(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173572
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】乗員検知装置及び乗員検知方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/89 20060101AFI20231130BHJP
G01S 7/40 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01S13/89
G01S7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085910
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植松 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉沢 さつき
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC15
5J070AC20
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK22
(57)【要約】
【課題】乗員の姿勢を高精度に推定可能な乗員検知装置及び乗員検知方法を提供する。
【解決手段】乗員検知装置は、移動体の室内に向けて送信された送信波が室内に存在する物体に反射されることにより発生する反射波の強度に基づいて、室内で移動している物体の位置を室内の空間に対応する三次元マップ上で1以上の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する取得部と、点群情報に基づいて、1つの着座領域に対して互いに離間するように設定された複数の関心領域のそれぞれについて検知点の密度を示す点群密度を算出する演算部と、1つの着座領域に対応する複数の関心領域のそれぞれの点群密度に基づいて、当該着座領域に着座している乗員の着座姿勢を推定する姿勢推定部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の室内に向けて送信された送信波が前記室内に存在する物体に反射されることにより発生する反射波の強度に基づいて、前記室内で移動している物体の位置を前記室内の空間に対応する三次元マップ上で1以上の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する取得部と、
前記点群情報に基づいて、1つの着座領域に対して互いに離間するように設定された複数の関心領域のそれぞれについて前記検知点の密度を示す点群密度を算出する演算部と、
1つの前記着座領域に対応する複数の前記関心領域のそれぞれの前記点群密度に基づいて、当該着座領域に着座している乗員の着座姿勢を推定する姿勢推定部と、
を備える乗員検知装置。
【請求項2】
複数の前記関心領域は、前記着座領域の後部に設定された後部領域と、当該着座領域の前部に設定された前部領域とを含み、
前記姿勢推定部は、前記後部領域の前記点群密度及び前記前部領域の前記点群密度に基づいて、乗員の前屈み姿勢を検知する、
請求項1に記載の乗員検知装置。
【請求項3】
複数の前記関心領域は、前記着座領域の中央部に設定された中央領域と、当該着座領域の左端部に設定された左端領域又は当該着座領域の右端部に設定された右端領域の少なくとも一方と、を含み、
前記姿勢推定部は、前記中央領域の前記点群密度及び前記左端領域の前記点群密度、又は前記中央領域の前記点群密度及び前記右端領域の前記点群密度に基づいて、乗員が左右のいずれか一方に傾いたもたれ姿勢を検知する、
請求項1に記載の乗員検知装置。
【請求項4】
複数の前記関心領域は、前記着座領域の左端部に設定された左端領域と、当該着座領域の右端部に設定された右端領域とを含み、
前記姿勢推定部は、前記左端領域の前記点群密度及び前記右端領域の前記点群密度に基づいて、乗員が左右のいずれか一方に傾いたもたれ姿勢を検知する、
請求項1に記載の乗員検知装置。
【請求項5】
前記姿勢推定部による推定結果に基づいて、前記取得部により取得された前記点群情報から乗員が正常姿勢であるときに取得された正常点群情報を抽出し、前記正常点群情報に基づいて乗員の体格を推定する体格推定部、
を更に備える請求項1~4のいずれか1項に記載の乗員検知装置。
【請求項6】
移動体の室内に向けて送信された送信波が前記室内に存在する物体に反射されることにより発生する反射波の強度に基づいて、前記室内で移動している物体の位置を前記室内の空間に対応する三次元マップ上で1以上の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する工程と、
前記点群情報に基づいて、1つの着座領域に対して互いに離間するように設定された複数の関心領域のそれぞれについて前記検知点の密度を示す点群密度を算出する工程と、
1つの前記着座領域に対応する複数の前記関心領域のそれぞれの前記点群密度に基づいて、当該着座領域に着座している乗員の着座姿勢を推定する工程と、
