(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173493
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】熱膨張性パテ組成物、及び目地材
(51)【国際特許分類】
C09K 21/02 20060101AFI20231130BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20231130BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C09K21/02
C08G59/42
C09K3/10 L
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085787
(22)【出願日】2022-05-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【弁理士】
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
【テーマコード(参考)】
4H017
4H028
4J036
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AA29
4H017AB08
4H017AC01
4H017AD05
4H017AE03
4H028AA03
4H028AB03
4H028BA01
4J036AA05
4J036AB01
4J036AK19
4J036DB02
4J036DB17
4J036FA02
4J036FA06
4J036FB02
4J036FB18
4J036JA07
(57)【要約】
【課題】乾燥時の形状安定性及び熱膨張後の形状安定性を有し、かつ乾燥後に十分な耐水性を有する熱膨張性パテ組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂と、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、を含む耐火材であって、下記式(1)により求められる重量減少率が、10重量%未満であり、前記耐火材100重量部に対して、前記熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、前記無機化合物の含有量が、21~95重量部である、耐火材。
重量減少率(重量%)=(W1-W2)/(W1)×100
W1:30mm×30mm×4mm厚の耐火材の重量
W2:前記耐火材を水100ml中に室温で24時間浸漬した後、110℃、24時間の条件で乾燥したときの耐火材の重量
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂と、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、を含む耐火材であって、
下記式(1)により求められる重量減少率が、10重量%未満であり、
前記耐火材100重量部に対して、
前記熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、
前記無機化合物の含有量が、21~95重量部である、
耐火材。
重量減少率(重量%)=(W1-W2)/(W1)×100
W1:30mm×30mm×4mm厚の耐火材の重量
W2:前記耐火材を水100ml中に室温で24時間浸漬した後、110℃、24時間の条件で乾燥したときの耐火材の重量
【請求項2】
ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂と、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、を含む耐火材であって、
前記耐火材100重量部に対して、
前記樹脂の含有量が、0.1~30重量部であり、
前記エポキシ系化合物の含有量が、0.03~65重量部であり、
前記熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、
前記無機化合物の含有量が、21~95重量部である、
耐火材。
【請求項3】
前記樹脂が、セルロース誘導体を含む、
請求項1又は2に記載の耐火材。
【請求項4】
前記エポキシ系化合物が、アミンを含有するエポキシ系化合物を含む、
請求項1又は2に記載の耐火材。
【請求項5】
前記無機化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルシウム塩、及びリン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
請求項1又は2に記載の耐火材。
【請求項6】
ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂と、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、水と、を含む熱膨張性パテ組成物であって、
前記樹脂、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、
前記樹脂の含有量が、0.1~30重量部であり、
前記エポキシ系化合物の含有量が、0.03~65重量部であり、
前記熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、
前記無機化合物の含有量が、21~95重量部であり、
前記水の含有量が、50~180重量部である、
熱膨張性パテ組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の熱膨張性パテ組成物を調製するための第1剤と第2剤を含有する二剤型組成物セットであって、
前記第1剤が、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂と、水と、を含み、
前記第2剤が、エポキシ系化合物と、水と、を含む、
二剤型組成物セット。
【請求項8】
前記第1剤が、前記エポキシ系化合物を含有せず、
前記第2剤が、前記樹脂を含有しない、
請求項7に記載の二剤型組成物セット。
【請求項9】
前記第1剤が、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、を含む、
請求項7に記載の二剤型組成物セット。
【請求項10】
前記樹脂が、セルロース誘導体を含む、
請求項7に記載の二剤型組成物セット。
【請求項11】
前記エポキシ系化合物が、アミンを含有するエポキシ系化合物を含む、
請求項7に記載の二剤型組成物セット。
【請求項12】
前記第1剤及び/又は前記第2剤が、無機化合物を含み、
前記無機化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルシウム塩、及びリン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
請求項7に記載の二剤型組成物セット。
【請求項13】
請求項6に記載の熱膨張性パテ組成物を用いて施工する施工工程を有する、
防火区画貫通部埋め戻し処理方法。
