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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173563
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】工作機械及び指標部材
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/01 20060101AFI20231130BHJP
   B23B 3/30 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B23Q1/01 Z
B23B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085898
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 光典
【テーマコード(参考)】
3C045
3C048
【Fターム(参考)】
3C045BA06
3C045BA24
3C045DA06
3C048AA03
3C048BB01
3C048EE00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】工作機械における2つの加工装置の上下方向及び左右方向の各相対位置のズレを容易に確認可能とする。
【解決手段】2つの加工装置10A、10Bのうち一方に取り付けられる第1部材21Aと、他方に取り付けられる第2部材21Bと、を備え、第1部材21Aは、上下方向の所定位置を示す第1上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第1左右指標部と、を備え、第2部材21Bは、上下方向の所定位置を示す第2上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第2左右指標部と、を備え、第1上下指標部と第2上下指標部との相対位置により、2つの加工装置10の上下方向における相対位置が示され、第1左右指標部と第2左右指標部との相対位置により、2つの加工装置10の左右方向における相対位置が示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する2つの加工装置が左右方向に並んで設置される工作機械であって、
前記2つの加工装置のうち一方に取り付けられる第1部材と、
前記第1部材に並びかつ前記第1部材に対して離間するように、前記2つの加工装置のうち他方に取り付けられる第2部材と、を備え、
前記第1部材は、上下方向の所定位置を示す第1上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第1左右指標部と、を備え、
前記第2部材は、上下方向の所定位置を示す第2上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第2左右指標部と、を備え、
前記第1上下指標部と前記第2上下指標部との相対位置により、前記2つの加工装置の上下方向における相対位置が示され、
前記第1左右指標部と前記第2左右指標部との相対位置により、前記2つの加工装置の左右方向における相対位置が示される、
工作機械。
【請求項2】
前記第1上下指標部及び前記第2上下指標部は、それぞれ左右方向に延びて設けられ、
前記2つの加工装置は、前記第1上下指標部及び前記第2上下指標部が左右方向における一直線上又はほぼ一直線上に並ぶことで、上下方向における所期の相対位置となり、
前記第1左右指標部及び前記第2左右指標部は、それぞれ上下方向に延びて設けられ、
前記2つの加工装置は、前記第1左右指標部及び前記第2左右指標部が上下方向における一直線上又はほぼ一直線上に並ぶことで、左右方向における所期の相対位置となる、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第1上下指標部及び前記第2上下指標部の少なくとも一方は、前記2つの加工装置の上下方向における相対位置の上下ズレ許容量を含んで設けられ、
前記第1左右指標部及び前記第2左右指標部の少なくとも一方は、前記2つの加工装置の左右方向における相対位置の左右ズレ許容量を含んで設けられる、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第1上下指標部及び前記第2上下指標部の少なくとも一方は、左右方向に切り欠いて設けられる上下スリットであり、
前記上下スリットの幅は、前記上下ズレ許容量を示し、
前記第1左右指標部及び前記第2左右指標部の少なくとも一方は、上下方向に切り欠いて設けられる左右スリットであり、
前記左右スリットの幅は、前記左右ズレ許容量を示す、
請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記第1部材は、水平面内において前記左右方向に直交する前後方向に延在する第1延在部と、前記第1延在部に前後方向の所定位置を示す第1前後指標部と、を備え、
前記第2部材は、前記第1延在部に並ぶように前後方向に延在する第2延在部と、前記第2延在部に前後方向の所定位置を示す第2前後指標部と、を備え、
前記第1前後指標部と前記第2前後指標部との相対位置により、前記2つの加工装置の前後方向における相対位置が示される、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項6】
前記第1前後指標部及び前記第2前後指標部は、それぞれ左右方向に延びて設けられ、
前記2つの加工装置は、前記第1前後指標部及び前記第2前後指標部が左右方向における一直線上又はほぼ一直線上に並ぶことで、前後方向における所期の相対位置となる、
請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第1前後指標部及び前記第2前後指標部の少なくとも一方は、前記2つの加工装置の前後方向における相対位置の前後ズレ許容量を含んで設けられる、
請求項5に記載の工作機械。
【請求項8】
前記第1前後指標部及び前記第2前後指標部の少なくとも一方は、左右方向に切り欠いて設けられる前後スリットであり、
前記前後スリットの幅は、前記前後ズレ許容量を示す、
請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
ワークを加工する2つの加工装置が左右方向に並んで設置される工作機械に取り付けられる指標部材であって、
前記2つの加工装置のうち一方に取り付けられる板状の第1部材と、
前記第1部材に並びかつ前記第1部材に対して離間するように、前記2つの加工装置のうち他方に取り付けられる板状の第2部材と、を備え、
前記第1部材は、上下方向の所定位置を示す第1上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第1左右指標部と、を備え、
前記第2部材は、上下方向の所定位置を示す第2上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第2左右指標部と、を備える、
指標部材。
【請求項10】
前記第1部材と前記第2部材とを連結し、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれから切り離し可能な接続片をさらに備える、
