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特開2023-173587状態検出方法、および、状態検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173587
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】状態検出方法、および、状態検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231130BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/306 R
H01L21/30 564C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085935
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 進二
【テーマコード(参考)】
5F043
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
5F043BB27
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE40
5F146JA02
5F146JA04
5F146JA27
5F157AB02
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157BB23
5F157BB44
5F157BH18
5F157CB13
5F157CB15
5F157CD16
5F157CD27
5F157CD29
5F157CE28
5F157CE83
5F157CF16
5F157CF34
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF74
5F157DC21
(57)【要約】
【課題】とりうる撮像方向に制限がある場合であっても、対象の状態検出の精度低下を抑える。
【解決手段】本願明細書に開示される技術に関する状態検出方法は、基板の処理に関する少なくとも1つの撮像対象を撮像部で撮像して、画像を出力する工程と、画像に、撮像対象に応じてあらかじめ用意されたフィルターを適用する工程と、フィルターが適用された画像に基づいて、撮像対象の状態を検出する工程とを備え、画像に適用されるフィルターのフィルター係数が、撮像された撮像対象と撮像部との位置関係に基づいて補正される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理に関する少なくとも1つの撮像対象を撮像部で撮像して、画像を出力する工程と、
前記画像に、前記撮像対象に応じてあらかじめ用意されたフィルターを適用する工程と、
前記フィルターが適用された前記画像に基づいて、前記撮像対象の状態を検出する工程とを備え、
前記画像に適用される前記フィルターのフィルター係数が、撮像された前記撮像対象と前記撮像部との位置関係に基づいて補正される、
状態検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の状態検出方法であり、
前記撮像対象を撮像する際の基準となる方向を基準方向とし、
前記撮像部が前記撮像対象を撮像する方向である撮像方向と前記基準方向との間の角度を傾斜角度とし、
前記フィルター係数が、前記傾斜角度に基づいて補正される、
状態検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の状態検出方法であり、
前記フィルターが2次元フィルターであり、
前記フィルターにおいて、前記撮像方向が前記基準方向に対して傾斜する方向の端部に位置する前記フィルター係数が、0に補正される、
状態検出方法。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1つに記載の状態検出方法であり、
複数の前記撮像対象が、第1の撮像対象と、前記第1の撮像対象とは異なる位置に位置する第2の撮像対象とを含み、
前記画像に前記フィルターを適用する工程が、前記フィルターを、前記第1の撮像対象の前記画像と前記第2の撮像対象の前記画像とで切り替えて適用する工程である、
状態検出方法。
【請求項5】
少なくとも1つの撮像対象を撮像して、画像を出力するための撮像部と、
前記撮像対象に応じてあらかじめ用意されたフィルターが適用された前記画像に基づいて、前記撮像対象の状態を検出するための検出部とを備え、
前記画像に適用される前記フィルターのフィルター係数が、撮像された前記撮像対象と前記撮像部との位置関係に基づいて補正される、
状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に開示される技術は、基板処理における状態検出技術に関するものである。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのflat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、セラミック基板、電界放出ディスプレイ(field emission display、すなわち、FED)用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイスなどの製造工程においては、基板に対して純水、フォトレジスト液またはエッチング液などの処理液を供給して、洗浄処理およびレジスト塗布処理などの基板処理を行っている。
【0003】
このような基板処理においては、ノズルから吐出される処理液の量などが監視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-190511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板処理を行うチャンバー内では、基板処理に用いられる複数の構成が配置される関係上、上記の監視を行うためのカメラの配置も制限される。その結果、カメラが監視対象を斜視せざるを得ず、取得される画像データにおいて監視対象の形状が変形してしまう場合がある。
【0006】
そのような場合には、フィルター処理などの画像処理の精度が低下して、監視対象の状態の検出精度も低下してしまう。
【0007】
本願明細書に開示される技術は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、とりうる撮像方向に制限がある場合であっても、対象の状態検出の精度低下を抑えるための技術である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願明細書に開示される技術の第1の態様である状態検出方法は、基板の処理に関する少なくとも1つの撮像対象を撮像部で撮像して、画像を出力する工程と、前記画像に、前記撮像対象に応じてあらかじめ用意されたフィルターを適用する工程と、前記フィルターが適用された前記画像に基づいて、前記撮像対象の状態を検出する工程とを備え、前記画像に適用される前記フィルターのフィルター係数が、撮像された前記撮像対象と前記撮像部との位置関係に基づいて補正される。
【0009】
本願明細書に開示される技術の第2の態様である状態検出方法は、第1の態様である状態検出方法に関連し、前記撮像対象を撮像する際の基準となる方向を基準方向とし、前記撮像部が前記撮像対象を撮像する方向である撮像方向と前記基準方向との間の角度を傾斜角度とし、前記フィルター係数が、前記傾斜角度に基づいて補正される。
【0010】
本願明細書に開示される技術の第3の態様である状態検出方法は、第2の態様である状態検出方法に関連し、前記フィルターが2次元フィルターであり、前記フィルターにおいて、前記撮像方向が前記基準方向に対して傾斜する方向の端部に位置する前記フィルター係数が、0に補正される。
【0011】
本願明細書に開示される技術の第4の態様である状態検出方法は、第1から3のうちのいずれか1つの態様である状態検出方法に関連し、複数の前記撮像対象が、第1の撮像対象と、前記第1の撮像対象とは異なる位置に位置する第2の撮像対象とを含み、前記画像に前記フィルターを適用する工程が、前記フィルターを、前記第1の撮像対象の前記画像と前記第2の撮像対象の前記画像とで切り替えて適用する工程である。
【0012】