を含む乗員検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗員検知装置及び乗員検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両制御システム等において、車室内に設置された電波センサやイメージセンサにより取得されるデータに基づいて乗員の姿勢や体格を推定する技術が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-298039号公報
【特許文献2】特開2020-104680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、乗員の姿勢を高精度に推定可能な乗員検知装置及び乗員検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態としての乗員検知装置は、移動体の室内に向けて送信された送信波が室内に存在する物体に反射されることにより発生する反射波の強度に基づいて、室内で移動している物体の位置を室内の空間に対応する三次元マップ上で1以上の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する取得部と、点群情報に基づいて、1つの着座領域に対して互いに離間するように設定された複数の関心領域のそれぞれについて検知点の密度を示す点群密度を算出する演算部と、1つの着座領域に対応する複数の関心領域のそれぞれの点群密度に基づいて、当該着座領域に着座している乗員の着座姿勢を推定する姿勢推定部と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、1つの着座領域に対して複数設定された関心領域のそれぞれの点群密度に基づいて乗員の姿勢が推定される。これにより、乗員の姿勢を高精度に推定できる。
【0007】
また、上記構成において、複数の関心領域は、着座領域の後部に設定された後部領域と、当該着座領域の前部に設定された前部領域とを含み、姿勢推定部は、後部領域の点群密度及び前部領域の点群密度に基づいて、乗員の前屈み姿勢を検知してもよい。
【0008】
上記構成によれば、乗員の前屈み姿勢を高精度に検知できる。
【0009】
また、上記構成において、複数の関心領域は、着座領域の中央部に設定された中央領域と、当該着座領域の左端部に設定された左端領域又は当該着座領域の右端部に設定された右端領域の少なくとも一方と、を含み、姿勢推定部は、中央領域の点群密度及び左端領域の点群密度、又は中央領域の点群密度及び右端領域の点群密度に基づいて、乗員が左右のいずれか一方に傾いたもたれ姿勢を検知してもよい。
【0010】
上記構成によれば、乗員のもたれ姿勢を高精度に検知できる。
【0011】
また、上記構成において、複数の関心領域は、着座領域の左端部に設定された左端領域と、当該着座領域の右端部に設定された右端領域とを含み、姿勢推定部は、左端領域の点群密度及び右端領域の点群密度に基づいて、乗員が左右のいずれか一方に傾いたもたれ姿勢を検知してもよい。
【0012】
上記構成によれば、乗員のもたれ姿勢の変化(例えば、左もたれ姿勢から右もたれ姿勢への変化、右もたれ姿勢から左もたれ姿勢への変化等)を高精度に検知できる。
【0013】
また、上記構成において、乗員検知装置は、姿勢推定部による推定結果に基づいて、取得部により取得された点群情報から乗員が正常姿勢であるときに取得された正常点群情報を抽出し、正常点群情報に基づいて乗員の体格を推定する体格推定部、を更に備えてもよい。
【0014】
上記構成によれば、乗員の体格を高精度に推定できる。
【0015】
また、本発明の他の実施形態としての乗員検知方法は、移動体の室内に向けて送信された送信波が室内に存在する物体に反射されることにより発生する反射波の強度に基づいて、室内で移動している物体の位置を室内の空間に対応する三次元マップ上で1以上の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する工程と、点群情報に基づいて、1つの着座領域に対して互いに離間するように設定された複数の関心領域のそれぞれについて検知点の密度を示す点群密度を算出する工程と、1つの着座領域に対応する複数の関心領域のそれぞれの点群密度に基づいて、当該着座領域に着座している乗員の着座姿勢を推定する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態の乗員検知装置が搭載される車両の車室内の構成の一例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の乗員検知装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の乗員検知装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の車室の鳥瞰視に対応する点群情