(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173430
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】破砕装置及び破砕方法
(51)【国際特許分類】
B02C 13/286 20060101AFI20231130BHJP
B02C 23/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B02C13/286 ZAB
B02C23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085683
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】石橋 規史
【テーマコード(参考)】
4D065
4D067
【Fターム(参考)】
4D065AA02
4D065AA09
4D065BB03
4D065BB12
4D065EB02
4D065EB20
4D065ED06
4D065ED16
4D065ED23
4D065ED35
4D065EE07
4D065EE13
4D067EE01
4D067EE02
4D067EE38
4D067EE45
4D067GA10
4D067GA20
(57)【要約】
【課題】開度調整が可能なロールフィーダを用いて破砕対象物を搬送する破砕装置において、開度調整に伴うロールフィーダを駆動する要素の過負荷を抑制する。
【解決手段】破砕装置は、破砕機と、油圧モータ37と、ロールフィーダと、位置センサ43と、制御装置41と、を備える。油圧モータ37は、回転駆動力を発生させる。ロールフィーダは、搬送面及び供給ロール12を有し、供給ロール12は油圧モータ37により回転駆動され、搬送面と供給ロール12とで破砕対象物を挟み込んで破砕機に向けて搬送する。位置センサ43は、搬送面から供給ロール12までの距離である開度を検出する。制御装置41は、位置センサ43を用いて検出された開度が狭くなる方向に変化した場合に、供給ロール12の回転速度を下げる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕対象物を破砕する破砕機と、
回転駆動力を発生させるモータと、
搬送面及び供給ロールを有し、前記供給ロールは前記モータにより回転駆動され、前記搬送面と前記供給ロールとで前記破砕対象物を挟み込んで前記破砕機に向けて搬送するロールフィーダと、
前記搬送面から前記供給ロールまでの距離である開度を検出するための開度センサと、
前記開度センサを用いて検出された前記開度が狭くなる方向に変化した場合に、前記供給ロールの回転速度を下げる制御装置と、
を備える破砕装置。
【請求項2】
請求項1に記載の破砕装置であって、
前記制御装置は、前記開度センサを用いて検出された前記開度が広くなる方向に変化した場合に、前記供給ロールの回転速度を上げる破砕装置。
【請求項3】
請求項1に記載の破砕装置であって、
油圧ポンプを備え、
前記モータは、前記油圧ポンプが吐出した作動油を用いて回転駆動力を発生させる油圧モータであり、
前記制御装置は、前記開度センサを用いて検出された前記開度が狭くなる方向に変化した場合に、前記油圧ポンプの作動油吐出量を減少させることで前記供給ロールの回転速度を下げる破砕装置。
【請求項4】
請求項3に記載の破砕装置であって、
前記油圧ポンプは電動モータにより駆動されており、
前記制御装置は、前記開度が最も狭くなった場合において前記油圧ポンプを最大圧力にしたときに、前記電動モータの出力が定格出力未満となるように当該電動モータを制御する破砕装置。
【請求項5】
請求項1に記載の破砕装置であって、
前記搬送面に対する前記供給ロールの高さを変更する操作を行うための操作装置を備える破砕装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の破砕装置であって、
前記供給ロールの回転を検出する回転センサと、
前記回転センサを用いて算出された前記供給ロールの回転速度を表示する表示装置と、
を備える破砕装置。
【請求項7】
破砕機に向けて破砕対象物を搬送するロールフィーダにおいて、
搬送面と、
モータにより回転駆動される供給ロールと、
を備え、
前記搬送面と前記供給ロールとで前記破砕対象物を挟み込んで前記供給ロールを回転駆動することにより、前記破砕機に向けて前記破砕対象物が搬送され、
前記搬送面から前記供給ロールまでの距離である開度が狭くなる方向に変化した場合に、前記供給ロールの回転速度を下げるロールフィーダ。