本願明細書に開示される技術の第5の態様である状態検出装置は、少なくとも1つの撮像対象を撮像して、画像を出力するための撮像部と、前記撮像対象に応じてあらかじめ用意されたフィルターが適用された前記画像に基づいて、前記撮像対象の状態を検出するための検出部とを備え、前記画像に適用される前記フィルターのフィルター係数が、撮像された前記撮像対象と前記撮像部との位置関係に基づいて補正される。
【発明の効果】
【0013】
本願明細書に開示される技術の少なくとも第1、5の態様によれば、撮像対象と撮像部との位置関係に基づいてフィルター係数を補正することによって、適切なフィルター処理を実現して、対象の状態検出の精度低下を抑制することができる。
【0014】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態に関する基板処理装置の内部のレイアウトの一例を示す平面図である。
図2】処理ユニットの構成の例を概略的に示す平面図である。
図3】処理ユニットの構成の例を概略的に示す断面図である。
図4】ノズルの移動経路の一例を概略的に示す平面図である。
図5】制御部の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
図6】基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】監視処理を行う際にカメラから取得される画像データの一例を概略的に示す図である。
図8】監視処理を行う際にカメラから取得される画像データの一例を概略的に示す図である。
図9】差分画像データの一例を概略的に示す図である。
図10図8に示された乾燥領域を、平面視で示す図である。
図11図10に示された乾燥領域を、斜視で示す図である。
図12】ROIにおける画素ごとに適用されるフィルターのフィルター係数の例を示す図である。
図13】ROIにおける画素ごとに適用されるフィルターのフィルター係数の他の例を示す図である。
図14】レシピ情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0017】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化などが図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0018】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0019】
また、本願明細書に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0020】
また、本願明細書に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態の内容はこれらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0021】
また、本願明細書に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態が実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0022】
<実施の形態>
以下、本実施の形態に関する状態検出方法、および、状態検出装置について説明する。
【0023】
<基板処理装置の全体構成について>
図1は、本実施の形態に関する基板処理装置100の内部のレイアウトの一例を示す平面図である。図1に例が示されるように、基板処理装置100は、処理対象である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0024】
本実施の形態に関する基板処理装置100は、円形薄板状であるシリコン基板である基板Wに対して、薬液および純水などのリンス液を用いて洗浄処理を行った後、乾燥処理を行う。
【0025】
上記の薬液としては、たとえば、アンモニアと過酸化水素水との混合液(SC1)、塩酸と過酸化水素水との混合水溶液(SC2)、または、DHF液(希フッ酸)などが用いられる。
【0026】
以下の説明では、薬液、リンス液および有機溶剤などを総称して「処理液」とする。なお、洗浄処理のみならず、不要な膜を除去するための薬液、または、エッチングのための薬液なども「処理液」に含まれるものとする。
【0027】
基板処理装置100は、複数の処理ユニット1と、ロードポート101と、インデクサロボット102と、主搬送ロボット103と、制御部9とを備える。
【0028】
キャリア104としては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、または、基板Wを外気にさらすOC(Open Cassette)が採用されてもよい。また、インデクサロボット102は、キャリア104と主搬送ロボット103との間で基板Wを移送する。
【0029】
処理ユニット1は、1枚の基板Wに対して液処理および乾燥処理を行う。本実施の形態に関する基板処理装置100には、同様の構成である12個の処理ユニット1が配置されている。
【0030】
具体的には、それぞれが鉛直方向に積層された3個の処理ユニット1を含む4つのタワーが、主搬送ロボット103の周囲を取り囲むようにして配置されている。
【0031】
図1では、3段に重ねられた処理ユニット1の1つが概略的に示されている。なお、基板処理装置100における処理ユニット1の数量は、12個に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0032】
主搬送ロボット103は、処理ユニット1が積層された4個のタワーの中央に設置されている。主搬送ロボット103は、インデクサロボット102から受け取る処理対象の基板Wをそれぞれの処理ユニット内に搬入する。また、主搬送ロボット103は、それぞれの処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出してインデクサロボット102に渡す。制御部9は、基板処理装置100のそれぞれの構成要素の動作を制御する。
【0033】
以下、基板処理装置100に搭載された12個の処理ユニット1のうちの1つについて説明するが、他の処理ユニット1についても、ノズルの配置関係が異なること以外は、同一の構成を有する。
【0034】
<処理ユニットについて>
次に、基板処理装置100に搭載された12個の処理ユニット1のうちの1つを説明する。図2は、処理ユニット1の構成の例を概略的に示す平面図である。また、図3は、処理ユニット1の構成の例を概略的に示す断面図である。
【0035】
図2および図3に例が示されるように、処理ユニット1は、チャンバー10内に、基板保持部の一例であるスピンチャック20と、加熱部29と、ノズル30と、ノズル60と、ノズル65と、固定ノズル80と、処理カップ40と、カメラ70とを含む。
【0036】
チャンバー10は、鉛直方向に沿う側壁11と、側壁11によって囲まれた空間の上側を閉塞する天井壁12と、下側を閉塞する床壁13とを含む。側壁11、天井壁12および床壁13によって囲まれた空間が処理空間となる。また、チャンバー10の側壁11の一部には、主搬送ロボット103が基板Wを搬出入するための搬出入口およびその搬出入口を開閉するためのシャッターが設けられている(いずれも図示省略)。
【0037】
チャンバー10の天井壁12には、基板処理装置100が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバー10内の処理空間に供給するためのファンフィルターユニット(FFU)14が取り付けられている。ファンフィルターユニット14は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバー10内に送り出すためのファンおよびフィルター(たとえば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルター)を備えており、チャンバー10内の処理空間に清浄空気のダウンフローを形成する。ファンフィルターユニット14から供給された清浄空気を均一に分散させるために、多数の吹出し孔が形成されたパンチングプレートを天井壁12の直下に設けるようにしてもよい。
【0038】
スピンチャック20は、基板Wを水平姿勢(すなわち、法線が鉛直方向に沿う姿勢)に保持する。スピンチャック20は、鉛直方向に沿って延びる回転軸24の上端に水平姿勢で固定された円板形状のスピンベース21を備える。スピンベース21の下方には回転軸24を回転させるスピンモータ22が設けられる。スピンモータ22は、回転軸24を介してスピンベース21を水平面内で回転させる。また、スピンモータ22および回転軸24の周囲を取り囲むように、筒状のカバー部材23が設けられている。
