(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173588
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20231130BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20231130BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/02
B29C33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085936
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下多 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 元貴
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD03
4F202AD05C
4F202AD29
4F202AG03
4F202AH37
4F202AM32
4F202AR12
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CQ01
4F202CQ05
4F206AD05C
4F206AD19
4F206AD27
4F206AD29
4F206AH34
4F206AM32
4F206AR12
4F206JA02
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB17
4F206JF05
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】成形対象物の本体部の一端から延びる扁平面を有する端子の扁平面の延びる方向に直交する方向が成形型の型面と垂直になるように成形対象物を成形型に設置した状態で樹脂成形を行った場合でも、樹脂漏れによる端子への樹脂の付着を抑制することが可能な樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂成形品31の製造方法は、本体部3aと本体部3aの一端から延びる扁平面3cを有する端子3bとを備えた成形対象物3を準備する工程S1と、端子3bに弾性樹脂4を密着させる工程S2と、弾性樹脂4を密着させる工程S2の後に、扁平面3cの延びる方向に直交する方向が下成形型20bの型面22dと垂直になるように下成形型20bに成形対象物3を設置する工程S3と、上成形型20aと下成形型20bとを型締めした後に成形対象物3を樹脂成形する工程S4とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上成形型と下成形型とを備える樹脂成形装置を用いて成形対象物を樹脂成形することによって樹脂成形品を製造する方法であって、
本体部と前記本体部の一端から延びる扁平面を有する端子とを備えた前記成形対象物を準備する工程と、
前記端子に弾性樹脂を密着させる工程と、
前記弾性樹脂を密着させる工程の後に、前記扁平面の延びる方向に直交する方向が前記下成形型の型面と垂直になるように前記下成形型に前記成形対象物を設置する工程と、
前記上成形型と前記下成形型とを型締めして前記成形対象物を樹脂成形する工程とを含む、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記弾性樹脂は、環状の開口部を備えた熱収縮性樹脂であって、
前記弾性樹脂を密着させる工程は、前記弾性樹脂の前記開口部に前記端子を挿入する工程と、前記弾性樹脂を加熱する工程とを含む、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記上成形型および前記下成形型は、前記本体部を設置するためのキャビティと、前記キャビティの一端から一方向に延びる、前記端子を設置するためのスリットとを備え、