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の車室の側面視に対応する点群情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の車室の上面視に対応する点群情報の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の車室の背面視に対応する点群情報の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の関心領域の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の点群密度と乗員の姿勢との関係の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の乗員検知装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第2実施形態の関心領域の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の点群密度と乗員の姿勢との関係の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態の乗員検知装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第3実施形態の関心領域の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態の点群密度と乗員の姿勢との関係の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第3実施形態の乗員検知装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに当該構成によりもたらされる作用、結果、及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によりも実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の乗員検知装置1が搭載される車両Cの車室R内の構成の一例を示す側面図である。図中、X方向は、車両Cの後部から前部へ向かう方向に対応し、Y方向は、車両Cの左側面から右側面へ向かう方向に対応し、Z方向は、車両Cの下部から上部へ向かう方向に対応している。
【0019】
車両Cは、移動体の一例であり、例えば内燃機関、モータ、又はそれらの双方(ハイブリッド機構)を駆動源とする自動車等であり得る。本実施形態の車両Cは、いわゆる3列シート車であり、第1シート列S1、第2シート列S2及び第3シート列S3を備えている。第1シート列S1には、運転席及び助手席が含まれる。
【0020】
乗員検知装置1は、車室R内に存在する乗員に関する乗員情報を取得する装置である。乗員情報には、乗員の姿勢、体格等を示す情報が含まれる。本実施形態では、第1シート列S1より後方、すなわち第2シート列S2及び第3シート列S3に存在する乗員に関する乗員情報を取得する場合について説明する。
【0021】
乗員検知装置1は、センサ2及び情報処理装置3を備える。センサ2は、車両Cの天井5に設置され、車室R内に向けて送信波を送信し、送信波が車室R内に存在する物体に反射されることにより発生する反射波を受信する。本実施形態のセンサ2は、第1シート列S1の背もたれ部より後方に設置され、
図1に示される例では、第2シート列S2の背もたれ部の略上方に位置している。情報処理装置3は、ダッシュボード内に設置され、センサ2とCAN(Controller Area Network)等のネットワークを介して接続している。なお、センサ2及び情報処理装置3の設置位置は上記に限定されるものではない。また、センサ2は複数設置されてもよい。
【0022】
図2は、第1実施形態の乗員検知装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。センサ2は、送信器21、受信器22、ECU(Electronic Control Unit)23及び入出力部24を備える。送信器21は、車室R内に所定の周波数(例えば60GHz~65GHz等)の電磁波を送信波として送信(照射)するデバイスである。受信器22は、送信波が車室R内に存在する物体に反射されることにより発生する反射波を受信し、反射波の強度を示す電気信号を生成するデバイスである。送信器21及び受信器22は、例えば、発振回路、圧電素子、ADコンバータ、増幅器、フィルタ回路等を利用して構成され得る。送信器21及び受信器22は、それぞれ別体として構成されてもよいし、一体的に構成されてもよい。ECU23は、CPU、メモリ等を利用して構成されるマイクロコントローラであり、送信器21及び受信器22の制御、受信器22により受信された反射波に基づくデータの生成等に関する処理を実行する。入出力部24は、情報処理装置3やその他のデバイスとの間でCAN等の所定の規格に準ずる通信を確立するインターフェースデバイスである。
【0023】