【0039】
円板形状のスピンベース21の外径は、スピンチャック20に保持される円形の基板Wの径よりも若干大きい。よって、スピンベース21は、保持すべき基板Wの下面の全面と対向する上面21aを有している。
【0040】
スピンベース21の上面21aの周縁部には複数(本実施の形態では4本)のチャックピン26が設けられている。複数のチャックピン26は、円形の基板Wの周縁に対応する円周上に沿って均等な間隔をあけて(本実施の形態のように、4個のチャックピン26であれば90°間隔で)配置されている。それぞれのチャックピン26は、基板Wの周縁に接触する保持位置と、基板Wの周縁から離れた開放位置との間で駆動可能に設けられている。複数のチャックピン26は、スピンベース21内に収容された図示省略のリンク機構によって連動して駆動される。スピンチャック20は、複数のチャックピン26をそれぞれの保持位置で停止させることによって、当該基板Wをスピンベース21の上方で上面21aに近接しつつ水平姿勢で保持することができるとともに(図3参照)、複数のチャックピン26をそれぞれの開放位置で停止させることによって、基板Wの保持を解除することができる。
【0041】
スピンモータ22を覆うカバー部材23は、その下端がチャンバー10の床壁13に固定され、上端がスピンベース21の直下にまで到達している。カバー部材23の上端部には、カバー部材23から外方へほぼ水平に張り出し、さらに下方に屈曲して延びる鍔状部材25が設けられている。複数のチャックピン26による把持によってスピンチャック20が基板Wを保持している状態で、スピンモータ22が回転軸24を回転させることによって、基板Wの中心を通る鉛直方向に沿う回転軸線CXまわりに基板Wを回転させることができる。なお、スピンモータ22の駆動は制御部9によって制御される。
【0042】
ノズル30は、ノズルアーム32の先端に吐出ヘッド31を取り付けて構成されている。ノズルアーム32の基端側はノズル基台33に固定して連結されている。ノズル基台33は図示を省略するモータによって鉛直方向に沿った軸のまわりで回動可能とされている。ノズル基台33が回動することによって、図2中の矢印AR34で示されるように、ノズル30はスピンチャック20の上方の空間内で円弧状に移動する。
【0043】
図4は、ノズル30の移動経路の一例を概略的に示す平面図である。図4に例示されるように、ノズル30の吐出ヘッド31は、ノズル基台33の回転によって、ノズル基台33を中心とする周方向に沿って移動する。ノズル30は、任意の位置で停止することができる。図4の例では、ノズル30は中央位置P31、周縁位置P32および待機位置P33の各々で停止可能である。
【0044】
中央位置P31は、吐出ヘッド31が、スピンチャック20に保持された基板Wの中央部と鉛直方向において対向する位置である。中央位置P31に位置するノズル30が回転中の基板Wの上面に処理液を吐出することによって、基板Wの上面全体に処理液を供給できる。これによって、基板Wの上面全体に対して処理を施すことができる。
【0045】
周縁位置P32は、吐出ヘッド31が、スピンチャック20に保持された基板Wの周縁部と鉛直方向において対向する位置である。ノズル30は、周縁位置P32に位置する状態において、回転中の基板Wの上面に処理液を吐出してもよい。これによって、基板Wの上面の周縁部のみに処理液を吐出することができ、基板Wの周縁部のみを処理することができる(いわゆるベベル処理)。
【0046】
また、ノズル30は中央位置P31と周縁位置P32との間で揺動しながら、回転中の基板Wの上面に処理液を吐出することも可能である。この場合にも、基板Wの上面の全面を処理することができる。
【0047】
一方で、ノズル30は周縁位置P32において処理液を吐出しなくてもよい。たとえば、周縁位置P32は、ノズル30が中央位置P31から待機位置P33へ移動する際に、一旦待機する中継位置であってもよい。
【0048】
待機位置P33は、吐出ヘッド31が、スピンチャック20に保持された基板Wと鉛直方向において対向しない位置である。待機位置P33には、ノズル30の吐出ヘッド31を収容する待機ポッドが設けられていてもよい。
【0049】
図3に例が示されるように、ノズル30は供給管34を介して処理液供給源36に接続される。供給管34にはバルブ35が設けられている。バルブ35は供給管34の流路を開閉する。バルブ35が開くことによって、処理液供給源36は供給管34を通じて処理液をノズル30に供給することができる。なお、ノズル30は、複数種の処理液(少なくとも純水を含む)が供給されるように構成されてもよい。
【0050】
また、本実施の形態に関する処理ユニット1には、上記のノズル30に加えてさらにノズル60およびノズル65が設けられている。ノズル60およびノズル65は、上記のノズル30と同じ構成を有する。すなわち、ノズル60は、ノズルアーム62の先端に吐出ヘッド61を取り付けて構成される。ノズル60は、ノズルアーム62の基端側に連結されたノズル基台63によって、矢印AR64で示すように、スピンチャック20の上方の空間を円弧状に移動する。ノズル60の移動経路上に位置する中央位置P61、周縁位置P62および待機位置P63の相対的な位置関係は、それぞれ、中央位置P31、周縁位置P32および待機位置P33の相対的な位置関係と同様である。
【0051】
同様に、ノズル65は、ノズルアーム67の先端に吐出ヘッド66を取り付けて構成される。ノズル65は、ノズルアーム67の基端側に連結されたノズル基台68によって、矢印AR69で示すように、スピンチャック20の上方の空間を円弧状に移動する。処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動する。ノズル65の移動経路上に位置する中央位置P66、周縁位置P67および待機位置P68の相対的な位置関係は、それぞれ、中央位置P31、周縁位置P32および待機位置P33の相対的な位置関係と同様である。
【0052】
また、ノズル65は昇降可能であってもよい。たとえばノズル基台68に内蔵された不図示のノズル昇降機構によってノズル65が昇降する。この場合、ノズル65は、中央位置P66よりも鉛直上方に位置する中央上位置P69にも停止可能である。なお、ノズル30およびノズル60の少なくともいずれか一方も昇降可能に設けられてもよい。
【0053】
ノズル60およびノズル65の各々も、ノズル30と同様に供給管(図示省略)を介して処理液供給源(図示省略)に接続される。各供給管にはバルブが設けられ、バルブが開閉することで処理液の供給および停止が切り替えられる。なお、ノズル60およびノズル65の各々は、少なくとも純水を含む複数種の処理液が供給されるように構成されてもよい。また、ノズル30、ノズル60およびノズル65の少なくともいずれか一つは、純水などの洗浄液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する二流体ノズルであってもよい。また、処理ユニット1に設けられるノズルの数は3本に限定されるものではなく、1本以上であればよい。
【0054】
図2および図3の例では、処理ユニット1には、固定ノズル80も設けられている。固定ノズル80は、スピンチャック20よりも上方、かつ、スピンチャック20の外周縁よりも径方向外側に位置している。より具体的な一例として、固定ノズル80は後述の処理カップ40と鉛直方向において向かい合う位置に設けられている。固定ノズル80の吐出口は基板W側を向いており、その開口軸はたとえば水平方向に沿っている。固定ノズル80も、スピンチャック20に保持された基板Wの上面に処理液を吐出する。固定ノズル80から吐出された処理液は、たとえば、基板Wの上面の中央部に着液する。
【0055】
図3に例示されるように、固定ノズル80は供給管81を介して処理液供給源83に接続される。供給管81にはバルブ82が設けられている。バルブ82は供給管81の流路を開閉する。バルブ82が開くことによって、処理液供給源83は供給管81を通じて処理液(たとえば純水)を固定ノズル80に供給し、固定ノズル80の吐出口から処理液が吐出される。
【0056】
