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特開2023-173531可塑化装置、射出成型装置、三次元造形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173531
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】可塑化装置、射出成型装置、三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/46 20060101AFI20231130BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20231130BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231130BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20231130BHJP
【FI】
B29C45/46
B29C45/76
B33Y30/00
B29C64/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085848
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】丹生山 政人
【テーマコード(参考)】
4F206
4F213
【Fターム(参考)】
4F206AP05
4F206AR06
4F206JA07
4F206JD04
4F206JM01
4F206JP14
4F206JQ16
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL74
(57)【要約】
【課題】小型で可塑化能力が高い可塑化装置を提供すること。
【解決手段】可塑化装置は、溝が形成された第1溝形成面を有し、回転する第1フラットスクリューと、溝が形成された第2溝形成面を有し、回転する第2フラットスクリューと、前記第1溝形成面に対向する第1対向面、及び、前記第2溝形成面に対向する第2対向面を有し、可塑化した材料が外部へ送出される連通孔が形成されたバレルと、前記第1フラットスクリュー及び前記第2フラットスクリューの前記溝に供給された前記材料を加熱する加熱部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝が形成された第1溝形成面を有し、回転する第1フラットスクリューと、
溝が形成された第2溝形成面を有し、回転する第2フラットスクリューと、
前記第1溝形成面に対向する第1対向面、及び、前記第2溝形成面に対向する第2対向面を有し、可塑化した材料が外部へ送出される連通孔が形成されたバレルと、
前記第1フラットスクリュー及び前記第2フラットスクリューの前記溝に供給された前記材料を加熱する加熱部と、を備える、
可塑化装置。
【請求項2】
前記第1溝形成面と前記第2溝形成面とは、互いに対向して位置している、
請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項3】
制御部と、
前記第1フラットスクリューを回転させる第1駆動部と、
前記第2フラットスクリューを回転させる第2駆動部と、を有し、
前記制御部は、前記第1駆動部、及び、前記第2駆動部を各々個別に制御する、
請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項4】
制御部を備え、
前記加熱部は、
前記第1フラットスクリュー用の第1加熱部と、
前記第2フラットスクリュー用の第2加熱部と、を含み、
前記制御部は、前記第1加熱部、及び、前記第2加熱部を各々個別に制御する、
請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項5】
前記連通孔に連通する分岐路を有し、
前記分岐路へ可塑化した材料を吸引、又は、吸引した材料を前記連通孔側に送出する吸引送出部を有する、
請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項6】
前記分岐路は、前記第1溝形成面、前記第2溝形成面のうち、少なくともいずれかの溝形成面に沿って延在する、
請求項5に記載の可塑化装置。
【請求項7】
前記連通孔は、前記第1溝形成面、前記第2溝形成面のうち、少なくともいずれかの溝形成面に沿って延在する、
請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の可塑化装置と、
前記可塑化装置で可塑化した材料を射出するノズル部と、
前記材料を受ける成形型を固定する固定部と、を備える、
射出成型装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の可塑化装置と、