【請求項14】
請求項7に記載の二剤型組成物セットの第1剤と第2剤を混合して、前記熱膨張性パテ組成物を調製する調製工程をさらに有する、
請求項13に記載の防火区画貫通部埋め戻し処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性パテ組成物、及び目地材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物等において建築基準法で定められた防火区画等に配管類や電力ケーブルや通信ケーブル等のケーブル類を貫通させる場合、延焼防止等の観点から防火区画等には一定の耐火性能が求められている。そのため、建築物内の配管類・ケーブル類と防火壁等との間には、防火性能を付与した防火区画貫通部埋め戻し処理材として、樹脂に金属水和物等を配合したパテ状の耐火材が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、施工作業性の向上を目的として、有機バインダ、熱膨張性化合物、無機粒子、繊維、及び水を所定の割合で含む熱膨張性パテ組成物が開示されている。また、特許文献2には、アルミガラスクロス面への密着性の向上を目的として、有機バインダ、熱膨張性黒鉛、無機リン系化合物、その他無機化合物、及び水を所定の割合で含む熱膨張性パテ組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-004315号
【特許文献2】特許6896134号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような耐火材には、高い熱膨張性や熱膨張後の形状安定性が求められるが、さらにこれに加えて、施工後に湿気や雨などで軟化や崩壊しないように、パテ状耐火材の乾燥後の耐水性の向上も求められる。
【0006】
しかしながら、特許文献1や2に記載のパテ材は、もともと水を溶媒として含むものであるため、施工後の湿気や雨などで軟化や崩壊しやすく、パテ状耐火材の乾燥後の耐水性に改善が求められていた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、乾燥時の形状安定性及び熱膨張後の形状安定性を有し、かつ乾燥後に十分な耐水性を有する熱膨張性パテ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂と、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、を含む耐火材であって、
下記式(1)により求められる重量減少率が、10重量%未満であり、
前記耐火材100重量部に対して、
前記熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、
前記無機化合物の含有量が、21~95重量部である、
耐火材。
重量減少率(重量%)=(W1-W2)/(W1)×100
W1:30mm×30mm×4mm厚の耐火材の重量
W2:前記耐火材を水100ml中に室温で24時間浸漬した後、110℃、24時間の条件で乾燥したときの耐火材の重量
〔2〕
ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂と、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、を含む耐火材であって、
前記耐火材100重量部に対して、
前記樹脂の含有量が、0.1~30重量部であり、
前記エポキシ系化合物の含有量が、0.03~65重量部であり、
前記熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、
前記無機化合物の含有量が、21~95重量部である、
耐火材。
〔3〕
前記樹脂が、セルロース誘導体を含む、
〔1〕又は〔2〕に記載の耐火材。
〔4〕
前記エポキシ系化合物が、アミンを含有するエポキシ系化合物を含む、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の耐火材。
〔5〕
前記無機化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルシウム塩、及びリン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の耐火材。
〔6〕
ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂と、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、水と、を含む熱膨張性パテ組成物であって、
前記樹脂、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、
前記樹脂の含有量が、0.1~30重量部であり、
前記エポキシ系化合物の含有量が、0.03~65重量部であり、
前記熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、
前記無機化合物の含有量が、21~95重量部であり、
前記水の含有量が、50~180重量部である、
熱膨張性パテ組成物。
〔7〕
〔6〕に記載の熱膨張性パテ組成物を調製するための第1剤と第2剤を含有する二剤型組成物セットであって、
前記第1剤が、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂と、水と、を含み、
前記第2剤が、エポキシ系化合物と、水と、を含む、
二剤型組成物セット。
〔8〕
前記第1剤が、前記エポキシ系化合物を含有せず、
前記第2剤が、前記樹脂を含有しない、
〔7〕に記載の二剤型組成物セット。
〔9〕
前記第1剤が、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、を含む、
〔7〕又は〔8〕に記載の二剤型組成物セット。
〔10〕
前記樹脂が、セルロース誘導体を含む、
〔7〕~〔9〕のいずれか一項に記載の二剤型組成物セット。
〔11〕
前記エポキシ系化合物が、アミンを含有するエポキシ系化合物を含む、
〔7〕~〔10〕のいずれか一項に記載の二剤型組成物セット。
〔12〕
前記第1剤及び/又は前記第2剤が、無機化合物を含み、
前記無機化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルシウム塩、及びリン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
〔7〕~〔11〕のいずれか一項に記載の二剤型組成物セット。
〔13〕
〔6〕に記載の熱膨張性パテ組成物を用いて施工する施工工程を有する、
防火区画貫通部埋め戻し処理方法。
〔14〕
〔7〕~〔12〕のいずれか一項に記載の二剤型組成物セットの第1剤と第2剤を混合して、前記熱膨張性パテ組成物を調製する調製工程をさらに有する、
〔13〕に記載の防火区画貫通部埋め戻し処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、十分な乾燥時の形状安定性及び熱膨張後の形状安定性を有しつつ、優れた乾燥後の耐水性を有する熱膨張性パテ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
