(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173504
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電子制御装置及び故障診断方法
(51)【国際特許分類】
H04L 43/08 20220101AFI20231130BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H04L43/08
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085805
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】関谷 勇人
(57)【要約】
【課題】ECUの電源を遮断できずに車両の補機バッテリの電力枯渇の可能性がある異常を記録して搭乗者へ通知する。
【解決手段】ネットワークに接続される電子制御装置であって、前記電子制御装置を制御する演算装置と、前記ネットワークからの起動信号を受信可能な送受信部と、試験用の起動信号を発生し、前記送受信部に出力する診断回路と、前記送受信部を前記ネットワークと接続するか、前記診断回路と接続するかを切替可能な遮断回路とを備え、前記演算装置は、前記ネットワークとの接続を遮断するように前記遮断回路を切り替え、前記起動信号の待機状態へ前記送受信部を切り替え、前記送受信部から出力される起動信号検出信号が起動信号検出状態であるかを第1の判定をし、前記送受信部から出力される起動信号検出信号が前記起動信号検出状態であれば、前記電子制御装置の故障であると判定する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続される電子制御装置であって、
前記電子制御装置を制御する演算装置と、
前記ネットワークからの起動信号を受信可能な送受信部と、
試験用の起動信号を発生し、前記送受信部に出力する診断回路と、
前記送受信部を前記ネットワークと接続するか、前記診断回路と接続するかを切替可能な遮断回路とを備え、
前記演算装置は、
前記ネットワークとの接続を遮断するように前記遮断回路を切り替え、
前記起動信号の待機状態へ前記送受信部を切り替え、
前記送受信部から出力される起動信号検出信号が起動信号検出状態であるかを第1の判定をし、前記送受信部から出力される起動信号検出信号が前記起動信号検出状態であれば、前記電子制御装置の故障であると判定することを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記演算装置は、
前記起動信号の送信を前記診断回路に指示した後、前記送受信部から出力される起動信号検出信号が前記起動信号検出状態であるかを第2の判定をし、前記送受信部から出力される起動信号検出信号が前記起動信号検出状態であれば、前記電子制御装置に異常がないと判定することを特徴とする電子制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記演算装置への電源の供給を制御する電源制御回路を備え、
前記電源制御回路は、前記第1の判定で前記電子制御装置の故障であると判定された場合、前記演算装置への電源供給を停止することを特徴とする電子制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記演算装置への電源の供給を制御する電源制御回路を備え、
前記電源制御回路は、前記電子制御装置の故障診断中に、前記演算装置への電源供給を維持することを特徴とする電子制御装置。
【請求項5】
ネットワークに接続される電子制御装置の故障診断方法であって、
前記電子制御装置は、当該電子制御装置を制御する演算装置と、前記ネットワークからの起動信号を受信可能な送受信部と、試験用の起動信号を発生し、前記送受信部に出力する診断回路と、前記送受信部を前記ネットワークと接続するか、前記診断回路と接続するかを切替可能な遮断回路とを有し、
前記故障診断方法は、
前記演算装置が、前記ネットワークとの接続を遮断するように前記遮断回路を切り替え、
前記演算装置が、前記起動信号の待機状態へ前記送受信部を切り替え、
前記演算装置が、前記送受信部から出力される起動信号検出信号が起動信号検出状態であるかを第1の判定をし、前記送受信部から出力される起動信号検出信号が前記起動信号検出状態であれば、前記電子制御装置の故障であると判定することを特徴とする故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関し、特に車載電子制御装置に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の制御は多数の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)によって実現されている。車両内ではEthernetやCAN(Controller Area Network)と称されるバス型の通信ネットワークシステムによってネットワークが構築される。各ECUは、車載ネットワークを介して相互に通信し、車両制御を実行する。このようなネットワークにおいては、一部のECUがセンサなどを利用して環境の変化を監視し、他のECUは電源を遮断して消費電力を低減することがある。監視するECUは、特定の条件を満たすと、その後の制御に関係する他のECUに起動信号を送信する。ISO11898は、ネットワークを介してECUを起動するWake-Upを規定する。ISO11898によると、ネットワークに接続されたCANトランシーバは信号がWake-up patternとして定義される特定のパターンを検出して信号を出力して、ネットワークを介してECUを起動できる。
