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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173614
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20231130BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231130BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085983
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西尾 元紀
(72)【発明者】
【氏名】張 剣韜
(72)【発明者】
【氏名】新井 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】餅川 宏
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA13
5H770DA03
5H770DA23
5H770DA36
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA11
5H770HA01Y
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03X
(57)【要約】
【課題】コストの低減が図れる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置は、マルチレベル変換器および汎用型のマイクロコントローラを備える。マルチレベル変換器は、負荷が接続される三相交流電源にその負荷とは並列の関係に接続され、複数の単位変換器の直列接続により構成されるクラスタを前記三相交流電源の相ごとに有する。汎用型のマイクロコントローラは、前記負荷に流れる電流および前記三相交流電源の電圧についての検出信号をアナログ/ディジタル変換する変換部;前記負荷に流れる電流に含まれる高調波成分を抑制するために必要な前記各クラスタの出力電圧を前記変換部の出力に基づき設定する主制御部;および前記各単位変換器に対する制御信号を前記主制御部の設定に応じて生成する生成部;を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷が接続される三相交流電源にその負荷とは並列の関係に接続され、複数の単位変換器の直列接続により構成されるクラスタを前記三相交流電源の相ごとに有するマルチレベル変換器と、
前記負荷に流れる電流および前記三相交流電源の電圧についての検出信号をアナログ/ディジタル変換する変換部;前記負荷に流れる電流に含まれる高調波成分を抑制するために必要な前記各クラスタの出力電圧を前記変換部の出力に基づき設定する主制御部;および前記各単位変換器に対する制御信号を前記主制御部の設定に応じて生成する生成部;を含む汎用型のマイクロコントローラと、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記各単位変換器は、複数のスイッチ素子および1つのコンデンサから成り、その各スイッチ素子のスイッチングにより複数レベルの直流電圧を選択的に出力し、
前記変換部は、前記負荷に流れる電流についての検出信号、前記マルチレベル変換器と前記三相交流電源の各電源ラインとの間に流れる電流についての検出信号、前記三相交流電源の電源電圧の位相についての検出信号、および前記各単位変換器における前記コンデンサの電圧についての検出信号をそれぞれアナログ/ディジタル変換し、
前記生成部は、前記クラスタごとの各単位変換器の直列接続の段数と同数で互いに位相が異なる複数のキャリア信号の電圧レベルと前記主制御部で設定される出力電圧レベルとを比較するパルス幅変調を、前記クラスタごとに実行することにより、前記各単位変換器に対するスイッチング用の制御信号を生成する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記各単位変換器は、複数のスイッチ素子および1つのコンデンサから成り、その各スイッチ素子のスイッチングにより複数レベルの直流電圧を選択的に出力し、
前記マイクロコントローラは、前記各クラスタの各単位変換器のうち直列接続の段数が規定値までの単位変換器を制御対象とする汎用型の第1マイクロコントローラ;および前記各クラスタの各単位変換器のうち直列接続の段数が前記規定値を超えている分の単位変換器を制御対象とする汎用型の第2マイクロコントローラ;であり、
前記変換部は、前記第1マイクロコントローラに収められ、前記負荷に流れる電流についての検出信号、前記マルチレベル変換器と前記三相交流電源の各電源ラインとの間に流れる電流についての検出信号、前記三相交流電源の電源電圧の位相についての検出信号、および前記直列接続の段数が前記規定値までの単位変換器における前記コンデンサの電圧についての検出信号をそれぞれアナログ/ディジタル変換する第1変換部;および前記第2マイクロコントローラに収められ、前記直列接続の段数が前記規定値を超えている分の単位変換器における前記コンデンサの電圧についての検出信号をアナログ/ディジタル変換する第2変換部;であり、
