(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173499
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】灰除去装置
(51)【国際特許分類】
F23J 1/00 20060101AFI20231130BHJP
F22B 37/48 20060101ALI20231130BHJP
F22B 37/56 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F23J1/00 Z
F22B37/48 A
F22B37/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085793
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 健太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥原 洋人
【テーマコード(参考)】
3K161
【Fターム(参考)】
3K161AA23
3K161HA32
3K161HA71
(57)【要約】
【課題】火炉における灰による腐食を抑制する。
【解決手段】灰除去装置10は、火炉2の炉壁2cの内面、または、火炉2の内部の装置の表面(過熱器5の表面5a)に臨む噴射部11と、噴射部11と接続される水の供給源である水供給源12と、噴射部11と接続される亜硫酸塩の供給源である亜硫酸塩供給源15と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉の炉壁の内面、または、前記火炉の内部の装置の表面に臨む噴射部と、
前記噴射部と接続される水の供給源である水供給源と、
前記噴射部と接続される亜硫酸塩の供給源である亜硫酸塩供給源と、
を備える、
灰除去装置。
【請求項2】
前記亜硫酸塩が前記水に溶解した亜硫酸塩水溶液を前記噴射部から噴射させる第1噴射制御を行う制御装置を備える、
請求項1に記載の灰除去装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1噴射制御を行った後に、前記亜硫酸塩が溶解していない前記水を前記噴射部から噴射させる第2噴射制御を行う、
請求項2に記載の灰除去装置。
【請求項4】
前記亜硫酸塩は、亜硫酸ナトリウムである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の灰除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、灰除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の火炉では、燃料の燃焼に伴って灰が発生する。発生した灰は、火炉の炉壁の内面、または、火炉の内部の装置(例えば、過熱器)の表面に付着する。火炉内に付着する灰には、塩化カリウム(KCl)または塩化ナトリウム(NaCl)等の塩化物が含まれる。ゆえに、火炉において灰が付着した部分は、灰によって腐食されるおそれがある。火炉における灰による腐食を抑制するために、例えば、特許文献1に開示されているように、火炉内に付着した灰に対して水を噴射して灰を除去する灰除去装置が利用される。このような灰除去装置は、スートブロワとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水を噴射する上記の灰除去装置では、火炉内に付着した灰を十分には除去できない場合がある。除去されずに残留した灰は、火炉の腐食を進行させる要因となる。ゆえに、火炉における灰による腐食をより適切に抑制することが望ましい。
【0005】
本開示の目的は、火炉における灰による腐食を抑制することが可能な灰除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の灰除去装置は、火炉の炉壁の内面、または、火炉の内部の装置の表面に臨む噴射部と、噴射部と接続される水の供給源である水供給源と、噴射部と接続される亜硫酸塩の供給源である亜硫酸塩供給源と、を備える。