【0003】
本技術分野の背景技術として、特許文献1(特開2020-29203号公報)、特許文献2(特開2021-13135号公報)がある。特許文献1には、施設内の各設備機器の運転制御を行うと共に運転状態の監視を行い各設備機器の運転状態情報を周期的に提供する各施設に設けられた中央制御監視装置の少なくとも1つに接続され、施設内の各設備機器の保守管理を行う施設管理システムであって、中央制御監視装置からの各設備機器の運転状態情報と保守員の保守点検により得られた各設備機器の点検情報とに基づき、各設備機器に関するマスタ保守・修繕計画情報を保守・修繕の処置を先送りするように変更するための上記運転状態情報および点検情報に関する予め定められた条件に従って変更する施設管理システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、建物が有する各種修繕対象物の修繕の必要性を判定する基準値である基準修繕必要度と過去に行われた定期点検時の修繕対象物毎の既存修繕必要度とが記憶された修繕必要度記憶手段と、前記修繕対象物毎の定期点検の周期である点検周期が記憶された点検周期記憶手段と、最新の定期点検時の修繕対象物毎の最新修繕必要度を入力する修繕必要度入力手段と、前記修繕必要度記憶手段に記憶された前記基準修繕必要度及び前記既存修繕必要度と、前記点検周期記憶手段に記憶された前記点検周期と、前記修繕必要度入力手段により入力された前記最新修繕必要度とに基づいて基準修繕実施時期を算出する基準修繕周期算出手段と、前記基準修繕周期算出手段で算出された前記基準修繕実施時期を表示する基準修繕周期表示手段と、を備えることを特徴とする建物修繕計画算出装置。が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-29203号公報
【特許文献2】特開2021-13135号公報
【非特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2ではCANトランシーバの通信異常個所を特定できる。しかし、CANトランシーバがWake-up pattern検出をサポートし電源回路に接続され、通信によって電源を投入できる電子制御装置では、CANトランシーバの故障によって発生する電源回路の異常状態の検出が困難である。
【0008】
本発明は前述した課題に鑑みなされたもので、CANトランシーバの故障による電源回路が異常状態になり、ECUの電源を遮断できずに車両の補機バッテリの電力枯渇の可能性がある異常を記録して搭乗者へ通知できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、ネットワークに接続される電子制御装置であって、前記電子制御装置を制御する演算装置と、前記ネットワークからの起動信号を受信可能な送受信部と、試験用の起動信号を発生し、前記送受信部に出力する診断回路と、前記送受信部を前記ネットワークと接続するか、前記診断回路と接続するかを切替可能な遮断回路とを備え、前記演算装置は、前記ネットワークとの接続を遮断するように前記遮断回路を切り替え、前記起動信号の待機状態へ前記送受信部を切り替え、前記送受信部から出力される起動信号検出信号が起動信号検出状態であるかを第1の判定をし、前記送受信部から出力される起動信号検出信号が前記起動信号検出状態であれば、前記電子制御装置の故障であると判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、電源ON固着故障によって、車両の補機バッテリの電力枯渇の可能性がある異常を記録して搭乗者へ通知できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】実施例1のECUの機能ブロック図である。
【
図1B】実施例1の電源制御回路の機能ブロック図である。
【
図2】実施例1の電源異常状態診断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例1>
図1A、
図1Bを参照して、本発明の実施例のECU100の機能構成を説明する。
図1Aは、本発明の実施例1のECU100の機能ブロック図であり、
図1Bは、電源制御回路102の機能ブロック図である。
【0013】