前記主制御部は、前記第1マイクロコントローラに収められ、前記負荷に流れる電流に含まれる高調波成分を抑制するために必要な前記各クラスタの出力電圧を前記第1変換部の出力および前記第2変換部の出力に基づいて設定し、
前記生成部は、前記第1マイクロコントローラに収められ、前記クラスタごとの各単位変換器の直列接続の段数と同数で互いに位相が異なる複数のキャリア信号のうち、その直列接続の段数が前記規定値までの単位変換器に対応するキャリア信号の電圧レベルと前記主制御部で設定される出力電圧レベルとを比較するパルス幅変調を、前記クラスタごとに実行することにより、前記規定値までの単位変換器に対するスイッチング用の制御信号を生成する第1生成部;および前記第2マイクロコントローラに収められ、前記複数のキャリア信号のうち、前記直列接続の段数が前記規定値を超えている分の単位変換器に対応するキャリア信号の電圧レベルと前記主制御部で設定される出力電圧レベルとを比較するパルス幅変調を、前記クラスタごとに実行することにより、前記規定値を超えている分の単位変換器に対するスイッチング用の制御信号を生成する第2生成部;である、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1マイクロコントローラは、当該第1マイクロコントローラ用の制御クロック信号および前記第2マイクロコントローラ用の制御クロック信号を発するクロック発生部を含む、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1マイクロコントローラは、当該第1マイクロコントローラ用の制御クロック信号を発するとともに、その制御クロック信号を前記第2マイクロコントローラに送るクロック発生部を含み、
前記第2マイクロコントローラは、前記第1マイクロコントローラから送られる制御クロック信号を当該第2マイクロコントローラ用の制御クロック信号として取り込む、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1マイクロコントローラは、当該第1マイクロコントローラ用の制御クロック信号を発するとともに、その制御クロック信号を分周して前記第2マイクロコントローラに送るクロック発生部を含み、
前記第2マイクロコントローラは、前記第1マイクロコントローラから送られる前記分周後の制御クロック信号を所定の周波数に逓倍しそれを当該第2マイクロコントローラ用の制御クロック信号として取り込む、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記各単位変換器は、第1および第2スイッチ素子を直列接続して成る第1直列回路、第3および第4スイッチ素子を直列接続して成り前記第1直列回路に並列接続された第2直列回路、この第2直列回路に並列接続されたコンデンサを含み、前記第1および第2スイッチ素子の一方をオンして他方をオフする動作と前記第3および第4スイッチ素子の一方をオンして他方をオフする動作との組合せにより複数レベルの直流電圧を選択的に出力し、
前記生成部は、前記各クラスタにおける直列接続の段数が1段目,2段目,~N段目の前記各単位変換器のうち;前記1段目の単位変換器の前記第1スイッチ素子および前記2段目の単位変換器の前記第4スイッチ素子を互いに同期してオン,オフする第1制御信号;この第1制御信号の反転により前記1段目の単位変換器の前記第2スイッチ素子および前記2段目の単位変換器の前記第3スイッチ素子を互いに同期してオン,オフする第2制御信号;および前記(N-1)段目の単位変換器の前記第1スイッチ素子および前記N段目の単位変換器の前記第4スイッチ素子を互いに同期してオン,オフする第(N-1)制御信号;この(N-1)制御信号の反転により前記N段目の単位変換器における前記第2スイッチ素子および前記1段目の単位変換器における前記第3スイッチ素子を互いに同期してオン,オフする第N制御信号;を生成する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記各単位変換器は、第1および第2スイッチ素子を直列接続してなる第1直列回路、第3および第4スイッチ素子を直列接続してなり前記第1直列回路に並列接続された第2直列回路、この第2直列回路に並列接続されたコンデンサを含み、前記第1および第2スイッチ素子の一方をオンして他方をオフする動作と前記第3および第4スイッチ素子の一方をオンして他方をオフする動作との組合せにより複数レベルの直流電圧を選択的に出力し、
前記生成部は、前記クラスタごとの各単位変換器のうち複数の単位変換器における前記各第1スイッチ素子を共通にオン,オフする第1制御信号;前記複数の単位変換器における前記各第2スイッチ素子を共通にオン,オフする第2制御信号;前記複数の単位変換器における前記各第3スイッチ素子を共通にオン,オフする第3制御信号;前記複数の単位変換器における前記各第4スイッチ素子を共通にオン,オフする第4制御信号;を生成し、
前記第2制御信号の反転信号に応動する双方向性の第1補助スイッチ素子と前記第4制御信号の反転信号に応動する双方向性の第2補助スイッチ素子とを受動素子を介して直列接続して成り、前記複数の単位変換器における前記各コンデンサの負側端子の相互間に接続された補助スイッチ回路と、
前記複数の単位変換器における前記各コンデンサのうち1つのコンデンサの両端に接続され、その1つのコンデンサの電圧を前記複数の単位変換器における前記各コンデンサの電圧として検出する電圧検出部と、
