(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173539
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 303
B41J2/01 205
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085866
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥爾
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA23
2C056EB40
2C056EC24
2C056EC36
2C056EC37
2C056EC42
2C056EC78
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA10
2C056HA22
(57)【要約】
【課題】記録の高速化、高濃度化、高解像度化等を適宜実現可能とする。
【解決手段】ノズル列N1,N3のノズルN及びノズル列N2,N4のノズルNはそれぞれ走査方向に重なる。高速モード及び高濃度モードにおいてノズル列N1,N3に供給される波形信号は吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに異なりかつ吐出周期Tが互いに重なる。ノズル列N2,N4に供給される波形信号は吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに異なりかつ吐出周期Tが互いに重なる。ノズル列N1,N3において走査方向に重なるノズルNから吐出されたインクのドットD1,D3は用紙上で走査方向に交互に配置され、ノズル列N2,N4において走査方向に重なるノズルNから吐出されたインクのドットD2,D4は用紙上で走査方向に交互に配置され、ドットD1,D3の組とドットD2,D4の組とは搬送方向に交互に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並ぶ複数のノズルを含むノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列及び第4ノズル列と、
前記複数のノズルと記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向に相対的に移動させる移動機構と、
前記複数のノズルのそれぞれから液体を吐出させるための吐出エネルギーを付与する複数の素子と、
前記複数の素子のそれぞれに対し、波形信号に基づく駆動信号を供給する駆動回路と、
制御部と、を備え、
前記第1ノズル列の前記複数のノズルは、前記第3ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なり、
前記第2ノズル列の前記複数のノズルは、前記第1ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重ならず、前記第4ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なり、
前記制御部は、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、
前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組と、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組とを、前記第2方向と直交する直交方向に交互に配置させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
第1吐出モードと第2吐出モードとを切り替え可能であり、
前記第1吐出モードにおいて、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、
前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組と、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組とを、前記直交方向に交互に配置させ、
前記第2吐出モードにおいて、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルの一方に対する前記波形信号を前記駆動回路に供給することで、当該一方のノズルから吐出された液体のドットを記録媒体上に着弾させ、
前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルの一方に対する前記波形信号を前記駆動回路に供給することで、当該一方のノズルから吐出された液体のドットを記録媒体上に着弾させることを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2吐出モードにおいて、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルのうち吐出不良のない一方のノズルに対する前記波形信号を前記駆動回路に供給することで、当該一方のノズルから吐出された液体のドットを記録媒体上に着弾させ、
前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルのうち吐出不良のない一方のノズルに対する前記波形信号を前記駆動回路に供給することで、当該一方のノズルから吐出された液体のドットを記録媒体上に着弾させることを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部が前記第1吐出モードにおいて前記駆動回路に供給する前記波形信号の吐出周期は、前記制御部が前記第2吐出モードにおいて前記駆動回路に供給する前記波形信号の吐出周期と同じ長さであることを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御部が前記第1吐出モードにおいて前記駆動回路に供給する前記波形信号の吐出周期は、前記制御部が前記第2吐出モードにおいて前記駆動回路に供給する前記波形信号の吐出周期よりも長いことを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1吐出モードは、高速モード及び高濃度モードを含み、
