(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173573
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】翼保管装置、及び翼保管方法
(51)【国際特許分類】
B25H 3/04 20060101AFI20231130BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20231130BHJP
F01D 25/28 20060101ALI20231130BHJP
B66C 1/66 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B25H3/04
F01D25/00 X
F01D25/28 E
B66C1/66 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085911
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】樋口 覚
(72)【発明者】
【氏名】松本 一也
(72)【発明者】
【氏名】持田 俊輔
【テーマコード(参考)】
3C012
3F004
【Fターム(参考)】
3C012BJ02
3F004EA03
(57)【要約】
【課題】翼を安定した状態で移動させ、容易に翼を架台に取り付ける。
【解決手段】翼保管装置は、翼が有する回転軸の翼高さ方向の端に接続可能な吊り具と、前記回転軸と前記吊り具とを接続可能な接続具と、前記接続具により前記翼と前記吊り具とが接続された吊下げ対象物を吊下げ可能な架台と、を備える。前記吊り具は、溝形部材と、ワイヤ取付部と、を有する。前記溝形部材は、互に間隔をあけて配置されている一対のフランジ部と、一対のフランジ部相互を連結しているウェブ部と、を有する。一対のフランジ部のうちの第一フランジ部に前記ワイヤ取付部が接続されている。前記架台は、前記溝形部材の開口から前記溝形部材の前記棒挿入空間に挿入されて、前記吊下げ対象物を吊下げ可能の懸架棒を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸流回転機械の翼であって、断面が翼形を成し前記断面に対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向に延びる翼体と、前記翼体の前記翼高さ方向の端に設けられている回転軸と、を有する翼を保管可能な翼保管装置において、
前記回転軸の前記翼高さ方向の端に接続可能な吊り具と、
前記回転軸と前記吊り具とを接続可能な接続具と、
前記接続具により前記翼と前記吊り具とが接続された吊下げ対象物を吊下げ可能な架台と、
を備え、
前記吊り具は、溝形部材と、前記溝形部材に設けられワイヤを取り付け可能なワイヤ取付部と、を有し
前記溝形部材は、互に間隔をあけて配置されている一対のフランジ部と、一対のフランジ部相互を連結しているウェブ部と、を有し、
前記一対のフランジ部の両端のうち、一方の端が前記ウェブ部に連結され、他方の端が開口端を成し、前記一対のフランジ部と前記ウェブ部で囲まれた空間が棒挿入空間を成し、前記一対のフランジ部の前記開口端の相互間が開口を成し、
前記一対のフランジ部の一方のフランジ部である第一フランジ部と他方のフランジ部である第二フランジ部とのうち、前記第二フランジ部は、前記接続具により前記回転軸の端面と接続可能に構成され、
前記架台は、前記溝形部材の前記開口から前記棒挿入空間に挿入されて、前記吊下げ対象物を吊下げ可能の少なくとも一の懸架棒と、前記少なくとも一の懸架棒が第一水平方向に延びている状態で前記懸架棒を支える支持台と、を有する、
翼保管装置。
【請求項2】
請求項1に記載の翼保管装置において、
前記ワイヤ取付部は、前記第一フランジ部に設けられ、
前記ワイヤ取付部は、ワイヤが挿通可能な挿通部を有する、
翼保管装置。
【請求項3】
請求項2に記載の翼保管装置において、
前記ワイヤ取付部は、前記第一フランジ部に対して揺動可能に取り付けられているシャックルを有する、
翼保管装置。
【請求項4】
請求項1に記載の翼保管装置において、
前記第二フランジ部には、前記第一フランジ部と前記第二フランジ部とが並んでいる方向に貫通しているボルト挿通孔が形成され、
前記接続具は、前記ボルト挿通孔に挿通可能な接続ボルトである、
翼保管装置。
【請求項5】
請求項4に記載の翼保管装置において、
前記吊り具は、前記溝形部材の前記ボルト挿通孔から前記接続ボルトが抜けるのを抑制するボルト抜止具を有する、
翼保管装置。
【請求項6】
請求項1に記載の翼保管装置において、
前記懸架棒が前記棒挿入空間内からの離脱を抑制可能な離脱抑制機構を備える、
翼保管装置。
【請求項7】
請求項6に記載の翼保管装置において、
前記離脱抑制機構は、前記棒挿入空間内に位置している前記懸架棒に、前記溝形部材の前記ウェブ部を押し付け可能な機構である、
翼保管装置。
【請求項8】
請求項1に記載の翼保管装置において、
前記架台は、前記懸架棒に吊下げられている状態における前記吊下げ対象物の水平方向の揺れを抑制可能な横揺れ抑制機構を有し、
前記横揺れ抑制機構は、前記懸架棒に吊下げられている状態における前記吊下げ対象物中の前記翼に対して水平方向で対向可能な横揺れ抑制棒を有し、
前記横揺れ抑制棒は、水平方向であって前記第一水平方向に対して垂直な第二水平方向に延びている状態で、前記支持台に支持されている、
翼保管装置。
【請求項9】
請求項1に記載の翼保管装置において、
前記少なくとも一の懸架棒は、互いに平行に配置されている複数の懸架棒を有し、
前記支持台は、水平方向であって前記第一水平方向に対して垂直な第二水平方向に延びて、複数の前記懸架棒を前記第二水平方向で互いの間隔があくように支持する棒支持梁を有し、
前記第二水平方向における複数の前記懸架棒の相互間隔は、複数の前記懸架棒のそれぞれに吊下げられている前記吊下げ対象物相互が接触不能な間隔である、
翼保管装置。
【請求項10】
請求項9に記載の翼保管装置において、
前記複数の懸架棒のそれぞれは、前記吊下げ対象物を吊下げ可能な第一吊下げ部及び第二吊下げ部を有し、
前記第一吊下げ部と前記第二吊下げ部とは、前記第一水平方向で互いに間隔をあけて、前記第一水平方向に並び、
前記第一水平方向における前記第一吊下げ部と前記第二吊下げ部との相互間隔は、前記第一吊下げ部で吊下げられている前記吊下げ対象物と前記第二吊下げ部で吊下げられている前記吊下げ対象物とが接触不能な間隔である、
翼保管装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の翼保管装置を用いた翼保管方法において、
前記軸流回転機械のケーシングから前記翼を外す翼取外工程と、
前記翼と前記吊り具とを前記接続具で接続する吊り具接続工程と、
前記吊り具の前記ワイヤ取付部にワイヤを取り付けるワイヤ取付工程と、
前記吊下げ対象物が前記ワイヤで吊られている状態で、前記吊下げ対象物が前記少なくとも一の懸架棒に吊下げられるよう、前記吊下げ対象物を移動させる対象物移動工程と、
前記対象物移動工程後の前記吊下げ対象物から前記ワイヤを取り外すワイヤ取外工程と、
を実行する翼保管方法。
【請求項12】
請求項11に記載の翼保管方法において、
前記翼取外工程の実行後に、前記吊り具接続工程を実行する、
翼保管方法。
【請求項13】
請求項11に記載の翼保管方法において、
前記吊り具接続工程を実行後に、前記翼取外工程を実行する、
翼保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸流回転機械の翼を保管するための翼保管装置、及びこの装置を用いた翼保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流回転機械の翼を保管方法としては、例えば、保管場所の床面にシートを敷き、このシートの上に翼を置く方法の他、以下の特許文献1に記載の架台に載置する方法等がある。
