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特開2023-173613入力プロファイルの編集方法、入力プロファイル編集装置、プログラム及び色変換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173613
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】入力プロファイルの編集方法、入力プロファイル編集装置、プログラム及び色変換方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/60 20060101AFI20231130BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H04N1/60 110
G06F3/12 303
G06F3/12 329
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085981
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】大橋 紘誠
【テーマコード(参考)】
5C079
【Fターム(参考)】
5C079HB08
5C079MA19
5C079NA17
5C079PA03
(57)【要約】
【課題】 明度と彩度を編集することで、画像をより高彩度とすることが可能な入力プロファイルの編集方法を提供する。
【解決手段】 入力プロファイルの編集方法は、機器に依存する第1の表色系における色彩値と、機器に非依存の第2の表色系としてのL表色系における色彩値との対応関係を記述した入力プロファイルを取得する入力プロファイル取得ステップS1と、L空間における色相と彩度に対応して明度の目標値を設定する明度目標値設定ステップS2と、入力プロファイルに従うL値を、明度の目標値に近づく方向に変換する明度編集ステップS3と、L値が編集された色彩値におけるa値、b値の各々を、a平面の中心から離れる方向に変換する彩度編集ステップS4と、を含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に依存する第1の表色系における色彩値と、機器に非依存の第2の表色系としてのL表色系における色彩値との対応関係を記述した入力プロファイルを取得する入力プロファイル取得ステップと、
空間における色相と彩度に対応して明度の目標値を設定する明度目標値設定ステップと、
前記入力プロファイルに従うL値を、前記明度の目標値に近づく方向に変換する明度編集ステップと、
前記入力プロファイルに従うa値、b値の各々を、a平面の中心から離れる方向に変換する彩度編集ステップと、
を含む、入力プロファイルの編集方法。
【請求項2】
前記明度目標値設定ステップでは、
空間における前記入力プロファイルに従うガマットを、色相角θ(θは0≦θ<360°を満たす整数)の色相面で切断した場合の前記ガマットの外郭線で特定される領域内における、最も彩度の高い一点のL値を、色相角θにおける明度目標値として設定する、
請求項1に記載の入力プロファイル編集方法。
【請求項3】
前記L表色系の色彩値を、出力プロファイルに従って色変換し、色変換後の色彩値に基づいて出力画像を得る場合において、
前記明度目標値設定ステップでは、
空間における前記出力プロファイルに従うガマットを、色相角θ(θは0≦θ<360°を満たす整数)の色相面で切断した場合の前記ガマットの外郭線で特定される領域内における、最も彩度の高い一点のL値を、色相角θにおける明度目標値として設定する、
請求項1に記載の入力プロファイル編集方法。
【請求項4】
前記L表色系の色彩値を、出力プロファイルに従って色変換し、色変換後の色彩値に基づいて出力画像を得る場合において、
前記明度目標値設定ステップでは、
空間における前記入力プロファイルに従う第1のガマットを、色相角θ(θは0≦θ<360°を満たす整数)の色相面で切断した場合の前記第1のガマットの外郭線で特定される領域内における、最も彩度の高い一点の第1のL値と、
空間における前記出力プロファイルに従う第2のガマットを、前記色相角θの色相面で切断した場合の前記第2のガマットの外郭線で特定される領域内における、最も彩度の高い一点の第2のL値と、
で決定される明度範囲内(第1のL値と第2のL値を含む)で、前記色相角θにおける明度目標値を設定する、
請求項1に記載の入力プロファイル編集方法。
【請求項5】
前記明度編集ステップでは、
空間における前記入力プロファイルに従うガマットを、色相角θ(θは0≦θ<360°を満たす整数)の色相面で切断した場合の前記ガマットの外郭線で特定される領域内において、
前記明度目標値よりも明度が低い側に、前記入力プロファイルに従うL値を増大させる方向に変化させる第1の領域を設定し、
前記明度目標値よりも明度が高い側に、前記入力プロファイルに従うL値を減少させる方向に変化させる第2の領域を設定し、
前記第1の領域よりも明度が低い第3の領域、又は、前記第2の領域よりも明度が高い第4の領域では、前記入力プロファイルに従うL値を変化させない、
請求項1に記載の入力プロファイルの編集方法。
【請求項6】
前記明度編集ステップでは、
明度編集前にL値が同じであるが、彩度が異なる領域がある場合に、彩度が低い領域における明度の変化量を、彩度が高い領域における明度の変化量よりも小さく設定する、
請求項1に記載の入力プロファイルの編集方法。
【請求項7】
前記明度編集ステップでは、
明度編集前のL値であるLinと、編集後のL値であるLoutとの関係を示す特性線は、
前記第1、第2の領域においては曲線であり、
前記第3、及び第4の領域においては直線であり、
前記特性線の、前記第1の領域の下限値、及び上限値に対応する第1、第2の箇所、及び、前記第2の領域の下限値、及び上限値に対応する第3、第4の箇所では、前記曲線の部分と前記直線の部分とは滑らかに接続され、
前記特性線の、前記曲線で表される領域は、前記Linに対する前記Loutの変化を大きくする領域と、小さくする領域とに区分され、前記変化を大きくする領域における前記曲線の部分と、前記変化を小さくする領域における前記曲線の部分とは滑らかに接続される、
請求項5に記載の入力プロファイルの編集方法。
【請求項8】
前記彩度編集ステップでは、
空間における前記入力プロファイルに従うガマットを、色相角θ(θは0≦θ<360°を満たす整数)の色相面で切断した場合の前記ガマットの外郭線で特定される領域内において、
低彩度側に設けられる、彩度値を編集しない領域と、高彩度側に設けられる、彩度を編集する領域との境界を示す境界値を設定し、
前記彩度を編集する領域での各点の変換量を決定し、
決定された変換量に基づいて、色彩値におけるa値、b値の各々を変換する、
請求項1に記載の入力プロファイルの編集方法。
【請求項9】
前記境界値は、L値によらず一定であり、前記境界値によって定まる境界線はL軸に平行な直線で表される、
又は、
前記境界値は、L値に応じて変化し、前記境界値によって定まる境界線は曲線で表される、
請求項8に記載の入力プロファイルの編集方法。
【請求項10】
前記彩度を編集する領域での各点の変換量を決定する処理では、
彩度編集前の彩度値、すなわちC値であるcinと、編集後のC値であるcoutとの関係を示す特性線は、
前記彩度を編集しない領域では直線であり、
前記彩度を編集する領域では曲線であり、
前記特性線の、前記境界値に対応する箇所では、前記直線と前記曲線とが滑らかに接続される、
請求項8に記載の入力プロファイルの編集方法。
【請求項11】
彩度の編集に際しては、前記入力プロファイルに従うガマットの内部の点の分布のみに寄与する編集と、前記ガマットの内部の点の分布のみならず、ガマットの外郭にも寄与する編集とを分けて取り扱い、各編集の内容を独立に調整することで、前記ガマットの内部のL点の分布と、前記ガマットの外郭とを別々に調整する、
請求項1に記載の入力プロファイルの編集方法。
【請求項12】
前記入力プロファイルに従う編集前のL値のうちの、同様の彩度であっても近隣の色相よりもくすんで見えてしまう所定領域の点の色相を、くすみが軽減する方向に変換する色相変換処理を実施する、
請求項1に記載の入力プロファイルの編集方法。
【請求項13】
値の下限値を上昇させ、かつL値の上限値を低下させる、L値の下限及び上限の変更処理を実施する、
請求項1に記載の入力プロファイルの編集方法。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の入力プロファイルの編集方法を実施する入力プロファイル編集部を有する、
入力プロファイル編集装置。
