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特開2023-173472作業実績分析システム及び作業実績分析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173472
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】作業実績分析システム及び作業実績分析方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20231130BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085755
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 悠
(72)【発明者】
【氏名】松井 遼平
(72)【発明者】
【氏名】川原 綾太朗
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 忍
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 新吾
(72)【発明者】
【氏名】皆川 操
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】作業者の行動履歴を、少ない測定項目や測定頻度によって詳細に分析することができる作業実績分析システム及び作業実績分析方法を提供する。
【解決手段】各場所が作業場所であるか否かを示す情報を保存した作業場所データベースと、作業者の時間ごとの滞在場所および作業実施時間の情報を保存した作業実績データベースとを有し、作業場所データベースと作業実績データベースの情報を用いて作業者の行動履歴を推定することを特徴とする作業実績分析システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各場所が作業場所であるか否かを示す情報を保存した作業場所データベースと、作業者の時間ごとの滞在場所および作業実施時間の情報を保存した作業実績データベースとを有し、前記作業場所データベースと前記作業実績データベースの情報を用いて作業者の行動履歴を推定することを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業実績分析システムであって、
作業者が定められた作業場所にいる場合といない場合の2通りと、作業者が作業中である場合と作業中でない場合の2通りとを、組み合わせて4つの場合に分類し、分類ごとに作業者が要した時間を集計することを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項3】
請求項1に記載の作業実績分析システムであって、
各場所において作業者が作業を行っていない場合の行動の候補を記録した非作業時間データベースを有し、非作業時間データベースを用いて作業者が作業を行っていない時間の行動を推定することを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項4】
請求項3に記載の作業実績分析システムであって、
前記非作業時間データベースは、複数の作業者に対してそれぞれ作成されることを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項5】
請求項3に記載の作業実績分析システムであって、
前記非作業時間データベースは、一人の作業員の一つの場所に対して複数の行動の候補を記録できることを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項6】
請求項5に記載の作業実績分析システムであって、
前記非作業時間データベースに記載される、前記複数の行動の候補に対し、前記非作業時間データベースは、前記複数の行動の候補に優先付けを行うための判定基準を記録できることを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項7】
請求項1に記載の作業実績分析システムであって、
作業者が定められた作業を開始するための条件である作業開始条件を記録した作業開始条件データベースを有し、作業開始条件データベースを用いて作業者が待機をさせられた要因を推定することを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項8】
請求項7に記載の作業実績分析システムであって、
前記作業開始条件データベースに記載される作業開始条件に他の作業者の作業完了が含まれることを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項9】
請求項7に記載の作業実績分析システムであって、
各場所において作業者が作業を行っていない場合の行動の候補を記録した非作業時間データベースを有し、作業者が作業を行っていない理由が前記作業開始条件によらない場合には、前記非作業時間データベースによって作業者の行動を推定することを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項10】