【請求項8】
モータを用いて供給ロールを回転駆動し、
搬送面と前記供給ロールとで破砕対象物を挟み込んで破砕機に向けて搬送し、
前記搬送面から前記供給ロールまでの距離である開度を検出し、
前記開度が狭くなる方向に変化した場合に、前記供給ロールの回転速度を下げ、
搬送された前記破砕対象物を前記破砕機で破砕する破砕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、主として、ロールフィーダを用いて破砕対象物を搬送する破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の廃棄物破砕処理装置は、投入シュートと、ロールフィーダと、破砕機と、制御装置と、を備える。投入シュートに投入された廃棄物は、ロールフィーダによって廃棄物の大きさを整えられて破砕機に送られる。制御装置は、破砕機の駆動モータの電流値を示す破砕機負荷電流を取得する。制御装置は、破砕機負荷電流が大きいときは、ロールフィーダの開度を狭くして廃棄物の供給量を抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では破砕機の駆動源の過負荷を抑制する方法は開示されているが、ロールフィーダを駆動する要素の過負荷を抑制する方法は開示されていない。特に、特許文献1では、ロールフィーダを駆動する構成についても記載されていない。
【0005】
本出願は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、開度調整が可能なロールフィーダを用いて破砕対象物を搬送する破砕装置において、開度調整に伴うロールフィーダを駆動する要素の過負荷を抑制可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本出願の第1の観点によれば、以下の構成の破砕装置が提供される。即ち、破砕装置は、破砕機と、モータと、ロールフィーダと、開度センサと、制御装置と、を備える。前記破砕機は、破砕対象物を破砕する。前記モータは、回転駆動力を発生させる。前記ロールフィーダは、搬送面及び供給ロールを有し、前記供給ロールは前記モータにより回転駆動され、前記搬送面と前記供給ロールとで前記破砕対象物を挟み込んで前記破砕機に向けて搬送する。前記開度センサは、前記搬送面から前記供給ロールまでの距離である開度を検出する。前記制御装置は、前記開度センサを用いて検出された前記開度が狭くなる方向に変化した場合に、前記供給ロールの回転速度を下げる。
【0008】
本出願の第2の観点によれば、以下の構成のロールフィーダが提供される。即ち、ロールフィーダは、破砕機に向けて破砕対象物を搬送する。ロールフィーダは、搬送面と、供給ロールと、を備える。前記供給ロールは、モータにより回転駆動される。前記搬送面と前記供給ロールとで前記破砕対象物を挟み込んで前記供給ロールを回転駆動することにより、前記破砕機に向けて前記破砕対象物が搬送される。前記搬送面から前記供給ロールまでの距離である開度が狭くなる方向に変化した場合に、前記供給ロールの回転速度を下げる。
【0009】
本出願の第3の観点によれば、以下の破砕方法が提供される。即ち、モータを用いて供給ロールを回転駆動する。搬送面と前記供給ロールとで破砕対象物を挟み込んで破砕機に向けて搬送する。前記搬送面から前記供給ロールまでの距離である開度を検出する。前記開度が狭くなる方向に変化した場合に、前記供給ロールの回転速度を下げる。搬送された前記破砕対象物を前記破砕機で破砕する。
【発明の効果】
【0010】
本出願によれば、開度調整が可能なロールフィーダを用いて破砕対象物を搬送する破砕装置において、開度調整に伴うロールフィーダを駆動する要素の過負荷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本出願の一実施形態に係る破砕装置の全体的な構成を示す側面模式図。
【
図2】供給ロールの駆動及び高さ調整を行うための油圧回路及び電気回路。
【
図3】開度に応じて決定する作動油吐出量の大きさを示す第1のグラフ。
【
図4】開度に応じて決定する作動油吐出量の大きさを示す第2のグラフ。
【
図5】開度に応じて作動油吐出量を変化させる処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本出願の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、破砕装置1の構成について説明する。
【0013】