情報処理装置3は、CPU(Central Processing unit)31、メモリ32及び入出力部33を備える。CPU31は、メモリ32に記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行する。メモリ32は、適宜な揮発性メモリ及び不揮発性メモリを利用して構成され得る。メモリ32には、CPU31に乗員検知装置1の機能を実現するための各種処理を実行させるプログラム、設定データ、センサ2から取得したデータ、CPU31により生成されたデータ等が記憶される。入出力部33は、センサ2やその他のデバイスとの間でCAN等の所定の規格に準ずる通信を確立するインターフェースデバイスである。
【0024】
なお、
図2に示されるハードウェア構成は例示であり、乗員検知装置1のハードウェア構成は上記に限定されるものではない。
【0025】
図3は、第1実施形態の乗員検知装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の乗員検知装置1は、取得部101、演算部102、姿勢推定部103及び体格推定部104を備える。これらの機能部101~104は、例えば、
図2に例示されるようなハードウェア及びソフトウェア(プログラム)の協働により構成され得る。また、これらの機能部101~104の一部又は全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェア(回路等)により構成されてもよい。
【0026】
取得部101は、センサ2により受信される反射波の強度に基づいて、車室R内で移動している物体(移動物体)の位置を車室R内の空間に対応する三次元マップ上で1以上の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する。
【0027】
図4は、第1実施形態の車室Rの鳥瞰視に対応する点群情報201の一例を示す図である。
図5は、第1実施形態の車室Rの側面視(X-Z平面視)に対応する点群情報201の一例を示す図である。
図6は、第1実施形態の車室Rの上面視(X-Y平面視)に対応する点群情報201の一例を示す図である。
図7は、第1実施形態の車室Rの背面視(Y-Z平面視)に対応する点群情報201の一例を示す図である。
【0028】
ここで例示する点群情報201は、車室R内の空間に対応する三次元マップ(例えばボクセルマップ等)上に、移動物体の位置(例えば乗員10の身体のうち動いている部分が占める領域)に対応する1以上の点(例えばボクセル等)を検知点Pとしてプロットした情報である。どのような点を検知点Pとするかは使用するセンサ2の機能等に応じて適宜決定されるものであるが、例えば、検知点Pは、反射波の強度の単位時間あたりの変化量が予め定められた閾値より大きい点等であり得る。
【0029】
図4~
図7においては、第2シート列S2上に3つの着座領域R21~R23が設定され、第3シート列S3上に2つの着座領域R31,R32が設定されており、第2シート列S2の右端の着座領域R23に乗員が着座している場合が例示されている。このような場合、
図4~
図7に示されるように、三次元マップの着座領域R23の空間に対応する部分に、乗員の頭部、胸部、背部等に対応する複数の検知点Pからなる点群Gが出現する。点群情報201は、このような点群Gに関する情報、すなわち三次元マップ上に出現する複数の検知点Pの位置、個数等を示す情報を含む。
【0030】
演算部102(
図3参照)は、上記のような点群情報201に基づいて、1つの着座領域(着座領域R21~R23,R31,R32のうち少なくとも1つ)に対して互いに離間するように設定された複数の関心領域のそれぞれについて検知点Pの密度を示す点群密度を算出する。
【0031】
図8は、第1実施形態の関心領域の一例を示す図である。
図8には、第2シート列S2の右端の着座領域R23に設定された関心領域としての後部領域Rb及び前部領域Rfが例示されている。後部領域Rbは、着座領域R23の後部に設定された領域であり、本例では、着座領域R23の後端近傍部の座面から所定の高さ(例えばバックレストの上端より高い位置)までの空間を含むように設定されている。前部領域Rfは、着座領域R23の前部に設定された領域であり、本例では、着座領域R23の前端近傍部の座面から所定の高さまでの空間を含むように設定されている。このような後部領域Rb及び前部領域Rfeが着座領域毎に設定されている。なお、後部領域Rb及び前部領域Rfの設定の仕方は上記に限定されるものではなく、シート形状、センサ2の特性等に応じて適宜決定されるべきものである。
【0032】
図9は、第1実施形態の点群密度と乗員10の姿勢との関係の一例を示す図である。
図9に示されるように、乗員10が正常な状態で着座している正常姿勢である場合には、後部領域Rbの検知点Pが増加し、前部領域Rfの検知点Pが減少する。すなわち、乗員10が正常姿勢である場合には、後部領域Rbの点群密度が高くなり、前部領域Rfの点群密度が低くなる。一方、乗員10が上半身を前方に屈した前屈み姿勢である場合には、前部領域Rfの検知点Pが増加し、後部領域Rbの検知点Pが減少する。すなわち、乗員10が前屈み姿勢である場合には、前部領域Rfの点群密度が高くなり、後部領域Rbの点群密度が低くなる。本実施形態の演算部102は、上記のように後部領域Rb及び前部領域Rfのそれぞれについて点群密度を算出する。
