施形態では、ホワイトインクとバーニッシュインクとである。本実施形態の印刷装置200により用いられるインクは、紫外線の照射により硬化するインクである。なお、本実施形態では、印刷装置200は、インクジェット方式であるとする。
【0009】
本実施形態では、印刷装置200は、複数の層を印刷媒体に印刷する。図2に、印刷装置200により透明な印刷媒体に印刷される複数の層の構成の一例を示す。図2の例では、複数の層は、下から順に、カラーインクで形成される層(以下では、カラーインク層)、ホワイトインクで形成される層(以下では、ホワイトインク層)、カラーインク層、バーニッシュインクで形成される層(以下では、バーニッシュインク層)の順に積層されている。ここで、下とは、印刷される層から見た印刷媒体の方向である。最上層のカラーインク層は、印刷媒体の表面から視認されることとなる。また、最下層のカラーインク層は、印刷媒体の裏面から視認されることとなる。また、以下では、ホワイトインク、バーニッシュインク等の特色インクで形成される層を、特色インク層とする。そのため、ホワイトインク層、バーニッシュインク層は、特色インク層の一例となる。
【0010】
本実施形態では、印刷装置200は、印刷媒体へのインクの吐出、及び、吐出したインクに対する紫外線の照射を行うことで印刷を行う。情報処理装置100と印刷装置200とは、有線、又は無線により互いに通信可能に接続されている。また、情報処理装置100と印刷装置200とは一体のハードウェアとなっており、印刷装置200に備え付けられた情報処理装置100から制御してもよい。
【0011】
情報処理装置100、及び、印刷装置200に含まれるハードウェアについて説明する。
情報処理装置100は、プロセッサー110と、通信部120と、記憶媒体130と、UI部140と、を備える。また、情報処理装置100は、不図示のRandom Access Memory(RAM)、Read Only Memory(ROM)を備える。プロセッサー110は、ROM、記憶媒体130等に記憶される各種プログラムを実行することで、情報処理装置100を制御する。プロセッサー110は、単一のチップで構成されていてもよいし、複数のチップで構成されていてもよい。また、本実施形態では、プロセッサー110は、Central Processing Unit(CPU)であるとするが、ASIC等により構成されてもよいし、CPUとASICとにより構成されてもよい。通信部120は、印刷装置200等の外部機器との間での有線又は無線の各種の通信プロトコルに従った通信に用いられる回路を備える。記憶媒体130は、印刷装置200を介した印刷を制御する処理を実行するための設定プログラム111等の各種プログラム、画像データ130a、印刷条件設定値130b等の各種情報を記憶する。
【0012】
画像データ130aは、印刷対象となる複数の層の画像のデータである。以下では、印刷対象となる複数の層を印刷層とする。本実施形態では、画像データ130aに含まれる各層のデータは、印刷される画像を示すデータである。画像データ130aに含まれるカラーインク層のデータは、既定の画素数(例えば、640×480、1200×1600等)で分割された画像の各画素をRGB3チャンネルの階調値で表したRGBデータである。画像データ130aに含まれるホワイトインク層、バーニッシュインク層のデータは、既定の画素数で分割された画像の各画素を、濃度を示す1チャンネルの階調値で表したデータである。
【0013】
印刷条件設定値130bは、印刷層の層全体に一括して設定可能な印刷条件のプリセット値である。このプリセット値は、印刷層の各層についての印刷条件の設定値がまとめられた値となる。以下では、このプリセット値を、印刷条件プリセット値とする。印刷条件とは、印刷に係る条件であり、本実施形態では、各層の形成に用いられるインクの種類、及び、各層の印刷品質である。ここで、インクの種類とは、インクが、カラーインク、ホワイトインク、バーニッシュインク等のうちの何れであるかを示す概念である。印刷品質とは、印刷処理の品質に係るパラメーターであり、メディアプロファイル、インクの濃度値、入力される画像の解像度(印刷対象の画像データのデータ内での解像度)、印刷速度に関するパラメーター、出力される画像(印刷される画像)の解像度、出力される画像の画質に関する印刷装置200の制御パラメーター等である。本実施形態では、印刷速度に関するパラメーターは、印刷パス数を含む。メディアプロファイルとは、印刷媒体の性質に依らず、印刷に用いられるインクにより目的の色を再現させるための色変換情報(例えば、色変換テーブル等)である。インクの濃度値は、印刷媒体に印刷されるインクの濃度を示す指標値である。インクの濃度値は、印刷ヘッド240から吐出されるインクの量の制御に用いられる。本実施形態では、記憶媒体130には、単一の層(以下では、単層とする)に設定可能な印刷品質のプリセット値の情報が、予め記憶されている。以下では、単層に設定可能な印刷品質のプリセット値を、単層プリセット値とする。
【0014】
印刷結果の画質が高くなるほど、印刷にかかる時間が増えるため、印刷速度が遅くなる。以下では、印刷結果の画質を、印刷画質とする。逆に、印刷画質を低くすることで、印刷にかかる時間を減らし、印刷速度を向上できる。そこで、本実施形態では、単層プリセット値として、用途に応じて各パラメーターが調整されたもの(例えば、印刷速度よりも印刷画質を優先して各パラメーターが調整されたもの、印刷画質よりも印刷速度を優先して各パラメーターが調整されたもの等)が用意されている。
【0015】
また、本実施形態では、記憶媒体130には、後述する印刷装置200の印刷ヘッド240による1回の走査で印刷可能な複数の層に適用可能な印刷条件のプリセット値の情報が、予め記憶されている。以下では、印刷ヘッド240による1回の走査で、併せて印刷される複数の層を、層群とする。層群に適用可能な印刷条件のプリセット値は、層群の各層の形成に用いられるインクと、層群の全てに適用される単一の単層プリセット値と、の情報を示す。以下では、層群に適用可能な印刷条件のプリセット値を、層群プリセット値とする。なお、層群プリセット値は、層群に対して適用される印刷条件プリセット値とも見なせる。
【0016】
また、本実施形態では、プロセッサー110は、UI部140を介してユーザーから印刷品質の値の指定を受け付け、指定された値に基づいて、単層プリセット値を生成し、生成した単層プリセット値を記憶媒体130に登録する。より具体的には、プロセッサー110は、ユーザーによるUI部140の操作に基づいて、印刷品質の各パラメーター(メディアプロファイル、インクの濃度値、入力される画像の解像度、印刷速度に関するパラメーター、出力される画像の解像度等)の値の指定を受け付ける。そして、プロセッサー110は、指定された値をまとめて単層プリセット値を生成し、生成した単層プリセット値を記憶媒体130に記憶する。また、プロセッサー110は、印刷品質のパラメーターのうちの一部の値の指定を受け付けてもよい。その場合、プロセッサー110は、他のパラメーターについては、既定の初期値が指定されたとして、単層プリセット値を生成し、生成した単層プリセット値を記憶媒体130に記憶する。また、プロセッサー110は、ユーザーによるUI部140の操作に基づいて、生成済みの単層プリセット値について、一部又は全部のパラメーターの値の更新の指示を受け付けてもよい。その場合、プロセッサー110は、指示に応じて、対応する単層プリセット値におけるパラメーターの値を更新する。このようにすることで、プロセッサー110は、単層に対する印刷品質の設定の自由度を向上できる。
【0017】
UI部140は、マウス、キーボード、タッチパッド、タッチパネルの操作部等のユーザーからの入力を受け付ける入力部と、モニター、タッチパネルの表示部、スピーカー等のユーザーに対する情報の提示に用いられる出力部と、を備える。
【0018】