図1に示す破砕装置1は、投入された破砕対象物に打撃を与えることによって当該破砕対象物を破砕して破砕片にする。以下では、破砕対象物を単に対象物と称する。破砕装置1に投入される対象物は、例えば、廃車、金属スクラップ、産業廃棄物等である。
【0014】
破砕装置1は、ロールフィーダ10と、破砕機20と、を備える。ロールフィーダ10は、投入された対象物を破砕機に向けて搬送する。破砕機20は、ロールフィーダ10によって搬送された対象物を破砕する。
【0015】
ロールフィーダ10は、ケース11と、供給ロール12と、を備える。ケース11は、ロールフィーダ10の外郭であり、内部に供給ロール12が配置される。また、ケース11は、投入口11aと、搬送面11bと、を備える。
【0016】
投入口11aは、対象物をロールフィーダ10に投入できるように開口した部分である。搬送面11bは、投入口11aから投入された対象物を搬送する面である。本実施形態では搬送面11bは斜面であり、搬送方向の上流端よりも搬送方向の下流端の方が高さが低い。これにより、対象物は自重により斜面に沿って破砕機20に向かって搬送される。なお、対象物の自重を用いて対象物を搬送する代わりに、コンベアを設けて対象物を搬送してもよい。
【0017】
供給ロール12は、搬送面11bに対して離間する位置に配置されている。供給ロール12は、後述する油圧システムにより回転駆動される。供給ロール12が回転することにより、供給ロール12と搬送面11bで挟まれた対象物が破砕機20に向けて送り出される。また、供給ロール12は、後述する油圧システムにより、搬送面11bに対する高さを変更可能である。以下では、搬送面11bと供給ロール12の間隙の広さを開度と称する。
図1に示すように符号Lで示す開度は、搬送面11bに垂直な方向における、搬送面11bから供給ロール12の外表面までの距離である。
【0018】
本実施形態の供給ロール12は、2つ設けられる。2つの供給ロール12は、例えばチェーンで連結されており、同じ速度で回転駆動される。また、2つの供給ロール12は、例えば同じ支持部材に支持されており、ケース11に対する高さを一体的に変更可能である。2つの供給ロール12は、搬送面11bに対する高さがそれぞれ異なる。具体的には、搬送方向の下流側の供給ロール12の開度は、搬送方向上流側の供給ロール12の開度よりも狭い。本実施形態では、搬送方向の下流側の供給ロール12の開度を用いて後述の制御を行うが、搬送方向の上流側の供給ロール12の開度を用いて同じ制御を行ってもよい。
【0019】
なお、供給ロール12が配置される数は2つに限られず、1つ又は3つ以上であってもよい。また、複数の供給ロール12が配置される場合において、搬送面11bに対する供給ロール12の高さは、同じであってもよい。複数の供給ロール12が配置される場合において、それぞれの供給ロール12の回転速度が異なっていてもよい。
【0020】
破砕機20は、主軸21と、回転体22と、複数のハンマ23と、下部グレート25と、天井グレート26と、を備える。
【0021】
主軸21は、図略の駆動源により回転駆動される軸部材である。主軸21の軸方向は、水平面に平行である。ただし、主軸21の軸方向が水平面に対して傾斜していてもよい。また、主軸21には回転体22が固定されている。
【0022】
回転体22は、主軸21の回転に伴って回転する。ハンマ23は、回転体22の外周部に沿って取り付けられている。ハンマ23は、回転体22に回転可能に取り付けられている。回転体22が回転することにより、遠心力によってハンマ23が回転体22の外方に突出して対象物に当たり、対象物が破砕される。
【0023】
下部グレート25は、回転体22の下部に沿うように配置される。下部グレート25には所定の寸法の排出口が設けられる。ハンマ23により破砕されて一定の大きさ以下となった破片は、下部グレート25の排出口を通って破砕装置1の下方に設置されたコンベヤ又は振動フィーダの上に落下し、搬送される。
【0024】
天井グレート26は、回転体22の上方に配置される。天井グレート26には、排出口が設けられている。回転体22で破砕されて小さくなった破片は、天井グレート26の排出口を通って破砕装置1の下方に設置されたコンベヤ又は振動フィーダの上に落下し、搬送される。
【0025】
次に、
図2を参照して、供給ロール12の回転駆動及び高さ調整のための油圧システムについて説明する。
【0026】