前記可塑化装置で可塑化した材料を吐出するノズル部と、
前記材料が積層される造形面を有するステージと、を備える、
三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑化装置、および当該可塑化装置を備えた射出成型装置、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成型機を小型化するために、在来のスクリューをローターに置き換えた射出成型機が提案されている。例えば、特許文献1には、複数のスクロール状の溝を有するフラットスクリューと、スクリュー対面部とを含んで構成される可塑化部を備えた三次元造形装置が提案されている。スクリュー対向面は、例えば、フラットスクリューと対向するバレルの一面に形成される。当該文献によれば、当該フラットスクリューの回転により材料を可塑化するとしている。また、スクリュー回転数が24rpm以下の範囲では、スクリュー回転数の増加に応じて射出量がほぼ直線的に増加する。一方、スクリュー回転数が24rpmを超えると、スクリュー回転数を増加させても射出量はほとんど増加しない、という記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-187777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の可塑化部には、改善の余地があった。詳しくは、特許文献1のようなフラットスクリューを備えた可塑化装置において単位時間あたりの可塑化量を増やそうとした場合、フラットスクリューの回転数を増加する方法が考えられるが、上記文献に記載の通り、ある一定の回転数を超えると可塑化量が殆ど増加せず一定となってしまう。換言すれば、可塑化能力が飽和してしまうという課題があった。また、フラットスクリューの径を大きくする方法も考えられるが、モーターも大型化する必要があるなど、装置全体が大型化してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0006】
(適用例)
本願に係る一態様の可塑化装置は、溝が形成された第1溝形成面を有し、回転する第1フラットスクリューと、溝が形成された第2溝形成面を有し、回転する第2フラットスクリューと、前記第1溝形成面に対向する第1対向面、及び、前記第2溝形成面に対向する第2対向面を有し、可塑化した材料が外部へ送出される連通孔が形成されたバレルと、前記第1フラットスクリュー及び前記第2フラットスクリューの前記溝に供給された前記材料を加熱する加熱部と、を備える。
【0007】
本願に係る一態様の射出成型装置は、上記の可塑化装置と、前記可塑化装置で可塑化した材料を射出するノズル部と、前記材料を受ける成形型を固定する固定部とを備える。
【0008】
本願に係る一態様の三次元造形装置は、上記の可塑化装置と、前記可塑化装置で可塑化した材料を吐出するノズル部と、前記材料が積層される造形面を有するステージとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る射出成型装置の概略構成を示す断面図。
図2】可塑化部周辺の拡大断面図。
図3】ローターの一態様における斜視図。
図4】バレルの平面図。
図5】ノズル部周辺の拡大断面図。
図6】実施形態2に係る可塑化部の平断面図。
図7】実施形態3に係る可塑化部の平断面図。
図8】実施形態4に係る三次元造形装置の概略構成図。
図9】比較例の射出成型装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態1
***射出成型装置の概要***
図1は、射出成型装置の概略構成を示す断面図である。図9は、比較例の射出成型装置の概略構成図である。図2は、可塑化部周辺の拡大断面図である。
まず、図9を用いて、特許文献1の可塑化部を備えた比較例の射出成型装置99の構成について説明する。
【0011】
図9に示すように、従来の射出成型装置99は、可塑化装置89と、型締装置50などから構成さていた。可塑化装置89は、複数のスクロール状の溝22を有するフラットスクリュー21と、フラットスクリュー21と対向するバレル39とからなる可塑化部29を備えている。フラットスクリュー21の側面に設けられた供給口23に、不図示のホッパーを含む材料供給部8から材料が供給されると、フラットスクリュー21の回転とバレル39内のヒーター38による加熱により、材料が可塑化されて、バレル39中央の貫通孔25を通ってノズル部70から型締装置50に固定された成形型40内に射出される。
【0012】
貫通孔25には、分岐路32が設けられている。分岐路32の内部には、分岐路32の内部を往復運動する棒状のプランジャー34が設けられており、ノズル部70に圧送される材料の量を調整する。
このように、従来の可塑化装置89では、フラットスクリュー21とバレル39とからなる1つの可塑化部29を有する構成であった。