印刷装置200は、プロセッサー210と、通信部220と、記憶媒体230と、印刷ヘッド240と、を備える。また、印刷装置200は、不図示のRAM、ROMを備える。プロセッサー210は、ROM、記憶媒体230等に記憶される各種プログラムを実行することで、印刷装置200を制御する。プロセッサー210は、単一のチップで構成されていてもよいし、複数のチップで構成されていてもよい。また、本実施形態では、プロセッサー210は、CPUであるとするが、ASIC等により構成されてもよいし、CPUとASICとにより構成されてもよい。通信部220は、情報処理装置100等の外部機器との間での有線又は無線の各種の通信プロトコルに従った通信に用いられる回路を備える。記憶媒体230は、印刷の実行を制御するための印刷実行プログラム211等の各種プログラム、各種情報を記憶する。
【0019】
印刷ヘッド240は、印刷媒体に対するインクの吐出、及び、紫外線の照射を行う。プロセッサー210は、印刷ヘッド240を、印刷ヘッド240の駆動機構を介して移動させつつ、印刷媒体に対してインクの吐出及び紫外線の照射を行う。プロセッサー210は、印刷ヘッド240を介して、印刷媒体へのライン単位での印刷を繰り返すことで、印刷を行う。以下では、このラインの方向を主走査方向とする。また、以下では、主走査方向と垂直な方向であって、印刷の際に配置された印刷媒体と平行な方向を、副走査方向とする。また、以下では、印刷中の印刷ヘッド240が印刷媒体上で主走査方向に印刷領域の端から他方の端まで移動しながら行う1ラインの印刷を、1回の印刷パスとする。また、印刷領域における同じ領域の印刷に要する印刷パスの回数を、印刷パス数とする。印刷ヘッド240は、各種インクの吐出に用いられる吐出部241、吐出部241により吐出されたインクに対する紫外線の照射を行う照射部242を備える。本実施形態の印刷ヘッド240の構成を図3に示す。図3は、印刷装置200における印刷媒体の設置面が水平方向に平行であるとした場合に、印刷ヘッド240を垂直方向から見た様子を示す図である。吐出部241は、カラーインク(CMYK)、ホワイトインク、バーニッシュインクの各インクの吐出に用いられる複数のノズルが形成され、各インクを印刷媒体に吐出することで各インクを印刷媒体に塗布する。図3に示すように、吐出部241において、バーニッシュインク吐出用のノズル(Vrノズルとする)が形成される領域(Vrノズル領域とする)と、カラーインク吐出用のノズル(Clノズルとする)が形成される領域(Clノズル領域とする)と、ホワイトインク吐出用のノズル(Whノズルとする)が形成される(Whノズル領域とする)と、は、副走査方向に異なる位置に、副走査方向において隣接するよう配置されている。本実施形態では、各ノズルの副走査方向の幅は同じである。また、本実施形態では、副走査方向におけるClノズル領域から見たWhノズル領域の方向を前方向とし、副走査方向におけるClノズル領域から見たVrノズル領域の方向を後方向とする。Vrノズル領域とClノズル領域とWhノズル領域とが副走査方向に異なる位置となる。そのため、印刷ヘッド240は、主走査方向への1回の走査の際に、バーニッシュインク、カラーインク、ホワイトインクのうちの複数のインクを重ならないように印刷媒体に吐出できる。
【0020】
本実施形態では、プロセッサー210は、原則(すなわち、印刷の際の印刷ヘッド240の副走査方向の移動方向の変更の指示がない限り)、印刷の際には、印刷ヘッド240を前方向に移動させつつ、印刷を行う。すなわち、プロセッサー210は、印刷ヘッド240を、印刷媒体の印刷領域における後方向の端部から前方向に移動させ、主走査方向への走査を行わせることを繰り返すことで、印刷を行う。ただし、プロセッサー210は、原則、印刷ヘッド240を印刷領域における前方向の端部から後方向へ移動させ、主走査方向への走査を行わせることを繰り返すことで、印刷を行うこととしてもよい。照射部242は、吐出部241の主走査方向の両側に配置された紫外線を照射するランプである。プロセッサー210は、印刷ヘッド240の走査の際に、吐出部241により印刷媒体に吐出されたインクに対して、印刷ヘッドの240の走査方向後部に位置する照射部242を介して、吐出されたインクに紫外線を照射する。
【0021】
ここで、図4を用いて、印刷ヘッド240を用いて1回の走査で複数の層を印刷する処理を説明する。ここでは、ホワイトインク層、カラーインク層、バーニッシュインク層の3層の層群を印刷ヘッド240による同じ走査で印刷する場合について説明する。図4では、印刷媒体に塗出されたインクを矩形で示す。また、最も新しく吐出されたインクについては、グレー背景の矩形で示す。
【0022】
まず、印刷ヘッド240は、印刷媒体における印刷領域の副走査方向の端部に、最下層を形成するホワイトインク(図4では、Whインクと記載)を吐出する。そして、印刷ヘッド240は、前方向に、既定の距離分移動し、再度、主走査方向に、走査しつつ、最下層を形成するホワイトインクと、下から2番目の層を形成するカラーインク(図4ではClインクと記載)と、を吐出する。ここで、吐出されるカラーインクは、1つ前の走査で吐出されたホワイトインクの上に吐出される。これにより、ホワイトインク層の上に積層されるカラーインク層が形成される。そして、印刷ヘッド240は、前方向に、既定の距離移動し、再度、主走査方向に、走査しつつ、最下層を形成するホワイトインクと、下から2番目の層を形成するカラーインクと、最上層を形成するバーニッシュインクと、を吐出する。ここで、吐出されるバーニッシュインクは、1つ前の走査で吐出されたカラーインクの上に吐出される。これにより、ホワイトインク層の上に積層されるカラーインク層の上に積層されるバーニッシュインク層が形成される。以降も、印刷ヘッド240は、前方向に、ノズルの幅分移動しつつ、インクの吐出を繰り返す。このように、印刷ヘッド240による同じ走査によって、3つの層が形成されることとなる。
【0023】
印刷ヘッド240が主走査方向への1回の走査で形成可能な複数の層は、印刷ヘッド240の吐出部241における各インクを吐出するノズルの副走査方向における並び順に応じて定まる。吐出部241におけるノズル領域は、前方向へ向かって、Vrノズル領域、Clノズル、Whノズルの順で並んでいる。各ノズルに対応するインクをこの並び順に並べると、バーニッシュインク、カラーインク、ホワイトインクとなる。印刷ヘッド240が前方向へ移動しつつ印刷を行う場合、この並び順における後に並んでいるインクで形成される層の上に、先に並んでいるインクで形成される層が積層された複数の層を、1回の走査により形成できる。また、印刷ヘッド240が後方向へ移動しつつ印刷を行う場合、この並び順における先に並んでいるインクで形成される層の上に、後に並んでいるインクで形成される層が積層された複数の層を、1回の走査により形成できる。
【0024】
すなわち、印刷ヘッド240は、前方向に移動しつつ、印刷を行う場合、下から順に積層されたホワイト層、カラー層、バーニッシュ層の3層、下から順に積層されたホワイト層、カラー層の2層、下から順に積層されたホワイト層、バーニッシュ層の2層、下から順に積層されたカラー層、バーニッシュ層の2層について、1回の走査で形成できる。
【0025】
また、印刷ヘッド240は、後方向に移動しつつ、印刷を行う場合、下から順に積層されたバーニッシュ層、カラー層、ホワイト層の3層、下から順に積層されたカラー層、ホワイト層の2層、下から順に積層されたバーニッシュ層、ホワイト層の2層、下から順に積層されたバーニッシュ層、カラー層の2層についても1回の走査で形成できる。
【0026】
なお、バーニッシュインク層は、表面の保護や艶出しを目的として用いられ、表面以外に形成されることが想定されにくい。そのため、本実施形態では、バーニッシュインク層の上には、他の層が積層されないとする。また、ホワイトインク層の上にバーニッシュインク層が積層されることについても想定されにくい。そこで、本実施形態では、ホワイトインク層の上には、バーニッシュインク層が積層されないとする。ただし、バーニッシュインク層の上に他の層が積層されることが許容されてもよいし、ホワイトインク層の上にバーニッシュインク層が積層されることが許容されてもよい。