初めに、供給ロール12を回転駆動するための油圧システムについて説明する。破砕装置1は、作動油を貯留するタンク31を備える。タンク31に貯留された作動油は、油圧ポンプ32によって吸い出される。油圧ポンプ32は、例えばギアポンプ、ピストンポンプ、又は、ベーンポンプである。油圧ポンプ32は、容量可変型であってもよいし、容量固定型であってもよい。油圧ポンプ32が容量可変型である場合、例えば油圧ポンプ32が備える斜板の傾斜角度を変更することにより、作動油吐出量を変化させることができる。
【0027】
電動モータ33は、ポンプ駆動軸51を介して油圧ポンプ32に接続されている。電動モータ33は、電力が供給されることにより回転して回転駆動力を発生させる。この構成により、油圧ポンプ32は、電動モータ33によって回転駆動される。例えばインバータ等により電動モータ33の回転速度を変更することにより、油圧ポンプ32の作動油吐出量を変化させることができる。油圧ポンプ32には、リリーフ弁34及び比例電磁弁35が接続されている。
【0028】
リリーフ弁34は、油圧回路の圧力が閾値を超えた場合に作動する。リリーフ弁34が作動することにより、作動油がタンク31に戻される。これにより、油圧回路の圧力の過上昇を抑制できる。
【0029】
比例電磁弁35は、ソレノイドを備える。外部から供給された電流に応じてソレノイドが移動することにより、比例電磁弁35の開口面積が変化し、油圧モータ37に供給される作動油の流量が変化する。比例電磁弁35には、コントロール弁36が接続されている。
【0030】
コントロール弁36は、ソレノイド及びスプールを備える。外部から供給された電流に応じてソレノイドが移動することにより、スプールが移動する。その結果、コントロール弁36の回路構成が変化し、油圧モータ37に供給される作動油の供給方向が変化する。なお、比例電磁弁35がコントロール弁36に組み込まれていてもよい。コントロール弁36には、油圧モータ37が接続されている。
【0031】
油圧モータ37は、供給された作動油を用いて回転駆動力を発生させる。油圧モータ37は、ロール駆動軸52を介して供給ロール12と接続されている。この構成により、油圧モータ37は、供給ロール12を回転駆動する。
【0032】
次に、供給ロール12の高さを調整するための油圧システムについて説明する。破砕装置1は、供給ロール12の高さ調整のための部材として、油圧ポンプ61と、ポンプ駆動軸54と、電動モータ62と、コントロール弁63と、を備える。これらの構成は、それぞれ、油圧ポンプ32、ポンプ駆動軸51、電動モータ33、コントロール弁36と同じであるため詳細な説明を省略する。この構成により、油圧シリンダ64に作動油が供給される。
【0033】
油圧シリンダ64は、シリンダチューブとシリンダロッドとを備える。油圧シリンダ64に作動油が供給されることにより、あるいは油圧シリンダ64から作動油が排出されることにより、シリンダチューブに対してシリンダロッドをスライドさせることができる。また、シリンダロッドには、ロール支持部材53を介して供給ロール12が取り付けられている。ロール支持部材53は、シリンダロッドの移動に伴って、高さが変化するように構成されている。この構成により、供給ロール12の高さを調整することができる。
【0034】
供給ロール12の高さを変化させるためのアクチュエータは、油圧シリンダに限られず、例えば電動シリンダを用いることもできる。あるいは、ロール支持部材53に連結されたヒンジを回転させる油圧モータを用いることもできる。
【0035】
また、破砕装置1は、制御装置41と、回転センサ42と、位置センサ43と、操作装置44と、表示装置45と、を備える。
【0036】
制御装置41は、CPU等の演算装置と、フラッシュメモリ等の記憶装置と、有線又は無線の通信装置と、を備える。演算装置は、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、破砕装置1に関する様々な制御を実行する。制御装置41は、例えば、電動モータ33の回転速度、比例電磁弁35の開口面積、コントロール弁36のスプールの位置を変化させる。コントロール弁36のスプールの位置を変化させることにより、供給ロール12を回転駆動したり、油圧シリンダ64のシリンダロッドを動作させたりすることができる。
【0037】
回転センサ42は、供給ロール12の回転を検出するセンサである。回転センサ42は、例えば、供給ロール12と一体的に回転する部材に取り付けられるエンコーダである。回転センサ42の検出値は、表示装置45に出力される。
【0038】
