(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173498
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】成形型、およびチップモールド成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/36 20060101AFI20231130BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20231130BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20231130BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B29C43/36 ZAB
B29C43/18
B29C43/34
B29C33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085792
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩
(72)【発明者】
【氏名】松永 浩利
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AA50
4F202AC00
4F202AD05
4F202AD19
4F202AH26
4F202AH27
4F202AH51
4F202AJ08
4F202AM33
4F202AR07
4F202CA09
4F202CB01
4F202CD22
4F202CK32
4F202CK52
4F202CK59
4F204AD05
4F204AD19
4F204AJ08
4F204AM33
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FN11
4F204FQ15
(57)【要約】
【課題】バリの発生を抑制できる成形型、およびこの成形型を用いたチップモールド成形品Wの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る成形型は、チップとバインダーとを含む材料が充填される枠状の第1型と、前記第1型に向けて移動する第2型と、を備える。前記第1型は、前記材料が置かれる底部と、前記底部上を、前記材料が前記底部に置かれる初期位置から前記材料を圧縮する圧縮位置まで、前記枠状の前記第1型の内側に向けた方向である第1方向にスライドするスライド部と、前記スライド部を案内する第1案内部と、を有する。前記第1案内部は、前記スライド部が前記底部から離れる方向である第2方向の移動を規制する第1規制部を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップとバインダーとを含む材料が充填される枠状の第1型と、
前記第1型に向けて移動する第2型と、
を備え、
前記第1型は、
前記材料が置かれる底部と、
前記底部上を、前記材料が前記底部に置かれる初期位置から前記材料を圧縮する圧縮位置まで、前記枠状の前記第1型の内側に向けた方向である第1方向にスライドするスライド部と、
前記スライド部を案内する第1案内部と、
を有し、
前記第1案内部は、前記スライド部が前記底部から離れる方向である第2方向の移動を規制する第1規制部を含む、
成形型。
【請求項2】
前記第1型は、金属材料で形成され、
前記スライド部は、前記第1規制部と対向する対向面を含み、
少なくとも前記第1規制部および前記対向面は、前記金属材料よりも硬度の高い高硬度層が形成される、
請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記第1型は、前記第2型を前記第1方向に案内する第2案内部を有し、
前記第2案内部は、前記第1方向に向かうほど前記底部に近づく方向に傾斜する傾斜面と、前記底部と鉛直な鉛直面と、を含む、
請求項1に記載の成形型。
【請求項4】
前記第1型および前記第2型は、金属材料で形成され、
前記第2型は、前記傾斜面、および前記鉛直面と接触する接触面を有し、
少なくとも前記傾斜面、前記鉛直面、および前記接触面は、前記金属材料よりも硬度の高い高硬度層が形成される、
請求項3に記載の成形型。
【請求項5】
前記圧縮位置において前記第1方向と反対方向の前記スライド部の移動を規制する第2規制部をさらに備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の成形型。
