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特開2023-173506臭気分析システム、臭気分析装置、プログラム及び臭気分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173506
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】臭気分析システム、臭気分析装置、プログラム及び臭気分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/00 20060101AFI20231130BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20231130BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20231130BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20231130BHJP
   G01N 33/497 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
G01N33/00 C
A61L9/14
G16Y20/10
G16Y40/10
G01N33/497 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085809
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】399074086
【氏名又は名称】株式会社フィッツコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100141427
【弁理士】
【氏名又は名称】飯村 重樹
(72)【発明者】
【氏名】富樫 康博
【テーマコード(参考)】
2G045
4C180
【Fターム(参考)】
2G045CB30
4C180AA02
4C180AA03
4C180BB12
4C180BB15
4C180CB01
4C180GG06
4C180KK01
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】臭気の特徴に応じた臭気対策を講じることができる臭気分析システム、臭気分析装置、プログラム及び臭気分析方法を提供する。
【解決手段】臭気を発生する複数の空間にそれぞれ配備されて複数の空間で発生する臭気をそれぞれ検知する臭気検知装置と、臭気検知装置に対して遠隔に配備されて臭気検知装置で検知した複数の空間の臭気の特徴を複数の空間の臭気ごとに分析する臭気分析装置と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気を発生する複数の空間にそれぞれ配備されて複数の前記空間で発生する前記臭気をそれぞれ検知する臭気検知装置と、
該臭気検知装置に対して遠隔に配備されて前記臭気検知装置で検知した複数の前記空間の前記臭気の特徴を複数の前記空間の前記臭気ごとに分析する臭気分析装置と、
を備える臭気分析システム。
【請求項2】
前記臭気分析装置は、
前記臭気検知装置で検知した前記臭気に基づいて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成処理と、
該学習済みモデル生成処理で生成した前記学習済みモデルに基づいて前記臭気の特徴を自律的に分析して臭気分析データを生成する臭気分析処理と、
を実行する請求項1に記載の臭気分析システム。
【請求項3】
前記臭気分析装置は、
生成した前記臭気分析データを複数の前記空間ごとにログとして記録するログ記録処理を実行する、
請求項1または2に記載の臭気分析システム。
【請求項4】
前記臭気分析装置で分析して生成した前記臭気分析データにおける前記臭気の濃度に応じて香料あるいは消臭剤の少なくとも一を噴霧する噴霧装置を備える、
請求項1または2に記載の臭気分析システム。
【請求項5】
前記臭気検知装置と前記噴霧装置とが電気的に接続されている、請求項4に記載の臭気分析システム。
【請求項6】
前記空間は、
任意の施設内で区画された空間である、請求項1または2に記載の臭気分析システム。
【請求項7】
前記臭気は、
互いに異なる複数の臭気成分からなる複合臭である、請求項1または2に記載の臭気分析システム。
【請求項8】
臭気を発生する複数の空間にそれぞれ配備されて複数の前記空間で発生する前記臭気をそれぞれ検知する臭気検知装置で検知した前記臭気に基づいて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成処理と、