位置センサ43は、油圧シリンダ64のシリンダロッドのシリンダチューブに対する位置を検出する。言い換えれば、位置センサ43は、油圧シリンダ64のストローク位置を検出する。上述したように、シリンダロッドの位置と供給ロール12の高さは対応している。そのため、位置センサ43は、供給ロール12の開度を算出するためのセンサであり、開度センサに相当する。位置センサ43の検出値は、制御装置41に出力される。
【0039】
開度センサは油圧シリンダ64の位置センサ43に限られず、例えば以下のセンサを用いてもよい。即ち、ロール支持部材53が回動することにより供給ロール12の高さが変化する場合は、ロール支持部材53の回転軸等に設けた角度センサを開度センサとして用いることができる。あるいは、巻取機により供給ロール12の高さを変更する場合、リールの巻取り量を検出する回転センサを開度センサとして用いることができる。
【0040】
操作装置44は、破砕装置1のオペレータによって操作される装置である。操作装置44は、例えばボタン又はレバー等であってもよいし、タッチパネル等であってもよい。オペレータは、操作装置44を操作することにより、例えば供給ロール12の高さを調整することができる。具体的には、オペレータが操作装置44に対して行った操作内容に基づいて、制御装置41は、コントロール弁63に対する電気信号を生成して出力する。これにより、オペレータの操作内容を実現するために必要な作動油が油圧シリンダ64に供給されて、供給ロール12の高さを調整することができる。なお、詳細は後述するが、オペレータに代えて制御装置41が供給ロール12の高さを調整する制御を行ってもよい。
【0041】
表示装置45は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、破砕装置1に関する様々な情報を表示可能である。なお、表示装置45は、ディスプレイに代えて又は加えて、アナログメータにより情報を表示してもよい。
【0042】
表示装置45が表示する情報には、回転センサ42が検出した供給ロール12の回転速度が含まれる。供給ロール12の回転速度は、破砕機20に供給される対象物の量、及び、供給ロール12を駆動する要素(油圧ポンプ32及び油圧モータ37等)の負荷に関連する。オペレータは、供給ロール12の回転速度を確認しながら供給ロール12の高さを調整する。これにより、供給ロール12の高さをより適切に調整し易くなる。なお、表示装置45に表示する情報は一例であり、例えば、供給ロール12の近傍にカメラを設けて、カメラが取得した映像を表示装置45に表示してもよい。
【0043】
次に、供給ロール12と搬送面11bの隙間である開度と、電動モータ33の負荷と、の関係について説明し、その後に過負荷を抑制するための制御について説明する。
【0044】
開度が狭くなる方向に変化した場合、供給ロール12が対象物に強く押し付けられる。従って、供給ロール12を回転させるために必要な力が大きくなるため、油圧回路が高圧状態となる。そのため、油圧ポンプ32を駆動する電動モータ33の負荷が大きくなる。また、油圧ポンプ32から吐出された作動油の多くは、リリーフ弁34を介してタンク31に戻ることになるので、作動油の温度の上昇及び動力のロスが発生する。
【0045】
本実施形態では、電動モータ33の負荷を低減するために、開度に応じて供給ロール12の回転速度を調整する制御を行う。また、以下の説明では、油圧ポンプ32の作動油の供給量を、単に作動油吐出量と称する。この制御について、
図3から
図5を参照して説明する。
図5に示すフローチャートは、制御装置41によって実行される。
【0046】
制御装置41は、位置センサ43の検出値を取得する(S101)。次に、制御装置41は、位置センサ43の検出値に基づいて開度を算出する(S102)。位置センサ43が検出した位置と、搬送面11bに対する供給ロール12の高さと、は一対一で対応する。従って、予め求めた対応関係に基づいて、制御装置41は開度を算出できる。
【0047】
次に、制御装置41は、開度に応じた作動油吐出量を決定する(S103)。本実施形態では、開度が狭くなるにつれて、作動油吐出量を少なくする。これにより、供給ロール12の回転速度を下げることができる。逆に、開度が広くなるにつれて、作動油吐出量を多くする。これにより、供給ロール12の回転速度を上げることができる。即ち、直近と比較して開度が狭くなる方向に変化した場合は、決定される作動油吐出量は直近と比較して減少して供給ロール12の回転速度が下がる。また、直近と比較して開度が広くなる方向に変化した場合は、決定される作動油吐出量は直近と比較して増加して供給ロール12の回転速度が上がる。
【0048】
開度と作動油吐出量(即ち、供給ロール12の回転速度)との具体的な対応関係が、
図3及び