前記成形対象物を前記下成形型に設置する工程は、前記端子に密着させた前記弾性樹脂を前記下成形型の前記スリットに設置する工程を含む、請求項1または請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記スリットは、前記キャビティ側の第1のスリットと、前記第1のスリットに隣接する第3のスリットとを含む、請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記成形対象物を前記下成形型に設置する工程は、前記弾性樹脂を前記下成形型の前記第1のスリットに設置する工程を含む、請求項4に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記弾性樹脂の幅が、前記下成形型の前記第1のスリットの幅より広い、請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記下成形型の前記第3のスリットの幅は、前記下成形型の前記第1のスリットの幅よりも狭い、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記弾性樹脂を密着させる工程と前記成形対象物を設置する工程との間に、前記弾性樹脂の外表面に保護材を設置する工程をさらに含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記成形対象物は、コイルを含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1には、コイルのベースから延びる端子ピンを熱可塑性合成樹脂からなる底板の貫通孔に貫通させることによってコイルに底板を装着した状態で樹脂成形を行う樹脂成型コイルの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂成型コイルの製造方法において、コイルの端子ピンが扁平面を有する場合には、熱可塑性合成樹脂からなる底板が端子ピンに密着しにくくなり、端子ピンと底板との間から樹脂漏れして、端子ピンに樹脂が付着することがあった。特に、端子ピンの扁平面の延びる方向に直交する方向が成形型の型面と垂直になるようにコイルを成形型に設置した状態で樹脂成形を行った場合には樹脂漏れが発生しやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示された実施形態によれば、上成形型と下成形型とを備える樹脂成形装置を用いて成形対象物を樹脂成形することによって樹脂成形品を製造する方法であって、本体部と本体部の一端から延びる扁平面を有する端子とを備えた成形対象物を準備する工程と、端子に弾性樹脂を密着させる工程と、弾性樹脂を密着させる工程の後に、扁平面の延びる方向に直交する方向が下成形型の型面と垂直になるように下成形型に成形対象物を設置する工程と、上成形型と下成形型とを型締めした後に成形対象物を樹脂成形する工程とを含む、樹脂成形品を製造する方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0006】
ここで開示された実施形態によれば、成形対象物の本体部の一端から延びる扁平面を有する端子の扁平面の延びる方向に直交する方向が成形型の型面と垂直になるように成形対象物を成形型に設置した状態で樹脂成形を行った場合でも、樹脂漏れによる端子への樹脂の付着を抑制することが可能な樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の樹脂成形品の製造方法に用いられる樹脂成形装置を用いた樹脂成形システムの一例の模式的な平面図である。
【
図2】実施形態の樹脂成形品の製造方法のフローチャートである。
【
図3】実施形態の樹脂成形品の製造方法で用いられる成形対象物の一例であるコイルの一例の模式的な部分斜視図である。
【
図4】端子に弾性樹脂を密着させる工程の一例を図解する模式的な斜視図である。
【
図5】実施形態の樹脂成形品の製造方法に用いられる下成形型の一例の模式的な斜視図である。
【
図6】
図5に示される下成形型の模式的な平面図である。
【
図7】下成形型に成形対象物を設置する工程の一例を図解する模式的な側面透視図である。
【
図8】
図7のVIII-VIIIに沿った模式的な断面図である。
【
図9】下成形型に成形対象物を設置する工程の一例を図解する模式的な側面透視図である。
【
図10】
図9のXX-XXに沿った模式的な断面図である。
【
図11】(a)は下成形型に成形対象物の一例であるコイルを設置した状態の一例の模式的な平面図であり、(b)は(a)の矩形に取り囲まれた部分の模式的な拡大平面図である。
【
図12】実施形態の樹脂成形品の製造方法で用いられる上成形型の一例の模式的な斜視図である。
【
図14】弾性樹脂の外表面に保護材を設置する工程の一例を図解する模式的な断面図である。
【
図15】弾性樹脂の外表面に保護材を設置したときの下成形型に成形対象物を設置する工程の一例を図解する模式的な断面図である。
【
図16】上成形型と下成形型とを型締めした後に成形対象物を樹脂成形する工程の一例を図解する模式的な平面図である。
【
図17】実施形態の樹脂成形品の製造方法により製造された樹脂成形品の一例の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0009】
<樹脂成形システム>