【0013】
これに対して、図1に示す、本実施形態における射出成型装置100の可塑化装置80では、2つの可塑化部20a,20bを備えている。これにより、従来の可塑化装置89よりも材料の可塑化能力を高めるとともに、コンパクトな構成を実現している。
以下、本実施形態の射出成型装置100の構成を詳しく説明する。なお、各図には、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を図示している。ノズル部70の延在方向をZ軸の延在方向としている。Z軸に沿ってノズル部70の中心を通る線分を中心線61としている。中心線61と交差し、X軸に沿った線分を回転軸62としている。
【0014】
***可塑化装置の概要***
射出成型装置100は、可塑化装置80、型締装置50、制御装置190などから構成される。
可塑化装置80は、2つの可塑化部20a,20b、射出制御部30などから構成される。可塑化部20aは、フラットスクリュー21a、駆動モーター18a、バレル31などから構成される。
フラットスクリュー21aは、減速機を備えた駆動モーター18aにより、回転軸62を中心に回転駆動される。同様に、フラットスクリュー21bは、減速機を備えた駆動モーター18bにより、回転軸62を中心に回転駆動される。換言すれば、第1駆動部としての駆動モーター18aは、第1フラットスクリューとしてのフラットスクリュー21aを回転させ、第2駆動部としての駆動モーター18bは、第2フラットスクリューとしてのフラットスクリュー21bを回転させる。
【0015】
図2に示すように、フラットスクリュー21aは、複数のスクロール状の溝22が形成された溝形成面10aを備えている。溝形成面10aは、バレル31の対向面11aと対向する。バレル31は、2つのフラットスクリュー21a,21bに対応する1つの共通部材であり、2つの対向面11a,11bを備えている。対向面11bは、中心線61を対称軸として、対向面11aと対称に設けられている。フラットスクリュー21bは、複数のスクロール状の溝22が形成された溝形成面10bを備えており、溝形成面10bはバレル31の対向面11bと対向する。換言すれば、第1溝形成面としての溝形成面10aと、第2溝形成面としての溝形成面10bとは、互いに対向して位置している。また、バレル31において第1対向面としての対向面11aと、第2対向面としての対向面11bとは、反対側を向いて設けられている。
【0016】
図3は、ローターの概略構成を示す斜視図である。
図3に示すように、フラットスクリュー21aは、回転軸62に沿った方向における高さが、回転軸62と交差する方向における長さ(直径)よりも小さい略円柱状をなしている。フラットスクリュー21aは、表面に螺旋状の溝を備えた円板状の部材であり、ローター、または、スクロールともいう。溝形成面10aには、回転軸62が通る平坦な中央部15を中心に渦状の溝22が3条設けられている。好適例では、溝22は、いわゆるスクロール溝であり、中央部15から外周面に向かって渦状に旋回し、フラットスクリュー21aの側面に形成された供給口23に連通している。3本の溝22は、3本の凸条部13を側壁として区画されている。
平面的には、3本の溝22における3つの供給口23は、フラットスクリュー21aの側面において、回転軸62を中心として約120度刻みの位置に設けられている。なお、溝22の数は3つに限らず、1つまたは2つ以上の任意の数の溝22と凸条部13がそれぞれ設けられていても良い。なお、フラットスクリュー21bも同様である。
【0017】
図4は、バレルの概略構成を示す平面図であり、Xプラス方向から対向面11aを正対した平面図である。
図4に示すように、バレル31は略円形をなしており、その中央に、フラットスクリュー21aの溝形成面10aと向い合う対向面11aを有している。
対向面11aの中心には、貫通孔35aが設けられている。貫通孔35aの中心は、回転軸62と略一致している。対向面11aには、貫通孔35aから外周に向かって渦状に延びる複数の案内溝46が設けられている。図4では、6本の案内溝46が設けられているが、これに限定するものではなく、複数本の案内溝46が設けられていれば良い。なお、案内溝46の一端は貫通孔35aに直接的に接続されていなくてもよい。また、バレル31には案内溝46が形成されていなくてもよい。なお、対向面11b(図2)も同様である。
【0018】
換言すれば、バレル31は、第1溝形成面としての溝形成面10aに対向する第1対向面としての対向面11a、及び、第2溝形成面としての溝形成面10bに対向する第2対向面としての対向面11bを有する。また、バレル31には、可塑化した材料が外部へ送出される連通孔36(図2)が形成されている。
また、バレル31のZプラス側には、分岐路32(図2)と連結するための連結部44が設けられている。バレル31のZマイナス側には、ノズル部70(図2)と連結するための連結部45が設けられている。
