(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173607
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】小型地熱発電システム
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20231130BHJP
H02P 103/20 20150101ALN20231130BHJP
H02P 101/20 20150101ALN20231130BHJP
【FI】
H02P9/04 E
H02P103:20
H02P101:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085970
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】山根 敏則
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590AA03
5H590CA01
5H590CA23
5H590CB05
5H590CC01
5H590CC29
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE01
5H590CE05
5H590FA06
5H590FA08
5H590FB03
5H590FC26
5H590HA02
5H590HA04
5H590HA27
5H590JA02
5H590KK01
5H590KK04
5H590KK06
(57)【要約】
【課題】高品質を確保しながら、従来技術と比較してコスト削減が図れ、質量も削減できる小型地熱発電システムを得る。
【解決手段】熱源により作動媒体を暖めて蒸気にする蒸発器と、蒸気となった作動媒体によって回転させられる膨張機と、蒸気となった作動媒体を再度液体に戻す凝縮器と、再度液体に戻った作動媒体を蒸発器に送り込むポンプと、膨張機の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、発電機で発電した直流電力を蓄電する蓄電池と、発電機の負荷を調整して発電機の回転数を制御する発電制御コントローラと、を備え、発電機は、整流器が内蔵された車載用界磁巻線型三相同期発電機で構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源により作動媒体を暖めて蒸気にする蒸発器と、
蒸気となった前記作動媒体によって回転させられる膨張機と、
蒸気となった前記作動媒体を再度液体に戻す凝縮器と、
再度液体に戻った前記作動媒体を前記蒸発器に送り込むポンプと、
前記膨張機の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、
前記発電機で発電した直流電力を蓄電する蓄電池と、
前記発電機の負荷を調整して前記発電機の回転数を制御する発電制御コントローラと、
を備え、
前記発電機は、整流器が内蔵された車載用界磁巻線型三相同期発電機である
小型地熱発電システム。
【請求項2】
前記発電機で発電した前記直流電力をある一定の電圧に変換して前記発電制御コントローラに電源として供給する制御電源
をさらに備える請求項1に記載の小型地熱発電システム。
【請求項3】
前記発電制御コントローラは、前記車載用界磁巻線型三相同期発電機の励磁をオフすることにより、前記蓄電池が過充電されることを防止する
請求項1または2に記載の小型地熱発電システム。
【請求項4】
前記発電機で発電した前記直流電力を系統に連系可能な交流電力に変換するインバータ
をさらに備え、
前記発電制御コントローラは、売電可能なときには前記インバータを介して前記系統に前記交流電力を売電する
請求項1または2に記載の小型地熱発電システム。
【請求項5】
前記発電機で発電した前記直流電力を前記インバータに供給するか否かのオン/オフ切り換えを行う第1スイッチと、
前記発電機で発電した前記直流電力を前記蓄電池に供給するか否かのオン/オフ切り換えを行う第2スイッチと
をさらに備え、
前記発電制御コントローラは、前記第1スイッチのオン/オフ切り換え、および前記第2スイッチのオン/オフ切り換えを、前記車載用界磁巻線型三相同期発電機の励磁をオフ状態として発電を停止させた状態で実行する
請求項4に記載の小型地熱発電システム。
【請求項6】
前記発電機として使用される前記車載用界磁巻線型三相同期発電機は、要求される出力電力に応じて複数個カスケード接続することにより構成される
請求項1または2に記載の小型地熱発電システム。
【請求項7】
前記複数個カスケード接続された車載用界磁巻線型三相同期発電機は、直列接続されたN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機からなる単位ユニットをM個カスケード接続することで構成され、
前記発電制御コントローラは、前記単位ユニットの数に対応してM個設けられており、
M個の前記発電制御コントローラのそれぞれは、対応する単位ユニット内のN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機のうちのいずれかが故障した場合には、故障した車載用界磁巻線型三相同期発電機を特定できる機能を備える
請求項6に記載の小型地熱発電システム。
【請求項8】
M個の前記発電制御コントローラのそれぞれは、対応する単位ユニット内のN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機のうちのいずれかが故障した場合には、前記単位ユニット内のN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機の運転を停止させる
請求項7に記載の小型地熱発電システム。
【請求項9】
1台の発電機に対応して1個設けられ、前記発電機の電圧値を検出する電圧検出手段と、
1台の発電機に対応して1個設けられ、前記発電機の電流値を検出する電流検出手段と、
1台の発電機に対応して1個設けられ、前記発電機の回転数を検出する回転数検出手段と
をさらに備え、
前記発電制御コントローラは、
前記電圧検出手段、前記電流検出手段、および前記回転数検出手段による検出結果に基づいて検出対象である発電機が故障しているか否かを特定し、
故障していることが特定された発電機に関しては、前記検出結果があらかじめ決められたフェイルセーフ条件を満たすか否かを判定し、前記フェイルセーフ条件を満たすと判定した場合には、故障していることが特定された前記発電機の励磁をオフして前記発電機をフリー回転させる
請求項1または2に記載の小型地熱発電システム。
【請求項10】
前記発電機による発電により得られた前記直流電力を利用し、遠隔監視装置と必要な情報を通信する遠隔通信手段をさらに備える
請求項1または2に記載の小型地熱発電システム。
【請求項11】
地震、津波、火山噴火の少なくともいずれか1つにより生じる非常事態を検出するセンサをさらに備え、