請求項7に記載の作業実績分析システムであって、
任意の時刻の作業者がいくつの作業開始条件によって待機をさせられたかを判定する機能を有する作業実績分析システム。
【請求項11】
請求項1に記載の作業実績分析システムであって、
作業者の行動履歴の分析結果を表示する表示部を備えることを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項12】
請求項11に記載の作業実績分析システムであって、
前記表示部に表示される分析結果は、複数の作業者の行動履歴が時間軸上に表示されることを特徴とする作業実績分析システム。
【請求項13】
各場所が作業場所であるか否かを示す情報を保存した作業場所データベースと、作業者の時間ごとの滞在場所および作業実施時間の情報を保存した作業実績データベースとを利用する計算機により、前記作業場所データベースと前記作業実績データベースの情報を用いて作業者の行動履歴を推定することを特徴とする作業実績分析方法。
【請求項14】
請求項13に記載の作業実績分析方法であって、
作業者が定められた作業場所にいる場合といない場合の2通りと、作業者が作業中である場合と作業中でない場合の2通りとを、組み合わせて4つの場合に分類し、分類ごとに作業者が要した時間を集計することを特徴とする作業実績分析方法。
【請求項15】
請求項13に記載の作業実績分析方法であって、
前記計算機は、各場所において作業者が作業を行っていない場合の行動の候補を記録した非作業時間データベースを利用し、非作業時間データベースを用いて作業者が作業を行っていない時間の行動を推定することを特徴とする作業実績分析方法。
【請求項16】
請求項13に記載の作業実績分析方法であって、
前記計算機は、作業者が定められた作業を開始するための条件である作業開始条件を記録した作業開始条件データベースを有し、作業開始条件データベースを用いて作業者が待機をさせられた要因を推定することを特徴とする作業実績分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の行動の履歴や要因を推定する作業実績分析システム及び作業実績分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所の定期点検など、大規模な施設や設備の保守作業などには多くの人月を要するものがある。しかし、これらの保守作業の中には、作業の工数を正確に把握できているものばかりではなく、作業計画が効率的でないものも多く存在する。このため、効率的な作業計画を立てることができれば、施設や設備の保守期間を短くすることができ、サービスの停止期間を短縮することができる。
【0003】
大規模な施設や設備の保守作業は、自動化されていない作業も多いため、多くの作業は作業者による人手作業に依っている。そのため、作業工数の把握とは、作業者による作業の時間を把握することである。また、作業計画の改善点を知るためには、会議、移動、待機など、作業以外に要した時間の割合や、待機の要因を把握し、作業に当てられる時間を増やすための分析も必要である。
【0004】
例えば、特許文献1には、作業特定用ICタグによって収集された情報をもとに、複数の作業工程に分けられた作業工程をわかりやすく表示し、作業現場で発生する無駄や問題を管理者などが容易に把握できる作業管理システムが記載されている。特許文献1に記載の方法では、作業の進捗をダイヤグラムによってわかりやすく視認できるため、計画と実績の差異や、作業者待ちや機械待ちなどによる滞留の有無を確認しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-40007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、作業実績のデータを分析するため、作業の開始や終了が計画よりも遅れたことは示せるが、作業が遅れた原因を特定したり、作業以外に要した時間の内訳を示すことはできない。また、自動化が進められた製造ラインなどにおいては、設備の稼働状態をモニタリングし、モニタリング結果を分析することにより、計画と実績の差を確認することができるが、発電所の定期点検など、作業の主体が作業者である場合には、作業者の行動履歴をもとにした分析を行わなければならない。特に、作業者の場合には、会議、移動、待機など、作業以外に要する時間があることや、作業者が施設内のどの場所にいるかも重要な分析項目である。
【0007】
以上のことから本発明においては、作業者の行動履歴を、少ない測定項目や測定頻度によって詳細に分析することができる作業実績分析システム及び作業実績分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のことから本発明においては、「各場所が作業場所であるか否かを示す情報を保存した作業場所データベースと、作業者の時間ごとの滞在場所および作業実施時間の情報を保存した作業実績データベースとを有し、作業場所データベースと作業実績データベースの情報を用いて作業者の行動履歴を推定することを特徴とする作業実績分析システム」としたものである。