該学習済みモデル生成処理で生成した前記学習済みモデルに基づいて前記臭気の特徴を分析して臭気分析データを生成する臭気分析処理と、
を実行する臭気分析装置。
【請求項9】
コンピュータによって実装される臭気分析装置に、
臭気を発生する複数の空間にそれぞれ配備されて複数の前記空間で発生する前記臭気をそれぞれ検知する臭気検知装置で検知した前記臭気に基づいて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成処理と、
該学習済みモデル生成処理で生成した前記学習済みモデルに基づいて前記臭気の特徴を分析して臭気分析データを生成する臭気分析処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項10】
コンピュータによって実装される臭気分析装置を用いて、
臭気を発生する複数の空間にそれぞれ配備されて複数の前記空間で発生する前記臭気をそれぞれ検知する臭気検知装置で検知した前記臭気に基づいて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成処理と、
該学習済みモデル生成処理で生成した前記学習済みモデルに基づいて前記臭気の特徴を分析して臭気分析データを生成する臭気分析処理と、
を実行する臭気分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気分析システム、臭気分析装置、プログラム及び臭気分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医療施設、高齢者の介護施設あるいは要介護者が居住する住宅等といった任意の施設の室内からは、これらの施設に入居(居住)する者の排泄物や排出物、さらにはこれらの者の体質や特定の病状に起因した臭気が発生する場合がある。
【0003】
このような臭気への対策として、特許文献1には、不快な臭気が生じる可能性がある臭気発生環境において、特定の臭気物質を、その特定の臭気物質の臭気質が変化する変質濃度以下の濃度で放散することで、臭気発生環境に存在する者を特定の臭気物質に順応させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-15033公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、特定の臭気物質の臭気質を変化させる濃度で特定の臭気物質を放散することによって、特定の臭気への対策を講じることはできる一方、上記のような施設で発生する臭気は、臭気の特徴に応じて施設ごとあるいは施設内の各室で異なる場合があることから、臭気の特徴が異なる場合は、適切な臭気対策を講じることができないことが懸念される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、臭気の特徴に応じた臭気対策を講じることができる臭気分析システム、臭気分析装置、プログラム及び臭気分析方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る臭気分析システムは、臭気を発生する複数の空間にそれぞれ配備されて複数の空間で発生する臭気をそれぞれ検知する臭気検知装置と、臭気検知装置に対して遠隔に配備されて臭気検知装置で検知した複数の空間の臭気の特徴を複数の空間の臭気ごとに分析する臭気分析装置と、を備えるものである。
【0008】
これによれば、複数の空間で発生するそれぞれの臭気の特徴を複数の空間の臭気ごとに遠隔で分析することから、臭気を分析した結果に基づいて、複数の空間で発生するそれぞれの臭気への対策を個別の状況に応じて講じることができる。
【0009】
この臭気分析システムの臭気分析装置は、臭気検知装置で検知した臭気に基づいて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成処理と、学習済みモデル生成処理で生成した学習済みモデルに基づいて臭気の特徴を自律的に分析して臭気分析データを生成する臭気分析処理と、を実行するものである。
【0010】
臭気分析システムの臭気分析装置は、生成した臭気分析データを複数の空間ごとにログとして記録するログ記録処理を実行するものである。
【0011】
さらに、臭気分析システムは、臭気分析装置で分析して生成した臭気分析データにおける臭気の濃度に応じて香料あるいは消臭剤の少なくとも一を噴霧する噴霧装置を備えるものである。
【0012】