図1は、実施形態の樹脂成形品の製造方法に用いられる樹脂成形装置を用いた樹脂成形システムの一例の模式的な平面図である。樹脂成形システム100は、後述する上成形型20aと下成形型20bとを含む樹脂成形装置20を備えている。樹脂成形装置20は、上成形型20aと下成形型20bとを用いて、成形対象物の一例であるコイル3の樹脂成形を可能とする。樹脂成形装置20は、ポット39から樹脂をキャビティに供給するプランジャを有するトランスファー機構と、型締機構48とを備えている。
【0010】
樹脂成形システム100は、樹脂成形装置20に加えて、中央制御装置としてのCPU1、制御プログラムや樹脂成形システム100の停止処理手順などの制御情報を記憶する記憶部8、後述の各部を駆動する駆動機構、および、使用者から動作指令や異常処理関連情報の入力を受け付け、かつ、樹脂成形システム100の各種出力情報の表示を行うタッチパネル9(入力部の一例)を備えている。CPU1は、記憶部8に記憶されたプログラムなどの実行により、樹脂成形システム100の各部の動作を制御する制御部10、駆動機構の異常を検知する異常検知部11、および経過時間をカウントする計時部12を実現している。
【0011】
樹脂成形システム100は、複数のコイル3を収容するためのインマガジン7等を有するインモジュールM1、樹脂成形装置20を有するモールドモジュールM2、および樹脂成形品31を収容するためのアウトマガジン72を有するアウトモジュールM3を連結して構成されている。インモジュールM1、モールドモジュールM2、およびアウトモジュールM3には、これらの各モジュールのそれぞれに亘り直線状に配設されたガイドGが設けられている。ガイドGは、後述するローダ40およびアンローダ44を走行させるレール状の部材である。なお、
図1に示す樹脂成形システム100は2つのモールドモジュールM2を備えているが、樹脂成形システム100はモールドモジュールM2を1つのみ備えていてもよく、3つ以上備えていてもよい。
【0012】
樹脂成形システム100の駆動機構は、たとえば、ローダ40、供給ユニット42、およびアンローダ44を含み得る。ローダ40は、成形対象物3を樹脂成形装置20に搬入するための搬送機構である。供給ユニット42は、インマガジン7からコイル3を押し出して整列機構70に搬送するための搬送機構である。アンローダ44は樹脂成形品31を樹脂成形装置20から搬出する搬送機構である。
【0013】
<樹脂成形品の製造方法>
図2に、実施形態の樹脂成形品の製造方法のフローチャートを示す。
図2に示すように実施形態の樹脂成形品の製造方法は、成形対象物を準備する工程S1と、端子に弾性樹脂を密着させる工程S2と、成形対象物を設置する工程S3と、成形対象物を樹脂成形する工程S4とを含んでいる。
【0014】
<工程S1>
工程S1は、たとえば、
図3の模式的な部分斜視図に示されるような成形対象物の一例であるコイル3を準備することにより行うことができる。
図3に示すように、成形対象物の一例であるコイル3は、本体部3aと、本体部3aの一端から一方向に延びる矩形状の扁平面3cを有する端子3bとを備えている。なお、本明細書において、「扁平面」は、たとえば
図3に示すように、端子3bが備える平面であって、端子3bが延びる方向に対して直交する(交差する)2つの平面のうちの1つを意味する。さらに詳しくは、「扁平面」は、これらの2つの平面のうち、端子3bが延びる方向に対して直交する方向における長さが長い平面を意味する。また、本明細書において、「端子の厚さ」は、端子3bを構成する面のうち最小面積を有する面の面積を規定する長さの最短の長さを意味する。
【0015】
端子3bの厚さtに対する端子3bの長さL1およびL2のうち長い方の長さの比((長さL1およびL2のうち長い方の長さ[mm])/(厚さt[mm]))は、たとえば2以上80以下とすることができる。たとえば、端子3bの厚さtは、1.4mm程度とすることができる。また、端子3bの長さL1は、たとえば50mm程度とすることができる。また、端子3bの長さL2は、たとえば16mm程度とすることができる。
【0016】
<工程S2>
工程S2は、たとえば、
図4の模式的斜視図に示すように、端子3bの一部に弾性樹脂4を密着させることにより行うことができる。なお、本明細書において、「密着させる」とは、後に成形型に成形対象物を配置し型締めして、成形対象物の樹脂成形中に端子3bと弾性樹脂4との間からの樹脂漏れの発生を抑制可能な程度に端子3bと弾性樹脂4とが接触していることを意味する。
【0017】