【0007】
亜硫酸塩が水に溶解した亜硫酸塩水溶液を噴射部から噴射させる第1噴射制御を行う制御装置を備えてもよい。
【0008】
制御装置は、第1噴射制御を行った後に、亜硫酸塩が溶解していない水を噴射部から噴射させる第2噴射制御を行ってもよい。
【0009】
亜硫酸塩は、亜硫酸ナトリウムであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、火炉における灰による腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るボイラを示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る灰除去装置を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る灰除去装置において第1噴射制御が行われている様子を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る灰除去装置において第2噴射制御が行われている様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るボイラ1を示す模式図である。
図1に示すように、ボイラ1は、火炉2と、煙道3と、バーナ4とを備える。
【0014】
火炉2は、燃料を燃焼させて燃焼熱を発生させる炉である。火炉2において用いられる燃料としては、例えば、バイオマス等が挙げられる。ただし、後述するように、火炉2において用いられる燃料は、バイオマス以外の燃料であってもよい。火炉2は、鉛直方向に延在する矩形筒形状等の筒形状を有する。火炉2では、燃料が燃焼することによって、高温の燃焼ガスが発生する。火炉2の底部には、燃料の燃焼によって発生する灰を外部に排出する排出口2aが設けられている。
【0015】
煙道3は、火炉2で発生した燃焼ガスを排ガスとして外部に案内する通路である。煙道3は、火炉2の上部と接続される。煙道3は、水平煙道3aと、後部煙道3bとを有する。水平煙道3aは、火炉2の上部から水平方向に延在する。後部煙道3bは、水平煙道3aの端部から下方に延在する。
【0016】
ボイラ1は、複数の過熱器5を備えている。過熱器5は、火炉2の上部または煙道3に配置される。過熱器5の内部には水が流通する。過熱器5では、火炉2で発生した燃焼熱と、過熱器5の内部の水との間での熱交換が行われる。それにより、水蒸気が生成される。また、ボイラ1は、
図1で図示されていない節炭器または空気予熱器等の各種機器を備え得る。
【0017】
バーナ4は、火炉2の下部の壁部に設けられている。火炉2には、複数のバーナ4が、火炉2の周方向に間隔を空けて設けられている。なお、
図1では図示を省略しているが、複数のバーナ4は、火炉2の延在方向である鉛直方向にも間隔を空けて設けられている。バーナ4は、燃料を火炉2の内部空間2bに噴射する。バーナ4から噴射された燃料が燃焼することにより、火炉2の内部空間2bで火炎Fが形成される。なお、火炉2には、バーナ4から噴射された燃料を着火する図示しない着火装置が設けられている。
【0018】
図2は、本実施形態に係る灰除去装置10を示す模式図である。灰除去装置10は、火炉2での燃焼に伴って発生し、火炉2内に付着した灰Aを除去するために、ボイラ1に設けられる。火炉2内で灰Aが付着する面は、火炉2内の面のうち内部空間2bに面している任意の面である。具体的には、火炉2内で灰Aが付着する面は、火炉2の炉壁2cの内面、または、火炉2の内部の装置(例えば、過熱器5)の表面である。以下で説明する例では、灰除去装置10が過熱器5の表面5aに付着した灰Aを除去する例を説明する。ただし、灰除去装置10は、過熱器5の表面5a以外の箇所に付着した灰Aを除去してもよい。例えば、灰除去装置10は、火炉2の炉壁2cの内面(
図2の例では、炉壁2cの左側の面)に付着した灰Aを除去してもよく、過熱器5以外の火炉2の内部の装置の表面に付着した灰Aを除去してもよい。
【0019】
