(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173542
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20231130BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/36 D
H05K7/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085870
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 章良
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功二
(72)【発明者】
【氏名】大竹 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 正太郎
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA11
5E322FA04
5F136BA30
5F136BC02
5F136DA25
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】半導体チップとヒートシンクの間から熱伝導材が漏れ出すのを抑える技術を提供する。
【解決手段】電子機器1は、半導体チップ30と、ヒートシンク50と、前記半導体チップと前記ヒートシンクの間に設けられており、少なくとも前記半導体チップが動作したときに流動性を有する熱伝導材40と、を備えている。前記半導体チップに対向する前記ヒートシンクの対向面52の一部が周囲壁56を構成している。前記周囲壁は、前記対向面のうちの前記半導体チップが対向する対向範囲54を含む内側面59の周囲の少なくとも一部に配置されており、前記内側面に対して壁を構成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ(30)と、
ヒートシンク(50)と、
前記半導体チップと前記ヒートシンクの間に設けられており、少なくとも前記半導体チップが動作したときに流動性を有する熱伝導材(40)と、を備えており、
前記半導体チップに対向する前記ヒートシンクの対向面(52)の一部が周囲壁(56)を構成しており、
前記周囲壁は、前記対向面のうちの前記半導体チップが対向する対向範囲(54)を含む内側面(59)の周囲の少なくとも一部に配置されており、前記内側面に対して壁を構成している、電子機器。
【請求項2】
前記周囲壁が、テーパ構造を有している、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記周囲壁が、前記内側面に対して近い側に配置されている第1周囲壁部分(56a)と、前記内側面に対して遠い側に配置されている第2周囲壁部分(56b)と、を有しており、
前記内側面に対する前記第2周囲壁部分の傾斜角度は、前記内側面に対する前記第1周囲壁部分の傾斜角度よりも大きい、請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記内側面の前記熱伝導材に対する濡れ性は、前記周囲壁の前記熱伝導材に対する濡れ性よりも高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記周囲壁が、前記内側面の周囲を取り囲むように配置されている、請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記熱伝導材の端部が、前記周囲壁に接触している、請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記熱伝導材の融点が100℃以下である、請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記熱伝導材が、GaInSn、Ga、又は、GaINである、請求項7に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、電子機器に関する。
【0002】
特許文献1には、半導体チップと、ヒートシンクと、半導体チップとヒートシンクの間に設けられている熱伝導材と、を備えた電子機器が開示されている。熱伝導材に液体金属が用いられているので、電子機器は高い放熱性能を有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電子機器では、熱伝導材に外力(例えば衝撃)が加わったときに、熱伝導材が半導体チップとヒートシンクの間から漏れ出すことが懸念される。半導体チップとヒートシンクの間から熱伝導材が漏れ出すと、電子機器の放熱性能が低下してしまう。本明細書は、半導体チップとヒートシンクの間から熱伝導材が漏れ出すのを抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電子機器は、半導体チップ(30)と、ヒートシンク(50)と、前記半導体チップと前記ヒートシンクの間に設けられており、少なくとも前記半導体チップが動作したときに流動性を有する熱伝導材(40)と、を備えることができる。前記半導体チップに対向する前記ヒートシンクの対向面(52)の一部が周囲壁(56)を構成している。前記周囲壁は、前記対向面のうちの前記半導体チップが対向する対向範囲(54)を含む内側面(59)の周囲の少なくとも一部に配置されており、前記内側面に対して壁を構成している。この電子機器では、前記熱伝導材の周囲の少なくとも一部に前記周囲壁が設けられているので、前記周囲壁を超えて前記熱伝導材が漏れ出すことが抑えられる。このため、この電子機器では、前記熱伝導材に外力(例えば衝撃)が加わったとしても、前記熱伝導材は前記半導体チップと前記ヒートシンクの間に保持される。前記電子機器は、前記熱伝導材に外力(例えば衝撃)が加わったとしても、放熱性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】電子機器の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図2】電子機器の要部拡大断面図を模式的に示す図である。
