(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173436
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/15 20060101AFI20231130BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F24F13/15 B
B60H1/34 611A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085692
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】平井 穂
(72)【発明者】
【氏名】大沼 直人
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081FA04
3L081HA08
3L211BA32
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】通風路での通気抵抗を低減する風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置1は、通風路Cを有するケース体10と、通風路Cの内部に配置され、第1主平面21又は第2主平面22に対して平行な中心軸AXを基準として回動可能な矩形板状のフィン20と、フィン20に対して厚み方向で一体化され、フィン20の厚みT1よりも厚い平型の操作ノブ30とを備える。操作ノブ30は、各々フィン20と連続する二つの側壁部35の少なくとも一部同士で形成される狭小部36を有する。フィン20の中心軸AXに沿った方向での幅について、狭小部36の幅W2は、操作ノブ30の風下側端部33の幅W3よりも狭い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路を有するケース体と、
前記通風路の内部に配置され、主平面に対して平行な中心軸を基準として回動可能な矩形板状のフィンと、
前記フィンに対して厚み方向で一体化され、前記フィンの厚みよりも厚い平型の操作ノブと、を備え、
前記操作ノブは、各々前記フィンと連続する二つの側壁部の少なくとも一部同士で形成される狭小部を有し、
前記フィンの前記中心軸に沿った方向での幅について、前記狭小部の前記幅は、前記操作ノブの風下側端部の前記幅よりも狭い、風向調整装置。
【請求項2】
前記狭小部の前記幅は、前記操作ノブの風上側端部の前記幅よりも狭い、請求項1に記載の風向調整装置。
【請求項3】
前記狭小部を形成する前記側壁部の少なくとも一部は、前記風下側端部と前記風上側端部との間で凹となる円弧状である、請求項2に記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に設置され、車両の空調装置から車室内に供給させる風の向きを調整する風向調整装置がある。特許文献1は、フィン群に含まれる一つのフィンに操作ノブを取り付けた風向調整装置に関する技術を開示している。車室内にいる乗員は、操作ノブを直接的に操作してフィンの姿勢を変化させることで、風向を所望の方向に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の風向調整装置では、通風路の有効開口面積は、通風路の内部に複数のフィンが配置されていることに加えて、一つのフィンに操作ノブが設けられている分、通風路の開口面積よりも狭まる。そのため、例えば、通風路の開口面積が比較的小さい場合には、操作ノブの存在は、通風路での通気抵抗を増加させる要因ともなり得る。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、通風路での通気抵抗を低減する風向調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る風向調整装置は、通風路を有するケース体と、通風路の内部に配置され、主平面に対して平行な中心軸を基準として回動可能な矩形板状のフィンと、フィンに対して厚み方向で一体化され、フィンの厚みよりも厚い平型の操作ノブと、を備え、操作ノブは、各々フィンと連続する二つの側壁部の少なくとも一部同士で形成される狭小部を有し、フィンの中心軸に沿った方向での幅について、狭小部の幅は、操作ノブの風下側端部の幅よりも狭い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通風路での通気抵抗を低減する風向調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る風向調整装置の斜視図である。