前記制御部が前記高濃度モードにおいて前記駆動回路に供給する前記波形信号の吐出周期は、前記制御部が前記高速モードにおいて前記駆動回路に供給する前記波形信号の吐出周期よりも長いことを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1ノズル列の前記開始タイミングの後に前記第2ノズル列の前記開始タイミングを生じさせ、前記第2ノズル列の前記開始タイミングの後に前記第3ノズル列の前記開始タイミングを生じさせ、前記第3ノズル列の前記開始タイミングの後に前記第4ノズル列の前記開始タイミングを生じさせることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1ノズル列、前記第2ノズル列、前記第3ノズル列及び前記第4ノズル列に対する前記波形信号を、互いに時間的に重ならないように前記駆動回路に供給することを特徴とする、請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
第1方向に並ぶ複数のノズルを含むノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列及び第4ノズル列と、前記複数のノズルと記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向に相対的に移動させる移動機構と、前記複数のノズルのそれぞれから液体を吐出させるための吐出エネルギーを付与する複数の素子と、前記複数の素子のそれぞれに対し、波形信号に基づく駆動信号を供給する駆動回路と、を備え、前記第1ノズル列の前記複数のノズルは、前記第3ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なり、前記第2ノズル列の前記複数のノズルは、前記第1ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重ならず、前記第4ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なる液体吐出装置を制御する制御方法であって、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、
前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組と、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組とを、前記第2方向と直交する直交方向に交互に配置させることを特徴とする制御方法。
【請求項10】
第1方向に並ぶ複数のノズルを含むノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列及び第4ノズル列と、前記複数のノズルと記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向に相対的に移動させる移動機構と、前記複数のノズルのそれぞれから液体を吐出させるための吐出エネルギーを付与する複数の素子と、前記複数の素子のそれぞれに対し、波形信号に基づく駆動信号を供給する駆動回路と、を備え、前記第1ノズル列の前記複数のノズルは、前記第3ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なり、前記第2ノズル列の前記複数のノズルは、前記第1ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重ならず、前記第4ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なる液体吐出装置を、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させる手段、
前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させる手段、及び、
前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組と、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組とを、前記第2方向と直交する直交方向に交互に配置させる手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズル列を有する液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1ノズル列と、第1ノズル列の位置に対してノズルの並ぶ方向にずれた第2ノズル列とを有する液体吐出装置が開示されている。第1モード(高解像度モード)において全画素にドットが形成されるとき、第1ノズル列のノズルにより形成された第1ドットと第2ノズル列のノズルにより形成された第2ドットとがノズルの並ぶ方向に交互に形成されると共に、ノズルの並ぶ方向の垂直方向(用紙の搬送方向)について第1ドットのドット列と第2ドットのドット列が形成される。第2モード(高速印刷モード)において全画素にドットが形成されるとき、第1ドットがノズルの並ぶ方向に並ぶように第1ドット列が形成されると共に、第2ドットがノズルの並ぶ方向に並ぶ第2ドット列が第1ドット列から垂直方向にずれるように形成され、垂直方向における第1ドット間の距離が第1モードの第1ドット間の距離よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、第1ノズル列のノズルと、第2ノズル列のノズルとが、ノズルの並ぶ方向(第1方向)にずれており、搬送方向(第2方向)に重なっていない。また、各ノズルに対応する駆動信号の吐出周期は、短くすることが困難である。そのため、特許文献1の構成では、記録の高速化、高濃度化、高解像度化等を適宜実現できない。
【0005】
本発明の目的は、記録の高速化、高濃度化、高解像度化等を適宜実現できる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【0006】