【0009】
また本発明においては、「各場所が作業場所であるか否かを示す情報を保存した作業場所データベースと、作業者の時間ごとの滞在場所および作業実施時間の情報を保存した作業実績データベースとを利用する計算機により、前記作業場所データベースと前記作業実績データベースの情報を用いて作業者の行動履歴を推定することを特徴とする作業実績分析方法」としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者の行動履歴を、少ない測定項目や測定頻度によって詳細に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る作業実績分析システムの構成例を示す図。
図2】作業実績データベースDB1に記録される作業者の所在地情報D11の例を示す図。
図3】作業実績データベースDB1に記録される作業時間情報D12の例を示す図。
図4】作業場所データベースDB2に記録される情報の例を示す図。
図5】作業実績分析部13のうち、蓄積データ処理段階の処理フローを示す図。
図6a図2の所在地情報D11を時系列的に表記した図。
図6b】所在地情報D11に作業場所のデータD2を反映して時系列的に表記した図。
図6c】正味の労働時間のみを時系列的に表記した図。
図6d】分類した結果の例を時系列的に表記した図。
図7】作業実績分析部13のうち、作業実績分析段階の処理フローを示す図。
図8】分類パターンの例を示す図。
図9】作業者の行動実績の分析結果をグラフとして表示する方法の例を示す図。
図10】本発明の実施例2に係る作業実績分析システム1の構成例を示す図。
図11】非作業時間データベースDB4に記録される情報の例を示す図。
図12】非作業場所における行動の候補を選択するフローの例を示す図。
図13】非作業時間の内訳をグラフとして表示する方法の例を示す図。
図14】本発明の実施例3に係る作業実績分析システム1の構成例を示す図。
図15】、実施例3における一連の分析処理事例を示すフローを示す図。
図16】作業開始条件データベースDB5に記録される情報の例を示す図。
図17】作業場所における作業以外の行動の候補を選択するフローの例を示す図。
図18】作業場所における作業以外の行動の内訳をグラフとして表示する例を示す図。
図19】全ての分析方法を反映した結果をグラフに表示した図。
図20】行動実績の詳細な分析結果をタイミングチャートとして表示する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施例は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施例の中で説明される諸要素及びその組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【実施例0013】
図1から図9を参照して、本発明の実施例1に係る作業実績分析システム及び作業実績分析方法について説明する。図1は、本発明の実施例1に係る作業実績分析システムの構成例を示す図である。
【0014】
計算機を用いて構成される作業実績分析システム1は、システムの構成の一例として、入力部11と、作業実績データベースDB1と、作業場所データベースDB2と、作業実績分析部13と、作業実績分析結果データベースDB3と、表示部18を備える。
【0015】
図2は、作業実績データベースDB1に記録される作業者の所在地情報D11の例を示す図である。作業者の所在地情報D11は、少なくとも、時刻の情報D11aと場所(所在地)の情報D11bを含む。時刻情報D11aは、作業者が該当の場所にいた時刻を示す情報であるが、該当場所(例えば作業者事務所)に入場した時刻(8:50)と該当場所から退場した時刻(9:15)の情報を含んでいることが望ましい。所在地情報D11bは、作業者事務所、監督者事務所、通路(通路1、2)、更衣室、作業室(作業室1、2)など、作業者が滞在した場所を示す情報である。なお場所の分解能は、分析に求める分解能によって検討されるべきであり、例えば重要な建物については、作業者が建物の中のどの部屋にいたかを記録するが、重要度の低い建物については建物の中にいたことだけを記録すればよいなど、適当な分解能に設定されることが望ましい。
【0016】
図2に示した作業者の所在地情報D11は、作業者各人に対して取得され、これによれば特定の作業者の特定日における時間ごとの移動履歴が場所と時間の情報として記録され、把握されている。この結果として、作業者全員について把握される。但し、ここでの時間は、該当場所への入退出時刻として把握されたものである。
【0017】
図3は、作業実績データベースDB1に記録される作業時間情報D12の例を示す図である。作業時間情報D12は、作業者の作業時間を記録した情報であり、少なくとも、時刻の情報D12aと作業中であったことを示す情報D12bを含む。
【0018】