請求項9に記載の指標部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及び指標部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを加工する2つの加工装置が左右方向に並んで設置される工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。この工作機械は、2つの加工装置が分離した状態で建屋の床面に設置されるため、一方の加工装置で発生する振動が他方の加工装置に伝達されることを抑制し、2つの加工装置におけるそれぞれでワークの加工精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2606511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した工作機械を建屋等の床面に設置する場合には、2つの加工装置が精度よく並べられることが必要となる。例えば、製品出荷時において2つの加工装置を精度よく位置合わせして連結プレート等で連結した場合でも、設置後に連結プレートを取り外すことで、2つの加工装置に相対的なズレが生じ、そのズレが許容範囲を超えてしまう場合がある。2つの加工装置における相対的なズレが許容範囲を超えると、例えば、これら2つの加工装置に対してワークを搬送するローダ装置においてワークの搬送ズレ等が生じるため好ましくない。また、2つの加工装置における相対的なズレは、左右方向の他に上下方向、前後方向にも生じる。これらの方向のうち、少なくとも左右方向及び上下方向の相対的なズレについては、2つの加工装置を設置した後、容易に確認できることが求められている。
【0005】
本発明は、工作機械における2つの加工装置の上下方向及び左右方向の各相対位置のズレを容易に確認することが可能な工作機械及び指標部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る工作機械は、ワークを加工する2つの加工装置が左右方向に並んで設置される工作機械であって、2つの加工装置のうち一方に取り付けられる第1部材と、第1部材に並びかつ第1部材に対して離間するように、2つの加工装置のうち他方に取り付けられる第2部材と、を備え、第1部材は、上下方向の所定位置を示す第1上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第1左右指標部と、を備え、第2部材は、上下方向の所定位置を示す第2上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第2左右指標部と、を備え、第1上下指標部と第2上下指標部との相対位置により、2つの加工装置の上下方向における相対位置が示され、第1左右指標部と第2左右指標部との相対位置により、2つの加工装置の左右方向における相対位置が示される。
【0007】
本発明の態様に係る指標部材は、ワークを加工する2つの加工装置が左右方向に並んで設置される工作機械に取り付けられる指標部材であって、2つの加工装置のうち一方に取り付けられる板状の第1部材と、第1部材に並びかつ第1部材に対して離間するように、2つの加工装置のうち他方に取り付けられる板状の第2部材と、を備え、第1部材は、上下方向の所定位置を示す第1上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第1左右指標部と、を備え、第2部材は、上下方向の所定位置を示す第2上下指標部と、左右方向の所定位置を示す第2左右指標部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様に係る工作機械及び指標部材によれば、2つの加工装置が左右方向に並んで設置された際に、第1部材と第2部材とが並んで配置される。従って、第1部材の第1上下指標部と、第2部材の第2上下指標部とを確認することで、2つの加工装置における上下方向の相対位置を容易に確認できる。さらに、第1部材の第1左右指標部と、第2部材の第2左右指標部とを確認することで、2つの加工装置における左右方向の相対位置を容易に確認できる。すなわち、作業者は、第1部材及び第2部材を見ることで、2つの加工装置における上下方向及び左右方向の各相対位置のズレを容易に確認できる。
【0009】
また、上記態様の工作機械において、第1上下指標部及び第2上下指標部は、それぞれ左右方向に延びて設けられ、2つの加工装置は、第1上下指標部及び第2上下指標部が左右方向における一直線上又はほぼ一直線上に並ぶことで、上下方向における所期の相対位置となり、第1左右指標部及び第2左右指標部は、それぞれ上下方向に延びて設けられ、2つの加工装置は、第1左右指標部及び第2左右指標部が一直線上又はほぼ一直線上に並ぶことで、左右方向における所期の相対位置としてもよい。この構成により、第1上下指標部と第2上下指標部とが一直線上又はほぼ一直線上に並んだ状態からどの程度ズレが生じているかを確認することで、2つの加工装置において、所期の相対位置からの上下方向のズレを容易に確認できる。また、第1左右指標部と第2左右指標部とが一直線上又はほぼ一直線上に並んだ状態からどの程度ズレが生じているかを確認することで、2つの加工装置において、所期の相対位置からの左右方向のズレを容易に確認できる。
【0010】
また、上記態様の工作機械において、第1上下指標部及び第2上下指標部の少なくとも一方は、2つの加工装置の上下方向における相対位置の上下ズレ許容量を含んで設けられ、第1左右指標部及び第2左右指標部の少なくとも一方は、2つの加工装置の左右方向における相対位置の左右ズレ許容量を含んで設けられてもよい。この構成により、2つの加工装置の上下方向及び左右方向の各相対位置のズレが許容範囲内か否かを容易に判断することができる。
【0011】
また、上記態様の工作機械において、第1上下指標部及び第2上下指標部の少なくとも一方は、上下方向に切り欠いて設けられる上下スリットであり、上下スリットの幅は、上下ズレ許容量を示し、第1左右指標部及び第2左右指標部の少なくとも一方は、左右方向に切り欠いて設けられる左右スリットであり、左右スリットの幅は、左右ズレ許容量を示してもよい。この構成により、スリット幅を用いてズレの許容量を形成できるので、第1上下指標部及び第2上下指標部、並びに第1左右指標部及び第2左右指標部の構成を簡略化できる。
【0012】
また、上記態様の工作機械において、第1部材は、水平面内において左右方向に直交する前後方向に延在する第1延在部と、第1延在部に前後方向の所定位置を示す第1前後指標部と、を備え、第2部材は、第1延在部に並ぶように前後方向に延在する第2延在部と、第2延在部に前後方向の所定位置を示す第2前後指標部と、を備え、第1前後指標部と第2前後指標部との相対位置により、2つの加工装置の前後方向における相対位置が示されてもよい。この構成により、2つの加工装置の上下方向及び左右方向における相対位置のズレに加えて、前後方向における相対位置のズレを容易に確認できる。
【0013】
また、上記態様の工作機械において、第1前後指標部及び第2前後指標部は、それぞれ前後方向に延びて設けられ、2つの加工装置は、第1前後指標部及び第2前後指標部が前後方向における一直線上又はほぼ一直線上に並ぶことで、前後方向における所期の相対位置としてもよい。この構成により、第1前後指標部と第2前後指標部とが一直線上又はほぼ一直線上に並んだ状態からどの程度ズレが生じているかを確認することで、2つの加工装置において、所期の相対位置からの前後方向のズレを容易に確認できる。
【0014】