【0027】
本実施形態では、層群となりうる複数の層は、下から順にカラーインク層、ホワイトインク層が積層された2層、下から順にホワイトインク層、カラーインク層が積層された2層、下から順にカラーインク層、バーニッシュインク層が積層された2層、下から順にホワイトインク層、カラーインク層、バーニッシュインク層が積層された3層である。以下では、下から順にカラーインク層、ホワイトインク層が積層された層群を、カラー・ホワイト層群とする。また、以下では、下から順にホワイトインク層、カラーインク層が積層された層群を、ホワイト・カラー層群とする。また、以下では、下から順にカラーインク層、バーニッシュインク層が積層された層群をカラー・バーニッシュ層群とする。また、以下では、下から順にホワイトインク層、カラーインク層、バーニッシュインク層が積層された層群をホワイト・カラー・バーニッシュ層群とする。本実施形態では、ホワイト・カラー層群、カラー・ホワイト層群、カラー・バーニッシュ層群、ホワイト・カラー・バーニッシュ層群それぞれに適用可能な層群プリセット値が予め記憶媒体130に記憶されている。
【0028】
以下では、印刷ヘッド240が前方向に移動しつつ印刷を行う場合に、印刷ヘッド240による1回の走査で形成可能な層群に適用可能な層群プリセット値を、前方向プリセット値とする。本実施形態では、ホワイト・カラー層群、カラー・バーニッシュ層群、ホワイト・カラー・バーニッシュ層群に適用可能な層群プリセット値が、前方向プリセット値である。また、以下では、印刷ヘッド240が後方向に移動しつつ印刷を行う場合に、印刷ヘッド240による1回の走査で形成可能な層群に適用可能な層群プリセット値を、後方向プリセット値とする。本実施形態では、カラー・ホワイト層群に適用可能な層群プリセット値が、後方向プリセット値である。
【0029】
また、バーニッシュインク層は、画質があまり求められない。バーニッシュインク層には、カラーインク層、ホワイトインク層と比べて、印刷画質が低い印刷品質が適用されることが想定される。そのため、本実施形態では、バーニッシュインク層に適用可能な単層プリセット値には、既定の水準以上の印刷画質のものがない。結果として、バーニッシュインク層を含む層群に適用可能な層群プリセット値にも、既定の水準以上の印刷画質のものがないこととなる。すなわち、バーニッシュインク層を含む層群における他の層には、既定の水準以上の印刷画質の印刷品質を適用できないこととなる。
【0030】
続いて、情報処理装置100、及び、印刷装置200の機能について説明する。
情報処理装置100のプロセッサー110は、記憶媒体130に記憶された設定プログラム111を実行することで、受付部111a、層群決定部111b、登録部111c、及び、設定部111dとして機能する。
【0031】
受付部111aは、特色インク層とカラーインク層とを含む印刷層の層それぞれについて、印刷条件の入力を受け付ける機能である。本実施形態では、受付部111aは、後述する層群決定部111bの機能により決定される層群、及び、印刷層における層群に含まれない0個以上の他の層それぞれについて、印刷条件の入力を受け付ける機能である。以下では、印刷層における層群と異なる他の層を、他層とする。他層は、印刷層における層群としてまとめられなかった単層となる。なお、印刷層が複数の層群のみで構成される場合、他層は、存在しないこととなる。
【0032】
プロセッサー110は、受付部111aの機能により、印刷層として仮想される複数の層(以下では、仮想層とする)の層構成、及び、仮想層の各層の印刷条件の入力に用いられる画面を、UI部140に表示する。ここで、層構成とは、積層された複数の層において、どの種類のインクで形成された層が、どの順番で積層されているかを示す概念である。本実施形態では、プロセッサー110は、この画面として、図5に示す入力画面300を表示する。入力画面300は、仮想層への層の追加に用いられる追加ボタン301、仮想層からの層の削除に用いられる削除ボタン302、印刷条件プリセット値の登録に用いられる登録ボタン303を含む。また、入力画面300は、印刷の高速化のための設定への変更を指示するためのチェックボックス304、印刷の高速化のための層群の決定の方針の指定に用いられる入力欄305を含む。
【0033】
プロセッサー110は、追加ボタン301、削除ボタン302の選択に基づいて、仮想層に含まれる層の数を設定する。より具体的には、プロセッサー110は、ユーザーによるUI部140の操作に基づいて、追加ボタン301の選択を検知した場合、仮想層の最上層の上に層が1つ追加されたとして、追加された層に対応する入力領域310を入力画面300内に追加して表示する。ここでの上とは、印刷される層から見て印刷媒体の方を下とした場合の上である。なお、プロセッサー110は、仮想層に層が1つも含まれない場合、最下層の層として1つの層を追加し、追加された層に対応する入力領域310を入力画面300内に追加して表示する。また、プロセッサー110は、ユーザーによるUI部140の操作に基づいて、削除ボタン302の選択を検知した場合、仮想層に含まれる最上層を削除するとして、削除した層に対応する入力領域310を入力画面300から削除する。
【0034】
すなわち、ユーザーが追加ボタン301を選択する度に、仮想層に追加された層についての入力領域310が増加していく。また、ユーザーが削除ボタン302を選択すると、仮想層から削除された層についての入力領域310が減少していくこととなる。図5の例は、追加ボタン301が6回選択された結果、入力領域310が6つ表示されている状況を示している。図5の例では、第1層が最下層であり、第2層が第1層の上の層であり、第3層が第2層の上の層であり、第4層が第3層の上の層であり、第5層が第4層の上の層であり、第6層が最上層である。
【0035】
入力領域310は、対応する層の印刷条件の入力に用いられる領域であり、入力欄311、312を含む。入力欄311は、対応する層の形成に用いられるインクの種類の入力に用いられる。また、入力欄312は、対応する層の印刷品質の入力に用いられる。
【0036】
本実施形態では、プロセッサー110は、入力欄311の選択を検知した場合、プルダウンメニューとして、対応する層の形成に用いられるインクの種類として入力可能な選択肢を提示する。本実施形態では、プロセッサー110は、この選択肢として、カラーインク、ホワイトインク、バーニッシュインクを提示する。そして、プロセッサー110は、UI部140を介して、提示した選択肢の中から、対応する層の形成に用いるインクの指定を受け付ける。プロセッサー110は、指定された選択肢のインクを、対応する層の形成に用いるインクの入力値として受け付ける。図5の例では、第1層についてはカラーインクが入力され、第2層についてはホワイトインクが入力され、第3層についてはカラーインクが入力され、第4層についてはホワイトインクが入力されている。また、第5層についてはカラーインクが入力され、第6層についてはバーニッシュインクが入力されている。
【0037】
本実施形態では、プロセッサー110は、入力欄312の選択を検知した場合、プルダウンメニューとして、対応する層の印刷品質として入力可能な選択肢を提示する。本実施形態では、プロセッサー110は、この選択肢として、記憶媒体130に記憶された単層プリセット値(予め定められた単層プリセット値とプロセッサー110により生成された単層プリセット値)を提示する。そして、プロセッサー110は、UI部140を介して、提示した選択肢の中から、対応する層の印刷品質の指定を受け付ける。プロセッサー110は、指定された選択肢の印刷品質を、対応する層の印刷品質の入力値として受け付ける。
【0038】
また、プロセッサー110は、入力欄305の選択を検知した場合、プルダウンメニューとして、印刷の高速化の方針として入力可能な選択肢を提示する。本実施形態では、プロセッサー110は、この選択肢として、印刷画質よりも印刷速度を優先する方針である速度優先と、印刷速度よりも印刷画質を優先する方針である画質優先と、を提示する。そして、プロセッサー110は、UI部140を介して、提示した選択肢の中から、方針の指定を受け付ける。プロセッサー110は、指定された方針を、印刷の高速化の方針の指定として受け付ける。図5の例では、速度優先が指定されている。