前記発電制御コントローラは、
前記センサにより検出された前記非常事態を前記必要な情報として、前記遠隔通信手段を介して前記遠隔監視装置にリアルタイムで送信する
請求項10に記載の小型地熱発電システム。
【請求項12】
前記発電制御コントローラは、前記センサにより前記非常事態が検出された場合には、検出された前記非常事態に応じて周辺住民を避難誘導するための報知を、報知手段を介して行う
請求項11に記載の小型地熱発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電池を備えた小型地熱発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地熱発電の中には、地下から取り出した高温・高圧の蒸気をそのまま用いて膨張機を回し、発電するものがある。また、その他の地熱発電として、代替フロン、アンモニア水など、水よりも沸点の低い媒体を加熱・蒸発させて、その蒸気で膨張機を回すバイナリー発電もある。バイナリー発電は、温泉、未利用の温水などを利用して発電するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
バイナリー発電では、低沸点の作動媒体を蒸発させて、その蒸気により膨張機を回転させ、発電機を回して発電させる。発電機の出力は、交流(AC)であるため、整流器によって直流(DC)に変換され、さらに、インバータ等を通して直流から交流に変換される。さらに、インバータに接続された系統に交流電力を供給することで、売電するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-207827号公報
【特許文献2】特開2014-129797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の小型地熱発電システムの構成は、蒸発器、凝縮器、膨張機、発電機、制御装置で構成されている。さらに、発電機内部には永久磁石が使用されており、多数の永久磁石を使用することが多く、ネオジム磁石等の強力な磁力の磁石を使用すると、コスト高となる。
【0006】
また、磁石同士が強力に引き合うため、製造には細心の注意が必要となる。また、制御装置内部には整流器が内蔵されている(例えば、特許文献2参照)。従って、制御装置のサイズが大きくなり、コスト、質量もUPする。
【0007】
本開示は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、高品質を確保しながら、従来技術と比較してコスト削減が図れ、質量も削減できる小型地熱発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る小型地熱発電システムは、熱源により作動媒体を暖めて蒸気にする蒸発器と、蒸気となった作動媒体によって回転させられる膨張機と、蒸気となった作動媒体を再度液体に戻す凝縮器と、再度液体に戻った作動媒体を蒸発器に送り込むポンプと、膨張機の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、発電機で発電した直流電力を蓄電する蓄電池と、発電機の負荷を調整して発電機の回転数を制御する発電制御コントローラと、を備え、発電機は、整流器が内蔵された車載用界磁巻線型三相同期発電機であるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、発電機に車載用界磁巻線型三相同期発電機を使用することにより、高品質を確保しながら、従来技術と比較してコスト削減が図れ、質量も削減できる小型地熱発電システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る小型地熱発電システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施の形態2に係る小型地熱発電システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施の形態2に係る発電機コントローラの内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示による小型地熱発電システムについて実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る小型地熱発電システムの全体構成を示すブロック図である。ここでは、小型地熱発電システムの一例として、バイナリー発電装置を挙げる。
【0013】
図1において、蒸発器33は、水よりも沸点の低い作動媒体を温水等の熱源により暖めて蒸気にする。蒸気となった作動媒体は、凝縮器34によって再度液体に戻される。ポンプ35は、再度液体に戻された作動媒体を蒸発器33に送り込み、こうして作動媒体の循環が行われる。
【0014】
蒸気となった作動媒体により回転される膨張機1は、回転軸2を通して車載用界磁巻線型三相同期発電機3を回転させる。車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、膨張機1の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機である。車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、制御コントローラ4を通して蓄電池5および系統8に接続される。
【0015】
蓄電池5は、直流の蓄電池であり、車載用界磁巻線型三相同期発電機3で発電した直流電力を蓄電する。蓄電池5は、例えば、DC12VまたはDC24Vの鉛バッテリまたはリチウムイオンバッテリである。
【0016】
一方、系統8は、交流商用電力系統であり、例えば、AC100VまたはAC200Vで50Hzまたは60Hzの低電圧配線系統である。
【0017】
車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、例えば、車載用オルタネータ等であり、詳細は図示していないが、ロータコイル部、ステータコイル部、および整流部を有している。ロータコイル部は、膨張機1と結合された回転軸2を経由して回転するロータ側の励磁用のコイル部である。
【0018】
ステータコイル部は、ロータコイル部と近接して配置され、ロータコイル部の磁界の変化により発電するステータ側の発電用のコイル部である。さらに、整流部は、ステータコイル部からの交流の発電電力を直流電力に変換する。
【0019】
車載用界磁巻線型三相同期発電機3には整流器が内蔵されている。このため、従来の小型地熱発電システムと比較して、大幅なコスト削減が可能である。さらに、車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、車載用に大量生産している。このため、信頼性が高く、高品質である。
【0020】