ECU100は、制御演算を行うCPUと制御情報を記録する不揮発性メモリを有するマイコン101と、起動要求を受けてマイコン101へ電源を供給する電源制御回路102と、外部ネットワークバス及び電源制御回路102と接続されるCANトランシーバ103と、CANトランシーバ103と外部ネットワークバスとの接続を遮断できる遮断回路105と、所定の起動信号(Wake-up pattern)を生成する診断回路111を有する。CANトランシーバ103は、起動信号を検出しない状態では、Wake-up検出信号104をLowとし、起動信号を検出すると、Wake-up検出信号104をHighに立ち上げて出力する。
【0014】
CANトランシーバ103は、マイコン101との間で転送される送受信信号を外部ネットワークバス1に送受信する。CANトランシーバ103は、状態信号107によって、通常通信が可能な状態と通信せず起動を待機するモードを切り替えることができ、Wake-up待機状態で起動信号を検出するとWake-up検出信号(PW)104を出力する。
【0015】
Wake-up検出信号104は、起動要求信号として電源制御回路102へ入力される。例えば、Wake-up検出信号104が検出状態でHigh、未検出状態でLowを出力する。電源制御回路102は、起動要求信号Highが入力される場合、外部電源VBをマイコン101への電源供給110に出力し、起動要求信号Lowが入力される場合、電源保持信号(PHOLD)109がHighであれば外部電源VBをマイコン101への電源供給110に出力し、電源保持信号109がLowであれば外部電源VBのマイコン101への電源供給110を遮断する。例えば、CANトランシーバ103の故障による電源の供給の異常状態の診断時に、PHOLD109をHighにして、マイコン101の電源を遮断しないようにしている。
【0016】
これにより、ネットワーク経由で入力される起動信号によって、ECU100のWake-up起動を実現する。また、電源制御回路102は、マイコン101の故障時に電源を遮断するため、遮断信号(FS)108が入力されると、外部電源VBのマイコン101への電源供給110を遮断できる。
【0017】
遮断回路105は、マイコン101からの切り替え信号106によって、閉状態でCANトランシーバ103を外部ネットワークバスに接続し、開状態で診断回路111に接続して、CANループバックする機能を有する。診断回路111は、マイコン101の送信要求信号(W/U)112を受け、起動信号を送信する。
【0018】
電源制御回路102は、
図1Bに示すように、OR回路とNAND回路によって構成されており、マイコン101から出力される電源保持信号109とCANトランシーバ103から出力されるWake-up検出信号104のいずれかがHighであり、かつ、マイコン101から出力される電源遮断信号108がLowである場合に外部から入力される電源VBを電源供給110を経由してマイコン101に出力する。なお、電源制御回路102は、単一のICで構成されなくてもよい。
【0019】
図2は、CANトランシーバ103の故障により電源の供給の異常状態をマイコン101が診断する処理のフローチャートである。
図2に示す診断処理は、通信終了後の電源遮断直前に実行される。
【0020】
まず、マイコン101は、切り替え信号106を遮断回路105に送信して、遮断回路105を開状態に切り替え、外部ネットワークバスからの通信を遮断する(201)。
【0021】
次に、マイコン101は、CANトランシーバ103の診断中にマイコン101の電源を保持するため、電源保持信号109(High)を電源制御回路102に出力する(202)。
【0022】
そして、マイコン101は、Wake-up待機状態へ切り替える状態信号107をCANトランシーバ103に出力し、CANトランシーバ103をWake-up待機状態に切り替える(203)。
【0023】
マイコン101は、状態信号107出力後、実際にハードウェアの状態が切り替わる前にWake-up検出信号104を読み出した誤判定を防止するため、CANトランシーバ103のハードウェア性能で定められる状態切り替えに必要な時間を待機する(204)。
【0024】
マイコン101は、Wake-up検出信号104を取得し、Wake-up検出信号104がLowになったかを判定する(205)。
【0025】
マイコン101は、Wake-up検出信号104がHighである判定された場合、CANトランシーバ103のWake-up検出信号104又は状態信号107の故障により電源ON固着状態になったと判定する(206)。
【0026】
次にマイコン101は、状態信号107をCANトランシーバ103に出力し、CANトランシーバ103をCAN送受信可能状態へ切り替え、切り替え信号106を遮断回路105に送信して、遮断回路105を開状態へ切り替える(207)。マイコン101は、CANトランシーバ103から診断回路111へCAN送信を行い(208)、CAN信号のループバックを待機する(209)。
【0027】