【請求項6】
請求項1に記載の成形型に前記材料を投入し、
前記スライド部および前記第2型により前記材料を圧縮する、
チップモールド成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形型、およびこの成形型を用いたチップモールド成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡樹脂などによって形成されるチップとバインダーとを含んだ材料を圧縮し、チップモールド成形品を成形する成形型が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の成形型は、上型と下型を有し、上型と下型の間に材料を投入したのち、材料を圧縮することによって、チップモールド成形品を形成する。このようなチップモールド成形品は、例えば、アームレストや椅子のクッション材として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような成形型では、スライド型を用いる。スライド型を用いる場合、チップがスライド型の可動部に挟まることを抑制する必要がある。チップがスライド型に挟まると、挟まった部分がチップモールド成形品のバリとなる。特許文献1ではこのような点については開示していない。
【0005】
本開示の課題は、バリの発生を抑制できる成形型、およびこの成形型を用いたチップモールド成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る成形型は、チップとバインダーとを含む材料が充填される枠状の第1型と、前記第1型に向けて移動する第2型と、を備える。前記第1型は、前記材料が置かれる底部と、前記底部上を、前記材料が前記底部に置かれる初期位置から前記材料を圧縮する圧縮位置まで、前記枠状の前記第1型の内側に向けた方向である第1方向にスライドするスライド部と、前記スライド部を案内する第1案内部と、を有する。前記第1案内部は、前記スライド部が前記底部から離れる方向である第2方向の移動を規制する第1規制部を含む。
【0007】
また、本開示に係るチップモールド成形品の製造方法は、上記の成形型に前記材料を投入し、前記スライド部および前記第2型により前記材料を圧縮する。
【0008】
この成形型によれば、第1案内部によって底部からスライド部が離れることを抑制できる。この結果、底部とスライド部との間にチップが入り込み、バリが発生することを抑制できる。したがって、このような製造方法によって製造されたチップモールド成形品は、バリが少ない。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、バリの発生を抑制できる成形型、およびこの成形型を用いたチップモールド成形品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】本開示の実施形態における成形型の作動を示す上面図。
【
図4】本開示の実施形態における成形型の作動を示す側面図。
【
図5】本開示の実施形態におけるチップモールド成形品を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。成形型1は、
図1、
図2に示すように、下型(第1型の一例)2と、上型(第2型の一例)4と、スライドロック(第2規制部の一例)6と、を備える。本実施形態では、チップモールド成形品Wとして
図5に示すようなアームレストのクッション部分を製造する成形型1を例に説明する。しかし、チップモールド成形品Wは、アームレストに限定されるものではなく、例えば椅子のクッション部分など種々のクッション部分であってもよい。
【0012】
図1に示すように、下型2は、底部8と、複数のスライド部10と、固定壁12と、複数の支柱(第1案内部の一例)14と、テーパーガイド(第2案内部の一例)16と、を有する。
図2に示すように、下型2は、複数のスライド部10および固定壁12によって囲まれた枠状の型の下が、底部8によって塞がれた型である。
【0013】
図1に示すように、底部8は、チップモールド成形品Wの下部形状W1(
図5参照)または上部形状W2(
図5参照)を成形するためのアルミニウムなどの金属材料によって形成される型部材である。底部8は、下部フレーム8aに水平に支持される。