をさらに備える、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記受動素子は、抵抗器である、
請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記補助スイッチ回路は、前記第2制御信号の前記反転信号を生成する第1反転用スイッチ素子、および前記第4制御信号の前記反転信号を生成する第2反転用スイッチ素子を含む、
請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記補助スイッチ回路は、前記第1補助スイッチ素子へのゲート入力を前記第1制御信号に同期して制御する第1同期制御回路、および前記第2補助スイッチ素子へのゲート入力を前記第3制御信号に同期して制御する第2同期制御回路を含む。
請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記第1同期制御回路は、前記第1制御信号に応動する第1フォトカプラであり、
前記第2同期制御回路は、前記第3制御信号に応動する第2フォトカプラである、
請求項11に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記マルチレベル変換器の前記各クラスタは、前記三相交流電源の各電源ラインに接続される一端を含むとともに、互いにスター結線される他端を含む、
請求項1または請求項8に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、負荷が接続される三相交流電源にその負荷とは並列の関係に接続される電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機等の負荷が接続される三相交流電源にその負荷とは並列の関係に接続され、負荷に流れる電流に含まれる高調波成分を抑制するアクティブフィルタ等の電力変換装置が知られている。
この電力変換装置は、例えばマルチレベル変換器を備える。マルチレベル変換器は、複数の単位変換器を直列接続して成るクラスタを三相交流電源の相ごとに有し、負荷に流れる電流の高調波成分に対する抑制用の補償電流を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-255422号公報
【特許文献2】国際公開第2020/016960号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電気学会論文誌D,128巻7号,p.957-965,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電力変換装置は、マルチレベル変換器の各単位変換器に対するスイッチング制御用のコントローラを備える。このコントローラは、マルチレベル変換器の個々の仕様に合わせて専用に設計されるので、高価である。これは、コストを高める大きな要因となっている。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、コストの低減が図れる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電力変換装置は、負荷が接続される三相交流電源にその負荷とは並列の関係に接続され、複数の単位変換器の直列接続により構成されるクラスタを前記三相交流電源の相ごとに有するマルチレベル変換器と、前記負荷に流れる電流および前記三相交流電源の電圧についての検出信号をアナログ/ディジタル変換する変換部;前記負荷に流れる電流に含まれる高調波成分を抑制するために必要な前記各クラスタの出力電圧を前記変換部の出力に基づき設定する主制御部;および前記各単位変換器に対する制御信号を前記主制御部の設定に応じて生成する生成部;を含む汎用型のマイクロコントローラと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の構成を示すブロック図。
図2】第1実施形態の各単位変換器の構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態の疑似3レベル変調によるスイッチングのオン,オフパターンを示す図。
図4】第1実施形態のクラスタごとのPWM変調による制御信号の生成を示す図。
図5】第1実施形態のマイクロコントローラの主制御部の構成を示すブロック図。
図6】第1実施形態のA/D変換およびデューティ計算のタイミングを示す図。
図7】第2および第3実施形態の構成を示すブロック図。
図8】第3実施形態の各単位変換器および補助スイッチ回路の構成を示すブロック図。
図9】第3実施形態の補助スイッチ回路の具体的な構成を示す図。
図10】第3実施形態の各制御信号と補助スイッチ回路の動作との関係を示すタイムチャート。
図11図10のA1,A4=“1”、A2,A3=“0”での各スイッチ素子の動作および電流経路を示す図。
図12図10のA1,A3=“0”、A2,A4=“1”での各スイッチ素子の動作および電流経路を示す図。
図13図10のA1,A3=“1”、A2,A4=“0”での各スイッチ素子の動作および電流経路を示す図。
図14図10のA1=“1”、A2~A4=“0”のデッドタイムでの各スイッチ素子の動作および電流経路を示す図。
図15】第3実施形態における補助スイッチ回路の変形例の構成を示す図。