スピンチャック20を取り囲む処理カップ40は、互いに独立して昇降可能な内カップ41、中カップ42および外カップ43を含む。内カップ41は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この内カップ41は、平面視円環状の底部44と、底部44の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部45と、底部44の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部46と、内壁部45と外壁部46との間から立ち上がり、上端部が滑らかな円弧を描きつつ中心側(スピンチャック20に保持される基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる案内部47と、案内部47と外壁部46との間から上方に立ち上がる円筒状の中壁部48とを一体的に含んでいる。
【0057】
内壁部45は、内カップ41が最も上昇された状態で、カバー部材23と鍔状部材25との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。中壁部48は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中カップ42の後述する案内部52と処理液分離壁53との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。
【0058】
案内部47は、滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部47bを有している。また、内壁部45と案内部47との間は、使用済みの処理液を集めて廃棄するための廃棄溝49とされている。案内部47と中壁部48との間は、使用済みの処理液を集めて回収するための円環状の内側回収溝50とされている。さらに、中壁部48と外壁部46との間は、内側回収溝50とは種類の異なる処理液を集めて回収するための円環状の外側回収溝51とされている。
【0059】
廃棄溝49には、この廃棄溝49に集められた処理液を排出するとともに、廃棄溝49内を強制的に排気するための図示省略の排気液機構が接続されている。排気液機構は、たとえば、廃棄溝49の周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。また、内側回収溝50および外側回収溝51には、内側回収溝50および外側回収溝51にそれぞれ集められた処理液を処理ユニット1の外部に設けられた回収タンクに回収するための回収機構(いずれも図示省略)が接続されている。なお、内側回収溝50および外側回収溝51の底部は、水平方向に対して微少角度だけ傾斜しており、その最も低くなる位置に回収機構が接続されている。これによって、内側回収溝50および外側回収溝51に流れ込んだ処理液が円滑に回収される。
【0060】
中カップ42は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この中カップ42は、案内部52と、この案内部52に連結された円筒状の処理液分離壁53とを一体的に含んでいる。
【0061】
案内部52は、内カップ41の案内部47の外側において、案内部47の下端部と同軸円筒状をなす下端部52aと、下端部52aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部52bと、上端部52bの先端部を下方に折り返して形成される折り返し部52cとを有している。下端部52aは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、案内部47と中壁部48との間に適当な隙間を保って内側回収溝50内に収容される。また、上端部52bは、内カップ41の案内部47の上端部47bと上下方向に重なるように設けられ、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、案内部47の上端部47bに対してごく微小な間隔を保って近接する。さらに、上端部52bの先端を下方に折り返して形成される折り返し部52cは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、折り返し部52cが案内部47の上端部47bの先端と水平方向に重なるような長さとされている。
【0062】
また、案内部52の上端部52bは、下方ほど肉厚が厚くなるように形成されており、処理液分離壁53は上端部52bの下端外周縁部から下方に延びるように設けられた円筒形状を有している。処理液分離壁53は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中壁部48と外カップ43との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。
【0063】
外カップ43は、中カップ42の案内部52の外側において、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この外カップ43は、第3案内部としての機能を有する。外カップ43は、案内部52の下端部52aと同軸円筒状をなす下端部43aと、下端部43aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部43bと、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折り返し部43cとを有している。
【0064】
下端部43aは、内カップ41と外カップ43とが最も近接した状態で、中カップ42の処理液分離壁53と内カップ41の外壁部46との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。また、上端部43bは、中カップ42の案内部52と上下方向に重なるように設けられ、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、案内部52の上端部52bに対してごく微小な間隔を保って近接する。さらに、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折り返し部43cは、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、折り返し部43cが案内部52の折り返し部52cと水平方向に重なるように形成されている。
【0065】
また、内カップ41、中カップ42および外カップ43は互いに独立して昇降可能とされている。すなわち、内カップ41、中カップ42および外カップ43のそれぞれには個別にカップ昇降機構(図示省略)が設けられており、それによって別個独立して昇降される。このようなカップ昇降機構としては、たとえばボールネジ機構やエアシリンダなどの公知の種々の機構を採用することができる。
【0066】
仕切板15は、処理カップ40の周囲においてチャンバー10の内側空間を上下に仕切るように設けられている。仕切板15は、処理カップ40を取り囲む1枚の板状部材であってもよいし、複数の板状部材をつなぎ合わせたものであってもよい。また、仕切板15には、厚さ方向に貫通する貫通孔や切り欠きが形成されていても良く、本実施の形態ではノズル30のノズル基台33、ノズル60のノズル基台63およびノズル65のノズル基台68を支持するための支持軸を通すための貫通穴が形成されている。
【0067】
仕切板15の外周端はチャンバー10の側壁11に連結されている。また、仕切板15の処理カップ40を取り囲む端縁部は外カップ43の外径よりも大きな径の円形形状となるように形成されている。よって、仕切板15が外カップ43の昇降の障害となることはない。
【0068】
また、チャンバー10の側壁11の一部であって、床壁13の近傍には排気ダクト18が設けられている。排気ダクト18は図示省略の排気機構に連通接続されている。ファンフィルターユニット14から供給されてチャンバー10内を流下した清浄空気のうち、処理カップ40と仕切板15と間を通過した空気は排気ダクト18から装置外に排出される。
【0069】
カメラ70は、チャンバー10内であって仕切板15よりも上方に設置されている。カメラ70は、たとえば固体撮像素子のひとつであるCCD(Charge Coupled Device)と、レンズなどの光学系とを含む。カメラ70は、後述するチャンバー10内の種々の監視対象を撮像するために設けられる。監視対象の具体例については後に詳述する。カメラ70は、種々の監視対象を撮像視野に含む位置に配置されている。カメラ70はフレームレートごとに撮像視野を撮像して画像データを取得し、取得した画像データを順次に制御部9に出力する。