本発明の第1観点によれば、第1方向に並ぶ複数のノズルを含むノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列及び第4ノズル列と、前記複数のノズルと記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向に相対的に移動させる移動機構と、前記複数のノズルのそれぞれから液体を吐出させるための吐出エネルギーを付与する複数の素子と、前記複数の素子のそれぞれに対し、波形信号に基づく駆動信号を供給する駆動回路と、制御部と、を備え、前記第1ノズル列の前記複数のノズルは、前記第3ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なり、前記第2ノズル列の前記複数のノズルは、前記第1ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重ならず、前記第4ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なり、前記制御部は、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組と、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組とを、前記第2方向と直交する直交方向に交互に配置させることを特徴とする液体吐出装置が提供される。
【0007】
本発明の第2観点によれば、第1方向に並ぶ複数のノズルを含むノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列及び第4ノズル列と、前記複数のノズルと記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向に相対的に移動させる移動機構と、前記複数のノズルのそれぞれから液体を吐出させるための吐出エネルギーを付与する複数の素子と、前記複数の素子のそれぞれに対し、波形信号に基づく駆動信号を供給する駆動回路と、を備え、前記第1ノズル列の前記複数のノズルは、前記第3ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なり、前記第2ノズル列の前記複数のノズルは、前記第1ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重ならず、前記第4ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なる液体吐出装置を制御する制御方法であって、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させ、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組と、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組とを、前記第2方向と直交する直交方向に交互に配置させることを特徴とする制御方法が提供される。
【0008】
本発明の第3観点によれば、第1方向に並ぶ複数のノズルを含むノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列及び第4ノズル列と、前記複数のノズルと記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向に相対的に移動させる移動機構と、前記複数のノズルのそれぞれから液体を吐出させるための吐出エネルギーを付与する複数の素子と、前記複数の素子のそれぞれに対し、波形信号に基づく駆動信号を供給する駆動回路と、を備え、前記第1ノズル列の前記複数のノズルは、前記第3ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なり、前記第2ノズル列の前記複数のノズルは、前記第1ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重ならず、前記第4ノズル列の前記複数のノズルのそれぞれと前記第2方向に重なる液体吐出装置を、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させる手段、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルに対する前記波形信号であって、吐出周期の開始タイミングが互いに異なりかつ前記吐出周期が互いに重なる前記波形信号を、前記駆動回路に供給することで、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットを、記録媒体上において前記第2方向に交互に配置させる手段、及び、前記第1ノズル列及び前記第3ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組と、前記第2ノズル列及び前記第4ノズル列において前記第2方向に重なるノズルから吐出された液体のドットからなる組とを、前記第2方向と直交する直交方向に交互に配置させる手段、として機能させることを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録の高速化、高解像度化、高濃度化等を適宜実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの全体構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すヘッドのノズルの配置及び各ノズルから吐出されるインクのドットの配置を示す説明図である。
【
図4】
図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】波形信号FIREに含まれる4つの波形データを示す波形図である。
【
図6】
図1のプリンタの制御部が実行するプログラムを示すフロー図である。
【
図7】通常モードにおいて波形信号FIRE及び選択信号SINが制御部からドライバICに供給される過程を示す説明図である。
【
図8】高速モードにおいて波形信号FIRE及び選択信号SINが制御部からドライバICに供給される過程を示す説明図である。
【
図9】高濃度モードにおいて波形信号FIRE及び選択信号SINが制御部からドライバICに供給される過程を示す説明図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るプリンタにおける、高速モードにおいて波形信号FIRE及び選択信号SINが制御部からドライバICに供給される過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るプリンタ(液体吐出装置)100は、