臭気分析システムでは、臭気検知装置と噴霧装置とが電気的に接続されていてもよい。
【0013】
この臭気分析システムが用いられる空間は、任意の施設内で区画された空間であってもよいし、臭気分析システムで分析する臭気は、互いに異なる複数の臭気成分からなる複合臭であってもよい。
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る臭気分析装置は、臭気を発生する複数の空間にそれぞれ配備されて複数の空間で発生する臭気をそれぞれ検知する臭気検知装置で検知した臭気に基づいて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成処理と、学習済みモデル生成処理で生成した学習済みモデルに基づいて臭気の特徴を分析して臭気分析データを生成する臭気分析処理と、を実行するものである。
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係るプログラムは、コンピュータによって実装される臭気分析装置に、臭気を発生する複数の空間にそれぞれ配備されて複数の空間で発生する臭気をそれぞれ検知する臭気検知装置で検知した臭気に基づいて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成処理と、学習済みモデル生成処理で生成した学習済みモデルに基づいて臭気の特徴を分析して臭気分析データを生成する臭気分析処理と、を実行させるものである。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る臭気分析方法は、コンピュータによって実装される臭気分析装置を用いて、臭気を発生する複数の空間にそれぞれ配備されて複数の空間で発生する臭気をそれぞれ検知する臭気検知装置で検知した臭気に基づいて学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成処理と、学習済みモデル生成処理で生成した学習済みモデルに基づいて臭気の特徴を分析して臭気分析データを生成する臭気分析処理と、を実行するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、複数の空間で発生する臭気への対策を、臭気が発生する個別の空間の状況に応じて講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る臭気分析システムの構成の概略を説明するブロック図である。
図2】同じく、本実施の形態に係る臭気分析システムの臭気分析装置の構成の概略を説明するブロック図である。
図3】同じく、本実施の形態に係る臭気分析システムの臭気分析装置の機能の概略を説明するブロック図である。
図4】同じく、本実施の形態に係る臭気分析システムで処理される臭気データの概略を説明する図である。
図5】同じく、本実施の形態に係る臭気分析システムで処理される臭気分析データの概略を説明する図である。
図6】同じく、本実施の形態に係る臭気分析システムの学習済みモデル生成部及び臭気分析部の処理の概略を説明するブロック図である。
図7】同じく、本実施の形態に係る臭気分析システムのログ記録部の処理の概略を説明する図である。
図8】同じく、本実施の形態に係る臭気分析システムの臭気検知センサ及びディフューザの構成の概略を説明するブロック図である。
図9】同じく、本実施の形態に係る臭気分析システムの処理の概略を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図1図9に基づいて、本発明の実施の形態に係る臭気分析システムについて説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る臭気分析システムの構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、臭気分析システム10は、臭気分析装置20、臭気検知装置である臭気検知センサ40、及び噴霧装置であるディフューザ50を主要構成として備え、臭気分析装置20と臭気検知センサ40とがインターネット網等のネットワーク100を介して接続され、臭気検知センサ40とディフューザ50とが電気的に接続される。
【0021】
本実施の形態では、臭気分析装置20は、臭気分析システム10を用いたサービスを提供する事業者1に管理される。
【0022】
一方、臭気検知センサ40及びディフューザ50は、任意の施設である介護施設2に入居する複数の要介護者3a~3nのそれぞれの居室2a~2nに配備されることによって、臭気分析装置20に対して遠隔に配備される。