【0019】
図2に戻る。
バレル31の貫通孔35a,35bは、回転軸62に沿って設けられており、その出口は、共に連通孔36に連通している。連通孔36は、中心線61に沿ってノズル部70に連通する流路である。図2に示すように、連通孔36は、溝形成面10aと溝形成面10bとの間に位置している。連通孔36のZプラス方向には、分岐路32が設けられている。分岐路32は、中心線61に沿って延在する円筒状のシリンダーであり、連通孔36と連通している。分岐路32の内部には、プランジャー34が配置されている。つまり、貫通孔35a,35bから、連通孔36と分岐路32とに分岐している。
このように、連通孔36と分岐路32とを直線状に配置し、両者を挟み込むようにフラットスクリュー21a,21bを設けたことにより、2つの可塑部20a,20bを備えながらも、コンパクトな構成を実現している。
なお、図2に示すように、分岐路32および連通孔36は、好適例において溝形成面10a、溝形成面10bに沿って延在しているが、この構成に限定するものではなく、少なくともいずれかの溝形成面に沿って延在していれば良い。
【0020】
射出制御部30は、減速機を備えた駆動モーター17(図1)や、ボールねじ(図示せず)などを含んで構成されており、分岐路32内でプランジャー34を往復駆動させることにより、連通孔36への材料供給量を制御する。詳しくは、プランジャー34をZプラス方向に移動することにより、材料を分岐路32内に引き込んで計量し、Zマイナス方向に移動することにより、材料を連通孔36へ圧送する。換言すれば、吸引送出部としての射出制御部30は、連通孔36に連通する分岐路32を有し、分岐路32へ可塑化した材料を吸引、又は、吸引した材料を連通孔36側に送出する。
【0021】
バレル31の貫通孔35aの分岐路32側には、逆止弁37aが設けられている。同様に、貫通孔35bの分岐路32側には、逆止弁37bが設けられている。逆止弁37a,37bは、連通孔36においてノズル部70側への材料の流動を許容するとともに、貫通孔35a,35b側への材料の逆流を抑制する。
バレル31の内部には、第1加熱部としてのヒーター38aと、第2加熱部としてのヒーター38bとが設けられている。ヒーター38aは、可塑化部20a用のヒーターであり、連通孔36とフラットスクリュー21aとの間に設けられている。同様に、ヒーター38bは、可塑化部20b用のヒーターであり、連通孔36とフラットスクリュー21bとの間に設けられている。換言すれば、加熱部は、フラットスクリュー21a用のヒーター38aと、フラットスクリュー21b用のヒーター38bとを含み、フラットスクリュー21a及びフラットスクリュー21bの溝22に供給された材料を加熱する。なお、ヒーター38a,38bは、バレル31の内部に設けられていなくてもよく、例えば、フラットスクリュー21a,21bの内部に設けられていてもよい。また、フラットスクリュー21a,21bの各々に対応してヒーター38a,38bが設けられていなくてもよく、フラットスクリュー21a,21bに共通したヒーター38を備えていてもよい。
【0022】
図5は、ノズル部の拡大断面図である。
図5に示すように、ノズル部70は、バレル31の直下に配置されており、その中央の流路77は、バレル31の連通孔36と連通している。
ノズル部70は、成形型40における上型41の取り付け孔12に挿入されている。成形型40は、固定型である上型41と、可動型である下型42とで構成される。
【0023】
上型41の取り付け孔12は、開口部からZマイナス方向に深くなるに連れて、内径が段階的に縮小して形成されている。取り付け孔12における最深部の端部12aは、内径が次第に縮小する略円錐状に形成される。端部12aの先端は、成形材料が射出されるゲート開口67として機能する。ゲート開口67は、略円形の穴として構成される。
ノズル部70において取り付け孔12に挿入される部分をホットランナー75という。
図5に示すように、ホットランナー75は、本体部76、射出部60、ヒーター78a,78bなどから構成される。なお、取り付け孔12におけるホットランナー75の周囲には可塑化された材料が充填される。
【0024】
本体部76は、略円筒状をなしており、ゲート開口67側の端部の内周面には、図示しない雌ねじが形成されている。
射出部60は、接続部73、フランジ部74、先端部65などから構成される。
接続部73は、略円筒状をなしており、その外周面には、図示しない雄ねじが形成されている。当該雄ねじと、本体部76の雌ねじとが螺合され、接続部73が本体部76の内部に固定される。
フランジ部74は、接続部73の外径よりも大きな外径を有する鍔状の部位である。
先端部65は、フランジ部74からゲート開口67側に向かって突出する略円錐状の部位である。接続部73、フランジ部74、先端部65は、一体として構成されている。