作業中であったか否かを示す情報D12bは、フラグのみであってもよいし、作業名や作業IDと時刻の対応付けにより作業時間を示すものでもよい。時刻情報D12aは、作業者が作業を行っていた時刻を示す情報であるが、該当作業(作業1)を開始した時刻(9:55)と該当作業を終了した時刻(10:28)の情報を含んでいることが望ましい。
【0019】
作業実績データベースDB1の構造によっては、図2の作業者の所在地情報D11と図3の作業時間情報D12は別々の表ではなく、結合された表であってもよい。また、これらの情報は、所在地情報D11や作業時間情報D12を参照できる形式であれば、表以外の形式であってもよい。
【0020】
作業実績データベースDB1に記録される所在地情報D11や作業時間情報D12は、分析対象の作業に関わる全ての作業者の作業実績を記録するものであってもよいし、作業班ごとに1名の作業実績を記録するなど、特定の作業者だけの作業実績を記録するものであってもよい。また、作業者だけでなく、監督者など、作業者以外の行動実績を記録してもよい。例えば監督者の場合には、立会検査などが作業に当たり、監督者の行動履歴の分析も、定期点検などの作業の分析や改善に役立つ場合がある。
【0021】
図4は、作業場所データベースDB2に記録される情報の例を示す図である。作業場所データベースDB2は、少なくとも、作業場所データD2として場所を特定できる名称や番号などの情報D2aと、各場所が作業場所であるか否かを示す情報D2bを含む。
【0022】
作業場所データベースDB2に記録される情報D2は、図2に示した所在地情報D11に記録される場所(作業者事務所、監督者事務所、通路、更衣室、作業室など)を網羅する情報であることが望ましい。
【0023】
また情報D2bは、その場所が作業場所か、そうでないかを例えばYes、Noで記述している。図4の例では、居室、会議室、休憩室、更衣室、通路、作業者事務所、監督者事務所などは、作業場所ではないとされ、作業室が作業場所と定義されている。
【0024】
次に作業実績分析部13の処理について説明すると、ここでは蓄積データ処理段階と作業実績分析段階の2段階処理とされている。図5は、作業実績分析部13のうち、主として蓄積データ処理段階の処理フローを示す図である。
【0025】
図5に示す作業実績分析部13の蓄積データ処理段階の処理では、最初に処理ステップS1において、作業実績データベースDB1に記録されている作業者の所在地情報D11を時系列情報として取り込む。図6aは、図2の所在地情報D11を時系列的に表記した図である。この作業者は、出勤時間後に作業者事務所、監督者事務所、作業室1、作業室2へと順次移動しながら業務を行っている。
【0026】
次に処理ステップS2において、作業場所データベースDB2に記録されている作業場所情報D2を時系列情報として取り込み、処理ステップS1で求めた時系列的な所在地情報D11に、時系列的に作業場所のデータD2を反映する。図6bは、所在地情報D11に作業場所のデータD2を反映して時系列的に表記した図である。これによれば、作業者事務所と監督者事務所は作業場所としては定義されていない(以下非作業場所という)ので図示上では白抜き表示とされ、作業室1、作業室2は作業場所として定義されているので図示上では背景色表示とされることで、所在地情報D11に作業場所のデータD2を反映したことを示している。
【0027】
さらに処理ステップS3において、作業実績データベースDB1に記録される作業時間情報D12を時系列情報として取り込む。図6cは、図3の作業時間情報D12を時系列的に表記した図である。この作業者は、作業1、作業2、作業3、立会検査を順に行っている。
【0028】
図2の時刻D11aと、図3の時刻D12aを作業の観点から比較すると、この作業者は9:53に作業室1に入室し、10:30に退室しているが、実際の作業は9:55から10:28までであったことから、正味の労働時間を処理ステップS3においてもとめたものである。図6cでは、正味の労働時間のみを時系列表示している。
【0029】
図6cを見ると、正味の労働時間が現場作業時間であるのに対し、その他の時間は現場作業の準備期間や打ち合わせや移動のための時間であり、これらの時間帯を含めて本発明においては作業実績を分析しようとしている。
【0030】
図5の処理ステップS4が作業実績分析段階を示しており、図6bと図6cを重ね合わせ、作業者が作業場所にいたか非作業場所にいたか、および、作業者が作業中であったか否かの情報を重ね合わせて行動履歴を4つの分類に分けて表すものである。この詳細処理が図7に示されている。なお、図7の処理手順は一例であり、図5の処理手順を受け継ぐ形で実行されていてもよい。実現手法は様々であり、ここではその一例を述べている。
【0031】
図7の処理ではまず、処理ステップS11において作業者が特定され、処理ステップS12において時刻が順次指定され、処理ステップS13において作業実績データベースDB1に記録される作業時間情報D12を参照する。
【0032】