図4に示されている。これらのグラフは予め作成されて制御装置41に記憶されている。制御装置41は、算出した開度に対応する作動油吐出量をこれらのグラフから特定する。なお、制御装置41は、グラフ形式ではなく表形式又は計算式により、開度と作動油吐出量の対応関係を記憶してもよい。
【0049】
図3のグラフでは、開度に応じて作動油吐出量が連続的かつ線形に変化する。作動油吐出量が連続的に変化することにより、開度に応じた適切な作動油吐出量を決定できる。
図4のグラフでは、開度に応じて作動油吐出量が段階的に変化する。作動油吐出量が段階的に変化することにより、作動油吐出量が頻繁に変更されることを抑制できる。なお、
図3及び
図4に示す、開度と作動油吐出量の関係は一例である。開度が狭くなるにつれて作動油吐出量が減少する傾向が含まれるのであれば、
図3及び
図4以外の対応関係を用いることもできる。なお、開度と作動油吐出量の対応関係に代えて、位置センサ43の検出値と作動油吐出量の対応関係を用いてもよい。なお、
図5のフローチャートにおいて、開度に応じて作動油吐出量を決定する処理に代えて、開度に応じて供給ロールの回転速度を決定する処理を行ってもよい。
【0050】
次に、制御装置41は、決定した作動油吐出量に応じて、油圧ポンプ32又は電動モータ33を制御する(S104)。即ち、制御装置41は、ステップS103で決定した作動油吐出量が達成されるように、油圧ポンプ32又は電動モータ33を制御する。例えば油圧ポンプ32が容量可変型である場合は、容量を増減することにより、作動油吐出量を増減できる。また、電動モータ33の回転速度を増減することにより、作動油吐出量を増減することもできる。なお、制御装置41は、油圧ポンプ32と電動モータ33の両方を制御してもよい。また、油圧モータ37が容量可変型である場合は、制御装置41は、油圧ポンプ32又は電動モータ33に代えて、油圧モータ37の斜板の傾斜角度を変更することで容量を変化制御することで供給ロール12に供給される作動油の量を増減することもできる。
【0051】
例えば、開度が狭くなる方向に変化した場合、従来では電動モータ33が過負荷となる可能性があった。この点、本実施形態では、開度が狭くなる方向に変化した場合、制御装置41は、作動油吐出量を減少させる。その結果、油圧回路が高圧状態であったとしても、作動油吐出量を減少させた分に応じて電動モータ33の負荷が減少する。つまり、電動モータ33の過負荷を抑制できる。従来では開度が最も狭くなったときにおいて電動モータ33が過負荷となり、電動モータ33の出力が定格出力となることがあった。この点、本実施形態では、開度が狭くなったときに作動油吐出量を減少させるため、例えば開度が最も狭くなった場合において油圧ポンプ32を最大圧力にしたときであっても、吐出量が減る分、電動モータ33の出力が定格出力未満となる。このように、本実施形態では、開度が狭くなったときにおいて電動モータ33の過負荷を抑制できる。
【0052】
また、
図5に示すフローチャートは、繰り返し実行される。そのため、例えば開度を狭くした後に開度が広くなる方向に変化した場合、制御装置41は、作動油吐出量を増加させる。これにより、油圧回路の圧力が通常に戻った際に、供給ロール12の搬送能力を元に戻すことができる。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態の破砕装置1は、破砕機20と、油圧モータ37と、ロールフィーダ10と、位置センサ43と、制御装置41と、を備え、以下の破砕方法を行う。破砕機20は、破砕対象物を破砕する。油圧モータ37は、回転駆動力を発生させる。ロールフィーダ10は、搬送面11b及び供給ロール12を有し、供給ロール12は油圧モータ37により回転駆動され、搬送面11bと供給ロール12とで破砕対象物を挟み込んで破砕機20に向けて搬送する。位置センサ43は、搬送面11bから供給ロール12までの距離である開度を検出する。制御装置41は、位置センサ43を用いて検出された開度が狭くなる方向に変化した場合に、供給ロール12の回転速度を下げる。以上の技術的事項が特徴1である。
【0054】
開度が狭い状況では、供給ロール12の回転に必要な力が大きくなるため、供給ロール12を駆動する要素(油圧ポンプ32及び油圧モータ37等)の負荷が大きくなり易い。この状況において、供給ロール12の回転速度を下げることにより、供給ロール12を駆動する要素の過負荷を抑制できる。
【0055】
本実施形態の破砕装置1において、制御装置41は、位置センサ43を用いて検出された開度が広くなる方向に変化した場合に、供給ロール12の回転速度を上げる。以上の技術的事項が特徴2である。