【請求項15】
コンピュータを、請求項14に記載の、入力プロファイル編集部を有する入力プロファイル編集装置として機能させるプログラム。
【請求項16】
入力機器に依存する第1の表色系における色彩値を、入力プロファイルに基づいて、入力機器に非依存の第2の表色系としてのL表色系における色彩値に変換する第1の色変換ステップと、
前記入力プロファイルに従う色彩値の明度、及び彩度を変換する第2の色変換ステップと、
前記第2の色変換ステップが実行された後の色彩値を、出力プロファイルに基づいて、出力機器に依存する第3の表色系における色彩値に変換する第3の色変換ステップと、
を含み、
前記第2の色変換ステップは、
空間における色相と彩度に対応して明度の目標値を設定する明度目標値設定ステップと、
前記入力プロファイルに従うL値を、前記明度の目標値に近づく方向に変換する明度編集ステップと、
前記入力プロファイルに従うa値、b値の各々を、a平面の中心から離れる方向に変換する彩度編集ステップと、
を含む、
色変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力プロファイルの編集方法、入力プロファイル編集装置、プログラム、及び色変換方法等に関する。なお、入力プロファイルは、入力側デバイスプロファイルとも称される。
【背景技術】
【0002】
以下、入力画像の色彩値(RGB値、CMYK値等)をCIEに準拠したL値(以降、単にL値と記す)に色変換する方法を例について説明する。
【0003】
入力画像の色彩値を入力ICCプロファイルによって入力機器に依存しない色彩値(L値)に変換し、その後、出力ICCプロファイルによって、画像を出力する機器に依存した色彩値、例えばCMYKのプリンタであればCMYK値、CMYKOrのプリンタであればCMYKOr値に変換することが行われる。
【0004】
入力ICCプロファイル(以下、単に入力プロファイルとも称す)は、入力画像の色彩値をL値に変換するための色変換方法を規定したものである。入力ICCプロファイルを変更することで、出力したい色味を変えることができる。
【0005】
また、出力ICCプロファイル(以下、単に出力プロファイルとも称す)は、画像を出力する機器の特性に合わせて色彩値を変換するための色変換方法を規定したものである。プリンタで印刷する場合、プリンタの機種、搭載されたインクの色の種類や印刷解像度、印刷速度等に応じて出力ICCプロファイルが用意される。
【0006】
特許文献1には、入力ICCプロファイルを参照して、入力画像のRGBデータをL表色系の色彩値、言い換えれば、表色値としてのL値に変換する際に、有彩色のRGBデータに対応するL値については彩度Cが高くなるように変換し、無彩色のRBGデータに対応するL値については、入力ICCプロファイルで変換される値のままとすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5958725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、有彩色のRGBデータに対応するL値のうち、a値とb値のみを変動させることで、彩度が高くなるように色変換している。すなわち、L値については、変動させていない。
【0009】
しかし、明度、すなわちL値によっては、a値とb値の変動による鮮やかさの変化が表れにくい場合がある。例えば、比較的明るい領域や比較的暗い領域のa値やb値を変動させても、出力画像は画像を出力する機器、例えばプリンタのガマットに依存してしまうため印刷画像の鮮やかさの変化は視認しにくい場合がある。
【0010】
そのため、明度も考慮して印刷画像を鮮やかさにする技術が望まれる。但し、L表色系における色域、すなわちガマットに含まれる格子点(以下、単に点と称する)の数は非常に多いため、例えば、その中から、修正すべき点と修正しない方がよい点とを選別し、修正すべき点について適切な量だけ修正、すなわち変換し、しかも、編集されたL値に対応づけてa値、b値を適切に変換して、鮮やかさが増した画像を得るためには、その目的に応じて体系化された入力プロファイルの編集技術が必要となる。
【0011】
編集が不適切に行われた場合には、好ましい効果が得られず、例えば、かえって、ガマットの外郭の形状を不適切に変更してしまい、印刷画像の画質に悪影響を与える場合等も想定され得る。
【0012】
上記の特許文献1には、L値、a値、b値の3値を連動して編集する、言い換えれば、明度と彩度を編集することで、画像をより高彩度とすることが可能な入力プロファイルの編集技術については記載されておらず、また、上記の問題の解決策についても記載がない。
【0013】
なお、L色空間において、彩度は、a平面における中心からの距離によって表わされる。言い換えれば、彩度は、a値、b値の2乗の和の平方根にて表すことができ、よって、a、bの各値を編集することで、彩度値、すなわちc値を編集することができる。
【0014】
本発明の1つの目的は、明度と彩度を編集することで、画像をより高彩度とすることが可能な入力プロファイルの編集方法等を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0017】
本発明に従う態様において、入力プロファイルの編集方法は、機器に依存する第1の表色系における色彩値と、機器に非依存の第2の表色系としてのL表色系における色彩値との対応関係を記述した入力プロファイルを取得する入力プロファイル取得ステップと、L空間における色相と彩度に対応して明度の目標値を設定する明度目標値設定ステップと、前記入力プロファイルに従うL値を、前記明度の目標値に近づく方向に変換する明度編集ステップと、前記入力プロファイルに従うa値、b値の各々を、a平面の中心から離れる方向に変換する彩度編集ステップと、を含む。
【0018】
本発明に従う態様では、色相と彩度に対応づけて、明度を編集するときの目標となる目標値を設定し、その目標値に近づく方向に明度を適切に変換し、これに連動してa値、b値の各々を、彩度が高くなる方向に変換することで、画像をより高彩度とすることが可能な入力プロファイルの編集方法を実現することができる。
【0019】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、画像処理システムの全体構成の例、及び入力プロファイルの編集作業における表示画面の例を示す図である。
図2図2は、ホストコンピュータの内部構成例、及びプロファイル編集装置の構成例を示す図である。
図3図3は、入力プロファイルの編集処理の手順例を示す図である。
図4図4は、色相の編集処理の一例を示す図である。
図5図5は、明度の編集処理の手順例を示す図である。
図6図6は、明度目標値の決定処理の手順例を示す図である。
図7図7は、明度の変換量の決定処理の手順例を示す図である。
図8図8は、明度の変換量を表す特性線の例、及び明度の変換量を決定する対応表の例を示す図である。
図9図9は、彩度の編集処理の手順例を示す図である。
図10図10は、彩度の変換量を決定する処理に使用される特性線の例、及び対応表の例を示す図である。
図11図11は、決定された彩度の変換量に基づいてa値、b値を変換した場合における、ガマット内部の点の移動の例、ガマットの外郭線の形状の変更の例を示す図である。
図12図12は、明度、すなわちL値の、下限及び上限を変更する処理の例を示す図である。
図13図13は、複数の色変換工程を含む色変方法の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0022】
図1は、画像処理システムの全体構成の例、及び入力プロファイルの編集作業における表示画面の例を示す図である。
【0023】
図1のA-1に示すように、コンピュータシステム、言い換えれば画像処理システム1は、3つのホルダ41、44及び46と、各ホルダに接続されるホストコンピュータ10と、ホストコンピュータ10に接続される液晶ディスプレイ等からなる表示部20と、操作部(入力部)としてのキーボード32及びマウス34と、を有する。
【0024】
図1の例では、入力デバイスとしてスキャナ39が用いられる。入力画像38をスキャナ39で読み取ると、デバイス依存のRGBデータが得られる。このRGBデータは、ホストコンピュータ10に供給される。入力画像38は、描画ソフトからRGBデータが得られてもよい。
【0025】
ホストコンピュータ10には、通信線L1を介して出力デバイスとしてのプリンタ50が接続されている。なお、プリンタは、印刷装置と称される場合がある。
【0026】
ホストコンピュータ10には、異なるデバイス間で色を統一的に管理するモジュールであるCMM(カラーマネージメントモジュール)18が搭載されている。