1.耐火材(第1実施形態)
第1実施形態の耐火材は、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂(以下、単に「樹脂A」ともいう。)と、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、を含み、下記式(1)により求められる重量減少率(以下、単に「重量減少率」ともいう。)が、10重量部未満であり、耐火材100重量部に対して、熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、無機化合物の含有量が、21~95重量部である。
重量減少率(重量%)=(W1-W2)/(W1)×100
W1:30mm×30mm×4mm厚の耐火材の重量
W2:耐火材を水100ml中に室温で24時間浸漬した後、110℃、24時間の条件で乾燥したときの耐火材の重量
【0012】
水系の熱膨張性パテ組成物は、パテ状を保つための溶剤として水を用いる。そのために、熱膨張性パテ組成物を乾燥して得られる耐火材は耐水性が問題となる。耐水性が低い場合には、建材として用いた耐火材が雨水などにさらされた場合に、耐火材が膨潤したり、耐火材の構成成分が水に浸出する恐れがある。このように、耐火材の構成成分が浸出すると、マトリクス成分や無機充填剤の浸出による形状安定性の低下や、熱膨張性黒鉛の進出による熱膨張率の低下が懸念される。
【0013】
これに対して、本実施形態においては、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂Aとエポキシ系化合物を併用し、これらを反応可能とすることにより、乾燥時して耐火材を得る際に樹脂Aとエポキシ系化合物の少なくとも一部が硬化しうる。そのため、本実施形態の熱膨張性パテ組成物を乾燥して得られる耐火材は、水に触れたときの重量減少率が低く、耐水性に優れたものとなる。そのため、例えば、水に浸漬して再乾燥した後の形状安定性や、水に浸漬して再乾燥した後の熱膨張率に優れる傾向にある。
【0014】
なお、本実施形態の「耐火材」とは、熱膨張性パテ組成物を乾燥させた、施工後の熱膨張性パテ組成物の状態をいう。本実施形態において、耐火材とは、耐火材の総量に対し、水の含有量が、好ましくは、0~10重量部であり、0~5.0重量部であり、0~3.0重量部であるものをいう。耐火材には水は含まれなくてもよい。
【0015】
1.1.樹脂A
本実施形態で使用する樹脂Aは、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する。樹脂Aは耐火材のマトリクス成分であってもよい。また、本実施形態において、樹脂Aは、自重の数倍から数百倍の水を吸収し保持する性能を有する吸水性樹脂であることが好ましい。
【0016】
樹脂Aとしては、特に限定されないが、例えば、澱粉、ポリビニルアルコール、アクリル酸塩系共重合体、アルギン酸ソーダ、セルロース誘導体などが挙げられる。このなかでも、セルロース誘導体が好ましい。このような樹脂を用いることにより、水に浸漬して再乾燥した後の形状安定性や、非付着性、調製後の加工性がより向上する傾向にある。なお、樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロール、その誘導体が挙げられる。カルボキシメチルセルロースの誘導体としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウムなどの塩が挙げられる。
【0018】
樹脂Aの含有量は、耐火材100重量部に対して、好ましくは、0.1重量部以上であり、0.5重量部以上であり、1.5重量部以上であり、2.5重量部以上であり、3.0重量部以上であり、5.0重量部以上である。樹脂Aの含有量が0.1重量部以上であることにより、乾燥後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性、非付着性、調製後の加工性、1か月後の加工性などがより向上する傾向にある。
【0019】
また、樹脂Aの含有量は、耐火材100重量部に対して、好ましくは、30重量部以下であり、25重量部以下であり、20重量部以下であり、18重量部以下である。樹脂Aの含有量が50重量部以下であることにより、調製後の加工性、1か月後の加工性などがより向上する傾向にある。
【0020】
1.2.エポキシ系化合物
エポキシ系化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリアミドアミンエピクロロヒドリンポリマー、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N,N-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等が挙げられる。なお、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
このなかでも、アミンを含有するエポキシ系化合物が好ましく、ポリアミドアミンエピクロロヒドリンポリマー、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N,N-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンが好ましい。アミンを含有するエポキシ系化合物を用いることにより、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性、及び水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。また、アミンを含有するエポキシ系化合物を用いることにより、重量減少率がより低下する傾向にある。
【0022】
エポキシ系化合物の含有量は、耐火材100重量部に対して、好ましくは、0.03重量部以上であり、0.10重量部以上であり、0.40重量部以上であり、0.70重量部以上であり、1.00重量部以上であり、2.00重量部以上である。エポキシ系化合物の含有量が0.01重量部以上であることにより、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性、及び水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。また、エポキシ系化合物の含有量が0.01重量部以上であることにより、重量減少率がより低下する傾向にある。
【0023】
また、エポキシ系化合物の含有量は、耐火材100重量部に対して、65重量部以下であり、60重量部以下であり、50重量部以下であり、40重量部以下であり、30重量部以下であり、20重量部以下であり、10重量部以下であり、5.0重量部以下である。エポキシ系化合物の含有量が65重量部以下であることにより、調製後の加工性、1か月後の加工性などがより向上する傾向にある。
【0024】
1.3.熱膨張性黒鉛
本実施形態において熱膨張性黒鉛とは、常圧下で膨張開始温度(200℃程度)以上の温度に曝されると、100倍以上に熱膨張する性質を有する黒鉛を言う。