制御コントローラ4は、電源を供給する制御電源9と、電磁ブレーキ13を制御するブレーキ制御手段12と、フェイルセーフ制御を含む全体の発電を制御する発電制御手段10と、励磁制御手段11と、電流計(電流検出手段)14と、電圧計(電圧検出手段)15と、回転数検出手段16と、スイッチ6と、電圧変換器36と、インバータ7と、遠隔通信手段28と、を有する。
【0021】
制御電源9は、制御コントローラ4を動作させる電源である。例えば、車載用オルタネータを使用する場合には、制御電源9は、車載用オルタネータが発電する直流電力を、ある一定の電圧に変換して供給する。制御電源9は、低消費電力化のため、車載用界磁巻線型三相同期発電機3が回転しているときのみ電源が入り、変換された一定の電圧が制御コントローラ4に供給される。
【0022】
なお、制御電源9は、コンデンサ等の蓄電効果により、一定期間は電源電圧が保持される。また、制御電源9の代わりに、バッテリ、電池等の別電源を使用してもよい。
【0023】
ブレーキ制御手段12は、電磁ブレーキ13を、例えば、回転数に応じて制御する。回転数に応じた制御の具体例として、ブレーキ制御手段12は、回転数が一定以下のときには、低消費電力化を目的にブレーキONのduty制御を行う。その後、ブレーキ制御手段12は、duty制御でも停止しそうにないときには、100%ブレーキONにする。また、ブレーキ制御手段12は、あらかじめ決められた一定の回転数を超えるときには、最初から100%ブレーキONにする。
【0024】
発電制御手段10は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ等で構成され、電流計14、電圧計15、回転数検出手段16による検出結果を監視する。発電制御手段10は、検出対象である発電機3の監視結果に基づいて、過電流、過電圧、過回転等の異常信号が出た際には、フェイルセーフ条件を満たすか否かを判定する。そして、発電制御手段10は、判定結果に基づいて励磁制御手段11およびブレーキ制御手段12に信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御およびブレーキ制御を行う。
【0025】
制御コントローラ4には、スイッチ6が内蔵されている。スイッチ6は、発電機3で発電した直流電力をインバータ7に供給するか否かのオン/オフ切り換えを行う第1スイッチと、発電機3で発電した直流電力を蓄電池5に供給するか否かのオン/オフ切り換えを行う第2スイッチとを備えて構成されている。
【0026】
インバータ7は、発電機3で発電した直流電力を系統に連系可能な交流電力に変換する。このような構成を備えることで、発電制御手段10は、売電可能なときにはインバータ7を介して系統8に交流電力を売電することができる。
【0027】
スイッチ6は、電気信号、シリアル通信等により、インバータ7側の第1スイッチをオフ、蓄電池5側の第2スイッチをオンにした後、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオンすることで発電を開始する。この結果、蓄電池5の充電が行われる。スイッチ6は、リレー、半導体スイッチなどで構成される。
【0028】
蓄電池5の充電は、制御コントローラ4に内蔵された電流計14、電圧計15による検出結果に基づいて、発電制御手段10によって行われる。蓄電池5が満充電になると、発電制御手段10は、まず、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオフして発電を停止して、フリー回転状態とする。そして、充電電流の流れが止まった後、発電制御手段10は、インバータ7側の第1スイッチのオフ状態を継続しつつ、蓄電池5側の第2スイッチをオフする制御を行う。
【0029】
また、発電制御手段10は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオフして発電を停止させた状態のまま、蓄電池5側の第2スイッチはオフを継続して、インバータ7側の第1スイッチをオンした後、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオンする制御を実行できる。このような制御を行うことで、発電を開始させ、インバータ7経由で発電機3を系統8につなぎ、売電することができる。
【0030】
このように、発電制御手段10は、第1スイッチのオン/オフ切り換え、および第2スイッチのオン/オフ切り換えを、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオフ状態として発電を停止させた状態で、実行する。
【0031】
このような切り換え制御を行うことで、蓄電池5が過充電されることを防止しつつ、必要に応じて系統8へ電力の売電を行うことができるとともに、活線状態でのスイッチ6のオン、オフ切り替えを防止することができる。この結果、スイッチ6の寿命を延ばすことができる。
【0032】
なお、蓄電池5は、災害発生時等にすぐに使用することを目的としている。そこで、万一の停電時でも、蓄電池5から電源を供給できる電圧変換器36を備えている。電圧変換器36は、蓄電池5から電源供給するため、低消費電力になっており、出力としてはAC100Vコンセントの他、携帯電話充電用のUSB電源を備えている。蓄電池5は、災害発生時等にすぐに使用できるようにするため、常時満充電状態になるように発電制御手段10によって制御される。
【0033】
発電制御手段10は、過電圧、過電流、過回転等の故障発生時には、フェイルセーフ条件に基づき、励磁制御手段11およびブレーキ制御手段12に信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御およびブレーキ制御を行う。例えば、過電圧時には、発電制御手段10は、蓄電池5の保護のため、蓄電池5の入力電圧を規定電圧範囲内に保持するように、励磁dutyを制御する。
【0034】
それでも過電圧になる場合には、発電制御手段10は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁を一定期間オフして、フリー回転させる。その後、発電制御手段10は、励磁をオンし、再度過電圧にならないようであれば、フェイルフラグ、発生時間等を、発電制御手段10内に構成されたマイクロコンピュータ、メモリ等にデータとして残し、再度蓄電池5の充電を開始する。
【0035】
一方、発電制御手段10は、励磁をオンし、再度過電圧になるようであれば、もう一度励磁をオフさせる。この際、発電制御手段10は、励磁オフによって過回転になるようであれば、電磁ブレーキ13をオンさせる。
【0036】
また、例えば、過電流時には、発電制御手段10は、蓄電池5の保護のため、蓄電池5の入力電流を規定電流範囲内に保持するよう、励磁dutyを制御する。それでも過電流になる場合には、発電制御手段10は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁を一定期間オフしてフリー回転させる。