弾性樹脂4としては、端子3bに密着可能な樹脂を適宜用いることができる。弾性樹脂4としては、たとえば、環状の開口部を備えた熱収縮性樹脂を用いることができる。弾性樹脂4として環状の開口部を備えた熱収縮性樹脂を用いた場合には、工程S2は、たとえば、弾性樹脂4の開口部に端子3bを挿入する工程と、弾性樹脂4を加熱する工程とを含む工程によって行ってもよい。弾性樹脂4を加熱する工程において、弾性樹脂4の開口部に端子3bが挿入された状態で弾性樹脂4が熱収縮することによって、弾性樹脂4を端子3bに密着させることが可能となる。
【0018】
<工程S3>
工程S3は、下成形型に成形対象物を設置することにより行うことができる。
図5に、実施形態の樹脂成形品の製造方法に用いられる下成形型20bの一例の模式的な斜視図を示す。
図6に、
図5に示される下成形型20bの模式的な平面図を示す。
図5および
図6に示されるように、下成形型20bは、コイル3の本体部3aを設置するためのキャビティ21と、キャビティ21の一端から一方向に延びる、コイル3の端子3bを設置するためのスリット22とを備えている。スリット22は、キャビティ21側の第1のスリット22aと、キャビティ21と反対側の第2のスリット22cと、第1のスリット22aと第2のスリット22cとの間の第3のスリット22bとを備えている。すなわち、
図6に示す例においては、第1のスリット22aと第3のスリット22bとが隣接しているとともに、第2のスリット22bと第3のスリット22cとが隣接している。
【0019】
図6に示される第3のスリット22bの幅d2は、第1のスリット22aの幅d1よりも狭くすることができる。第3のスリット22bの幅d2を第1のスリット22aの幅d1よりも狭くすることによって、成形対象物の樹脂成形中に、端子3bに密着した弾性樹脂4が樹脂によって流されないようにすることができる。また、第2のスリット22cの幅d3は、第3のスリット22bの幅d2と等しい、または第3のスリット22bの幅d2よりも広くすることができる。さらに、第2のスリット22cの幅d3を第1のスリット22aの幅d1よりも広くすることができる。第2のスリット22cの幅d3がより大きい場合、コイル3の端子3bを下成形型20bに配置する際に端子3bの先端が下成形型20bに接触することを防止することができ、下成形型20bに傷がつくことを防止することができる。なお、第1のスリット22aの幅d1、第2のスリット22cの幅d3、および第3のスリット22bの幅d2は、それぞれ、スリット22の延びる方向に垂直な方向であって、下成形型20bの型面22dに平行な方向の幅を意味する。
【0020】
工程S3は、たとえば以下のようにして行うことができる。まず、
図7の模式的側面図に示すように、コイル3の本体部3aが下成形型20bのキャビティ21に対応する位置に来るように、かつコイル3の端子3bに密着した弾性部材4が下成形型20bの第1のスリット22aに対応する位置に来るように、コイル3を下成形型20bの上方まで搬送する。
【0021】
図8に、
図7のVIII-VIIIに沿った模式的な断面図を示す。ここで、たとえば
図8に示すように、端子3bに密着した弾性樹脂4の幅D1を、下成形型20bの第1のスリット22aの幅d1よりも広くすることができる。この場合には、後述のように弾性樹脂4を下成形型20bの第1のスリット22aに設置した際に、弾性樹脂4の弾性力によって、弾性樹脂4が下成形型20bの第1のスリット22aの壁面220を押圧する力が大きくなるため、コイル3の樹脂成形中に弾性樹脂4と第1のスリット22aの壁面220との間から樹脂漏れが発生するのを抑制することができる傾向にある。なお、端子3bに密着した弾性樹脂4の幅D1は、第1のスリット22aの延びる方向に垂直な方向であって、かつ下成形型20bの型面22dに平行な方向の幅を意味する。
【0022】
下成形型20bは、下成形型20bにコイル3を設置する際およびコイル3を樹脂成形する際のコイル3の位置ズレを抑制するために、キャビティ21の底面から鉛直上方に延びる少なくとも1つのガイドピン5aを備えていてもよい。ガイドピン5aは、コイル3の本体部3aの環状の巻き線の開口の内周面および/または外周面に接することが可能な位置に配置することができる。下成形型20bは、また、キャビティ21の底面側の本体部3aの面にも成形樹脂が回り込むことができるように、少なくとも1つの支えピン5bを備えていてもよい。支えピン5bは、コイル3の本体部3aのキャビティ21の底面側の面に接することが可能な位置に配置することができる。ガイドピン5aの高さh1は、支えピン5bの高さh2よりも高くすることができる。
【0023】
次に、
図9の模式的側面透視図に示すように、コイル3の端子3bの扁平面3cの延びる方向3eに直交する方向3fが下成形型20bの型面22dと垂直になるように下成形型20bにコイル3を設置する。このとき、たとえば