図16】第3実施形態の各スイッチ素子の動作および電流経路の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、三相交流電源1の電源ラインLu,Lv,Lwに、本実施形態に係る負荷たとえば空気調和機2が接続されている。空気調和機2は、ブリッジ接続した複数のダイオードにより電源電圧Eu,Ev,Ewを整流する整流回路3、この整流回路3の出力電圧を直流リアクトル4を介して受けるコンデンサ5、このコンデンサ5の電圧を所定周波数の交流電圧に変換し出力するインバータ6、このインバータ6の出力により動作する圧縮機モータ7を含む。
【0010】
電源ラインLu,Lv,Lwに、本実施形態の電力変換装置10が、空気調和機2とは並列の関係に接続されている。
【0011】
電力変換装置10は、いわゆるアクティブフィルタであり、リアクトル11u,11v,11w、このリアクトル11u,11v,11wを介して電源ラインLu,Lv,Lwに接続されたマルチレベル変換器20、電源ラインLu,Lv,Lwにおけるマルチレベル変換器20の接続位置より空気調和機2側の位置に配置され空気調和機2に流れる電流(負荷電流)Iu,Iv,Iwを検出する検出部12、電源ラインLu,Lv,Lwとマルチレベル変換器20との間の通電路に流れる電流(補償電流)Icu,Icv,Icwを検出する検出部13、三相交流電源1の電源電圧Eu,Ev,Ewの位相を検出する検出部14、これら検出部12,13,14の検出結果に応じてマルチレベル変換器20を制御する汎用型のマイクロコントローラ(第1マイクロコントローラ)40を含み、空気調和機2に流れる電流の高調波成分に対する抑制用の補償電流を電源ラインLu,Lv,Lwに供給する。
【0012】
マルチレベル変換器20は、三相交流電源1の相ごとに3つ以上のレベルの直流電圧を選択的に生成し出力するクラスタ21u,21v,21wを有する。これらクラスタ21u~21wのそれぞれ一端は電源ラインLu~Lwに接続され、クラスタ21u~21wのそれぞれ他端は相互接続(スター結線)されている。
【0013】
クラスタ21uは、それぞれが複数レベル(マルチレベル)の直流電圧をスイッチングにより選択的に生成し出力する複数の単位変換器(セル)S1,S2,S3を直列接続(カスケード接続)して構成されるいわゆる多直列変換器クラスタであり、単位変換器S1~S3の出力電圧(セル出力電圧)Vcu1,Vcu2,Vcu3を足し合わせることにより、高調波を低減するための正弦波に近い波形の交流電圧Vcu0(=Vcu1+Vcu2+Vcu3)を生成し出力する。
【0014】
クラスタ21v,21wも、それぞれが複数レベルの直流電圧をスイッチングにより選択的に生成し出力する複数の単位変換器S1,S2,S3を直列接続して構成される多直列変換器クラスタであり、単位変換器S1~S3の出力電圧Vcv1~Vcv3,Vcw1~Vcw3を足し合わせることにより高調波を低減するための正弦波に近い波形の交流電圧Vcv0(=Vcv1+Vcv2+Vcv3),Vcw0(=Vcw1+Vcw2+Vcw3)を生成し出力する。
【0015】
交流電圧Vcu0,Vcv0,Vcw0がクラスタ21u~21wから出力されることにより、負荷電流Iu~Iwに含まれる高調波成分に対する抑制用の補償電流電源ラインLu~Lwに供給される。
【0016】
単位変換器S1~S3の構成を図2に示す。
単位変換器S1は、スイッチ素子Q1,Q2を直列接続して成る第1スイッチングレグ(第1直列回路)、スイッチ素子Q3,Q4を直列接続して成り第1スイッチングレグに並列接続された第2スイッチングレグ(第2直列回路)、この第2スイッチングレグに並列接続されたコンデンサC、このコンデンサCの電圧(コンデンサ電圧)Vcを検出する電圧検出器22を含み、スイッチ素子Q1,Q2の相互接続点およびスイッチ素子Q3,Q4の相互接続点を出力端子とし、スイッチ素子Q1,Q2の一方をオンして他方をオフする動作とスイッチ素子Q3,Q4の一方をオンして他方をオフする動作との組合せにより、複数レベル(正レベル・零レベル・負レベル)の直流電圧Vcu1を選択的に生成し出力する。スイッチ素子Q1~Q4は、それぞれ還流ダイオードDを有するMOSFETであるが、他の半導体スイッチング素子、例えばIGBTを用いても良い。
【0017】
単位変換器S2,S3も、単位変換器S1と同じ構成を有し、複数レベルの直流電圧Vcu2,Vcu3をそれぞれ選択的に生成し出力する。
【0018】
交流電圧Euの正レベル期間において、単位変換器S1のスイッチ素子Q2,Q4をオンしてスイッチ素子Q1,Q3をオフすることにより、コンデンサCに対するバイパス用の通電路が実線矢印で示すようにスイッチ素子Q2,Q4を通して形成され、零レベルのセル出力電圧Vcu1(=0)が出力端子に生じる。交流電圧Euの正レベル期間において、単位変換器S2のスイッチ素子Q1,Q3をオンしてスイッチ素子Q2,Q4をオフすることにより、コンデンサCに対するバイパス用の通電路が実線矢印で示すようにスイッチ素子Q1,Q3を通して形成され、零レベルのセル出力電圧Vcu2(=0)が出力端子に生じる。零レベルのセル出力電圧の生成については、単位変換器S1のようにスイッチ素子Q2,Q4をオンする場合と、単位変換器S2のようにスイッチ素子Q1,Q3をオンする場合の2通りの方法があり、どちらの方法を用いてもよい。
【0019】