【0027】
また、ホストコンピュータ10のメモリ15には、本発明に係る、入力プロファイル編集用のプログラム17が保持されている。
【0028】
また、第1のホルダ41には、入力デバイスとしてのスキャナ39に付属すると共に、RGB色空間から、デバイスに依存しない色空間、すなわちプロファイル接続空間(PCS)としてのL色空間へとデータを変換する際の対応関係が記述されている入力プロファイル42が保持されている。
【0029】
本実施形態では、より高彩度の、すなわち鮮やかさが増した画像を得るために、入力プロファイル42を編集することができる。編集の詳細については後述する。編集によって作成された新たな入力プロファイル43は、例えば、ホルダ42に、編集前の入力プロファイル42とは別に保存される。
【0030】
ホルダ44には、RGBデータを変換して得られるLデータ、言い換えれば
表色系の色彩値のデータが保存される。
【0031】
なお、RGBデータをLデータに変換する処理は、CMM18によって実施される。すなわち、CMM18は、スキャナ39からRGBデータが供給されると、ホルダ41から入力プロファイル42を読み出し、入力プロファイル42を参照して、RGBデータをLデータに変換する。上記のとおり、変換されたLデータはホルダ44に保存される。
【0032】
ホルダ46には、出力デバイスとしてのプリンタ50に付属すると共に、プロファイル接続空間(PCS)から出力デバイスに依存した色空間へとデータを変換する際の対応関係が記述されている出力プロファイル47が保持されている。なお、出力プロファイルは、出力側デバイスプロファイルとも称される。
【0033】
プリンタ50によって画像を印刷する場合に、CMM18は、ホルダ46に保持されている出力プロファイル47を読みだして参照し、Lデータを、例えばCMYKデータやCMYKOrデータに変換する。
【0034】
ホストコンピュータ10が、入力プロファイル編集用のプログラム17に従って動作することで、ホストコンピュータ10は、入力プロファイル編集装置として機能することができる。
なお、入力プロファイル編集装置は、プロファイルエディタ、カラープロファイルエディタ、プロファイル編集ツール、あるいは、カラープロファイル編集ツールと称することもできる。
【0035】
入力プロファイル編集装置としての機能には、例えば、色相編集機能、明度編集機能、彩度編集機能、明度の上限及び下限を変更する機能、入力画像のRGB表色値と編集後のL色彩値との対応関係を取得して新たな入力プロファイルを作成する機能等がある。これらの詳細については後述する。なお、以下に説明する入力プロファイル編集装置は、デバイス依存のCMYKデータに対しても同様の編集を適用することができる。
【0036】
図1のA-2には、入力プロファイルの編集処理における表示例が示されている。図1のA-2の例では、表示画面の編集内容を表示するタグT1には、彩度編集と表示されている。
【0037】
また、表示画面の右側に配置される3つの設定タグT2~T4の内容を、プルダウン及びプルアップメニュー等で選択することで、例えば、色相間隔、明度グリッド間隔、彩度グリッド間隔等を好ましい値に設定することができる。
【0038】
また、図1のA-2の表示画面には、彩度編集用の特性図、及び対応表が表示されている。なお、特性図、及び対応表の詳細については、図10にて説明する。なお、対応表は、変換テーブルと言い換えることができる。
【0039】
ユーザーは、例えば、操作部としてのマウス34を操作して、例えば、特性図における編集後の彩度の特性線Q20の形状を変更することができる。また、ユーザーは、例えば、操作部としてのキーボード32から数値を入力し、対応表における彩度編集後の彩度値を適宜、設定することができる。
【0040】
ユーザーは、入力プロファイルの編集に際して、各種の編集支援機能を利用することができるため、編集作業が効率化され、ユーザーの負担が軽減される。
【0041】
次に、図2を参照する。図2は、ホストコンピュータの内部構成例、及びプロファイル編集装置の構成例を示す図である。図2において、図1と共通する部分には同じ符号を付している。
【0042】
ホストコンピュータ10は、入力プロファイル編集用のプログラム17が記憶されているメモリとしてのRAM15と、カラーマネージメントモジュール(CMM)18と、データインタフェース102と、データやファイルを蓄積可能な蓄積部104と、操作情報のインタフェースとしてのユーティリティ106と、各部を統括的に制御する、少なくとも1つのプロセッサ等からなる制御部110と、表示管理インタフェース111と、を有する。
【0043】
また、制御部110が、入力プロファイル編集用のプログラム17に従って動作することで、機能ブロックとしての入力プロファイル編集装置11が構築される。この入力プロファイル編集装置11は、入力プロファイル編集部113を有し、入力プロファイル編集部113は、色編集処理部112を有する。
【0044】
色編集処理部112は、色相値編集部114と、明度編集部115と、彩度編集部117と、明度の上限下限変更部119と、補間演算部120を有する演算部121と、編集に必要な各種の関数、あるいは関数の変数を生成する関数生成部122と、入力画像データと編集後のL色彩値との対応関係を取得して、新たな入力プロファイルを作成するプロファイル作成部123と、を有する。
【0045】
各編集部114~117、及び明度の上限下限変更部119は、表示管理インタフェース111を介して表示部20に、適宜、必要な画像を表示することができる。
【0046】
また、各編集部114~117、及び明度の上限下限変更部119は、適宜、演算部121を利用して演算データを得ることができ、また、関数生成部122を起動して新たな関数を生成したり、生成された関数や変数を保存したりすることができる。
【0047】
なお、入力プロファイル編集部113は、適宜、CMM18による支援を受けることができる。
【0048】
このように、入力プロファイル編集装置11は、後述する本発明の入力プロファイルの編集方法を実施する入力プロファイル編集部113を有する。なお、入力プロファイル編集装置11には、操作部32、34から入力される操作情報を取得する情報取得部や、表示部20に画像を表示するための画像出力部等も含まれるが、これらは図2では省略されている。
【0049】
入力プロファイル編集装置11によって、L色空間におけるL値、a値、b値の3値を変換することができる。よって、入力プロファイルに従うL色空間における一点を、他の一点に変換することができ、変換前の点と変換後の点との対応関係を取得し保存することで、入力プロファイルを編集することができる。
【0050】
従って、既存の入力プロファイルを用いて、例えば印刷画像をより鮮やかにすることが可能な、新たな入力プロファイルを容易に作成することができる。
【0051】
また、入力プロファイル編集装置11は、コンピュータが、プログラム17に従って動作することによって実現される。よって、実現が容易である。
【0052】
次に、図3を参照する。図3は、入力プロファイルの編集処理の手順例を示す図である。なお、図3のA-1に示される手順例は、一例であり、処理の順番は変更することができる。
【0053】
図3のA-1に示される入力プロファイルの編集処理では、ステップS1にて、RGB-L又はCMYK-Lの対応関係を示した基礎となる入力プロファイルを取得する。
【0054】
先に図1に示したように、取得された入力プロファイル42は、ホルダ41に保存される。また、L値のデータは、ホルダ44に保持される。
【0055】
この処理は、図2で示した入力プロファイル編集部113が実施する。入力プロファイル編集部113は、図2に示した蓄積部104に蓄積されている画像データ等を適宜、参照して、例えば、L色空間におけるガマット(色域)を検出し、ガマットを表示部20に表示することができる。
【0056】
ここで、図3のA-2を参照する。図3のA-2には、L色空間におけるガマット2が示されている。RGB表色系における点αは、ガマット2を構成する点βに変換される。
【0057】
なお、L表色系では、色相平面における+a方向は赤方向、-a方向は緑方向、+b方向は黄方向、-b方向は青方向を示す。
【0058】
ガマット2を、色相平面、すなわち、a平面に投影すると、図3のA-3に示されるような色度図が得られる。ガマット2が投影された領域4、言い換えれば、色度図における2次元のガマットの外郭形状は、L色空間における3次元のガマットの外郭形状に応じて変化する。
【0059】
