(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173410
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】配管経路作成装置
(51)【国際特許分類】
G01C 7/06 20060101AFI20231130BHJP
F16L 55/32 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01C7/06
F16L55/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085649
(22)【出願日】2022-05-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成2018年度~2020年度、国土交通省・下水道技術研究開発(GAIAプロジェクト)委託研究「トルク感知可能な能動関節機構およびSLAM技術を搭載した防水ヘビ型管路検査移動ロボットの開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】加古川 篤
(72)【発明者】
【氏名】馬 書根
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 千大
(57)【要約】
【課題】配管経路を正確に作成することができる配管経路作成装置を提供する。
【解決手段】配管内を移動する牽引車1の移動距離を検出するロータリエンコーダ9と、
牽引車1の配管内での姿勢を検出する慣性計測装置11と、
ロータリエンコーダ9にて検出した移動距離と、慣性計測装置11にて検出した姿勢に基づいて、配管内での牽引車1の現在の座標位置を算出するマイコン12と、
マイコン12にて算出された現在の座標位置を結ぶことにより、配管経路を作図するPC20と、
PC20にて作図される配管経路のうち、曲管部分を予め決定されている角度に置き換えて作図できるような補正データを生成するマイコン12と、を有してなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内を移動する移動装置の移動距離を検出する移動距離検出手段と、
前記移動装置の前記配管内での姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記移動距離検出手段にて検出した移動距離と、前記姿勢検出手段にて検出した姿勢に基づいて、前記配管内での前記移動装置の現在の座標位置を算出する座標位置算出手段と、
前記座標位置算出手段にて算出された現在の座標位置を結ぶことにより、前記配管経路を作図する作図手段と、
前記作図手段にて作図される前記配管経路のうち、曲管部分を予め決定されている角度に置き換えて作図できるような補正データを生成する補正データ作成手段と、を有してなる配管経路作成装置。
【請求項2】
前記補正データ作成手段は、
前記曲管部分を予め決定されている角度に置き換える際の開始地点と終了地点を決定し、さらに、前記曲管部分をどの方向に曲げるのかの方向を決定することによって、前記補正データを生成してなる請求項1に記載の配管経路作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管経路作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管の内部にロボットを進入させて配管の内部を検査し、そのロボットの配管の内部での位置を正確に推定する配管検査ロボットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような配管検査ロボットは、配管経路を正確に作成することができないという問題があった。この点、詳しく説明すると、現在、ガス管、水道管、プラントなどの配管設備の図面が存在しないケースが多数存在している。多くの配管は、1960年代~1970年代に敷設され、高度経済成長による急速な発展とそれに伴う人手不足により図面などの記録がなおざりになっていた。そのため、大まかな配管の敷設・埋設場所は分かっていても、詳細な経路は不明であることが多い。この問題は重大で、配管メンテナンス作業時に補修・交換工事などが非効率化してしまうだけでなく、電気やインターネット回線などの別の工事にも影響を与えてしまう恐れがあるという問題があった。しかしながら、配管設備の図面を作成するために、地面を掘り返したり、建物を全て解体して配管図面を作成し直すことは多大な時間と労力を要するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、配管経路を正確に作成することができる配管経路作成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に係る配管経路作成装置は、配管(K)内を移動する移動装置(例えば、牽引車1)の移動距離を検出する移動距離検出手段(ロータリエンコーダ9)と、