【0033】
姿勢推定部103(
図3参照)は、1つの着座領域(例えば着座領域R23)に対応する複数の関心領域(本実施形態では後部領域Rb及び前部領域Rf)のそれぞれの点群密度に基づいて、当該着座領域(例えば着座領域R23)に着座している乗員10の着座姿勢を推定し、推定した着座姿勢を示す姿勢情報を生成する。本実施形態の姿勢推定部103は、後部領域Rbの点群密度及び前部領域Rfの点群密度に基づいて、乗員10の前屈み姿勢を検知する。前屈み姿勢であるか否かの判定手法は特に限定されるべきものではないが、例えば、後部領域Rbの点群密度が減少し、且つ前部領域Rfの点群密度が増加した場合に、乗員10が前屈み姿勢であると判定できる。例えば、前部領域Rfの点群密度から後部領域Rbの点群密度を減算した差分値が閾値以上である場合に、乗員10が前屈み姿勢であると判定してもよい。
【0034】
体格推定部104は、取得部101により取得された点群情報及び姿勢推定部103により生成された姿勢情報に基づいて乗員10の体格を推定し、推定した体格を示す体格情報を生成する。体格情報は、車両Cを制御するための各種ECUに出力され、各種用途(例えばシートベルトリマインダ等)に利用される。本実施形態の体格推定部104は、姿勢情報に基づいて、取得部101により取得された点群情報から乗員10が正常姿勢であるときに取得された点群情報である正常点群情報を抽出し、正常点群情報に基づいて乗員10の体格を推定する。これにより、体格推定の精度を向上させることができる。
【0035】
図10は、第1実施形態の乗員検知装置1における処理の一例を示すフローチャートである。取得部101がある着座領域(以下、着座領域R23とする)の後部領域Rb及び前部領域Rfのそれぞれの点群情報を取得すると(S101)、演算部102は後部領域Rbの点群密度ρb及び前部領域Rfの点群密度ρfを算出する(S102)。その後、姿勢推定部103は前部領域Rfの点群密度ρfから後部領域Rbの点群密度ρbを減算した差分値が閾値K1より大きい(ρf-ρb>K1)か否かを判定し(S103)、ρf-ρb>K1である場合(S103:Yes)、姿勢推定部103は着座領域R23に着座している乗員10が前屈み姿勢であると判定する(S104)。その後、体格推定部104は取得部101により取得された当該着座領域R23の点群情報から乗員10が前屈み姿勢でなかったとき(正常姿勢であったとき)に取得された正常点群情報を抽出し(S106)、正常点群情報に基づいて乗員10の体格を推定する(S107)。
【0036】
ρf-ρb>K1でない場合(S103:No)、姿勢推定部103は着座領域R23に着座している乗員10が正常姿勢であると判定し(S105)、体格推定部104は現在の点群情報に基づいて乗員10の体格を推定する(S107)。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、1つの着座領域(着座領域R21~R23,R31,R32のうちの少なくとも1つ)に対して複数設定された関心領域としての後部領域Rb及び前部領域Rfのそれぞれの点群密度に基づいて乗員10の姿勢が推定される。これにより、乗員10の前屈み姿勢を高精度に検知できる。また、乗員10が正常姿勢であるときに取得された点群情報に基づいて乗員10の体格の推定がされるため、乗員10の体格を高精度に推定できる。
【0038】
以下、他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1実施形態と同一又は同様の箇所についてはその説明を省略する場合がある。
【0039】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態の関心領域の一例を示す図である。本実施形態にかかる関心領域は、左端領域Rl、右端領域Rr及び中央領域Rcを含む。左端領域Rlは、着座領域R21~R23,R31,R32の左端部に設定されている。右端領域Rrは、着座領域R21~R23,R31,R32の右端部に設定されている。中央領域Rcは、着座領域R21~R23,R31,R32の中央部に設定されている。
図11に示される例では、左端領域Rlは、着座領域R23の左端より外側の領域であり、コンソール51の一部を含むように設定されている。右端領域Rrは、着座領域R23の右端より外側の領域であり、着座領域R23の右端からサイドドア52の内面までの空間を含むように設定されている。中央領域Rcは、着座領域R23の中央部を含み、着座領域R23の左右の端部を含まないように設定されている。なお、左端領域Rl、右端領域Rr及び中央領域Rcの設定方法は上記に限定されるものではない。
【0040】
図12は、第2実施形態の点群密度と乗員10の姿勢との関係の一例を示す図である。