なお、L色空間において、彩度Cは、a平面における中心からの距離によって表わされる。言い換えれば、彩度Cは、a値、b値の2乗の和の平方根にて表すことができ、よって、a、bの各値を編集することで、彩度値、すなわちc値を編集することができる。
【0060】
また、L色空間において、色相hは、b軸を基準とした、反時計回りの色相角θで表すことができる。
【0061】
図3のA-1に戻って説明を続ける。
ステップS2では、必要に応じて色相値を編集する。この処理は、必ず実施されるものではない。但し、出力画像の高彩度化を達成するためには、実施するのが好ましい処理である。色相値の編集処理は、図2で示した色相値編集部114が実施する。
【0062】
ステップS3では、明度を編集する。明度の編集処理は、図2で示した明度編集部115が実施する。
【0063】
ステップS4では、彩度を編集する。彩度の編集処理は、図2で示した彩度編集部117が実施する。
【0064】
ステップS5では、必要に応じて、明度の上限、下限を変更する。この処理は、必須ではないが、出力画像における黒の階調を確保するためには、実施するのが好ましい処理である。この処理は、図2で示した明度の上限下限変更部119が実施する。
【0065】
ステップS6では、編集後のRGB-L又はCMYK-Lの対応関係を取得する。場合により、ICCプロファイルとすることができる。
【0066】
そして、ステップS7にて、編集後の入力プロファイル、すなわち新たな入力プロファイルを、先に図1に示したとおり、新たな入力プロファイル43としてホルダ41に保存する。これらの処理は、図2で示したプロファイル作成部123が実施する。
【0067】
以下では、色相値、明度、彩度、明度の上限下限の順に編集する場合を説明するが、これらの4つの指標の編集順序はこれに限定されない。
【0068】
次に、図4を参照する。図4は、色相の編集処理の一例を示す図である。
色相の編集処理におけるステップS2-1では、編集前のL値のうち、色相を変化させる領域を決定する。
【0069】
色相を変化させる領域は、同様の彩度であっても、近隣の色相よりもくすんで見えてしまう領域とすることが好ましい。例えば、図4のA-2で示されるように、色度図において楕円で示される青と紫の間の領域RSを、色相を変化させる領域として指定することができる。
【0070】
この領域RSについては、L点の色相値を、例えば水色寄り、もしくはマゼンタ寄りに変更するのが好ましい。
【0071】
ステップS2-2では、色相値の変化量を決定する。色相値の変化量を決定する方法としては、例えば、図4のA-4に示すように、編集前のL値と色相角θに応じて、対応表によって色相の変化量を決定することができる。対応表に記載されていないL点については、色相の変化量を補間演算により求めてもよい。
【0072】
また、彩度の小さい領域、すなわちグレー領域では、人の視覚が色相の変化に敏感である。グレー領域にて色相を大きく変化させると、人が視認する色が、元の色とは大きく異なってしまう場合がある。
【0073】
この点を考慮すると、図4のA-3に示すように、基準となる第1の彩度値c1を定め、この彩度値c1以下の領域では、色相を変化させないようにするのが好ましい。
【0074】
また、基準となる第2の彩度値c2(>c1)以上の領域については、対応表の指定量の通りに色相を変化させてもよい。
【0075】
また、第1の彩度値c1と第2の彩度値c2の間の領域では、第2の彩度値c2に近づくにつれて徐々に変化量を大きくしてもよい。ここで、図4のA-3の色度図において、4つの点D1~D4が示されている。色相の変化は、直線状の矢印にて示されている。彩度値がc1以下の点D1については、色相は変化させない。
【0076】
彩度がc1以上でc2以下の領域における点D2、D4については、D2、D3の順にc2に近づくため、点D3の彩度の変化量をより大きく設定している。また、彩度がC2を超える領域の点D4については、点D2、D3の変化量よりも大きな変化量を設定している。
【0077】
このように、図4の例では、入力プロファイル42に従う編集前のL値のうちの、同様の彩度であっても近隣の色相よりもくすんで見えてしまう所定領域の点の色相を、くすみが軽減する方向に変換する色相変換処理を実施する。
【0078】
これにより、出力画像における、くすんで見える領域の彩度を効果的に高めることができる。
【0079】
次に、図5を参照する。図5は、明度の編集処理の手順例を示す図である。
【0080】
明度編集処理では、ステップS3-1にて明度目標値targetLを決定し、ステップS3-2では、目標値targetLに近づくように、L値の変換量を決定し、ステップS3-3にて決定された変換量に基づいて、L値を変換する。
【0081】
次に、図6を参照する。図6は、明度目標値の決定処理の手順例を示す図である。
【0082】
図6のA-1に示されるように、明度目標値targetLの決定処理では、ステップS10にて色相角θを0に設定し、ステップS11にて、θが360°未満であるかが判定される。Yのときは、ステップS12に移行し、Nのときは終了する。
【0083】
ステップS12では、L空間でのガマットを色相角θの色相面で切断した場合のガマットの外郭線を取得する。
【0084】
図6のA-2に示されるように、ガマット2を色相角θの色相面3で切断することで外郭線2の形状が特定される。
【0085】
これにより、図6のA-3に示すように、明度L、彩度C、及び色相角θによって決定される色相hによるLh色空間における、ガマット2の外郭線5の形状が特定される。
【0086】
ステップS13では、ガマットの外郭線で特定される領域内における彩度の高い点のL値を、色相角θにおける目標値targetLに設定する。
【0087】
ここで図6のA-3において、入力プロファイルに従う色彩値の色再現範囲を示すガマット2の外郭線5の形状に着目する。色再現が可能な最大のC値はcixである。L値を編集する主な目的は、発色のよいL値を得ることである。よって、好ましい一例としては、最大のC値に対応するL値を目標値targetLに設定してもよい。
【0088】
但し、その目標値targetLに対応するC値が、出力プロファイルによる色再現範囲外である場合は、L値の修正が出力画像に反映されず、出力画像のくすんで見える領域を高彩度化するという目的は達成できない。
【0089】
そこで、L表色系の色彩値を、出力プロファイルに従って色変換し、色変換後の色彩値に基づいて出力画像を得る場合において、明度目標値設定ステップでは、L空間における出力プロファイルに従うガマットを、色相角θの色相面で切断した場合のガマットの外郭線で特定される領域内における、彩度の高い一点のL値を、色相角θにおける目標明度値として設定してもよい。
【0090】
図6のA-4には、出力プロファイルに従うガマットの外郭線7が破線で示されている。この破線の外郭線7で特定される領域内において、例えば、最も彩度値が高いcoxに対応するL値を、目標値targetLとすることができる。
【0091】
これにより、出力プロファイルに従うガマットの範囲内において、言い換えれば、印刷画像の色再現が可能な範囲において、発色のよいL値が選ばれる。よって、出力画像の高彩度化を確実に達成することができる。
【0092】
また、他の例では、図6のA-4に示すように、入力プロファイルに対応するガマットの外郭線5の他に、出力プロファイルに対応するガマットの外郭線7も考慮して、適切な目標値targetLを設定してもよい。なお、外郭線7は、破線で示されている。
【0093】
図6のA-4の例では、入力プロファイルにおける色再現が可能な最大のC値cixに対応するL値と、出力プロファイルにおける色再現が可能な最大のC値coxに対応するL値とによってL値の設定範囲Rを定めている。例えば、ユーザーは、その設定範囲Rにおいて、任意のL値を設定することができる。これにより、ユーザーによる色彩調整の自由度が増し、また、出力画像の高彩度化が確実に達成される。
【0094】
ステップS14では、現在のθの値に10°を加えることでθを更新し、ステップS11に戻り、以降、ステップS11にてNとなるまで、上記の処理を繰り返し実施する。なお、θの値の更新幅は10°よりも大きくしてもよいし、10°よりも小さくしてもよい。
【0095】
次に、図7を参照する。図7は、明度の変換量の決定処理の手順例を示す図である。
【0096】
図7のA-1に示すように、ステップS20では、色相hと彩度Cに対応させて4つの明度の基準値、すなわち、brightLmin、brightLmax、darkLmin、darkLmaxを設定する。なお、基準値は、閾値と言い換えてもよい。
【0097】