【0025】
本体部76および射出部60の中心には、流路77が形成されている。流路77は、中心線61に沿って設けられており、成形材料をゲート開口67へと導く機能を有する。
流路77は、射出部60の先端部65において、2つに分岐したノズル開口65aと連通する。なお、ノズル開口65aは2つに限らず、3つでも良いし、それ以上の数設けても良い。このような構成により、ゲート開口67は、いわゆるリングゲートとも呼ばれるオープンゲート構造となる。
ヒーター78aは、本体部76に埋設されたコイルヒーターであり、ホットランナー75を加熱する。ヒーター78bは、射出部60の接続部73の外周を囲うコイルヒーターであり、射出部60を加熱する。ヒーター78a,78bの加熱により、流路77を流通する成形材料の溶融状態が維持される。
【0026】
図2に戻る。
このような構成の可塑化装置80において、フラットスクリュー21aの側面に設けられた供給口23aに、不図示のホッパーを含む材料供給部8から材料が供給されると、フラットスクリュー21aの回転とバレル31内のヒーター38aによる加熱により材料が可塑化されて、対向面11aの中央の貫通孔35aから連通孔36に材料が流入する。同様に、フラットスクリュー21bの側面に設けられた供給口23bに、材料供給部8から材料が供給されると、フラットスクリュー21bの回転とバレル31内のヒーター38bによる加熱により材料が可塑化されて、対向面11b中央の貫通孔35bから連通孔36に材料が流入する。なお、「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0027】
2つの可塑化部20a,20bから連通孔36に流入した材料の一部は、分岐路32内に引き込まれ、プランジャー34の往復駆動により供給量が制御されて、連通孔36に圧送される。そして、圧送された材料は、ノズル部70から、型締装置50(図1)により固定された成形型40内に射出される。
【0028】
図1に戻る。
型締装置50は、上型41と下型42との開閉を行なう。
型締装置50は、型締モーター51、減速機52、ボールねじ53などを備えている。型締めの際には、型締モーター51を駆動させて、下型42が搭載された台座部54を中心線61に沿ってZプラス方向に移動させる。型開きの際には、台座部54を中心線61に沿ってZマイナス方向に移動させる。下型42は、クランプ部64により台座部54に固定されている。同様に、上型41は、クランプ部63により可塑化装置80本体に固定されている。なお、台座部54、可塑化装置80本体は、下型42および上型41の固定部に相当する。換言すれば、固定部は、材料を受ける成形型40を固定する。そして、射出成型装置100は、可塑化装置80と、可塑化装置80で可塑化した材料を射出するノズル部70と、材料を受ける成形型40を固定する固定部とを備える。
また、台座部54には、押出しピン59が組み込まれている。押出しピン59は、型開きの際に成形品を押出すことにより、成形品を離型させる。
【0029】
制御装置190は、制御部であり、1以上のプロセッサーと、記憶部と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えたコンピューターによって構成される。記憶部には、型開き、型締め、射出成型および成形品の取り出しに係る順序と内容を規定した成型プログラムや、フラットスクリュー21a,21bの回転数を制御するプログラム、ヒーター38a,38bの温度を制御するプログラム、および、付随するデータなどが記憶されている。制御装置190は、これらのプログラムを実行することにより、可塑化装置80を含む射出成型装置100全体を統括制御する。
【0030】
以上、述べた通り、本実施形態の可塑化装置80、射出成型装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
可塑化装置80は、溝22が形成された第1溝形成面としての溝形成面10aを有し、回転する第1フラットスクリューとしてのフラットスクリュー21aと、溝22が形成された第2溝形成面としての溝形成面10bを有し、回転する第2フラットスクリューとしてのフラットスクリュー21bと、溝形成面10aに対向する第1対向面としての対向面11a、及び、溝形成面10bに対向する第2対向面としての対向面11bを有し、可塑化した材料が外部へ送出される連通孔36が形成されたバレル31と、フラットスクリュー21a及びフラットスクリュー21bの溝22に供給された材料を加熱する加熱部としてのヒーター38a,38bを備える。
【0031】
これによれば、可塑化装置80は、2つの可塑化部20a,20bを備えている。よって、1つの可塑化部29しか有していなかった従来の可塑化装置89(図9)に比べて、可塑化能力が高い。