【0023】
この臭気検知センサ40及びディフューザ50が配備される介護施設2の居室2a~2nが、本実施の形態では、任意の施設内で区画された複数の空間に相当する。
【0024】
次に、臭気分析システム10の各部の具体的な構成について説明する。
【0025】
臭気分析装置20は、本実施の形態では、コンピュータ、例えばデスクトップ型あるいはノート型のコンピュータによって実装される。
【0026】
図2は、臭気分析装置20の構成の概略を説明するブロック図である。
【0027】
図示のように、臭気分析装置20は、プロセッサ21、メモリ22、ストレージ23、送受信部24及び入出力部25を主要構成として備え、これらが互いにバス26を介して電気的に接続される。
【0028】
プロセッサ21は、臭気分析装置20の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御や、アプリケーションプログラムの実行に必要な処理等を行う演算装置である。
【0029】
このプロセッサ21は、本実施の形態では例えばCPU(Central Processing Unit)であり、次述するメモリ22に展開されたアプリケーションプログラムを実行して各処理を行う。
【0030】
メモリ22は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶装置によって実装される。
【0031】
このメモリ22は、プロセッサ21の作業領域として使用される一方、臭気分析装置20の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種の設定情報等が格納される。
【0032】
ストレージ23には、アプリケーションプログラム等による各種の処理に用いられるデータ等が格納されている。
【0033】
送受信部24は、臭気分析装置20をネットワーク100に接続するものであって、本実施の形態では、送受信部24を介したネットワーク100を経由して、臭気検知センサ40と相互に通信可能に接続される。
【0034】
この送受信部24は、Wi-Fi等の無線通信規格に対応するものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やBLE(Bluetooth Low Energy)といった近距離通信インターフェースを具備するものであってもよい。
【0035】
入出力部25には、必要に応じて、キーボードやマウスといった情報入力機器やディスプレイ等の出力機器が接続される。本実施の形態では、キーボード、マウス及びディスプレイがそれぞれ接続される。
【0036】
バス26は、接続したプロセッサ21、メモリ22、ストレージ23、送受信部24及び入出力部25の間において、例えばアドレス信号、データ信号及び各種の制御信号を伝達する。
【0037】
図3は、臭気分析装置20の機能の概略を説明するブロック図である。図示のように、臭気分析装置20は、記憶部30、学習済みモデル生成部31、臭気分析部32及びログ記録部33を備える。
【0038】
記憶部30は、ストレージ23の記憶領域が区画されることによって実現される。この記憶部30には、本実施の形態では、臭気データD1、ラベリングデータD2及び臭気分析データD3が格納される。
【0039】
臭気データD1は、本実施の形態では、介護施設2の居室2a~2nに配置された後述する臭気検知センサ40が検知した、居室2a~2nの臭気の臭気成分の濃度の変化に関するデータである。
【0040】
この臭気データD1は、本実施の形態では、例えば介護施設2の居室2a~2nに入居する要介護者3a~3nの排泄物、排出物あるいは体質等に起因する臭気に関するデータであることが想定される。
【0041】
図4は、臭気データD1の概略を説明する図である。図示のように、臭気データD1は、例えば、後述する臭気検知センサ40の特性に基づいた共振周波数で把握されるものであって、本実施の形態では、互いに異なる複数の臭気成分からなる複合臭に関するデータである。
【0042】
なお、臭気データD1は、共振周波数で把握されるものに限られるものではなく、臭気検知センサ40の特性に基づいた数値等の種々のデータであってもよい。
【0043】
図3で示すラベリングデータD2は、複数の居室2a~2nで発生した臭気について、それぞれの居室2a~2nに配置された臭気検知センサ40を介して入力された臭気の評価(ラベリング)に関するデータである。
【0044】
本実施の形態では、臭気検知センサ40で検知した臭気について、例えば「無臭」「糞臭」、「尿臭」、「汗臭」あるいは「その他の臭」との評価が臭気検知センサ40を介してラベリングデータD2として入力される。