【0025】
このような黒鉛としては、特に限定されないが、例えば、天然グラファイト、熱分解グラファイト等のグラファイト粉末を、硫酸や硝酸等の無機酸と、濃硝酸や過マンガン酸塩等の強酸化剤とを用いて表面処理したものであり、かつグラファイト層状構造を維持した結晶化合物が挙げられる。なお、天然グラファイト、熱分解グラファイト等のグラファイト粉末は、脱酸処理を施したものや、更に中和処理したもの等であってもよい。
【0026】
熱膨張性黒鉛の含有量は、耐火材100重量部に対して、2.0重量部以上であり、好ましくは、3.0重量部以上であり、4.0重量部以上であり、5.0重量部以上であり、7.0重量部以上である。熱膨張性黒鉛の含有量が2.0重量部以上であることにより、熱膨張性や、水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。
【0027】
熱膨張性黒鉛の含有量は、耐火材100重量部に対して、50重量部以下であり、好ましくは、40重量部以下であり、30重量部以下であり、25重量部以下であり、20重量部以下であり、15重量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量が50重量部以下であることにより、乾燥後の熱安定性、熱膨張後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性がより向上する傾向にある。
【0028】
1.4.無機化合物
本実施形態において無機化合物は、熱膨張性黒鉛以外のその他のものを意味する。
【0029】
このような無機化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等のカルシウム塩;珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化珪素、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、フライアッシュ、無機中空フィラー、ガラス繊維、パーライト、黒曜岩、真珠岩、松脂岩、珪藻土、脱水汚泥、ホウ素、四ホウ酸ナトリウム水和物(ホウ砂)、無機リン系化合物等が挙げられる。
【0030】
その中でも、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルシウム塩、及びリン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、金属水酸化物又はリン系化合物がより好ましく、水酸化アルミニウムがさらに好ましい。このような無機化合物を用いることにより、乾燥後の形状安定性及び熱膨張後の形状安定性がより向上する傾向にある。
【0031】
無機化合物の含有量は、耐火材100重量部に対して、21重量部以上であり、好ましくは、30重量部以上であり、40重量部以上であり、50重量部以上であり、60重量部以上であり、70重量部以上であり、80重量部以上である。無機化合物の含有量が21重量部以上であることにより、乾燥後の形状安定性、熱膨張後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性がより向上する傾向にある。
【0032】
無機化合物の含有量は、耐火材100重量部に対して、95重量部以下であり、好ましくは、92重量部以下であり、88重量部以下であり、85重量部以下であり、80重量部以下である。無機化合物の含有量が95重量部以下であることにより、熱膨張性、水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。
【0033】
無機化合物の形状は、特に限定されないが、例えば、繊維状であってもよく、粒子状であってもよい。より具体的には、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、ランダム形状等が挙げられる。また、無機化合物は、中空であっても中実であってもよい。
【0034】
また、無機化合物の平均粒子径は、好ましくは、0.1μm以上であり、0.5μm以上であり、1.0μm以上である。また、無機化合物の平均粒子径は、好ましくは、250μm以下であり、100μm以下であり、50μm以下であり、25μm以下であり、10μm以下であり、5.0μm以下であり、3.0μm以下である。無機化合物の平均粒子径上記範囲内であることにより、乾燥後の形状安定性、熱膨張後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性がより向上する傾向にある。
ここで、「平均粒子径」とは、公知のレーザー回折・散乱測定法によって求められる粒度分布における積算値50%における粒径を意味する。
【0035】
熱膨張性パテ組成物は、無機リン系化合物を含むことが好ましい。それにより、熱膨張性パテ組成物と施工対象の主な素材である金属との密着性が向上する。無機リン系化合物としては、無機リン系の金属塩又はアンモニウム塩が好ましい。金属塩の金属としては、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が好ましい。
【0036】
ここで、無機リン系化合物とは、リン酸系化合物、亜リン酸系化合物、次亜リン酸系化合物、メタリン酸系化合物、ピロリン酸系化合物及びポリリン酸系化合物のうちの少なくとも1種を含む化合物を意味する。
【0037】
リン酸系化合物としては、特に限定されないが、例えば、第1リン酸アルミニウム、第1リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム、第1リン酸カルシウム、第1リン酸亜鉛、第2リン酸アルミニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸カルシウム、第2リン酸亜鉛、第3リン酸アルミニウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸カルシウム、第3リン酸亜鉛、第3リン酸マグネシウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0038】
亜リン酸系化合物としては、例えば、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸水素アルミニウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛等が挙げられる。
【0039】
次亜リン酸系化合物としては、例えば、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸亜鉛等が挙げられる。
【0040】
メタリン酸系化合物としては、例えば、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸亜鉛、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
ピロリン酸系化合物としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