【0039】
ここで、層群決定部111bの説明を行う。
層群決定部111bは、印刷層から、印刷ヘッド240による1回の走査で印刷される層群を決定する機能である。
プロセッサー110は、層群決定部111bの機能により、UI部140を介して、チェックボックス304へのチェックの入力を検知した場合、入力欄305に指定された方針に従って、仮想層から、印刷ヘッド240による1回の走査で形成される層群を決定する。本実施形態では、プロセッサー110は、仮想層における層群プリセット値を適用可能な部分を層群として決定し、層群の部分について印刷ヘッド240による1回の走査で併せて形成できるようにすることで、印刷の高速化を図る。
【0040】
本実施形態では、プロセッサー110は、入力欄305に速度優先が指定されている場合、印刷速度を優先するモード(以下では、速度優先モード)で、仮想層から層群を決定する。以下で、速度優先モードにおける層群の決定処理を説明する。
プロセッサー110は、速度優先モードでは、なるべく多くの層を層群としてまとめることで、印刷速度を向上させるようにする。具体的には、以下の通りである。
【0041】
プロセッサー110は、予め用意された各層群プリセット値(記憶媒体130に記憶される各層群プリセット値)を適用可能な層群を、仮想層内に決定される層群の候補として特定する。プロセッサー110は、特定した候補それぞれについて、以下のように優先度を決定する。この優先度は、対応する候補の層群が、どの程度優先的に仮想層に設けられかを示す指標値である。プロセッサー110は、層数が多い候補ほど優先度を高くする。層群としてまとめられる層数が多いほど、より多くの層を印刷ヘッド240による1回の走査により併せて形成できるため、印刷にかかる時間が少なくて済み、印刷時間が向上する。また、プロセッサー110は、層数が同じ候補同士については、前方向プリセット値に対応する候補について、後方向プリセット値に対応する候補よりも優先度を高くする。印刷ヘッド240が前方向へ移動しながらの印刷と後方向へ移動しながらの印刷との両方を行う場合、印刷ヘッド240の位置合わせの難度が上がるため、印刷精度の低下につながる可能性がある。そこで、プロセッサー110は、印刷の際の印刷ヘッド240の副走査方向への移動の方向をできるだけ、原則の場合と同様に前方向に合わせることで印刷精度が低下する事態を低減できる。ただし、プロセッサー110は、原則として印刷ヘッド240を後方向に移動させて印刷する場合、後方向プリセット値に対応する候補について、前方向プリセット値に対応する候補よりも優先度を高くしてもよい。また、プロセッサー110は、層数が同じである前方向プリセット値に対応する候補同士、又は、層数が同じである後方向プリセット値に対応する候補同士については、バーニッシュインク層を含まない候補について、バーニッシュインク層を含む候補よりも優先度を高くする。本実施形態では、バーニッシュインク層に適用可能な単層プリセット値には、印刷画質が既定の水準よりも高いものがない。そのため、バーニッシュインク層が含まれる層群については、印刷画質が既定の水準よりも高い単層プリセット値を設定できず、層群におけるバーニッシュインク層と異なる層について、印刷画質を向上できない事態が生じる。そこで、プロセッサー110は、バーニッシュインク層を含まない候補について、バーニッシュインク層を含む候補よりも優先度を高くすることで、このような事態を低減できる。
【0042】
本実施形態では、記憶媒体130に記憶される各層群プリセット値を適用可能な層群は、カラー・ホワイト層群、ホワイト・カラー層群、カラー・バーニッシュ層群、ホワイト・カラー・バーニッシュ層群の4つである。そのため、プロセッサー110は、仮想層内に決定する層群の候補として、この4つの層群を特定する。プロセッサー110は、層数の最も多いホワイト・カラー・バーニッシュ層群である候補を最も優先度を高くする。プロセッサー110は、前方向プリセット値に対応し、バーニッシュインク層を含まないホワイト・カラー層群である候補の優先度を、2番目に高い優先度とする。プロセッサー110は、前方向プリセット値に対応し、バーニッシュインク層を含むカラー・バーニッシュ層群である候補の優先度を、3番目に高い優先度とする。プロセッサー110は、後方向プリセット値に対応するカラー・ホワイト層群である候補の優先度を、最も低い優先度とする。
【0043】
プロセッサー110は、特定した候補から優先度の高い順に1つずつ選択しつつ、選択した候補について以下の処理を行う。以下では、直前に選択された候補を、選択候補とする。
プロセッサー110は、仮想層の中で層群として決定されていない部分から、選択候補と同じ(同一の)層構成の部分を全て特定する。そして、プロセッサー110は、特定した部分を層群として決定する。本実施形態では、プロセッサー110は、まず、選択候補としてホワイト・カラー・バーニッシュ層群を選択する。図5の例では、プロセッサー110は、仮想層における第4層~第6層を、選択候補と同じ層構成の部分として特定し、この部分を層群として決定する。続いて、プロセッサー110は、選択候補としてホワイト・カラー層群を選択する。図5の例では、プロセッサー110は、仮想層における第2層~第3層を、選択候補と同じ層構成の部分として特定し、この部分を層群として決定する。続いて、プロセッサー110は、選択候補としてカラー・バーニッシュ層群を選択する。図5の例では、プロセッサー110は、仮想層における層群として決定されていない部分に、選択候補と同じ層構成の部分がないため、層群を決定しない。続いて、プロセッサー110は、選択候補としてカラー・ホワイト層群を選択する。図5の例では、プロセッサー110は、仮想層における層群として決定されていない部分に、選択候補と同じ層構成の部分がないため、層群を決定しない。
プロセッサー110は、特定した候補それぞれについて、以上の処理を実行することで、仮想層において層群を決定する。
以上が速度優先モードにおける処理である。
【0044】
本実施形態では、プロセッサー110は、入力欄305に品質優先が指定されている場合、印刷画質を優先するモード(以下では、画質優先モード)で、仮想層から層群を決定する。以下で、画質優先モードにおける層群の決定処理を説明する。
プロセッサー110は、画質優先モードでは、より高い印刷品質を設定可能な層群ほど、より優先的に仮想層内に決定するようにする。具体的には、以下の通りである。
【0045】
プロセッサー110は、記憶媒体130に記憶される各層群プリセット値を適用可能な層群を、仮想層内に決定される層群の候補として特定する。プロセッサー110は、特定した候補について、以下のように優先度を決定する。この優先度は、対応する候補の層群が、どの程度優先的に仮想層に設けられかを示す指標値である。本実施形態で、層数が最も多い層群(3層の層群)は、バーニッシュインク層を含む。そのため、この層群には、印刷画質が既定の水準よりも高い印刷品質の値を適用できない。そこで、プロセッサー110は、層数が2つの層群である候補を、3層の層群である候補よりも優先度を高くすることで、仮想層内に3層の層群が決定され、印刷結果の画質が低下する事態を低減できる。
【0046】
また、プロセッサー110は、速度優先モードと同様に、層数が同じ候補同士については、前方向プリセット値に対応する候補について、後方向プリセット値に対応する候補よりも優先度を高くする。また、プロセッサー110は、速度優先モードと同様に、層数が同じである前方向プリセット値に対応する候補同士、又は、層数が同じである後方向プリセット値に対応する候補同士については、バーニッシュインク層を含まない候補について、バーニッシュインク層を含む候補よりも優先度を高くする。
【0047】