処理ステップS14において作業時間情報D12が作業中(yes)を示すか、示さないか(No)を判別し、それぞれの場合に処理ステップS15において作業実績データベースDB1に記録されている作業者の所在地情報D11と作業場所データベースDB2に記録されている作業場所情報D2を参照する。
【0033】
処理ステップS14の判断で作業中であるとき(yes)、処理ステップS16において作業場所を確認し、作業場所(yes)であるときに処理ステップS18においてこの時間を分類4に定義し、同じく作業場所を確認し作業場所(No)でないときに処理ステップS19においてこの時間を分類2に定義する。
【0034】
また処理ステップS14の判断で作業中でないとき(No)、処理ステップS17において作業場所を確認し、作業場所(yes)であるときに処理ステップS20においてこの時間を分類3に定義し、同じく作業場所を確認し作業場所(No)でないときに処理ステップS21においてこの時間を分類1に定義する。
【0035】
処理ステップS22では、時刻を変更、更新しながら処理ステップS12に戻り、当該日についての行動を確認する。同様に処理ステップS23では、作業者を変更、更新しながら処理ステップS11に戻り、対象者全員についての行動を確認する。
【0036】
図6dは、分類した結果の例を示している。時間帯ごとに、いずれかの分類とされている。
【0037】
上記したように、本発明の実施例1に係る分析方法では、作業者が作業中であったか否か、作業者の所在地が作業場所であったか否かによって、作業者の行動履歴を4つのパターンに分類する。ある時刻に作業者が作業中であったか否かは、作業実績データベースDB1の作業時間情報D12によって確認する。作業者がいた場所が作業場所であったか否かは、作業実績データベースDB1の所在地情報D11と作業場所データベースDB2を用いて確認する。
【0038】
図8は、分類パターンを示す図である。ここでは、便宜上、作業者が作業中ではなく、作業場所にもいない場合を「分類1」、作業者が作業中であるが、作業場所にいない場合を「分類2」、作業者が作業中ではないが、作業場所にいる場合を「分類3」、作業者が作業中であり、作業場所にいる場合を「分類4」とする。このように作業者の行動履歴を4つのパターンに分類することによって推定できる事柄を以下に説明する。
【0039】
分類1は、作業者が作業中ではなく、作業場所にいないため、作業者は会議、移動、など、作業以外の行動を行っていたことがわかる。分類2は、作業場所以外で作業を行っているため、計画外の作業を行っていた時間である可能性が高いことが推定できる。例えば、前の作業班の作業が長引いたために作業場所が使えず、作業場所以外での作業を余儀なくされた、あるいは不具合の対応のために作業場所以外で応急処置を行ったことなどが考えられる。
【0040】
分類2は計画された行動ではない可能性が高いため、何が行われていたかを後から聞き取り調査などによって分析することにより、作業改善を図るべき項目である。分類3は、作業者が作業場所にいるが、作業を行っていない時間であり、何かしらの要因によって待機をさせられていた可能性が高い時間であると推定することができる。例えば、作業者が次に行う作業が、他の作業者が別の作業場所で行っている作業が終了しないと開始できない場合の待機や、立会検査の監督者が現場に到着しないための待機などが考えられる。ここで、作業定義によっては、作業の準備や片付けも分類3に該当してしまう。
【0041】
しかし、本実施例による分類の効果を十分に得るためには、作業の準備や片付けなどが分類3にならないための工夫を行っておくことが望ましい。具体的には、作業の準備や片づけが簡易な作業である場合には、準備と片付けを含めた一連の行動を作業と定義する。あるいは、準備や片付けの重要度が高く、詳細に分析すべき対象である場合には、準備のみ、あるいは片付けのみを一つの作業であると捉え、作業時間情報D12によって管理すべきである。このような工夫を行っておくことにより、分類3は、何かしらの要因によって作業者が待機させられていた可能性が高い時間であると推定することができる。
【0042】
分類4は、作業者が作業場所で作業を行っていた時間であり、計画された作業を行っていた可能性が高い時間である。また、複数の作業場所がある場合には、指定の作業場所であったかを否かを判定してもよい。また、作業の定義によって、分析の細かさや取得するデータ量が異なる。詳細に分析したい作業については、作業を複数に分割したものをそれぞれ作業と捉え、作業実績データベースDB1に情報を記録しておくことにより、本実施例の方法によって詳細な分析ができるが、データ取得の手間が増大する。一方、分析の重要度が高くない作業群に対しては、複数の作業をまとめて一つの作業とすることによって、取得するデータ量と分析の手間を削減することができる。
【0043】
以上のように、作業者が作業中であったか否か、作業者の所在地が作業場所であったか否かによって分類を行うことにより、分類1は会議や移動などの作業以外の行動、分類2は計画外の作業、分類3は待機、分類4は計画された作業、の時間であることが高いと、簡易に推定することができる。分類結果は、作業実績分析結果データベースDB3に記憶される。