【0045】
図3で示す臭気分析データD3は、本実施の形態では、介護施設2の複数の居室2a~2nの臭気の特徴をそれぞれの居室2a~2nごとにそれぞれ分析したデータである。
【0046】
図5は、臭気分析データD3の概略を説明する図である。図示のように、臭気分析データD3は、本実施の形態では、予め取得されて評価がなされた臭気の特徴を二次元にマッピングした第1マッピングデータd3aと、臭気検知センサ40が取得した臭気の特徴を二次元にマッピングした第2マッピングデータd3bとを照合して、第1マッピングデータd3aと第2マッピングデータd3bとが一致する割合を分析したものである。
【0047】
第1マッピングデータd3aと第2マッピングデータd3bとが一致する割合の高低に応じて、臭気の特徴を、例えば「糞臭」、「尿臭」あるいは「汗臭」等と判別することができる。
【0048】
図3で示す学習済みモデル生成部31、臭気分析部32及びログ記録部33は、メモリ22に記憶されたプログラムをプロセッサ21で実行することによって実現される。
【0049】
学習済みモデル生成部31は、本実施の形態では、臭気検知センサ40で検知した居室2a~2nの臭気に関する臭気データD1及びラベリングデータD2に基づいて学習済みモデルを生成する処理(学習済みモデル生成処理)を実行する。
【0050】
臭気分析部32は、本実施の形態では、臭気検知センサ40で検知した居室2a~2nの臭気の特徴を分析して臭気分析データD3を生成する処理(臭気分析処理)を実行する。
【0051】
図6は、学習済みモデル生成処理及び臭気分析処理の概略を説明するブロック図である。図示のように、学習済みモデル生成処理は、臭気データD1とラベリングデータD2とを関連づけることによって、学習データD4を生成する。
【0052】
この学習データD4は、本実施の形態では、介護施設2の居室2a~2nごとに生成され、学習済みモデル生成処理は、居室2a~2nごとに生成された学習データD4で機械学習を行うことによって、学習済みモデルD5を生成する。
【0053】
機械学習を行う手法としては、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)等、各種のアルゴリズムが適宜用いられる。
【0054】
一方、臭気分析処理は、本実施の形態では、学習済みモデル生成処理で生成した学習済みモデルD5に基づいて、臭気検知センサ40で検知した居室2a~2nの臭気の特徴を自律的に分析して、臭気分析データD3を生成する。臭気分析データD3は、介護施設2の居室2a~2nごとに生成される。
【0055】
図3で示すログ記録部33は、本実施の形態では、介護施設2の複数の居室2a~2nの臭気の特徴を分析して生成された臭気分析データD3を、複数の居室2a~2nごとにログとして記録する処理(ログ記録処理)を実行する。
【0056】
例えば、図7で示すように、臭気の特徴を「糞臭」と判別可能な、居室2aの臭気に関する臭気分析データD3を居室2aの臭気として記録し、臭気の特徴を「尿臭」と判別可能な、居室2bの臭気に関する臭気分析データD3を居室2bの臭気として記録し、臭気の特徴を「汗臭」と判別可能な、居室2nの臭気に関する臭気分析データD3を居室2nの臭気として記録する。
【0057】
図1で示す臭気検知センサ40は、本実施の形態では、配備された居室2a~2nで個別に発生する臭気の濃度の変化を臭気データD1としてそれぞれ検知する装置である。
【0058】
図8は、臭気検知センサ40及びディフューザ50の構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、臭気検知センサ40は、制御部41、センサ部42、入力部43及び送信部44を主要構成として備える。
【0059】
制御部41は、本実施の形態では、センサ部42、入力部43及び送信部44等の臭気検知センサ40の各部を制御するものである。
【0060】
センサ部42は、例えば、半導体の表面に臭気成分が付着した際の反応により変動する半導体の抵抗値に基づいて臭気の濃度を検出する半導体方式や、水晶振動子の反応膜に臭気成分が付着することに伴う共振周波数の低下に基づいて臭気の濃度を検出する水晶振動子方式等、種々の方式のものが採用される。
【0061】
入力部43は、本実施の形態では、介護施設2の居室2a~2nの臭気について、「無臭」「糞臭」、「尿臭」、「汗臭」あるいは「その他の臭」との評価が入力される入力ボタン、及びこの入力ボタンの入力に基づいてラベリングデータD2を生成するデータ生成部によって構成される。