【
図2A】操作ノブを有するフィンの外観を示す平面図である。
【
図2B】
図2AのIIB-IIB断面に対応したフィンの断面図である。
【
図2C】
図2AのIIC-IIC断面に対応したフィンの断面図である。
【
図2D】
図2AのIID-IID断面に対応したフィンの断面図である。
【
図3】一実施形態での操作ノブを有するフィン周りの気体の流れを示す図である。
【
図4】比較例での操作ノブを有するフィン周りの気体の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて一実施形態に係る風向調整装置について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係る風向調整装置1の外観を示す斜視図である。風向調整装置1は、自動車等の車両に設置され、車両の空調装置から車室内に供給させる気体(風)の向きを調整する。例えば、風向調整装置1は、自動車の車室内にあるインストルメントパネルやセンターコンソール等に設けられた開口部に取り付けられる。なお、同類の風向調整装置を含む空調装置は、ベンチレーターやレジスターなどと呼ばれることもある。
【0011】
風向調整装置1は、ケース体10と、複数のフィン20とを備える。
【0012】
ケース体10は、気体を流通させる通風路Cを有する筒状体である。ここで、以下の説明では、ケース体10の形状を基準として、X,Y,Zの各方向を次のように規定する。X方向は、ケース体10の筒形状を規定する軸方向に沿い、通風路Cの上流側から下流側に向かって延伸する。Y方向とZ方向とは、それぞれX方向に対して垂直で、かつ、互いに垂直である。また、本実施形態では、Z方向は、鉛直方向に沿うものとし、「上」は、Z方向での上方を示し、「下」は、Z方向での下方を示す。
【0013】
ケース体10は、各々平板状である、第1壁部11、第2壁部12、第3壁部13及び第4壁部14を組み合わせて形成される。第1壁部11は、第2壁部12とZ方向で対向する。第3壁部13は、第4壁部14とY方向で対向する。第1壁部11の一辺は、第3壁部13を介して第2壁部12の一辺と連結される。第1壁部11の他辺は、第4壁部14を介して第2壁部12の他辺と連結される。つまり、通風路Cは、第1壁部11、第2壁部12、第3壁部13及び第4壁部14に囲まれた空間領域である。また、ケース体10は、YZ平面で切断した通風路Cの断面形状が矩形となる、角筒状である。第3壁部13及び第4壁部14は、互いにY方向で対向する位置に、フィン20を支持する複数の軸受穴15を有する。
【0014】
ケース体10では、それぞれ通風路Cと連通する一方の開口が気体吹出口16であり、他方の開口が気体導入口17である。気体導入口17は、車両内に設置されている不図示の空調装置に接続され、当該空調装置から供給された気体を導入する。本実施形態のように、適用対象である車両が一般的な自動車である場合には、気体は空気である。一方、気体吹出口16は、車室内に面し、通風路Cを流通してきた気体を風として車室側に吹き出す。本実施形態では、気体吹出口16の開口方向は、通風路Cの延伸方向と同一である。また、一例として、通風路Cの開口面積は、気体吹出口16の開口面積と同一であり、(開口幅W×開口高さH)で表される。
【0015】
複数のフィン20は、通風路Cの内部に配置され、風向を上下に変化させるための風向可変部である。本実施形態では、フィン20の設置数は、一例として三つである。また、フィン20の形状は、各々同一である。フィン20は、Y方向を長手方向とする矩形板状であり、Y方向に沿った中心軸AX(
図2A参照)周りに回動可能である。三つのフィン20は、Z方向において互いに等間隔で離間し、かつ、X方向において気体吹出口16からの距離がおおよそ一定となるように互いに等間隔で離間する。なお、
図1では、各々のフィン20が、いわゆる中立(ニュートラル)状態にあるものとして例示されている。
【0016】
また、三つのフィン20の回動は、互いに同期する。このように三つのフィン20の回動が同期するために、不図示であるが、いずれか一つのフィン20が回動されたときにその他のフィン20も連動するように、複数のフィン20は、リンク機構を介して互いに連結されていてもよい。本実施形態では、以下で詳説するように、三つのフィン20のうちの一つのフィン20には、操作ノブ30が設けられている。