図1に示すように、下面に複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を保持するキャリッジ20と、キャリッジ20を走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる走査機構30と、用紙(記録媒体)Pを下方から支持するプラテン40と、用紙Pを搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構50と、制御部90とを備えている。
【0012】
ノズルNは、走査方向及び搬送方向に対して斜めに配列されている。具体的には、ノズルNは、走査方向(第2方向)及び搬送方向(直交方向)の双方と交差する第1方向に並び、4つのノズル列(第1ノズル列N1、第2ノズル列N2、第3ノズル列N3及び第4ノズル列N4)を構成している。各ノズル列N1~N4は、第1方向に並ぶ複数のノズルNで構成されている。
【0013】
より具体的には、
図2に示すように、第1ノズル列N1のノズルNと、第3ノズル列N3のノズルNとは、第1ノズル列N1において第1方向の一端(
図2の上端)に配置されたノズルN及び第3ノズル列N3において第1方向の他端(
図2の下端)に配置されたノズルNを除き、走査方向に重なっている。第2ノズル列N2のノズルNと、第4ノズル列N4のノズルNとは、第2ノズル列N2において第1方向の一端(
図2の上端)に配置されたノズルN及び第4ノズル列N4において第1方向の他端(
図2の下端)に配置されたノズルNを除き、走査方向に重なっている。第2ノズル列N2のノズルNは、第1ノズル列N1のノズルN及び第3ノズル列N3のノズルNのいずれとも、走査方向に重なっていない。第4ノズル列N4のノズルNは、第1ノズル列N1のノズルN及び第3ノズル列N3のノズルNのいずれとも、走査方向に重なっていない。
【0014】
各ノズル列N1~N4のノズルNは、同一色(例えばブラック)のインクを吐出する。
【0015】
なお、
図2では、説明のため、各ノズル列N1~N4を構成するノズルN、及び、各ノズル列N1~N4のノズルNから吐出されたインクのドットD1~D4を、列毎に黒塗り、斜線、実線及び破線で示している。
【0016】
走査機構30は、
図1に示すように、キャリッジ20を支持する一対のガイド31,32と、キャリッジ20に連結されたベルト33とを含む。ガイド31,32及びベルト33は、走査方向に延びている。制御部90の制御によりキャリッジモータ30m(
図4参照)が駆動されると、ベルト33が走行し、ガイド31,32に沿ってキャリッジ20が走査方向に移動する。走査機構30は、ノズルNと用紙Pとを走査方向(第2方向)に相対的に移動させるものであり、本発明の「移動機構」に該当する。
【0017】
プラテン40は、キャリッジ20及びヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙Pが支持される。
【0018】
搬送機構50は、2つのローラ対51,52を有する。搬送方向においてローラ対51とローラ対52との間に、ヘッド10、キャリッジ20及びプラテン40が配置されている。制御部90の制御により搬送モータ50m(
図4参照)が駆動されると、ローラ対51,52が用紙Pを挟持した状態で回転し、用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0019】
ヘッド10は、
図3に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0020】
流路ユニット12の下面に、複数のノズルNが開口している。流路ユニット12の上面に、複数の圧力室12pが開口している。流路ユニット12の内部に、インクタンク(図示略)に連通する共通流路12aと、ノズルN毎に個別の個別流路12bとが形成されている。個別流路12bは、共通流路12aの出口から圧力室12pを経てノズルNに至る流路である。
【0021】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12pを覆うように配置された金属製の振動板13aと、振動板13aの上面に配置された圧電層13bと、圧電層13bの上面に複数の圧力室12pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13cとを含む。
【0022】
振動板13a及び複数の個別電極13cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、本発明の「駆動回路」に該当し、振動板13aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13cの電位を変化させる。具体的には、ドライバIC14は、制御部90からの制御信号(後述する波形信号FIRE及び選択信号SIN)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14sを介して当該駆動信号を吐出周期(ノズルNからインクを吐出させる周期)毎に個別電極13cに供給する。これにより、個別電極13cの電位が所定の駆動電位(VDD)とグランド電位(0V)との間で変化する(
図5参照)。このとき、振動板13a及び圧電層13bにおいて各個別電極13cと各圧力室12pとで挟まれた部分(アクチュエータ13x)が変形することにより、圧力室12pの容積が変化し、圧力室12p内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13xは、本発明の「素子」に該当し、個別電極13c毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0023】
制御部90は、
図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、ROM(Read Only Memory)92と、RAM(Random Access Memory)93と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94とを含む。ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。制御部90は、外部装置(パーソナルコンピュータ等)と通信可能に接続されており、当該外部装置から受信した記録指令に基づいて、CPU91やASIC94により記録処理を実行する。
【0024】
