(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173574
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】タイヤの氷上コーナリング特性の測定方法、タイヤの氷上コーナリング特性に関するデータを生成するシステム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085913
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石神 直大
(57)【要約】
【課題】実車装着時のタイヤのコーナリング特性を適切に計測可能とする技術を提供する。
【解決手段】タイヤのコーナリング特性の測定方法は、車両横方向加速度、角速度、速度、車両スリップ角および操舵角を導出可能な計測値を検出するセンサが取り付けられた車両を、直進走行状態から所定舵角になるまで旋回させ、旋回中における複数時点の計測値をセンサで検出する計測工程を実行することと、各々の時点における操舵角及び車両スリップ角に基づいて、各々の時点におけるタイヤのスリップ角を算出することと、各々の時点における速度、車両横方向加速度、角速度、およびタイヤのスリップ角に基づいて、各々の時点における前輪タイヤに作用する横方向の力を算出することと、複数時点それぞれの横方向の力とタイヤのスリップ角とに基づいて、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成することと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両横方向加速度、角速度、速度、車両スリップ角および操舵角を導出可能な計測値を検出するセンサが取り付けられた車両を、直進走行状態から所定舵角になるまで氷上路面で旋回させ、旋回中における複数時点の前記計測値を前記センサで検出する計測工程を実行することと、
各々の前記時点における前記操舵角及び前記車両スリップ角に基づいて、各々の前記時点におけるタイヤのスリップ角を算出することと、
各々の前記時点における前記速度、前記車両横方向加速度、前記角速度、および前記タイヤのスリップ角に基づいて、各々の前記時点における前輪タイヤに作用する横方向の力を算出することと、
前記複数時点それぞれの前記横方向の力と前記タイヤのスリップ角とに基づいて、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成することと、
を含む、タイヤのコーナリング特性の測定方法。
【請求項2】
前記複数時点それぞれの前記横方向の力及び前記タイヤのスリップ角度に対して、前記タイヤに作用する横方向の力と前記タイヤのスリップ角との関係を表す近似式をフィッティングして、タイヤのコーナリング曲線を表す近似式を取得することを更に含む、請求項1に記載のタイヤのコーナリング特性の測定方法。
【請求項3】
前記車両を直進走行状態から所定舵角になるまで旋回させるまでの間に前記センサで計測する前記計測工程を複数回実行し、前記複数回の計測工程で得られる計測結果に対して、前記タイヤに作用する横方向の力と前記タイヤのスリップ角との関係を表す近似式をフィッティングして、タイヤのコーナリング曲線を表す近似式を取得する、請求項2に記載のタイヤのコーナリング特性の測定方法。
【請求項4】
前記近似式は、マジックフォーミュラ式で表される、請求項2又は3に記載のタイヤのコーナリング特性の測定方法。
【請求項5】
車両横方向加速度、角速度、速度、車両スリップ角および操舵角を導出可能な計測値を検出するセンサが取り付けられた車両を、直進走行状態から所定舵角になるまで旋回させ、旋回中に前記センサで検出した複数時点の前記計測値を取得する取得部と、
各々の前記時点における前記操舵角及び前記車両スリップ角に基づいて、各々の前記時点におけるタイヤのスリップ角を算出するスリップ角算出部と、
各々の前記時点における前記速度、前記車両横方向加速度、前記角速度、および前記タイヤのスリップ角に基づいて、各々の前記時点における前輪タイヤに作用する横方向の力を算出する横力算出部と、
前記複数時点それぞれの前記横方向の力と前記タイヤのスリップ角とに基づいて、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成するデータ生成部と、