【0003】
特許文献1の方法で、対象とする翼は、翼体と、軸と、を有する。翼体は、断面が翼形を成している。翼体は、この断面に対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向に延びている。この軸は、この翼体の翼高さ方向の一方側に設けられている。この軸には、翼高さ方向に凹んだ軸穴が形成されている。
【0004】
特許文献1に記載の方法で用いる架台は、載置台と、支持軸と、を有する。支持軸の外径は、翼の軸穴に挿通可能な外径である。この支持軸は、載置台から鉛直上方に向かって延びるよう、載置台の上に固定されている。
【0005】
翼を移動させる場合、ストリング等を翼に掛け、このストリング等を介して翼を吊った状態で、この翼を移動させる。この際、翼体に対して軸が下側になっている状態で、翼体の縁であって軸側の縁にストリング等を掛ける。翼を架台に載せる場合、吊られている翼の軸穴に、架台の支持軸を入れる。翼自体の荷重は、基本的に載置台で受け、翼に対する横荷重を支持軸で受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、翼高さ方向を鉛直方向にして、翼を保管するため、翼の保管場所の面積を小さくできる、というメリットがある。
【0008】
特許文献1に記載の方法では、前述したように、翼体に対して軸が下側になっている状態で、翼体の縁であって軸側の縁にストリング等を掛け、このストリング等を介して翼を吊った状態で移動させるため、翼の重心が吊り位置よりも上になる。このため、特許文献1に記載の方法では、移動中の翼が不安定で、翼が倒れて、翼がストリング等から落下しないよう、細心の注意を払う必要がある。
【0009】
また、特許文献1に記載の方法では、翼の軸穴に支持軸を入れる際、支持軸に対する軸穴の第一水平方向及び第二水平方向における位置を正確に合わせる必要がある。このため、特許文献1に記載の方法では、翼の架台への取り付けが面倒である。
【0010】
そこで、本開示は、翼を安定した状態で移動させ、翼の架台への取り付けが容易な翼保管装置、及び翼保管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための発明に係る一態様の翼保管装置は、
軸流回転機械の翼であって、断面が翼形を成し前記断面に対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向に延びる翼体と、前記翼体の前記翼高さ方向の端に設けられている回転軸と、を有する翼を保管可能な翼保管装置において、前記回転軸の前記翼高さ方向の端に接続可能な吊り具と、前記回転軸と前記吊り具とを接続可能な接続具と、前記接続具により前記翼と前記吊り具とが接続された吊下げ対象物を吊下げ可能な架台と、を備える。前記吊り具は、溝形部材と、前記溝形部材に設けられワイヤを取り付け可能なワイヤ取付部と、を有する。前記溝形部材は、互に間隔をあけて配置されている一対のフランジ部と、一対のフランジ部相互を連結しているウェブ部と、を有する。前記一対のフランジ部の両端のうち、一方の端が前記ウェブ部に連結され、他方の端が開口端を成す。前記一対のフランジ部と前記ウェブ部で囲まれた空間が棒挿入空間を成す。前記一対のフランジ部の前記開口端の相互間が開口を成す。前記一対のフランジ部の一方のフランジ部である第一フランジ部と他方のフランジ部である第二フランジ部とのうち、前記第二フランジ部は、前記接続具により前記回転軸の端面と接続可能に構成されている。前記架台は、前記溝形部材の前記開口から前記棒挿入空間に挿入されて、前記吊下げ対象物を吊下げ可能の少なくとも一の懸架棒と、前記少なくとも一の懸架棒が第一水平方向に延びている状態で前記懸架棒を支える支持台と、を有する。
【0012】
本態様では、架台の懸架棒に吊下げ対象物を吊下げた状態では、この吊下げ対象物中の翼の翼高さ方向が鉛直方向になるため、翼の保管場所の面積を小さくすることができる。
【0013】
本態様では、翼おける翼高さ方向の端に吊り具を接続し、この吊り具にワイヤを取り付けるので、このワイヤで、翼を含む吊下げ対象物を吊った際、翼の重心は、ワイヤによる吊り位置よりも下に位置することになる。このため、本態様では、翼を安定した状態で移動させることができる。
【0014】
本態様では、吊下げ対象物中の溝形部材における開口のレベルを懸架棒のレベルに合わせた後、吊下げ対象物を水平方向に移動させることで、懸架棒が溝形部材の開口から溝形部材の棒挿入空間内に入って、吊下げ対象物が架台の懸架棒に取り付けられる。よって、本態様では、翼を容易に架台に取り付けることができる。
【0015】
前記目的を達成するための発明に係る一態様の翼保管方法は、
前記一態様の翼保管装置を用いた翼保管方法である。
この翼保管方法では、前記軸流回転機械のケーシングから前記翼を外す翼取外工程と、前記翼と前記吊り具とを前記接続具で接続する吊り具接続工程と、前記吊り具の前記ワイヤ取付部にワイヤを取り付けるワイヤ取付工程と、前記吊下げ対象物が前記ワイヤで吊られている状態で、前記吊下げ対象物が前記少なくとも一の懸架棒に吊下げられるよう、前記吊下げ対象物を移動させる対象物移動工程と、前記対象物移動工程後の前記吊下げ対象物から前記ワイヤを取り外すワイヤ取外工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、翼を安定した状態で移動させ、容易に翼を架台に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
【
図2】本開示に係る一実施形態における案内翼の側面図である。
【
図3】本開示に係る一実施形態における可変静翼の側面図である。
【
図4】本開示に係る一実施形態における翼保管装置の要部斜視図である。
【
図5】本開示に係る一実施形態における吊り具の側面図である。
【
図6】本開示に係る一実施形態における吊り具の平面図である。
【
図7】本開示に係る一実施形態におけるボルト抜止具の斜視図である。
【
図8】本開示に係る一実施形態における案内翼用の架台の斜視図である。
【
図9】本開示に係る一実施形態における案内翼用の架台の側面図である。
【
図10】本開示に係る一実施形態における案内翼用の架台の平面図である。
【
図11】本開示に係る一実施形態における案内翼用の架台の背面図である。
【
図12】本開示に係る一実施形態における吊り具及び離脱抑制機構の側面図である。
【
図13】本開示に係る一実施形態における吊り具及び離脱抑制機構の平面図である。
【
図14】本開示に係る一実施形態における横揺れ抑制機構を備える架台の要部斜視図である。
【
図15】本開示に係る一実施形態における案内翼の保管方法の手順を示すフローチャートである。
【
図16】本開示に係る一実施形態における案内翼に関する翼取外工程を示す説明図である。
【
図17】本開示に係る一実施形態における案内翼と吊り具とを接続する吊り具接続工程を示す説明図である。
【
図18】本開示に係る一実施形態における対象物移動工程を示す説明図である。
【
図19】本開示に係る一実施形態における可変静翼用の架台の側面図である。
【
図20】本開示に係る一実施形態における可変静翼の保管方法の手順を示すフローチャートである。
【
図21】本開示に係る一実施形態における可変静翼と吊り具とを接続する吊り具接続工程を示す説明図である。
【
図22】本開示に係る一実施形態における可変静翼に関する吊り具接続工程、ワイヤ取付工程、及び翼取外工程を示す説明図である。
【
図23】本開示に係る一実施形態の変形例における吊り具及び離脱抑制機構の側面図である。
【