さらに、バレル31の表裏面に対向面11a,11bを設けたことにより、1つのバレル31で2つの可塑化部20a,20bを構成することができる。また、可塑化部20aと可塑化部20bとを、中心線61を対称軸とした対称な構成としたことにより、対称構成でない場合や、1つの可塑化部を大径化した場合に比べて余分なはみ出し部分が生じず、コンパクトに構成することができる。よって、可塑化装置80をコンパクトに構成することができる。
従って、小型で可塑化能力が高い可塑化装置80を提供することができる。
【0032】
また、第1溝形成面としての溝形成面10aと、第2溝形成面としての溝形成面10bとは、互いに対向して位置している。
これによれば、可塑化部20aと可塑化部20bとを、中心線61を対称軸とした対称構成とすることが可能となり、可塑化装置80をコンパクトに構成することができる。
【0033】
また、可塑化装置80は、フラットスクリュー21aを回転させる第1駆動部としての駆動モーター18aと、フラットスクリュー21bを回転させる第2駆動部としての駆動モーター18bとを有する。制御部としての制御装置190は、駆動モーター18a、及び、駆動モーター18bを各々個別に制御する。
これによれば、2つの可塑化部20a,20bによる可塑化能力を、個別に、かつ、最適に制御することができる。
【0034】
また、加熱部は、フラットスクリュー21a用のヒーター38aと、フラットスクリュー21b用のヒーター38bとを含む。制御部としての制御装置190は、ヒーター38a、及び、ヒーター38bを各々個別に制御する。
これによれば、フラットスクリュー21a及びフラットスクリュー21bの溝22に供給された材料を、個別に、かつ、最適に加熱することが可能となるため、最適な状態の可塑化材料を生成することができる。
【0035】
また、可塑化装置80は、連通孔36に連通する分岐路32を有し、分岐路32へ可塑化した材料を吸引、又は、吸引した材料を連通孔36側に送出する吸引送出部としての射出制御部30を有する。
これによれば、連通孔36に供給される材料量を最適に調整することが可能となり、射出成型の効率を高めることができる。
【0036】
また、分岐路32は、溝形成面10a、溝形成面10bのうち、少なくともいずれかの溝形成面に沿って延在する。
これによれば、分岐路32を、いずれかの溝形成面に沿って設けることにより小型化することができる。
【0037】
また、連通孔36は、溝形成面10a、溝形成面10bのうち、少なくともいずれかの溝形成面に沿って延在する。
これによれば、連通孔36を、いずれかの溝形成面に沿って設けることにより小型化することができる。
【0038】
また、射出成型装置100は、可塑化装置80と、可塑化装置80で可塑化した材料を射出するノズル部70と、材料を受ける成形型40を固定する固定部とを備える。
これによれば、射出成型装置100は、小型で可塑化能力が高い可塑化装置80を備えるため、効率良く射出成型を行うことができる。
従って、小型で成形効率が良い射出成型装置100を提供することができる。
【0039】
実施形態2
***可塑化部の異なる態様-1***
図6は、実施形態2に係る可塑化部の平断面図であり、バレル90をZプラス方向から観察した際の回転軸62における平断面図である。
上記実施形態では、可塑化装置80は2つの可塑化部を備えるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、複数の可塑化部を備えることであれば良い。例えば、本実施形態の可塑化装置81は、4つの可塑化部を備えている。
以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
図6に示す、本実施形態の可塑化装置81は、バレル90の周囲に4つの可塑化部20a,20b,20c,20dを備えている。
バレル90は、連通孔36を中心とした正方形状をなしており、その4辺に沿って対向面11a,11b,11c,11dを備えている。対向面11aと対向面11bとは、対向する辺に設けられている。同様に、対向面11cと対向面11dとは、対向する辺に設けられている。
対向面11aの中央には貫通孔35aが設けられており、貫通孔35aは連通孔36に連通している。同様に、対向面11bの貫通孔35b、対向面11cの貫通孔35c、対向面11dの貫通孔35dも、それぞれが連通孔36に連通している。
【0041】
可塑化部20aは、バレル90の対向面11aと、対向面11aと向い合って配置されるフラットスクリュー21aなどから構成される。同様に、可塑化部20bは、対向面11bと、対向面11bと向い合って配置されるフラットスクリュー21bなどから構成される。可塑化部20cは、対向面11cと、対向面11cと向い合って配置されるフラットスクリュー21cなどから構成される。可塑化部20dは、対向面11dと、対向面11dと向い合って配置されるフラットスクリュー21dなどから構成される。