また、上記態様の工作機械において、第1前後指標部及び第2前後指標部の少なくとも一方は、2つの加工装置の前後方向における相対位置の前後ズレ許容量を含んで設けられてもよい。この構成により、加工装置の前後方向の相対位置のズレが、許容範囲内か否かを容易に判断することができる。また、上記態様の工作機械において、第1前後指標部及び第2前後指標部の少なくとも一方は、前後方向に切り欠いて設けられる前後スリットであり、前後スリットの幅は、前後ズレ許容量を示してもよい。この構成により、スリット幅を用いて前後方向におけるズレの許容量を形成できるので、第1前後指標部及び第2前後指標部の構成を簡略化できる。
【0015】
また、上記態様の指標部材において、第1部材と第2部材とを連結し、第1部材及び第2部材のそれぞれから切り離し可能な接続片をさらに備えてもよい。この構成により、予め2つの加工装置の相対位置を位置決めした後に指標部材を工作機械に取り付けることで、2つの加工装置における所期の相対位置を第1部材及び第2部材に対して容易に設定することができ、指標部材の取り付け作業の効率化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る指標部材及び工作機械の一例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る指標部材の一例を示す図である。
図3】加工装置の上下方向の相対位置のズレの確認方法について説明する図である。
図4】加工装置の左右方向の相対位置のズレの確認方法について説明する図である。
図5】接続片を有する指標部材の一例を示す図である。
図6】工作機械の設置方法の一例を示すフローチャートである。
図7】2つの加工装置を連結プレートで連結した状態で、図5に示す指標部材を取り付けた図である。
図8】指標部材から接続片を切り離した状態を示す斜視図である。
図9】工作機械から連結プレートを取り外した状態を示す斜視図である。
図10】第2実施形態に係る指標部材の一例を示す図である。
図11】第2実施形態に係る指標部材をY方向から見た図である。
図12】加工装置の前後方向の相対位置のズレの確認方法について説明する図である。
図13】接続片を有する指標部材の一例を示す図である。
図14】(A)は指標部として直線を用いた図であり、(B)は指標部としてマークを用いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定されない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。また、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されるなど、実際の製品とは、形状、寸法が異なる場合がある。図面において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する場合がある。XYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXZ平面とする。このXZ平面における一方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をZ方向と表記する。また、XZ平面に垂直な方向はY方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向とは反対の方向が-方向であるとして説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る指標部材20及び工作機械1の一例を示す図である。図1に示すように、工作機械1は、2つの加工装置10A、10Bと、指標部材20と、を備える。工作機械1において、2つの加工装置10A、10Bは、それぞれ分離して建屋の床面に設置される。工作機械1は、例えば平行2軸旋盤である。ただし、工作機械1は、平行2軸旋盤に限定されず、ワークWを加工する2つの加工装置10A、10Bがそれぞれ分離して設置される他の形態を含む。なお、図1において、Z方向が工作機械1の前後方向であり、工作機械1の-Z側が正面、+Z側が背面である。また、工作機械1の±X側は側面であり、X方向は工作機械1の左右方向である。Y方向は工作機械1の上下方向である。
【0019】
2つの加工装置10A、10Bは、それぞれ同様の構成を備える。2つの加工装置10A、10Bは、左右方向に並んで設置される。2つの加工装置10のうち、正面側から見て(-Z側から見て)左右方向の一方である左側(+X側)を加工装置10Aと称し、左右方向の他方である右側(-X側)を加工装置10Bと称する。また、加工装置10Aが有する構成要素には符号の末尾に「A」を付し、加工装置10Bが有する構成要素には符号の末尾に「B」を付して、複数の同じ種類の構成要素を互いに区別する場合がある。各加工装置10A、10Bは、それぞれベッド11A、11Bと、レベル調整部12A、12Bと、主軸13A、13Bと、刃物台14A、14Bと、を備えている。
【0020】
ベッド11Aは、基台110Aと、支持部111Aと、を有する。基台110Aは、レベル調整部12Aによって床面に設置される。支持部111Aは、基台110Aの上に固定されている。なお、基台110Aと支持部111Aとが一体に形成されてもよい。支持部111Aは、主軸13A及び刃物台14Aを支持する。ベッド11Bは、基台110Bと、支持部111Bと、を有する。基台110Bは、レベル調整部12Bによって床面に設置される。基台110B及び支持部111Bは、ベッド11Aの基台110A及び支持部111Aと同様の構成を有する。支持部111Bは、主軸13B及び刃物台14Bを支持する。ベッド11Aとベッド11Bとは、左右方向に並んで配置されており、かつ、所定の隙間が生じるように離間して配置されている。
【0021】
レベル調整部12Aは、ベッド11Aが例えば水平になるように調整する水平出しが可能である。本実施形態において、水平出しは、ベッド11Aの上下方向の位置、X方向の軸まわりの傾斜、Z方向の軸まわりの傾斜、などを含めて、ベッド11Aの姿勢を調整する意図で用いている。レベル調整部12Aは、ベッド11Aの下面側において4つの角部近傍にそれぞれ設けられている。レベル調整部12Aは、例えばレベリングボルトが用いられ、レベリングボルトを上下方向の軸まわりに回転させることで下端の位置を昇降させ、ベッド11Aの姿勢を調整する。レベル調整部12Bは、ベッド11Bが例えば水平になるように調整する水平出しが可能である。なお、レベル調整部12Bは、レベル調整部12Aと同様であるため、説明を省略する。ここで、水平出しは、ベッド11A及びベッド11Bのそれぞれで行われる。例えば、ユーザは、水平出しを行う場合には、図1に示すベッド11Aに固定されている台座15Aと、ベッド11Bに固定されている台座15Bとのそれぞれに水準器を設置し、レベル調整部12A及びレベル調整部12Bのそれぞれを用いてベッド11A及びベッド11Bが水平になるように調整することで水平出しを行う。
【0022】
加工装置10Aの主軸13Aは、モータ等の不図示の駆動源によって回転軸AXの軸線まわりに回転可能に設けられている。主軸13Aの回転軸AXは、Z方向に平行である。主軸13Aの-Z側の端部には、ワークWを把持するためのチャックと呼ばれる複数の把握爪131Aが設けられている。把握爪131Aは、主軸13Aの回転軸AXまわりに所定の間隔で複数配置されている。把握爪131Aは、主軸13Aの径方向に移動することでワークWを把持又は解放することができる。加工装置10Bの主軸13B、把握爪131Bは、上記した主軸13A、把握爪131Aと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0023】