を備える、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成するシステム。
【請求項6】
車両横方向加速度、角速度、速度、車両スリップ角および操舵角を導出可能な計測値を検出するセンサが取り付けられた車両を、直進走行状態から所定舵角になるまで旋回させ、旋回中に前記センサで検出した複数時点の前記計測値を取得することと、
各々の時点における操舵角及び車両スリップ角に基づいて、各々の時点におけるタイヤのスリップ角を算出することと、各々の時点における速度、車両横方向加速度、角速度、およびタイヤのスリップ角に基づいて、各々の時点における前輪タイヤに作用する横方向の力を算出することと、
前記複数時点それぞれの前記横方向の力と前記タイヤのスリップ角とに基づいて、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成することと、
を1又は複数のプロセッサに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤの氷上コーナリング特性の測定方法、タイヤの氷上コーナリング特性に関するデータを生成するシステム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の旋回性能を評価する手法としてドライバーの官能評価が行われている。官能評価は、人間の感性が基準となるために評価結果にバラツキを含む可能性が高く、評価結果と評価したい物理量との関連性が曖昧であり、タイヤの設計に生かすことが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、氷上路面において車両を一定半径で旋回させ、検出した車両の横方向の加速度及びヨーレートに基づいて、車両性能を含めた旋回性能を示す指標を求める技術が記載されている。しかし、指標を得ることができるものの、指標は物理量との関連がないので、タイヤのコーナリング特性(例えば、コーナリングフォースとタイヤスリップ角の関係を示すコーナリング曲線など)を得ることができない。
【0005】
一方、タイヤのコーナリング特性を測定する方法として、タイヤを台上で走らせる台上試験機を用いることが挙げられる。しかし、台上試験機において氷上コーナリングを再現すべく、氷盤路を長距離作成して測定することが困難であり、また、内面ドラムに氷盤を形成して測定したとしても接地面が平坦でなくドラムの径に応じた湾曲形状であるために、実車装着時のタイヤの氷上コーナリング特性を正確に測定することができない。
【0006】
他の方法として、タイヤを装着するホイール自体に力センサが設けられたホイール6分力計を用いることで、タイヤに作用する力を計測可能になるが、タイヤ毎でリム組み換えが必要となり、組み換え作業中の間に路面状況が変化してしまうおそれがあり、同条件の試験が難しくなる。また、6分力計用ホイール自体の質量およびアンプ類の質量により、タイヤの荷重やホイールアライメントが一般的なホイール装着時と異なってしまうおそれがある。
【0007】
本開示は、実車装着時のタイヤのコーナリング特性を適切に計測可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のタイヤのコーナリング特性の測定方法は、車両横方向加速度、角速度、速度、車両スリップ角および操舵角を導出可能な計測値を検出するセンサが取り付けられた車両を、直進走行状態から所定舵角になるまで旋回させ、旋回中における複数時点の前記計測値を前記センサで検出する計測工程を実行することと、各々の前記時点における前記操舵角及び前記車両スリップ角に基づいて、各々の前記時点におけるタイヤのスリップ角を算出することと、各々の前記時点における前記速度、前記車両横方向加速度、前記角速度、および前記タイヤのスリップ角に基づいて、各々の前記時点における前輪タイヤに作用する横方向の力を算出することと、前記複数時点それぞれの前記横方向の力と前記タイヤのスリップ角とに基づいて、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のシステムの構成を示すブロック図。
【
図2】車両2に取り付けられるセンサ3に関する平面視の説明図。