マイコン101は、CANループバック信号を受信できた場合(210でyes)、CANトランシーバ103の状態遷移は成功しているので、状態信号107は故障しておらず、MODE端子が故障している(すなわち、MODE端子を介してCANトランシーバ103への送信される状態信号107に異常がある)と判定し、マイコン101の不揮発性メモリに判定結果を記録する(211)。ステップ211では、MODE端子を介してCANトランシーバ103への送信される状態信号107に異常が生じているMODE端子故障が判定され、具体的には、マイコン101のMODE信号出力回路、MODE信号線、CANトランシーバ103のMODE信号回路のいずれかの故障が判定される。CANループバック信号を受信できない場合、INH端子が故障していると判定し、マイコン101の不揮発性メモリに判定結果を記録する(212)。ステップ212では、CANトランシーバ103のINH出信号力回路、INH信号線、マイコン101のINH信号回路のいずれかの故障が判定される。
【0028】
判定結果の記録後、電源遮断前に乗員へ故障を通知するため、マイコン101は、切り替え信号106を遮断回路105に送信して、遮断回路105を閉状態へ切り替え、外部ネットワークバスとの通信が可能な状態にする(217)。
【0029】
その後、判定結果(状態信号107の異常を示す診断情報、INH端子の故障を示す診断情報)を他のECUへ通知し、電源制御回路102へ電源遮断信号108を出力して、ECU100の電源を遮断する(218)。
【0030】
一方、ステップ205において、Wake-up検出信号104がLowであると判定された場合、マイコン101は、送信要求信号112を診断回路111へ送信して、診断回路111からのWake-up patternの送信を指示する(213)。
【0031】
診断回路111がCANトランシーバ103へWake-up pattern送信し、実際にハードウェアの状態が切り替わる前にWake-up検出信号104を読み出して誤判定を防ぐため、マイコン101は、CANトランシーバ103のハードウェア性能で定められる状態切り替えに必要な時間とWake-up patternの送信に必要な時間の合計の時間を待機する(214)。
【0032】
その後、マイコン101は、Wake-up検出信号104がHighになったかを判定する(215)。
【0033】
ステップ215の判定の結果、Wake-up検出信号104がHighでない場合、マイコン101は、CANトランシーバ103の故障又は途中回路の断線によって電源OFF固着状態になったと判定し、マイコン101の不揮発性メモリに判定結果を記録する(216)。
【0034】
判定結果の記録後、電源遮断前に乗員へ故障を通知するため、マイコン101は、切り替え信号106を遮断回路105に送信して、遮断回路105を閉状態へ切り替え、外部ネットワークバスとの通信が可能な状態にする(217)。
【0035】
その後、マイコン101は、判定結果(CANトランシーバ103の故障又は途中回路の断線を示す診断情報)を他のECUへ通知し、電源制御回路102へ電源遮断信号108を出力して、ECU100の電源を遮断する(218)。
【0036】
ステップ215で、マイコン101は、Wake-up検出信号104がHighである場合、電源制御回路102が正常に動作していると判定し、判定結果(異常なしの診断情報)をマイコン101の不揮発性メモリに必要に応じて記録する(219)。
【0037】
その後、マイコン101は、通常通信を開始するため、切り替え信号106を遮断回路105に送信して、遮断回路105を閉状態へ切り替え(220)、診断処理を終了する。
【0038】
以上に説明したように、実施例1のECU100では、電源回路の電源ON固着異常を検出するとマイコン101への電源供給を遮断し、電源OFF固着時には異常を記録するまで電源が遮断されないので、車両の補機バッテリの電力枯渇を防止し、電源OFF固着時には異常を記録して搭乗者へ通知できる。
【0039】
<実施例2>
実施例1では、遮断回路105の開閉によってCANトランシーバ103のループバック試験を行ったが、実施例2ではループバック回路を有する遮断回路105を有さず、遮断・切替回路305で、CANトランシーバ303を別のCANトランシーバ311と接続する。なお、実施例2において、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と同じ機能及び処理の説明は省略する。
【0040】
図3は、本発明の実施例2のECU300の機能ブロック図である。
【0041】
ECU300は、制御演算を行うCPUと制御情報を記録する不揮発性メモリを有するマイコン301と、起動要求を受けてマイコン301へ電源を供給する電源制御回路302と、外部ネットワークバス1及び電源制御回路302と接続されるCANトランシーバ303と、外部ネットワークバス2と接続されるCANトランシーバ311と、CANトランシーバ303と外部ネットワークバス1との接続の遮断や、CANトランシーバ311と外部ネットワークバス2との接続の遮断が可能な遮断・切替回路305を有する。CANトランシーバ303は、起動信号を検出し、Wake-up検出信号304を出力する。
【0042】
CANトランシーバ303は、マイコン301との間で転送される送受信信号を外部ネットワークバス1に送受信する。CANトランシーバ303は、状態信号307によって、通常通信が可能な状態と通信せず起動を待機するモードを切り替えることができ、Wake-up待機状態で起動信号を検出するとWake-up検出信号304を出力する。