図24】本開示に係る一実施形態の変形例における吊り具及び離脱抑制機構の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
「軸流回転機械の実施形態」
まず、本開示で対象とする翼を備えた軸流回転機械の実施形態について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の軸流回転機械は、
図1に示すように、ガスタービンである。
【0021】
本実施形態のガスタービンは、空気Aを圧縮する軸流圧縮機10と、軸流圧縮機10で圧縮された空気A中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスCを生成する複数の燃焼器20と、燃焼ガスCにより駆動するタービン30と、を備えている。
【0022】
軸流圧縮機10は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を覆う圧縮機ケーシング14と、複数の静翼列15と、案内翼列16と、を有する。タービン30は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ31と、タービンロータ31を覆うタービンケーシング34と、複数の静翼列35と、を有する。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、その反対側を軸線下流側Dadとする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0023】
軸流圧縮機10は、タービン30に対して軸線上流側Dauに配置されている。
【0024】
圧縮機ロータ11とタービンロータ31とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ1を成す。このガスタービンロータ1には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービンは、さらに、中間ケーシング5を備える。この中間ケーシング5は、軸線方向Daで、圧縮機ケーシング14とタービンケーシング34との間に配置されている。圧縮機ケーシング14と中間ケーシング5とタービンケーシング34とは、互いに接続されてガスタービンケーシング4を成す。
【0025】
圧縮機ロータ11は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸12と、このロータ軸12に取り付けられている複数の動翼列13と、を有する。複数の動翼列13は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列13は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列13の各軸線下流側Dadには、複数の静翼列15のうちのいずれか一の静翼列15が配置されている。各静翼列15は、圧縮機ケーシング14の内側に設けられている。各静翼列15は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。複数の静翼列15のうち、軸線上流側Dauから第一番目の静翼列15及び第二番目の静翼列15を構成する翼は、いずれも可変静翼50である。圧縮機ケーシング14内で、複数の動翼列13よりも軸線上流側Dauの位置には、案内翼列16が配置されている。この案内翼列16は、周方向Dcに並んでいる複数の案内翼40で構成されている。複数の案内翼40の向きは、案内翼駆動機構17により、変えられる。また、複数の可変静翼50の向きは、静翼駆動機構18により、変えられる。
【0026】
タービンロータ31は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸32と、このロータ軸32に取り付けられている複数の動翼列33と、を有する。複数の動翼列33は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列33は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列33の各軸線上流側Dauには、複数の静翼列35のうちのいずれか一の静翼列35が配置されている。各静翼列35は、タービンケーシング34の内側に設けられている。各静翼列35は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0027】
軸流圧縮機10で圧縮された空気Aは、燃焼器20内に流入する。また、燃焼器20には、外部から燃料Fが供給される。燃焼器20は、圧縮された空気A中で燃料Fを燃焼させて、高温且つ高圧の燃焼ガスCを生成する。この燃焼ガスCは、タービン30に送られ、タービン30を駆動する。
【0028】
前述の案内翼40は、
図2に示すように、翼体41と、ケーシング側回転軸42と、を有する。翼体41は、断面41sが翼形を成し、この断面41sに対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向Dhに延びている。ここで、翼高さ方向Dhの一方側を翼高さ第一側Dh1とし、翼高さ方向Dhの他方の側を翼高さ第二側Dh2とする。ケーシング側回転軸42は、翼体41の翼高さ第一側Dh1に設けられている。このケーシング側回転軸42は、翼高さ方向Dhに延びている。ケーシング側回転軸42にはネジ穴42hが形成されている。このネジ穴42hは、ケーシング側回転軸42の翼高さ第一側Dh1の端面42pから翼高さ第二側Dh2に凹んでいる。このケーシング側回転軸42は、圧縮機ケーシング14を貫通し、前述の案内翼駆動機構17に接続されている。よって、案内翼40が圧縮機ケーシング14に取り付けられている状態では、翼体41に対してケーシング側回転軸42が設けられている翼高さ第一側Dh1が径方向外側Droになり、翼高さ第二側Dh2が径方向内側Driになる。
【0029】
前述の可変静翼50は、
図3に示すように、翼体51と、ケーシング側回転軸52と、ロータ側回転軸53と、を有する。翼体51は、断面51sが翼形を成し、この断面51sに対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向Dhに延びている。ロータ側回転軸53は、翼体51の翼高さ第二側Dh2に設けられている。このロータ側回転軸53は、翼高さ方向Dhに延びている。ロータ側回転軸53にはネジ穴53hが形成されている。このネジ穴53hは、ロータ側回転軸53の翼高さ第二側Dh2の端面53pから翼高さ第一側Dh1に凹んでいる。ケーシング側回転軸52は、翼体51の翼高さ第一側Dh1に設けられている。このケーシング側回転軸52は、翼高さ方向Dhに延びている。ケーシング側回転軸52にはネジ穴52hが形成されている。このネジ穴52hは、ケーシング側回転軸52の翼高さ第一側Dh1の端面52pから翼高さ第二側Dh2に凹んでいる。このケーシング側回転軸52は、圧縮機ケーシング14を貫通し、前述の静翼駆動機構18に接続されている。よって、可変静翼50が圧縮機ケーシング14に取り付けられている状態では、翼体51に対してケーシング側回転軸52が設けられている翼高さ第一側Dh1が径方向外側Droになり、翼高さ第二側Dh2が径方向内側Driになる。
【0030】
本開示で対象とする翼は、以上で説明した案内翼40及び可変静翼50である。
【0031】
「案内翼の保管装置及び保管方法の実施形態」
次に、案内翼の保管装置及び保管方法の実施形態について、
図4~
図18を参照して説明する。
【0032】