【0044】
図9は、作業者の行動実績の分析結果をグラフとして表示する方法の例を示す図である。分析結果を表示部18にグラフなどによって可視化することにより、どの分類に要した時間が長かったかを容易に把握することができる。
【0045】
分析結果の可視化は、図9に示すような円グラフでなく、ガントチャートのように時刻情報を含んだ可視化方法によって、時刻ごとにどの分類の行動を行っていたかをわかるようにしてもよいし、作業者ごとの行動実績を把握しやすく表示する棒グラフであってもよいし、文章などグラフでない表示方法で合ってもよい。
【0046】
また、役職や所属会社などの特性と作業実績データベースDB1を関連付けた情報を加えて分析を行えば、役職ごとや所属会社ごとの分類を可視化することも可能である。また、分類4については、作業時間情報D12によって作業の種別も明らかになっている場合には、図6に示した表記に加えて、作業ごとに要した時間を示すグラフとしてもよい。
【0047】
また、本発明の要点は行動実績を分析することであるため、表示部は作業実績分析システム1の中に含まれず、作業実績分析システム1が出力した情報をもとに別のシステムによって可視化される場合であっても、本発明の範囲に含まれる。
【0048】
本実施例に示した分析を行うことにより、どの分類に要した時間が長いか、あるいはどの分類において計画した時間との差異が大きいかを容易に把握することができる。そのため、発電所の定期点検などにおいて、作業以外の行動に要する時間を削減して作業時間を確保するための施策や、作業プロセスの改善、作業計画の改良を行うための情報を得ることができる。
【0049】
また、作業者の行動を全て記録することは、記録自体が作業者や記録者の負担となることが考えられるが、本実施例に示す方法によれば、作業者の行動履歴の分析のために必要な情報は限定的であり、実用性が高い方法である。
【実施例0050】
図10から図13を用いて、本発明の実施例2について説明する。実施例2は、以下に説明する点を除き、実施例1と同一である。
【0051】
図10は、本発明の実施例2に係る作業実績分析システム1の構成例を示す。実施例2の作業実績分析システム1は、実施例1の構成に加えて、非作業時間データベースDB4と作業実績詳細分析部16とを備える。
【0052】
図11は非作業時間データベースDB4に記録される非作業時間の情報D4の例を示す図である。非作業時間データベースDB4は、実施例1における分類1および分類3の内容を、より詳細に分析するために用いられる。非作業時間データベースDB4は、少なくとも、場所を特定できる名称や番号などの情報D4a(事務所や休憩室、更衣室、通路、作業室など)と、作業者がそれぞれの場所におり、作業をしていない時間において行っている可能性が高い行動の情報D4b(事務所待機、打ち合わせ、休憩、着替え、移動、現場待機など)とを含む。
【0053】
非作業時間データベースDB4に記録される情報は、図2に示した所在地情報D11に記録される場所を網羅する情報であることが望ましい。ここで、作業者が複数存在し、作業者ごとに各場所での非作業時間における行動が異なる場合には、作業者ごとに異なる情報を備えたデータベースであってもよい。また、本発明において作業者と記載している個所は、監督者D4cなど、分析対象の作業に関わる作業者以外の人であってもよい。
【0054】
図12は非作業場所における行動の候補を選択するフローの例を示す図である。図示の例では、休憩時間であることを処理ステップS31で確認して、Yesである場合は、処理ステップS32において休憩時間と定義し、Noである場合は処理ステップS33において、例えば非作業時間データベースDB4を参照して、休憩以外の行動として適宜定義する。
【0055】
なお、休憩時間と定義がある場所において作業を行っていない時間の行動の候補が複数ある場合には、非作業時間データベースDB4は一つの場所に対して複数の候補を持っていてもよく、また、複数の候補のうち、どの候補が持っても適当であるかを判定するための条件を備えていてもよい。
【0056】
複数の候補とは、例えば、作業者が事務所におり、かつ作業を行っていない場合の時間の行動の候補が、1つは事務所待機であり、もう一つは休憩時間である場合である。また、判定するための条件とは、例えば分析する時刻が休憩時間帯か否かであり、休憩時間であれば、作業者の行動は休憩である可能性が高く、休憩時間でなければ作業者の行動は非作業時間データベースDB4に記載の休憩以外の行動である可能性が高いとすることができる。
【0057】
図10において、作業実績詳細分析部16は、実施例1において分類1と分類3に区分けされた事例の場合に、作業実績データベースDB1の所在地情報D11と、非作業時間データベースDB4の情報をもとに、作業中でない作業者が所在する場所をもとに、作業者が作業以外に要した時間をより詳細に分析する。
【0058】