【
図3】変形例の電子機器の要部拡大断面図を模式的に示す図である。
【
図4】変形例の電子機器の要部拡大断面図を模式的に示す図である。
【
図5】変形例の電子機器の要部拡大断面図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に示すように、電子機器1は、回路基板10と、インターポーザ20と、半導体チップ30と、熱伝導材40と、ヒートシンク50と、シール材60と、を備えている。
【0008】
半導体チップ30は、特に限定されるものではないが、例えば車両に搭載される各種機器を制御するための集積回路であってもよい。半導体チップ30は、インターポーザ20を介して回路基板10に電気的に接続されている。図示上下方向が鉛直方向に一致している。このため、インターポーザ20及び半導体チップ30は、回路基板10に対して鉛直方向の下側に配置されている。
【0009】
熱伝導材40は、半導体チップ30とヒートシンク50の間に設けられており、半導体チップ30とヒートシンク50の双方に接触している。熱伝導材40は、半導体チップ30で発生した熱をヒートシンク50に放熱する役割を担っている。熱伝導材40は、融点が100℃以下であり、少なくとも半導体チップ30が動作したときに流動性を有する材料で構成されている。熱伝導材40は、常温(例えば20℃)において流動性を有していてもよいし、有していなくてもよい。熱伝導材40は、特に限定されるものではないが、例えばGaInSn、Ga、又は、GaIN等の液体金属であってもよい。このような液体金属の熱伝導材40が用いられると、熱伝導材40と半導体チップ30の間の界面熱抵抗及び熱伝導材40とヒートシンク50の間の界面熱抵抗の双方が低く抑えられる。また、熱伝導材40は、金属を含んでいるので高い熱伝導率を有している。したがって、電子機器1は、高い放熱性能を有することができる。
【0010】
ヒートシンク50は、プレート状の金属材料で構成されており、特に限定されるものではないが、例えば銅又はアルミニウム等の高熱伝導率の金属材料で構成されている。ヒートシンク50は、図示よりもさらに側方にまで延びており、その側方部分でフィンに接続されている。
【0011】
ヒートシンク50には、例えばプレス加工によって段差部58が形成されている。ここでいう段差部58とは、プレート状のヒートシンク50が屈曲する部分をいう。このような段差部58が形成されることにより、半導体チップ30に対向するヒートシンク50の対向面52の一部が周囲壁56を構成する。周囲壁56は、対向面52のうちの半導体チップ30が対向する対向範囲54の周囲の少なくとも一部に配置されている。周囲壁56は、対向範囲54の表面に対して鉛直方向の上向きの成分を含んで延びており、対向範囲54の表面に対して壁を構成している。この例では、周囲壁56は、対向範囲54の周囲を一巡して取り囲むように配置されている。周囲壁56の作用効果については後述する。
【0012】
シール材60は、インターポーザ20とヒートシンク50の間に設けられており、インターポーザ20とヒートシンク50の双方に接している。シール材60は、熱伝導材40に対して周囲壁56よりも外側に配置されており、熱伝導材40の周囲を取り囲むように設けられている。シール材60は、特に限定されるものではないが、例えば樹脂等で構成されている。シール材60は、熱伝導材40が電子機器1から漏れ出すのを防止するために設けられている。
【0013】
図2に、ヒートシンク50の周囲壁56の近傍の要部拡大断面図を示す。ここで、ヒートシンク50の対向面52のうちの周囲壁56よりも半導体チップ30側であって、対向範囲54を含む面を内側面59とする。内側面59は、平面視したときに、対向範囲54と同一範囲であってもよいし、
図2に示すように、対向範囲54よりも僅かに外側に広がっていてもよい。
【0014】
この例では、周囲壁56の高さT1は、半導体チップ30とヒートシンク50の内側面59の間の距離D1よりも大きい。換言すると、熱伝導材40が周囲壁56と内側面59で画定される溝内に完全に収容されており、半導体チップ30の一部が周囲壁56と内側面59で画定される溝内に収容されている。この例では、周囲壁56は、内側面59に対して傾斜して延びた平面形状であり、テーパ構造を有している。熱伝導材40の端部が、内側面59を超えて周囲壁56の下端に接触している。
【0015】
熱伝導材40が液体状態のときに、熱伝導材40に例えば数Gの外力(例えば衝撃)が加わると、熱伝導材40の一部が半導体チップ30とヒートシンク50の間から漏れ出す。しかしながら、熱伝導材40の周囲には周囲壁56が設けられているので、周囲壁56を超えて熱伝導材40が漏れ出すことが抑えられる。また、漏れ出した熱伝導材40は、周囲壁56を滑落し、半導体チップ30とヒートシンク50の間に戻ることができる。このように、電子機器1では、熱伝導材40に外力(例えば衝撃)が加わったとしても、熱伝導材40は半導体チップ30とヒートシンク50の間に保持される。このため、電子機器1は、熱伝導材40に外力(例えば衝撃)が加わったとしても、放熱性能を維持することができる。