図1中に矢印で示されるように、操作ノブ30が操作されることで、操作ノブ30が設けられているフィン20が回動するとともに、他の二つのフィン20も回動する。
【0017】
操作ノブ30は、複数のフィン20の姿勢を乗員が車室側から変更するために用いられる。操作ノブ30は、平型のブロック体であり、複数のフィン20のうちのいずれかに取り付けられる。本実施形態では、三つのフィン20のうち、中間位置に配置されているフィン20に取り付けられるものとする。なお、具体的な形状等については、後述する。
【0018】
図2A~
図2Dは、操作ノブ30を有するフィン20を示す図である。
図2Aは、フィン20の外観を示す平面図である。
図2Bは、
図2AのIIB-IIB断面に対応し、操作ノブ30の風上側端部34を含むようにYZ平面で切断したフィン20の断面図である。
図2Cは、
図2AのIIC-IIC断面に対応し、中心軸AXを含むYZ平面で切断したフィン20の断面図である。
図2Dは、
図2AのIID-IID断面に対応し、操作ノブ30の風下側端部33を含むようにYZ平面で切断したフィン20の断面図である。なお、
図2A~
図2Dでは、
図1の描画に合わせて、フィン20が中立状態にあるときの姿勢を基準としてXYZの各方向が規定されている。
【0019】
フィン20は、二つの主平面、すなわち、第1主平面21と、第1主平面21の反対側にある第2主平面22とを有する。第1主平面21と第2主平面22とは、おおよそ一定であるフィン20の厚みT1分、離間している。また、フィン20は、それぞれ第1主平面21と第2主平面22とに連続する四つの側端部、すなわち、上流側端縁23と、下流側端縁24と、二つの側端面25とを有する。
【0020】
上流側端縁23及び下流側端縁24は、互いに、フィン20の長手方向におおよそ沿う側端部である。上流側端縁23は、通風路Cの上流側、つまり風上側の端縁である。下流側端縁24は、通風路Cの下流側、つまり風下側の端縁である。
【0021】
二つの側端面25は、互いにフィン20の短手方向におおよそ沿う側端部である。各々の側端面25には、第1主平面21と第2主平面22とに平行で、かつ、フィン20が回動するときの基準となる回転軸26が設けられる。本実施形態では、各々の回転軸26は、互いに反対方向に突出するように、フィン20の回動時の中心軸AXと同軸に配置される。中心軸AXは、各々の側端面25において、上流側端縁23と下流側端縁24とを結んだ直線の中間を通る。一方の側端面25に設けられている回転軸26は、ケース体10の第3壁部13に予め形成されている軸受穴15に、摺動自在に支持される。他方の側端面25に設けられている回転軸26は、ケース体10の第4壁部14に予め形成されている軸受穴15に、摺動自在に支持される。
【0022】
なお、本実施形態では、上流側端縁23及び下流側端縁24の形状は、それぞれY方向に沿った中心軸AXに対して平行となる直線形状であるが、一部に曲線形状を含んでもよい。また、上流側端縁23と下流側端縁24とは、必ずしも互いに平行でなくてもよい。更に、本実施形態では、二つの側端面25同士は、XZ平面として互いに平行であるが、非平行であってもよい。
【0023】
操作ノブ30は、フィン20に対して厚み方向で一体化された、平型のブロック体である。操作ノブ30は、フィン20の長手方向のおおよそ中央部に設けられてもよい。操作ノブ30は、二つの平面部、すなわち、第1平面部31と、第1平面部31の反対側にある第2平面部32とを有する。第1平面部31と第2平面部32とは、おおよそ一定である操作ノブ30の厚みT2分、離間している。操作ノブ30の厚みT2は、フィン20の厚みT1よりも厚い。また、操作ノブ30は、それぞれ第1平面部31と第2平面部32とに連続する、風下側端部33と、風上側端部34と、二つの側壁部35とを有する。
【0024】
風下側端部33及び風上側端部34は、互いに、フィン20の中心軸AXに沿って延伸する端部である。風下側端部33は、通風路Cの下流側、つまり風下側の端部である。風上側端部34は、通風路Cの上流側、つまり風上側の端部である。なお、車室側を基準として、ケース体10において気体吹出口16がある側を前側とし、気体導入口17がある側を後側とすると、風下側端部33は、前端部とも呼称され、風上側端部34は、後端部とも呼称され得る。
【0025】