前記移動装置(例えば、牽引車1)の前記配管(K)内での姿勢を検出する姿勢検出手段(慣性計測装置11)と、
前記移動距離検出手段(ロータリエンコーダ9)にて検出した移動距離と、前記姿勢検出手段(慣性計測装置11)にて検出した姿勢に基づいて、前記配管(K)内での前記移動装置(例えば、牽引車1)の現在の座標位置を算出する座標位置算出手段(マイコン12)と、
前記座標位置算出手段(マイコン12)にて算出された現在の座標位置を結ぶことにより、前記配管(K)経路を作図する作図手段(PC20)と、
前記作図手段(PC20)にて作図される前記配管(K)経路のうち、曲管(Ka)部分を予め決定されている角度に置き換えて作図できるような補正データを生成する補正データ作成手段(マイコン12)と、を有してなることを特徴としている。
【0008】
請求項2に係る配管経路作成装置は、上記請求項1に記載の配管経路作成装置において、前記補正データ作成手段(マイコン12)は、
前記曲管(Ka)部分を予め決定されている角度に置き換える際の開始地点と終了地点を決定し、さらに、前記曲管(Ka)部分をどの方向に曲げるのかの方向を決定することによって、前記補正データを生成してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、座標位置算出手段(マイコン12)にて算出された現在の座標位置を結ぶことにより、作図手段(PC20)にて配管(K)経路を作図する。そして、作図手段(PC20)にて作図される配管(K)経路のうち、曲管(Ka)部分を予め決定されている角度に置き換えて作図できるような補正データを生成することによって、曲管(Ka)部分を予め決定されている角度に置き換えて作図できるから、配管(K)経路を正確に作成することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、補正データ作成手段(マイコン12)は、曲管(Ka)部分を予め決定されている角度に置き換える際の開始地点と終了地点を決定し、さらに、曲管(Ka)部分をどの方向に曲げるのかの方向を決定することによって、補正データを生成しているから、正確な曲管(Ka)の経路を作図することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る配管経路作成装置が有する牽引車の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る牽引車が配管内に配置されている状態を示し、(a)は、側面図、(b)は、正面図である。
【
図3】同実施形態に係る牽引車を上方向から見た斜視図である。
【
図4】同実施形態に係るロータリエンコーダと、慣性計測装置と、マイコンと、PCとの電気的な接続関係を示すブロック図である。
【
図5】配管経路の作図方法を説明する説明図である。
【
図6】曲管が90度方向に曲がっているものとして置き換えることを説明する説明図である。
【
図7】曲管が90度方向に曲がっているものとして置き換える際の開始点と終了点を決定する方法を説明する説明図である。
【
図8】曲管がどの方向に曲がっているのかを決定する方法を説明する説明図である。
【
図9】曲管が90度方向に曲がっているものとして置き換える際の処理方法を説明するフローチャート図である。
【
図10】j+1番目の配管の方向が一意に決まった後、牽引車の走行開始時、Z軸周りに、進行方向の誤差α
iだけ回転させて牽引車の姿勢を補正することを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る配管経路作成装置を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0014】
<配管経路作成装置の説明>
本実施形態に係る配管経路作成装置は、上記説明した従来の配管検査ロボットに牽引されるセンシングユニットで構成されてなるものである。具体的に説明すると、配管経路作成装置は、
図1に示すような、牽引車1を備えている。この牽引車1は、
図2に示すように、配管K内を牽引されるもので、
図1に示すように、V字状に形成されており、1輪で構成されている前輪車2と、1輪で構成されている後輪車3と、で構成されている。この前輪車2は、
図1及び
図2(a)に示すように、側面視、横長半楕円状の前輪車支持部4に回転可能に支持されている。そして、後輪車3は、
図1及び
図2(a)に示すように、側面視、横長半楕円状の後輪車支持部5に回転可能に支持されている。なお、前輪車2と後輪車3とは、受動輪の役割を担うものである。
【0015】
かくして、このような前輪車支持部4の端部及び後輪車支持部5の端部には、それぞれ、
図1及び
図2(a)に示すように回転軸6aが回転可能なように取り付けられている。これにより、前輪車支持部4と後輪車支持部5が取り付け固定されている。
【0016】
一方、この回転軸6aには、