本実施形態では、記憶媒体130に記憶される各層群プリセット値を適用可能な層群は、カラー・ホワイト層群、ホワイト・カラー層群、カラー・バーニッシュ層群、ホワイト・カラー・バーニッシュ層群の4つである。そのため、プロセッサー110は、仮想層内に決定する層群の候補として、この4つの層群を特定する。プロセッサー110は、前方向プリセット値に対応し、バーニッシュインク層を含まない、2層で構成されるホワイト・カラー層群である候補の優先度を、最も高くする。また、プロセッサー110は、前方向プリセット値に対応し、バーニッシュインク層を含む、2層で構成されるカラー・バーニッシュ層群である候補の優先度を、2番目に高くする。また、プロセッサー110は、後方向プリセット値に対応し、2層で構成されるカラー・ホワイト層群である候補の優先度を、3番目に高くする。また、プロセッサー110は、3層で構成されるホワイト・カラー・バーニッシュ層群である候補の優先度を、最も低い優先度とする。
【0048】
プロセッサー110は、特定した候補から優先度の高い順に1つずつ選択候補として選択しつつ、選択した候補について以下の処理を行う。
プロセッサー110は、仮想層の中で層群として決定されていない部分から、選択候補と同じ層構成の部分を全て特定する。そして、プロセッサー110は、特定した部分を層群として決定する。本実施形態では、プロセッサー110は、まず、選択候補としてホワイト・カラー層群を選択する。図5の例では、プロセッサー110は、仮想層における第2層~第3層と、第4層~第5層を、選択候補と同じ層構成の部分として特定し、この部分を層群として決定する。その後、プロセッサー110は、他の候補と同様の層構成の部分が、仮想層内の層群として決定されていない部分に存在しないとして、これ以上層群を決定しない。
【0049】
プロセッサー110は、特定した候補それぞれについて、以上の処理を実行することで、仮想層において層群を決定する。
以上が画質優先モードの場合の処理である。以上の処理により、プロセッサー110は、印刷層として想定される仮想層内に、層群を決定する。
以上が、層群決定部111bについての説明である。
【0050】
受付部111aの説明に戻る。
プロセッサー110は、入力画面300から、層群決定部111bの機能により決定された層群に含まれる層の入力領域310を削除し、決定した層群についての印刷条件の入力に用いられる入力領域を追加する。
【0051】
図5の例では、速度優先モードで層群が決定される場合、プロセッサー110は、決定された第2~第3層の層群、第4~第6層の層群に含まれる第2~第6層の入力領域310を削除する。そして、図6に示すように、プロセッサー110は、第2~第3層の層群について印刷条件の入力に用いられる入力領域320と、第4~第6層の層群について印刷条件の入力に用いられる入力領域320と、を入力画面300に追加する。
【0052】
入力領域320は、対応する層群に含まれる各層の形成に用いられるインクの種類の表示欄321と、対応する層群内の全ての層に適用する印刷条件の値の入力欄322と、を含む。表示欄321には、入力領域320の追加に併せて削除された入力領域310の入力欄311に入力されたインクの種類が表示される。本実施形態では、プロセッサー110は、入力欄322の選択を検知した場合、プルダウンメニューとして、対応する層群に適用可能な印刷条件の値として入力可能な選択肢を提示する。本実施形態では、プロセッサー110は、この選択肢として、記憶媒体130に記憶された層群プリセット値のうち、対応する層群に適用可能な値を提示する。そして、プロセッサー110は、UI部140を介して、提示した選択肢の中から、印刷条件の値の指定を受け付ける。プロセッサー110は、指定された値を、対応する層群に適用する印刷条件の値の入力値として受け付ける。図6の例では、第2~第3層の層群については、入力欄322に設定値Bが入力されている。また、第4~第6層の層群については、入力欄322に設定値Cが入力されている。入力画面300を介して入力された仮想層内の層群についての印刷条件(入力欄322に入力された入力値が示す印刷条件)は、第1の入力値の一例である。また、入力画面300を介して入力された仮想層内の他層についての印刷条件(他層に対応する入力欄311と入力欄312とに入力された入力値が示す印刷条件)は、第2の入力値の一例である。
【0053】
また、図5の例では、画質優先モードで層群が決定される場合、プロセッサー110は、決定された第2~第3層の層群、第4~第5層の層群に含まれる第2~第5層の入力領域310を削除する。そして、図7に示すように、プロセッサー110は、第2~第3層の層群について印刷条件の入力に用いられる入力領域320と、第4~第5層の層群について印刷条件の入力に用いられる入力領域320と、を入力画面300に追加する。図7の例では、第2~第3層の層群については、入力領域設定値Dが入力されている。また、第4~第5層の層群については、設定値Eが入力されている。
【0054】
以上のように、プロセッサー110は、入力画面300を介して、仮想層に含まれる層群、及び、他の単一の層それぞれについて印刷条件の入力を受け付ける。すなわち、プロセッサー110は、入力画面300を介して、印刷層の各層についての印刷条件の入力を受け付ける。受付部111aの機能に係る処理は、受付ステップの一例である。
【0055】
登録部111cは、受付部111aの機能により受け付けられた仮想層の各層の印刷条件の入力値を、仮想層と同じ層構成の印刷層に設定可能な印刷条件プリセット値として記憶媒体130に登録する機能である。
【0056】
プロセッサー110は、登録部111cの機能により、UI部140を介して登録ボタン303の選択を検知した場合、以下の処理を行う。すなわち、プロセッサー110は、入力画面300の各入力領域310の入力欄311、312に入力された印刷条件の入力値を、対応する層の印刷条件として特定する。また、プロセッサー110は、入力画面300の各入力領域320の表示欄321に表示された層群内の各層に対応するインクの種類と、入力欄322に入力された印刷条件の入力値と、を対応する層群の印刷条件の値として特定する。そして、プロセッサー110は、仮想層内の層群、及び、0個以上の他の層それぞれについて、特定した印刷条件の値を、まとめて、仮想層と同じ層構成の印刷層に適用可能な印刷条件プリセット値として、印刷条件設定値130bに含めて記憶媒体130に登録する。
【0057】
なお、プロセッサー110は、登録ボタン303の選択を検知した場合、登録される印刷条件プリセット値の名前の指定を受け付けて、受け付けた名前でこの印刷条件プリセット値を登録してもよい。
【0058】
設定部111dは、印刷層の層群について入力された印刷条件の入力値をこの層群に適用し、印刷層における他層について入力された印刷条件の入力値を他層に適用する機能である。
プロセッサー110は、設定部111dの機能により、印刷条件設定値130bに含まれる印刷条件プリセット値のうち、画像データ130aに設定可能な印刷条件プリセット値をユーザーに提示する。本実施形態では、プロセッサー110は、印刷条件設定値130bに含まれる印刷条件プリセット値のうち、画像データ130aの印刷層と同じ層構成の仮想層についての印刷条件プリセット値をUI部140に表示させる。そして、プロセッサー110は、ユーザーによるUI部140の操作に基づいて、登録部111cの機能により登録された印刷条件プリセット値が選択された場合、この印刷条件プリセット値を画像データ130aが示す印刷層に適用するよう設定する。すなわち、プロセッサー110は、この印刷条件プリセット値に基づいて、印刷層において層群とする部分を特定する。そして、プロセッサー110は、特定した層群の部分に、この印刷条件プリセット値が示す層群プリセット値を、この層群の印刷の際に用いられる印刷条件として適用するよう設定する。また、プロセッサー110は、印刷層において層群と異なる他層それぞれについて、この印刷条件プリセット値が示す他層それぞれの印刷条件を、この他層の印刷の際に用いられる印刷条件として適用するよう設定する。