ポリリン酸系化合物としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0043】
1.5.その他の成分
その他の成分としては、物性の損なわれない程度で適宜添加することができ、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、軟化剤、粘着付与剤、凍結防止剤、有機繊維等が挙げられる。
【0044】
1.6.重量減少率
本実施形態においては、乾燥後の耐水性の指標として重量減少率を規定する。重量減少率は、耐火材を水に浸漬して乾燥した際の重量の減少値であり、重量減少率が低いほど耐水性が高いものとなる。
【0045】
上記観点から重量減少率は、10重量%未満であり、好ましくは、8.0重量%以下であり、6.0重量%以下であり、4.0重量%以下であり、2.0重量%以下である。また、上記観点から重量減少率の下限は特に制限されず、好ましくは重量減少をしない、つまり0質量%である。重量減少率が10重量%未満であることにより、乾燥後の耐水性がより向上する。
【0046】
重量減少率は、下記式(1)により求めることができる。
重量減少率(重量%)=(W1-W2)/(W1)×100
W1:30mm×30mm×4mm厚の耐火材の重量
W2:耐火材を水100ml中に室温で24時間浸漬した後、110℃、24時間の条件で乾燥したときの耐火材の重量
【0047】
重量減少率の調整方法としては、特に制限されないが、例えば、熱膨張性パテ組成物を乾燥して耐火材を得る際における、樹脂Aとエポキシ樹脂の反応の制御が挙げられる。樹脂Aとエポキシ樹脂の反応を制御することにより、熱膨張性パテ組成物を乾燥して耐火材を得る際に架橋構造が形成され、耐火材を水にさらした時の成分の滲出や耐火材の崩壊を抑制できる。
【0048】
1.7.用途
本実施形態の熱膨張性パテ組成物は、建築物内の配管類・ケーブル類と防火壁等との間の隙間をふさぐ防火区画貫通部埋め戻し材などとして好適に用いることができる。
【0049】
2.耐火材(第2実施形態)
第2実施形態の耐火材は、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂Aと、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、を含み、耐火材100重量部に対して、樹脂Aの含有量が、0.1~30重量部であり、エポキシ系化合物の含有量が、0.03~65重量部であり、熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、無機化合物の含有量が、21~95重量部である。
【0050】
第2実施形態の耐火材は、重量減少率に代えて、樹脂Aとエポキシ系化合物の含有量を規定すること以外は、第1実施形態の耐火材と同様とすることができる。したがって、第2実施形態の耐火材における樹脂Aと、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物の例示としては、第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0051】
樹脂Aの含有量は、耐火材100重量部に対して、好ましくは、0.1重量部以上であり、0.5重量部以上であり、1.5重量部以上であり、2.5重量部以上であり、3.0重量部以上であり、5.0重量部以上である。樹脂Aの含有量が0.1重量部以上であることにより、乾燥後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性、非付着性、調製後の加工性、1か月後の加工性などがより向上する傾向にある。
【0052】
また、樹脂Aの含有量は、耐火材100重量部に対して、好ましくは、30重量部以下であり、25重量部以下であり、20重量部以下であり、18重量部以下である。樹脂Aの含有量が50重量部以下であることにより、調製後の加工性、1か月後の加工性などがより向上する傾向にある。
【0053】
エポキシ系化合物の含有量は、耐火材100重量部に対して、好ましくは、0.03重量部以上であり、0.10重量部以上であり、0.40重量部以上であり、0.70重量部以上であり、1.00重量部以上であり、2.00重量部以上である。エポキシ系化合物の含有量が0.01重量部以上であることにより、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性、及び水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。また、エポキシ系化合物の含有量が0.01重量部以上であることにより、重量減少率がより低下する傾向にある。
【0054】
また、エポキシ系化合物の含有量は、耐火材100重量部に対して、65重量部以下であり、60重量部以下であり、50重量部以下であり、40重量部以下であり、30重量部以下であり、20重量部以下であり、10重量部以下であり、5.0重量部以下である。エポキシ系化合物の含有量が65重量部以下であることにより、調製後の加工性、1か月後の加工性などがより向上する傾向にある。
【0055】
熱膨張性黒鉛の含有量は、耐火材100重量部に対して、2.0重量部以上であり、好ましくは、3.0重量部以上であり、4.0重量部以上であり、5.0重量部以上であり、7.0重量部以上である。熱膨張性黒鉛の含有量が2.0重量部以上であることにより、熱膨張性や、水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。
【0056】
熱膨張性黒鉛の含有量は、耐火材100重量部に対して、50重量部以下であり、好ましくは、40重量部以下であり、30重量部以下であり、25重量部以下であり、20重量部以下であり、15重量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量が50重量部以下であることにより、乾燥後の熱安定性、熱膨張後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性がより向上する傾向にある。
【0057】
無機化合物の含有量は、耐火材100重量部に対して、21重量部以上であり、好ましくは、30重量部以上であり、40重量部以上であり、50重量部以上であり、60重量部以上であり、70重量部以上であり、80重量部以上である。無機化合物の含有量が21重量部以上であることにより、乾燥後の形状安定性、熱膨張後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性がより向上する傾向にある。
【0058】
無機化合物の含有量は、耐火材100重量部に対して、95重量部以下であり、好ましくは、92重量部以下であり、88重量部以下であり、85重量部以下であり、80重量部以下である。無機化合物の含有量が95重量部以下であることにより、熱膨張性、水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。
【0059】
3.熱膨張性パテ組成物