図1に示すように、一対の受動輪6が取り付けられている。この一対の受動輪6間には、前回転部材7と、後回転部材8とが、回転軸6aに回転可能に取り付けられている。これにより、前回転部材7と、後回転部材8とは、回転軸6a周りを回転できるようになっている。そして、この前回転部材7と、後回転部材8とが、回転軸6a周りを回転した際、元に戻ることができるように、
図3に示すように、回転軸6aには、コイルばね6a1が巻き付けられている。
【0017】
ところで、この前回転部材7には、
図2(a)に示すように、コネクタ7aが設けられており、このコネクタ7aには、
図1に示すケーブル7bが差し込み可能となっている。このケーブル7bは、上記説明した従来の配管検査ロボットに接続されるもので、これによって、配管検査ロボットが自走すると、それに合わせて、前輪車2と後輪車3とが回転し、牽引車1が配管検査ロボットに牽引されることとなる。
【0018】
一方、後回転部材8には、
図2(a)に示すように、コネクタ8aが設けられており、このコネクタ8aには、
図1に示すケーブル8bが差し込み可能となっている。このケーブル8bは、配管Kの外に配置されるPC(Personal Computer)20(
図4参照)に接続されている。
【0019】
かくして、このように構成される牽引車1には、
図3に示すように、前輪車支持部4内にロータリエンコーダ9が配置されている。このロータリエンコーダ9は、
図3に示すように、ロータリエンコーダ9の歯車9aが、前輪車2の駆動軸2aの回転に伴って回転する歯車10に噛み合っている。これにより、ロータリエンコーダ9は、前輪車2の回転数を検出することができる。
【0020】
さらに、牽引車1には、
図2(a)及び
図3に示すように、前輪車支持部4内に慣性計測装置11(IMU(Inertial Measurement Unit))が配置されている。この慣性計測装置11は、3次元の慣性運動(直行3軸方向の並進運動および回転運動)を検出するもので、加速度センサにより並進運動を、角速度(ジャイロ)センサにより回転運動を検出するものである。これにより、牽引車1の姿勢、すなわち、上記説明した従来の配管検査ロボットの姿勢を検出することができる。
【0021】
またさらに、牽引車1には、
図2(a)及び
図3に示すように、後輪車支持部5内にマイコン12が配置されている。このマイコン12は、
図4に示すように、ロータリエンコーダ9からの信号、及び、慣性計測装置11からの信号を受信することができるものである。そして、このマイコン12は、ロータリエンコーダ9からの信号を受信、又は、慣性計測装置11からの信号を受信することで、所定の処理を行い、その処理された信号を、
図1に示すケーブル8bを介して、配管Kの外に配置されるPC20に出力するものである。なお、以下、詳しく説明するが、この処理された信号に基づいて、PC20は、配管Kの経路を作図できることとなる。
【0022】
<配管経路作成装置の使用例の説明>
次に、上記のように構成される配管経路作成装置を使用する使用例を説明することとする。
【0023】
まず、
図2(a)に示す慣性計測装置11のセンサ座標系Sにおける牽引車1(上記説明した従来の配管検査ロボット)の進行方向は、以下の数式を用いて、マイコン12によって算出される。
【0024】
【0025】
【0026】
θは、
図2(a)に示すセンサ座標のx軸と、進行方向ベクトルu
imuがなす角度であり、D
p(
図2(b)参照)は、配管Kの直径であり、D
w(
図2(a)参照)は、前輪車2又は後輪車3の直径であり、L(
図2(a)参照)は、前輪車2又は後輪車3から、受動輪6までの距離、W(
図2(b)参照)は、牽引車1の幅である。
【0027】
次いで、絶対座標系Eにおける牽引車1(上記説明した従来の配管検査ロボット)の進行方向は、以下の数式を用いて、マイコン12によって算出される。
【0028】
【0029】
かくして、このように算出されたi回目のサンプリングにおける進行方向ベクトルを以下の数式に当てはめることにより、マイコン12は、牽引車1(上記説明した従来の配管検査ロボット)の現在位置を算出することができる。
【0030】
【0031】
Piは、i回目のサンプリングにおける現在位置の座標を示し、diは、ロータリエンコーダ9から受信した信号に基づいて算出される単位時間における走行距離である。
【0032】
かくして、このように算出された現在位置の座標を、マイコン12は、
図1に示すケーブル8bを介して、配管Kの外に配置されるPC20(
図4参照)に出力する。これにより、PC20は、
図5に示すように、現在位置座標を結ぶことで総走行距離を算出することができるため、配管Kの経路の作図が可能となる。したがって、このような回転行列を用いた手法を採用することにより、簡単に配管Kの経路の作図が可能となる。
【0033】
ところで、本実施形態においては、慣性計測装置11から受信した信号に基づいて推定された牽引車1(上記説明した従来の配管検査ロボット)の姿勢を、マドヴィックフィルタを使用して算出しているが、これは、慣性計測装置11から受信した信号だけでは、誤差が大きく、使用に耐え得るもので無いためである。そのため、誤差を最小限にするため、マドヴィックフィルタを使用している。