ここで、brightLmin、及びbrightLmaxは、それぞれL値を増大させるように編集する領域における最小のL値、及び最大のL値である。また、darkLmin、及びdarkLmaxは、それぞれL値を減少させるように編集する領域における最小のL値、及び最大のL値である。なお、複数の設定値に基づいて補間演算により、基準値を求めてもよい。
【0098】
4つの基準値は、例えば、図7のA-2に示される対応表を用いて決定することができる。対応表には、彩度Cに対して色相角θを10°単位で変化させたときの、上記の4つの基準値が記述されている。
【0099】
図7のA-3には、4つの基準値の設定例が示されている。なお、図6のA-3では、brightLmin、brightLmax、darkLmin、darkLmaxは紙面の都合上、各々、bn、bx、dn、dxと簡略化して表記されている。
【0100】
色相角θ=10°の場合、基準値bn1と基準値bx1によって特定される領域Z1が、L値を増大させるように編集する編集領域である。基準値dn1と基準値dx1によって特定される領域Z2が、L値を減少させるように編集する編集領域である。
【0101】
基準値の設定に際しては、以下の点に留意するのが好ましい。言い換えれば、L値の編集に際し、すべての色彩値のL値を変更してしまうと、元の色彩値の傾向が失われて色味が大きく異なる場合があるため、これを抑制するために、L値を変更しない領域も残すのが好ましい。
【0102】
例えば、darkLmin(dn1)とbrightLmax(bx1)は一致させずに、両者の間に、L値を変更しない隙間領域を設けるのが好ましい。図7のA-3の例では、その隙間領域に、targetLを設定している。
【0103】
また、黒近辺は、編集前の色彩値の傾向を不用意に変更せず、元の傾向を維持するために、brightLmin(bn1)を0にしないのが好ましい。言い換えれば、brightLmin(bn1)とL値の0との間に、L値を変更しない領域を設けるのが好ましい。
【0104】
また、白近辺は、編集前の色彩値の傾向を不用意に変更せず、元の傾向を維持するために、darkLmaxを100にしないのが好ましい。言い換えれば、darkLmax(dx1)とL値の100との間に、L値を変更しない領域を設けるのが好ましい。
【0105】
図7のA-1に戻って説明を続ける。ステップS21では、編集前のL値をLinとし、編集後のL値をLoutとする。そして、brightLmin<Lin<brightLmaxのときは、Loutを増大させるように編集し、darkLmin<Lin<darkLmaxのときは、Loutを減少させるように編集する。編集は、例えば、LinとLoutとの関係を示す関数を使い分ける、あるいは関数の変数を変化させることで実施することができる。
【0106】
図7のA-4では、横軸にLinをとり、縦軸にLoutをとり、LinとLoutとの関係を示している。実線で示される特性線Q0は、傾きが1の直線である。
【0107】
破線の曲線で示される、Linが小さい側の特性線Q1は、明度を増大させるように編集する編集領域Z1でのLinからLoutへの変換特性を示している。Lin1は、Lout1(>Lin1)に変換される。
【0108】
破線の曲線で示される、Linが大きい側の特性線Q2は、明度を減少させるように編集する編集領域Z2でのLinからLoutへの変換特性を示している。Lin2は、Lout2(<Lin2)に変換される。
【0109】
特性線Q0の直線と、特性線Q1、Q2の曲線とは滑らかに接続されるのが好ましい。また、特性線Q1、Q2の各々により表される領域を、Linに対するLoutの変化を大きくする領域と小さくする領域とに区分し、変化を大きくする領域における曲線の部分と、変化を小さくする領域における曲線の部分とを滑らかに接続するのが好ましい。これらの点については、後述する。
【0110】
図7のA-5の例では、L値の編集によって、L空間における点の位置が変更される様子、ならびに、その変更に伴うガマットの外郭形状の変化の例が示されている。図7のA-5において、白抜きの丸はL値を編集する前の点を示し、黒丸はL値を編集した後の点を示す。明度の変化は矢印で示される。また、明度の変化量は、その矢印の長さで示される。
【0111】
図7のA-5の例では、彩度が低い領域における明度の変化量を、彩度が高い領域における明度の変化量よりも小さく設定している。彩度の小さい領域では明度の変化を、人が視認しやすい。L値を大きく変化させてしまうと、細かい色の変化を再現できなくなるおそれがある。この点を考慮して、彩度が低い領域では明度の変化量を小さくするのが好ましい。
【0112】
図7のA-5の例において、L編集前の点として、L値が同じであり、彩度c10、c20、c30に対応する3つの点が描かれている。c10<c20<c30の関係にある。各点のL値の変化量ΔL1、ΔL2、ΔL3は、ΔL1<ΔL2<ΔL3の関係が成立するように設定されている。
【0113】
次に、図7のA-6を参照する。図7のA-6の例では、L値の編集に伴い、ガマットの外郭線の形状が変化している。図中、5-1は、L値を編集する前のガマットの外郭線を示す。また、5-2は、L値を編集した後のガマットの外郭線を示す。L値の編集に伴い、ガマットは、編集前に比べて縮小している。
【0114】
値の編集によって、例えば、白めの領域が減り、インクの濃い領域が増加するという効果、ならびに、暗めの領域が減少するという効果が得られる。
【0115】
次に、図8を参照する。図8は、明度の変換量を表す特性線の例、及び明度の変換量を決定する対応表の例を示す図である。
【0116】
図8のA-1は、先に示した図7のA-4における対応表を再掲したものである。先に述べたとおり、特性線Q0の直線と、特性線Q1、Q2の曲線とは滑らかに接続されるのが好ましい。また、特性線Q1、Q2の各々により表される領域を、Linに対するLoutの変化を大きくする領域と小さくする領域とに区分し、変化を大きくする領域における曲線の部分と、変化を小さくする領域における曲線の部分とを滑らかに接続するのが好ましい。
【0117】
なお、変化を大きくする領域は、言い換えると、変化を示す特性線の傾き、言い換えれば、特性線である曲線を微分して得られる接線の傾きを大きくする領域ということができる。また、変化を小さくする領域は、言い換えると、変化を示す特性線の傾き、言い換えれば、特性線である曲線を微分して得られる接線の傾きを小さくする領域ということができる。
【0118】
例えば、L値を急峻に変化させると、例えばグラデーション画像を印刷する場合に、その画像中に、急激に色彩値が変化する領域が存在することで、元の画像の色味の傾向が失われ、やや不自然な画像となる場合等があり得る。
【0119】
この点を考慮して、L値の変化量の設定に際しては、急峻な変化を避け、全体として緩やかな変化とするのが好ましい。なお、変化の途中に、直線的に変化する領域がある場合を排除するものではない。
【0120】
図8のA-2には、L値を増大させる編集領域Z1の拡大図が示されている。特性線Q1で示される領域は、変化を示す特性線の傾きを大きくする領域Z10、Z12と、特性線の傾きを小さくする領域Z11に区分されている。領域Z10の範囲は、LinAとLinBにより決定され、領域Z11の範囲は、LinBとLinCにより決定され、領域Z12の範囲は、LinCとLinDにより決定される。
【0121】
図8のA-2では、破線で示される特性線Q1の、LinA~LinDの各々に対応する箇所に破線の楕円を描き、各箇所にK1~K4の符号を付している。
【0122】
箇所K1とK4は、特性線Q0の直線と、特性線Q1の曲線とが接続される箇所を示しており、この箇所では、直線と曲線を滑らかに接続して、L値の変化が目立たないようにしている。
【0123】
また、箇所K2は、上記の領域Z10と領域Z11の境界の箇所であり、箇所K3は、上記の領域Z11と領域Z12の境界の箇所である。言い換えれば、各領域における曲線の部分同士を接続する箇所であり、この箇所についても、L値の変化が目立たないようにしている。
【0124】
上述した滑らかな接続は、例えば、特性線の形状を定める関数を複数、用意し、適宜、使い分けする、あるいは、共通の関数を用いるが、変数を適宜、変更する、という手法等により実現可能である。一例として、特性線の傾きを大きくする領域と傾きを小さくする領域で、関数を変える方法が考えられる。
【0125】
次に、図8のA-3を参照する。L値を減少させる編集領域Z2の拡大図が示されている。特性線Q2で示される領域は、変化を示す特性線の傾きを小さくする領域Z20、Z22と、特性線の傾きを大きくする領域Z21に区分されている。領域Z20の範囲は、LinDとLinEにより決定され、領域Z21の範囲は、LinEとLinFにより決定され、領域Z22の範囲は、LinFとLinGにより決定される。