【0037】
その後、発電制御手段10は、励磁をオンし、再度過電流にならないようであれば、フェイルフラグ、発生時間等を、発電制御手段10内に構成されたマイクロコンピュータ、メモリ等にデータとして残し、再度蓄電池5の充電を開始する。
【0038】
一方、発電制御手段10は、励磁をオンし、再度過電流になるようであれば、もう一度励磁をオフさせる。この際、発電制御手段10は、励磁オフによって過回転になるようであれば、電磁ブレーキ13をオンさせる。
【0039】
また、例えば、過回転時には、発電制御手段10は、ブレーキ制御手段12により、電磁ブレーキ13をオンさせる。発電制御手段10は、一定期間電磁ブレーキ13をオンさせた後、電磁ブレーキ13をオフして車載用界磁巻線型三相同期発電機3を回転させる。
【0040】
その後、発電制御手段10は、過回転にならないようであれば、フェイルフラグ、発生時間等を、発電制御手段10内に構成されたマイクロコンピュータ、メモリ等にデータとして残し、再度蓄電池5の充電を開始する。
【0041】
一方、発電制御手段10は、電磁ブレーキ13をオフして車載用界磁巻線型三相同期発電機3を回転させた後、過回転になるようであれば、もう一度ブレーキ制御手段12により、電磁ブレーキ13をオンさせる。
【0042】
励磁制御手段11は、制御電源9を電源として、励磁電力を車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁端子に送り、励磁制御を開始する。電流計14は、発電機3により発電された電流値を検出する。電圧計15は、発電機3により発電された電圧値を検出する。
【0043】
回転数検出手段16は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3のロータの回転数に比例した周波数の矩形波相当の波形を出力する。発電制御手段10は、回転数検出手段16から出力される波形により、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の回転数を検出できる。
【0044】
制御コントローラ4には、遠隔通信手段28を設けてもよい。遠隔通信手段28は、例えば、4Gあるいは5Gの無線通信モジュール等を搭載することで、公共のインターネット等の通信手段を利用して監視情報を送信できる。発電状態、回転数、温度等をリアルタイムで遠隔から監視できるパソコン等のモニタ手段を遠隔監視装置として設置しておくことにより、所望の監視情報の遠隔監視が実現できる。
【0045】
また、制御コントローラ4には、地震、津波、火山噴火等の非常事態に備え、震度計31、監視カメラ32、温度センサ37、二酸化硫黄センサ38等に代表される、非常事態を検出するためのセンサを取り付けてもよい。震度計31、監視カメラ32、温度センサ37、二酸化硫黄センサ38等を取り付けることにより、遠隔監視装置は、遠隔通信手段28を介してリアルタイムに状態を遠隔監視できる。
【0046】
そのとき、消費電力をできる限り抑制するために、震度計31にてある一定以上の揺れを感知するまでは、監視カメラ32を動作させないようにすることができる。
【0047】
また、例えば、地震が起こったことを震度計31で感知し、かつ、遠隔通信手段28を介して津波の危険性があるとの情報を入手した場合には、発電制御手段10は、スピーカー39、デジタルサイネージ40等の報知手段を介して避難場所等を報知する。この結果、周辺住民に対して、非常事態の発生状況に応じて適切な避難場所への誘導を促すことができる。
【0048】
また、発電制御手段10は、地震発生時には、監視カメラ32を使って、津波を監視しておくこともできる。なお、本実施の形態1に係る小型地熱発電システムは、津波等の影響を回避できる高台等の安全な場所に設置されていることがコンセプトである。
【0049】
次に、火山の噴火予知について説明する。バイナリー発電で使用する温水は、温泉水を利用することが多く、温泉水が湧き出るところには火山が多くある。火山は、噴火する際、兆候があるが、その兆候となるのが、火山性地震の発生である。火山性地震は、噴火の数か月前から観測されることが多く、その頻度は、噴火が近づくにつれて多くなる。
【0050】
これ以外にも、過去の火山噴火で観測されたものとして、地下水の急激な温度上昇がある。地下水の急激な温度上昇の要因としては、温泉水の急激な温度上昇等が考えられる。
【0051】
また、火山ガスは、水、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化炭素などを主成分とし、その中の1つである二酸化硫黄の放出量も増えてくる。このことから、二酸化硫黄の放出量が火山活動の評価の指標として活用されている。
【0052】
例えば、震度計31により火山性地震が起こったことが感知され、かつ、二酸化硫黄センサ38により二酸化硫黄の検出量がある一定値を超えたことが検出され、かつ、温度センサ37により温泉水の温度がある一定値を超えたことが検出され、かつ、遠隔通信手段28を介して火山噴火の危険性があるとの情報を入手した場合を考える。
【0053】
この場合には、発電制御手段10は、スピーカー39、デジタルサイネージ40等の報知手段を介して避難場所を報知する。この結果、周辺住民に対して、非常事態の発生状況に応じて適切な避難場所への誘導を促すことができる。
【0054】
また、発電制御手段10は、火山性地震発生時には監視カメラ32を使って、火山を監視しておくことができる。同時に、発電制御手段10は、そのときの火山性地震震度・回数、二酸化硫黄検出量、温泉水の温度などの一連のデータを積み重ねて蓄積し、学習することができる。このような学習機能により、火山噴火との関連性を高め、火山噴火発生タイミングの予測精度を上げていくことができる。
【0055】
以上のように、実施の形態1によれば、発電機に車載用界磁巻線型三相同期発電機を使用することにより、高品質を確保しながら、従来技術と比較して大幅なコスト削減が図れ、質量も削減できる小型地熱発電システムを実現することができる。
【0056】
また、車載用界磁巻線型三相同期発電機を使用することで、励磁のオン、オフによって発電制御を簡単に実行することができる。特に、過電圧、過電流、過回転等の故障発生時には、フェイルセーフ条件に基づき、そのときの状態に応じて適切な励磁制御およびブレーキ制御を実行することができる。
【0057】
さらに、高品質、低価格化、小型化を実現した本開示に係る小型地熱発電システムは、種々の場所に設置できるとともに、蓄電池を備えることで、災害発生時の電力供給源として活用することが可能となる。
【0058】
また、各種センサおよび遠隔通信手段を備えることで、地震、津波、火山噴火等の非常事態を迅速に検知し、報知手段を介して非常事態の発生状況に応じて適切な避難誘導を迅速に行うことができる。
【0059】
実施の形態2.