【0016】
ヒートシンク50の対向面52では、内側面59と周囲壁56が、熱伝導材40に対する濡れ性の異なる材料で表面処理されていてもよい。ここでいう濡れ性は、よく知られているように、例えば接触角によって評価された値を用いることができる。内側面59の熱伝導材40に対する濡れ性が周囲壁56の熱伝導材40に対する濡れ性よりも高くなるように、内側面59と周囲壁56が表面処理されていてもよい。具体的には、蒸着技術を利用して、内側面59の表面が酸化シリコン(SiO2)で被膜され、周囲壁56の表面が酸化アルミニウム(Al2O3)で被膜されていてもよい。このように、内側面59に対して濡れやすく、周囲壁56に対して濡れにくくなっていると、熱伝導材40は半導体チップ30とヒートシンク50の間に良好に保持される。このため、電子機器1は、熱伝導材40に外力(例えば衝撃)が加わったとしても、放熱性能をさらに良好に維持することができる。
【0017】
上記実施形態では、周囲壁56がテーパ形状の場合を説明した。周囲壁56は、内側面59に対して壁を構成していればよく、様々な形状とすることができる。
【0018】
例えば、
図3に示すように、周囲壁56は、第1周囲壁部分56aと第2周囲壁部分56bを有していてもよい。第1周囲壁部分56aは、第2周囲壁部分56bよりも内側面59に対して近い側に配置されており、平面形状である。第2周囲壁部分56bは、第1周囲壁部分56aよりも内側面59に対して遠い側に配置されており、平面形状である。内側面59に対する第2周囲壁部分56bの傾斜角度は、内側面59に対する第1周囲壁部分56aの傾斜角度よりも大きい。このような形状の周囲壁56は、半導体チップ30とヒートシンク50の接触を抑えながら、周囲壁56の横方向の幅を小さくすることができる。なお、
図4に示すように、内側面59に対する傾斜角度が内側面59から離れるにつれて漸増するように周囲壁56が曲面形状であっても、
図3と同様の作用効果を有することができる。
【0019】
例えば、
図5に示すように、周囲壁56が鉛直方向に延びていてもよい。この例では、周囲壁56の横方向に延びていないので、面積消費を抑えることができる。なお、
図5の例に比して、
図2~
図4の例では、漏れ出した熱伝導材40が周囲壁56を超えることなく滑落し、熱伝導材40は半導体チップ30とヒートシンク50の間に戻ることが期待できる。
【0020】
上記実施形態では、周囲壁56が熱伝導材40の周囲を一巡して取り囲むように配置されていた。この例に代えて、周囲壁56は、熱伝導材40の周囲の少なくとも一部に配置されていてもよい。この場合でも、熱伝導材40が漏れ出すのを抑えることができる。例えば、電子機器1の姿勢によっては、熱伝導材40の漏れ出す方向が明らかなときがある。このような場合、周囲壁56は、熱伝導材40の漏れ出す方向に対応して配置されていればよい。
【0021】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0022】
(特徴1)
本明細書が開示する電子機器は、半導体チップと、ヒートシンクと、前記半導体チップと前記ヒートシンクの間に設けられており、少なくとも前記半導体チップが動作したときに流動性を有する熱伝導材と、を備えることができる。前記半導体チップに対向する前記ヒートシンクの対向面の一部が周囲壁を構成している。前記周囲壁は、前記対向面のうちの前記半導体チップが対向する対向範囲を含む内側面の周囲の少なくとも一部に配置されており、前記内側面に対して壁を構成している。
【0023】
(特徴2)
特徴1の電子機器において、前記周囲壁が、テーパ構造を有していてもよい。
【0024】
(特徴3)
特徴1の電子機器において、前記周囲壁が、前記内側面に対して近い側に配置されている第1周囲壁部分と、前記内側面に対して遠い側に配置されている第2周囲壁部分と、を有していてもよい。前記内側面に対する前記第2周囲壁部分の傾斜角度は、前記内側面に対する前記第1周囲壁部分の傾斜角度よりも大きくてもよい。
【0025】
(特徴4)
特徴1~3のいずれか一つに記載の電子機器において、前記内側面の前記熱伝導材に対する濡れ性は、前記周囲壁の前記熱伝導材に対する濡れ性よりも高くてもよい。
【0026】
(特徴5)
特徴1~4のいずれか一つに記載の電子機器において、前記周囲壁が、前記内側面の周囲を取り囲むように配置されていてもよい。
【0027】
(特徴6)
特徴1~5のいずれか一つに記載の電子機器において、前記熱伝導材の端部が、前記周囲壁に接触していてもよい。
【0028】
(特徴7)
特徴1~6のいずれか一つに記載の電子機器において、前記熱伝導材の融点が100℃以下であってもよい。
【0029】
(特徴8)
特徴1~7のいずれか一つに記載の電子機器において、前記熱伝導材が、GaInSn、Ga、又は、GaINであってもよい。
【0030】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0031】
1:電子機器、 10:回路基板、 20:インターポーザ、 30:半導体チップ、 40:熱伝導材、 50:ヒートシンク、 52:対向面、 54:対向範囲、 56:周囲壁、 58:段差部、 59:内側面、 60:シール材