【0062】
送信部44は、本実施の形態では、センサ部32で検知した臭気データD1、及び入力部33で生成したラベリングデータD2を臭気分析装置20に送信する通信インターフェースである。
【0063】
図1で示すディフューザ50は、本実施の形態では、配備された介護施設2の居室2a~2nにおいて、生成した臭気分析データD3における臭気の濃度に応じて香料あるいは消臭剤の少なくとも一を噴霧する装置である。
【0064】
図8で示すように、ディフューザ50は、本実施の形態では、制御部51、貯蔵部52及び貯蔵部52と物理的に連結される噴霧部53を主要構成として備える。
【0065】
制御部51は、本実施の形態では、噴霧部52等のディフューザ50の各部を制御するものである。
【0066】
貯蔵部52は、複数の、本実施の形態では3体の貯蔵室52a~52cによって構成され、各貯蔵室52a~52cには、貯蔵室52a~52cごとに例えば「便臭」、「尿臭」あるいは「加齢臭」といった複数の臭気の特徴に応じてそれぞれの臭気を中和する、対応する臭気の特徴が互いに異なる香料あるいは消臭剤が貯蔵される。
【0067】
本実施の形態では、例えば貯蔵室52aには「便臭」を中和する香料あるいは消臭剤が貯蔵され、貯蔵室52bには「尿臭」を中和する香料あるいは消臭剤が貯蔵され、かつ貯蔵室52cには「加齢臭」を中和する香料あるいは消臭剤が貯蔵される。
【0068】
噴霧部53は、本実施の形態では、臭気検知センサ40のセンサ部42が居室2a~2nの臭気を検知すると、臭気分析処理で生成された臭気分析データD3に基づいて、居室2a~2のそれぞれの臭気の特徴に応じた香料あるいは消臭剤を介護施設2の居室2a~2nに噴霧する。
【0069】
これら臭気検知センサ40及びディフューザ50は、本実施の形態では、臭気検知センサ40の制御部41及びディフューザ50の制御部51を介して電気的に接続される。
【0070】
次に、臭気分析システム10の処理について説明する。
【0071】
図9は、臭気分析システム10の処理の概略を説明するフローチャートである。図示のように、ステップS1において、介護施設2の居室2a~2nにおいて臭気が発生すると、居室2a~2nに配置された臭気検知センサ40が居室2a~2nのそれぞれの臭気を臭気データD1として検知する。
【0072】
一方、居室2a~2nにおいて臭気が発生した際に、介護施設2の業務に従事する介護者は、臭気検知センサ40の入力部43を介して、担当する居室2a~2nの臭気についての評価を入力する。これにより、ラベリングデータD2が生成される。
【0073】
本実施の形態では、例えば居室2aの臭気について「糞臭」であると評価して入力部43に入力し、居室2bの臭気について「尿臭」であると評価して入力部43に入力し、かつ居室2nの臭気について「汗臭」であると評価して入力部43に入力する。
【0074】
続くステップS2において、臭気検知センサ40が検知した居室2a~2nのそれぞれの臭気に関する臭気データD1と、居室2a~2nのそれぞれの臭気検知センサ40で生成されたラベリングデータD2とを関連づけて、学習データD4を生成する。
【0075】
さらに、ステップS3において、居室2a~2nごとに生成した学習データD4で機械学習を行うことによって、居室2a~2nごとに学習済みモデルD5を生成する(学習済みモデル生成処理)。これによって、学習段階が終了する。
【0076】
これらステップS1~ステップS3の学習段階で生成された学習済みモデルD5が実装された臭気分析システム10を用いることによって、介護施設2の居室2a~2nで発生する臭気対策を実際に講じることができる。すなわち、以後、学習済みモデルD5の利用段階が開始される。
【0077】
ステップS4において、介護施設2の居室2a~2nにおいて臭気が発生すると、居室2a~2nに配置された臭気検知センサ40が居室2a~2nのそれぞれの臭気を検知する。
【0078】
続くステップS5において、学習済みモデルD5に基づいて、ステップS4において臭気検知センサ40で検知した居室2a~2nの臭気の特徴を自律的に分析し、ステップS6において、居室2a~2nごとに臭気分析データD3を生成する(臭気分析処理)。
【0079】
生成した学習済みモデルD5に基づいて、臭気検知センサ40で検知した臭気の分析を行い、臭気分析データD3を生成することによって、学習済みモデル生成部31で生成された学習済みモデルD5の精度が向上することが想定され、学習済みモデルD5の精度の検証を行うことも可能であると想定される。
【0080】