本実施の形態2では、発電機3を複数個カスケード接続することで、出力電力の増大を図る構成について説明する。
図2は、本開示の実施の形態2に係る小型地熱発電システムの全体構成を示すブロック図である。本実施の形態2では、要求される出力電力に応じて発電機3を複数個カスケード接続することにより、出力電力をUPし、様々な蓄電池5の入力電圧に対応できるようにした小型地熱発電システムを実現している。
【0060】
本実施の形態2でも、発電機3としてバイナリー発電装置を用いる場合を一例として挙げ、具体的な機能を説明する。
図2において、蒸発器33は、水よりも沸点の低い作動媒体を温水等の熱源により暖めて蒸気にする。蒸気となった作動媒体は、凝縮器34によって再度液体に戻される。ポンプ35は、再度液体に戻された作動媒体を蒸発器33に送り込み、こうして作動媒体の循環が行われる。
【0061】
蒸気となった作動媒体により回転される複数個の膨張機1は、複数個の回転軸2を通して複数個の車載用界磁巻線型三相同期発電機3を回転させる。本実施の形態2では、車載用界磁巻線型三相同期発電機3を複数個用いることにより、出力電力をUPさせている。
【0062】
図2の構成をより具体的に説明すると、複数個の車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、直列接続されたN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機3からなる単位ユニットをM個カスケード接続することで構成されている。そして、発電機コントローラ17は、単位ユニットの数に対応してM個設けられている。ここで、M、Nは、2以上の整数である。
【0063】
図2の例では、M=3とした場合を例示している。そして、それぞれの単位ユニットは、対応する1台の発電機コントローラ17によって制御される。それぞれの発電機コントローラ17は、制御コントローラ4と相互通信可能な構成となっている。また、それぞれの単位ユニットの出力電力は、制御コントローラ4を介して蓄電池5および系統8に接続される構成となっている。
【0064】
ここで、本実施の形態2において、1台の制御コントローラ4およびM台の発電機コントローラ17は、発電制御コントローラに相当する。M台の発電機コントローラ17は、カスケード接続されたそれぞれの車載用界磁巻線型三相同期発電機3の負荷を調整してそれぞれの車載用界磁巻線型三相同期発電機3の回転数を制御する。
【0065】
さらに、制御コントローラ4は、それぞれの車載用界磁巻線型三相同期発電機3による発電電力に基づいて適切な直流電力を蓄電池5あるいはインバータ7に供給するように制御する。
【0066】
蓄電池5は、直流の蓄電池であり、車載用界磁巻線型三相同期発電機3で発電した直流電力を蓄電する。蓄電池5は、例えば、DC12VまたはDC24Vの鉛バッテリまたはリチウムイオンバッテリである。
【0067】
一方、系統8は、交流商用電力系統であり、例えば、AC100VまたはAC200Vで50Hzまたは60Hzの低電圧配線系統である。
【0068】
複数個の車載用界磁巻線型三相同期発電機3のそれぞれは、例えば、車載用オルタネータ等であり、詳細は図示していないが、ロータコイル部、ステータコイル部、および整流部を有している。複数個のロータコイル部のそれぞれは、複数個の膨張機1のいずれかと結合された回転軸2を経由して回転するロータ側の励磁用のコイル部である。
【0069】
ステータコイル部は、ロータコイル部と近接して配置され、ロータコイル部の磁界の変化により発電するステータ側の発電用のコイル部である。さらに、整流部は、ステータコイル部からの交流の発電電力を直流電力に変換する。
【0070】
複数個の車載用界磁巻線型三相同期発電機3には整流器が内蔵されている。このため、従来の小型地熱発電システムと比較して、大幅なコスト削減が可能である。さらに、車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、車載用に大量生産している。このため、信頼性が高く、高品質である。
【0071】
次に、複数個直列に接続された車載用界磁巻線型三相同期発電機3を統括制御するために用いられる発電機コントローラ17について、図面を用いて説明する。
図3は、本開示の実施の形態2に係る発電機コントローラ17の内部構成を示すブロック図である。
【0072】
発電機コントローラ17は、発電機コントローラ17に電源を供給する制御電源18と、電磁ブレーキ22を制御するブレーキ制御手段21と、フェイルセーフ制御を含む全体の発電を制御する発電制御手段19と、励磁制御手段20と、電流計23と、電圧計24と、回転数検出手段25と、シリアル通信手段26と、を有する。
【0073】
制御電源18は、発電機コントローラ17を動作させる電源である。例えば、車載用オルタネータを使用する場合には、制御電源18は、車載用オルタネータが発電する直流電力を、ある一定の電圧に変換して供給する。制御電源18は、低消費電力化のため、車載用界磁巻線型三相同期発電機3が回転しているときのみ電源が入り、変換された一定の電圧が発電機コントローラ17に供給される。
【0074】
なお、制御電源18は、コンデンサ等の蓄電効果により、一定期間は電源電圧が保持される。また、制御電源18の代わりに、バッテリ、電池等の別電源を使用してもよい。
【0075】
ブレーキ制御手段21は、電磁ブレーキ22を、例えば、回転数に応じて制御する。回転数に応じた制御の具体例として、ブレーキ制御手段21は、回転数が一定以下のときには、低消費電力化を目的にブレーキONのduty制御を行う。その後、ブレーキ制御手段21は、duty制御でも停止しそうにないときには、100%ブレーキONにする。また、ブレーキ制御手段21は、あらかじめ決められた一定の回転数を超えるときには、最初から100%ブレーキONにする。
【0076】
発電制御手段19は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ等で構成され、電流計23、電圧計24、回転数検出手段25による検出結果を監視する。発電制御手段19は、検出対象であるN台の発電機3の監視結果に基づいて、過電流、過電圧、過回転等の異常信号が出た際には、フェイルセーフ条件を満たすか否かを判定する。そして、発電制御手段10は、判定結果に基づいて励磁制御手段20、ブレーキ制御手段21に信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御、ブレーキ制御を行う。
【0077】
励磁制御手段20は、制御電源18を電源として、励磁電力をそれぞれの車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁端子に送り、励磁制御を開始する。電流計23は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3により発電された電流値を検出する。電圧計24は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3により発電された電圧値を検出する。
【0078】