交流電圧Euの正レベル期間において、単位変換器S3のスイッチ素子Q1,Q4をオンしてスイッチ素子Q2,Q3をオフすることにより、コンデンサCに対する通電路が実線矢印で示すようにスイッチ素子Q1,Q4を通して形成され、コンデンサCの電圧Vcに基づく正レベルのセル出力電圧Vcu3(=+Vc)が出力端子に生じる。また、交流電圧Euの負レベル期間において、単位変換器S3のスイッチ素子Q2,Q3をオンしてスイッチ素子Q1,Q4をオフすることで、コンデンサCに対する通電路が破線矢印で示すようにスイッチ素子Q2,Q3を通して形成され、コンデンサCの電圧Vcに基づく負レベルのセル出力電圧Vcu3(=-Vc)が出力端子に生じる。
【0020】
ここでは、単位変換器S1から複数レベルのセル出力電圧Vcu1を得るためのスイッチ素子Q1~Q4のオン,オフを、本発明者らが発明した特開2021-166430号公報(特願2020-068470号)に示されている、オン/オフの指令信号の配線数を削減した3レベル変調(以下、これを「疑似3レベル変調のスイッチング」という)により行っている。この疑似3レベル変調のスイッチングにおけるスイッチ素子Q1~Q4のオン,オフパターンとセル出力電圧Vcu1との関係を図3に示す。
【0021】
マイクロコントローラ(第1マイクロコントローラ)40は、例えば空気調和機2に搭載されるようなインバータ制御用の汎用型のマイクロコントローラで、A/D変換部(第1変換部)41、主制御部42,PWM生成部(第1生成部)43、およびクロック発生部44を1チップの集積回路に収めて成り、疑似3レベル変調のスイッチングを図4に示すパルス幅変調(PWM)により行う。
【0022】
A/D変換部41は、負荷電流Iu,Iv,Iwを検出する検出部12の検出信号、補償電流Icu,Icv,Icwを検出する検出部13の検出信号、電源電圧Eu,Ev,Ewの位相を検出する検出部14の検出信号、単位変換器S1~S3のそれぞれコンデンサ電圧Vcについての検出信号(電圧検出器22の検出信号)をアナログ/ディジタル変換する。
【0023】
主制御部42は、負荷電流Iu~Iwに含まれる高調波成分を抑制するために必要なクラスタ21u~21wの出力電圧(交流電圧)Vcu0~Vcw0をA/D変換部41の出力に基づき設定する。すなわち、主制御部42は、電源電圧Euとほぼ同じ波形の交流電圧Vcu0をクラスタ21uで生成し出力させるための交流電圧指令値Vcu sinθ、電源電圧Evとほぼ同じ波形の交流電圧Vcv0をクラスタ21vで生成し出力させるための交流電圧指令値Vcv sin(θ-2π/3)、電源電圧Ewとほぼ同じ波形の交流電圧Vcw0をクラスタ21wで生成し出力させるための交流電圧指令値Vcw sin(θ+2π/3)を設定する。交流電圧指令値Vcu sinθ,Vcv sin(θ-2π/3),Vcw sin(θ+2π/3)は、互いの位相が120°ずれている。
【0024】
PWM生成部43は、クラスタ21u~21wの単位変換器S1~S3に対するスイッチング用の後述する制御信号Gu1~Gu3´を主制御部42で設定される出力電圧Vcu0~Vcw0のレベル(各交流電圧指令値)に応じて生成する。すなわち、PWM生成部43は、クラスタ21uにおける単位変換器S1~S3の直列接続の段数と同数で互いに位相が異なる三角波状のキャリア信号V1,V2,V3の電圧レベルと交流電圧指令値Vcu sinθの電圧レベルとを比較するパルス幅変調により、単位変換器S1~S3のスイッチ素子Q1~Q4に対するスイッチング用の制御信号(駆動信号orゲート信号ともいう)Gu1,Gu1´を生成する。同様に、PWM生成部43は、キャリア信号V1,V2,V3の電圧レベルと交流電圧指令値Vcv sin(θ-2π/3),Vcw sin(θ+2π/3)の電圧レベルとをそれぞれ比較するパルス幅変調により、クラスタ21v,21wの単位変換器S1~S3のスイッチ素子Q1~Q4に対するスイッチング用の制御信号Gu2,Gu2´,Gu3,Gu3´を生成する。キャリア信号V1,V2,V3の位相は、一周期(360°)を単位変換器S1~S3の直列接続の段数“3”で除算した値の120°(=360°/3)ずつ、ずれている。
【0025】
制御信号(第1制御信号)Gu1は、単位変換器S1~S3の直列接続の段数が互いに隣り合う1段目と2段目の2つの単位変換器S1,S2に供給され、単位変換器S1におけるスイッチ素子Q1および単位変換器S2におけるスイッチ素子Q4を互いに同期してオン,オフする。制御信号(第2制御信号)Gu1´は、制御信号Gu1の論理レベルを反転器23で反転したもので(Gu1の相補信号)、制御信号Gu1と同じく1段目と2段目の2つの単位変換器S1,S2に供給され、単位変換器S1におけるスイッチ素子Q2および単位変換器S2におけるスイッチ素子Q3を互いに同期してオン,オフする。なお、ここで言う「反転」とは、各スイッチング素子のQ1~Q4の基本となる駆動信号の状態を意味し、実際のスイッチング素子Q1~Q4の駆動においては、相補的な動作を行う2つの素子に対して、同時にオン、すなわち短絡状態とならないように当該2つの素子が同時にオフとなるデッドタイム期間が切り替わりの間に設けられる。
【0026】