【0059】
そして、プロセッサー110は、画像データ130aが示す印刷層の印刷の指示を受け付けた場合、この印刷条件プリセット値が示す印刷条件で、印刷層の各層を印刷するよう印刷装置200に指示する。この際、プロセッサー110は、印刷層内の層群に設定された層群プリセット値が示す印刷条件(メディアプロファイル、インクの濃度値、印刷パス数、出力解像度等)で、印刷ヘッド240による1回の走査でこの層群を印刷するよう印刷装置200に指示する。また、プロセッサー110は、印刷層内の他層に設定された印刷条件で、他層を印刷するよう印刷装置200に指示する。設定部111dの機能に係る処理は、設定ステップの一例である。
【0060】
続いて、印刷装置200の機能について説明する。
印刷装置200のプロセッサー210は、記憶媒体230に記憶された印刷実行プログラム211を実行することで、印刷実行部211aとして機能する。
印刷実行部211aは、情報処理装置100からの印刷の指示に応じて、印刷媒体への印刷層の印刷を実行する機能である。プロセッサー210は、印刷実行部211aの機能により、情報処理装置100からの指示に応じて、指定された印刷条件で、画像データ130aが示す印刷層を、印刷媒体に印刷する。プロセッサー210は、層群については、指定された印刷品質で、印刷ヘッド240による1回の走査で形成する。本実施形態では、プロセッサー210は、印刷層に含まれる各層を、下の層から順番に、指定された印刷条件で、印刷媒体に印刷することで、印刷層の印刷を行う。
【0061】
以上、本実施形態では、情報処理装置100は、印刷層から印刷ヘッド240による1回の走査で形成する層群を決定し、層群と他の層とのそれぞれについて、印刷条件の入力を受け付け、印刷層の印刷条件として、受け付けた入力値を設定する。情報処理装置100は、印刷層から層群を決定することで、印刷層の印刷の高速化を実現し、ユーザーにとっての利便性を向上できる。また、情報処理装置100は、層群、他の層毎にユーザーが要望する印刷条件を設定可能となる。すなわち、情報処理装置100は、多層印刷において、層群、他の層毎に印刷条件を設定でき、印刷条件の設定の自由度を向上し、ユーザーにとっての利便性を向上できる。例えば、印刷層に適用可能な予め用意された印刷条件プリセット値にユーザーが要望するものがない場合、情報処理装置100は、ユーザーから印刷層の層毎に別個に印刷条件の入力を受け付けることでユーザーの要望する印刷条件を設定できる。
【0062】
情報処理装置100は、登録したプリセット値を設定した画像データ130aを、印刷装置200を介して印刷できる。ユーザーは、印刷結果を見て、画質や印刷速度、印刷媒体における発色、インクの濃度等が適切かどうかを判断できる。情報処理装置100は、ユーザーが印刷条件を変更したいと要望する場合、再度、入力画面300を介して、印刷層に設定可能な印刷条件の入力値を受け付け、新たな印刷条件プリセット値を登録してもよい。これにより、情報処理装置100は、ユーザーにとってより要望に近い印刷条件プリセット値を用意できる。
【0063】
また、ユーザーが印刷結果の各層の印刷品質に係る条件(インクの濃度値等)を変更したいと要望する場合、情報処理装置100は、以下のようにしてもよい。すなわち、情報処理装置100は、UI部140を介して、ユーザーが要望する印刷品質の値を受け付けて、新たない単層プリセット値を生成してもよい。また、情報処理装置100は、UI部140を介して、生成済みに単層プリセット値のパラメーターを、ユーザーが要望する値に更新する指示を受け付けてもよい。そして、情報処理装置100は、改めて、入力画面300を介した入力値の受け付けの際に、パラメーターが調整された単層の印刷品質のプリセット値を、入力欄312に入力可能な選択肢として提示してもよい。これにより、情報処理装置100は、よりユーザーの要望に近い印刷品質を実現できる。
【0064】
また、本実施形態では、情報処理装置100は、入力欄305に指定された方針に従って、仮想層から層群を決定する。これにより、情報処理装置100は、要望に応じて、層群を決定する方針を切り替えることができ、ユーザーにとっての利便性を向上できる。情報処理装置100は、入力欄305に速度優先が指定された場合、画質優先が指定された場合に比べて、印刷速度を向上させるように、仮想層内に層群を決定できる。また、情報処理装置100は、入力欄305に画質優先が指定された場合、速度優先が指定された場合に比べて、画質の低下を抑制可能なように、仮想層内に層群を決定できる。
【0065】
また、本実施形態では、情報処理装置100は、入力画面300を介して入力された印刷条件の入力値を、仮想層と同じ層構成の印刷層について設定可能な印刷条件プリセット値として登録するとした。一度登録された印刷条件プリセット値は、同じ層構成の異なる印刷層に対しても、何度でも適用可能となる。これにより、印刷条件プリセット値の登録後に、再度、同じ印刷条件を設定する作業を行う必要がなくなり、ユーザーにとっての利便性が向上する。すなわち、情報処理装置100は、ユーザーにとっての利便性を向上できる。
【0066】
また、本実施形態では、印刷ヘッド240において、各種インクを吐出するノズルが副走査方向に異なる位置に配置される。また、印刷ヘッド240は、複数のインクを、同じ走査で吐出することができる。これにより、情報処理装置100は、層群を1つの印刷ヘッド240による1回の走査で形成でき、印刷速度を向上できる。
また、本実施形態では、印刷品質は、インクの濃度値と、印刷速度に関するパラメーターと、を含む。これにより、情報処理装置100は、印刷層の各層についてユーザーの所望のインクの濃度と、印刷速度と、を設定できる。
【0067】
(1-2)登録処理:
図8、9を用いて、情報処理装置100が実行する登録処理を説明する。プロセッサー110は、UI部140を介して登録処理の開始が指示されたタイミングで、図8の処理を開始する。
【0068】
ステップS100において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、UI部140に入力画面300を表示させる。プロセッサー110は、ステップS100の処理の完了後に、処理をステップS105に進める。
ステップS105において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、入力画面300の追加ボタン301の選択を検知したか否かを判定する。プロセッサー110は、追加ボタン301の選択を検知したと判定した場合、処理をステップS110に進める。プロセッサー110は、追加ボタン301の選択を検知していないと判定した場合、処理をステップS115に進める。
【0069】
ステップS110において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、仮想層の最上層の上に層を1つ追加するとして、追加された層に対応する入力領域310を入力画面300内に追加して表示する。プロセッサー110は、ステップS110の処理の完了後に、処理をステップS115に進める。
【0070】
ステップS115において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、入力画面300の削除ボタン302の選択を検知したか否かを判定する。プロセッサー110は、削除ボタン302の選択を検知したと判定した場合、処理をステップS120に進める。プロセッサー110は、削除ボタン302の選択を検知していないと判定した場合、処理をステップS125に進める。
【0071】
ステップS120において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、仮想層の最上層を削除するとして、削除した層に対応する入力領域310を入力画面300から削除する。プロセッサー110は、ステップS120の処理の完了後に、処理をステップS125に進める。
【0072】