図13は非作業時間の内訳をグラフとして表示する方法の例を示す図である。非作業時間データベースDB4を用いることにより、非作業時間の作業者の行動をより詳細に推定し、可視化することができる。これにより、作業以外に要する時間のどの部分を削減すれば作業時間をより長く確保することができるかを分析することが容易になる。また、図13は非作業時間をすべてまとめて分析した結果を示しているが、実施例1の分類1と分類3を分けて分析した結果を表示してもよい。
【実施例0059】
図14から図20を用いて、本発明の実施例3に係る作業実績分析システムについて説明する。実施例3は、以下に説明する点を除き、実施例1または実施例2と同一である。なお、本実施例では、主な分析対象である作業者を作業者Aとし、作業者Aの作業に影響のある人物を作業者Bおよび監督者とする。
【0060】
図14は、実施例3に係る作業実績分析システム11の構成例を示す。実施例3の作業実績分析システム1は、実施例2の構成に加えて、作業開始条件データベースDB5を備え、実施例1および実施例2における分類3の内容をより詳細に分析するために用いられる。
【0061】
図15は、実施例3における一連の分析処理事例を示すフローチャートである。このうち、上段に示す処理ステップS3、S4までの処理は図5と同じ考え方で処理されたものであり、ここではすでに分類1、2、3、4に区分されたものとする。かつ分類2、分類4はそれぞれ計画外の作業、あるいは作業時間情報としてすでに別途分析の対象となっているものとする。
【0062】
また分類1は、実施例2に従い処理されており、例えば処理ステップS41において分類1とされた情報が非作業時間データベースDB4から読み出され、処理ステップS42において非作業時間の行動履歴を図12に処理により推定し、処理ステップS43において分類1の詳細分析結果として図13のグラフ表示の情報を得ている。
【0063】
実施例3では、分類3の情報について、作業開始条件データベースDB5に記述された条件に従った処理を実行する。まず処理ステップS51において分類3とされた情報が作業開始条件データベースDB5から読み出される。
【0064】
図16は、作業開始条件データベースDB5に記録される情報の例を示す図である。作業開始条件データベースDB5は、少なくとも、作業を特定できる名称や番号などの情報(作業名D5a)と、各作業についての作業開始条件(D5b、D5c、D5d)を含む。
【0065】
作業開始条件とは、作業者Aが次に行う作業を開始するために満たさなくてはならない条件であり、例えば、作業者Aが作業場所にいること、作業者A自身の一つ前の作業が完了していること、作業者Bの関連作業が終了していること、立会検査において、監督者が作業場所に到着していることなどである。
【0066】
作業開始条件は、作業実績データベースDB1に記録された情報をもとに、条件を満たしているか確認できるものであることが望ましい。例えば、作業者Aや監督者が作業場所にいることは所在地情報D11によって確認ができ、作業者A自身の作業の完了情報や、作業者Bの関連作業の完了情報は作業時間情報D12によって確認ができる。
【0067】
図15において分類3は、処理ステップS51の判断で、作業開始条件に合致した情報のみを抽出して処理するが、基本的な考え方は分類1と同じものであり、例えば処理ステップS41Aにおいて分類3、かつ作業開始条件に合致した情報が非作業時間データベースDB4から読み出され、処理ステップS42Aにおいて非作業時間の行動履歴を図17の処理により推定し、処理ステップS43Aにおいて分類3の詳細分析結果として図18のグラフ表示の情報を得ている。
【0068】
図17は、作業場所における作業以外の行動の候補を選択するフローの例を示す図である。図15の処理ステップS42Aの詳細処理内容を示している。この処理フローでは、処理ステップS61、S62、S63のそれぞれにおいて、「作業開始条件1、2、3を満たしている」ことを個別に確認し、満たしていない場合には、それぞれ処理ステップS62、S64、S66のそれぞれにおいて作業開始条件1、2、3による待機」と認定処理する。つまり、分析対象の作業について、ある時刻において、作業開始条件データベースDB5に記載の作業開始条件が満たされていたか否かを判定する。
【0069】
そのうえで処理ステップS67の判断で、「作業開始条件が一つでも満たされていなかった」場合には、作業者は作業場所において、作業開始条件が満たされていなかったことにより待機させられていたことがわかるので、処理ステップS69において「作業開始条件による待機」とされる。なお図17の判断で、満たされない作業開始条件は、1つの場合もあるし、複数の場合もある。
【0070】
他方、すべての作業開始条件が満たされている場合には、作業者の所在地に応じて非作業場所データベースDB4に記載の行動であったと推定することができ、処理ステップS68において非作業場所データベースDB4を参照する処理を行う。なお、作業開始条件のうち、作業者自身が作業場所にいたことや、作業者自身の前工程の作業が完了したことなどは、作業開始条件ではあるが作業者を待機させる要因ではない。そのため、作業開始条件のうち、作業者本人の行動による条件は、作業者を待機させた要因としなくてもよい。
【0071】