刃物台14A、14Bは、それぞれ主軸13A、13BとX方向に並んで設置されている。図1に示す例では、刃物台14Aが主軸13Aの+X側に配置され、刃物台14Bが主軸13Bの-X側に配置されている。刃物台14A、14Bは、モータ等の不図示の回転駆動装置により、それぞれZ方向に平行な軸線まわりに回転可能である。また、刃物台14A、14Bは、不図示の駆動装置により、それぞれX方向及びZ方向に沿って移動可能である。
【0024】
刃物台14Aの周面には、切削工具を保持するための1つ以上の保持部141Aが設けられている。これら保持部141Aの全部又は一部には、切削工具142Aが保持される。刃物台14Aを回転させることにより、所望の切削工具142Aが選択される。切削工具142Aは、保持部141Aに対して交換可能である。切削工具142Aとしては、ワークWに対して切削加工を施すバイト等の他、ドリルやエンドミル等の回転工具が用いられてもよい。刃物台14Aの切削工具142Aは、刃物台14AのX方向及びZ方向への移動に伴い、刃物台14AとともにX方向及びZ方向に移動する。なお、刃物台14Bの保持部141B、切削工具142Bは、上記した保持部141A、切削工具142Aと同様のため、説明を省略する。
【0025】
加工装置10Aは、主軸13Aに保持されて回転しているワークWに対して、刃物台14Aの切削工具142Aを移動させながら切削加工を行う。加工装置10Bは、主軸13Bに保持されて回転しているワークWに対して、刃物台14Bの切削工具142Bを移動させながら切削加工を行う。
【0026】
指標部材20は、2つの加工装置10A、10Bが左右方向に並んで設置される工作機械1に取り付けられる。指標部材20は、2つの加工装置10A、10Bの上下方向及び左右方向における各相対位置のズレを識別可能な形態を有する。図2は、指標部材20の一例を示す図である。図2に示すように、指標部材20は、第1部材21Aと、第2部材21Bとを備える。なお、指標部材20は、例えば、プレート部材、マーカー、指標板と称する場合がある。指標部材20は、例えば、金属、樹脂、木、紙等の素材により形成される。第1部材21Aは、2つの加工装置10A、10Bのうち一方に取り付けられる板状の部材である。本実施形態では、第1部材21Aは、加工装置10Aに取り付けられる。第1部材21Aは、ボルトBLによってベッド11Aに固定されている。ただし、第1部材21Aは、ボルトBLによる固定以外の方法(例えば両面テープ等)でベッド11Aに固定されてもよい。
【0027】
第1部材21Aは、第1上下指標部30Aと、第1左右指標部40Aとを備える。第1上下指標部30Aは、加工装置10Aにおける上下方向の所定位置を示す。本実施形態では、第1上下指標部30Aは、左右方向に延びて、左右方向に切り欠いて設けられるスリット(以下、「第1上下スリット」という。)である。この第1上下スリットの幅ΔY1は、2つの加工装置10A、10Bの上下方向における相対位置のズレの許容量(以下、「上下ズレ許容量」という。)を示す。第1左右指標部40Aは、加工装置10Aにおける左右方向の所定位置を示す。第1左右指標部40Aは、上下方向に延びて、上下方向に切り欠いて設けられるスリット(以下、「第1左右スリット」という。)である。第1左右スリットの幅ΔX1は、2つの加工装置10A、10Bの左右方向における相対位置のズレの許容量(以下、「左右ズレ許容量」という。)を示す。
【0028】
第2部材21Bは、2つの加工装置10A、10Bのうち他方に取り付けられる板状の部材である。本実施形態では、第2部材21Bは、加工装置10Bに取り付けられる。第2部材21Bは、左右方向において、第1部材21Aに並んで設けられ、かつ第1部材21Aに対して離間するように加工装置10Bに取り付けられる。第2部材21Bは、ベッド11BにボルトBLによって固定されている。ただし、第2部材21Bは、ボルトBLによる固定以外の方法(例えば両面テープ等)でベッド11Bに固定されてもよい。
【0029】
第2部材21Bは、第2上下指標部30Bと、第2左右指標部40Bとを備える。第2上下指標部30Bは、加工装置10Bにおける上下方向の所定位置を示す。第2上下指標部30Bは、左右方向に延びて、左右方向に切り欠いて設けられるスリット(以下、「第2上下スリット」という。)である。この第2上下スリットの幅ΔY2は、2つの加工装置10A、10Bの上下方向における相対位置の上下ズレ許容量を示す。なお、本実施形態では、第1上下スリットの幅ΔY1と、第2上下スリットの幅ΔY2とが同一であるが、この形態に限定されず、幅ΔY1と幅ΔY2とが異なってもよい。
【0030】
第2左右指標部40Bは、加工装置10Bにおける左右方向の所定位置を示す。第2左右指標部40Bは、上下方向に延びて、上下方向に切り欠いて設けられるスリット(以下、「第2左右スリット」という。)である。第2左右スリットの幅ΔX2は、2つの加工装置10A、10Bの左右方向における相対位置のズレの許容量である左右ズレ許容量を示す。なお、本実施形態では、第1左右スリットの幅ΔX1と、第2左右スリットの幅ΔX2とが同一であるが、幅ΔX1と幅ΔX2とが異なってもよい。
【0031】
続いて、指標部材20を用いた加工装置10A、10Bの上下方向の相対位置のズレの確認方法について説明する。図3は、加工装置10A、10Bの上下方向の相対位置のズレの確認方法について説明する図である。第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとは、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向の相対位置を示す手段として対を成す。
【0032】
加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向における相対位置にズレがない状態では、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとが左右方向において一直線上又はほぼ一直線上に並ぶように、第1部材21A及び第2部材21Bが固定されている(図2参照)。この状態が、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向における所期の相対位置(又は所望の相対位置、適正な相対位置)である。従って、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとで上下方向にズレが生じている場合は、そのズレが加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向の相対位置のズレを示すことになる。
【0033】
ここで、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bの少なくともいずれかは上下ズレ許容量を含んでいる。そのため、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとの上下方向のズレが上下ズレ許容量を超える場合には、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向の相対位置のズレが許容範囲を超えていることを示す。一方、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとの上下方向のズレが上下ズレ許容量を超えていない場合には、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向の相対位置のズレが許容範囲内であることを示す。