図2に示すように、灰除去装置10は、噴射部11と、水供給源12と、第1配管13と、第1弁14と、亜硫酸塩供給源15と、第2配管16と、第2弁17と、制御装置18とを備える。
【0020】
噴射部11は、後述するように、第1配管13を通って噴射部11に供給される液体(具体的には、亜硫酸塩水溶液または水)を噴射する。噴射部11は、略円筒形状を有し、液体を噴射するノズルである。噴射部11は、火炉2の炉壁2cに貫通して取り付けられている。噴射部11の噴射口11aは、火炉2の内部空間2b内に配置されている。噴射部11の噴射口11a側と逆側の開口11bは、火炉2の外部に配置されている。開口11bには、第1配管13が接続されている。第1配管13から開口11bを介して噴射部11の内部に液体が供給され、当該液体は噴射口11aから噴射される。噴射口11aは、過熱器5の表面5aと対向している。ゆえに、噴射口11aから過熱器5の表面5aに向けて、液体が噴射される。このように、噴射部11は、過熱器5の表面5aに臨む。
【0021】
水供給源12は、噴射部11と接続される水の供給源である。例えば、水供給源12は、水を貯蔵するタンクである。ただし、水供給源12は、水を生成する任意の装置であってもよい。水供給源12は、第1配管13を介して噴射部11の開口11bと接続されている。水供給源12は、第1配管13を介して噴射部11の内部と連通している。それにより、水供給源12から第1配管13を介して噴射部11に水を供給できる。
【0022】
第1配管13には、第1弁14が設けられている。第1弁14は、第1配管13を開閉可能である。第1弁14が開閉することによって、水供給源12から噴射部11に水が供給される状態と、水供給源12から噴射部11への水の供給が停止している状態とが切り替えられる。水供給源12から噴射部11への水の供給は、例えば、第1配管13に設けられる不図示のポンプ等によって実現される。なお、第1弁14の開度が調整可能となっていてもよい。第1弁14の開度が調整されることによって、水供給源12から噴射部11に供給される水の量が調整される。
【0023】
亜硫酸塩供給源15は、噴射部11と接続される亜硫酸塩の供給源である。例えば、亜硫酸塩供給源15は、亜硫酸塩を貯蔵するタンクである。ただし、亜硫酸塩供給源15は、亜硫酸塩を生成する任意の装置であってもよい。亜硫酸塩供給源15は、第2配管16を介して第1配管13と接続されている。具体的には、第2配管16は、第1配管13のうち第1弁14よりも噴射部11側の部分と接続されている。亜硫酸塩供給源15は、第2配管16を介して第1配管13の内部と連通している。それにより、亜硫酸塩供給源15から第2配管16を介して第1配管13に亜硫酸塩を供給できる。亜硫酸塩供給源15から供給される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)または亜硫酸カリウム(K2SO3)等が挙げられる。
【0024】
第2配管16には、第2弁17が設けられている。第2弁17は、第2配管16を開閉可能である。第2弁17が開閉することによって、亜硫酸塩供給源15から第1配管13に亜硫酸塩が供給される状態と、亜硫酸塩供給源15から第1配管13への亜硫酸塩の供給が停止している状態とが切り替えられる。亜硫酸塩供給源15から第1配管13への亜硫酸塩の供給は、例えば、第2配管16に設けられる不図示のファン等によって実現される。水供給源12から噴射部11に水が供給される状態で、亜硫酸塩供給源15から第1配管13に亜硫酸塩が供給されることによって、第1配管13内で亜硫酸塩が水に溶解して亜硫酸塩水溶液が生成される。第1配管13内で生成された亜硫酸塩水溶液は、第1配管13を介して噴射部11に供給される。なお、第2弁17の開度が調整可能となっていてもよい。第2弁17の開度が調整されることによって、亜硫酸塩供給源15から第1配管13に供給される亜硫酸塩の量が調整される。
【0025】