【0070】
図3に示されるように、チャンバー10内であって仕切板15よりも上方の位置に、照明部71が設けられている。チャンバー10内が暗室である場合、カメラ70が撮像を行う際に照明部71が光を照射するように、制御部9が照明部71を制御してもよい。
【0071】
基板処理装置100に設けられた制御部9のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同一である。すなわち、制御部9は、各種演算処理を行うCPUなどの処理部(処理回路)と、基本プログラムを記録する読み出し専用のメモリであるROM(Rea Only Memory)などの一時的な記録媒体と、各種情報を記録する読み書き自在のメモリであるRAM(Random Access Memory)および制御用ソフトウェアまたはデータなどを記録しておく磁気ディスクなどである非一時的な記録媒体とを備えて構成される。
【0072】
制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって、基板処理装置100の各動作機構が制御部9に制御され、基板処理装置100における処理が進行する。なお、制御部9は、その機能の実現にソフトウェアが不要な専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0073】
加熱部29は、基板Wを加熱する加熱手段である。なお、加熱部29は、備えられていなくてもよい。加熱部29は、円板状のホットプレート291と、発熱源となるヒータ292とを含む。ホットプレート291は、スピンベース21の上面21aと、チャックピン26に保持される基板Wの下面との間に、配置されている。ヒータ292は、ホットプレート291の内部に埋め込まれている。ヒータ292には、たとえば、通電によって発熱するニクロム線等の電熱線が用いられる。ヒータ292に通電すると、ホットプレート291が、環境温度よりも高い温度に加熱される。
【0074】
また処理ユニット1においては、ノズル65は処理液(たとえば、リンス液)のみならず、不活性ガスも吐出する。不活性ガスは、基板Wとの反応性が低いガスであり、たとえばアルゴンガス等の希ガスまたは窒素を含む。たとえばノズル65の吐出ヘッドには、処理液用の第1内部流路および第1吐出口と、気体用の第2内部流路および第2吐出口が設けられ、第1内部流路は第1供給管を通じて処理液供給源に接続され、第2内部流路は第2供給管を通じて気体供給源に接続される。第1供給管には第1バルブが設けられ、第2供給管には第2バルブが設けられる。
【0075】
図5は、制御部9の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。図5に例が示されるように、制御部9は、監視処理部91と、条件設定部92と、処理制御部93とを含んでいる。
【0076】
処理制御部93は、チャンバー10内の各構成を制御する。具体的には、処理制御部93は、スピンモータ22、バルブ35またはバルブ82などの各種バルブ、ノズル基台33、ノズル基台63およびノズル基台68のモータ、ノズル昇降機構、カップ昇降機構、ファンフィルターユニット14などを制御する。処理制御部93がこれらの構成を所定の手順に沿って制御することによって、処理ユニット1は基板Wに対する処理を行うことができる。
【0077】
監視処理部91は、カメラ70がチャンバー10内を撮像してカメラ70から出力される画像データに基づいて監視処理を行う。これによって、監視処理部91は、チャンバー10内の種々の監視対象を監視することができる。
【0078】
条件設定部92は、監視すべき監視対象を特定し、当該監視対象に応じてカメラ70の撮像条件を変更する。そして、条件設定部92は当該撮像条件をカメラ70に通知する。撮像条件は、たとえば、解像度、フレームレートまたは視野範囲の少なくともいずれか一つを含む。カメラ70は、条件設定部92から通知された撮像条件で画像データを取得し、当該画像データを制御部9に出力する。
【0079】
<基板処理について>
図6は、基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、主搬送ロボット103が未処理の基板Wを処理ユニット1に搬入する(ステップS1:搬入工程)。次に、スピンチャック20が基板Wを水平姿勢で保持する(ステップS2:保持工程)。具体的には、複数のチャックピン26がそれぞれの接触位置に移動することによって、複数のチャックピン26が基板Wを保持する。
【0080】
次に、スピンモータ22が基板Wの回転を開始する(ステップS3:回転工程)。具体的には、スピンモータ22がスピンチャック20を回転させることによって、スピンチャック20に保持された基板Wを回転させる。次に、カップ昇降機構が処理カップ40を上昇させる(ステップS4:カップ上昇工程)。これによって、処理カップ40が上位置で停止する。
【0081】
次に、基板Wに対して処理液を順次に供給する(ステップS5:処理液工程)。なお、この処理液工程(ステップS5)において、カップ昇降機構は、基板Wに供給される処理液の種類に応じて、適宜に上昇させるカップを切り替える。
【0082】
そして、処理液工程(ステップS5)の終了後に、処理ユニット1は、基板Wを乾燥させる(ステップS6:乾燥工程)。たとえば、スピンモータ22が基板Wの回転速度を増加させて、基板Wを乾燥させる(いわゆるスピンドライ)。
【0083】
次に、カップ昇降機構は処理カップ40を下降させる(ステップS7:カップ下降工程)。これによって、処理カップ40は下位置に位置する。
【0084】
次に、スピンモータ22はスピンチャック20および基板Wの回転を終了し、スピンチャック20は基板Wの保持を解除する(ステップS8:保持解除工程)。具体的には、複数のチャックピン26がそれぞれの開放位置に移動することで、保持を解除する。
【0085】
次に、主搬送ロボット103は、処理済みの基板Wを処理ユニット1から搬出する(ステップS9:搬出工程)。
【0086】
以上のようにして、基板Wに対する処理(基板処理)が行われる。
【0087】
<監視処理について>
監視処理部91は、カメラ70を用いてチャンバー10内を撮像し、上記の基板Wに対する処理が適切に進行しているか否かを適時に判断する(監視処理)。たとえば、監視対象の状態の変化(位置変化、輝度変化、形状変化、監視対象の検出の有無など)を検出し、当該変化の量が、あらかじめ定められたしきい値を超える量であった場合に、基板Wに対する処理が適切に進行していないと判断する。
【0088】
後述するレシピ情報において監視対象に関する情報が示されていた場合、監視処理部91は当該工程における対応する画像をカメラ70から取得し、監視処理を行う。そして、基板Wに対する処理が適切に進行していないと判断された場合に、たとえば、制御部9における記録媒体に、当該結果と関連する画像とを記録する。
【0089】
監視処理部91が監視する監視対象(すなわち、カメラ70で撮像する撮像対象)は、基板処理に使われる撮像可能な対象物、または、基板処理において現れる撮像可能な現象などを含む。また、監視対象は、以下に説明されるように、処理の進行状況に応じて適宜切り替えられる。以下、チャンバー10内の監視対象の例を説明する。
【0090】
<ノズル>
上述の処理液工程において、ノズル30、ノズル60およびノズル65は適宜に移動する。たとえば、ノズル30の吐出ヘッド31は、待機位置P33から中央位置P31に移動する。このとき、ノズル基台33のモータ異常などによって、吐出ヘッド31が中央位置P31からずれて停止する場合もある。
【0091】
そこで、ノズル30が移動する工程(期間)における監視対象として、吐出ヘッド31(の位置)を採用してもよい。以下、吐出ヘッド31を監視対象とする監視処理の具体的な一例について述べる。
【0092】
図7は、監視処理を行う際にカメラ70から取得される画像データの一例を概略的に示す図である。図7の画像データには、中央位置P31で停止するノズル30の吐出ヘッド31が含まれている。つまり、図7は、ノズル30が待機位置P33から中央位置P31に移動した後に取得された画像データを示している。この画像データには、ノズル30の他、上位置に位置する処理カップ40、処理カップ40の開口内に位置する基板W、および、固定ノズル80も含まれている。