【0034】
例えば、図3(A)に示すように、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとが上下方向に相対位置のズレが生じたとしても、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとの一部が左右方向において対向しているならば、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとの上下方向のズレは、上下ズレ許容量を超えていないことを示す。つまり、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとのうち一方の上側部分(30AH又は30BH)が、他方の下側部分(30AL又は30BL)を超えない限り、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとの上下方向のズレは、上下ズレ許容量を超えていないことを示す。従って、図3(A)に示す状態は、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向の相対位置のズレが許容範囲内であることを示す。
【0035】
一方、図3(B)に示すように、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとの全てが左右方向において対向していない状態では、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとの上下方向のズレは、上下ズレ許容量を超えていることを示す。つまり、第1上下指標部30A及び第2上下指標部30Bの上側部分(30AH及び30BH)が下側部分(30AL及び30BL)を超えているので、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとの上下方向のズレは上下ズレ許容量を超えていることを示す。従って、図3(B)に示す状態は、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向の相対位置のズレが許容範囲を超えていることを示す。
【0036】
続いて、指標部材20を用いた加工装置10A、10Bの左右方向の相対位置のズレの確認方法について説明する。図4は、加工装置10A、10Bの左右方向の相対位置のズレの確認方法について説明する図である。第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとは、加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向の相対位置を示す手段として対を成す。
【0037】
加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向における相対位置にズレがない状態では、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとが上下方向において一直線上又はほぼ一直線上に並ぶように、第1部材21A及び第2部材21Bが固定されている(図2参照)。この状態が、加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向における所期の相対位置である。従って、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとで左右方向にズレが生じている場合は、そのズレが加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向の相対位置のズレを示すことになる。
【0038】
ここで、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bの少なくともいずれかは左右ズレ許容量を含んでいる。そのため、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとの左右方向のズレが左右ズレ許容量を超える場合には、加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向の相対位置のズレが許容範囲を超えていることを示す。一方、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとの左右方向のズレが左右ズレ許容量を超えていない場合には、加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向の相対位置のズレが許容範囲内であることを示す。
【0039】
例えば、図4(A)に示すように、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとが左右方向に相対位置のズレが生じたとしても、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとの一部が上下方向において対向しているならば、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとの左右方向のズレは、左右ズレ許容量を超えていないことを示す。つまり、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとのうち一方の左側部分(40AL又は40BL)が、他方の右側部分(40AR又は40BR)を超えない限り、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとの左右方向のズレは、左右ズレ許容量を超えていないことを示す。従って、図4(A)に示す状態は、加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向の相対位置のズレが許容範囲内であることを示す。
【0040】
一方、図4(B)に示すように、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとの全てが上下方向において対向していない状態では、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとの左右方向のズレは、左右ズレ許容量を超えていることを示す。つまり、第1左右指標部40A及び第2左右指標部40Bの左側部分(40AL及び40BL)が右側部分(40AR及び40BR)を超えているので、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとの左右方向のズレは左右ズレ許容量を超えていることを示す。従って、図4(B)に示す状態は、加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向の相対位置のズレが許容範囲を超えていることを示す。
【0041】
加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向及び左右方向における各相対位置が、上下ズレ許容量、左右ズレ許容量を超えている場合は、作業者による調整が必要となる。作業者は、例えば、加工装置10A又は加工装置10Bのレベル調整部12A、12Bを操作することで上下方向の相対位置を調整する。また、左右方向については、加工装置10A又は加工装置10Bを移動させることにより行う。このような調整時において、作業者は、第1上下指標部30A及び第2上下指標部30Bを見ながら作業することで、上下方向の相対位置を容易に調整できる。同様に、作業者は、第1左右指標部40A及び第2左右指標部40Bを見ながら作業することで、左右方向の相対位置を容易に調整できる。