【0034】
しかしながら、配管Kには、
図5に示すように、必ず、曲管Kaが存在する。この曲管Kaは、マドヴィックフィルタを使用しても、どうしても誤差が生じ、正確な曲管Kaの経路を作図することができない。
【0035】
そこで、本実施形態においては、配管Kの規格として、多くの配管Kの曲管Kaが90度方向の分岐のみで構成されていることに着目し、曲管Kaの補正を行うようにしている。すなわち、
図6に示すように、j番目の配管Kの配管方向ベクトルu
s,jとし、j+1番目の配管Kの配管方向ベクトルu
s,j+1とした際、j番目の配管Kの曲管Kaにおける牽引車1(上記説明した従来の配管検査ロボット)の走行時の計測を、曲管Kaが90度方向に曲がっているものとして置き換えるというものである。この点、以下、
図7~
図9を用いて詳しく説明することとする。
【0036】
まず、マイコン12は、
図9に示すように、牽引車1の現在の角度を算出する(ステップS1)。具体的には、
図7に示すj番目の配管Kに牽引車1が侵入した際と、現在の進行方向ベクトルのu
E,j,u
E,iとがなす角度を、マイコン12は、以下の数式を用いて算出する。これにより、牽引車1の現在の角度を算出できることとなる。なお、進行方向の変化は牽引車1の姿勢に依存しないため、応答性を考慮し、マイコン12は、u
E,iを、慣性計測装置11の角速度(ジャイロ)センサのみから算出するようにしている。
【0037】
【0038】
次いで、
図9に示すように、マイコン12は、算出した牽引車1の現在の角度と、現在位置(上記説明した数式4を用いて算出)から0.05m前に算出した牽引車1の角度との差分を取る(ステップS2)。そして、この差分が5度以上でなければ(ステップS2:No)、ステップS1の処理に戻り、この差分が5度以上であれば(ステップS2:Yes)、ステップS3の処理に移行する。
【0039】
次いで、
図9に示すように、マイコン12は、直近0.1mの区間、すなわち、現在位置(上記説明した数式4を用いて算出)を含む前後0.1m区間(
図7に示すA矢印部分参照)における角度変化の極小値から、置き換えの開始点P
e,j(
図7参照)を決定する(ステップS3)。これにより、曲管Kaの補正開始位置が決定されることとなる。
【0040】
次いで、
図9に示すように、マイコン12は、上記説明した数式5を用いて、牽引車1の現在の角度を算出する(ステップS4)。そして、マイコン12は、この算出した現在の角度が75度以上か否かを確認する(ステップS5)。現在の角度が75度以上でなければ(ステップS5:No)、ステップS4の処理に戻り、現在の角度が75度以上であれば(ステップS5:Yes)、ステップS6の処理に移行する。
【0041】
次いで、
図9に示すように、マイコン12は、算出した牽引車1の現在の角度と、現在位置(上記説明した数式4を用いて算出)から0.05m前に算出した牽引車1の角度との差分を取る(ステップS6)。そして、この差分が1度以下でなければ(ステップS6:No)、ステップS4の処理に戻り、この差分が1度以下であれば(ステップS6:Yes)、ステップS7の処理に移行する。
【0042】
次いで、
図9に示すように、マイコン12は、直近0.1mの区間、すなわち、現在位置(上記説明した数式4を用いて算出)を含む前後0.1m区間(
図7に示すB矢印部分参照)における角度変化の極大値から、置き換えの終了点P
s,j+1(
図7参照)を決定する(ステップS7)。これにより、曲管Kaの補正終了位置が決定されることとなる。
【0043】
かくして、このようにすれば、曲管Kaの補正開始位置と補正終了位置が決定されることとなる。
【0044】
次いで、
図9に示すように、マイコン12は、ステップS7の処理を終えた後、配管方向ベクトルの決定を行う(ステップS8)。具体的には、
図7に示すj+1番目の配管Kの方向を決定する。この点、更に詳しく説明すると、マイコン12は、まず、以下の数式を用いて、
図8に示すベクトルv
s,iの算出を行う。
【0045】
【0046】
そして、本実施形態において、
図7に示すj番目の配管Kの方向は、+Y軸方向であるから、
図8に示すベクトルv
s,iと、Z軸とがなす角φ
sによって、j+1番目の配管Kの方向を決定する。すなわち、マイコン12は、以下の数式を用いて、角φ
sの値を算出する。
【0047】
【0048】
Rは、2つの直交軸を導出するための行列であり、本実施形態においては、以下のように定義することができる。
【0049】
【0050】
次に、マイコン12は、算出した角φ
sの値が、どの閾値に該当するかを確認する。すなわち、本実施形態において、
図7に示すj番目の配管Kの方向が、+Y軸方向であるから、j+1番目の配管Kの方向は、
図8に示すように、+Z軸方向、-Z軸方向、+X軸方向、-X軸方向の何れかである。そのため、