制御信号(第3制御信号)Gu2は、単位変換器S1~S3の直列接続の段数が互いに隣り合う2段目と最後の3段目(N段目)の単位変換器S2,S3に供給され、単位変換器S2におけるスイッチ素子Q1および単位変換器S3におけるスイッチ素子Q4を互いに同期してオン,オフする。制御信号(第4制御信号)Gu2´は、制御信号Gu2の論理レベルを反転器23で反転したもので(Gu2の相補信号)、制御信号Gu2と同じく2段目と3段目の2つの単位変換器S2,S3に供給され、単位変換器S2におけるスイッチ素子Q2および単位変換器S3におけるスイッチ素子Q3を互いに同期してオン,オフする。
【0027】
制御信号(第5制御信号)Gu3は、単位変換器S1~S3の直列接続の段数が最後の3段目と最初の1段目の2つの単位変換器S3,S1に供給され、単位変換器S3におけるスイッチ素子Q1および単位変換器S1におけるスイッチ素子Q4を互いに同期してオン,オフする。制御信号(第6制御信号)Gu3´は、制御信号Gu3の論理レベルを反転器23で反転したもので(Gu3の相補信号)、制御信号Gu3と同じく3段目と1段目の2つの単位変換器S3,S1に供給され、単位変換器S3におけるスイッチ素子Q2および単位変換器S1におけるスイッチ素子Q3を互いに同期してオン,オフする。
【0028】
これら制御信号Gu1~Gu3´の生成に際し、PWM生成部43は、単位変換器S1~S3において互いに直列に配置されているスイッチ素子Q1,Q2のオンとオフの間、および互いに直列に配置されているスイッチ素子Q3,Q4のオンとオフの間に、それぞれ短絡防止のためにオフ状態となるデッドタイムを確保する。
【0029】
クロック発生部44は、マイクロコントローラ40の稼働に必要な制御クロック信号を発する。
【0030】
主制御部42は、交流電圧指令値Vcu sinθ,Vcv sin(θ-2π/3),Vcw sin(θ+2π/3)を設定する主要な構成として、図5に示す電圧制御部42aおよび電流制御部42bを含む。
【0031】
電圧制御部42aは、クラスタ21u~21wにおける単位変換器S1~S3のそれぞれコンデンサ電圧Vcを個別にバランスさせる個別バランス制御、クラスタ21u~21wにおける単位変換器S1~S3のそれぞれコンデンサ電圧Vcの全ての平均値を予め定めた目標値に追従させるコンデンサ電圧一括制御、クラスタ21u~21wにおける単位変換器S1~S3のそれぞれコンデンサ電圧Vcの相ごとの平均値をバランスさせる相間バランス制御を実行する。
【0032】
電流制御部42bは、検出した負荷電流Iu,Iv,Iwの値をローパスフィルタを通してdq変換し、その出力結果をローパスフィルタに入力することで直流成分を抽出する。さらに、電流制御部42bは、抽出した直流成分を上記dq変換出力から減じることで高調波成分を抽出し、抽出した高調波成分とコンデンサ電圧一括制御および相間バランス制御の演算結果とに基づき、補償電流Icu,Icv,Icwについての電流指令値を求める。そして、電流制御部42bは、求めた電流指令値と実際に検出した補償電流Icu,Icv,Icwの値との差を電流制御器に入力し、その電流制御器の出力を逆dq変換する。主制御部42は、この逆dq変換に個別バランス制御の演算結果を加算し、その加算結果をクラスタ21u,21v,21wにおける単位変換器S1~S3のそれぞれコンデンサ電圧Vcで除算することにより、デューティ指令値であるところの交流電圧指令値Vcu sinθ,Vcv sin(θ-2π/3),Vcw sin(θ+2π/3)を得る。
【0033】
A/D変換部41のA/D変換処理および主制御部42のデューティ計算のタイミングをクラスタ21uに対するPWM制御を例として図6に示している。
キャリア信号V1,V2,V3の周波数がFc[Hz]で、そのキャリア信号V1,V2,V3の波形の山または谷のタイミングの割込み処理でデューティ計算を行う場合、そのデューティ計算の演算周波数は6Fc[Hz]となる。主制御部42は、キャリア信号の波形の谷またはその付近のタイミングでアナログ/ディジタル変換処理を開始し、これにより電流や電圧に関する必要情報を取込み、取込んだ情報に基づいてデューティ計算を実行し、その計算結果を内部のPWM出力用レジスタにセットし、そのセット内容をキャリア信号の波形の山のタイミングで新たなデューティ指令値として反映させる(更新)。
【0034】
以上のように、空気調和機2に搭載されるようなインバータ制御用の汎用型のマイクロコントローラ40をマルチレベル変換器20に対するスイッチング制御用のコントローラとして用いることにより、マルチレベル変換器20の仕様に合わせた専用設計のコントローラを用いる場合よりも、コストを低減することができる。
【0035】
[2]第2実施形態
三相交流電源1および電源ラインLu,Lv,Lwが高電圧交流系統である場合、アクティブフィルタ10が高電圧に耐えられるよう、マルチレベル変換器20の各スイッチ素子の耐圧を高くしたり、マルチレベル変換器20におけるクラスタごとの各単位変換器の直列接続の段数を多くする必要がある。ただし、スイッチ素子のオン抵抗およびリカバリ電荷量はスイッチ素子の耐圧と比例するので、耐圧の高いスイッチ素子を採用すると損失が増大するという問題がある。
【0036】
各単位変換器の直列接続の段数を多くすれば、耐圧の高いスイッチ素子を採用することなく、つまり損失の増大を招くことなく、アクティブフィルタ10を高電圧交流系統に接続することが可能となる。しかしながら、各単位変換器の直列接続の段数が多いと、汎用のマイクロコントローラ40だけでは全ての単位変換器を制御することが困難となる。この点に対処したのが第2実施形態である。