【0042】
また、上記したように、指標部材20は、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向及び左右方向における各相対位置のズレがない状態で固定される必要がある。例えば、製品出荷時などでは、加工装置10Aと加工装置10Bとを正確に位置決めし、連結プレートなどで固定される。この状態で指標部材20を取り付けることになるが、第1部材21Aと第2部材21Bとがバラバラの状態では、指標部材20を取り付ける作業者の熟練度等によって上記した所期の相対位置からずれて固定されるおそれがある。従って、指標部材20の取り付け時には、第1部材21Aと第2部材21Bとが連結されていることが好ましい。
【0043】
図5は、接続片22を有する指標部材20の一例を示す図である。図5に示す指標部材20は、第1部材21Aと、第2部材21Bと、接続片22とを有する。指標部材20は、レーザ加工などにより第1部材21Aと、第2部材21Bと、接続片22とを一体で形成されてもよい。接続片22は、第1部材21Aと第2部材21Bとが所期の相対位置を維持するように、第1部材21Aと第2部材21Bとを連結する。接続片22は、複数のジョイント部23により第1部材21A及び第2部材21Bと接続されており、これらジョイント部23を切断することで第1部材21A及び第2部材21Bのそれぞれから切り離し可能である。
【0044】
例えば、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向及び左右方向における各相対位置のズレがない状態で、図5に示す指標部材20が工作機械1に取り付けられる。その後、接続片22が手動等で切り離されることで、図2に示すように、指標部材20は、分離した第1部材21Aと第2部材21Bとになり、2つの加工装置10A、10Bの相対位置のズレを識別可能な状態となる。
【0045】
次に、本実施形態に係る指標部材20を用いた工作機械1の設置方法について説明する。図6は、工作機械1の設置方法の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、先ず、工作機械1を出荷先(客先)に搬送する場合、出荷元において以下に示すステップS101からS104の出荷前作業が行われる。出荷前作業は、加工装置10Aと加工装置10Bとの相対位置のズレを調整しながら、加工装置10A及び加工装置10Bそれぞれの水平出しを行う(ステップS101)。ステップS101において、作業者は、出荷元において所定の調整器具、調整装置を用いて、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向及び左右方向における各相対位置のズレがないように調整する。併せて、作業者は、水準器等を見ながら、レベル調整部12A、12Bを用いてベッド11A及びベッド11Bそれぞれの水平出しを行う。
【0046】
続いて、作業者は、水平出し及び位置決めを行った後に、連結プレート100を取り付ける(ステップS102)。ステップS102では、図7に示すように、ベッド11Aとベッド11Bとを連結プレート100で連結する。連結プレート100は、ボルトBLによりベッド11A及びベッド11Bに固定されることで、ベッド11Aとベッド11Bとを連結する。続いて、連結プレート100でベッド11Aとベッド11Bとを連結した後、作業者は、指標部材20を工作機械1に取り付ける(ステップS103)。その結果、指標部材20は、2つの加工装置10A、10Bが上下方向及び左右方向において所期の相対位置となった状態で工作機械1に取り付けられる。続いて、作業者は、ジョイント部23を切断して指標部材20から接続片22を切り離す(ステップS104)。ステップS104において、作業者は、例えば、接続片22を折り曲げてジョイント部23を破断させることで、容易に接続片22を切り離すことができる。ステップS104により、図8に示すように、指標部材20は、第1部材21Aと第2部材21Bとが分離された状態となる。なお、上記したステップS104の接続片22の切り離しは、出荷先で行われてもよい。
【0047】
次に、工作機械1は、出荷先に出荷される(ステップS105)。ステップS105において、工作機械1は、ベッド11Aとベッド11Bとが連結プレート100で連結された状態で搬送される。なお、出荷前において、出荷元で工作機械1の立ち上げ(試験加工など)を行う場合がある。その場合は、一旦、連結プレート100を外して行うが、立ち上げ後に再度、連結プレート100が工作機械1に取り付けられ、工作機械1が出荷先に出荷される。次に、工作機械1が出荷先に搬入されると、出荷先の所定位置に工作機械1が設置される(ステップS106)。ステップS106においても、工作機械1は、ベッド11Aとベッド11Bとが連結プレート100で連結された状態となっている。
【0048】
次に、作業者は、連結プレート100を取り外す(ステップS107)。図9に示すように、工作機械1から連結プレート100を取り外すことで、ベッド11Aとベッド11Bとが分離される。すなわち、加工装置10Aと加工装置10Bとが分離された状態となる。工作機械1の設置面に凹凸、傾斜がある場合には、加工装置10Aと加工装置10Bとの相対位置にズレが生じる場合がある。そこで、作業者は、指標部材20を見ながら加工装置10Aと加工装置10Bとの相対位置のズレを調整しつつ、水準器を見ながらベッド11A及びベッド11Bそれぞれの水平出しを行う(ステップS108)。ステップS108において、作業者は、出荷先において、指標部材20の第1上下指標部30A及び第2上下指標部30B、第1左右指標部40A及び第2左右指標部40Bを見て相対位置のズレを確認しながら相対位置のズレが解消するように調整する。例えば、作業者は、ズレを解消するにあたって、2つの加工装置10A、10Bの一方又は双方において、レベル調整部12A、12Bによる上下方向の調整、左右方向への移動による調整を行う。これらの調整に際して、作業者は、適宜指標部材20を見ながら行うことで、上下ズレ許容量及び左右ズレ許容量の範囲に収まったか否かを容易に確認することができる。
【0049】
また、ステップS108において、作業者は、出荷先において、ベッド11A及びベッド11Bに対して、水準器を用いてそれぞれの水平出しを行う。ステップS108では、加工装置10Aと加工装置10Bとの相対位置のズレ調整と、ベッド11A及びベッド11Bの水平出しとが、作業者による一連の作業として実行される。なお、水平出しは、ベッド11A及びベッド11Bのそれぞれで行われるため、ベッド11Aとベッド11Bとの相対位置、すなわち加工装置10Aと加工装置10Bとの相対位置にズレが生じる場合がある。続いて、作業者は、加工装置10Aと加工装置10Bとの相対位置のズレが許容範囲か否かを判断する(ステップS109)。ステップS109において、作業者は、第1上下指標部30A及び第2上下指標部30Bを見て、上下ズレ許容量の範囲にあるか否かを判断する。また、作業者は、第1左右指標部40A及び第2左右指標部40Bを見て、左右ズレ許容量の範囲にあるか否かを判断する。
【0050】