図12に示されるように、乗員10が正常な状態で着座している正常姿勢である場合には、中央領域Rcの検知点Pが増加し、左端領域Rl及び右端領域Rrの検知点Pが減少する。すなわち、乗員10が正常姿勢である場合には、中央領域Rcの点群密度が高くなり、左端領域Rl及び右端領域Rrの点群密度が低くなる。乗員10が上半身を左側に傾けて車室R内の物体(例えばコンソール51等)にもたれかかっている左もたれ姿勢である場合には、左端領域Rlの検知点Pが増加し、中央領域Rcの検知点Pが減少する。乗員10が上半身を右側に傾けて車室R内の物体(例えばサイドドア52等)にもたれかかっている右もたれ姿勢である場合には、右端領域Rrの検知点Pが増加し、中央領域Rcの検知点Pが減少する。
【0041】
本実施形態の演算部102は、上記のように左端領域Rl、右端領域Rr及び中央領域Rcのそれぞれについて点群密度を算出する。また、本実施形態の姿勢推定部103は、左端領域Rlの点群密度、右端領域Rrの点群密度及び中央領域Rcの点群密度に基づいて、乗員10の左もたれ姿勢及び右もたれ姿勢を検知する。もたれ姿勢であるか否かの判定手法は特に限定されるべきものではないが、例えば、中央領域Rcの点群密度が減少し、且つ左端領域Rlの点群密度が増加した場合に、乗員10が左もたれ姿勢であると判定できる。例えば、左端領域Rlの点群密度から中央領域Rcの点群密度を減算した差分値が閾値以上である場合に、乗員10が左もたれ姿勢であると判定してもよい。また、中央領域Rcの点群密度が減少し、且つ右端領域Rrの点群密度が増加した場合に、乗員10が右もたれ姿勢であると判定できる。例えば、右端領域Rrの点群密度から中央領域Rcの点群密度を減算した差分値が閾値以上である場合に、乗員10が右もたれ姿勢であると判定してもよい。
【0042】
図13は、第2実施形態の乗員検知装置1における処理の一例を示すフローチャートである。取得部101がある着座領域(以下、着座領域R23とする)の左端領域Rl、右端領域Rr及び中央領域Rcのそれぞれの点群情報を取得すると(S201)、演算部102は左端領域Rlの点群密度ρl、右端領域Rrの点群密度ρr及び中央領域Rcの点群密度ρcを算出する(S202)。その後、姿勢推定部103は左端領域Rlの点群密度ρlから中央領域Rcの点群密度ρcを減算した差分値が閾値K2より大きい(ρl-ρc>K2)か否かを判定し(S203)、ρl-ρc>K2である場合(S203:Yes)、姿勢推定部103は着座領域R23に着座している乗員10が左もたれ姿勢であると判定する(S204)。その後、体格推定部104は取得部101により取得された当該着座領域R23の点群情報から乗員10が正常姿勢であったときに取得された正常点群情報を抽出し(S205)、正常点群情報に基づいて乗員10の体格を推定する(S206)。
【0043】
ρl-ρc>K2でない場合(S203:No)、姿勢推定部103は右端領域Rrの点群密度ρrから中央領域Rcの点群密度ρcを減算した差分値が閾値K3より大きい(ρr-ρc>K3)か否かを判定する(S207)。ρr-ρc>K3である場合(S207:Yes)、姿勢推定部103は着座領域R23に着座している乗員10が右もたれ姿勢であると判定する(S208)。その後、体格推定部104は取得部101により取得された当該着座領域R23の点群情報から乗員10が正常姿勢であったときに取得された正常点群情報を抽出し(S205)、正常点群情報に基づいて乗員10の体格を推定する(S206)。
【0044】
ρr-ρc>K3でない場合(S207:No)、姿勢推定部103は着座領域R23に着座している乗員10が正常姿勢であると判定し(S209)、体格推定部104は現在の点群情報に基づいて乗員10の体格を推定する(S206)。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、1つの着座領域(着座領域R21~R23,R31,R32のうちの少なくとも1つ)に対して複数設定された関心領域としての左端領域Rl、右端領域Rr及び中央領域Rcのそれぞれの点群密度に基づいて乗員10の姿勢が推定される。これにより、乗員10の左もたれ姿勢及び右もたれ姿勢を高精度に検知できる。
【0046】
なお、上記においては、左端領域Rl及び右端領域Rrが設定される例を示したが、左端領域Rl又は右端領域Rrのうちいずれか一方のみが設定されてもよい。例えば、中央領域Rcと左端領域Rlのみが設定される場合、中央領域Rcの点群密度と左端領域Rlの点群密度との関係に基づいて、乗員10の左もたれ姿勢を検知できる。同様に、中央領域Rcと右端領域Rrのみが設定される場合、中央領域Rcの点群密度と右端領域Rrの点群密度との関係に基づいて、乗員10の右もたれ姿勢を検知できる。
【0047】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態の関心領域の一例を示す図である。本実施形態にかかる関心領域は、左端領域Rl及び右端領域Rrを含む。すなわち、第2実施形態とは中央領域Rcが設定されていない点で相違している。左端領域Rlは、着座領域R21~R23,R31,R32の左端部に設定されている。右端領域Rrは、着座領域R21~R23,R31,R32の右端部に設定されている。