【0037】
図7に示すように、クラスタ21uは、3つより多いn個の単位変換器S1~Snを直列接続し、その各単位変換器の出力電圧Vcu1~Vcunを足し合わせることにより、高調波を低減するための正弦波に近い波形の交流電圧Vcu0を生成し出力する。クラスタ21v,21wも、n個の単位変換器S1~Snを直列接続し、その各単位変換器の出力電圧Vcv1~Vcvn,Vcw1~Vcwnをそれぞれ足し合わせることにより、高調波を低減するための正弦波に近い波形の交流電圧Vcv0,Vcw0をそれぞれ生成し出力する。
【0038】
アクティブフィルタ10は、マルチレベル変換器20に対するスイッチング制御用のコントローラとして、直列接続の段数が規定値である例えば“3”までの単位変換器S1~S3を制御対象とする汎用型のマイクロコントローラ(第1マイクロコントローラ)40をマスタコントローラとして備え、かつ直列接続の段数が上記規定値を超えている分の単位変換器S4~Snを制御対象とする汎用型のマイクロコントローラ(第2マイクロコントローラ)50をマイクロコントローラ40に従属するスレーブコントローラとして備える。
【0039】
マイクロコントローラ40は、第1実施形態と同じく、A/D変換部(第1変換部)41、主制御部42、PWM生成部(第2生成部)43、およびクロック発生部44を1チップの集積回路に収めて成り、空気調和機2に搭載されるようなインバータ制御用の汎用型のマイクロコントローラである。マイクロコントローラ50は、A/D変換部(第2変換部)51およびPWM生成部(第2生成部)52を1チップの集積回路に収めて成り、コントローラ40と同じく、空気調和機2に搭載されるようなインバータ制御用の汎用型のマイクロコントローラである。
【0040】
マイクロコントローラ40のA/D変換部41は、第1実施形態と同じく、負荷電流Iu~Iwを検出する検出部12の検出信号、補償電流Icu~Icwを検出する検出部13の検出信号、電源電圧Eu~Ewの位相を検出する検出部14の検出信号、直列接続の段数が上記規定値までの単位変換器S1~S3のそれぞれコンデンサ電圧Vcについての検出信号(電圧検出器22の検出信号)をアナログ/ディジタル変換する。
【0041】
マイクロコントローラ50のA/D変換部51は、直列接続の段数が上記規定値を超えている分の単位変換器S4~Snのそれぞれコンデンサ電圧Vcについての検出信号(電圧検出器22の検出信号)をアナログ/ディジタル変換し、その変換出力をマイクロコントローラ40の主制御部42に送る。
【0042】
マイクロコントローラ40の主制御部42は、負荷電流Iu~Iwに含まれる高調波成分を抑制するために必要なクラスタ21u~21wの出力電圧(交流電圧)Vcu0~Vcw0をA/D変換部41,51の出力に基づき設定する。すなわち、主制御部42は、電源電圧Euとほぼ同じ波形の交流電圧Vcu0をクラスタ21uで生成し出力させるための交流電圧指令値Vcu sinθ、電源電圧Evとほぼ同じ波形の交流電圧Vcv0をクラスタ21vで生成し出力させるための交流電圧指令値Vcv sin(θ-2π/3)、電源電圧Ewとほぼ同じ波形の交流電圧Vcw0をクラスタ21wで生成し出力させるための交流電圧指令値Vcw sin(θ+2π/3)を設定する。
【0043】
マイクロコントローラ40のPWM生成部43は、クラスタ21u~21wにおける単位変換器S1~Snの直列接続の段数“n”と同数で互いに位相が異なるn個のキャリア信号のうち、直列接続の段数が上記規定値までの単位変換器S1~S3に対応する3つのキャリア信号の電圧レベルと主制御部42で設定される出力電圧Vcu0~Vcw0のレベル(各交流電圧指令値)とを比較するパルス幅変調を、クラスタ21u~21wごとに実行することにより、単位変換器S1~S3に対するスイッチング用の制御信号を生成する。
【0044】
マイクロコントローラ50のPWM生成部52は、n個のキャリア信号のうち、直列接続の段数が上記規定値を超えている分の単位変換器S4~Snに対応する“n-3”個のキャリア信号の電圧レベルと主制御部42で設定される出力電圧Vcu0~Vcw0のレベル(各交流電圧指令値)とを比較するパルス幅変調を、クラスタ21u~21wごとに実行することにより、単位変換器S4~Snに対するスイッチング用の制御信号を生成する。
【0045】
マイクロコントローラ40のクロック発生部44は、マイクロコントローラ40用の制御クロック信号およびマイクロコントローラ50用の制御クロック信号を発する。例えば、クロック発生部44は、マイクロコントローラ40用の制御クロック信号を発するとともに、その制御クロック信号をそのままマイクロコントローラ50に送る。マイクロコントローラ50は、クロック発生部44から送られる制御クロック信号を当該マイクロコントローラ50用の制御クロック信号として取り込む。
【0046】
なお、クロック発生部44は、マイクロコントローラ40用の制御クロック信号を発するとともに、その制御クロック信号を分周してマイクロコントローラ50に送る構成としてもよい。この場合、マイクロコントローラ50は、クロック発生部44から送られる分周信号を所定の周波数に逓倍しそれを当該マイクロコントローラ50用の制御クロック信号として取り込む。
【0047】