ステップS109において、作業者は、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとを見て、図3(A)に示すような上下ズレ許容量の範囲内であれば、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向の相対位置のズレが許容範囲内であると判断する。また、作業者は、図3(B)に示すように第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとが上下ズレ許容量から外れている場合は、加工装置10Aと加工装置10Bとの上下方向の相対位置のズレが許容範囲外であると判断する。このように、作業者は、第1上下指標部30Aと第2上下指標部30Bとに基づいて、2つの加工装置10A、10Bの上下方向における相対位置を容易に確認することができる。
【0051】
また、ステップS109において、作業者は、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとを見て、図4(A)に示すような左右ズレ許容量の範囲内であれば、加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向の相対位置のズレが許容範囲内であると判断する。また、作業者は、図4(B)に示すように第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとが左右ズレ許容量から外れている場合は、加工装置10Aと加工装置10Bとの左右方向の相対位置のズレが許容範囲外であると判断する。このように、作業者は、第1左右指標部40Aと第2左右指標部40Bとに基づいて、2つの加工装置10A、10Bの左右方向における相対位置を容易に確認することができる。
【0052】
加工装置10Aと加工装置10Bとの相対位置が上下ズレ許容量及び左右ズレ許容量の一方又は双方から外れた場合(ステップS109のNO)、ステップS108に戻り、作業者は、指標部材20を見ながら加工装置10Aと加工装置10Bとの相対位置のズレを調整しつつ、水準器を見ながらベッド11A及びベッド11Bそれぞれの水平出しを行う。
【0053】
また、加工装置10Aと加工装置10Bとの相対位置のズレが許容範囲である場合(ステップS109のYES)、加工装置10A及び加工装置10Bは、出荷前の状態が出荷先の設置面で復元される(ステップS110)。つまり、上記したステップS101で示すように、出荷元で設定された加工装置10Aと加工装置10Bとの配置が、出荷先の設置面(床面)で復元される(再現される)ことになる。ステップS110において、加工装置10A及び加工装置10Bの出荷前の状態が出荷先の設置面で復元されることで、工作機械1の設置が完了する。
【0054】
なお、工作機械1の設置後、一定期間ごとに(又は工作機械1のメンテナンス時)に、作業者は、指標部材20を見ることで、2つの加工装置10A、10Bにズレが生じているか否かを確認してもよい。
【0055】
このように、本実施形態によれば、指標部材20の第1上下指標部30A及び第2上下指標部30B、第1左右指標部40A及び第2左右指標部40Bにより、2つの加工装置10A、10Bの上下方向及び左右方向の相対位置のズレを容易に確認することができる。また、ズレを調整する際にも第1上下指標部30A及び第2上下指標部30B、第1左右指標部40A及び第2左右指標部40Bにより、ズレが許容範囲に収まったか否かを容易に確認することができる。
【0056】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る指標部材200ついて説明する。図10は、第2実施形態に係る指標部材200の一例を示す図である。図11は、指標部材200をY方向から見た図である。なお、本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略又は簡略化する。図10及び図11に示すように、指標部材200は、2つの加工装置10A、10Bに取り付けられる。指標部材200は、第1部材210Aと、第2部材210Bとを備える。
【0057】
第1部材210Aは、2つの加工装置10A、10Bのうち一方に取り付けられる。図10及び図11に示す例では、第1部材210Aは、加工装置10Aのベッド11AにボルトBLによって固定される。第2部材210Bは、2つの加工装置10A、10Bのうち他方に取り付けられる。図10及び図11に示す例では、第2部材210Bは、加工装置10Bのベッド11BにボルトBLによって固定される。第1部材210A及び第2部材210Bは、ボルトBLによる固定の他に、例えば両面テープ等により固定されてもよい。
【0058】
第1部材210Aは、第1上下指標部30Aと、第1左右指標部40Aと、第1延在部50Aと、第1前後指標部60Aとを備える。第1延在部50Aは、水平面内において左右方向に直交する前後方向に延在して設けられる。第1延在部50Aは、第1部材210Aの下端51Aから-Z方向に延びるように設けられる。第1前後指標部60Aは、図11に示すように、第1延在部50Aにおいて左右方向に延びて設けられる。第1前後指標部60Aは、加工装置10Aにおいて前後方向の所定位置を示す。第1前後指標部60Aは、第1延在部50Aの一部を左右方向に切り欠いて設けられるスリット(以下、「第1前後スリット」という。)である。第1前後スリットの幅ΔZ1は、2つの加工装置10A、10Bの前後方向における相対位置のズレの許容量(以下、「前後ズレ許容量」という。)を示す。
【0059】
第2部材210Bは、左右方向において、第1部材21Aに並んで設けられ、かつ第1部材210Aに対して離間するように加工装置10Bに取り付けられる。第2部材21Bは、第2上下指標部30Bと、第2左右指標部40Bと、第2延在部50Bと、第2前後指標部60Bとを備える。第2延在部50Bは、水平面内において左右方向に直交する前後方向に延在して設けられる。第2延在部50Bは、第2部材210Bの下端51Bから-Z方向に延びるように設けられる。第2左右指標部40Bは、図11に示すように、第2延在部50Bにおいて左右方向に延びて設けられる。第2左右指標部40Bは、加工装置10Bにおいて前後方向の所定位置を示す。第2前後指標部60Bは、第2延在部50Bを左右方向に切り欠いて設けられるスリット(以下、「第2前後スリット」という。)である。第2前後スリットの幅ΔZ2は、2つの加工装置10A、10Bの前後方向における相対位置のズレの許容量である前後ズレ許容量を示す。なお、幅ΔZ1と幅ΔZ2とは、同一であるが、この形態に限定されず、幅ΔZ1と幅ΔZ2とが異なってもよい。
【0060】
続いて、指標部材200を用いた加工装置10A、10Bの前後方向の相対位置のズレの確認方法について説明する。なお、加工装置10A、10Bの上下方向及び左右方向におけるズレの確認方法については上記した第1実施形態の指標部材20と同様であるため説明を省略する。図12は、加工装置10A、10Bの前後方向の相対位置のズレの確認方法について説明する図である。第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとは、加工装置10Aと加工装置10Bとの前後方向の相対位置を示す手段として対を成す。
【0061】
加工装置10Aと加工装置10Bとの前後方向における相対位置にズレがない状態では、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとが左右方向において一直線上又はほぼ一直線上に並ぶように、第1部材210A及び第2部材210Bが固定されている(図11参照)。この状態が、加工装置10Aと加工装置10Bとの前後方向における所期の相対位置である。従って、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとで前後方向にズレが生じている場合は、そのズレが加工装置10Aと加工装置10Bとの前後方向の相対位置のズレを示すことになる。