【0093】
監視処理部91は、取得された画像データを解析して、吐出ヘッド31の位置を検出する。たとえば、監視処理部91は、予め記録媒体に記録された吐出ヘッド31を含む参照画像データRI1と、画像データとのパターンマッチングによって、画像データ内の吐出ヘッド31の位置を特定してもよい。なお、図7の例では、参照画像データRI1を模式的に仮想線で、画像データに重ね合わせて示している。また、後述するレシピ情報によってノズル30の位置があらかじめ分かっている場合には、吐出ヘッド31の位置に対応する領域を上記の画像データから選択して、当該領域の輝度データなどに基づいて当該領域における吐出ヘッド31の有無を検出してもよい。
【0094】
次に、監視処理部91は、検出された吐出ヘッド31の位置の適否を判断する。たとえば、監視処理部91は、吐出ヘッド31の位置と、予め設定された中央位置P31との差が所定のノズル位置の許容値以下であるか否かを判断する。監視処理部91は、当該差が許容値以下であるときに、吐出ヘッド31が中央位置P31に位置していると判断する。一方で、監視処理部91は当該差が許容値よりも大きいときに、吐出ヘッド31が中央位置P31に位置していないと判断する。つまり、監視処理部91はノズル位置異常が生じたと判断する。
【0095】
異常が生じた場合には、監視処理部91は不図示の報知部(たとえばディスプレイまたはスピーカなど)にその異常を報知させてもよい。
【0096】
また、上記の異常が生じた場合に、制御部9は、処理ユニット1の動作を停止させて、基板Wに対する処理を中断してもよい。なお、この点は、以下の種々の監視処理においても同様である。
【0097】
ところで、ノズル30は、所定のタイミングで待機位置P33から中央位置P31に移動する。監視処理部91は、ノズル30の移動中にその位置の適否判断を行う場合にも、上記の参照画像データRI1と、画像データとのパターンマッチングによって、画像データ内のノズル30の位置を特定してもよい。
【0098】
なお、上記では、基板処理に関する監視対象(撮像対象)の例としてノズル30の吐出ヘッド31が示されたが、基板処理に関する監視対象となるものはこれに限られるものではなく、たとえば、基板W、チャックピン26、または、ノズル30のノズルアーム32などであってもよい。
【0099】
<処理液>
上述の処理液工程において、ノズル30、ノズル60、ノズル65および固定ノズル80は適宜に処理液を吐出する。このとき、適切に処理液を吐出することで、基板Wに対する処理を行うことができる。
【0100】
そこで、それぞれのノズルが処理液を吐出する工程における監視対象として、吐出された処理液の状態を採用してもよい。処理液の状態を監視対象とする監視処理の具体的な一例について述べる。
【0101】
処理液の状態を監視対象とする工程として、図6における乾燥工程(ステップS6)は、スピンモータ22で基板Wの回転速度を増加させることに加えて、加熱部29で基板Wを加熱することができる。
【0102】
図8は、監視処理を行う際にカメラ70から取得される画像データの一例を概略的に示す図である。図8の画像データには、中央位置P66で停止するノズル65の吐出ヘッド66が含まれている。この画像データには、ノズル65の他、上位置に位置する処理カップ40、処理カップ40の開口内に位置する基板W、基板Wの上面に形成される液膜LF1、および、固定ノズル80も含まれている。
【0103】
図8に示されるような液膜LF1が形成されるためには、まず、ノズル65が待機位置P68から中央位置P65に移動する。次に、ノズル65が回転中の基板Wの上面に、たとえば純水よりも揮発性の高いリンス液を供給する。当該リンス液はたとえばIPA(イソプロピルアルコール)である。これによって、基板Wの上面の全面にリンス液が広がり、薬液処理の後などに基板Wの上面に残留していた処理液がリンス液に置換される。
【0104】
次に、スピンモータ22が基板Wの回転を停止しつつ、ノズル65がリンス液の吐出を停止する。これによって、基板Wの上面のリンス液が静止する。つまり、基板Wの上面にはリンス液の液膜LF1が形成される。続いて、加熱部29のヒータ292に通電する。これによって、加熱部29を昇温させて、加熱部29の熱によって基板Wを加熱する。これによって、リンス液の液膜LF1のうち、基板Wの上面に接触する下層部分も加熱される。そして、液膜LF1の当該下層部分が気化する。その結果、基板Wの上面と液膜LF1との間に、IPAの蒸気層が形成される。つまり、液膜LF1が基板Wの上面から浮いた状態となる。
【0105】
次に、ノズル65が不活性ガスを吐出する。この不活性ガスは、液膜LF1の中央部に向かって吐出される。不活性ガスが液膜LF1に吹き付けられることによって、液膜LF1は径方向外側に向かって移動し、基板Wの周縁から外側に流れ出る。これに伴って、液膜LF1の中央部に、平面視において円形の開口が形成される(図8を参照)。この開口には、リンス液等の処理液が存在していないので、当該開口は乾燥領域DR1である。液膜LF1は不活性ガスに押圧されて順次に径方向外側に移動して基板Wの周縁から流れ落ちるので、乾燥領域DR1は時間の経過とともに等方的に広がる。つまり、乾燥領域DR1は平面視において円形を維持したまま拡大する。図8の例では、異なるタイミングで取得された画像データにおける乾燥領域DR1が仮想線で模式的に示されている。
【0106】
上述の乾燥工程では、乾燥領域DR1の形成および拡大を、意図した通りに安定して行うことが難しい。すなわち、多数の基板Wを順次に処理すると、一部の基板Wの乾燥処理時に、乾燥領域DR1の位置、形状または数が、意図した状態とならない場合がある。
【0107】
たとえば、基板Wを加熱して、基板Wの上面と液膜LF1との間にリンス液の蒸気層を形成する。このとき、液膜LF1に微細な気泡が発生し、それによって、液膜LF1の一部に意図しない開口が発生してしまう場合がある。不活性ガスの吹き付けによる場合よりも前に液膜LF1の一部に開口が発生していると、基板Wの上面と液膜LF1とのリンス液の蒸気が、当該意図しない開口から漏れる。そうすると、蒸気層を維持できず、適切に乾燥工程を行うことができない。
【0108】
また、不活性ガスの吹き付けによって上述のように乾燥領域DR1を徐々に拡大する際にも、乾燥領域DR1の形状が崩れたり、複数の乾燥領域DR1が発生したりする場合がある。この場合も、適切に乾燥工程を行うことができない。
【0109】
そこで、ノズル65が不活性ガスを吹き付けることによって液膜LF1に形成される乾燥領域DR1を、処理液の状態を示す監視対象とする。
【0110】
監視処理部91は、取得された画像データを解析して、乾燥領域DR1の位置および形状を検出する。たとえば、監視処理部91は、正常な状態(乾燥領域DR1が中央部で円形に維持された状態)を撮像して得られた参照画像データと、画像データとのパターンマッチングによって、画像データ内の乾燥領域DR1の位置および形状を検出してもよい。また、後述するレシピ情報によって乾燥領域DR1が形成される位置があらかじめ分かっている場合には、乾燥領域DR1が形成される位置に対応する領域を上記の画像データから選択して、当該領域の輝度データなどに基づいて当該領域における乾燥領域DR1の有無を検出してもよい。
【0111】
さらに、監視処理部91は、不活性ガスの吐出後に順次に取得される2つの画像データの差分を算出して差分画像データを取得することができる。図9は、差分画像データの一例を概略的に示す図である。この差分画像データには、乾燥領域DR1の周縁部に相当する閉曲線Cが含まれる。乾燥領域DR1が円形を維持したまま拡大すれば、閉曲線Cは差分画像データにおいて楕円形状を形成する。一方で、乾燥領域DR1の形状が崩れると、閉曲線Cは楕円形状からゆがむ。監視処理部91は、閉曲線Cのゆがみの程度に基づいて、乾燥領域DR1の状態を検出することができる。
【0112】
なお、上記では、基板処理に関する監視対象(撮像対象)の例として液膜LF1に形成された乾燥領域DR1が示されたが、基板処理に関する監視対象となるものはこれに限られるものではなく、たとえば、ノズル65の吐出ヘッド66から吐出されている状態の処理液、または、液だれしている状態の処理液などであってもよい。
【0113】
<画像処理について>
図7図8に示されるような画像データから監視対象(撮像対象)を抽出し、その位置または形状などを検出する場合、画像データにおける特定の領域であるregion of interest(ROI)を設定する。ROIは、1つの画像データに複数設定されてもよく、また、監視対象の形状に沿うように設定されることが望ましい。