図10の模式的断面図に示すように、端子3bに密着した弾性樹脂4を、下成形型20bの第1のスリット22aに設置することができる。また、このとき、コイル3の本体部3aの環状の巻き線の開口の内周面にガイドピン5aが接するとともに、本体部3aのキャビティ21の底面側の面に支えピン5bが接するように下成形型20bにコイル3を設置することもできる。
【0024】
図11(a)に、下成形型20bに成形対象物の一例であるコイル3を設置した状態の一例の模式的な平面図を示す。
図11(b)に、
図11(a)の矩形に取り囲まれた部分の模式的な拡大平面図を示す。
図11(a)および
図11(b)に示すように、環状の巻き線である本体部3aのX方向の内周面にガイドピン5aが接するとともに、本体部3aのY方向の内周面に他のガイドピン5aが接するように、下成形型20bにコイル3を設置することができる。この場合には、コイル3の樹脂成形中におけるコイル3のX方向への移動およびY方向への移動を抑制することができる。
【0025】
また、上成形型にも下成形型20bのスリット22と同様に、スリット、ガイドピンおよび支えピンが設けられていてもよい。
図12に、実施形態の樹脂成形品の製造方法で用いられる上成形型の一例の模式的な斜視図を示す。
図12に示すように、上成形型20aは、コイル3の本体部3aを収容するためのキャビティ33と、コイル3の端子3bを収容するためのスリット32とを備えている。ここで、上成形型20aのキャビティ33は、下成形型20bのキャビティ21に対応する位置に配置される。また、上成形型20aのスリット32は、下成形型20bのスリット22に対応する位置に配置される。
【0026】
上成形型20aのスリット32は、下成形型20bの第1のスリット22aに対応する位置に設けられた第1のスリット32aと、下成形型20bの第3のスリット22bに対応する位置に設けられた第3のスリット32bと、下成形型20bの第2のスリット22cに対応する位置に設けられた第2のスリット32cとを備えていてもよい。この場合には、上成形型20aと下成形型20bとの型締め時に、上成形型20aの第1のスリット32aに端子3bに密着した弾性樹脂4が設置され得る。このとき、弾性樹脂4の上半分が上成形型20aの第1のスリット32aに収容され、弾性樹脂4の下半分を下成形型20bの第1のスリット22aに収容され得る。上成形型20aの第1のスリット32a、第2のスリット32cおよび第3のスリット32bについての説明は、それぞれ、下成形型20bの第1のスリット22a、第2のスリット22cおよび第3のスリット22bと同様であるため、ここではその説明については繰り返さない。このように、下成形型20bのみでなく上成形型20aにも端子3bに密着した弾性樹脂4が設置されるスリット32(具体的には、第1のスリット32a)を形成することによって、弾性樹脂4の設置を下成形型20bと上成形型20aの2回に分けることができ、一度にスリット22または32への弾性樹脂4の挿入量(弾性樹脂4とスリット22または32との接触面積)を減らし、端子3bの成形型20への配置をより容易にすることができる。また、ガイドピン5aの高さh1を短くすることができる。
【0027】
図13に、
図12に示す上成形型20aの模式的な平面図を示す。
図13に示すように上成形型20aも、少なくとも1つのガイドピン35aおよび/または少なくとも1つの支えピン35bを備え得る。上成形型20aのガイドピン35aは、下成形型20bのガイドピン5aに対応する位置に設けられていてもよく、下成形型20bのガイドピン5aに対応する位置以外の位置に設けられていてもよい。上成形型20aがガイドピン35aを備えていることによって、コイル3の樹脂成形中のコイル3の位置ズレの発生を抑制することができる。また、上成形型20aが支えピン35bを備えていることによって、コイル3の樹脂成形中のコイル3の浮き上がりの発生を抑制することができる。上成形型20aのガイドピン35aおよび支えピン35bについての上記以外の説明は、それぞれ、下成形型20bのガイドピン5aおよび支えピン5bについての説明と同様であるため、ここではその説明については繰り返さない。
【0028】
<その他の工程>
実施形態の樹脂成形品の製造方法は、工程S2と工程S3との間に、弾性樹脂4の外表面に保護材を設置する工程を含んでいてもよい。保護材を設置する工程は、たとえば
図14の模式的断面図に示すように、端子3bに密着した弾性樹脂4の外表面に保護材6を設けることによって行うことができる。この工程を設けることによって、たとえば