【
図3】タイヤのコーナリング特性の測定方法を示すフローチャート。
【
図6】算出した前輪タイヤのスリップ角を時間経過と共に示すグラフ。
【
図7】算出したタイヤの横方向の力F
fを時間経過と共に示すグラフ。
【
図8】4輪を前輪と後輪の2輪にした簡易車両モデルを示す図。
【
図9】縦軸にタイヤに作用する横方向の力Ffを示し、横軸をタイヤのスリップ角とした図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
[システム]
本実施形態のシステムは、タイヤの氷上コーナリング特性を測定するために用いられる。タイヤの氷上コーナリング特性は、例えば、コーナリングフォースとタイヤのスリップ角との関係を示すコーナリング曲線などで表現できる。
図1に示すように、システムは、車両2に取り付けられるセンサ3の検出結果を処理する処理部1を含む。処理部1は、センサ3の検出結果に基づいてタイヤの氷上コーナリング特性に関するデータを生成する。処理部1は、1つのコンピュータで実装してもよいし、クラウドにおける1又は複数のコンピュータで実装してもよい。
【0012】
図2は、車両2に取り付けられるセンサ3に関する平面視の説明図である。本実施形態では、トラックである車両2(4輪自動車)にセンサ3を取り付けているが、これに限定されず、乗用車であってもよい。センサ3が検出する計測値は、車両2の加速度、角速度、速度、車両スリップ角、操舵角を導出可能な物理量であればよい。
図2では、前輪のタイヤ20が右に向く右旋回状態を示し、車両2に設けられたセンサ3の位置を模式的に示している。本実施形態のセンサ3は、加速度センサ30、角速度センサ31、操舵角計32、光学式の車両スリップ角計33、速度計として車両前後に設けた2つのGPS(34)を含む。加速度センサ30から車両2の上下方向、横方向(左右方向)および前後方向の加速度が得られる。角速度センサ31から車両2の上下方向、横方向および前後方向の角速度が得られる。操舵角計32からハンドルの回転角度である操舵角が得られる。車両スリップ角計33から車両スリップ角が得られる。GPS(34)から車両の速度が得られる。センサ3の具体例は種々変更可能であり、これらの組み合わせに限定されない。センサ3(各センサ30~34)で検出された計測値は、車両2に設けられた記録装置35に記憶される。
なお、本実施形態では、タイヤ20が組み込まれているリム(ホイール)に作用する力を検出する力センサを設けておらず、車輪を支える車軸に作用する力を検出する力センサを設けておらず、タイヤに作用する力を直接計測するセンサを設けていない。
【0013】
図1に示すように、システムの処理部1は、取得部10と、スリップ角算出部11と、横力算出部12と、データ生成部13と、を有する。これら各部10~13は、プロセッサ1a、メモリ1b、各種インターフェイス等を備えたコンピュータにおいて予め記憶されている
図2に示す処理ルーチンをプロセッサ1aが実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。本実施形態では、1つの装置におけるプロセッサ1aが各部を実現しているが、これに限定されない。例えば、ネットワークを用いて分散させ、複数のプロセッサが各部の処理を実行するように構成してもよい。すなわち、1又は複数のプロセッサが処理を実行する。メモリ1bは、センサ3が検出した複数時点の計測値、車両諸元(車両質量、ヨー慣性モーメント、重心から前輪軸までの距離、重心から後輪軸までの距離など)、スリップ角算出部11が算出したタイヤのスリップ角、横力算出部12が算出したタイヤの横方向に作用する力、データ生成部13が生成したタイヤのコーナリング特性に関するデータなどを記憶する。
【0014】
[タイヤのコーナリング特性の測定方法]
図3を用いて、タイヤのコーナリング特性の測定方法について説明する。
【0015】
ステップST1において、センサ3が取り付けられた車両2を、直線走行状態から所定舵角になるまで氷上路面で旋回させ、旋回中における複数時点の計測値をセンサで検出する計測工程を実行する。本実施形態においては、時速約8kmで直進走行する車両2を、舵角が0度から720度(ハンドル約2回転)になるまで舵角の単位時間あたりの変化量が一定になるようにハンドルを回して旋回させた。舵角が所定舵角になるまでに約7.5秒経過した。なお、舵角の変化量が一定になることを目標にしているが、人手であるので厳密には一定ではない。センサ3は、0.01秒間隔の複数の計測時点で計測する。本実施形態では、計測工程において、車両2を氷上路面で旋回させている。