図4に示すように、案内翼40の保管装置Sは、吊り具60と、接続具78と、架台80と、を備える。吊り具60は、案内翼40のケーシング側回転軸42における翼高さ方向Dhの端に接続可能である。接続具78は、ケーシング側回転軸42と吊り具60とを接続可能である。架台80は、接続具78により案内翼40と吊り具60とが接続された吊下げ対象物Oを吊下げ可能である。
【0033】
吊り具60は、
図5及び
図6に示すように、溝形部材61と、ワイヤ取付部70と、ボルト抜止具75と、を有する。
【0034】
溝形部材61は、互に間隔をあけて配置されている一対のフランジ部62と、一対のフランジ部62相互を連結しているウェブ部65と、を有する。一対のフランジ部62の両端のうち、一方の端がウェブ部65に連結され、他方の端が開口端63e,64eを成す。一対のフランジ部62のうちの第一フランジ部63は、フランジ本体63bと、リップ部63rを有する。フランジ本体63bは、一対のフランジ部62のうちの第二フランジ部64に対して間隔をあけて対向する。このフランジ本体63bの一端がウェブ部65に連結されている。フランジ本体63bのこの一端と反対側の端には、リップ部63rが設けられている。このリップ部63rは、フランジ本体63bから第二フランジ部64の側に延びている。このリップ部63rは、第一フランジ部63の開口端63eを有する。第二フランジ部64は、接続具78によりケーシング側回転軸42の端面42pと接続可能に構成されている。具体的に、この第二フランジ部64には、一対のフランジ部62が並んでいる方向に貫通しているボルト挿通孔64hが形成されている。一対のフランジ部62とウェブ部65とに囲まれた空間は、棒挿入空間66を成す。この溝形部材61では、第一フランジ部63の開口端63eと第二フランジ部64の開口端64eとの相互間が棒挿入空間66への開口67を成す。
【0035】
第一フランジ部63には、棒挿入空間66と反対側の位置にワイヤ取付部70が接続されている。このワイヤ取付部70は、シャックルである。シャックルは、U字型金属片72と、このU字型金属片72の両端を貫通する揺動軸73と、を有する。揺動軸73は、第一フランジ部63に取り付けられている。U字型金属片72は、揺動軸73を中心として揺動可能である。U字型金属片72と揺動軸73と囲まれた部分は、ワイヤWが挿通可能な挿通部71を成す。
【0036】
なお、ワイヤ取付部70は、ワイヤWが挿通可能な挿通部を有すれば、如何なる形態であってもよい。例えば、アイボルト等であってもよい。
【0037】
本実施形態における接続具78は、ボルト挿通孔64hに挿通可能で、且つ案内翼40のケーシング側回転軸42に形成されているネジ穴42hに捩じ込み可能な接続ボルトである。
【0038】
ボルト抜止具75は、ボルト挿通孔64hに挿通された接続ボルト78が、このボルト挿通孔64hから抜けるのを抑制する役目を担う。このボルト抜止具75は、
図7に示すように、一部が切り欠かれている切欠きリング75rと、切欠きリング75rの内周から内周側に突出した複数の爪75tと、を有する。このボルト抜止具75は、その形状からEリング、又はE形止め輪と呼ばれる。このボルト抜止具75は、接続ボルト78のボルト頭部が溝形部材61の棒挿入空間66内に位置し、接続ボルト78のネジ軸部が第二フランジ部64のボルト挿通孔64hに挿通された状態で、第二フランジ部64を基準にして、棒挿入空間66と反対側に位置する。このボルト抜止具75の爪75tは、ネジ軸部のネジ溝に入り込む。
【0039】
架台80は、
図4、
図8~
図11に示すように、複数の懸架棒81と、複数の懸架棒81を支える支持台83とを有する。支持台83は、複数の懸架棒81のそれぞれが第一水平方向H1に延びるよう、複数の懸架棒81を支持する。ここで、第一水平方向H1における両側のうち、一方側を第一水平第一側H11、他方側を第一水平第二側H12とする。また、水平方向であって第一水平方向H1と垂直な方向を第二水平方向H2とする。この第二水平方向H2における両側のうち、一方側を第二水平第一側H21、他方側を第二水平第二側H22とする。また、
図4、
図8~
図11、さらに
図14では、いずれかの図中に記載されている部材されていても、他の図に記載されていない部材もある。これは、
図4、
図8~
図11、及び
図14のそれぞれで示す特徴的な構成を見易くするためである。
【0040】
支持台83は、ベース枠84と、複数の傾斜柱87と、棒支持梁88と、を有する。ベース枠84は、矩形を成す。矩形のベース枠84は、矩形の長辺を形成する一対の長ベース材85と、矩形の短辺を形成する一対の短ベース材86と、を有する。一対の長ベース材85は、第二水平方向H2に延びている。一対の短ベース材86は、第一水平方向H1に延びている。一対の短ベース材86のうちの第一短ベース材86aにおける第一水平第一側H11の端には、一対の長ベース材85のうちの第一長ベース材85aにおける第二水平第一側H21の端が接続されている。この第一短ベース材86aにおける第一水平第二側H12の端には、一対の長ベース材85のうちの第二長ベース材85bにおける第二水平第一側H21の端が接続されている。一対の短ベース材86のうちのにおける第一水平第一側H11の端には、第一長ベース材85aにおける第二水平第二側H22の端が接続されている。この第一短ベース材86aにおける第一水平第二側H12の端には、第二長ベース材85bにおける第二水平第二側H22の端が接続されている。
【0041】
複数の傾斜柱87のうち、第一A傾斜柱87aaの第一端は、第一短ベース材86aにおける第一水平第一側H11の端に接続されている。この第一A傾斜柱87aaは、第一短ベース材86aにおける第一水平第一側H11の端から第一水平第二側H12に向かうに連れて上側に向かうよう、傾斜配置されている。複数の傾斜柱87のうち、第一B傾斜柱87abの第一端は、第一短ベース材86aにおける第一水平第二側H12の端に接続されている。この第一B傾斜柱87abは、第一短ベース材86aにおける第一水平第二側H12の端から第一水平第一側H11に向かうに連れて上側に向かうよう、傾斜配置されている。第一A傾斜柱87aaの第二端は、第一B傾斜柱87abの第二端に接続されている。このため、第一短ベース材86aと第一A傾斜柱87aaと第一B傾斜柱87abとで、二等辺三角形構造体が形成されている。
【0042】
複数の傾斜柱87のうち、第二A傾斜柱87baの第一端は、第二短ベース材86bにおける第一水平第一側H11の端に接続されている。この第二A傾斜柱87baは、第二短ベース材86bにおける第一水平第一側H11の端から第一水平第二側H12に向かうに連れて上側に向かうよう、傾斜配置されている。複数の傾斜柱87のうち、第二B傾斜柱87bbの第一端は、第二短ベース材86bにおける第一水平第二側H12の端に接続されている。この第二B傾斜柱87bbは、第二短ベース材86bにおける第一水平第二側H12の端から第一水平第一側H11に向かうに連れて上側に向かうよう、傾斜配置されている。第二A傾斜柱87baの第二端は、第二B傾斜柱87bbの第二端に接続されている。このため、第二短ベース材86bと第二A傾斜柱87baと第二B傾斜柱87bbとで、二等辺三角形構造体が形成されている。
【0043】
棒支持梁88は、二つの二等辺三角形構造体の頂点部に渡されて、これら二つの二等辺三角形構造体に支持されている。このため、棒支持梁88は、第二水平方向H2に延びている。
【0044】
複数の懸架棒81のそれぞれは、第一水平方向H1の延び、且つ第二水平方向H2で互いの間隔があくよう、棒支持梁88に支持されている。複数の懸架棒81は、その第一水平方向H1の中間部が棒支持梁88に接続されている。
【0045】
第二水平方向H2における複数の懸架棒81の相互間隔は、
図10に示すように、複数の懸架棒81のそれぞれに吊下げられている吊下げ対象物O相互が接触不能な間隔である。具体的に、この間隔は、吊下げ対象物O中のケーシング側回転軸42の中心軸Aoを中心に吊下げ対象物Oを回転させても、この吊下げ対象物Oに第二水平方向H2で隣接する他の吊下げ対象物Oと接触しない間隔である。