【0126】
図8のA-3では、破線で示される特性線Q2の、LinD~LinGの各々に対応する箇所に破線の楕円を描き、各箇所にK5~K8の符号を付している。
【0127】
各箇所K5~K8は、図8のA-2における箇所K1~K4に対応する。図8のA-3においても、各箇所K5~K8においては、滑らかな接続が実現されており、L値の急峻な変化が目立たないようにしている。得られる効果は、図8のA-2の場合と同様である。
【0128】
特性線Q1、Q2を示す滑らかな曲線を実現する手法としては、例えば、曲線を表現する複数の関数を用意し、その関数を使い分けたり、共通の関数に含まれる少なくとも1つの変数の値を、適宜、指定したりする方法が考えられる。
【0129】
また、編集後の明度であるLoutの値を、図8のA-4に示すような対応表にて導出することもできる。この対応表は、例えば、ルックアップテーブル(LUT)として実現することができる。
【0130】
この対応表を用いる場合、色相とL値、及びLinを指定することで、Loutを導出することができる。但し、一例であり、この例に限定されるものではない。
【0131】
以上説明したように、本発明の入力プロファイル編集方法は、機器に依存する第1の表色系における色彩値と、機器に非依存の第2の表色系としてのL表色系における色彩値との対応関係を記述した入力プロファイルを取得する入力プロファイル取得ステップと、L空間における色相と彩度に対応して明度の目標値を設定する明度目標値設定ステップと、入力プロファイルに従うL値を、目標明度値に近づく方向に変換する明度編集ステップと、L値が編集された色彩値におけるa値、b値の各々を、a平面の中心から離れる方向に変換する彩度編集ステップと、を含む。
【0132】
これにより、L色空間におけるL値、a値、b値の3値を変換することができる。よって、入力プロファイルに従うL色空間における一点を、他の一点に変換することができる。例えば、元のRGB値と、本発明による色変換後のL値との対応関係を新たに取得することで、編集された新しい入力プロファイルを得ることができる。
【0133】
従って、既存の入力プロファイルを用いて、例えば印刷画像をより鮮やかにすることが可能な、新たな入力プロファイルを容易に作成することができる。
【0134】
また、明度目標値設定ステップでは、L空間における入力プロファイルに従うガマットを、色相角θ(θは0≦θ<360°を満たす整数)の色相面で切断した場合のガマットの外郭線で特定される領域内における、最も彩度の高い一点のL値を、色相角θにおける目標明度値として設定してもよい。
【0135】
これにより、彩度を高めることが可能なL値、言い換えれば、色相に応じて、適切な目標明度値を設定することができる。
【0136】
また、L表色系の色彩値を、出力プロファイルに従って色変換し、色変換後の色彩値に基づいて出力画像を得る場合において、明度目標値設定ステップでは、L空間における出力プロファイルに従うガマットを、色相角θの色相面で切断した場合の前記ガマットの外郭線で特定される領域内における、最も彩度の高い一点のL値を、色相角θにおける目標明度値として設定してもよい。
【0137】
これにより、出力プロファイルに従うガマットの範囲内において、言い換えれば、印刷画像の色再現が可能な範囲において、発色のよいL値が選ばれる。よって、出力画像の高彩度化を確実に達成することができる。
【0138】
また、L表色系の色彩値を、出力プロファイルに従って色変換し、色変換後の色彩値に基づいて出力画像を得る場合において、明度目標値設定ステップでは、L空間における入力プロファイルに従う第1のガマットを、色相角θの色相面で切断した場合の第1のガマットの外郭線で特定される領域内における、最も彩度の高い一点の第1のL値と、L空間における出力プロファイルに従う第2のガマットを、色相角θの色相面で切断した場合の第2のガマットの外郭線で特定される領域内における、最も彩度の高い一点の第2のL値と、で決定される明度範囲(第1のL値と第2のL値を含む)内で、色相角θにおける目標明度値を設定してもよい。
【0139】
これにより、入力プロファイル及び出力プロファイルの双方を考慮して定められる明度範囲内において、適切な明度目標値を設定することが可能である。よって、出力画像の高彩度化が確実に達成される。また、その明度範囲内において、例えばユーザーが任意の値を明度目標値として設定できるようにすれば、ユーザーによる色彩調整の自由度が増すという効果も得られる。
【0140】
また、明度編集ステップでは、L空間における入力プロファイルに従うガマットを、色相角θの色相面で切断した場合の前記ガマットの外郭線で特定される領域内において、目標明度値よりも明度が低い側に、入力プロファイルに従うL値を増大させる方向に変化させる第1の領域を設定し、目標明度値よりも明度が高い側に、入力プロファイルに従うL値を減少させる方向に変化させる第2の領域を設定し、第1の領域よりも明度が低い第3の領域、又は、第2の領域よりも明度が高い第4の領域では、前記入力プロファイルに従うL値を変化させないようにしてもよい。
【0141】
これにより、L値を変更しない領域が残ることになり、元の色彩値の傾向が失われて色味が大きく異なることが抑制される。
【0142】
例えば、黒近辺や白近辺にL値を変更しない領域を設けることで、編集前の色彩値の傾向を不用意に変更せず、元の傾向を維持することができる。
【0143】
また、明度編集ステップでは、明度編集前にL値が同じであるが、彩度が異なる領域がある場合に、彩度が低い領域における明度の変化量を、彩度が高い領域における明度の変化量よりも小さく設定してもよい。
【0144】
これにより、彩度が小さい領域、すなわち、グレー領域においても、細かい色の変化を再現できる。すなわち、彩度の小さい領域では明度の変化を人が視認しやすい。L値を大きく変化させてしまうと、細かい色の変化を再現できなくなるおそれがある。彩度が低い領域では明度の変化量を小さく設定することで、上記の問題が解消される。
【0145】
また、明度編集ステップでは、明度編集前のL値であるLinと、編集後のL値であるLoutとの関係を示す特性線は、第1、第2の領域においては曲線であり、第3、及び第4の領域においては直線であり、特性線の、第1の領域の下限値、及び上限値に対応する第1、第2の箇所、及び、第2の領域の下限値、及び上限値に対応する第3、第4の箇所では、曲線の部分と直線の部分とは滑らかに接続され、特性線の、曲線で表される領域は、Linに対するLoutの変化を大きくする領域と、小さくする領域とに区分され、変化を大きくする領域における曲線の部分と、変化を小さくする領域における曲線の部分とは滑らかに接続されてもよい。
【0146】
これにより、L値の急峻な変化を抑制し、全体として緩やかな変化とすることができる。従って、例えば、グラデーション画像を印刷する場合においても、その画像中に、急激に色彩値が変化する領域が存在することが抑制される。よって、元の画像の色味の傾向を維持でき、違和感のない自然な画像を再現することができる。
【0147】
次に、図9を参照する。図9は、彩度の編集処理の手順例を示す図である。図9のA-1に示されるように、彩度の編集処理では、ステップS30にて、彩度を編集する領域としない領域の境界値を決定する。ステップS31にて、彩度を編集する領域での変換量を決定する。
【0148】
ステップS32にて、決定された彩度の変換量に基づいてa値とb値を変換し、彩度を編集する。言い換えれば、L値が編集された色彩値におけるa値、b値の各々を、a平面の中心、言い換えれば、彩度が0の位置から離れる方向に変更する。これにより彩度が高まり、画像の鮮やかさを増すことができる。
【0149】
ステップS30における、彩度を編集する領域としない領域の境界値は、L値にかかわらず一定であってもよい。図9のA-2では、L空間における入力プロファイルに従うガマットを、色相角θの色相面で切断した場合のガマット2の外郭線5で特定される領域の内部で、彩度の境界値c10によって、彩度値を編集しない領域Z3が設定され、高彩度側に彩度を編集する領域Z4が設定されている。なお、彩度の境界値は、以下、単に境界値と称する。
【0150】
図9のA-2では、境界値c10はL値によらず一定であるため、境界値c10によって定まる境界線はL軸に平行な直線で表される。この場合は、境界値c10が固定であるため、境界値の設定が容易化される。
【0151】
彩度を変更しない領域Z3は、彩度が低いグレーの領域に相当する。グレーの領域では、彩度の違いが目立ちやすいので、彩度を編集しない。これにより、不自然な明度の修正がなされず、元の画像の色味の傾向を維持できる。
【0152】