ここで、フィン20の中心軸AXに沿った方向での幅として、風上側端部34のものを幅W1と、風下側端部33のものを幅W3と、それぞれ表記する。幅W1及び幅W3は、乗員による操作ノブ30の操作性、又は、不図示であるが、摺動力発生機構、若しくは、フィン20の上流側に配置され得るリアフィン稼働機構との接続構造などを考慮して決定される。また、風下側端部33と風上側端部34との間の距離は、フィン20における上流側端縁23と下流側端縁24との間の距離よりも長い。風下側端部33は、フィン20の下流側端縁24の位置よりも前側に突出する。風上側端部34は、フィン20の上流側端縁23の位置よりも後側に突出する。風下側端部33及び風上側端部34の突出量についても、幅W1及び幅W3と同様に、操作ノブ30の操作性などを考慮して決定される。更に、風下側端部33の角部は、乗員が直接触れる部位であることを考慮し、曲面で構成されてもよい。
【0026】
二つの側壁部35は、互いに、風下側端部33と風上側端部34との間で延伸する壁部である。本実施形態のように、操作ノブ30がフィン20の長手方向における中央部に設けられる場合、フィン20は、操作ノブ30を境として長手方向で分離する形となる。この場合、一方の側壁部35の一部は、分離した一方のフィン20の先端部と連続し、他方の側壁部35の一部は、分離した他方のフィン20の先端部と連続する。
【0027】
ここで、操作ノブ30は、第1平面部31がフィン20の第1主平面21とおおよそ平行となり、かつ、第2平面部32がフィン20の第2主平面22とおおよそ平行となるように、フィン20と連続する。また、
図2B及び
図2Cに示すように、操作ノブ30は、厚みT2の中間位置でフィン20と連続する。これにより、操作ノブ30とフィン20とが連続する位置では、第1主平面21及び第2主平面22は、それぞれ、側壁部35と垂直に交わることになる。
【0028】
また、操作ノブ30は、狭小部36を有する。狭小部36は、二つの側壁部35の少なくとも一部同士で挟まれ、かつ、フィン20の中心軸AXに沿った方向での幅が風下側端部33の幅W3よりも狭く設定されている部位である。フィン20の中心軸AXに沿った方向での狭小部36の一部の幅を幅W2と表記する。本実施形態では、狭小部36を形成する二つの側壁部35は、それぞれ、風下側端部33と風上側端部34との間で凹となる円弧状である。
図2A及び
図2Cに示す例では、狭小部36においてフィン20の中心軸AXが通過する断面での幅W2が最も狭い。つまり、この場合、狭小部36の幅W2は、風下側端部33の幅W3よりも狭いとともに、風上側端部34の幅W1よりも狭い。本実施形態では、一例として、幅W1と幅W3とは、同一寸法である。
【0029】
そして、三つのフィン20は、それぞれ、
図1に示すように、下流側端縁24が気体吹出口16に近接するように配置される。車室にいる乗員は、気体吹出口16を介して、下流側端縁24を視認可能であるとともに、操作ノブ30を直接的に操作することで、三つのフィン20を回動させることができる。
【0030】
次に、風向調整装置1の作用について説明する。
【0031】
図2A~
図2Dを参照すると、操作ノブ30を有するフィン20に向けて通風路Cを流通してきた気体は、まず、最も上流側に位置する風上側端部34に到達する。この時点で気体の流れを阻害する部分(以下、「阻害部分」と表記する。)は、
図2Bに示す断面部分に相当する。次に、気体は、フィン20の第1主平面21及び第2主平面22上を通過する。この時点での阻害部分は、
図2Cに示す断面部分に相当する。そして、気体は、フィン20を超えて気体吹出口16に向かうが、フィン20を超えた直後の位置では、
図2Dに示す断面部分のように、阻害部分として、最も下流側に位置する風下側端部33が残存する。
【0032】
つまり、阻害部分は、当初は、
図2Bに示すように操作ノブ30の部位のみであるが、その後、
図2Cに示すように更にフィン20の部位が加わることで大きくなる。ここで、仮に操作ノブの幅が一定であったとすると(
図4参照)、
図2Cに対応する断面として、操作ノブの一定幅で規定される断面にそのままフィンの断面が加わるため、断面積の増加率が大きく、その結果、通気抵抗の増加率も大きい。これに対して、本実施形態では、操作ノブ30に狭小部36が設けられ、操作ノブ30の幅については、気体の流れに沿って幅W1から幅W2まで緩やかに狭まり、その後、幅W2から幅W1まで緩やかに広がる。そのため、
図2Bに示す状態から
図2Cに示す状態に変化するとき、阻害部分としてフィン20分の断面が加わったとしても、操作ノブ30自体の断面積は、当初より減少する。したがって、阻害部分の全体としては、断面積の増加率が抑えられ、その結果、通気抵抗の増加率も小さくなる。