図2に示すように、底部8の上面8bには、チップモールド成形品Wの基材Mが載置される。また底部8の上面8bには、下型2の枠状部分に流し込まれたチップとバインダーを含む材料が置かれる。本実施形態における材料は、チップとバインダーが混合された混合材料を例に説明するが、材料は、例えば、チップにバインダーを予め付着させた材料であってもよい。底部8には、複数の貫通孔8cが設けられる。複数の貫通孔8cには、後述する上型4の蒸気噴射孔4fから噴出する蒸気が流れる。蒸気は、材料に含まれるバインダーを融解しチップ同士を接着する。
【0014】
図1および
図2に示すように、複数のスライド部10は、底部8の上面8bをスライドするアルミニウムなどの金属材料によって形成された厚みのある板状の型部材である。複数のスライド部10は、チップモールド成形品Wの左右部形状W3(
図5参照)および前部形状W4(
図5参照)を成形する。スライド部10は、材料が底部8に置かれる初期位置Iから材料を圧縮する圧縮位置Pまで、下型2の枠状部分の中央に向けた方向であるスライド方向(第1方向の一例)にスライドする。
図2に示すように、本実施形態では、複数のスライド部10は、前スライド壁10a、右スライド壁10b、および左スライド壁10c(以下明細書において各スライド壁と記す)を有する。各スライド壁は、支柱14によって支持されるとともに、スライド方向に案内される。本実施形態では各スライド壁は、工場エアーなどの圧縮空気によって作動する空圧シリンダー式のアクチュエータ20に接続され、初期位置Iから圧縮位置Pまで往復運動が可能である。しかし、アクチュエータ20は、油圧式、電気式など種々の方法によるものであってもよい。
【0015】
図1に示すように、各スライド壁の上部には、材料を投入する際に下型2の枠状部分からあふれることを防止する囲板11が設けられる。本実施形態では、囲板11は、各スライド壁よりも薄い板金によって形成される。しかし、囲板11は、樹脂部材などの板金と異なる部材であってもよい。
【0016】
図1および
図2に示すように、固定壁12は、下型2の後方壁面を構成するアルミニウムなどの金属材料で形成される厚みのある板状の型部材である。固定壁12は、チップモールド成形品Wの後部形状W5を成形する。本実施形態では、下型2の枠状の前方、右方、左方が各スライド壁によってスライド可能に構成され、後方のみが固定壁12によって固定された壁で構成される。
【0017】
支柱14は、各スライド壁に沿って上方に延び、各スライド壁を支持するとともに各スライド壁をスライド方向に案内する。支柱14は、底部8と一体に形成されてもよい。本実施形態では、支柱14は、下型2の枠状部分の4つの隅に配置される。
図1の前側に拡大して示すように、支柱14の端面14aは、端面14aと対向する各スライド壁の対向面10dの形状と略同一形状となるように形成される。
【0018】
図1および
図2に示すように、本実施形態では、前スライド壁10a、右スライド壁10b、および左スライド壁10cのそれぞれの両端に対向面10dが設けられる。各スライド壁は、各対向面10dが支柱14の端面14aと面接触することによって、スライド方向に案内される。具体的には、
図2に示すように、前スライド壁10aは、前方の左右の支柱14の左面および右面に位置する端面14aによって案内される。右スライド壁10bは、前方の右側の支柱14の後面、および後方の右側の支柱14の前面に位置する端面14aによって案内される。左スライド壁10cは、前方の左側の支柱14の後面、および後方の左側の支柱14の前面に位置する端面14aによって案内される。
【0019】
図1の前側の拡大図および
図2に示すように、支柱14は、アンダーカット(第1規制部の一例)18を含む。本実施形態のアンダーカット18は、各スライド壁が底部から離れる方向である離間方向(第2方向の一例)に移動することを規制する。このため、アンダーカット18は、端面14aの一部に各スライド壁の対向面10dを底部に押し返す(押圧する)方向に形成される。本実施形態では、離間方向が上方であり、アンダーカット18は、端面14aの一部が底部8に向けて下方に向けたR形状の面である。しかし、アンダーカット18は、底部8に向けて各スライド壁を押し返す(押圧する)方向に形成される面であればよく、必ずしもR形状である必要はない。また、本実施形態では、支柱14のすべての端面14aにアンダーカット18を設け、合計6箇所設けている。しかし、アンダーカット18は少なくとも1箇所以上あればよい。
【0020】