記録処理において、ASIC94は、CPU91からの指令にしたがい、ドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50mを駆動させ、搬送機構50により用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、走査機構30によりキャリッジ20を走査方向に移動させながらノズルNからインクを吐出させる走査動作とを、交互に行わせる。これにより、用紙P上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0025】
ASIC94は、出力回路94a及び転送回路94bを含む。
【0026】
出力回路94aは、波形信号FIRE及び選択信号SINを生成し、これら信号を吐出周期毎に転送回路94bに出力する。1吐出周期は、用紙P上に形成される画像の解像度に対応する単位距離だけ用紙Pがヘッド10に対して相対移動するのに要する時間であり、1画素に対応する。
【0027】
波形信号FIREは、4つの波形データF0~F3(
図5参照)を直列化したシリアル信号である。波形データF0(
図5(a)参照)は、1吐出周期TにおけるノズルNからのインクの吐出量が「ゼロ(吐出なし)」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)に維持する。波形データF1(
図5(b)参照)は、1吐出周期TにおけるノズルNからのインクの吐出量が「小」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる1つのパルスを含み、1滴のインクをノズルNから吐出させる。波形データF2(
図5(c)参照)は、1吐出周期TにおけるノズルNからのインクの吐出量が「中」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる2つのパルスを含み、2滴のインクをノズルNから吐出させる。波形データF3(
図5(d)参照)は、1吐出周期TにおけるノズルNからのインクの吐出量が「大」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる4つのパルスを含み、4滴のインクをノズルNから吐出させる。
【0028】
波形信号FIREは、4つの波形データF0~F3(
図5参照)を含むことで、全体としてアクチュエータ13xの4つの駆動態様を示すものである。アクチュエータ13xの駆動態様とは、個別電極13cの電位の変化に応じた上述のようなアクチュエータ13xの変形の態様をいう。アクチュエータ13xの駆動態様は、個別電極13cの電位の変化に応じて(即ち、波形データF0~F3毎に)異なる。アクチュエータ13xの駆動態様によって、圧力室12pの容積の変化、ノズルNに形成されるメニスカスの状態、及び、ノズルNから吐出されるインクの量(ゼロを含む。)等が異なる。
【0029】
なお、波形信号FIREは、アクチュエータ13xの駆動態様を示すものであり、サテライト滴を抑制するための波形データ(例えば、連続する2つの吐出周期Tに跨って配される複数のパルスを有する波形データ)を含まない。
【0030】
選択信号SINは、4つの波形データF0~F3(
図5参照)中から1つを選択するための選択データを含むシリアル信号であり、記録指令に含まれる画像データに基づいて、アクチュエータ13x毎、かつ、吐出周期T毎に生成される。
【0031】
転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送(供給)する。転送回路94bは、上記各信号に対応するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。LVDS方式は、2本の信号線にそれぞれ逆位相の信号(H信号及びL信号)を入力する方式であり、1本の信号線だけで信号を入力するシングルエンド方式に比べ、ノイズに強く、信号の振幅を小さくして低電圧で伝送可能という特徴がある。LVDS方式は、信号の振幅を小さくすることができるため、H信号とL信号との間の切り換えに要する時間を短くすることができ、その結果として、信号の周波数を高くして、データを高速に伝送することができる。特に、選択信号SINは、アクチュエータ13xの数(ノズルNの数)の選択データを含むため、データ量が膨大になり得る。当該信号をLVDS方式で転送することで、高速伝送が可能となっている。
【0032】
次いで、
図6を参照し、制御部90が実行するプログラムについて説明する。本処理は、例えば、プリンタ100に電力が供給されている間繰り返し開始される。
【0033】
制御部90は、先ず、外部装置から記録指令を受信したか否かを判断する(S1)。記録指令を受信していない場合(S1:NO)、制御部90は、当該プログラムを終了する。
【0034】
記録指令を受信した場合(S1:YES)、制御部90は、当該記録指令が示す記録モードが通常モードであるか否かを判断する(S2)。
【0035】
記録モードには、通常モード、高速モード及び高濃度モードがある。高速モード及び高濃度モードが本発明の「第1吐出モード」に該当し、通常モードが本発明の「第2吐出モード」に該当する。
【0036】
記録モードが通常モードであると判断した場合(S2:YES)、制御部90は、通常モードで記録処理を実行し(S3)、当該プログラムを終了する。
【0037】
記録モードが通常モードでないと判断した場合(S2:NO)、制御部90は、記録モードが高速モードであるか否かを判断する(S4)。
【0038】
記録モードが高速モードであると判断した場合(S4:YES)、制御部90は、高速モードで記録処理を実行し(S5)、当該プログラムを終了する。
【0039】
記録モードが高速モードでないと判断した場合(S4:NO)、制御部90は、高濃度モードで記録処理を実行し(S6)、当該プログラムを終了する。
【0040】
通常モードでは、第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3のうち、吐出不良のないノズルNを含むノズル列が選択され、かつ、第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4のうち、吐出不良のないノズルNを含むノズル列が選択される。例えば、本プログラムの実行前に、全ノズルNについて吐出不良の検知が実行され、当該検知の結果に基づいてノズル列が選択される。
図6及び