【0046】
複数の懸架棒81のそれぞれは、吊下げ対象物Oを吊下げ可能な第一吊下げ部81a及び第二吊下げ部81bを有する。第一吊下げ部81aは、懸架棒81中で、棒支持梁88を基準にして第一水平第一側H11の一部である。また、第二吊下げ部81bは、懸架棒81中で、棒支持梁88を基準にして第一水平第二側H12の一部である。第一水平方向H1における第一吊下げ部81aと第二吊下げ部81bとの相互間隔は、第一吊下げ部81aで吊下げられている吊下げ対象物Oと第二吊下げ部81bで吊下げられている吊下げ対象物Oとが接触不能な間隔である。具体的に、この間隔は、吊下げ対象物O中のケーシング側回転軸42の中心軸Aoを中心に吊下げ対象物Oを回転させても、この吊下げ対象物Oに第一水平方向H1で隣接する他の吊下げ対象物Oと接触しない間隔である。
【0047】
本実施形態の架台80は、以上の構成で、複数の吊下げ対象物Oを第二水平方向H2に並んだ状態で吊り下げることができる。さらに、本実施形態の架台80は、第二水平方向H2に並んでいる複数の吊下げ対象物Oの隣に、他の複数の吊下げ対象物Oを第二水平方向H2に並んだ状態で吊り下げることができる。すなわち、本実施形態の架台80は、複数の吊下げ対象物Oを二列に並べて状態で、複数の吊下げ対象物Oを吊り下げることができる。
【0048】
本実施形態の保管装置Sは、さらに、
図12及び
図13に示すように、離脱抑制機構95を備えている。
【0049】
この離脱抑制機構95は、スペーサ96と、スペーサ96を支持するスペーサ支持具97と、を有する。スペーサ支持具97は、第二水平方向H2に延びる棒接続板97aと、この棒接続板97aの端に接続され且つ鉛直方向に延びるスペーサ押し板97bと、を有する。よって、このスペーサ支持具97は、L型の金具である。棒接続板97aは、懸架棒81の下面に接続されている。この棒接続板97aは、懸架棒81との接続位置から第二水平第二側H22に延びている。スペーサ押し板97bは、棒接続板97aにおける第二水平第二側H22の端から上側に延びている。第二水平方向H2で、スペーサ押し板97bとウェブ外面65pとの間には、隙間がある。なお、ウェブ外面65pとは、溝形部材61のウェブ部65で、棒挿入空間66を画定する面とは反対側の面である。スペーサ96の厚さは、この隙間より僅かに厚い。よって、この隙間にスペーサ96を挿入することで、溝形部材61の棒挿入空間66内に位置している懸架棒81に対して、溝形部材61を相対的に第二水平方向H2に移動させ、懸架棒81に溝形部材61のウェブ部65を押し付けることができる。すなわち、この離脱抑制機構95は、溝形部材61の棒挿入空間66内に位置している懸架棒81に、溝形部材61のウェブ部65を押し付け可能な機構である。棒挿入空間66内の懸架棒81に溝形部材61のウェブ部65が押し付けられると、この懸架棒81は棒挿入空間66から離脱できなくなる、言い換えると、懸架棒81から溝形部材61が離脱できなくなる。
【0050】
本実施形態の架台80は、さらに、
図14に示すように、横揺れ抑制機構90を備えている。
【0051】
横揺れ抑制機構90は、第一列を構成する複数の吊下げ対象物Oを第一水平方向H1で挟み込める一対の横揺れ抑制棒91と、第二列を構成する複数の吊下げ対象物Oを第一水平方向H1で挟み込める一対の横揺れ抑制棒91と、これらの横揺れ抑制棒91を着脱可能に支持する棒支持部材92と、を有する。棒支持部材92は、支持台83における第二水平方向H2の両端に固定されている。この棒支持部材92には、下側に凹み、各横揺れ抑制棒91における第二水平方向H2の端が挿入可能な溝93が形成されている。各横揺れ抑制棒91における第二水平方向H2の端が、棒支持部材92の溝93に挿入されると、各横揺れ抑制棒91は、第二水平方向H2に延び且つ列を構成する複数の吊下げ対象物O中のケーシング側回転軸42に、第一水平方向H1で対向することになる。この結果、第一列を構成する複数の吊下げ対象物Oが一対の横揺れ抑制棒91により第一水平方向H1で挟み込まれ、第一列を構成する複数の吊下げ対象物Oの第一水平方向H1への揺れが抑制される。さらに、第二列を構成する複数の吊下げ対象物Oが一対の横揺れ抑制棒91により第一水平方向H1で挟み込まれ、第二列を構成する複数の吊下げ対象物Oの第一水平方向H1への揺れが抑制される。
【0052】
次に、以上で説明した保管装置Sを用いた案内翼40の保管方法について、
図15に示すフローチャートに従って説明する。
【0053】
この保管方法では、翼取外工程S1、吊り具接続工程S2、ワイヤ取付工程S3、対象物移動工程S4、ワイヤ取外工程S5、離脱抑制工程S6、及び、横揺れ抑制工程S7が実行される。
【0054】
図16に示すように、案内翼40が圧縮機ケーシング14に取り付けられている状態では、案内翼40のケーシング側回転軸42が、圧縮機ケーシング14の回転軸挿通孔19に挿通されている。
【0055】
翼取外工程S1では、圧縮機ケーシング14に取り付けられている案内翼40の翼高さ第一側Dh1(径方向内側Dri)の部分及び翼高さ第二側Dh2(径方向外側Dro)の部分のそれぞれにナイロン樹脂等で形成されているストリングSTを掛ける。そして、これらストリングSTを引いて、この案内翼40を径方向内側Driに移動させ、案内翼40のケーシング側回転軸42を圧縮機ケーシング14の回転軸挿通孔19から引き抜く。
【0056】
次に、
図17に示すように、圧縮機ケーシング14から取り外された案内翼40に、吊り具60を接続具78で接続する(吊り具接続工程S2)。この際、吊り具60の溝形部材61における第二フランジ部64と案内翼40におけるケーシング側回転軸42の端面42pを対向させ、第二フランジ部64を介して、接続具である接続ボルト78をケーシング側回転軸42のネジ穴42hに捩じ込む。
【0057】
次に、案内翼40に接続された吊り具60のワイヤ取付部70にワイヤWを取り付ける(ワイヤ取付工程S3)。なお、ワイヤ取付工程S3は、場合によっては、吊り具接続工程S2の前に実行してもよい。
【0058】
次に、
図18に示すように、ワイヤWの端をクレーン等に掛け、吊下げ対象物OがワイヤWで吊られている状態で、この吊下げ対象物Oが懸架棒81に吊下げられるよう、吊下げ対象物Oを移動させる(対象物移動工程S4)。この対象物移動工程S4で、吊下げ対象物OがワイヤWで吊られている状態では、案内翼40の翼体41に対して、ケーシング側回転軸42が上側になる。
【0059】
仮に、案内翼40の翼体41に対してケーシング側回転軸42が下側になっている状態で、翼体41の縁であってケーシング側回転軸42との縁にストリングST等を掛け、このストリングST等を介して案内翼40を吊った場合、案内翼40の重心がストリングST等による吊り位置よりも上に位置することになる。このため、このように案内翼40を吊って移動させると、移動中の案内翼40が不安定で、案内翼40が倒れて、ストリングST等から案内翼40が落下する虞がある。
【0060】
本実施形態では、案内翼40における翼高さ方向Dhの端に吊り具60を接続し、この吊り具60にワイヤWを取り付けるので、このワイヤWで案内翼40を含む吊下げ対象物Oを吊った際、案内翼40の重心Gは、ワイヤWによる吊り位置よりも下に位置することになる。このため、本実施形態では、案内翼40を安定した状態で移動させることができる。
【0061】
吊下げ対象物Oを移動させ、吊下げ対象物Oが懸架棒81の近傍に至ると、吊下げ対象物O中の溝形部材61における開口67のレベルを懸架棒81のレベルに合わせる。そして、溝形部材61の開口67から溝形部材61の棒挿入空間66内に懸架棒81が入るよう、吊下げ対象物Oを水平方向に移動させる。この水平方向への移動で、溝形部材61の棒挿入空間66に懸架棒81が入ると、吊下げ対象物Oは懸架棒81に吊下げられる。