なお、各フラットスクリューには、それぞれ駆動モーターが接続されており、バレル90の各対向面の内側には、それぞれヒーターが設けられるが、図示を省略している。
【0042】
4つの可塑化部20a,20b,20c,20dから連通孔36に吐出された材料の一部は、分岐路32内に引き込まれ、プランジャー34(図1)の往復駆動により供給量が制御されて、連通孔36に圧送される。そして、圧送された材料は、ノズル部70から、型締装置50により固定された成形型40内に射出される。
【0043】
以上、述べた通り、本実施形態の可塑化装置81、および、可塑化装置81を備えた射出成型装置100によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
可塑化装置81は、4つの可塑化部20a,20b,20c,20dを備えている。
【0044】
これによれば、可塑化装置81は、4つの可塑化部20a,20b,20c,20dを備えている。よって、1つの可塑化部29しか有していなかった従来の可塑化装置89(図9)に比べて、可塑化能力が高い。
さらに、バレル90を正方形状として、その4辺に沿って対向面11a,11b,11c,11dを設けることにより、1つのバレル90で4つの可塑化部20a,20b,20c,20dを構成することができる。よって、可塑化装置81をコンパクトに構成することができる。
従って、小型で可塑化能力が高い可塑化装置81を提供することができる。そして、可塑化装置81を備えた射出成型装置100によれば、効率良く射出成型を行うことができる。
【0045】
実施形態3
***可塑化部の異なる態様-2***
図7は、実施形態3に係る可塑化部の平断面図であり、図6に対応している。
上記実施形態では、可塑化装置80は2つの可塑化部を備え、可塑化装置81は4つの可塑化部を備えるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、バレルの周囲に複数の可塑化部を備えることであれば良い。例えば、本実施形態の可塑化装置82は、3つの可塑化部を備えている。
以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
図7に示す、本実施形態の可塑化装置82は、バレル91の周囲に3つの可塑化部20a,20e,20fを備えている。
バレル91は、連通孔36を中心とした三角形状をなしており、その3辺に沿って対向面11a,11e,11fを備えている。
対向面11aの中央には貫通孔35aが設けられており、貫通孔35aは連通孔36に連通している。同様に、対向面11eの貫通孔35e、対向面11fの貫通孔35fも、それぞれが連通孔36に連通している。
【0047】
可塑化部20aは、バレル91の対向面11aと、対向面11aと向い合って配置されるフラットスクリュー21aなどから構成される。同様に、可塑化部20eは、対向面11eと、対向面11eと向い合って配置されるフラットスクリュー21eなどから構成される。可塑化部20fは、対向面11fと、対向面11fと向い合って配置されるフラットスクリュー21fなどから構成される。
なお、各フラットスクリューには、それぞれ駆動モーターが接続されており、バレル91の各対向面の内側には、それぞれヒーターが設けられるが、図示を省略している。
【0048】
3つの可塑化部20a,20e,20fから連通孔36に吐出された材料の一部は、分岐路32内に引き込まれ、プランジャー34(図1)の往復駆動により供給量が制御されて、連通孔36に圧送される。そして、圧送された材料は、ノズル部70から、型締装置50により固定された成形型40内に射出される。
なお、バレルの形状は、三角形や、四角形に限定するものではなく、例えば、六角形や、八角形などの多角形であっても良い。例えば、6角形とした場合は、各辺に沿って、6つの可塑化部を設けることができる。また、全ての辺に可塑化部を設けなくても良く、例えば、6角形のいずれかの3辺に選択的に可塑化部を設けることであっても良い。
【0049】
以上、述べた通り、本実施形態の可塑化装置82、および、可塑化装置82を備えた射出成型装置100によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
可塑化装置82は、3つの可塑化部20a,20e,20fを備えている。
【0050】
これによれば、可塑化装置82は、3つの可塑化部20a,20e,20fを備えている。よって、1つの可塑化部29しか有していなかった従来の可塑化装置89(図9)に比べて、可塑化能力が高い。
さらに、バレル91を三角形状として、その3辺に沿って対向面11a,11e,11fを設けることにより、1つのバレル91で3つの可塑化部20a,20e,20fを構成することができる。よって、可塑化装置82をコンパクトに構成することができる。
従って、小型で可塑化能力が高い可塑化装置82を提供することができる。そして、可塑化装置82を備えた射出成型装置100によれば、効率良く射出成型を行うことができる。