図14に示される例では、左端領域Rlは、着座領域R23の左端より外側の領域であり、コンソール51の一部を含むように設定されている。右端領域Rrは、着座領域R23の右端より外側の領域であり、着座領域R23の右端からサイドドア52の内面までの空間を含むように設定されている。なお、左端領域Rl及び右端領域Rrの設定方法は上記に限定されるものではない。
【0048】
図15は、第3実施形態の点群密度と乗員10の姿勢との関係の一例を示す図である。
図15に示されるように、乗員10が左もたれ姿勢である場合には、左端領域Rlの検知点Pが増加し、右端領域Rrの検知点Pが減少する。乗員10が右もたれ姿勢である場合には、右端領域Rrの検知点Pが増加し、左端領域Rlの検知点Pが減少する。
【0049】
本実施形態の演算部102は、上記のように左端領域Rl及び右端領域Rrのそれぞれについて点群密度を算出する。また、本実施形態の姿勢推定部103は、左端領域Rlの点群密度及び右端領域Rrの点群密度に基づいて、乗員10の左もたれ姿勢及び右もたれ姿勢を検知する。例えば、右端領域Rrの点群密度が減少し、且つ左端領域Rlの点群密度が増加した場合には、乗員10の姿勢が右もたれ姿勢から左もたれ姿勢に変化したと判定できる。例えば、左端領域Rlの点群密度から右端領域Rrの点群密度を減算した差分値が閾値以上である場合に、乗員10が左もたれ姿勢であると判定してもよい。また、左端領域Rlの点群密度が減少し、且つ右端領域Rrの点群密度が増加した場合には、乗員10の姿勢が左もたれ姿勢から右もたれ姿勢に変化したと判定できる。例えば、右端領域Rrの点群密度から左端領域Rlの点群密度を減算した差分値が閾値以上である場合に、乗員10が右もたれ姿勢であると判定してもよい。また、左もたれ姿勢でも右もたれ姿勢でもない場合には、乗員10は正常姿勢であると判定してもよい。
【0050】
図16は、第3実施形態の乗員検知装置1における処理の一例を示すフローチャートである。取得部101がある着座領域(以下、着座領域R23とする)の左端領域Rl及び右端領域Rrの点群情報を取得すると(S301)、演算部102は左端領域Rlの点群密度ρl及び右端領域Rrの点群密度ρrを算出する(S302)。その後、姿勢推定部103は右端領域Rrの点群密度ρrから左端領域Rlの点群密度ρlを減算した差分値が閾値K4より大きい(ρr-ρl>K4)か否かを判定し(S303)、ρr-ρl>K4である場合(S303:Yes)、姿勢推定部103は着座領域R23に着座している乗員10が左もたれ姿勢から右もたれ姿勢に変わったと判定する(S304)。その後、体格推定部104は取得部101により取得された当該着座領域R23の点群情報から乗員10が正常姿勢であったときに取得された正常点群情報を抽出し(S305)、正常点群情報に基づいて乗員10の体格を推定する(S306)。
【0051】
ρr-ρl>K4でない場合(S303:No)、姿勢推定部103は左端領域Rlの点群密度ρlから右端領域Rrの点群密度ρrを減算した差分値が閾値K5より大きい(ρl-ρr>K5)か否かを判定する(S307)。ρl-ρr>K5である場合(S307:Yes)、姿勢推定部103は着座領域R23に着座している乗員10が右もたれ姿勢から左もたれ姿勢に変わったと判定する(S308)。その後、体格推定部104は取得部101により取得された当該着座領域R23の点群情報から乗員10が正常姿勢であったときに取得された正常点群情報を抽出し(S305)、正常点群情報に基づいて乗員10の体格を推定する(S306)。
【0052】
ρl-ρr>K5でない場合(S307:No)、姿勢推定部103は着座領域R23に着座している乗員10が正常姿勢であると判定し(S309)、体格推定部104は現在の点群情報に基づいて乗員10の体格を推定する(S306)。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、着座領域R21~R23,R31,R32毎に設定された関心領域としての左端領域Rl及び右端領域Rrのそれぞれの点群密度に基づいて乗員10の姿勢が推定される。これにより、乗員10の左もたれ姿勢及び右もたれ姿勢を高精度に検知できる。
【0054】
上述したような実施形態の乗員検知装置1の機能を実現するための処理をコンピュータ(情報処理装置3)に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…乗員検知装置、2…センサ、3…情報処理装置、5…天井、10…乗員、21…送信器、22…受信器、23…ECU、24…入出力部、31…CPU、32…メモリ、33…入出力部、101…取得部、102…演算部、103…姿勢推定部、104…体格推定部、201…点群情報、C…車両、G…点群、P…検知点、R…車室、R21~R23,R31,R32…着座領域、Rb…後部領域、Rc…中央領域、Rf…前部領域、Rl…左端領域、Rr…右端領域、S1…第1シート列、S2…第2シート列、S3…第3シート列