【0043】
CANトランシーバ311は、マイコン301との間で転送される送受信信号を外部ネットワークバス2に送受信する。
【0044】
Wake-up検出信号304は、起動要求信号として電源制御回路302へ入力される。例えば、Wake-up検出信号304が検出状態でHigh、未検出状態でLowを出力すれば、電源制御回路302は、Highが入力される場合、外部電源VBをマイコン301への電源供給310に出力、Lowが入力される場合、電源保持信号309がON入力であれば外部電源VBをマイコン301への電源供給310に出力し、電源保持信号109がOFF入力であれば外部電源VBのマイコン301への電源供給310を遮断する。
【0045】
これにより、ネットワーク経由で入力される起動信号によって、ECU100のWake-up起動を実現する。また、電源制御回路302は、故障時に電源を遮断するため、遮断信号308が入力されると、外部電源VBのマイコン301への電源供給110を遮断できる。
【0046】
遮断・切替回路305は、マイコン301からの切り替え信号306によって、閉状態でCANトランシーバ303を外部ネットワークバス1に接続する。また、遮断・切替回路305は、マイコン301からの切り替え信号306によって、閉状態でCANトランシーバ311を外部ネットワークバス2に接続する。CANトランシーバ303の開閉とCANトランシーバ311の開閉は、別個に制御できるとよい。遮断・切替回路305は、マイコン301からの切り替え信号306によって、開状態でCANトランシーバ303とCANトランシーバ311を接続して、CANトランシーバ303とCANトランシーバ311によってループバック回路を生成する。
【0047】
まず、電源供給異常診断処理(
図2)のステップ201において、マイコン301は、切り替え信号306を遮断・切替回路305に送信して、遮断・切替回路305を開状態に切り替え、外部ネットワークバスからの通信を遮断し、CANトランシーバ303とCANトランシーバ311を接続した状態にする。
【0048】
その後、ステップ203において、マイコン101は、Wake-up待機状態へ切り替える状態信号107をCANトランシーバ303に出力し、CANトランシーバ303をWake-up待機状態に切り替える。
【0049】
そして、ステップ213において、Wake-up検出信号304がLowであると判定された場合、マイコン301は、CANトランシーバ311からWake-up patternを送信する。
【0050】
同様の手順を用いて、トランシーバ303を利用して、CANトランシーバ311を診断できる。
【0051】
実施例2では、複数のCANトランシーバを有するECUにおいて、CANトランシーバ同士を接続してループバック回路を形成することで、遮断回路の診断フレーム送信機能を省略し、部品点数を削減できる。
【0052】
以上に説明したように、本発明の実施例の電子制御装置(ECU100)では、演算装置(マイコン101)は、ネットワーク(外部ネットワークバス)との接続を遮断するように遮断回路105を開状態に切り替え、起動信号(Wake-up pattern)の待機状態へ送受信部(CANトランシーバ103)を切り替え、送受信部から出力される起動信号検出信号が起動信号検出状態であるかを第1の判定をし、送受信部から出力される起動信号検出信号が起動信号検出状態(Wake-up検出信号104がHigh)であれば、電子制御装置の故障であると判定するので、電源ON固着故障によって、車両の補機バッテリの電力枯渇の可能性がある異常を記録して搭乗者へ通知できる。
【0053】
また、第1の判定で電子制御装置の故障であると判定された場合、電源ON固着故障であると判定し、電源制御回路102に電源遮断信号108を出力して、電源制御回路102は演算装置への電源供給を停止するので、車両の補機バッテリの電力枯渇を防止できる。
【0054】
また、電子制御装置の故障診断中に電源保持信号109を出力して、電源制御回路102は、前記演算装置への電源供給を維持するので、電子制御装置の電源遮断によって故障原因の記録漏れを防止できる。
【0055】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0056】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0057】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0058】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0059】
100、300 ECU(Electronic Control Unit)
101、301 マイコン
102、302 電源制御回路
103、303、311 CANトランシーバ
104、304 Wake-up検出信号
105 遮断回路
106、306 切り替え信号
107、307 状態信号
108、308 電源遮断信号
109、309 電源保持信号
110、310 電源供給
111 診断回路
112 送信要求信号