図15の模式的断面図に示すような下成形型20bの第1のスリット22aへの弾性樹脂4の設置時に、滑りを良くして設置を容易にすることができる。また、保護材6が弾性樹脂4の外表面を保護することによって、弾性樹脂4が下成形型20bの第1のスリットの壁面220との摩擦によって破断するのを抑制することができる。保護材6は、たとえば、ポリイミド樹脂またはポリテトラフルオロエチレン樹脂を含んでいてもよく、保護材6としては、たとえば、ポリイミドテープを用いることができる。なお、弾性樹脂4を加熱することにより弾性樹脂4を端子3bに密着させる場合には、弾性樹脂4の加熱前に保護材6を設置してもよく、弾性樹脂4の加熱後に保護材6を設置してもよい。
【0029】
<工程S4>
工程S4は、たとえば
図16の模式的平面図に示すように、上成形型20aと下成形型20bとを型締めした後にコイル3を樹脂成形することにより行うことができる。その後、上成形型20aと下成形型20bとを型開きすることによって、たとえば
図17の模式的斜視図に示すような樹脂成形品31を製造することができる。
【0030】
実施形態の樹脂成形品の製造方法によれば、樹脂成形品31のコイル3の本体部3aについては樹脂被覆することができる一方で、本体部3aの一端から延びる扁平面3cを有する端子3bについては樹脂被覆しないようにすることができる。これは、実施形態の樹脂成形品の製造方法においては、コイル3の端子3bに密着した弾性樹脂4を上成形型20aの第1のスリット32aおよび下成形型20bの第1のスリット22aに設置した状態でコイル3の本体部3aの樹脂成形を行っているため、弾性樹脂4の弾性力によって、弾性樹脂4と端子3bとの間および弾性樹脂4と第1のスリット22a,32aの壁面との間に隙間が形成されるのを抑制することができることによるものと考えられる。なお、弾性樹脂4は、コイル3の樹脂成形後にコイル3の端子3bから取り外され得る。
【0031】
<付記>
(開示1)
開示1の樹脂成形品の製造方法は、上成形型と下成形型とを備える樹脂成形装置を用いて成形対象物を樹脂成形することによって樹脂成形品を製造する方法であって、本体部と前記本体部の一端から延びる扁平面を有する端子とを備えた前記成形対象物を準備する工程と、前記端子に弾性樹脂を密着させる工程と、前記弾性樹脂を密着させる工程の後に、前記扁平面の延びる方向に直交する方向が前記下成形型の型面と垂直になるように前記下成形型に前記成形対象物を設置する工程と、前記上成形型と前記下成形型とを型締めして前記成形対象物を樹脂成形する工程とを含む、樹脂成形品の製造方法である。
【0032】
(開示2)
開示2の樹脂成形品の製造方法は、前記弾性樹脂が、環状の開口部を備えた熱収縮性樹脂であって、前記弾性樹脂を密着させる工程が、前記弾性樹脂の前記開口部に前記端子を挿入する工程と、前記弾性樹脂を加熱する工程とを含む、開示1の樹脂成形品の製造方法である。
【0033】
(開示3)
開示3の樹脂成形品の製造方法は、前記上成形型および前記下成形型が、前記本体部を設置するためのキャビティと、前記キャビティの一端から一方向に延びる、前記端子を設置するためのスリットとを備え、前記成形対象物を前記下成形型に設置する工程が、前記端子に密着させた前記弾性樹脂を前記下成形型の前記スリットに設置する工程を含む、開示1または開示2の樹脂成形品の製造方法である。
【0034】
(開示4)
開示4の樹脂成形品の製造方法は、前記スリットが、前記キャビティ側の第1のスリットと、前記第1のスリットに隣接する第3のスリットとを含む、開示3の樹脂成形品の製造方法である。
【0035】
(開示5)
開示5の樹脂成形品の製造方法は、前記成形対象物を前記下成形型に設置する工程が、前記弾性樹脂を前記下成形型の前記第1のスリットに設置する工程を含む、開示4の樹脂成形品の製造方法である。
【0036】
(開示6)
開示6の樹脂成形品の製造方法は、前記弾性樹脂の幅が、前記下成形型の前記第1のスリットの幅より広い、開示5の樹脂成形品の製造方法である。
【0037】
(開示7)
開示7の樹脂成形品の製造方法は、前記下成形型の前記第3のスリットの幅が、前記下成形型の前記第1のスリットの幅よりも狭い、開示4から開示6のいずれか1つの樹脂成形品の製造方法である。
【0038】
(開示8)
開示8の樹脂成形品の製造方法は、前記キャビティと反対側にあり、前記第3のスリットに隣接する第2のスリットを含み、前記下成形型の前記第2のスリットの幅が、前記下成形型の前記第1のスリットの幅および前記下成形型の前記第3のスリットの幅のそれぞれよりも広い、開示4から開示7のいずれか1つの樹脂成形品の製造方法である。
【0039】
(開示9)
開示9の樹脂成形品の製造方法は、前記弾性樹脂を密着させる工程と前記成形対象物を設置する工程との間に、前記弾性樹脂の外表面に保護材を設置する工程をさらに含む、開示1から開示8のいずれか1つの樹脂成形品の製造方法である。
【0040】
(開示10)