【0016】
次のステップST2において、システムの取得部10は、旋回中にセンサ3で検出した複数時点の計測値を取得する。取得した計測値は、メモリ1bに記憶される。取得部10は、ユーザによってシステムに接続された記録装置35から計測値を受け付けてもよいし、記録装置35とネットワークを介して通信可能に接続され、自動的に計測値を取得するようにしてもよい。
図4は、車両の速度を時間経過と共に示すグラフである。
図5は、操舵角を時間経過と共に示すグラフである。
【0017】
次のステップST3において、スリップ角算出部11は、各々の時点における操舵角及び車両スリップ角に基づいて、各々の時点におけるタイヤのスリップ角を算出する。車両スリップ角(車両2の重心位置における車両スリップ角)は、
図8に示すように、車両2の重心位置における速度ベクトルの方向(車両2の進行方向)と車両2の向き(前方)との間の角度βを表す。操舵角によって車両に対するタイヤの向きが定まっているので、車両に対するタイヤの向き(角度)と操舵角とを予め関連付けたデータに基づいて、操舵角からタイヤの向き(角度)を特定(又は算出)する。車両スリップ角計33の装着位置はあらかじめ定まっているので、車両スリップ角計33の計測データと、自動車工学の円旋回の幾何学的関係から、タイヤ位置における車両スリップ角が分かる。そして、前輪タイヤ位置におけるスリップ角とタイヤの向き(角度δ)とを演算することで、タイヤの進行方向(車両の進行方向でもある)とタイヤの向きとの間の角度を表すタイヤスリップ角が算出可能となる。算出された各時点のタイヤスリップ角はメモリ1bに記憶される。
図6は、算出した前輪タイヤのスリップ角を時間経過と共に示すグラフである。
【0018】
次のステップST4において、横力算出部12は、各々の時点における速度、車両横方向加速度、角速度、およびタイヤのスリップ角に基づいて、各々の時点における前輪タイヤに作用する横方向の力(コーナリングフォース)を算出する。前輪タイヤに作用する横方向の力F
fの算出は、車両の運動方程式(1)を用いて算出する。
【数1】
F
fはタイヤに作用する横方向の力(コーナリングフォース)を表し、mは車両質量を表し、A
yは車両横方向加速度を表し、L
fは重心から前輪軸までの距離を表し、L
rは重心から後輪軸までの距離を表し、Vは車両速度を表し、γは角速度(ヨーレート)を表し、I
Zはヨー慣性モーメントを表す。γ’はヨーレートγの微分値を表す。
図7は、算出したタイヤの横方向の力F
fを時間経過と共に示すグラフである。
図7の算出条件として、実施例の車両諸元に基づいて、m=11270kg、I
Z=35000[kgm
2]、L
f=3.8m、L
r=2.9mとしている。
【0019】
式(1)は、
図8に示す簡易車両モデルに基づき、式(2)に示す横方向の運動方程式、及び、式(3)に示す回転の運動方程式から導出している。
図8は、4輪を前輪と後輪の2輪にした簡易車両モデルを示す図である。
図8では、車両の進行方向を速度Vと共に矢印で示し、前輪20が車両の向きに対して角度δ右に傾斜しており、重心位置Gでの角速度(ヨーレート)がγで示され、車両スリップ角βが示され。前輪20に作用する横方向の力F
f、後輪20’に作用する横方向の力F
r、車両横方向加速度A
yは図示の通りである。式(2)のβ’及び式(3)のγ’はそれぞれ、車両スリップ角βの微分値、ヨーレートγの微分値を表す。
【数2】
【0020】
次のステップST5において、データ生成部13は、複数時点それぞれのタイヤに作用する横方向の力F
fとタイヤのスリップ角とに基づいて、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成する。具体的な一例として、データ生成部13は、複数時点それぞれの横方向の力F