図7では、第3ノズル列N3及び第4ノズル列N4のノズルNに吐出不良が検知され、第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2のノズルNには吐出不良が検知されなかった結果、第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2が選択された例が示されている。この場合、制御部90は、第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2に対する波形信号FIRE及び選択信号SINを、転送回路94bからドライバIC14に転送させる。
【0041】
図7において、時点t0は、転送回路94bが出力回路94aから波形信号FIRE及び選択信号SINを受信する時点であり、吐出周期Tの開始タイミングに該当する。波形信号FIREの転送は、時点t0に開始される。選択信号SINの転送は、時点t0から遅延時間Dの経過後に開始され、波形信号FIREの転送終了時点以降に終了する。選択信号SINの転送終了時点で、選択信号SINがラッチ(即ち、一時的に保持・記憶)される。1の吐出周期Tに係る波形信号FIRE及び選択信号SINの転送終了後に、次の吐出周期Tに係る波形信号FIRE及び選択信号SINの転送が開始される。
【0042】
通常モードでは、第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3の一方(本例では第1ノズル列N1)及び第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4の一方(本例では第2ノズル列N2)を使用することで、当該ノズル列のノズルNから吐出されたインクのドットが用紙P上に着弾する。具体的には、
図2では全てのノズル列N1~N2のドットD1~D4が示されているが、本例では第1ノズル列N1のドットD1及び第2ノズル列N2のドットD2が用紙P上に着弾する。
【0043】
高速モードでは、全てのノズル列N1~N4が使用される。この場合、制御部90は、
図8に示すように、第1ノズル列N1~第4ノズル列N4に対する波形信号FIRE及び選択信号SINを、転送回路94bからドライバIC14に転送させる。
【0044】
図8において、第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3の信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)は、当該2つの列において走査方向に重なるノズルNに対する信号である。これら第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3の信号は、吐出周期Tが互いにずれるように構成されており、吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに異なり、かつ、吐出周期Tが互いに重なる。当該信号がドライバIC14に供給されることで、第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3において走査方向に重なるノズルNから吐出されたインクのドットD1,D3が、用紙P上において走査方向に交互に配置される(
図2参照)。
【0045】
図8において、第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4の信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)は、当該2つの列において走査方向に重なるノズルNに対する信号である。これら第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4の信号は、吐出周期Tが互いにずれるように構成されており、吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに異なり、かつ、吐出周期Tが互いに重なる。当該信号がドライバIC14に供給されることで、第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4において走査方向に重なるノズルNから吐出されたインクのドットD2,D4が、用紙P上において走査方向に交互に配置される(
図2参照)。
【0046】
さらに、ドットD1,D3からなる組とドットD2,D4からなる組とが、搬送方向に交互に配置される(
図2参照)。
【0047】
図8において、第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2の信号は、吐出周期Tが一致しており、吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに同じである。
【0048】
高速モード(
図8参照)においてドライバIC14に供給される信号の吐出周期Tは、通常モード(
図7参照)においてドライバIC14に供給される信号の吐出周期Tと同じ長さである。走査方向に並ぶ2つのドットD1,D3又はD2,D4に対応する吐出周期Txは、高速モード(
図8参照)の方が通常モード(
図7参照)よりも短い。
【0049】
高濃度モードでは、高速モードと同様、全てのノズル列N1~N4が使用される。この場合、制御部90は、
図9に示すように、第1ノズル列N1~第4ノズル列N4に対する波形信号FIRE及び選択信号SINを、転送回路94bからドライバIC14に転送させる。
【0050】
図9において、第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3の信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)は、当該2つの列において走査方向に重なるノズルNに対する信号である。これら第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3の信号は、吐出周期Tが互いにずれるように構成されており、吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに異なり、かつ、吐出周期Tが互いに重なる。当該信号がドライバIC14に供給されることで、第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3において走査方向に重なるノズルNから吐出されたインクのドットD1,D3が、用紙P上において走査方向に交互に配置される(
図2参照)。
【0051】