回転数検出手段25は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3のロータの回転数に比例した周波数の矩形波相当の波形を出力する。発電制御手段19は、回転数検出手段25から出力される波形により、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の回転数を検出できる。
【0079】
シリアル通信手段26は、発電機コントローラ17と制御コントローラ4との間の通信を行う。具体的には、シリアル通信手段26は、複数個直列に接続された車載用界磁巻線型三相同期発電機3を統括制御するために用いられる発電機コントローラ17のそれぞれと、制御コントローラ4内の統括制御手段27との間の通信を行う。
【0080】
発電制御手段19は、過電圧、過電流、過回転等の故障発生時には、フェイルセーフ条件に基づき、励磁制御手段20およびブレーキ制御手段21に信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御およびブレーキ制御を行う。例えば、過電圧時には、発電制御手段19は、蓄電池5の保護のため、蓄電池5の入力電圧を規定電圧範囲内に保持するように、励磁dutyを制御する。
【0081】
それでも過電圧になる場合には、発電制御手段19は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁を一定期間オフして、フリー回転させる。その後、発電制御手段19は、励磁をオンし、再度過電圧にならないようであれば、フェイルフラグ、発生時間等を、発電制御手段19内に構成されたマイクロコンピュータ、メモリ等にデータとして残し、再度蓄電池5の充電を開始する。
【0082】
一方、発電制御手段19は、励磁をオンし、再度過電圧になるようであれば、もう一度励磁をオフさせる。この際、発電制御手段19は、励磁オフによって過回転になるようであれば、電磁ブレーキ22をオンさせる。
【0083】
また、例えば、過電流時には、発電制御手段19は、蓄電池5の保護のため、蓄電池5の入力電流を規定電流範囲内に保持するよう、励磁dutyを制御する。それでも過電流になる場合には、発電制御手段19は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁を一定期間オフしてフリー回転させる。
【0084】
その後、発電制御手段19は、励磁をオンし、再度過電流にならないようであれば、フェイルフラグ、発生時間等を、発電制御手段19内に構成されたマイクロコンピュータ、メモリ等にデータとして残し、再度蓄電池5の充電を開始する。
【0085】
一方、発電制御手段19は、励磁をオンし、再度過電流になるようであれば、もう一度励磁をオフさせる。この際、発電制御手段19は、励磁オフによって過回転になるようであれば、電磁ブレーキ22をオンさせる。
【0086】
また、例えば、過回転時には、発電制御手段19は、ブレーキ制御手段21により、電磁ブレーキ22をオンさせる。発電制御手段19は、一定期間電磁ブレーキ22をオンさせた後、電磁ブレーキ22をオフして車載用界磁巻線型三相同期発電機3を回転させる。
【0087】
その後、発電制御手段19は、過回転にならないようであれば、フェイルフラグ、発生時間等を、発電制御手段19内に構成されたマイクロコンピュータ、メモリ等にデータとして残し、再度蓄電池5の充電を開始する。
【0088】
一方、発電制御手段19は、電磁ブレーキ22をオフして車載用界磁巻線型三相同期発電機3を回転させた後、過回転になるようであれば、もう一度ブレーキ制御手段21により、電磁ブレーキ22をオンさせる。
【0089】
なお、発電機コントローラ17は、複数個カスケード接続された車載用界磁巻線型三相同期発電機3のうちの1個が故障した際には、故障した車載用界磁巻線型三相同期発電機3を特定できるようになっている。
【0090】
発電機コントローラ17内の発電制御手段19は、一例としてマイクロコンピュータにて、電流計23、電圧計24、回転数検出手段25を監視しておく。そして、発電制御手段19は、励磁オンかつ回転しているにもかかわらず発電していない車載用界磁巻線型三相同期発電機3を検出することで、故障した車載用界磁巻線型三相同期発電機3を特定できる。
【0091】
複数個直列に接続された車載用界磁巻線型三相同期発電機3のうち、故障した車載用界磁巻線型三相同期発電機3がある場合には、発電制御手段19は、故障した車載用界磁巻線型三相同期発電機3を含む直列接続部だけの運転を停止させ、メンテナンスができるようになっている。
【0092】
換言すると、M個の発電機コントローラ17のそれぞれは、対応する自身の単位ユニット内のN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機3のうちのいずれかが故障した場合には、直列接続されている自身の単位ユニット内のN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機3の運転を停止させる。
【0093】
このような停止処理を行うことにより、発電停止部を最小限に抑え、正常な車載用界磁巻線型三相同期発電機3の稼働を継続させることができる。
【0094】
制御コントローラ4は、電源を供給する制御電源9と、フェイルセーフ制御を含む全体の発電制御を統括する統括制御手段27と、複数個のヒューズ29と、複数個のダイオード30と、電流計14と、電圧計15と、スイッチ6と、電圧変換器36と、インバータ7と、遠隔通信手段28と、を有する。
【0095】
制御電源9は、制御コントローラ4を動作させる電源である。例えば、車載用オルタネータを使用する場合には、制御電源9は、車載用オルタネータが発電する直流電力を、ある一定の電圧に変換して供給する。制御電源9は、低消費電力化のため、車載用界磁巻線型三相同期発電機3が回転しているときのみ電源が入り、変換された一定の電圧が制御コントローラ4に供給される。
【0096】
なお、制御電源9は、コンデンサ等の蓄電効果により、一定期間は電源電圧が保持される。また、制御電源9の代わりに、バッテリ、電池等の別電源を使用してもよい。
【0097】
統括制御手段27は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ等で構成される。制御の一例を挙げると、統括制御手段27は、電気信号、シリアル通信等によりスイッチ6を切り替えて、各発電機3を蓄電池5に接続するか、またはインバータ7経由で系統8に接続する。
【0098】
また、統括制御手段27は、電圧計15で測定した実発電電圧と、シリアル通信で取得した電圧値との差分があらかじめ決められた一定値以上である場合には、電圧異常のフェイルを出す等の制御を行う。
【0099】
また、統括制御手段27は、電圧計15の信号を監視しておき、過電圧等の異常信号が検出された際には、シリアル通信手段26により、発電機コントローラ17内の発電制御手段19に対して、異常信号が検出されたことを伝達する。
【0100】