対向面10dの少なくともアンダーカット18部分には、高硬度層が設けられる。高硬度層は、下型2を形成するアルミニウムなどの金属材料よりも硬度の高い層である。本実施形態では、高硬度層はアルミニウムに対して無電解ニッケルメッキ処理を施すことによって形成される。高硬度層は、このほか対向面10dにも設けてもよい。このように高硬度層をもうけることによって、各スライド壁がスライドした際の各スライド壁の対向面10dと端面14aとの摩擦によって発生する摩耗を抑制できる。
【0021】
テーパーガイド16は、上型4を下型2の枠状部分の中央に向けて案内するためのガイドである。
図1の後側に拡大して示すように、テーパーガイド16は、枠状部分の中央に向けたスライド方向に向かうほど、底部8に近づく方向に傾斜するテーパー面(傾斜面の一例)16aと、底部8と鉛直な鉛直面16bと、を有する。本実施形態では、テーパーガイド16は、各スライド壁の上部、および固定壁12の上部に固定される。すなわち、本実施形態ではテーパーガイド16は、前側、後側、右側、左側の4つ設けられる。テーパーガイド16の鉛直面16bは、各スライド壁および固定壁12の枠状部分の内側面(
図1では後側拡大図の内側面12a参照)と、上下方向にみて略同一、もしくは内側面12aよりもやや内側(第1方向側)に出っ張ってもよい。また、テーパー面16aおよび鉛直面16bには、高硬度層が設けられる。本実施形態では高硬度層は、アンダーカット18と同様に、テーパー面16aおよび鉛直面16bに無電解ニッケルメッキ処理を施すことによって形成される。
【0022】
図1に示すように、上型4は、下型2に向かって下降し、テーパーガイド16に案内されて下型2の枠状部分に収まる。上型4は、このように下型2の枠状部分に収まることによって、底部8との間で材料を挟み込んで圧縮し、チップモールド成形品Wの上部形状W2(
図5参照)もしくは下部形状W1(
図5参照)を形成する。したがって上型4の下面4bは、チップモールド成形品Wの下部形状W1または上部形状W2に合わせて形成される。本実施形態では、例えばチップモールド成形品Wの上部形状W2に含まれる凹部G(
図5参照)の形状に合わせて、上型4の下面4bに凸部4cが設けられる。上型4の4つの側面(接触面の一例)4aには、高硬度層が形成される。このように、上型4の側面4aに高硬度層を形成することによって、上型4がテーパーガイド16に案内される際の、テーパー面16aおよび鉛直面16bと側面4aとの摩擦によって発生する摩耗を抑制できる。本実施形態では高硬度層は、アンダーカット18と同様に、側面4aに無電解ニッケルメッキ処理を施すことによって形成される。なお、高硬度層は側面4aのみならず、下型2の全体に施してもよい。また、本実施形態では側面4aとテーパーガイド16が接触する例を用いて説明したが、上型4は、側面4aと別に接触面を設けてもよい。上型4の下面4bには、蒸気を噴出する蒸気噴射孔4fが設けられる。
【0023】
上型4は、上部フレーム4dに固定され、上部フレーム4dは上下方向にのび上部フレーム4dを上下方向に移動可能に支持する脚4eに接続される。上部フレーム4dは、工場エアーなどの圧縮空気によって作動する空圧シリンダー式のアクチュエータ22に接続され、型開き位置Oから、上下方向の圧縮位置Pt(
図4参照)まで移動する。
【0024】
スライドロック6は、各スライド壁が圧縮位置Pにあるときに、各スライド壁がスライド方向と反対側に移動することを規制するための部材である。本実施形態では、スライドロック6は、上部フレーム4dから下方に向かって延びる棒状部材である。
図2に示すように、スライドロック6は、各スライド壁が圧縮位置Pにあるときに各スライド壁の外側の壁面に設けられたロック壁10eと接触し、各スライド壁がスライド方向と反対側に移動することを規制する。なお、本実施形態では右スライド壁10b、および左スライド壁10cに対応するスライドロック6をそれぞれ1つずつ設けたが、全てスライド壁にスライドロック6を設けてもよいし、一つのスライド壁に2つ以上のスライドロック6を設けてもよい。
【0025】
次に
図3、および
図4を用いて成形型1を用いたチップモールド成形品Wの製造方法について説明する。
【0026】
図3(a)に示すように、まず各スライド壁が初期位置Iにあるときに、基材Mをセットする。基材Mをセットすると、
図3(a)のドットで示すように下型2の枠状部分に材料を投入する。このとき、
図4(a)に示すように、上型4は、型開き位置Oにある。
【0027】
次に、
図3(b)に示すように、各スライド壁を圧縮位置Pに向けてスライド方向に移動させる。このとき、