図9において、第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4の信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)は、当該2つの列において走査方向に重なるノズルNに対する信号である。これら第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4の信号は、吐出周期Tが互いにずれるように構成されており、吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに異なり、かつ、吐出周期Tが互いに重なる。当該信号がドライバIC14に供給されることで、第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4において走査方向に重なるノズルNから吐出されたインクのドットD2,D4が、用紙P上において走査方向に交互に配置される(
図2参照)。
【0052】
さらに、第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3において走査方向に重なるノズルNから吐出されたインクのドットD1,D3からなる組と、第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4において走査方向に重なるノズルNから吐出されたインクのドットD2,D4からなる組とが、前記第2方向と直交する直交方向に交互に配置される(
図2参照)。
【0053】
図9において、第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2の信号は、吐出周期Tが一致しており、吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに同じである。
【0054】
高濃度モード(
図9参照)においてドライバIC14に供給される信号の吐出周期Tは、通常モード(
図7参照)においてドライバIC14に供給される信号の吐出周期Tよりも長く、高速モード(
図8参照)においてドライバIC14に供給される信号の吐出周期Tよりも長い。走査方向に並ぶ2つのドットD1,D3又はD2,D4に対応する吐出周期Txは、高濃度モード(
図9参照)と通常モード(
図7参照)とで同じであり、高濃度モード(
図9参照)の方が高速モード(
図8参照)よりも長い。
【0055】
なお、高速モード(
図8参照)及び高濃度モード(
図9参照)においては、例えば記録動作の開始時や終了時等、第1ノズル列N1と第3ノズル列N3との間、及び、第2ノズル列N2と第4ノズル列N4との間のそれぞれで、吐出周期Tが互いに重ならない波形信号があってもよい。
【0056】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1ノズル列N1のノズルNと第3ノズル列N3のノズルNとが走査方向に重なり、第2ズル列N2のノズルNと第4ノズル列N4のノズルNとが走査方向に重なる(
図2参照)。記録の高速化を実現するには、これら走査方向に重なるノズルNからインクをインクさせる際に、
図8に示す高速モードのように、吐出周期Tを通常モード(
図7)と同じとして、吐出周期Tの開始タイミングt0をずらす。これにより、走査方向に並ぶ2つのドットD1,D3又はD2,D4に対応する吐出周期Txを通常モードよりも短くすることができ、高速化を実現できる。記録の高濃度化を実現するには、これら走査方向に重なるノズルNからインクを吐出させる際に、
図9に示す高濃度モードのように、吐出周期Tを通常モード(
図7)よりも長くして、吐出周期Tの開始タイミングt0をずらす。これにより、通常モードよりも大きなインク滴を吐出させることができ、高濃度化を実現できる。また、ドットD1,D3からなる組とドットD2,D4からなる組とが搬送方向に交互に配置される(
図2参照)ことで、搬送方向の記録解像度を高めることができる。このように、本実施形態によれば、記録の高速化、高濃度化、高解像度化等を適宜実現できる。
【0057】
制御部90は、通常モード、高速モード及び高濃度モードを切り替え可能である(
図6参照)。高速モード及び高濃度モードでは、全てのノズル列N1~N4が使用され、第1ノズル列N1と第3ノズル列N3との間及び第2ノズル列N2と第4ノズル列N4との間のそれぞれで吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに異なりかつ吐出周期Tが互いに重なる波形信号FIREが供給され(
図8及び
図9参照)、ドットD1,D3が用紙P上において走査方向に交互に配置され、ドットD2,D4が用紙P上において走査方向に交互に配置され、ドットD1,D3からなる組とドットD2,D4からなる組とが搬送方向に交互に配置される(
図2参照)。一方、通常モードでは、第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3の一方及び第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4の一方が使用され、当該ノズル列に対する波形信号FIREが供給され(
図7参照)、当該ノズル列のノズルNから吐出されたインクのドットが用紙P上に着弾する。このように吐出モードを切り替えることで、記録の高速化等や不吐出ノズルへの対応を適宜実現できる。
【0058】
制御部90は、通常モードにおいて、第1ノズル列N1及び第3ノズル列N3のうち吐出不良のないノズルN、並びに、第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4のうち吐出不良のないノズルNに対する波形信号FIREを、ドライバIC14に供給する。この場合、吐出不良のないノズルNからインクを吐出させることで、画質の悪化を抑制できる。
【0059】
高速モード(
図8参照)では、吐出周期Tを通常モード(
図7)と同じとして、吐出周期Tの開始タイミングt0をずらす。これにより、走査方向に並ぶ2つのドットD1,D3又はD2,D4に対応する吐出周期Txを通常モードよりも短くすることができ、高速化を実現できる。
【0060】
高濃度モード(
図9参照)では、吐出周期Tを通常モード(
図7)よりも長くして、吐出周期Tの開始タイミングt0をずらす。これにより、通常モードよりも大きなインク滴を吐出させることができ、高濃度化を実現できる。
【0061】
高濃度モード(
図9参照)における吐出周期Tは、高速モード(
図8参照)における吐出周期Tよりも長い。これにより、高速モードよりも大きなインク滴を吐出させることができ、高濃度化を実現できる。