異常信号が検出されたことを知った発電制御手段19は、フェイルセーフ条件を満たすか否かを判定する。そして、発電制御手段19は、判定結果に基づいて励磁制御手段20およびブレーキ制御手段21に信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御およびブレーキ制御を行う。
【0101】
制御コントローラ4には、スイッチ6が内蔵されている。スイッチ6は、発電機3で発電した直流電力をインバータ7に供給するか否かのオン/オフ切り換えを行う第1スイッチと、発電機3で発電した直流電力を蓄電池5に供給するか否かのオン/オフ切り換えを行う第2スイッチとを備えて構成されている。
【0102】
インバータ7は、発電機3で発電した直流電力を系統に連系可能な交流電力に変換する。このような構成を備えることで、統括制御手段27は、売電可能なときにはインバータ7を介して系統8に交流電力を売電することができる。
【0103】
スイッチ6は、電気信号、シリアル通信等により、インバータ7側の第1スイッチをオフ、蓄電池5側の第2スイッチをオンにした後、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオンすることで発電を開始する。この結果、蓄電池5の充電が行われる。スイッチ6は、リレー、半導体スイッチなどで構成される。
【0104】
蓄電池5の充電は、制御コントローラ4に内蔵された電流計14、電圧計15による検出結果に基づいて、統括制御手段27によって行われる。蓄電池5が満充電になると、統括制御手段27は、まず、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオフして発電を停止して、フリー回転状態とする。そして、充電電流の流れが止まった後、統括制御手段27は、インバータ7側の第1スイッチのオフ状態を継続しつつ、蓄電池5側の第2スイッチをオフする制御を行う。
【0105】
また、統括制御手段27は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオフして発電を停止させた状態のまま、蓄電池5側の第2スイッチはオフを継続して、インバータ7側の第1スイッチをオンした後、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオンする制御を実行できる。このような制御を行うことで、発電を開始させ、インバータ7経由で発電機3を系統8につなぎ、売電することができる。
【0106】
このように、統括制御手段27は、第1スイッチのオン/オフ切り換え、および第2スイッチのオン/オフ切り換えを、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオフ状態として発電を停止させた状態で、実行する。
【0107】
このような切り換え制御を行うことで、蓄電池5が過充電されることを防止しつつ、必要に応じて系統8へ電力の売電を行うことができるとともに、活線状態でのスイッチ6のオン、オフ切り替えを防止することができる。この結果、スイッチ6の寿命を延ばすことができる。
【0108】
なお、蓄電池5は、災害発生時等にすぐに使用することを目的としている。そこで、万一の停電時でも、蓄電池5から電源を供給できる電圧変換器36を備えている。電圧変換器36は、蓄電池5から電源供給するため、低消費電力になっており、出力としてはAC100Vコンセントの他、携帯電話充電用のUSB電源を備えている。蓄電池5は、災害発生時等にすぐに使用できるようにするため、常時満充電状態になるように統括制御手段27によって制御される。
【0109】
制御コントローラ4には、遠隔通信手段28を設けてもよい。遠隔通信手段28は、例えば、4Gあるいは5Gの無線通信モジュール等を搭載することで、公共のインターネット等の通信手段を利用して監視情報を送信できる。発電状態、回転数、温度等をリアルタイムで遠隔から監視できるパソコン等のモニタ手段を遠隔監視装置として設置しておくことにより、所望の監視情報の遠隔監視が実現できる。
【0110】
複数個のヒューズ29は、過電流時の保護用としてコスト削減のために挿入されている。複数個のヒューズ29の代わりにシャント抵抗等の電流計を挿入し、統括制御手段27にて監視し、過電流時に電流遮断できるリレー等を設ける構成としてもよい。複数個のダイオード30は、逆流を防止するために挿入されている。
【0111】
また、制御コントローラ4には、地震、津波、火山噴火等の非常事態に備え、震度計31、監視カメラ32、温度センサ37、二酸化硫黄センサ38等に代表される、非常事態を検出するためのセンサを取り付けてもよい。震度計31、監視カメラ32、温度センサ37、二酸化硫黄センサ38等を取り付けることにより、遠隔監視装置は、遠隔通信手段28を介してリアルタイムに状態を遠隔監視できる。
【0112】
そのとき、消費電力をできる限り抑制するために、震度計31にてある一定以上の揺れを感知するまでは、監視カメラ32を動作させないようにすることができる。
【0113】
また、例えば、地震が起こったことを震度計31で感知し、かつ、遠隔通信手段28を介して津波の危険性があるとの情報を入手した場合には、統括制御手段27は、スピーカー39、デジタルサイネージ40等の報知手段を介して避難場所等を報知する。この結果、周辺住民に対して、非常事態の発生状況に応じて適切な避難場所への誘導を促すことができる。
【0114】
また、統括制御手段27は、地震発生時には、監視カメラ32を使って、津波を監視しておくこともできる。なお、本実施の形態2に係る小型地熱発電システムは、津波等の影響を回避できる高台等の安全な場所に設置されていることがコンセプトである。
【0115】
次に、火山の噴火予知について説明する。バイナリー発電で使用する温水は、温泉水を利用することが多く、温泉水が湧き出るところには火山が多くある。火山は、噴火する際、兆候があるが、その兆候となるのが、火山性地震の発生である。火山性地震は、噴火の数か月前から観測されることが多く、その頻度は、噴火が近づくにつれて多くなる。
【0116】
これ以外にも、過去の火山噴火で観測されたものとして、地下水の急激な温度上昇がある。地下水の急激な温度上昇の要因としては、温泉水の急激な温度上昇等が考えられる。
【0117】
また、火山ガスは、水、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化炭素などを主成分とし、その中の1つである二酸化硫黄の放出量も増えてくる。このことから、二酸化硫黄の放出量が火山活動の評価の指標として活用されている。
【0118】
例えば、震度計31により火山性地震が起こったことが感知され、かつ、二酸化硫黄センサ38により二酸化硫黄の検出量がある一定値を超えたことが検出さら、かつ、温度センサ37により温泉水の温度がある一定値を超えたことが検出され、かつ、遠隔通信手段28を介して火山噴火の危険性があるとの情報を入手した場合を考える。
【0119】
この場合には、統括制御手段27は、スピーカー39、デジタルサイネージ40等の報知手段を介して避難場所を報知する。この結果、周辺住民に対して、非常事態の発生状況に応じて適切な避難場所への誘導を促すことができる。
【0120】