【0062】
以上のように、本実施形態では、吊下げ対象物O中の溝形部材61における開口67のレベルを懸架棒81のレベルに合わせた後、吊下げ対象物Oを水平方向に移動させることで、吊下げ対象物Oは架台80に取り付けられる。よって、本実施形態では、案内翼40を容易に架台80に取り付けることができる。
【0063】
次に、吊下げ対象物O中のワイヤ取付部70に取り付けられているワイヤWを、ワイヤ取付部70から外す(ワイヤ取外工程S5)。
【0064】
次に、
図12に示すように、溝形部材61のウェブ外面65pとスペーサ支持具97のスペーサ押し板97bとの間にスペーサ96を挿入する(離脱抑制工程S6)。この結果、溝形部材61の棒挿入空間66内に位置している懸架棒81に、溝形部材61のウェブ部65が押し付けられ、この懸架棒81は棒挿入空間66から離脱できなくなる、言い換えると、懸架棒81から溝形部材61が離脱できなくなる。
【0065】
次に、
図14に示すように、一対の横揺れ抑制棒91を棒支持部材92の溝93に装着して、一対の横揺れ抑制棒91により、吊下げ対象物O中のケーシング側回転軸42を第一水平方向H1で挟み込む(横揺れ抑制工程S7)。この結果、吊下げ対象物Oの第一水平方向H1への横揺れが抑制される。
【0066】
以上で、案内翼40の保管方法が完了する。吊下げ対象物Oは、懸架棒81に吊下げられ、懸架棒81からの離脱が抑制され、さらに、横揺れが抑制された状態で保管される。この保管状態では、吊下げ対象物O中の案内翼40の翼高さ方向Dhが鉛直方向になる。
【0067】
なお、ワイヤ取外工程S5、離脱抑制工程S6、及び横揺れ抑制工程S7は、対象物移動工程S4後であれば、如何なる順序で行ってもよい。
【0068】
本実施形態では、前述したように、保管状態における案内翼40の翼高さ方向Dhが鉛直方向になるため、案内翼40の保管場所の面積を小さくすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、前述したように、案内翼40を安定した状態で移動させ、容易に案内翼40を架台80に取り付けることができる。
【0070】
また、本実施形態では、複数の案内翼40を二列に並べて、保管することができる。仮に、複数の案内翼40を三列以上に並べて保管した場合、真ん中の列に並んである複数の案内翼40が他の列に並んでいる案内翼40により目視しずらくなる。このため、この場合、真ん中の列に並んである複数の案内翼40の外観検査を容易に行えなくなる。本実施形態では、複数の案内翼40を二列に並べて、保管するので、全ての案内翼40の外観検査を容易に行うことができる。
【0071】
「可変静翼の保管装置及び保管方法の実施形態」
次に、可変静翼の保管装置及び保管方法の実施形態について、
図19~
図22を参照して説明する。
【0072】
図19に示すように、可変静翼50の保管装置Saは、案内翼40の保管装置Sと基本的に同じである。すなわち、可変静翼50の保管装置Saも、案内翼40の保管装置Sと同様、吊り具60と、接続具78と、架台80aと、離脱抑制機構95と、を備える。但し、可変静翼50の保管方法の実行手順が案内翼40の保管方法の実行手順と異なる関係で、可変静翼50の保管装置Saにおける架台80aの一部の配置が、後述するように、案内翼40の保管装置Sにおける架台80の一部の配置と異なる。
【0073】
次に、可変静翼50の保管方法について、
図20に示すフローチャートに従って説明する。
【0074】
可変静翼50の保管方法でも、案内翼40の保管方法と同様、翼取外工程S1a、吊り具接続工程S2a、ワイヤ取付工程S3a、対象物移動工程S4、ワイヤ取外工程S5、離脱抑制工程S6、及び、横揺れ抑制工程S7が実行される。但し、可変静翼50の保管方法では、翼取外工程S1aに対する吊り具接続工程S2a及びワイヤ取付工程S3aの実行順序が、案内翼40の保管方法における翼取外工程S1に対する吊り具接続工程S2及びワイヤ取付工程S3の実行順序と異なる。
【0075】
可変静翼50の保管方法では、可変静翼50が圧縮機ケーシング14に取り付けられている状態で、吊り具接続工程S2a及びワイヤ取付工程S3aが実行される。
【0076】
図22に示すように、可変静翼50が圧縮機ケーシング14に取り付けられている状態では、可変静翼50のケーシング側回転軸52が、圧縮機ケーシング14の回転軸挿通孔19aに挿通されている。一方で、可変静翼50のロータ側回転軸53は、圧縮機ケーシング14の軸挿通孔等に挿入されていない。そこで、ケーシング側回転軸52が圧縮機ケーシング14に取り付けられている状態で、まず、ロータ側回転軸53に対して吊り具接続工程S2aを実行し、その後、ワイヤ取付工程S3aを実行する。
【0077】
吊り具接続工程S2aでは、
図21及び
図22に示すように、圧縮機ケーシング14に取り付けられている状態における可変静翼50のロータ側回転軸53に、吊り具60を接続具78で接続する。この際、吊り具60の溝形部材61における第二フランジ部64と可変静翼50におけるロータ側回転軸53の端面53pとを対向させ、第二フランジ部64を介して、接続具である接続ボルト78をロータ側回転軸53のネジ穴53hに捩じ込む。ワイヤ取付工程S3aでは、可変静翼50に接続された吊り具60のワイヤ取付部70にワイヤWを取り付ける。なお、ワイヤ取付工程S3aは、場合によっては、吊り具接続工程S2aの前に実行してもよい。
【0078】
翼取外工程S1aでは、圧縮機ケーシング14に取り付けられている可変静翼50の翼高さ第一側Dh1(径方向外側Dro)の部分にストリングSTを掛ける。そして、このストリングST及び先に取り付けたワイヤWを引いて、この可変静翼50を径方向内側Driに移動させ、可変静翼50のケーシング側回転軸52を圧縮機ケーシング14の回転軸挿通孔19aから引き抜く。
【0079】
案内翼40の保管方法における翼取外工程S1aでは、
図16を用いて前述したように、圧縮機ケーシング14に取り付けられている案内翼40の翼高さ第一側Dh1(径方向内側Dri)の部分及び翼高さ第二側Dh2(径方向外側Dro)の部分のそれぞれにストリングSTを掛ける。そして、これらストリングSTを引いて、この案内翼40を径方向内側Driに移動させる。しかしながら、可変静翼50の保管方法における翼取外工程S1aでは、ワイヤ取付部70に取り付けられているワイヤWが、案内翼40の保管方法における翼取外工程S1で、案内翼40の翼高さ第二側Dh2(径方向内側Dri)の部分に掛けるストリングSTの役目を果たす。このため、可変静翼50の保管方法における翼取外工程S1aでは、案内翼40の保管方法における翼取外工程S1よりも、ストリングSTを掛ける手間を軽減することができる。
【0080】
可変静翼50の保管方法における以降の処理では、案内翼40の保管方法における翼取外工程S1、吊り具接続工程S2、及びワイヤ取付工程S3後の処理と同様に、対象物移動工程S4、ワイヤ取外工程S5、離脱抑制工程S6、及び、横揺れ抑制工程S7を実行する。
【0081】
但し、可変静翼50の保管方法における対象物移動工程S4では、吊り具接続工程S2aで、ロータ側回転軸53に吊り具60を接続する関係で、吊下げ対象物OaがワイヤWで吊られている状態では、可変静翼50の翼体51に対して、ロータ側回転軸53が上側になる。このように、可変静翼50の翼体51に対してロータ側回転軸53が上側になっても、案内翼40の保管方法と同様に、可変静翼50における翼高さ方向Dhの端に吊り具60を接続し、この吊り具60にワイヤWを取り付けることになる。このため、可変静翼50の保管方法でも、案内翼40の保管方法と同様に、ワイヤWで可変静翼50を含む吊下げ対象物Oaを吊った際、可変静翼50の重心は、ワイヤWによる吊り位置よりも下に位置することになる。このため、可変静翼50の保管方法でも、可変静翼50を安定した状態で移動させることができる。さらに、この可変静翼50の保管方法でも、案内翼40の保管方法と同様、容易に可変静翼50を架台80aに取り付けることができる。