【0051】
実施形態4
***三次元造形装置***
図8は、三次元造形装置の概略構成図である。
上記各実施形態の可塑化装置80,81,82は、三次元造形装置にも適用することができる。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0052】
図8に示す、本実施形態の三次元造形装置300は、可塑化材料からなる造形材料を生成して吐出する可塑化装置80と、造形材料が積層される造形面211を有するステージ210と、ノズル部70とステージ210との相対位置を変更する位置変更部230と、位置変更部230を制御する制御部191などから構成される。
【0053】
ステージ210は、ノズル部70に対向する位置に配置されている。本実施形態では、ノズル部70に対向するステージ210の造形面211は、X,Y方向、すなわち水平方向に平行となるように配置される。三次元造形装置300は、三次元造形時において、ノズル部70の先端からステージ210の造形面211に向けて造形材料を吐出させて層を積層することによって三次元造形物を造形する。換言すれば、三次元造形装置300は、可塑化装置80と、可塑化装置80で可塑化した材料を吐出するノズル部70と、材料が積層される造形面211を有するステージ210と、を備える。
ステージ210には、加熱部としてステージヒーター212が備えられている。ステージヒーター212は、ステージ210上に吐出された造形材料の温度が急激に低下することを抑制する。
【0054】
位置変更部230は、ノズル部70とステージ210との相対位置を変化させる。本実施形態では、ノズル部70の位置が固定されており、位置変更部230は、ステージ210を移動させる。位置変更部230は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。位置変更部230は、制御部191の制御下において、ノズル部70とステージ210との相対的な位置関係を変更する。なお、ノズル部70の移動とは、ノズル部70をステージ210に対して相対的に移動させることを意味する。
【0055】
なお、位置変更部230によってステージ210を移動させる構成の代わりに、ステージ210の位置が固定された状態で、位置変更部230がステージ210に対してノズル部70を移動させる構成であっても良い。
または、位置変更部230によってステージ210をZ方向に移動させ、ノズル部70をX,Y方向に移動させる構成や、位置変更部230によってステージ210をX,Y方向に移動させ、ノズル部70をZ方向に移動させる構成が採用されても良い。これらの構成であっても、ノズル部70とステージ210との相対的な位置関係が変更可能である。
【0056】
以上、述べた通り、本実施形態の三次元造形装置300によれば、以下の効果を得ることができる。
三次元造形装置300は、可塑化装置80と、可塑化装置80で可塑化した材料を吐出するノズル部70と、材料が積層される造形面211を有するステージ210と、を備える。
これによれば、三次元造形装置300は、小型で可塑化能力が高い可塑化装置80を備えているため、安定して効率良く3D造形を行うことができる。
従って、造形効率が高く安定性に優れた三次元造形装置300を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
8…材料供給部、10a…溝形成面、10b…溝形成面、11a~11f…対向面、12…取り付け孔、12a…端部、13…凸条部、15…中央部、17…駆動モーター、18a…駆動モーター、18b…駆動モーター、20a~20f…可塑化部、21…フラットスクリュー、21a~21f…フラットスクリュー、22…溝、23…供給口、23a…供給口、23b…供給口、25…貫通孔、30…射出制御部、31…バレル、32…分岐路、34…プランジャー、35a~35f…貫通孔、36…連通孔、37a…逆止弁、37b…逆止弁、38…ヒーター、38a…ヒーター、38b…ヒーター、39…バレル、40…成形型、41…上型、42…下型、44…連結部、45…連結部、46…案内溝、50…型締装置、51…型締モーター、52…減速機、54…台座部、59…押出しピン、60…射出部、61…中心線、62…回転軸、63…クランプ部、64…クランプ部、65…先端部、65a…ノズル開口、67…ゲート開口、70…ノズル部、73…接続部、74…フランジ部、75…ホットランナー、76…本体部、77…流路、78a…ヒーター、78b…ヒーター、80~82…可塑化装置、89…従来の可塑化装置、90…バレル、91…バレル、100…射出成型装置、190…制御装置、191…制御部、210…ステージ、211…造形面、212…ステージヒーター、230…位置変更部、300…三次元造形装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9