また、統括制御手段27は、火山性地震発生時には監視カメラ32を使って、火山を監視しておくことができる。同時に、統括制御手段27は、そのときの火山性地震震度・回数、二酸化硫黄検出量、温泉水の温度などの一連のデータを積み重ねて蓄積し、学習することができる。このような学習機能により、火山噴火との関連性を高め、火山噴火発生タイミングの予測精度を上げていくことができる。
【0121】
以上のように、実施の形態2によれば、発電機を複数個カスケード接続することで、出力電力の増大を図る構成を実現するとともに、先の実施の形態1と同様の効果を実現できる。
【0122】
なお、本開示は、上述した実施の形態に限定されるべきものではなく、本開示の技術的思想に基づいて適宜変更が可能である。例えば、上述した実施の形態においては、再生可能エネルギーを利用した発電装置としてバイナリー発電装置の例を示したが、例えば、水力発電装置その他の発電装置等を用いてもよい。
【0123】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0124】
(付記1)
熱源により作動媒体を暖めて蒸気にする蒸発器と、
蒸気となった前記作動媒体によって回転させられる膨張機と、
蒸気となった前記作動媒体を再度液体に戻す凝縮器と、
再度液体に戻った前記作動媒体を前記蒸発器に送り込むポンプと、
前記膨張機の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、
前記発電機で発電した直流電力を蓄電する蓄電池と、
前記発電機の負荷を調整して前記発電機の回転数を制御する発電制御コントローラと、
を備え、
前記発電機は、整流器が内蔵された車載用界磁巻線型三相同期発電機である
小型地熱発電システム。
(付記2)
前記発電機で発電した前記直流電力をある一定の電圧に変換して前記発電制御コントローラに電源として供給する制御電源
をさらに備える付記1に記載の小型地熱発電システム。
(付記3)
前記発電制御コントローラは、前記車載用界磁巻線型三相同期発電機の励磁をオフすることにより、前記蓄電池が過充電されることを防止する
付記1または2に記載の小型地熱発電システム。
(付記4)
前記発電機で発電した前記直流電力を系統に連系可能な交流電力に変換するインバータ
をさらに備え、
前記発電制御コントローラは、売電可能なときには前記インバータを介して前記系統に前記交流電力を売電する
付記1から3のいずれか1項に記載の小型地熱発電システム。
(付記5)
前記発電機で発電した前記直流電力を前記インバータに供給するか否かのオン/オフ切り換えを行う第1スイッチと、
前記発電機で発電した前記直流電力を前記蓄電池に供給するか否かのオン/オフ切り換えを行う第2スイッチと
をさらに備え、
前記発電制御コントローラは、前記第1スイッチのオン/オフ切り換え、および前記第2スイッチのオン/オフ切り換えを、前記車載用界磁巻線型三相同期発電機の励磁をオフ状態として発電を停止させた状態で実行する
付記4に記載の小型地熱発電システム。
(付記6)
前記発電機として使用される前記車載用界磁巻線型三相同期発電機は、要求される出力電力に応じて複数個カスケード接続することにより構成される
付記1から5のいずれか1項に記載の小型地熱発電システム。
(付記7)
前記複数個カスケード接続された車載用界磁巻線型三相同期発電機は、直列接続されたN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機からなる単位ユニットをM個カスケード接続することで構成され、
前記発電制御コントローラは、前記単位ユニットの数に対応してM個設けられており、
M個の前記発電制御コントローラのそれぞれは、対応する単位ユニット内のN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機のうちのいずれかが故障した場合には、故障した車載用界磁巻線型三相同期発電機を特定できる機能を備える
付記6に記載の小型地熱発電システム。
(付記8)
M個の前記発電制御コントローラのそれぞれは、対応する単位ユニット内のN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機のうちのいずれかが故障した場合には、前記単位ユニット内のN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機の運転を停止させる
付記7に記載の小型地熱発電システム。
(付記9)
1台の発電機に対応して1個設けられ、前記発電機の電圧値を検出する電圧検出手段と、
1台の発電機に対応して1個設けられ、前記発電機の電流値を検出する電流検出手段と、
1台の発電機に対応して1個設けられ、前記発電機の回転数を検出する回転数検出手段と
をさらに備え、
前記発電制御コントローラは、
前記電圧検出手段、前記電流検出手段、および前記回転数検出手段による検出結果に基づいて検出対象である発電機が故障しているか否かを特定し、
故障していることが特定された発電機に関しては、前記検出結果があらかじめ決められたフェイルセーフ条件を満たすか否かを判定し、前記フェイルセーフ条件を満たすと判定した場合には、故障していることが特定された前記発電機の励磁をオフして前記発電機をフリー回転させる
付記1から8のいずれか1項に記載の小型地熱発電システム。
(付記10)
前記発電機による発電により得られた前記直流電力を利用し、遠隔監視装置と必要な情報を通信する遠隔通信手段をさらに備える
付記1から9のいずれか1項に記載の小型地熱発電システム。
(付記11)
地震、津波、火山噴火の少なくともいずれか1つにより生じる非常事態を検出するセンサをさらに備え、
前記発電制御コントローラは、
前記センサにより検出された前記非常事態を前記必要な情報として、前記遠隔通信手段を介して前記遠隔監視装置にリアルタイムで送信する
付記10に記載の小型地熱発電システム。
(付記12)
前記発電制御コントローラは、前記センサにより前記非常事態が検出された場合には、検出された前記非常事態に応じて周辺住民を避難誘導するための報知を、報知手段を介して行う
付記11に記載の小型地熱発電システム。
【符号の説明】
【0125】
1 膨張機、2 回転軸、3 発電機(車載用界磁巻線型三相同期発電機)、4 制御コントローラ、5 蓄電池、6 スイッチ、7 インバータ、8 系統、9 制御電源、10 発電制御手段(発電制御コントローラ)、11 励磁制御手段、12 ブレーキ制御手段、13 電磁ブレーキ、14 電流計(電流検出手段)、15 電圧計(電圧検出手段)、16 回転数検出手段、17 発電機コントローラ(発電制御コントローラ)、18 制御電源、19 発電制御手段、20 励磁制御手段、21 ブレーキ制御手段、22 電磁ブレーキ、23 電流計、24 電圧計、25 回転数検出手段、26 シリアル通信手段、27 統括制御手段、28 遠隔通信手段、29 ヒューズ、30 ダイオード、31 震度計、32 監視カメラ、33 蒸発器、34 凝縮器、35 ポンプ、36 電圧変換器、37 温度センサ、38 二酸化硫黄センサ、39 スピーカー(報知手段)、40 デジタルサイネージ(報知手段)。