開示10の樹脂成形品の製造方法は、前記保護材が、ポリイミド樹脂またはポリテトラフルオロエチレン樹脂を含む、開示9の樹脂成形品の製造方法である。
【0041】
(開示11)
開示11の樹脂成形品の製造方法は、前記上成形型および前記下成形型が、前記キャビティに少なくとも1つのガイドピンをさらに備える、開示1から開示10のいずれか1つの樹脂成形品の製造方法である。
【0042】
(開示12)
開示12の樹脂成形品の製造方法は、前記上成形型および前記下成形型が、前記キャビティに少なくとも1つの支えピンを前記ガイドピンの外側にさらに備える、開示11の樹脂成形品の製造方法である。
【0043】
(開示13)
開示13の樹脂成形品の製造方法は、前記成形対象物がコイルを含む、開示1から開示12のいずれか1つの樹脂成形品の製造方法である。
【0044】
以上のように実施形態について説明を行ったが、上述の各実施形態の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0045】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 CPU、3 コイル、3a 本体部、3b 端子、3c 扁平面、4 弾性樹脂、5a,35a ガイドピン、5b,35b 支えピン、6 保護材、7 インマガジン、8 記憶部、9 タッチパネル、10 制御部、11 異常検知部、12 計時部、20 樹脂成形装置、20a 上成形型、20b 下成形型、21,33 キャビティ、22,32 スリット、22a,32a 第1のスリット、22b,32b 第3のスリット、22c,32c 第2のスリット、22d 型面、31 樹脂成形品、39 ポット、40 ローダ、42 供給ユニット、44 アンローダ、48 型締機構、70 整列機構、72 アウトマガジン、100 樹脂成形システム、220 壁面。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上成形型と下成形型とを備える樹脂成形装置を用いて成形対象物を樹脂成形することによって樹脂成形品を製造する方法であって、
本体部と前記本体部の一端から延びる扁平面を有する端子とを備えた前記成形対象物を準備する工程と、
前記端子に弾性樹脂を密着させる工程と、
前記弾性樹脂を密着させる工程の後に、前記扁平面の延びる方向に直交する方向が前記下成形型の型面と垂直になるように前記下成形型に前記成形対象物を設置する工程と、
前記上成形型と前記下成形型とを型締めして前記成形対象物を樹脂成形する工程とを含む、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記弾性樹脂は、環状の開口部を備えた熱収縮性樹脂であって、
前記弾性樹脂を密着させる工程は、前記弾性樹脂の前記開口部に前記端子を挿入する工程と、前記弾性樹脂を加熱する工程とを含む、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記上成形型および前記下成形型は、前記本体部を設置するためのキャビティと、前記キャビティの一端から一方向に延びる、前記端子を設置するためのスリットとを備え、
前記成形対象物を前記下成形型に設置する工程は、前記端子に密着させた前記弾性樹脂を前記下成形型の前記スリットに設置する工程を含む、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記スリットは、前記キャビティ側の第1のスリットと、前記第1のスリットに隣接する第3のスリットとを含む、請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記成形対象物を前記下成形型に設置する工程は、前記弾性樹脂を前記下成形型の前記第1のスリットに設置する工程を含む、請求項4に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記弾性樹脂の幅が、前記下成形型の前記第1のスリットの幅より広い、請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記下成形型の前記第3のスリットの幅は、前記下成形型の前記第1のスリットの幅よりも狭い、請求項4に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記弾性樹脂を密着させる工程と前記成形対象物を設置する工程との間に、前記弾性樹脂の外表面に保護材を設置する工程をさらに含む、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記成形対象物は、コイルを含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。