一方、グレーの領域以外の、ある程度、彩度が高い領域Z4では、彩度の編集が実施される。これにより、画像を全体的に高彩度化することができ、鮮やかさが増した画像を得ることができる。
【0153】
図9のA-3では、境界値c10’は、L値に応じて変化し、境界値c10’によって定まる境界線は曲線で表される。グレーの領域の分布に対応させて、境界値c10’を、L値に対応させて可変に設定することで、グレーの領域にて彩度の編集がなされることを、より確実に抑制することができる。
【0154】
次に、図10を参照する。図10は、彩度の変換量を決定する処理に使用される特性線の例、及び対応表の例を示す図である。
【0155】
図10のA-1には、彩度を編集するために使用される曲線の特性線Q20が示されている。先に示した図9のA-2の例と同様に、この特性線Q20の曲線、言い換えれば、彩度の変換曲線は滑らかな曲線とするのが好ましい。
【0156】
これによって、急峻な色の変化を抑制することができる。言い換えれば、元の画像の色彩値を不自然に、急激に変更することがない。このことは、元の画像の色彩の傾向を維持する点にも資する。
【0157】
なお、直線の特性線Q10は、cout=cinの関係を示す直線である。特性線Q10は、彩度を編集しない領域Z3において適用される。なお、cinは、L値が編集された後で、かつ彩度の編集前におけるa値とb値から導出される彩度値である。coutは、彩度編集後の彩度値である。
【0158】
特性線Q10の直線と、特性線Q20の曲線とは、滑らかに接続されるのが好ましい。特に、低彩度の範囲では、彩度の変更が視認されやすいため、彩度の急峻な変化を抑制して、彩度の変更を目立たせないようにするのが好ましい。
【0159】
特性線Q20を示す滑らかな曲線を実現する手法としては、例えば、曲線を表現する少なくとも1つの関数を用意し、その関数を使い分けたり、その関数に含まれる少なくとも1つの変数の値を、適宜、指定したりする方法等が考えられる。
【0160】
また、編集後の彩度であるcoutの値は、図10のA-2に示すような対応表にて導出することもできる。この対応表は、例えば、ルックアップテーブル(LUT)として実現することができる。この対応表を用いる場合、色相とL値、及びcinを指定することで、coutを導出することができる。但し、一例であり、この例に限定されるものではない。
【0161】
以上説明したように、前記彩度変換ステップでは、L空間における入力プロファイルに従うガマットを、色相角θの色相面で切断した場合の前記ガマットの外郭線で特定される領域内において、低彩度側に設けられる、彩度値を編集しない領域と、高彩度側に設けられる、彩度を編集する領域との境界を示す境界値を設定し、彩度を編集する領域での各点の変換量を決定し、決定された変換量に基づいて、L値が編集された色彩値におけるa値、b値の各々を変換してもよい。
【0162】
彩度が低いグレーの領域では、彩度の違いが目立ちやすい。この点を考慮して、グレー領域では彩度を編集しないこととしたものである。
【0163】
これにより、不自然な明度の修正がなされず、元の画像の色味の傾向を維持できる。一方、グレーの領域以外の、ある程度、彩度が高い領域では、彩度の編集が実施される。これにより、画像を全体的に高彩度化することができ、鮮やかさが増した画像を得ることができる。
【0164】
また、彩度を編集する領域と編集しない領域との境界線を規定する境界値は、L値によらず一定であり、境界値によって定まる境界線はL軸に平行な直線で表されてもよく、又は、境界値は、L値に応じて変化し、境界値によって定まる境界線は曲線で表されてもよい。
【0165】
境界線が直線の場合は、境界値が固定であることから、境界値の設定が容易化される。また、境界線が曲線の場合は、グレーの領域の分布に対応させて、境界値をL値に対応させて可変に設定することで、グレーの領域にて彩度の編集がなされることを、より確実に抑制することができる。
【0166】
また、彩度を編集する領域での各点の変換量を決定する処理では、彩度編集前の彩度値、すなわちC値であるcinと、編集後のC値であるcoutとの関係を示す特性線は、彩度を編集しない領域では直線であり、彩度を編集する領域では曲線であり、特性線の、境界値に対応する箇所では、直線と曲線とが滑らかに接続されてもよい。
【0167】
これによって、急峻な色の変化を抑制することができる。言い換えれば、元の画像の色彩値を不自然に、急激に変更することがない。このことは、元の画像の色彩の傾向を維持する点にも資する。
【0168】
次に、図11を参照する。決定された彩度の変換量に基づいてa値、b値を変換した場合における、ガマット内部の点の移動の例、ガマットの外郭線の形状の変更の例を示す図である。
【0169】
彩度の編集処理では、先に図9のA-1にて説明したとおり、ステップS31にて、彩度を編集する領域での変換量が決定され、ステップS32にて、決定された変換量に基づいて、a値とb値が変換されて、彩度値が変更される。言い換えれば、入力プロファイルに従うa値、b値の各々が、a平面の中心、言い換えれば、彩度が0の位置から離れる方向に変更される。
【0170】
この結果、図11のA-1に示されるように、L空間における入力プロファイルに従うガマットを、色相角θの色相面で切断した場合のガマットの外郭線5で特定される領域内において、各点の彩度は、彩度編集の変換量の分だけ高彩度側へと移動し、これにより、外郭線5で特定される領域の内部の点の分布が変更される。
【0171】
なお、図11のA-1において、黒丸は、L編集後でC編集前の点を示す。グレーの丸は、C編集後の点を示す。
【0172】
明度の編集、ならびに彩度の編集によって、ガマット2の外郭線5の形状が変化する。その外郭線5の変化の一例が、図11のA-2に示される。なお、図11のA-2では、+C方向のみならず、-C方向におけるガマットの外郭線も描かれている。
【0173】
図11のA-2において、破線で示される外郭線5-1は、L編集前のガマットの外郭線を示す。
【0174】
実線で示される外郭線5-2は、L編集後でC編集前のガマットの外郭線を示す。Lの編集によって、ガマット2内の点の分布が変更されて、ガマット2は縮小される。よって、外郭線5-2は、外郭線5-1の内側に位置する。
【0175】
一点鎖線で示される外郭線5-3は、L編集及びC編集後のガマットの外郭線を示す。C編集によって、ガマット2内の点は、C軸に沿って左右に移動する。この点の移動に伴い、ガマット2は、C軸の中心から離れる方向に押し広げられ、図11のA-2の例では、外郭線5-3は、L編集前の外郭線5-1の外側に位置している。すなわち、Lの編集によってガマット2は一旦、縮小され、続いて、Cの編集によって、ガマット2が拡張されたことになる。
【0176】
このように、L、Cの編集は、ガマット2の内部における点の分布を変化させるのみならず、外郭線5の形状やガマット2の大きさにも影響を与える場合があり得る。
【0177】
この点を考慮すると、Cの編集に際しては、ガマット2内部の点の分布のみに寄与する編集と、ガマット2の内部の点の分布のみならず、ガマットの外郭にも寄与する編集とを分けて取り扱い、各編集の内容を独立に調整することで、ガマット2の内部のLa点の分布と、ガマット2の外郭とを別々に調整できるようにするのが好ましい。
【0178】
例えば、彩度の編集を、変数を含む関数を用いて実行する場合において、ガマットの内部、及びガマットの外殻の双方に寄与する変数と、ガマットの内部にのみ寄与する変数とを分けて取り扱い、変数の値を決めるルックアップテーブル(LUT)も2種類用意し、各々を使い分けすることで、上記の調整をすることができる。
【0179】
例えば画像を印刷する場合、印刷画像の色彩は出力プロファイルの特性に依存するが、出力プロファイルに従うガマットの高彩度領域が、入力プロファイルに従うガマットの高彩度領域よりも広く、印刷可能な高彩度領域に余裕があるときは、その領域を有効に活用するために、Cの編集における変化量を、上記の印刷可能な高彩度領域まで増大させてもよい。これにより、画像全体の鮮やかさを、より向上させることができる。
【0180】
一方、出力プロファイルに従うガマットの高彩度領域が、入力プロファイルに従うガマットの高彩度領域よりも狭い場合には、Cの変化量を増やしても、印刷画像には反映されないため、外郭に影響を与える点のCの変化量を小さめに抑制し、元の画像の彩度の傾向を維持するようにしてもよい。
【0181】
上記のような調整を実施することで、彩度の編集を、状況に応じて、より柔軟に行うことが可能となる。すなわち、プリンタ等の出力機器の特性を考慮した、その出力機器の色再現性能を十分に活用可能な彩度の編集方法が実現される。