制御装置18は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含み、灰除去装置10全体を制御する。特に、制御装置18は、第1弁14および第2弁17の動作をそれぞれ制御する。それにより、制御装置18は、水供給源12から噴射部11に水が供給される状態と、水供給源12から噴射部11への水の供給が停止している状態とを切り替えることができる。また、制御装置18は、亜硫酸塩供給源15から第1配管13に亜硫酸塩が供給される状態と、亜硫酸塩供給源15から第1配管13への亜硫酸塩の供給が停止している状態とを切り替えることができる。
【0026】
上記のように、制御装置18は、第1弁14および第2弁17の動作をそれぞれ制御することによって、噴射部11への液体の供給状態を制御できる。それにより、制御装置18は、噴射部11による液体の噴射の実行可否、および、噴射部11から噴射される液体の種類を切り替えることができる。
【0027】
図3は、本実施形態に係る灰除去装置10において第1噴射制御が行われている様子を示す模式図である。
図3に示すように、制御装置18は、亜硫酸塩Sが水Wに溶解した亜硫酸塩水溶液SWを噴射部11から噴射させる第1噴射制御を行う。制御装置18は、第1噴射制御において、第1弁14および第2弁17の両方を開状態にする。それにより、水供給源12から第1配管13を介して噴射部11に水Wが供給される。さらに、亜硫酸塩供給源15から第2配管16を介して第1配管13に亜硫酸塩Sが供給される。ゆえに、第1配管13内で亜硫酸塩Sが水Wに溶解して亜硫酸塩水溶液SWが生成される。
【0028】
第1配管13内で生成された亜硫酸塩水溶液SWは、第1配管13を介して噴射部11に供給され、噴射部11の噴射口11aから過熱器5の表面5aに向けて噴射される。なお、第1噴射制御において、亜硫酸塩水溶液SWの噴射は、所定時間だけ単発的に行われてもよく、間欠的に行われてもよい。噴射部11の噴射口11aから噴射された亜硫酸塩水溶液SWは、過熱器5の表面5aに付着した灰Aに衝突する。亜硫酸塩水溶液SWが灰Aに衝突することによる物理的な衝撃力によって、過熱器5の表面5aから灰Aが脱落する。この際、一部の灰Aが、過熱器5の表面5aから脱落せずに残留する場合がある。
【0029】
灰Aには、塩化カリウム(KCl)または塩化ナトリウム(NaCl)等の塩化物が含まれる。ゆえに、脱落せずに残留した灰Aによって過熱器5が腐食されるおそれがある。一方、灰除去装置10によれば、過熱器5の表面5aに噴射される亜硫酸塩水溶液SWによって、過熱器5の表面5aに残留した灰Aに含まれる塩化物を分解することができる。具体的には、以下の式(1)に示す反応によって、灰Aに含まれる塩化物が分解される。
【0030】
2KCl+SO2+1/2O2+H2O → K2SO4+2HCl ・・・式(1)
【0031】
式(1)では、灰Aに含まれる塩化カリウムが分解されて塩化水素(HCl)として放出される例が一例として示されている。具体的には、塩化カリウムは、亜硫酸塩水溶液SW中の二酸化硫黄(SO2)と反応して分解される。灰Aに含まれる塩化カリウム以外の塩化物も同様に分解される。それにより、過熱器5の灰Aによる腐食が抑制される。なお、過熱器5の表面5aに付着した亜硫酸塩水溶液SWによって灰Aに含まれる塩化物を分解する機能は、第1噴射制御の後においても所定期間に亘って維持される。
【0032】
上記のように、灰除去装置10は、亜硫酸塩水溶液SWを噴射部11から噴射することによって、過熱器5の表面5aに付着した灰Aを物理的な衝撃力により脱落させた上で、脱落せずに残留した灰Aに含まれる塩化物を分解する。亜硫酸塩水溶液SWは、弱アルカリ性である。それにより、過熱器5のうち亜硫酸塩水溶液SWが付着した箇所における防食性が向上する。さらに、亜硫酸塩水溶液SW中の亜硫酸イオン(SO3
2-)が溶存酸素と反応し、溶存酸素が除去される。それにより、過熱器5の溶存酸素による腐食が抑制される。
【0033】
一方、硫酸ナトリウム(Na2SO4)または硫酸カリウム(K2SO4)等の硫酸塩が水Wに溶解した硫酸塩水溶液を噴射部11から噴射することによって、過熱器5の表面5aに付着した灰Aを物理的な衝撃力により脱落させた上で、脱落せずに残留した灰Aに含まれる塩化物を分解することも考えられる。しかしながら、硫酸塩水溶液は、中性である。それにより、過熱器5のうち硫酸塩水溶液が付着した箇所における防食性は、亜硫酸塩水溶液SWが用いられる場合と比べて低くなる。さらに、硫酸塩水溶液自体により腐食が進行するおそれがある。