【0114】
一方で、参照画像データにおける画像は、ROIに対応する領域の画像であり、たとえばパターンマッチングに際しては、ROIを画像データ全体(または一部)で移動させながら、ROI内の画像と参照画像データとの類似度が高い箇所を探索する。そして、監視処理部91は、上記の類似度があらかじめ定められたしきい値を超える場合に、パターンマッチングが成功したと判断する。監視対象の位置があらかじめ分かっている場合には、当該箇所にROIを設定する。
【0115】
そして、監視処理部91は、ROIにおける画像処理を行い、監視対象の座標位置(たとえば、XYZ軸座標)または監視対象の形状などを抽出する。上記の画像処理には、たとえば、画素ごとに様々なフィルター処理(たとえば、平滑化またはエッジ抽出など)を適用することが含まれる。
【0116】
図8に示される監視対象である乾燥領域DR1は、平面視では、図10に例が示されるように、円形の領域である。ここで、図10は、図8に示された乾燥領域DR1を、平面視で示す図である。
【0117】
図10に示される場合におけるROIは、たとえば、ROI200のように設定される。そして、監視処理部91は、ROI200における画素ごとに、あらかじめ用意されたフィルターを適用するフィルター処理などを施すことによって、監視対象の座標位置または形状などを含む監視対象の状態を検出する。
【0118】
しかしながら、基板Wとカメラ70とが図3に示されるような位置関係にあるため、カメラ70から乾燥領域DR1を撮像する方向は、平面視に対して傾斜する方向となる。そのため、カメラ70で撮像される乾燥領域DR1は、図8に例が示されるように、Z軸方向に縮む楕円形の領域となる。すなわち、図11に例が示されるように、B方向に縮む楕円形の領域となる。ここで、図11は、図10に示された乾燥領域DR1を、斜視で示す図である。図11は、図10の場合からB方向に傾斜角度を有して、カメラ70で乾燥領域DR1を撮像した場合に対応する。
【0119】
図11に示される場合におけるROIは、図10に示される場合と同様に、たとえば、ROI200のように設定される。そして、監視処理部91は、ROI200における画素ごとにフィルター処理などを適用することによって、監視対象の座標位置または形状などを抽出する。
【0120】
図11に示されるように監視対象(乾燥領域DR1)がZ軸方向に縮んでいる状態で、当該画像に対して、図10における場合と同様にROI200における画素ごとにフィルター処理を適用してしまうと、ROI200内に含まれる監視対象以外の画像(すなわち、ROI200内の乾燥領域DR1の、B方向両端の画像)の影響でフィルター処理が適切に行われず、その結果、監視対象の抽出精度が低下してしまう。
【0121】
そこで、本実施の形態では、監視対象とカメラ70との位置関係に応じて、画像処理(フィルター処理)を調整する方法を示す。
【0122】
図12は、ROIにおける画素ごとに適用されるフィルターのフィルター係数の例を示す図である。図12では、ROIにおける画素ごとに適用される、2次元フィルター行列(5×5)のフィルター係数が示されている。図12に示されるフィルターのB方向は、図10および図11におけるB方向に対応し、かつ、図8におけるZ軸方向に対応するものとする。
【0123】
図12に示されるフィルター係数は、監視対象の平面視において適用されるフィルターにおけるフィルター係数であり、平面視がカメラ70から監視対象を撮像する方向の基準方向であるとすると、図12に示されるフィルター係数は、基準フィルター係数とすることができる。なお、図12に示されるフィルター係数の個数および具体的な数値は一例であり、これらの個数および数値に限られるものではない。また、基準方向は、図12に示された平面視に限られるものではない。
【0124】
これに対し、図13は、ROIにおける画素ごとに適用されるフィルターのフィルター係数の他の例を示す図である。図13では、ROIにおける画素ごとに適用される、2次元フィルター行列(5×5)のフィルター係数が示されている。図13に示されるフィルターのB方向は、図10および図11におけるB方向に対応し、かつ、図8におけるZ軸方向に対応するものとする。
【0125】
図13に示されるフィルター係数は、監視対象の斜視において適用されるフィルターにおけるフィルター係数である。すなわち、図13に示されるフィルター係数に対応する撮像方向は、上記の基準方向に対して傾斜角度を有する。
【0126】
図13に示されるフィルター係数を傾斜フィルター係数とすると、傾斜フィルター係数は、基準フィルター係数とは異なり、B方向の両端の行(第1行および第5行)の数値がすべて0である。また、傾斜フィルター係数のB方向の両端の行から1行内側の行(第2行および第4行)の数値は、双方とも基準フィルター係数以下となっている。
【0127】
これは、基準方向に対する傾斜角度に応じて(すなわち、乾燥領域DR1のB方向における縮み具合に応じて)、傾斜方向に対応するフィルター係数(すなわち、第1行、第2行、第4行および第5行)が低下するように補正したものである。言い換えれば、傾斜フィルター係数は、監視対象とカメラ70との位置関係に基づいて、基準フィルター係数が補正されたものである。
【0128】
図11に示される乾燥領域DR1は、B方向に縮んでおり、図10の平面視に対して、B方向に傾斜角度を有していることとなる。よって、図13に示される傾斜フィルター係数では、傾斜角度を有する方向であるB方向の端部側(すなわち、第1行、第2行、第4行および第5行)に位置するフィルター係数が低下するように補正されている。特に、B方向の端部(すなわち、第1行および第5行)に位置するフィルター係数は、0に補正されている。
【0129】
このように補正された傾斜フィルター係数を使ってフィルター処理を行うことによって、フィルター処理の対象となる画素に対してB方向の両端(具体的には、第1行、第2行、第4行および第5行)における画素の影響が小さくなる。すなわち、実質的に、フィルターが適用される領域の形状が、B方向に狭くなるように変形される。そうすると、ROI200内に含まれる監視対象以外の画像(具体的には、ROI200内の乾燥領域DR1の、B方向両端の画像)の影響を抑制して、適切なフィルター処理を実現することができる。その結果、監視対象の抽出精度を高く維持することができる。
【0130】
ここで、上記の傾斜フィルター係数の効果(すなわち、フィルター係数の補正の効果)は、ROI内の画素数が小さい場合(たとえば、図8に示されるような、形成された乾燥領域DR1が未だ小さい形成初期の段階など)、ROI内に監視対象以外を示す画素の割合が多い場合などに顕著となりやすい。
【0131】
なお、図12および図13に示されるフィルター係数の個数および具体的な数値は一例であり、これらの個数および数値に限られるものではない。また、監視対象を撮像するカメラが複数備えられている場合には、それぞれのカメラに対応して、フィルター係数が設定される。
【0132】
上記の傾斜フィルター係数は、レシピ情報などからあらかじめ分かっている監視対象の位置などに対応して、それぞれあらかじめ用意されていてもよいし、監視対象の位置が変化する度にカメラ70と監視対象との位置関係(主に傾斜角度)を都度算出し、算出された位置関係に基づいて基準フィルター係数を補正して算出されるものであってもよい。
【0133】
あらかじめ用意される傾斜フィルター係数としては、たとえば、カメラ70から見て奥側に位置するチャックピン26の検出には、A方向には補正せず、B方向の端部側の行(たとえば、第1行、第2行、第4行および第5行)にはフィルター係数が70%に低下するように補正を行う(または、そのように補正された値を用いる)ことができる。また、たとえば、処理カップ40の高さ検出には、A方向には補正せず、B方向の端部側の行にはフィルター係数が40%に低下するように補正を行う(または、そのように補正された値を用いる)ことができる。
【0134】