ステップS125において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、各入力領域310について、入力欄311へのインクの種類の入力を受け付ける。プロセッサー110は、ステップS125の処理の完了後に、処理をステップS130に進める。
【0073】
ステップS130において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、入力欄305への層群の決定の方針の入力を受け付ける。プロセッサー110は、ステップS130の処理の完了後に、処理をステップS135に進める。
【0074】
ステップS135において、プロセッサー110は、層群決定部111bの機能により、チェックボックス304の選択を検知したか否かを判定する。プロセッサー110は、チェックボックス304の選択を検知したと判定した場合、処理をステップS140に進め、チェックボックス304の選択を検知していないと判定した場合、処理をステップS160に進める。
【0075】
ステップS140において、プロセッサー110は、プロセッサー110は、層群決定部111bの機能により、チェックボックス304にチェックが入力されたか否かを判定する。プロセッサー110は、プロセッサー110は、チェックボックス304にチェックが入力されたと判定した場合、処理をステップS145に進め、チェックボックス304からチェックが解除されたと判定した場合、処理をステップS150に進める。
【0076】
ステップS145において、プロセッサー110は、層群決定部111bの機能により、入力欄305に入力された方針に対応するモードで、仮想層から、印刷ヘッド240による1回の走査で形成される層群を決定する。図9のフローチャートを用いて、ステップS145の処理の詳細を説明する。
【0077】
ステップS200において、プロセッサー110は、層群決定部111bの機能により、記憶媒体130に記憶される各層群プリセット値を適用可能な層群を、仮想層内に決定される層群の候補として特定する。本実施形態では、プロセッサー110は、カラー・ホワイト層群、ホワイト・カラー層群、カラー・バーニッシュ層群、ホワイト・カラー・バーニッシュ層群の4つの層群を特定する。プロセッサー110は、ステップS200の処理の完了後に、処理をステップS205に進める。
【0078】
ステップS205において、プロセッサー110は、層群決定部111bの機能により、ステップS200で特定した候補それぞれについて、以下のように仮想層内に決定する優先度を決定する。
入力欄305に速度優先が指定された速度優先モードにおいては、プロセッサー110は、以下のようにする。すなわち、プロセッサー110は、層数が多い候補ほど優先度を高くする。また、プロセッサー110は、層数が同じ候補同士については、前方向プリセット値に対応する候補について、後方向プリセット値に対応する候補よりも優先度を高くする。また、プロセッサー110は、層数が同じである前方向プリセット値に対応する候補同士、又は、層数が同じである後方向プリセット値に対応する候補同士については、バーニッシュインク層を含まない候補について、バーニッシュインク層を含む候補よりも優先度を高くする。本実施形態では、プロセッサー110は、ホワイト・カラー・バーニッシュ層群である候補の優先度を最も高く決定する。また、プロセッサー110は、ホワイト・カラー層群である候補の優先度を2番目に高く決定する。また、プロセッサー110は、カラー・バーニッシュ層群である候補の優先度を3番目に高く決定する。また、プロセッサー110は、カラー・ホワイト層群である候補の優先度を最も低く決定する。
【0079】
また、入力欄305に画質優先が指定された画質優先モードにおいては、プロセッサー110は、以下のようにする。すなわち、プロセッサー110は、層数が2つの層群である候補を、3層の層群である候補よりも優先度を高くする。また、プロセッサー110は、層数が同じ候補同士については、前方向プリセット値に対応する候補について、後方向プリセット値に対応する候補よりも優先度を高くする。また、プロセッサー110は、層数が同じで前方向プリセット値に対応する補同士、又は、層数が同じで後方向プリセット値に対応する候補同士については、バーニッシュインク層を含まない候補について、バーニッシュインク層を含む候補よりも優先度を高くする。本実施形態では、プロセッサー110は、ホワイト・カラー層群である候補の優先度を最も高く決定する。また、プロセッサー110は、カラー・バーニッシュ層群である候補の優先度を2番目に高く決定する。また、プロセッサー110は、カラー・ホワイト層群である候補の優先度を3番目に高く決定する。また、プロセッサー110は、ホワイト・カラー・バーニッシュ層群である候補の優先度を最も低く決定する。
プロセッサー110は、ステップS205の処理の完了後に、処理をステップS210に進める。
【0080】
ステップS210において、プロセッサー110は、層群決定部111bの機能により、ステップS205で優先度を決定した候補のうち、選択候補として選択済みでなく、最も優先度の高い候補を選択候補として選択する。プロセッサー110は、ステップS210の処理の完了後に、処理をステップS215に進める。
【0081】
ステップS215において、プロセッサー110は、層群決定部111bの機能により、仮想層の中で層群として決定されていない部分から、選択候補と同じ層構成の部分を全て特定する。そして、プロセッサー110は、特定した部分を層群として決定する。プロセッサー110は、仮想層の中で層群として決定されていない部分に、選択候補と同じ層構成の部分がない場合、層群を決定しない。プロセッサー110は、ステップS210の処理の完了後に、処理をステップS220に進める。
【0082】
ステップS220において、プロセッサー110は、層群決定部111bの機能により、ステップS200で特定した候補全てを選択候補として選択済みか否かを判定する。プロセッサー110は、ステップS200で特定した候補全てを選択候補として選択済みと判定した場合、図9の処理を完了し、処理を図8のステップS150に進める。プロセッサー110は、ステップS200で特定した候補の中に選択候補として選択していない候補が存在すると判定した場合、処理をステップS210に進める。図9の処理は、層群決定ステップの一例である。
【0083】
図8の説明に戻る。
ステップS150において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、入力画面300から、ステップS145で決定された層群に含まれる層の入力領域310を削除し、決定した層群についての印刷条件の入力に用いられる入力領域320を追加する。プロセッサー110は、ステップS150の処理の完了後に、処理をステップS160に進める。
【0084】
ステップS155において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、入力画面300から、入力領域320を削除し、削除した入力領域320に対応する層群に含まれる各層についての入力領域310を追加する。プロセッサー110は、ステップS155の処理の完了後に、処理をステップS160に進める。
【0085】
ステップS160において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、各入力領域310について、入力欄312への印刷品質の値の入力を受け付ける。また、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、各入力領域320について、入力欄322への印刷品質の値の入力を受け付ける。プロセッサー110は、ステップS160の処理の完了後に、処理をステップS165に進める。
【0086】
ステップS165において、プロセッサー110は、受付部111aの機能により、入力画面300の登録ボタン303の選択を検知したか否かを判定する。プロセッサー110は、登録ボタン303の選択を検知したと判定した場合、処理をステップS170に進める。プロセッサー110は、登録ボタン303の選択を検知していないと判定した場合、処理をステップS105に進める。