【0034】
噴射部11から噴射される亜硫酸塩水溶液SWの濃度は、下限値および上限値を有する適切な濃度範囲内の濃度に設定されることが好ましい。
【0035】
亜硫酸塩水溶液SWの濃度の下限値は、亜硫酸塩水溶液SW中の溶存酸素をほぼ除去できるように設定されることが好ましい。つまり、亜硫酸塩水溶液SWの濃度の下限値は、亜硫酸塩水溶液SW中の溶存酸素をほぼ除去できる濃度のうち極力低い濃度であることが好ましい。例えば、亜硫酸塩水溶液SWとして亜硫酸ナトリウムが用いられる場合、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度の下限値は、0.01%に設定される。亜硫酸塩水溶液SWの濃度の下限値を上記のように設定することによって、亜硫酸塩水溶液SW中の溶存酸素がほぼ除去され、溶存酸素による腐食が抑制される。
【0036】
亜硫酸塩水溶液SWの濃度の上限値は、亜硫酸塩水溶液SW中に亜硫酸塩Sが溶解しきれずに一部の亜硫酸塩Sが固体として析出することが防止されるように設定されることが好ましい。つまり、亜硫酸塩水溶液SWの濃度の上限値は、亜硫酸塩水溶液SW中に亜硫酸塩Sが溶解しきれずに一部の亜硫酸塩Sが固体として析出することが防止される濃度のうち極力高い濃度であることが好ましい。例えば、亜硫酸塩水溶液SWとして亜硫酸ナトリウムが用いられる場合、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度の上限値は、5%に設定される。亜硫酸塩水溶液SWの濃度の上限値を上記のように設定することによって、一部の亜硫酸塩Sが固体として析出することが防止され、析出した亜硫酸塩Sによって噴射部11が詰まることが抑制される。
【0037】
制御装置18は、例えば、前回の第1噴射制御の実行時点から所定期間が経過した場合に、第1噴射制御を行う。この場合、第1噴射制御は、所定期間ごとに繰り返し行われる。所定期間は、具体的には、ある程度の量の灰Aが過熱器5の表面5aに堆積するのにかかる期間である。
【0038】
図4は、本実施形態に係る灰除去装置10において第2噴射制御が行われている様子を示す模式図である。
図4に示すように、制御装置18は、第1噴射制御を行った後に、亜硫酸塩Sが溶解していない水Wを噴射部11から噴射させる第2噴射制御を行う。制御装置18は、第2噴射制御において、第1弁14を開状態にして第2弁17を閉状態にする。それにより、亜硫酸塩供給源15から第1配管13への亜硫酸塩Sの供給が停止している状態で、水供給源12から第1配管13を介して噴射部11に水Wが供給される。噴射部11に供給された水Wは、噴射部11の噴射口11aから噴射される。なお、第2噴射制御において、水Wの噴射は、所定時間だけ単発的に行われてもよく、間欠的に行われてもよい。
【0039】
上述した第1噴射制御では、第1配管13の一部(具体的には、第1配管13のうち第2配管16との合流箇所よりも噴射部11側の部分)、および、噴射部11の内部を亜硫酸塩水溶液SWが流通する。ゆえに、第1配管13の一部、および、噴射部11の内面に亜硫酸塩水溶液SWが残留するので、第1配管13および噴射部11が硫化腐食するおそれがある。硫化腐食は、亜硫酸塩水溶液SWに起因して生じる硫化水素(H2S)による腐食である。第1噴射制御を行った後に上記の第2噴射制御を行うことによって、第1配管13の一部、および、噴射部11の内面に残留した亜硫酸塩水溶液SWを水Wによって洗い流すことができる。それにより、灰除去装置10の流路における硫化腐食が抑制される。
【0040】