【0062】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0063】
第1実施形態では、高速モード(
図8参照)において、第1ノズル列N1と第2ノズル列N2とで、吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに同じであり、第3ノズル列N3と第4ノズル列N4とで、吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに同じである。これに対し、第2実施形態では、高速モード(
図10参照)において、全てのノズル列N1~N4で吐出周期Tの開始タイミングt0が互いに異なる。
【0064】
制御部90は、高速モード(
図10参照)において、第1ノズル列N1の開始タイミングt0の後に第2ノズル列N2の開始タイミングt0を生じさせ、第2ノズル列N2の開始タイミングt0の後に第3ノズル列N3の開始タイミングt0を生じさせ、第3ノズル列N3の開始タイミングt0の後に第4ノズル列N4の開始タイミングt0を生じさせる。
【0065】
また、第1ノズル列N1、第2ノズル列N2、第3ノズル列N3及び第4ノズル列N4に対する波形信号FIREが、互いに時間的に重なっていない。本実施形態の波形信号FIREは、例えば2つの波形データF0,F1(
図5参照)を含むものであり、第1実施形態の波形信号FIRE(
図8参照)よりも短い。第2実施形態の高速モード(
図10参照)での吐出周期Tは、第1実施形態の高速モード(
図8参照)での吐出周期Tよりも長い。
【0066】
以上に述べたように、本実施形態によれば、全てのノズル列N1~N4で吐出周期Tの開始タイミングt0を互いに異ならせることで、開始タイミングt0に生じる電力のピークを時間的に分散させることができる。ひいては、電力集中による波形の乱れの抑制、及び、電力集中抑制部品(コンデンサ等)の削減を実現できる。
【0067】
波形信号FIREの転送時に、電力負荷が大きくなる。本実施形態では、波形信号FIREの転送タイミングをずらすことで、上記効果(電力集中による波形の乱れの抑制、及び、電力集中抑制部品(コンデンサ等)の削減)をより実効的に実現できる。
【0068】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0069】
上述の実施形態(
図2参照)では、第1ノズル列N1、第2ノズル列N2、第3ノズル列N3及び第4ノズル列N4が当該順序で第2方向に並んでいるが、ノズル列の並び順序はこれに限定されない。例えば、第1ノズル列N1、第3ノズル列N3、第2ノズル列N2及び第4ノズル列N4が当該順序で第2方向に並んでもよい。
【0070】
上述の実施形態では、通常モード(第2モード)において、2つのノズル列N1,N3又はN2,N4のうち吐出不良のないノズルNを含むノズル列が選択されるが、これに限定されない。例えば、2つのノズル列N1,N3において、行毎に(即ち、第2方向に重なる2つのノズル毎に)、吐出不良の有無に基づいて、一方のノズル(吐出不良のないノズル)を選択してもよい。
【0071】
駆動回路に供給される信号は、シリアルデータに限定されず、パラレルデータであってもよい。また、上述の実施形態では転送回路が波形信号及び選択信号を差動信号として駆動回路に転送するが、これに限定されない。
【0072】
上述の実施形態では、アクチュエータ13x(素子)の駆動方式として「押し打ち方式(予めアクチュエータ13xを平坦に保持しておき、所定のタイミングでアクチュエータ13xを圧力室12pに向かって凸に変形させ、圧力室12pの容積を減少させることでノズルNからインクを吐出させる方式)」を採用しているが、これに限定されず、「引き打ち方式(圧力室12pの容積を一旦増加させてから所定時間経過後に圧力室12pの容積を元に戻すことでノズルNからインクを吐出させる方式)」を採用してもよい。「引き打ち方式」では、圧力室12pの容積が増加する際に、圧力室12p内に負の圧力波が生じ、その後負の圧力波が反転して正の圧力波として圧力室12pに戻ってきたタイミングで、圧力室12pの容積を元に戻し、圧力室12p内に正の圧力波を生じさせ、これら圧力波を重畳させる。このような圧力波の重畳により、圧力室12p内のインクに大きな圧力を付与することができる。「引き打ち方式」の場合、波形データF0(
図5(a)参照)は、個別電極13cの電位を駆動電位(VDD)に維持する。波形データF1~F3(
図5(b)~(d)参照)は、個別電極13cの電位を、時点0で駆動電位(VDD)とし、駆動電位(VDD)とグランド電位(0V)との間で変化させる。
【0073】
素子は、上述の実施形態のような圧電方式の素子(アクチュエータ13x)に限定されず、サーマル方式や静電方式の素子であってもよい。
【0074】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0075】
記録媒体は、用紙に限定されず、布、樹脂部材等であってもよい。また、記録媒体は、シート状に限定されず、塊状等であってもよい。
【0076】
第1方向(各ノズル列のノズルが並ぶ方向)は、上述の実施形態(
図1及び
図2参照)では第2方向(走査方向)及び直交方向(搬送方向)の双方と交差するが、第2方向(走査方向)と直交しかつ直交方向(搬送方向)と平行であってもよい。
【0077】
ヘッドは、上述の実施形態ではシリアル式であるが、ライン式であってもよい。ライン式の場合、搬送機構が本発明の「移動機構」に該当する。この場合、
図1の走査方向に対応する主走査方向を本発明の「第1方向」「直交方向」とし、搬送方向を本発明の「第2方向」としてよい。
【0078】
本発明は、互いに異なる色のインクを吐出する4つのヘッドを備えたカラープリンタにも適用可能である。
【0079】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【0080】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0081】
13x アクチュエータ(素子)
14 ドライバIC(駆動回路)
30 走査機構(移動機構)
90 制御部
100 プリンタ(液体吐出装置)
N ノズル
N1 第1ノズル列
N2 第2ノズル列
N3 第3ノズル列
N4 第4ノズル列
P 用紙(記録媒体)
FIRE 波形信号
SIN 選択信号
T 吐出周期
t0 吐出周期の開始タイミング
D1~D4 ドット