本実施形態の熱膨張性パテ組成物は、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂Aと、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物と、水と、を含み、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、樹脂の含有量が、0.1~30重量部であり、エポキシ系化合物の含有量が、0.03~65重量部であり、熱膨張性黒鉛の含有量が、2~50重量部であり、無機化合物の含有量が、21~95重量部であり、水の含有量が、50~180重量部である。
【0060】
本実施形態の「熱膨張性パテ組成物」とは、乾燥前の耐火材であり、水の含有量が、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して50~180重量部であるものを言うこととする。
【0061】
本実施形態の熱膨張性パテ組成物は、第1実施形態又は第2実施形態の耐火材の乾燥前の状態のものである。そのため、本実施形態の熱膨張性パテ組成物を構成する、樹脂Aと、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物の例示としては、耐火材で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0062】
樹脂Aの含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、好ましくは、0.1重量部以上であり、0.5重量部以上であり、1.5重量部以上であり、2.5重量部以上であり、3.0重量部以上であり、5.0重量部以上である。樹脂Aの含有量が0.1重量部以上であることにより、乾燥後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性、非付着性、調製後の加工性、1か月後の加工性などがより向上する傾向にある。
【0063】
また、樹脂Aの含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、好ましくは、30重量部以下であり、25重量部以下であり、20重量部以下であり、18重量部以下である。樹脂Aの含有量が50重量部以下であることにより、調製後の加工性、1か月後の加工性などがより向上する傾向にある。
【0064】
エポキシ系化合物の含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、好ましくは、0.03重量部以上であり、0.10重量部以上であり、0.40重量部以上であり、0.70重量部以上であり、1.00重量部以上であり、2.00重量部以上である。エポキシ系化合物の含有量が0.01重量部以上であることにより、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性、及び水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。また、エポキシ系化合物の含有量が0.01重量部以上であることにより、重量減少率がより低下する傾向にある。
【0065】
また、エポキシ系化合物の含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、65重量部以下であり、60重量部以下であり、50重量部以下であり、40重量部以下であり、30重量部以下であり、20重量部以下であり、10重量部以下であり、5.0重量部以下である。エポキシ系化合物の含有量が65重量部以下であることにより、調製後の加工性、1か月後の加工性などがより向上する傾向にある。
【0066】
熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、2.0重量部以上であり、好ましくは、3.0重量部以上であり、4.0重量部以上であり、5.0重量部以上であり、7.0重量部以上である。熱膨張性黒鉛の含有量が2.0重量部以上であることにより、熱膨張性や、水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。
【0067】
また、熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、50重量部以下であり、好ましくは、40重量部以下であり、30重量部以下であり、25重量部以下であり、20重量部以下であり、15重量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量が50重量部以下であることにより、乾燥後の熱安定性、熱膨張後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性がより向上する傾向にある。
【0068】
無機化合物の含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、21重量部以上であり、好ましくは、30重量部以上であり、40重量部以上であり、50重量部以上であり、60重量部以上であり、70重量部以上であり、80重量部以上である。無機化合物の含有量が21重量部以上であることにより、乾燥後の形状安定性、熱膨張後の形状安定性、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性がより向上する傾向にある。
【0069】
また、無機化合物の含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、95重量部以下であり、好ましくは、92重量部以下であり、88重量部以下であり、85重量部以下であり、80重量部以下である。無機化合物の含有量が95重量部以下であることにより、熱膨張性、水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性がより向上する傾向にある。
【0070】
水の含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、50重量部以上であり、好ましくは、60重量部以上であり、70重量部以上であり、80重量部以上であり、90重量部以上である。また、水の含有量は、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機化合物の総量100重量部に対して、180重量部以下であり、好ましくは、170重量部以下であり、160重量部以下であり、150重量部以下であり、140重量部以下であり、130重量部以下であり、120重量部以下である。水の含有量が上記範囲内であることにより、非付着性、調製後の加工性、1か月後の加工性がより向上する傾向にある。
【0071】
4.熱膨張性パテ組成物の製造方法
本実施形態の熱膨張性パテ組成物は、ミキサー等を用いて、上記樹脂A、上記エポキシ系化合物、上記熱膨張性黒鉛、上記無機化合物、並びに、必要に応じて、水及びその他の成分を混合・撹拌することによって製造することができる。
【0072】
5.二剤型組成物セット
本実施形態の二剤型組成物セットは、熱膨張性パテ組成物を調製するための第1剤と第2剤を含有する二剤型組成物セットであって、第1剤が、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂Aと、水と、を含み、第2剤が、エポキシ系化合物と、水と、を含むものである。