f及びタイヤのスリップ角度に対して、タイヤに作用する横方向の力とタイヤのスリップ角との関係を表す近似式をフィッティングして、タイヤのコーナリング曲線を表す近似式を取得している。具体的には、式(4)に示すマジックフォーミュラ式による近似式をフィティングして、係数A,B,C,Dを算出する。係数Aは、最大コーナリングフォース(CFMax値)に関するので、複数のタイヤにおいて係数Aを比較することが可能である。係数B,C,Dは、コーナリングスティフィネスに関する係数であり、これらはタイヤのスリップ角に対する力の立ち上がり具合を説明可能な係数である。
【数3】
【0021】
図9は、縦軸にタイヤに作用する横方向の力F
fを示し、横軸をタイヤのスリップ角とした図であり、複数時点それぞれの計測値を点で示し、点線がフィッティング完了した近似式を示している。
図9の例は、1回の計測工程によって収集したデータに対して近似式をフィッティングしているが、複数回の計測工程によって収集したデータに対して近似式をフィッティングしてもよい。そうすると、精度を向上させることが可能となる。
【0022】
[1]
以上のように、本実施形態のタイヤのコーナリング特性の測定方法は、車両横方向加速度Ay、角速度γ、速度V、車両スリップ角βおよび操舵角を導出可能な計測値を検出するセンサ3が取り付けられた車両2を、直進走行状態から所定舵角になるまで旋回させ、旋回中における複数時点の計測値をセンサ3で検出する計測工程を実行することと、各々の時点における操舵角及び車両スリップ角に基づいて、各々の時点におけるタイヤのスリップ角を算出することと、各々の時点における速度V、車両横方向加速度Ay、角速度γ、およびタイヤのスリップ角に基づいて、各々の時点における前輪タイヤに作用する横方向の力Ffを算出することと、複数時点それぞれの横方向の力Ffとタイヤのスリップ角とに基づいて、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成することと、を含む、としてもよい。
【0023】
このように、ホイール6分力計などのようなタイヤに作用する力を計測するセンサを用いなくても、車両の加速度、角速度、速度、車両スリップ角、操舵角を導出可能な計測値をセンサで測定すれば、実車に装着したタイヤに作用する横方向の力を算出でき、コーナリング曲線を得ることが可能となる。
【0024】
[2]
上記[1]に記載のタイヤのコーナリング特性の測定方法は、複数時点それぞれの横方向の力Ff及びタイヤのスリップ角度に対して、タイヤに作用する横方向の力Ffとタイヤのスリップ角との関係を表す近似式をフィッティングして、タイヤのコーナリング曲線を表す近似式を取得することを更に含む、としてもよい。
複数時点で構成されるデータは離散データであるので、近似式を取得することで、複数のタイヤのコーナリング曲線を比較しやすくなり、利便性を向上可能となる。
【0025】
[3]
上記[2]に記載のタイヤのコーナリング特性の測定方法において、車両を直進走行状態から所定舵角になるまで旋回させるまでの間にセンサ3で計測する前記計測工程を複数回実行し、複数回の計測工程で得られる計測結果に対して、タイヤに作用する横方向の力Ffとタイヤのスリップ角との関係を表す近似式をフィッティングして、タイヤのコーナリング曲線を表す近似式を取得する、としてもよい。
複数回の計測工程で得られる計測結果に対してフィッティングすることで、得られるコーナリング曲線の精度を高めることが可能となる。
【0026】
[4]
上記[2]又は[3]に記載のタイヤのコーナリング特性の測定方法において、近似式は、マジックフォーミュラ式で表される、としてもよい。
また、近似式は、式(4)で表される、としてもよい。
係数として、最大コーナリングフォース(CFMax)に関する係数Aと、コーナリングスティフィネスに関する係数B,C,Dが得られるので、他のタイヤとの比較が容易となる。
【0027】
[5]
タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成するシステムは、車両横方向加速度Ay、角速度γ、速度V、車両スリップ角βおよび操舵角を導出可能な計測値を検出するセンサ3が取り付けられた車両2を、直進走行状態から所定舵角になるまで旋回させ、旋回中にセンサ3で検出した複数時点の計測値を取得する取得部10と、各々の時点における操舵角及び車両スリップ角βに基づいて、各々の時点におけるタイヤのスリップ角を算出するスリップ角算出部11と、各々の時点における速度V、車両横方向加速度Ay、角速度γ、およびタイヤのスリップ角に基づいて、各々の時点における前輪タイヤに作用する横方向の力Ffを算出する横力算出部12と、複数時点それぞれの横方向の力Ffとタイヤのスリップ角とに基づいて、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成するデータ生成部13と、を備える、としてもよい。