図3(c)に示すように、前スライド壁10aは、右スライド壁10bおよび左スライド壁10cよりも遅れて圧縮位置Pに到達する。このように隣り合うスライド壁(例えば前スライド壁10aと右スライド壁10b)のスライドに時間差を設けることで、材料が両スライド壁10a、10bの間に挟まりにくくなって、チップモールド成形品Wのバリの発生を防ぐことができる。各スライド壁を移動させるタイミングは、適宜変更してもよい。
【0028】
各スライド壁がスライド方向にスライドする際は、右スライド壁10b、および左スライド壁10cの底面が、底部8の上面8bを滑りながら移動する。このような各スライド壁の底面と、底部8の上面8bとの間に隙間があると、材料がこの隙間に入り込む。隙間に入り込んだ材料は、チップモールド成形品Wのバリとなる。しかし、本開示の成形型1では、アンダーカット18によって各スライド壁を底部に向けて押し返す(押圧する)ことができる。これによって、各スライド壁の底面と、底部8の上面8bとの間に隙間が生じることを抑制できる。さらに、本実施形態では、対向面10dおよび端面14aに高硬度層を有する。これによって、アンダーカット18の摩耗を抑制できる。この結果、底部8と各スライド壁の底面との間に隙間が発生することをさらに抑制できる。
【0029】
図3(c)に示すように、各スライド壁が圧縮位置Pまで移動すると、
図4(b)に示すように、上型4が型開き位置Oから圧縮位置Ptまで移動する。このとき上型4は、テーパーガイド16によって、下型2の枠状部材の中央に向かって位置合わせをしながら、下型2に向かって案内される。これによって、上型4が下型2に対して円滑に入り込む。この結果、上型4と下型2の隙間を小さくすることができる。このため、チップモールド成形品Wに発生するバリを抑制できる。さらに、
図3(c)に示すように、上型4が圧縮位置Ptまで降下する間、スライドロック6がロック壁10eと接触しながら降りる。これによって、上型4が材料を圧縮する間に各スライド壁がスライド方向と反対方向に移動することを規制する。この結果、チップモールド成形品Wを規定の形状に精度よく製造できる。
【0030】
図4(b)に示すように、上型4が圧縮位置Ptまで降下すると、上型4の蒸気噴射孔4fから蒸気を噴射し、材料中のバインダーが溶かし、チップモールド成形品Wが形成される。その後、上型4を型開き位置Oに戻すとともに、各スライド壁を初期位置Iに戻し、チップモールド成形品Wを取り出し可能な状態にする。
【0031】
このような成形型1によれば、アンダーカット18によって各スライド壁が底部8から離れることが抑制される。この結果、底部8と各スライド壁との間にチップが入り込みバリが発生すること抑制できる。また、このような製造方法によって製造されたチップモールド成形品Wは、バリが少ない。
【0032】
以上説明した通り、本開示によれば、バリの発生を抑制できる成形型、およびこの成形型を用いたチップモールド成形品Wの製造方法を提供できる。
【0033】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、高硬度層は無電解ニッケルメッキ処理によって形成したが本開示はこれに限定されるものではない。高硬度層は、アルミニウムなどで形成される下型2や上型4の硬度よりも高い硬度の層を形成さできればよい。このため、高硬度層は、例えば、焼き入れなどその他の方法によって形成されてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、下型2の枠状の前方、右方、左方が各スライド壁によってスライド可能に構成され、後方のみが固定壁12によって固定された壁で構成される例を用いて説明したが、本開示の成形型1はこれに限定されるものではない。スライド部10の構成はこれに限定されるものでなく、チップモールド成形品Wの形状に合わせて、3つ以上のスライド壁を設けてもよい。いずれにせよ、スライド部10の構成は、チップモールド成形品Wの形状に合わせて、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 :成形型
2 :下型(第1型の一例)
4 :上型(第2型の一例)
4a :側面(接触面の一例)
6 :スライドロック(第2規制部の一例)
8 :底部
10 :スライド部
10d :対向面
14 :支柱(第1案内部の一例)
16 :テーパーガイド(第2案内部の一例)
16a :テーパー面(傾斜面の一例)
16b :鉛直面
18 :アンダーカット(第1規制部の一例)
I :初期位置
P :圧縮位置
W :チップモールド成形品