【0073】
本実施形態においては、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂Aとエポキシ系化合物を併用し、これらを反応可能とすることにより、乾燥して耐火材を得る際に樹脂Aとエポキシ系化合物の少なくとも一部が硬化しうる。
【0074】
他方で、樹脂Aとエポキシ系化合物が併存する状況で熱膨張性パテ組成物を放置すれば、使用前に反応が進行することが想定される。そのため、本実施形態においては、熱膨張性パテ組成物を調製するための第1剤と第2剤を含有する二剤型組成物セットを提供する。
【0075】
このような、二剤型組成物セットとすることで、反応性のある樹脂Aとエポキシ系化合物を第1剤と第2剤の別々に含めることが可能となる。これにより、施工現場において、第1剤と第2剤を混合して、熱膨張性パテ組成物を容易に調製することが可能となる。
【0076】
なお、本実施形態の二剤型組成物セットは、上記熱膨張性パテ組成物を調製するためのものである。そのため、本実施形態の二剤型組成物セットの第1剤と第2剤を構成する、樹脂Aと、エポキシ系化合物と、熱膨張性黒鉛と、無機化合物の例示としては、耐火材で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0077】
5.1.第1剤
第1剤が、樹脂Aと、水と、を含み、必要に応じて、熱膨張性黒鉛や無機化合物を含んでいてもよい。第1剤は、エポキシ系化合物を含有しないことが好ましい。これにより、得られる熱膨張性パテ組成物の可使時間がより向上する。
【0078】
第1剤におけるエポキシ系化合物の含有量は、樹脂Aの総量100重量部に対して、好ましくは、5.0重量部以下であり、3.0重量部以下であり、1.0重量部以下である。第1剤におけるエポキシ系化合物の含有量の下限は0重量部である。
【0079】
5.2.第2剤
第2剤が、エポキシ系化合物と、水と、を含み、必要に応じて、熱膨張性黒鉛や無機化合物を含んでいてもよい。第2剤は、樹脂Aを含有しないことが好ましい。これにより、得られる熱膨張性パテ組成物の可使時間がより向上する。
【0080】
第1剤における樹脂Aの含有量は、エポキシ系化合物の総量100重量部に対して、好ましくは、5.0重量部以下であり、3.0重量部以下であり、1.0重量部以下である。第1剤における樹脂Aの含有量の下限は0重量部である。
【0081】
6.防火区画貫通部埋め戻し処理方法
本実施形態の防火区画貫通部埋め戻し処理方法は、上記熱膨張性パテ組成物を用いて施工する施工工程を有する。施工方法は特に制限されず、従来より、熱膨張性パテ組成物を用いて行うことのできる施工方法を全般的に使用することができる。
【0082】
上記二剤型組成物セットの第1剤と第2剤を混合して、熱膨張性パテ組成物を調製する調製工程をさらに有してもよい。これにより、樹脂Aとエポキシ系化合物が併存する状況で熱膨張性パテ組成物を保管などする必要がなく、使用前に反応が進行することを回避し得る。
【実施例0083】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0084】
1.熱膨張性パテ組成物の作製
表1~3に示す各成分及び組成に従い、ニーダーを用いて混合・撹拌して、実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を作製した。
【0085】
具体的には、樹脂、熱膨張性黒鉛、その他の無機化合物、水を、ニーダーにて32rpmの回転数で10分間混合・撹拌して、第1剤を得た。次いで、エポキシ系化合物と水を混合して第2剤を調製した。そして、第1剤と第2剤とを、32rpmの回転数で10分間混合・撹拌して、熱膨張性パテ組成物を得た。
【0086】
なお、下記表では、熱膨張性パテ組成物を乾燥して耐火材としたときの各成分の組成と、熱膨張性パテ組成物における水の含有量を示す。なお、熱膨張性パテ組成物における水以外の各成分の組成は、下記表における耐火材における各成分の組成と同じである。
【0087】
各成分の単位は特に記載がない限り、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及びその他の無機化合物の総量を100重量部としたときにおける重量部で表す。耐火材については、樹脂A、エポキシ系化合物、熱膨張性黒鉛、及びその他の無機化合物の総量が、すなわち耐火材の総量となる。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
表1~3に示す各成分の詳細は、以下の通りである。
<ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂A>
・カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na):林純薬工業株式会社製
・ポリビニルアルコール(PVAL):デンカ株式会社製「デンカポバールH-12」
【0092】
<エポキシ系化合物>
・エチレングリコールジグリシジルエーテル:ナガセケムテックス株式会社製「デナコールEX-810」
・ポリアミドアミンエピクロロヒドリンポリマー:田岡化学工業株式会社製「Sumirez Resin 675A」
・1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン:三菱ガス化学トレーディング株式会社製「テトラッドC」
【0093】
<熱膨張性黒鉛>
・熱膨張性黒鉛:エア・ウオーター・ケミカル株式会社製「SS-3」
【0094】
<その他の無機化合物>
・水酸化アルミニウム:住友化学株式会社製「C-301N」
【0095】
<重量減少率>
重量減少率の測定においては、初めに、30mm×30mm×4mm厚の乾燥後の熱膨張性パテ組成物の重量(W1)を秤量した。そして、秤量した熱膨張性パテ組成物を水100ml中に室温で24時間浸漬した。そのあと、水中から熱膨張性パテ組成物を取り出し、110℃、24時間の条件で乾燥し、再乾燥したときの熱膨張性パテ組成物の重量(W2)を秤量した。最後に下記式により、重量減少率を算出した。
重量減少率=(W1-W2)/(W1)×100(%)
〔評価基準〕
◎:重量減少率が4.0重量%未満である。
○:重量減少率が4.0重量%以上、7.0重量%未満である。
△:重量減少率が7.0重量%以上、10重量%未満である。
×:重量減少率が10重量%以上である。
【0096】
2.評価方法
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物について、以下に示す各種評価を行った。
【0097】
2.1.乾燥後の形状安定性
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、これを110℃、24時間の条件で乾燥させた。その試験片を3点曲げ試験治具(上部押し側先端R1mmおよび幅80mm、下部2点支点側R1mm、幅80mm、支点間距離20mm)を用い、試験片を圧縮速度50mm/minの条件にて破壊した際の強度(3点曲げ破壊強度)を測定した。ここで、3点曲げ破壊強度が大きいほど、乾燥後の形状安定性が高いことを示す。そして、3点曲げ破壊強度に基づいて、乾燥後の形状安定性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:3点曲げ破壊強度が130[N]以上である。