【0056】
これにより、例えば、開度が狭い状況から広い状況に戻った場合において、供給ロール12の搬送能力を元に戻すことができる。
【0057】
本実施形態の破砕装置1は油圧ポンプ32を備える。油圧モータ37は、油圧ポンプ32が吐出した作動油を用いて回転駆動力を発生させる。制御装置41は、位置センサ43を用いて検出された開度が狭くなる方向に変化した場合に、油圧ポンプ32の作動油吐出量を減少させることで供給ロール12の回転速度を下げる。以上の技術的事項が特徴3である。
【0058】
これにより、作動油の流量が低下するため、開度が狭くて負荷が高くなり易い状況においても供給ロール12を駆動する要素の過負荷を抑制できる。
【0059】
本実施形態の破砕装置1において、油圧ポンプ32は電動モータ33により駆動されている。制御装置41は、開度が最も狭くなった場合において油圧ポンプ32を最大圧力にしたときに、電動モータ33の出力が定格出力未満となるように電動モータ33を制御する。以上の技術的事項が特徴4である。
【0060】
これにより、電動モータ33が定格出力となることを抑制できるので、電動モータ33の過負荷を抑制できる。
【0061】
本実施形態の破砕装置1は、搬送面11bに対する供給ロール12の高さを変更する操作を行うための操作装置44を備える。以上の技術的事項が特徴5である。
【0062】
これにより、オペレータが操作装置44を操作することにより、供給ロール12の高さを変更することができる。
【0063】
本実施形態の破砕装置1は、回転センサ42と、表示装置45と、を備える。回転センサ42は、供給ロール12の回転を検出する。表示装置45は、回転センサ42を用いて算出された供給ロール12の回転速度を表示する。以上の技術的事項が特徴6である。
【0064】
これにより、オペレータは、ロールフィーダ10の搬送に影響するデータを確認しながら供給ロール12の高さを調整できる。また、オペレータが供給ロール12の高さを調整しない場合であっても、例えば破砕装置1の動作を確認又は管理する者は、破砕装置1の動作状況を把握できる。
【0065】
上述した特徴1から特徴6は矛盾が生じない限り、適宜組み合わせることができる。例えば、特徴3には、特徴1,2の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴4には、特徴1から3の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴5には、特徴1から4の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴6には、特徴1から5の少なくとも1つを組み合わせることができる。
【0066】
以上に本出願の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0067】
上記の実施形態では、破砕装置1は1つの回転体22を備えるが、回転体22の数はこれに限るものではなく、複数の回転体22を備えてもよい。
【0068】
上記実施形態のロールフィーダ10は油圧駆動式であるが、電動式であってもよい。この場合、油圧ポンプ32及び油圧モータ37等に代えて、新たに電動モータが設けられる。この電動モータは、回転駆動力を発生させ、その回転駆動力によりロールフィーダ10を回転させる。
【0069】
上記実施形態では、オペレータが開度を調整する操作を行う。これに代えて、制御装置41が供給ロール12の高さを調整する制御を行ってもよい。具体的には、制御装置41は、破砕機20への対象物の供給量を減らすべきと判定した場合、開度が狭くなる方向に変化させ、それに伴って作動油吐出量を減少させる。また、制御装置41は、破砕機20への対象物の供給量を増やすべきと判定した場合、開度が広くなる方向に変化させ、それに伴って作動油吐出量を増加させる。なお、対象物の供給量の増減に関する判定は、例えば破砕機20の負荷に基づいて行うことができる。
【0070】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。例えば、制御装置41が作動油吐出量を変化させたことを表示装置45に表示する処理を追加してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 破砕装置
10 ロールフィーダ
20 破砕機
32 油圧ポンプ
33 電動モータ
37 油圧モータ(モータ)
41 制御装置
42 回転センサ
43 位置センサ(開度センサ)