【0033】
また、風向調整装置1では、操作ノブ30を有するフィン20の周囲において阻害部分の断面積の増加率が抑えられることのみならず、以下のような作用もある。
【0034】
図3は、風向調整装置1において、操作ノブ30を有するフィン20周りの気体の流れを説明する図である。
図3では、気体の流れが太線による複数の矢印で示されている。
【0035】
操作ノブ30に狭小部36が設けられていることで、狭小部36の近傍を流れる気体は、円弧状の側壁部35に案内され、フィン20の第1主平面21上及び第2主平面22上で比較的小さな乱流を発生させる。
【0036】
ここで、本実施形態に係る風向調整装置1との比較のために、操作ノブ30に狭小部36が設けられていない場合の作用について例示する。
【0037】
図4は、比較例としての風向調整装置において、操作ノブ130を有するフィン20周りの気体の流れを説明する図である。
図4では、
図3と同様に、気体の流れが太線による複数の矢印で示されている。なお、フィン20の形状は、本実施形態におけるものと同一であるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0038】
操作ノブ130は、本実施形態における操作ノブ30の形状に合わせて、風下側端部133及び風上側端部134、並びに、二つの側壁部135を有し、フィン20に対して厚み方向で一体化された、平型のブロック体である。ここで、二つの側壁部135同士の幅は、
図4中、幅W4で示されるように、一定である。つまり、操作ノブ130は、狭小部を有しない。
【0039】
操作ノブ130を有する比較例としての風向調整装置によれば、フィン20の第1主平面21上及び第2主平面22上では、乱流は発生しづらいが、操作ノブ130の風下側端部133の下流側近傍では、比較的大きな乱流が発生し得る。このような大きな乱流の発生により、気体の流れにおいて境界層の剥離領域が大きくなり、その結果、通気抵抗が大きくなる。
【0040】
これに対して、本実施形態では、
図3に示すように、狭小部36の近傍で、あえて小さな乱流を発生させることで、
図4に示したような風下側端部133の下流側近傍での大きな乱流の発生を予め抑えるので、結果として、通気抵抗の低下につながる。
【0041】
次に、風向調整装置1の効果について説明する。
【0042】
本実施形態の態様に係る風向調整装置1は、通風路Cを有するケース体10と、通風路Cの内部に配置され、第1主平面21又は第2主平面22に対して平行な中心軸AXを基準として回動可能な矩形板状のフィン20とを備える。また、風向調整装置1は、フィン20に対して厚み方向で一体化され、フィン20の厚みT1よりも厚い平型の操作ノブ30を備える。操作ノブ30は、各々フィン20と連続する二つの側壁部35の少なくとも一部同士で形成される狭小部36を有する。フィン20の中心軸AXに沿った方向での幅について、狭小部36の幅W2は、操作ノブ30の風下側端部33の幅W3よりも狭い。
【0043】
まず、風向調整装置1では、操作ノブ30は、通風路Cにおいて阻害部分となり得るものの、フィン20に対して厚み方向で一体化され、全体形状が平型であるので、気体の流れに対向する断面積を可能な限り小さくすることができる。
【0044】
また、車室内の乗員と対向する操作ノブ30の風下側端部33の幅W3は、乗員による操作性を維持するなどの種々の事由により、ある一定量の幅を要する。これに対して、風向調整装置1では、風下側端部33の幅W3を、例えば従来の操作ノブの幅と同等としつつ、操作ノブ30に幅W3よりも狭い幅W2を有する狭小部36を設ける。これにより、
図2A~
図2Dを参照して説明したように、気体の流れに沿ってフィン20の周囲で阻害部分が増加しても、狭小部36での断面積は、少なくとも風下側端部33での断面積よりも小さくなる。したがって、
図4に示した操作ノブ130が狭小部36を有しない場合と比較して、阻害部分の全体としての断面積の増加率が抑えられ、その結果、通風路Cにおける通気抵抗の増加率を小さくすることができる。
【0045】
例えば、各々のフィン20が中立状態にあるときの気流解析によれば、
図4に示した比較例の場合と比較して、通気抵抗が約4%低下し得る。なお、中立状態とは、すべてのフィン20が、通風路Cの延伸方向であるX方向に対して第1主平面21及び第2主平面22が平行となる姿勢にあり、気体吹出口16から放出される気体の風向が通風路Cの延伸方向に沿うような状態をいう。
【0046】