○:3点曲げ破壊強度が100[N]以上、130[N]未満である。
△:3点曲げ破壊強度が70[N]以上、100[N]未満である。
×:3点曲げ破壊強度が70[N]未満である。
【0098】
2.2.熱膨張性
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、これを110℃、24時間の条件で乾燥させた。そして、乾燥後の試験片を600℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後の体積を測定し、その体積から膨張倍率を算出した。そして、体積膨張倍率に基づいて、熱膨張性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:体積膨張倍率が5.0倍以上である。
○:体積膨張倍率が3.0倍以上、5.0倍未満である。
△:体積膨張倍率が1.5倍以上、3.0倍未満である。
×:体積膨張倍率が1.5倍未満である。
【0099】
2.3.熱膨張後の形状安定性
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、これを110℃、24時間の条件で乾燥させた。乾燥後の試験片を600℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後、3点曲げ試験治具(上部押し側先端R1mmおよび幅80mm、下部2点支点側R1mm、幅80mm、支点間距離20mm)を用い、試験片を圧縮速度50mm/minの条件にて破壊した際の強度(3点曲げ破壊強度)を測定した。ここで、3点曲げ破壊強度が大きいほど、熱膨張後の強度が高いことを示す。そして、3点曲げ破壊強度に基づいて、熱膨張後の形状安定性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:3点曲げ破壊強度が2.0[N]以上である。
○:3点曲げ破壊強度が1.5[N]以上、2.0[N]未満である。
△:3点曲げ破壊強度が1.0[N]以上、1.5[N]未満である。
×:3点曲げ破壊強度が1.0[N]未満である。
【0100】
2.4.水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、これを110℃、24時間の条件で乾燥させた。乾燥後の試験片を水に24時間浸漬させ、再度110℃、24時間の条件で再度乾燥させた。そして、再乾燥後の試験片を乾燥後の試験片を600℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後、3点曲げ試験治具(上部押し側先端R1mmおよび幅80mm、下部2点支点側R1mm、幅80mm、支点間距離20mm)を用い、試験片を圧縮速度50mm/minの条件にて破壊した際の強度(3点曲げ破壊強度)を測定した。ここで、3点曲げ破壊強度が大きいほど、熱膨張後の強度が高いことを示す。そして、3点曲げ破壊強度に基づいて、水に浸漬し再乾燥した後の形状安定性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:3点曲げ破壊強度が130[N]以上である。
○:3点曲げ破壊強度が100[N]以上、130[N]未満である。
△:3点曲げ破壊強度が70[N]以上、100[N]未満である。
×:3点曲げ破壊強度が70[N]未満である。
【0101】
2.5.水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、これを110℃、24時間の条件で乾燥させた。乾燥後の試験片を水に24時間浸漬させ、再度110℃、24時間の条件で再度乾燥させた。そして、再乾燥後の試験片を600℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後の体積を測定し、その体積から水浸漬前の寸法である縦30mm×横30mm×厚み4mm(3600mm3)を基準に体積膨張倍率を算出した。そして、体積膨張倍率に基づいて、水に浸漬し再乾燥した後の熱膨張性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:体積膨張倍率が5.0倍以上である。
○:体積膨張倍率が3.0倍以上、5.0倍未満である。
△:体積膨張倍率が1.5倍以上、3.0倍未満である。
×:体積膨張倍率が1.5倍未満である。
【0102】
2.6.非付着性
ラテックスゴム手袋を装着し、熱膨張性パテ組成物を10回握った後の手袋の付着物の重量を測定し、以下の式に基づいて付着物重量を算出した。そして、付着物重量に基づいて、非付着性を以下の評価基準で判定した。
付着物重量[g]=(パテを10回握った後の手袋の重量)-(元の手袋の重量)
〔評価基準〕
◎:付着物重量が0.3[g]未満である。
○:付着物重量が0.3[g]以上、1.0[g]未満である。
△:付着物重量が1.0[g]以上、1.5[g]未満である。
×:付着物重量が1.5[g]以上である。
【0103】
2.7.調製後の加工性
乾燥前の熱膨張性パテ組成物をJIS A5752に準拠し荷重150g、温度21℃において軟度の測定を行った。次に規定の円錐を試験片に垂直に貫入させ、その貫入深さを0.1mm単位で測定した。最後に、貫入深さに基づいて、調製後の加工性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:貫入深さが120[1/10mm]以上200未満[1/10mm]である。
○:貫入深さが70[1/10mm]以上120[1/10mm]未満、又は、200[1/10mm]以上230[1/10mm]未満である。
△:貫入深さが50[1/10mm]以上70[1/10mm]未満、又は、230[1/10mm]以上250[1/10mm]未満である。
×:貫入深さが50[1/10mm]未満、又は250[1/10mm]以上である。
【0104】
2.8.1か月後の加工性
乾燥前の熱膨張性パテ組成物を80μm厚のポリエチレン袋に密閉状態で23℃の雰囲気下30日間保管し、JIS A5752に準拠し荷重150g、温度21℃において軟度の測定を行った。次に規定の円錐を試験片に垂直に貫入させ、その貫入深さを0.1mm単位で測定した。最後に、貫入深さに基づいて、加工性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:貫入深さが120[1/10mm]以上200未満[1/10mm]である。
○:貫入深さが70[1/10mm]以上120[1/10mm]未満、又は、200[1/10mm]以上230[1/10mm]未満である。
△:貫入深さが50[1/10mm]以上70[1/10mm]未満、又は、230[1/10mm]以上250[1/10mm]未満である。
×:貫入深さが50[1/10mm]未満、又は250[1/10mm]以上である。