【0087】
ステップS170において、プロセッサー110は、登録部111cの機能により、入力画面300の各入力領域310の入力欄311、312に入力された仮想層の各他層の印刷条件の入力値と、各入力領域320の入力欄322に入力された各層群の印刷条件の入力値と、を、仮想層と同じ層構成の印刷層について設定可能な印刷条件プリセット値として、印刷条件設定値130bに含めて記憶媒体130に登録する。
【0088】
(5)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、上述の各実施形態においては、情報処理装置100と印刷装置200とが異なる装置によって構成されているが、両者は同一の装置として構成されてもよい。例えば、印刷装置200に情報処理装置100の各機能が実装されてもよい。また、情報処理装置100は、複数の装置によって構成されてもよい。また、図8に示すフローチャートの処理順は異なっていてもよい。例えば、ステップS105~ステップS110の処理と、ステップS115~ステップS120の処理と、の順番が入れ替わってもよい。
【0089】
上述の各実施形態では、プロセッサー110は、入力画面300を介して仮想層について印刷条件の入力値を受け付け、受け付けた入力値を印刷条件プリセット値として記憶媒体130に登録する。そして、プロセッサー110は、画像データ130aに設定可能な印刷条件の値として、登録した印刷条件プリセット値を提示し、この印刷条件プリセット値が選択された場合、画像データ130aにこの印刷条件プリセット値を設定する。
ただし、プロセッサー110は、入力画面300を介して受け付けた入力値を、印刷条件プリセット値として登録しなくてもよい。その場合、例えば、プロセッサー110は、入力画面300を介して受け付けた印刷条件の入力値を、直接、画像データ130aの印刷層に適用するよう設定してもよい。
【0090】
また、上述の各実施形態では、カラーインクは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクであるとした。ただし、カラーインクは、シアン、マゼンタ、イエロー、の3色のインクであるとしてもよい。
また、上述の各実施形態では、特色インクは、ホワイトインクとバーニッシュインクであるとした。ただし、特色インクは、蛍光インク、メタルインク等の他のインクを含んでもよい。
【0091】
また、上述の実施形態では、プロセッサー110は、予め用意された層群プリセット値が適用できる層群全てを、仮想層内に決定される層群の候補として特定し、仮想層内から特定した候補と同じ層構成の部分を層群として特定するとした。ただし、プロセッサー110は、他の方法で、層群を決定してもよい。
例えば、プロセッサー110は、画質優先モードにおいて、予め用意された層群プリセット値のうち、印刷画質が最も高いものを特定する。そして、プロセッサー110は、特定した層群プリセット値を適用できる層群のうち、カラーインク層を含む層群を、仮想層内に決定される層群の候補として特定する。そして、プロセッサー110は、特定した候補について、優先度を決定する。例えば、プロセッサー110は、層数が多い候補ほど優先度を高くする。プロセッサー110は、優先度が高い順に、候補から選択候補を1つずつ選択し、仮想層内から選択候補と同じ層構成の部分を特定し、特定し部分を層群として決定してもよい。また、プロセッサー110は、決定した層群に対応する入力領域320の入力欄322に、印刷画質が最も高い層群プリセット値を入力してもよい。これにより、プロセッサー110は、カラーインク層を含む層群に最高の印刷画質の印刷品質を適用できるようになるので、カラーインク層の画像の印刷画質が低下する事態を低減できる。
【0092】
また、上述の実施形態では、プロセッサー110は、画質優先モードにおいて、バーニッシュインク層を含む層群についても、仮想層内に決定される層群の候補として特定するとした。ただし、プロセッサー110は、画質優先モードにおいて、バーニッシュインク層を含む層群については、仮想層内に決定される層群の候補として特定しないこととしてもよい。これにより、プロセッサー110は、バーニッシュインク層を、仮想層内に決定する層群に含める対象としない。結果として、プロセッサー110は、層群に既定の水準以上の印刷画質の印刷品質が適用不可となり、層群内のバーニッシュインク層以外の層の印刷結果の画質が低下するという事態を低減できる。また、その場合でも、プロセッサー110は、速度優先モードにおいては、バーニッシュインク層を含む層群を、仮想層内に決定される層群の候補として特定してもよい。これにより、プロセッサー110は、バーニッシュインク層を、仮想層内に決定する層群に含める対象とする。この場合、プロセッサー110は、仮想層内に、バーニッシュインク層を含むか否かに関わらず層群を決定する。結果として、プロセッサー110は、より多くの層を、層群とすることができ、印刷の高速化に寄与できる。
【0093】
また、プロセッサー110は、画質優先モードにおいて、ホワイトインク層等のバーニッシュインク層と異なる特色インク層についても、仮想層内に決定する層群に含める対象としないようにしてもよい。この場合、例えば、プロセッサー110は、既定の特色インク層を含む層群については、仮想層内に決定される層群の候補として特定しないでもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、プロセッサー110は、入力欄305に指定された方針に応じたモードで、印刷層として想定される仮想層から層群を決定するとした。ただし、プロセッサー110は、入力欄305に指定された方針によらず、既定のモード(例えば、速度優先モード、画質優先モード等)で、層群を決定してもよい。その場合、入力画面300は、入力欄305を含まないとしてもよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、プロセッサー110は、入力欄305に指定された方針に応じて、印刷層として想定される仮想層から、層群として決定できる部分を、全て層群として決定するとした。ただし、プロセッサー110は、印刷層として想定される仮想層から、少なくとも1つの層群を決定するとしてもよい。
【0096】
さらに、本発明は、コンピューターが実行するプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置が備える部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリーであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
また、上記の実施形態は、発明を限定するものではない。実施形態には、効果を異にする複数の発明が含まれているため、実施形態中から読み取れる1の課題や効果は実施形態に含まれる全ての発明にとっての課題や効果であるというわけではない。
【符号の説明】
【0097】
100…情報処理装置、110…プロセッサー、111…設定プログラム、111a…受付部、111b…層群決定部、111c…登録部、111d…設定部、120通信部、130…記憶媒体、130a…画像データ、130b…印刷条件設定値、140…UI部、200…印刷装置、210…プロセッサー、211…印刷実行プログラム、211a…印刷実行部、220…通信部、230…記憶媒体、240…印刷ヘッド、241…吐出部、242…照射部、300…入力画面、301…追加ボタン、302…削除ボタン、303…登録ボタン、304…チェックボックス、305…入力欄、310…入力領域、311…入力欄、312…入力欄、320…入力領域、321…表示欄、322…入力欄
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9