図18は、作業場所における作業以外の行動の内訳をグラフとして表示する方法の例を示す図である。作業開始条件は、同時に複数の条件が満たされていない場合もあるため、グラフでは、1つの作業開始条件による待機は項目ごとに待機時間を示し、2つ以上の作業開始条件による待機は、待機要因の数ごとに集計を行うなどの工夫をすることができる。1つの作業開始条件による待機時間は、該当の要因を解消することによって待機時間を解消できるため、対策のコストに対して得られる効果が大きい。
【0072】
一方、複数の作業開始条件による待機は、待機要因を全て対策しなければ待機時間を解消できないため、対策のコストが大きい。なお、作業開始条件に依らない待機時間は、図17のフローチャートにおいて、全ての作業開始条件を満たしている場合であり、非作業場所データベースDB4により作業者の所在地によって作業以外の行動を分類したものである。このグラフは、一人の作業者を対象にして分析した結果であってもよいし、あるいは複数の作業者の分析結果をまとめて表示した結果であってもよい。
【0073】
以上のように、実施例3に記載の方法によれば、作業開始条件データベースDB5を用いて分析を行うことにより、分類3の場合において、作業者が作業場所において作業以外の行動をしていた場合の内訳を詳細に分析することが可能である。また、どの待機要因を解消することによって作業効率化の効果が大きいかを可視化することができる。
【0074】
図19はここまでに説明した全ての分析方法を反映した結果をグラフに表示したものである。実施例1による4つの分類に対し、実施例2によって分類1および分類3の詳細な分析を実施し、さらに実施例3によって分類3をさらに詳細に分析する。また、分類4は作業時間情報D12によって明らかである。
【0075】
本発明の実施例の中では触れていないが、分類2についても、何かしらの方法によってさらに詳細な分析を加えてもよい。例えば、作業場所以外での作業が行われたタイミングによって分析することが考えられる。仮に、該当の作業が作業4であるとするとき、作業4が最初に実施された場所が作業場所以外であれば、作業場所が別の作業者によって占有されているために、作業4を定められた作業場所以外で行った可能性が高いとする。また、定められた作業場所によって作業4が行われた後、定められた作業場所以外で作業4が再開された場合は、作業4に不備があり、作業者が空きスペースで手戻り作業を行った可能性が高いとする分析方法が考えられる。
【0076】
図20は、行動実績の詳細な分析結果をタイミングチャートとして表示する方法の例を示す図である。ここでは、作業者Aに着目した分析を行っており、作業者Aの作業に影響を与えうる人物として、作業者Bと立会検査監督者の行動履歴も表示している。図20のように、時間軸に沿って行動34を表示することにより、作業者Bによる作業B1の完了や立会検査監督者の到着などの作業開始条件35によって作業者Aが待機させられた待機時間36をわかりやすく示すことができる。また、各行動34の幅は、それぞれの行動に要した時間に比例しているため、工数の実態を把握することもできる。
【0077】
以上、本発明の実施例1、2、3について説明したが、実施例は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施例の中で説明される諸要素及びその組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。例えば、本発明に用いられる各データベースは、それぞれが独立したデータベースである必要はなく、本発明において示した情報を提供できるデータベースであれば、本発明で示したデータベースが結合されたものであってもよいし、本発明に示していないデータベースと結合されていてもよい。また、本発明においては、一部の表現において、作業と作業以外の行動を合わせたものを行動と呼んでいるが、解釈の破綻しない範囲において、作業と行動を読み替えてもよい。また、本発明の範囲は保守作業にとどまらず、製造、建設やその他の業種であっても、本発明が示す方法によって作業者の行動の分析を行うことができる。
【0078】
以上の分析において必要な情報は、事前あるいは事後に用意ができる各種データベースを除くと、現場から収集すべき情報は作業者の時間ごとの滞在場所および作業実施時間の情報を保存した作業実績データベースDB1のみであるため、測定項目や測定頻度を少ない数に留めることができ、作業者や計測者の負担の少ない方法とすることができる。
【符号の説明】
【0079】
1…作業実績分析システム
DB1…作業実績データベース
DB2…作業場所データベース
DB3…作業実績分析結果データベース
DB4…非作業時間データベース
DB5…作業開始条件データベース
13…作業実績分析部
16…作業実績詳細分析部
18…表示部
D11…所在地情報
D12…作業時間情報
31…作業者A
32…作業者B
33…立会検査監督者
34…行動
35…作業開始条件
36…待機時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20