【0082】
また、可変静翼50の保管方法における対象物移動工程S4の完了で、吊下げ対象物Oaが懸架棒81に吊下げられると、吊下げ対象物Oa中の可変静翼50における翼高さ方向Dhが鉛直方向になる。このため、可変静翼50の保管方法でも、案内翼40の保管方法と同様、可変静翼50の保管場所の面積を小さくすることができる。但し、本実施形態では、吊下げ対象物Oaが懸架棒81に吊下げられた状態では、可変静翼50の翼体51に対して、ロータ側回転軸53が上側になり、ケーシング側回転軸52が下側になる。
【0083】
本実施形態の横揺れ抑制機構90aも、
図19に示すように、案内翼40の横揺れ抑制機構90と同様に、ケーシング側回転軸52を一対の横揺れ抑制棒91で挟み込む。但し、本実施形態では、前述したように、吊下げ対象物Oaが懸架棒81に吊下げられた状態では、可変静翼50の翼体51に対してケーシング側回転軸52が下側になる。このため、本実施形態では、横揺れ抑制棒91を含む横揺れ抑制機構90aは、案内翼40の横揺れ抑制機構90よりも、支持台83への取付位置が下側になる。係る点が、案内翼40の架台80に対して、可変静翼50の架台80aが異なる点である。
【0084】
「変形例」
離脱抑制機構の構成は、
図12及び
図13を用いて先に説明した離脱抑制機構95の構成に限定されない。例えば、
図23及び
図24に示すように、離脱抑制機構95aは、ピン98と、溝形部材61に形成されたピン孔99とで構成してもよい。ピン孔99は、第一フランジ部63に形成されている第一ピン孔99aと、第二フランジ部64に形成されている第二ピン孔99bとを有する。第一ピン孔99a及び第二ピン孔99bは、いずれも、第一フランジ部63と第二フランジ部64とが並んでいる方向であるフランジ並び方向に延びている。また、フランジ並び方向に対して垂直な方向における第一ピン孔99aの位置と、フランジ並び方向に対して垂直な方向における第二ピン孔99bの位置とは、一致している。よって、一つのピン98を第一ピン孔99a及び第二ピン孔99bに挿通させることができる。
【0085】
第一ピン孔99a及び第二ピン孔99bにおけるウェブ部65側の縁とウェブ部65との間の間隔は、リップ部63rのウェブ部65側の縁とウェブ部65との間の間隔より、僅かに狭い。このため、第一ピン孔99a及び第二ピン孔99bにピン98を挿入させると、棒挿入空間66内の懸架棒81をピン98でウェブ部65側に押すことができる。すなわち、この離脱抑制機構95aも、前述の実施形態における離脱抑制機構95と同様、溝形部材61の棒挿入空間66内に位置している懸架棒81に、溝形部材61のウェブ部65を押し付け可能な機構である。
【0086】
なお、離脱抑制機構は、溝形部材61の棒挿入空間66内に位置している懸架棒81に、溝形部材61の第一フランジ部63を押し付け可能な機構であってもよい。この場合の離脱抑制機構は、第二フランジ部64と、溝形部材61の棒挿入空間66内に位置している懸架棒81との間に挿入可能なスペーサで構成することができる。
【0087】
以上の説明では、ガスタービンの軸流圧縮機10における案内翼40及び可変静翼50を翼の一例とした。しかしながら、本開示の翼は、ガスタービンの軸流圧縮機10における案内翼40及び可変静翼50に限定されず、翼体と、この翼体の端に設けられている回転軸と、を有する翼であれば、如何なる翼であってもよい。
【0088】
また、本開示は、以上で説明した一実施形態及び変形例に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0089】
「付記」
以上の実施形態における翼保管装置S,Saは、例えば、以下のように把握される。
【0090】
(1)第一態様における翼保管装置は、
軸流回転機械の翼であって、断面41s,51sが翼形を成し前記断面41s,51sに対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向Dhに延びる翼体41,51と、前記翼体41,51の前記翼高さ方向Dhの端に設けられている回転軸42,53と、を有する翼40,50を保管可能な翼保管装置S,Saである。この翼保管装置S,Saは、前記回転軸42,53の前記翼高さ方向Dhの端に接続可能な吊り具60と、前記回転軸42,53と前記吊り具60とを接続可能な接続具78と、前記接続具78により前記翼40,50と前記吊り具60とが接続された吊下げ対象物O,Oaを吊下げ可能な架台80,80aと、を備える。前記吊り具60は、溝形部材61と、前記溝形部材61に設けられワイヤWを取り付け可能なワイヤ取付部70と、を有する。前記溝形部材61は、互に間隔をあけて配置されている一対のフランジ部62と、一対のフランジ部62相互を連結しているウェブ部65と、を有する。前記一対のフランジ部62の両端のうち、一方の端が前記ウェブ部65に連結され、他方の端が開口端63e,64eを成す。前記一対のフランジ部62と前記ウェブ部65で囲まれた空間が棒挿入空間66を成す。前記一対のフランジ部62の前記開口端63e,64eの相互間が開口67を成す。前記一対のフランジ部62の一方のフランジ部である第一フランジ部63と他方のフランジ部である第二フランジ部64とのうち、前記第二フランジ部64は、前記接続具78により前記回転軸42,53の端面42p,53pと接続可能に構成されている。前記架台80,80aは、前記溝形部材61の前記開口67から前記棒挿入空間66に挿入されて、前記吊下げ対象物O,Oaを吊下げ可能の少なくとも一の懸架棒81と、前記少なくとも一の懸架棒81が第一水平方向H1に延びている状態で前記懸架棒81を支える支持台83と、を有する。
【0091】
本態様では、架台80,80aの懸架棒81に吊下げ対象物O,Oaを吊下げた状態では、この吊下げ対象物O,Oa中の翼40,50の翼高さ方向Dhが鉛直方向になるため、翼40,50の保管場所の面積を小さくすることができる。
【0092】
本態様では、翼40,50における翼高さ方向Dhの端に吊り具60を接続し、この吊り具60にワイヤWを取り付けるので、このワイヤWで、翼40,50を含む吊下げ対象物O,Oaを吊った際、翼40,50の重心Gは、ワイヤWによる吊り位置よりも下に位置することになる。このため、本態様では、翼40,50を安定した状態で移動させることができる。
【0093】
本態様では、吊下げ対象物O,Oa中の溝形部材61の開口67のレベルを懸架棒81のレベルに合わせた後、吊下げ対象物O,Oaを水平方向に移動させることで、吊下げ対象物O,Oaは架台80,80aの懸架棒81に取り付けられる。よって、本態様では、翼40,50を容易に架台80,80aに取り付けることができる。
【0094】
(2)第二態様における翼保管装置は、
前記第一態様における翼保管装置S,Saにおいて、前記ワイヤ取付部70は、第一フランジ部63に設けられている。前記ワイヤ取付部70は、ワイヤWが挿通可能な挿通部71を有する。
【0095】
(3)第三態様における翼保管装置は、
前記第二態様における翼保管装置S,Saにおいて、前記ワイヤ取付部70は、前記第一フランジ部63に対して揺動可能に取り付けられているシャックルを有する。
【0096】
(4)第四態様における翼保管装置は、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様における翼保管装置S,Saにおいて、前記第二フランジ部64には、前記第一フランジ部63と前記第二フランジ部64とが並んでいる方向に貫通しているボルト挿通孔64hが形成され、前記接続具78は、前記ボルト挿通孔64hに挿通可能な接続ボルトである。