また、たとえば、待機位置P33に位置するノズル30の位置検出には、A方向の端部側の列(たとえば、第1列、第2列、第4列および第5列)にはフィルター係数が40%に低下するように補正を行い(または、そのように補正された値を用い)、B方向には補正しないとすることができる。また、たとえば、中央位置P31に位置するノズル30の位置検出には、A方向およびB方向において補正しないとすることができる。ここで、ノズル30は、待機位置P33に位置する場合と、中央位置P31に位置する場合とで、カメラ70から見た撮像方向が異なる。中央位置P31に位置する場合の撮像方向を基準方向とすると、待機位置P33に位置する場合には一定の傾斜角度を有する撮像方向となる。そのため、同一の監視対象であっても、その位置によって異なる傾斜角度を反映して、傾斜フィルター係数が異なっている。
【0135】
上記のように、傾斜フィルター係数があらかじめ用意されていることによって、フィルター処理の度に基準フィルター係数を補正するための演算を行う必要がなくなる。よって、遅延せずに適切なタイミングでフィルター処理を行うことができる。
【0136】
また、カメラ70と監視対象との位置関係に基づいて基準フィルター係数を補正する方法としては、監視対象ごとにあらかじめ基準方向を定めておき、当該基準方向に対する傾斜角度の大きさおよび方向に対応して、基準フィルター係数のうちのどの係数をどの程度補正するかを示す補正テーブルを用意しておく。そして、当該補正テーブルを、たとえば、制御部9の記録媒体に記録しておく。
【0137】
次に、カメラ70と監視対象との位置関係を、カメラ70で取得された画像の解析、または、その他のセンサーの出力などに基づいて算出し、さらに、カメラ70の撮像方向の基準方向に対する傾斜角度の大きさおよび方向に基づいて補正テーブルの対応箇所を参照する。そして、基準フィルター係数を補正して、フィルター処理に適用する傾斜フィルター係数を得ることができる。
【0138】
上記のように、基準フィルター係数を傾斜角度に基づいて都度補正することによって、たとえば、揺動するノズルの位置を検出する場合などで、撮像可能な範囲内の任意の位置におけるノズルの状態変化を検出することができる。よって、高い自由度を維持しつつフィルター処理を行うことができる。
【0139】
<レシピ情報について>
制御部9には、たとえば、より上流側の装置または作業員から、基板処理の手順(各工程および各工程における各種条件を含む)を示すレシピ情報が入力される。処理制御部93が当該レシピ情報に基づいて処理ユニット1を制御することによって、基板Wに対する処理を行うことができる。
【0140】
図14は、レシピ情報の例を示す図である。図14に例が示されるように、レシピ情報は、たとえば、「工程番号」、「カップ位置」、「ノズル位置」、「チャック状態」および「吐出の有無」などの情報を含むことができる。なお、これの他に、「処理時間」または「吐出流量」などの情報が含まれていてもよい。
【0141】
さらに、図14に示されるレシピ情報では、それぞれの工程における監視対象が特定される。図14においては、工程「1」における中央位置におけるノズルの位置、工程「2」における上位置における処理カップの高さ、工程「4」における下位置における処理カップの高さおよび待機位置におけるノズルの位置、がそれぞれ監視対象となっている。
【0142】
この場合、条件設定部92は、当該レシピ情報に基づいて各工程における監視対象を特定し、その監視対象を撮像するための条件(撮像方向などを含む)を設定して、カメラ70に通知する。
【0143】
このように、条件設定部92は、レシピ情報に基づいて、1つまたは複数の監視対象を特定する。なお、監視対象は、必ずしもレシピ情報に基づいて特定される必要はない。監視対象を特定するための情報が上流側の装置または作業員によって制御部9に入力されてもよい。
【0144】
<以上に記載された実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。すなわち、以下では便宜上、対応づけられる具体的な構成のうちのいずれか1つのみが代表して記載される場合があるが、代表して記載された具体的な構成が対応づけられる他の具体的な構成に置き換えられてもよい。
【0145】
以上に記載された実施の形態によれば、状態検出方法において、基板Wの処理に関する少なくとも1つの撮像対象を撮像部で撮像して、画像を出力する。ここで、撮像部は、たとえば、カメラ70などに対応するものである。そして、画像に、撮像対象に応じてあらかじめ用意されたフィルターを適用する。そして、フィルターが適用された画像に基づいて、撮像対象の状態を検出する。ここで、画像に適用されるフィルターのフィルター係数は、撮像された撮像対象とカメラ70との位置関係に基づいて補正される。
【0146】
このような構成によれば、撮像対象とカメラ70との位置関係に基づいてフィルター係数を補正することによって、フィルター処理における撮像対象以外の画像の影響を抑制することができる。よって、適切なフィルター処理を実現して、対象の状態検出の精度低下を抑制することができる。また、撮像対象とカメラ70との位置関係が変わるたびにフィルター係数を作成しなおす場合に比べて、2者間の位置関係を反映するフィルター係数の算出が容易である。
【0147】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0148】
また、以上に記載された実施の形態によれば、撮像対象を撮像する際の基準となる方向を基準方向とする。また、カメラ70が撮像対象を撮像する方向である撮像方向と基準方向との間の角度を傾斜角度とする。そして、フィルター係数が、傾斜角度に基づいて補正される。このような構成によれば、フィルター処理の対象となる画素に対して傾斜方向の両端側における画素の影響が小さくなる。そうすると、ROI200内に含まれる監視対象以外の画像の影響を抑制して、適切なフィルター処理を実現することができる。
【0149】
また、以上に記載された実施の形態によれば、フィルターが2次元フィルターである。そして、フィルターにおいて、撮像方向が基準方向に対して傾斜する方向の端部に位置するフィルター係数が、0に補正される。このような構成によれば、フィルター処理の対象となる画素に対して傾斜方向の両端側における画素の影響が小さくなる。すなわち、実質的に、フィルターが適用される領域の形状が、B方向に狭くなるように変形される。そうすると、ROI200内に含まれる監視対象以外の画像の影響を抑制して、適切なフィルター処理を実現することができる。
【0150】
また、以上に記載された実施の形態によれば、複数の撮像対象が、第1の撮像対象と、第1の撮像対象とは異なる位置に位置する第2の撮像対象とを含む。そして、画像にフィルターを適用する工程が、フィルターを、第1の撮像対象の画像と第2の撮像対象の画像とで切り替えて適用する工程である。このような構成によれば、異なる位置に位置する監視対象(同一の監視対象である場合を含む)に対して、監視対象の位置によって変化する傾斜角度を反映する傾斜フィルター係数を切り替えて適用することができる。
【0151】
以上に記載された実施の形態によれば、状態検出装置は、少なくとも1つの撮像対象を撮像して、画像を出力するためのカメラ70と、撮像対象に応じてあらかじめ用意されたフィルターが適用された画像に基づいて、撮像対象の状態を検出するための検出部とを備え、画像に適用されるフィルターのフィルター係数が、撮像された撮像対象とカメラ70との位置関係に基づいて補正される。ここで、検出部は、たとえば、制御部9などに対応するものである。
【0152】
このような構成によれば、撮像対象とカメラ70との位置関係に基づいてフィルター係数を補正することによって、フィルター処理における撮像対象以外の画像の影響を抑制することができる。よって、適切なフィルター処理を実現して、対象の状態検出の精度低下を抑制することができる。
【0153】
また、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0154】
<以上に記載された実施の形態の変形例について>
以上に記載された実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、限定的なものではないものとする。
【0155】
したがって、例が示されていない無数の変形例と均等物とが、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【0156】
また、以上に記載された少なくとも1つの実施の形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
【符号の説明】
【0157】
30 ノズル
60 ノズル
65 ノズル
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14