【0062】
ここで、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bの少なくともいずれかは左右ズレ許容量を含んでいる。そのため、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとの前後方向のズレが前後ズレ許容量を超える場合には、加工装置10Aと加工装置10Bとの前後方向の相対位置のズレが許容範囲を超えていることを示す。一方、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとの前後方向のズレが前後ズレ許容量を超えていない場合には、加工装置10Aと加工装置10Bとの前後方向の相対位置のズレが許容範囲内であることを示す。
【0063】
例えば、図12(A)に示すように、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとが前後方向に相対位置のズレが生じたとしても、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとの一部が左右方向において対向しているならば、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとの前後方向のズレは、前後ズレ許容量を超えていないことを示す。つまり、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとのうち一方の前側部分(60AL又は60BL)が、他方の後ろ側部分(60AH又は60BH)を超えない限り、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとの前後方向のズレは、前後ズレ許容量を超えていないことを示す。従って、図12(A)に示す状態は、加工装置10Aと加工装置10Bとの前後方向の相対位置のズレが許容範囲内であることを示す。
【0064】
一方、図12(B)に示すように、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとの全てが左右方向において対向していない状態では、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとの前後方向のズレは、前後ズレ許容量を超えていることを示す。つまり、第1前後指標部60A及び第2前後指標部60Bの前側部分(60AL及び60BL)が後ろ側部分(60AH及び60BH)を超えているので、第1前後指標部60Aと第2前後指標部60Bとの前後方向のズレは前後ズレ許容量を超えていることを示す。従って、図12(B)に示す状態は、加工装置10Aと加工装置10Bとの前後方向の相対位置のズレが許容範囲を超えていることを示す。
【0065】
加工装置10Aと加工装置10Bとの前後方向における相対位置が前後ズレ許容量を超えている場合は、作業者による調整が必要となる。作業者は、例えば、加工装置10A又は加工装置10Bを移動させることにより、前後方向の相対位置を調整する。この調整時において、作業者は、第1前後指標部60A及び第2前後指標部60Bを見ながら作業することで、前後方向の相対位置を容易に調整できる。
【0066】
なお、指標部材200は、図13に示すように、接続片22を有してもよい。接続片22は、ジョイント部23を介して第1部材210Aと第2部材210Bとを連結する。また、接続片22は、ジョイント部23を破断させることで、第1部材210A及び第2部材210Bのそれぞれから切り離し可能である。接続片22を有する指標部材200は、第1実施形態の指標部材20と同様に、例えば、出荷前作業において工作機か1に取り付けられる。その後、接続片22が切り離されることで、図11及び図12に示すように、指標部材200は、2つの加工装置10A、10Bにおける上下方向、左右方向及び前後方向の相対位置のズレを識別可能な状態となる。
【0067】
このように、本実施形態によれば、上記した第1実施形態と同様に、2つの加工装置10A、10Bの上下方向及び左右方向におけるズレの発生を容易に確認できることに加えて、第1前後指標部60A及び第2前後指標部60Bを備えることで、作業者は、2つの加工装置10A、10Bの前後方向における相対位置を容易に確認することができる。
【0068】
上記した第1及び第2実施形態では、指標部として、第1上下指標部30A、第2上下指標部30B、第1左右指標部40A、第2左右指標部40B、第1前後指標部60A、及び第2前後指標部60Bがスリットである場合を例に挙げて説明したが、この形態に限定されない。図14(A)は、指標部として直線を用いた図であり、図14(B)は、指標部としてマークを用いた図である。図14(A)に示すように、指標部が直線300であってもよい。この場合、直線300の線幅ΔLは、上下、左右、又は前後のズレ許容量を示す。直線300は、レーザ加工などによって形成されてもよいし、塗料で表示されてもよい。また、直線300は、貼り付け可能なシールであってもよい。なお、2つの指標部のうち一方が直線300であり、他方が直線300以外のスリット等であってもよい。
【0069】
また、図14(B)に示すように、指標部が円形及び三角形などの種々の図形、記号を用いたマーク400であってもよい。この場合、マーク400は、ズレの許容範囲を示す図形が含まれてもよく、図14(B)に示すように、2つの図形(点状のマーク)の幅ΔLが上下、左右、又は前後のズレ許容量を示す形態であってもよい。なお、2つの指標部のうち一方がマーク400であり、他方がマーク400以外の直線300、スリット等であってもよい。
【0070】
以上、実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態に限定されない。また、上記した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、上記した実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記した実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、実施形態において示した各手順の実行順序は、前の手順の結果を後の手順で用いない限り、任意の順序で実現可能である。また、上記した実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。
【0071】
また、上記した実施形態では、加工装置10A及び加工装置10Bが同様の構成を備える場合を例に挙げて説明したが、この形態に限定されない。加工装置10Aと加工装置10Bとは、互いに異なる構成を有してもよい。
【符号の説明】
【0072】
W・・・ワーク
1・・・工作機械
10A、10B・・・加工装置
11A、11B・・・ベッド
20、200・・・指標部材
22・・・接続片
21A、210A・・・第1部材
21B、210B・・・第2部材
30A・・・第1上下指標部
30B・・・第2上下指標部
40A・・・第1左右指標部
40B・・・第2左右指標部
50A・・・第1延在部
50B・・・第2延在部
60A・・・第1前後指標部
60B・・・第2前後指標部

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