【0182】
図11のA-3には、ガマットをa平面に投影して得られる色度図における、色彩値の編集の前後におけるガマットの外郭形状の変化例が示されている。破線で示される外郭線6-1が、L及びCを編集する前のガマットの外郭線である。また、実線で示される外郭線6-2が、L及びCを編集した後のガマットの外郭線である。編集後の外郭線6-2は、編集前の外郭線6-1よりも高彩度側に位置しており、また、色域も全体的に拡大されている。
【0183】
このように、色彩値の編集によって、画像の全体を、より鮮やかに再現することが可能となる。
【0184】
次に、図12を参照する。明度、すなわちL値の、下限及び上限を変更する処理の例を示す図である。
【0185】
本発明では、上述のとおり、L値を編集することができる。この編集機能を利用して、図12の例では、Lの上限値と下限値を変更する。これにより、例えば、印刷画像等の出力画像において、元の画像の黒付近の階調を精度よく再現しやすくなる。
【0186】
プリンタで画像を印刷するとき、印刷画像のインク値の下限明度値は、L=0に相当する明度よりも大きく設定されているのが通常である。仮に、編集されたL空間におけるLの下限値が0に設定されていると、0からインク値の下限明度値までの黒の範囲の階調は、印刷画像では、すべてインク値の下限値に集約されてしまい、元の画像の黒の階調を再現できない。
【0187】
例えば図12のA-1において、左側にL空間における、L編集前のLinと、L編集後のLoutとの関係を示す特性線Q30が示されている。特性線Q30はLout=Linの関係を示す直線である。また、右側にインク値の階調範囲が矢印で示されている。
【0188】
図12のA-1の例では、L空間における、Lが0~2の範囲の階調は、印刷画像では、インク値の下限値P10に集約されてしまうため、黒を多階調で表示することができない。
【0189】
そこで、図12のA-2では、Lの編集には、特性線Q30に代えて、特性線Q40を使用する。
【0190】
特性線Q40の変換特性は、上限明度値Lwh、下限明度値Lbkとするとき、下記式で表すことができる。
Lout=(Lwh-Lbk)/100×Lin+Lbk
なお、Lbkは例えば2に設定され、Lwhは例えば98に設定される。これ以降は、上限明度値Lwhが明度100、下限明度値Lbkが明度0として画像処理が実行される。言い換えれば、明度の上限値と下限値が変更される。
【0191】
図12のA-2の例によれば、明度が0~2の範囲のLinは、2~4の範囲のLoutに変換される。そして、L値が2~4の範囲は、印刷画像におけるインク値のP10~P20の階調範囲に相当する。よって、元の画像の黒近辺の色を複数の階調で表示、例えば印刷することができる。言い換えれば、図12のA-1の例のように、黒近辺の画像の階調がすべて、インク値の階調P10に集約されて圧縮されることが抑制され、よって、黒近辺の色の階調性が向上する。
【0192】
このように、図12のA-2の例では、Lの各値を編集した後に、さらにL値の下限値を上昇させ、かつL値の上限値を低下させる、L値の下限及び上限の変更処理を実施してもよい。上記の例では、下限値は0から2に上昇し、上限値は100から98に低下している。
【0193】
これにより、元の画像の黒近辺の色を複数の階調で表示、例えば印刷することができる。例えば、黒近辺の画像の階調がすべて、インク値の1つの階調に集約されて圧縮されることが抑制され、黒近辺の色の階調性が向上する。
【0194】
(請求項16の内容と効果)
次に、図13を参照する。図13は、複数の色変換工程を含む色変方法の手順例を示すフローチャートである。
上記の実施形態では、入力プロファイルの編集方法について説明しているが、本発明は、複数の色変換工程を含む色変換方法として把握することも可能である。
【0195】
図13のステップS40では、入力機器に依存する第1の表色系における色彩値を、入力プロファイルに基づいて、入力機器に非依存の第2の表色系としてのL表色系における色彩値に変換する。このステップS40を、第1の色変換ステップと称してもよい。
【0196】
ステップS41では、L空間において、入力プロファイルに従う色彩値の明度、及び彩度を、例えば、図4図11に示した方法を用いて、他の色彩値に変換する。このステップS41を、第2の色変換ステップと称してもよい。
【0197】
このステップS41は、明度の目標値を設定するステップS41-1と、明度を編集するステップS41-2と、彩度を編集するステップS41-3と、を含んでもよい。
ここで、ステップS41-1は、先に説明した図5のステップS3-1に対応する。すなわち、ステップS41-1は、L空間における色相と彩度に対応して明度の目標値を設定する明度目標値設定ステップである。
また、ステップS41-2は、先に説明した図5のステップS3-2及びステップS3-3に対応する。すなわち、ステップS41-2では、明度の目標値targetLに近付くように、LのL値の変換量を決定し、決定された変換量に基づいてL値を変換する。これにより、明度の編集が実行される。
【0198】
また、ステップS41-3は、先に説明した図9のA-1に示した彩度の編集処理、すなわち、ステップS30~S32に相当する。言い換えれば、ステップS41-3では、入力プロファイルに従うa値、b値の各々を、a平面の中心から離れる方向に変換することにより、彩度が編集される。
【0199】
次に、ステップS42では、ステップS41が実行された後の色彩値を、出力プロファイルに基づいて、出力機器に依存する第3の表色系における色彩値に変換する。このステップS42を、第3の色変換ステップと称してもよい。
【0200】
このように、上記の一連の色変換処理によれば、入力機器に依存する第1の表色系の色彩値を、入力機器に非依存の第2の表色系としてのL表色系における色彩値に変換した後、色相と彩度に対応づけて、明度を編集するときの目標となる目標値を設定し、その目標値に近づく方向に明度を適切に変換し、これに連動してa値、b値の各々を彩度が高くなる方向に変換し、さらに出力機器に依存する第3の表色系の色彩値に変換することができる。
言い換えれば、高彩度化という目的に応じてL、a、bの各値を連動して適切に変換する体系化された一連の手法が提供され、これによって、例えば、色鮮やかな入力画像を、そのまま再現、すなわち出力可能となる。
【0201】
以上説明したように、本発明によれば、明度と彩度を編集することで、画像をより高彩度とすることが可能な入力プロファイルの編集方法を提供することができる。
【0202】
本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、種々、変形が可能である。例えば、各編集処理を実施する順番は、適宜、変更することができる。
【0203】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0204】
1・・・コンピュータシステム(画像処理システム)、2・・・ガマット(色域)、3・・・ガマットの切断面、5・・・入力プロファイルに従うガマットの外郭線(ガマットの外郭)、7・・・出力プロファイルに従うガマットの外郭線(ガマットの外郭)、10・・・ホストコンピュータ、11・・・入力プロファイル編集装置(プロファイルエディタ、カラープロファイルエディタ、プロファイル編集ツール、カラープロファイル編集ツール)、20・・・表示部、15・・・メモリ(RAM)、17・・・プログラム(入力プロファイル編集用のプログラム)、18・・・カラーマネージメントモジュール(CMM)、32・・・キーボード、34・・・マウス、38・・・入力画像、39・・・スキャナ(入力側機器、入力側デバイス)、41、44、46・・・ホルダ、42・・・入力プロファイル、50・・・プリンタ(出力側機器、出力側デバイス)、102・・・データインタフェース、104・・・蓄積部、106・・・ユーティリティ、110・・・制御部(プロセッサ等)、111・・・表示管理インタフェース、112・・・色編集処理部、113・・・入力プロファイル編集部、114・・・色相値編集部、115・・・明度編集部、117・・・彩度編集部、119・・・明度の上限下限変更部、120・・・補間演算部、121・・・演算部、122・・・関数生成部、123・・・プロファイル作成部、θ・・・色相角、brightLmin(bn)、brightLmax(bx)、darkLmin(dn)、darkLmax(dx)・・・明度の基準値(閾値)、Q0、Q1、Q2、Q10、Q20、Q30・・・特性線(変換特性を示す変換直線又は変換曲線)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13