臭気分析データD3を生成すると、本実施の形態では、生成した臭気分析データD3を複数の居室2a~2nごとにログとして記録する。
【0081】
臭気分析データD3を複数の居室2a~2nごとにログとして記録することによって、居室2a~2nの固有の臭気の特徴を把握することができることから、更に利便性が向上する。
【0082】
このように、それぞれの居室2a~2nで発生する臭気の特徴をそれぞれの居室2a~2nの臭気ごとに遠隔で分析することから、臭気を分析した結果に基づいて、それぞれの居室2a~2nで発生するそれぞれの臭気について個別の対策を講じることができる。
【0083】
すなわち、例えば要介護者3a~3nの排泄物に起因する糞臭や、糞臭とは臭気成分が異なる、例えば要介護者3a~3nの発汗に起因する汗臭等、臭気成分の濃度に応じた臭気の中和あるいは消臭といった個別の対策を講じることができる。
【0084】
特に、本実施の形態では、学習済みモデルD5に基づいた臭気の分析の結果を臭気分析データD3として生成することから、臭気検知センサ40で検知した居室2a~2nの臭気の特徴を自律的に分析したそれぞれの臭気分析データD3に基づいて、それぞれの居室2a~2nで発生するそれぞれの臭気への対策を講じることができる。
【0085】
一方、要介護者3a~3nのし尿や排便の回数や時間等をデータとして記録し、このデータと学習済みモデルD5とに基づいて要介護者3a~3nの体調管理を実現することもできる。
【0086】
さらに、例えばがんや糖尿病等といった要介護者3a~3nの特定の病状に起因する臭気を、要介護者3a~3nの呼気を介して検知して学習済みモデルD5を生成し、この臭気の特徴に応じた臭気分析データD3を生成することができれば、これらの疾患の早期検知が実現される。
【0087】
ところで、本実施の形態では、居室2a~2nで臭気が発生して臭気検知センサ40が臭気を検知して臭気分析データD3が生成されると、ステップS7において、ディフューザ50が、臭気分析データD3における臭気の居室2a~2nごとの濃度に応じて香料あるいは消臭剤を噴霧する。
【0088】
したがって、それぞれの居室2a~2nで発生する臭気が香料あるいは消臭剤によってそれぞれ中和されることから、清浄な空間がもたらされる。
【0089】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0090】
上記実施の形態では、学習済みモデルD5が、臭気検知センサ40が検知した居室2a~2nのそれぞれの臭気に関する臭気データD1に基づいて生成される場合を説明したが、例えば、研究機関で合成された人工的な臭気成分に基づいて学習済みモデルD5が生成されてもよい。
【0091】
上記実施の形態では、学習済みモデルD5に基づいて臭気分析データD3を生成する場合を説明したが、例えば、臭気データD1と照合可能な基準データが格納されたデータベースを構成して、臭気データD1を検知すると基準データを参照して臭気分析データD3を生成するように構成してもよい。
【0092】
上記実施の形態では、臭気分析システム10が介護施設2で運用される場合を説明したが、例えば医療機関、汚水処理設備、工場設備、倉庫あるいは店舗等といった、複数の空間を有して臭気が発生する任意の設備等で運用されるものであってもよい。
【0093】
更に、臭気分析システム10は、在宅介護がなされる場合の住宅における要介護者の居室で発生する臭気への対策を講じることを目的として、複数の住宅を対象として運用されるものであってもよい。この場合、各住宅における要介護者の居室が、複数の空間に対応する。
【0094】
上記実施の形態では、臭気分析装置20と臭気検知センサ40とがネットワーク100を介して接続される場合を説明したが、例えば、臭気分析装置20と臭気検知センサ40との間に介護施設2に配備される任意のコンピュータ資源をネットワーク100上に介在させたうえで、臭気分析装置20と臭気検知センサ40とが接続されるように構成してもよい。
【0095】
上記実施の形態では、臭気分析装置20が事業者1に管理されるコンピュータで実装される場合を説明したが、臭気分析装置20はクラウド環境で実装されるコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 事業者
2 介護施設(施設)
2a~2n 居室(空間)
10 臭気分析システム
20 臭気分析装置
30 記憶部
31 学習済みモデル生成部
32 臭気分析部
33 ログ記録部
40 臭気検知センサ(臭気検知装置)
50 ディフューザ(噴霧装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9