一方、例えば、各々のフィン20が下振り状態にあるときの気流解析によれば、同様の比較例の場合と比較して、通気抵抗が約5%低下し得る。つまり、フィン20が中立状態にあるときよりも、下振り状態にあるときの方が、通気抵抗の低下率が大きくなり得る。なお、下振り状態とは、すべてのフィン20が、通風路Cの延伸方向に対して第1主平面21及び第2主平面22が下方向に傾斜する姿勢にあり、気体吹出口16から放出される気体の風向が下向きとなる状態をいう。
【0047】
このように、本実施形態によれば、通風路Cでの通気抵抗を低減する風向調整装置1を提供することができる。一般に、風向調整装置が、通風路の開口面積が狭く設定されているような薄型である場合、又は、フィンの設置数が少ない場合などには、通風路の有効開口面積も小さくなる。これに対して、本実施形態に係る風向調整装置1は、例えば薄型である場合であっても、好適に通気抵抗を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、通風路Cでの通気抵抗が低減されることで、操作ノブ30が狭小部36を有しない場合よりも、送風音を低減することができる。更に、本実施形態によれば、操作ノブ30に関しては、部品構成又は生産性が狭小部36を有しない場合から大きく変化しないため、例えば高コスト化を抑える点で有利となり得る。
【0049】
また、風向調整装置1では、狭小部36の幅W2は、操作ノブ30の風上側端部34の幅W1よりも狭くてもよい。
【0050】
この風向調整装置1によれば、上記の通風路Cでの通気抵抗を低減するという効果を奏しつつ、風下側端部33の幅W3のみならず、風上側端部34の幅W1についても、従来の操作ノブの幅と同等とすることができる。
【0051】
また、風向調整装置1では、狭小部36を形成する側壁部35の少なくとも一部は、風下側端部33と風上側端部34との間で凹となる円弧状であってもよい。
【0052】
この風向調整装置1によれば、操作ノブ30の幅については、気体の流れに沿って、幅W1から幅W2まで緩やかに狭まり、その後、幅W2から幅W1まで緩やかに広がる。したがって、
図3及び
図4を参照して上記説明したように、狭小部36の近傍で小さな乱流を発生させやすくなるので、風下側端部33の下流側近傍での大きな乱流の発生を予め抑え、結果として、より通気抵抗を低減させることができる。
【0053】
ここで、
図3では、風下側端部33と風上側端部34との間の側壁部35全体が円弧状となる場合を例示したが、本実施形態は、これに限定されない。例えば、操作ノブ30において、側壁部35の一部では幅が一定であり、その他の一部では幅が円弧状に変化する狭小部36であってもよい。
【0054】
なお、上記説明では、狭小部36は、二つの側壁部35が双方とも円弧状に形成されることで構成されるものとしたが、本実施形態は、これに限定されない。例えば、二つの側壁部35のうち、一方の側壁部35のみが風下側端部33と風上側端部34との間で凹となる円弧状となり、他方の側壁部35は、中心軸AXに対して垂直となる平面で構成されてもよい。
【0055】
また、上記説明では、ケース体10において、通風路C及び気体吹出口16の開口面積が(開口幅W×開口高さH)で表されるような、通風路Cの断面形状が矩形となる場合を例示したが、本実施形態は、これに限定されない。通風路Cの断面形状は、丸形又は楕円形等であってもよい。
【0056】
更に、上記説明では、Z方向が鉛直方向に沿うものと規定し、フィン20が上振り状態又は下振り状態となり得る場合を例示した。しかし、フィン20の回転方向は、このような上下方向に限らない。例えば、上記例示での風向調整装置1は、フィン20の回動の基準となる中心軸AXが水平方向に沿うように、いわゆる横置きで車両に設置される。これに対して、風向調整装置1は、例えば、中心軸AXが垂直方向に沿うように、いわゆる縦置きで車両に設置されてもよい。この場合、フィン20の回転方向は、左右方向となる。つまり、風向調整装置1によれば、このように縦置きで設置されることで、左右方向で風向を調整することもできる。
【0057】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 風向調整装置
10 ケース体
20 フィン
21 第1主平面
22 第2主平面
30 操作ノブ
33 風下側端部
34 風上側端部
35 側壁部
36 狭小部
AX 中心軸
C 通風路
T1 フィンの厚み
T2 操作ノブの厚み
W1 風上側端部の幅
W2 狭小部の幅
W3 風下側端部の幅