【0028】
[6]
プログラムは、車両横方向加速度Ay、角速度γ、速度V、車両スリップ角βおよび操舵角を導出可能な計測値を検出するセンサ3が取り付けられた車両2を、直進走行状態から所定舵角になるまで旋回させ、旋回中にセンサ3で検出した複数時点の計測値を取得することと、各々の時点における操舵角及び車両スリップ角βに基づいて、各々の時点におけるタイヤのスリップ角を算出することと、各々の時点における速度V、車両横方向加速度Ay、角速度γ、およびタイヤのスリップ角に基づいて、各々の時点における前輪タイヤに作用する横方向の力を算出することと、複数時点それぞれの横方向の力Ffとタイヤのスリップ角とに基づいて、タイヤのコーナリング特性に関するデータを生成することと、を1又は複数のプロセッサに実行させる、としてもよい。
【0029】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0030】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0031】
(A)システムは、センサ3を含まずに処理部1を含むとしてもよい。また、システムは、センサ3と、処理部1とを含むとしてもよい。システムがセンサ3を含まない場合に、車両2に取り付けられたセンサ3の検出結果を人がシステムに入力する、としてもよい。
【0032】
(B)近似式は、マジックフォーミュラに基づく上記式(4)に限定されない。例えば、マジックフォーミュラに基づき他の式であってもよい。また、マジックフォーミュラではなく、ブラシモデルに基づく近似式を使用してもよい。
【0033】
(C)センサ3は、上記実施形態で述べたものに限定されない。例えば、上記実施形態における車両スリップ角計33は光学式センサであり、路面を観察して車両の進行方向を検出するが、路面を検出する光学式センサに限定されない。例えば、複数のGPSセンサを用いて各々のセンサの移動方向を検出し、各々のセンサの移動方向に基づいて車両スリップ角βを導出してもよい。
【0034】
(D)上記実施形態では、データ生成部13が、複数時点の計測データに対して近似式をフィッティングしているが、複数時点の計測データ自体がタイヤのコーナリング特性に関するデータであるので、近似式を生成しない、としてもよい。
【0035】
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【0036】
図1に示す各部は、所定プログラムを1又は複数のプロセッサで実行することで実現しているが、各部を専用メモリや専用回路で構成してもよい。上記実施形態のシステムは、一つのコンピュータのプロセッサ1aにおいて各部が実装されているが、各部を分散させて、複数のコンピュータやクラウドで実装してもよい。すなわち、上記方法を1又は複数のプロセッサで実行してもよい。
【0037】
システムは、プロセッサ1aを含む。例えば、プロセッサ1aは、中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ、またはコンピュータ実行可能命令の実行が可能なその他の処理ユニットとすることができる。また、システムは、システムのデータを格納するためのメモリ1bを含む。一例では、メモリ1bは、コンピュータ記憶媒体を含み、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたはその他のメモリ技術、CD-ROM、DVDまたはその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージまたはその他の磁気記憶デバイス、あるいは所望のデータを格納するために用いることができ、そしてシステムがアクセスすることができる任意の他の媒体を含む。
【符号の説明】
【0038】
1…処理部、10…取得部、11…スリップ角算出部、12…横力算出部、13…データ生成部、2…車両、3…センサ。