第2噴射制御において、噴射部11の噴射口11aから噴射された水Wは、過熱器5の表面5aまで届かないようになっていることが好ましい。例えば、制御装置18は、第2噴射制御において噴射口11aから噴射される水Wの流量を、第1噴射制御において噴射口11aから噴射される亜硫酸塩水溶液SWの流量よりも小さくする。噴射口11aから噴射される液体の流量の調整は、例えば、第1配管13に設けられる不図示のポンプの出力を調整することによって実現され得る。噴射口11aから噴射された水Wが過熱器5の表面5aまで届かないようにすることによって、過熱器5に水Wが接触することによる熱応力の発生が抑制される。
【0041】
灰除去装置10の流路における硫化腐食をより適切に抑制する観点では、第2配管16は、第1配管13のうち噴射部11に極力近い位置に接続されることが好ましい。それにより、灰除去装置10の流路において第1噴射制御を行った後に亜硫酸塩水溶液SWが残留する範囲が狭くなる。ゆえに、灰除去装置10の流路における硫化腐食がより適切に抑制される。
【0042】
以上説明したように、灰除去装置10は、火炉2の炉壁2cの内面、または、火炉2の内部の装置の表面(上記の例では、過熱器5の表面5a)に臨む噴射部11と、噴射部11と接続される水Wの供給源である水供給源12と、噴射部11と接続される亜硫酸塩Sの供給源である亜硫酸塩供給源15とを備える。それにより、火炉2内で灰Aが付着した箇所に対して噴射部11から亜硫酸塩水溶液SWを噴射することができるので、灰Aを物理的な衝撃力により脱落させた上で、脱落せずに残留した灰Aに含まれる塩化物を分解することができる。ゆえに、火炉2における灰Aによる腐食が抑制される。
【0043】
また、灰除去装置10では、噴射部11から噴射される亜硫酸塩水溶液SWは弱アルカリ性であるので、火炉2内で亜硫酸塩水溶液SWが付着した箇所における防食性が向上する。さらに、亜硫酸塩水溶液SW中の亜硫酸イオン(SO3
2-)が溶存酸素と反応し、溶存酸素が除去される。それにより、火炉2における溶存酸素による腐食が抑制される。また、灰除去装置10では、噴射部11から噴射される亜硫酸塩水溶液SWは液体であるので、スラリー状の流動体が噴射部11から噴射される場合と比較して、噴射部11が詰まることが抑制される。
【0044】
特に、灰除去装置10では、制御装置18は、亜硫酸塩Sが水に溶解した亜硫酸塩水溶液SWを噴射部11から噴射させる第1噴射制御を行う。それにより、火炉2内に付着した灰Aを物理的な衝撃力により脱落させた上で、脱落せずに残留した灰Aに含まれる塩化物を分解することが適切に実現される。ゆえに、火炉2における灰Aによる腐食を抑制することが適切に実現される。
【0045】
特に、灰除去装置10では、制御装置18は、第1噴射制御を行った後に、亜硫酸塩Sが溶解していない水Wを噴射部11から噴射させる第2噴射制御を行う。それにより、第1噴射制御を行った後に、灰除去装置10の流路に残留した亜硫酸塩水溶液SWを水Wによって洗い流すことができる。ゆえに、灰除去装置10の流路における硫化腐食が抑制される。
【0046】
特に、灰除去装置10では、亜硫酸塩Sは、亜硫酸ナトリウムである。それにより、火炉2内に付着した灰Aに含まれる塩化物を分解することが具体的に実現される。ゆえに、火炉2における灰Aによる腐食を抑制することが具体的に実現される。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
上記では、火炉2においてバイオマスが燃料として用いられる例を説明した。この場合、火炉2での燃焼に伴って灰Aが特に発生しやすい。ゆえに、上記の灰除去装置10を利用して灰Aを除去することがより重要となる。ただし、火炉2において用いられる燃料は、バイオマス以外の燃料であってもよい。例えば、火炉2において化石燃料を含む燃料が用いられてもよい。
【0049】
本開示は、ボイラ等に用いられる火炉における灰による腐食の抑制に資するので、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」および目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0050】
2 火炉
2c 炉壁
5 過熱器(火炉の内部の装置)
5a 表面
10 灰除去装置
11 噴射部
12 水供給源
15 亜硫酸塩供給源
18 制御装置
S 亜硫酸塩
SW 亜硫酸塩水溶液
W 水