【0097】
(5)第五態様における翼保管装置は、
前記第四態様における翼保管装置S,Saにおいて、前記吊り具60は、前記溝形部材61の前記ボルト挿通孔64hから前記接続ボルト78が抜けるのを抑制するボルト抜止具75を有する。
【0098】
本態様では、溝形部材61のボルト挿通孔64hから接続ボルト78が抜けるのを抑制することができる。
【0099】
(6)第六態様における翼保管装置は、
前記第一態様から前記第五態様のうちのいずれか一態様における翼保管装置S,Saにおいて、前記懸架棒81が前記棒挿入空間66内からの離脱を抑制可能な離脱抑制機構95,95aを備える。
【0100】
本態様では、懸架棒81に吊られている吊下げ対象物O,Oaが、懸架棒81から外れるのを抑制することができる。
【0101】
(7)第七態様における翼保管装置は、
前記第六態様における翼保管装置S,Saにおいて、前記離脱抑制機構95,95aは、前記棒挿入空間66内に位置している前記懸架棒81に、前記溝形部材61の前記ウェブ部65を押し付け可能な機構である。
【0102】
本態様では、棒挿入空間66内に位置している懸架棒81に、溝形部材61のウェブ部65が押し付けられるので、懸架棒81が溝形部材61の開口67から出てしまうのを抑制できる。
【0103】
(8)第八態様における翼保管装置は、
前記第一態様から前記第七態様のうちのいずれか一態様における翼保管装置S,Saにおいて、前記架台80,80aは、前記懸架棒81に吊下げられている状態における前記吊下げ対象物O,Oaの水平方向の揺れを抑制可能な横揺れ抑制機構90,90aを有する。前記横揺れ抑制機構90,90aは、前記懸架棒81に吊下げられている状態における前記吊下げ対象物O,Oa中の前記翼40,50に対して水平方向で対向可能な横揺れ抑制棒91を有する。前記横揺れ抑制棒91は、水平方向であって前記第一水平方向H1に対して垂直な第二水平方向H2に延びている状態で、前記支持台83に支持されている。
【0104】
本態様では、懸架棒81に吊下げられている状態における吊下げ対象物O,Oaの水平方向の揺れを抑制することができる。
【0105】
(9)第九態様における翼保管装置は、
前記第一態様から前記第八態様のうちのいずれか一態様における翼保管装置S,Saにおいて、前記少なくとも一の懸架棒81は、互いに平行に配置されている複数の懸架棒81を有し、前記支持台83は、水平方向であって前記第一水平方向H1に対して垂直な第二水平方向H2に延びて、複数の前記懸架棒81を前記第二水平方向H2で互いの間隔があくように支持する棒支持梁88を有する。前記第二水平方向H2における複数の前記懸架棒81の相互間隔は、複数の前記懸架棒81のそれぞれに吊下げられている前記吊下げ対象物O,Oa相互が接触不能な間隔である。
【0106】
本態様では、複数の翼40,50を一列に並べて保管することができる。しかも、本態様では、列を構成する複数の翼40,50相互が接触することを抑制できる。
【0107】
(10)第十態様における翼保管装置は、
前記第九態様における翼保管装置S,Saにおいて、前記複数の懸架棒81のそれぞれは、前記吊下げ対象物O,Oaを吊下げ可能な第一吊下げ部81a及び第二吊下げ部81bを有する。前記第一吊下げ部81aと前記第二吊下げ部81bとは、前記第一水平方向H1で互いに間隔をあけて、前記第一水平方向H1に並んでいる。前記第一水平方向H1における前記第一吊下げ部81aと前記第二吊下げ部81bとの相互間隔は、前記第一吊下げ部81aで吊下げられている前記吊下げ対象物O,Oaと前記第二吊下げ部81bで吊下げられている前記吊下げ対象物O,Oaとが接触不能な間隔である。
【0108】
本態様では、複数の翼40,50を二列に並べて保管することができる。しかも、本態様では、列を構成する複数の翼40,50相互が接触すること、さらに、第一列中の翼40,50と第二列中の翼40,50とが接触することを抑制することができる。
【0109】
以上の実施形態における翼保管方法は、例えば、以下のように把握される。
【0110】
(11)第十一態様における翼保管方法は、
前記第一態様から前記第十態様のうちのいずれか一態様における翼保管装置S,Saを用いた翼保管方法において、前記軸流回転機械のケーシングから前記翼40,50を外す翼取外工程S1,S1aと、前記翼40,50と前記吊り具60とを前記接続具78で接続する吊り具接続工程S2,S2aと、前記吊り具60の前記ワイヤ取付部70にワイヤWを取り付けるワイヤ取付工程S3,S3aと、前記吊下げ対象物O,Oaが前記ワイヤWで吊られている状態で、前記吊下げ対象物O,Oaが前記少なくとも一の懸架棒81に吊下げられるよう、前記吊下げ対象物O,Oaを移動させる対象物移動工程S4と、前記対象物移動工程S4後の前記吊下げ対象物O,Oaから前記ワイヤWを取り外すワイヤ取外工程S5と、を実行する。
【0111】
(12)第十二態様における翼保管方法は、
第十一態様における翼保管方法において、前記翼取外工程S1の実行後に、前記吊り具接続工程S2を実行する。
【0112】
(13)第十三態様における翼保管方法は、
前記第十一態様における翼保管方法において、前記吊り具接続工程S2aを実行後に、前記翼取外工程S1aを実行する。
【符号の説明】
【0113】
1:ガスタービンロータ
4:ガスタービンケーシング
5:中間ケーシング
10:軸流圧縮機
11:圧縮機ロータ
12:ロータ軸
13:動翼列
14:圧縮機ケーシング
15:静翼列
16:案内翼列
17:案内翼駆動機構
18:静翼駆動機構
19,19a:回転軸挿通孔
20:燃焼器
30:タービン
31:タービンロータ
32:ロータ軸
33:動翼列
34:タービンケーシング
35:静翼列
40:案内翼
41:翼体
41s:断面
42:ケーシング側回転軸
42h:ネジ穴
42p:端面
50:可変静翼
51:翼体
51s:断面
52:ケーシング側回転軸
52h:ネジ穴
52p:端面
53:ロータ側回転軸
53h:ネジ穴
53p:端面
60:吊り具
61:溝形部材
62:フランジ部
63:第一フランジ部
63b:フランジ本体
63r:リップ部
63e:開口端
64:第二フランジ部
64e:開口端
64h:ボルト挿通孔
65:ウェブ部
65p:ウェブ外面
66:棒挿入空間
67:開口
70:ワイヤ取付部
71:挿通部
72:U字型金属片
73:揺動軸
75:ボルト抜止具
75r:切欠きリング
75t:爪
78:接続具(又は接続ボルト)
80,80a:架台
81:懸架棒
81a:第一吊下げ部
81b:第二吊下げ部
83:支持台
84:ベース枠
85:長ベース材
85a:第一長ベース材
85b:第二長ベース材
86:短ベース材
86a:第一短ベース材
86b:第二短ベース材
87:傾斜柱
87aa:第一A傾斜柱
87ab:第一B傾斜柱
87ba:第二A傾斜柱
87bb:第二B傾斜柱
88:棒支持梁
90,90a:横揺れ抑制機構
91:横揺れ抑制棒
92:棒支持部材
93:溝
95,95a:離脱抑制機構
96:スペーサ
97:スペーサ支持具
97a:棒接続板
97b:スペーサ押し板
98:ピン
99:ピン孔
99a:第一ピン孔
99b:第二ピン孔
A:空気
C:燃焼ガス
F:燃料
G:重心
O,Oa:吊下げ対象物
S,Sa:保管装置
ST:ストリング
W:ワイヤ
Ao:中心軸
Ar:軸線
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dh:翼高さ方向
Dh1:翼高さ第一側
Dh2:翼高さ第二側
H1:第一水平方向
H11:第一水平第一側
H12:第一水平第二側
H2:第二水平方向
H21:第二水平第一側
H22:第二水平第二側