図8に示すような閾値を設定しておき、どの範囲に該当するかを確認する。具体的には、
図8に示すように、0≦φ
s<π/4、又は、-π/4≦φ
s<0であれば、j+1番目の配管Kの方向は、+Z軸方向、π/4≦φ
s<3π/4であれば、j+1番目の配管Kの方向は、-X軸方向、3π/4≦φ
s<π、又は、-π≦φ
s<-3π/4であれば、j+1番目の配管Kの方向は、-Z軸方向、-3π/4≦φ
s<-π/4であれば、j+1番目の配管Kの方向は、+X軸方向となる。したがって、本実施形態においては、
図7に示すようにj+1番目の配管Kの方向は、+X軸方向であるから、φ
sの値は、-3π/4≦φ
s<-π/4内にあることとなる。なお、本実施形態においては、j番目の配管Kの方向が+Y軸方向であることを例に説明したが、-Y方向、±X方向、±Z方向の何れにも適用できることは言うまでもなく、閾値の関しては、想定される全ての方向に合わせて、予め閾値を設定しておけば良い。
【0051】
かくして、このようにして、算出した角φ
sの値が、どの閾値に該当するかを確認した後、マイコン12は、曲管Kaをどの方向(本実施形態においては、+X軸方向)に90度曲げるかの情報、及び、曲管Kaの補正開始位置と補正終了位置の情報を、
図1に示すケーブル8bを介して、配管Kの外に配置されるPC20(
図4参照)に出力する。これにより、PC20は、
図5を用いて説明した現在位置座標を結ぶことで作図していた曲管Kaの経路部分を、強制的に+X軸方向に90度曲げた曲管の経路に置き換えて作図することとなる。
【0052】
かくして、マイコン12は、上記ステップS8の処理を終えた後、再び、ステップS1の処理に戻り、処理を繰り返すこととなる。したがって、このようにすれば、正確な曲管Kaの経路を作図することが可能となる。
【0053】
したがって、以上説明してきた本実施形態に係る配管経路作成装置によれば、配管経路を正確に作成することができる。
【0054】
<変形例の説明>
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、
図10に示すように、j+1番目の配管Kの方向が一意に決まった後、牽引車1の走行開始時、マイコン12によって、Z軸周りに、進行方向の誤差α
iだけ回転させて、牽引車1(上記説明した従来の配管検査ロボット)の姿勢を補正するようにしても良い。これは、慣性計測装置11の加速度センサによる姿勢補正では、重力方向周りの推定誤差が生じる可能があるためである。そのため、このような補正をするようにしても良い。なお、誤差α
iは、以下の数式9~11を用いて算出される。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
また、本実施形態においては、牽引車1にロータリエンコーダ9、慣性計測装置11、マイコン12を配置する例を示したが、それに限らず、上記説明した従来の配管検査ロボットに配置するようにしても良い。しかしながら、従来の配管検査ロボットは自走するため、この従来の配管検査ロボットがスリップした際、実際は、進んでいないのに、ロータリエンコーダ9が進んだとして、回転を検出してしまう可能性がある。そのため、本実施形態のように、自走しない牽引車1に配置するようにすれば、従来の配管検査ロボットがスリップしたとしても、進んでいなければ、牽引車1の前輪車2と、後輪車3は回転しないため、ロータリエンコーダ9が進んだとして、回転を検出してしまう可能性はない。そのため、自走しない牽引車1に配置するのが好ましい。
【0059】
また、本実施形態においては、前輪車2と、後輪車3とをそれぞれ1輪で構成する例を示したが、それに限らず、2輪で構成するようにしても良い。しかしながら、1輪で構成するのが好ましい。2輪で構成すると、牽引車1が曲管Kaに侵入した際、曲管Kaに引っ掛かりやすいという欠点がある。そのため、スムーズに曲管Kaに侵入できるように、前輪車2と、後輪車3とをそれぞれ1輪で構成するのが好ましい。
【0060】
また、本実施形態においては、曲管Kaが90度方向に曲がっているものを前提に説明したが、45度方向に曲がっているものにも対応可能である。この場合、
図8では、閾値をπ/4ずつ分割する例を示したが、π/8ずつ分割するようにすれば良い。
【0061】
また、本実施形態においては、マイコン12から、ケーブル8bを介して、配管Kの外に配置されるPC20に出力する例を示したが、それに限らず、無線によって、PC20にデータを出力するようにしても良い。
【0062】
また、本実施形態において例示した曲管Kaをどの方向に90度曲げるかの情報、及び、曲管Kaの補正開始位置と補正終了位置の情報の作成方法は、あくまで一例であり、どのような方法でも良い。
【符号の説明】
【0063】
1 牽引車(移動装置)
9 ロータリエンコーダ(移動距離検出手段)
11 慣性計測装置(姿勢検出手段)
12 マイコン(座標位置算出手段、補正データ作成手段)
20 PC(作図手段)
K 配管
Ka 曲管