クロック発生部44が発する制御クロック信号は周波数が数MHzと高く、そのままマイクロコントローラ50に送ると外部機器にノイズとして悪影響を及ぼす可能性がある。これに対し、クロック発生部44が発する制御クロック信号を分周により周波数を下げた状態でスレーブ側のマイクロコントローラ50に送れば、外部機器への悪影響を軽減することができる。マイクロコントローラ50は、受けた制御クロック信号をマイクロコントローラ40で用いる制御クロック信号と同じ周波数に逓倍し、あるいは受けた制御クロック信号をマイクロコントローラ40で用いる制御クロック信号の“整数分の1”の周波数に逓倍して用いる。この場合、マイクロコントローラ50の消費電力を低減できる。
【0048】
以上のように、マルチレベル変換器20におけるクラスタごとの各単位変換器の直列接続の段数を多くすることにより、耐圧の高いスイッチ素子を採用することなく、つまり損失の増大を招くことなく、アクティブフィルタ10を高電圧交流系統に接続することが可能となる。
【0049】
とくに、空気調和機2に搭載されるようなインバータ制御用の汎用型の2つのマイクロコントローラ40,50をマルチレベル変換器20に対するスイッチング制御用のコントローラとして用いるので、マルチレベル変換器20における各単位変換器の直列接続の段数が多くても、コストの低減を図りながら、マルチレベル変換器20の全ての単位変換器を適切に制御することができる。
【0050】
なお、単位変換器S1~S3における各電圧検出器22の検出信号をマルチプレクサで合成してマイクロコントローラ40に供給し、単位変換器S4~Snにおける各電圧検出器22の検出信号をマルチプレクサで合成してマイクロコントローラ50に供給する構成とすれば、マイクロコントローラ40,50に設けるポートの個数を削減することが可能である。
【0051】
汎用型の2つのマイクロコントローラを用いる場合を例に説明したが、汎用型の3つ以上のマイクロコントローラを用いる構成としてもよい。
【0052】
[3]第3実施形態
第2実施形態のように、マルチレベル変換器20における各単位変換器の直列接続の段数が多いと、各単位変換器のコンデンサ電圧Vcを検出する電圧検出器22の数も多くなり、その分、コストが上昇するという課題がある。この点に対処したのが第3実施形態である。
【0053】
図7に示すように、クラスタ21uの単位変換器S1~Snのうち、複数の単位変換器たとえば直列接続の段数が互いに隣り合う2つの単位変換器ごとに、補助スイッチ回路30が1つずつ設けられている。クラスタ21v,21wの単位変換器S1~Snにおいても、複数の単位変換器たとえば直列接続の段数が互いに隣り合う2つの単位変換器ごとに、補助スイッチ回路30が1つずつ設けられている。
【0054】
直列接続の段数が互いに隣り合う2つの単位変換器S1,S2の構成およびその単位変換器S1,S2に対し設けられる1つの補助スイッチ回路30の構成を図8に示す。
単位変換器S1は、スイッチ素子Q1~Q4、コンデンサC、電圧検出器22を含むとともに、マイクロコントローラ40から供給される制御信号A1~A4に応じてスイッチ素子Q1~Q4をそれぞれオン,オフ駆動する駆動部(ゲートアンプ)25a,25b,25c,25d、およびコンデンサCの電圧Vcを駆動部25a~25dの動作に必要な直流電圧(動作用電圧)Vddに変換する電源部24を含む。
【0055】
単位変換器S2は、スイッチ素子Q1~Q4、コンデンサC、上記制御信号A1~A4に応じてスイッチ素子Q1~Q4をそれぞれオン,オフ駆動する駆動部25a~25d、およびコンデンサCの電圧Vcを駆動部25a~25dの動作に必要な直流電圧Vddに変換する電源部24を含み、電圧検出器22は含まない。
【0056】
制御信号A1~A4は、マイクロコントローラ40のPWM生成部44で生成される。制御信号A1は、単位変換器S1,S2のそれぞれスイッチ素子(第1スイッチ素子)Q1をそれぞれ駆動部25aを介してオン,オフする。制御信号A2は、単位変換器S1,S2のそれぞれスイッチ素子(第2スイッチ素子)Q2をそれぞれ駆動部25bを介してオン,オフする。制御信号A3は、単位変換器S1,S2のそれぞれスイッチ素子(第3スイッチ素子)Q3をそれぞれ駆動部25cを介してオン,オフする。制御信号A4は、単位変換器S1,S2のそれぞれスイッチ素子(第4スイッチ素子)Q4をそれぞれ駆動部25dを介してオン,オフする。
【0057】
補助スイッチ回路30は、制御信号A2の論理レベルを反転する反転回路31、この反転回路31の出力信号に応動する補助スイッチ素子(第1補助スイッチ素子)T1、制御信号A4の論理レベルを反転する反転回路32、この反転回路32の出力信号に応動する補助スイッチ素子(第2補助スイッチ素子)T2、および受動素子Rを含み、補助スイッチ素子T1,T2を受動素子Rを介して直列接続して成り、単位変換器S1,S2の各コンデンサCの負側端子(スイッチ素子Q2,Q4のソース端子)の相互間に接続されている。この回路構成によって補助スイッチ回路30は、双方向性のスイッチとして動作する。
【0058】
反転回路31は、図9に示すように、制御信号A2に応動するスイッチ素子31tを含み、単位変換器S1の電源部24から補助スイッチ素子T1のゲート・ソース間に印加される直流電圧Vddを制御信号A2に応じたスイッチ素子31tの動作により制御する。制御信号A2が論理“1”レベルのとき、スイッチ素子31tがオンして補助スイッチ素子T1のゲート・ソース間電圧が低レベルとなり、補助スイッチ素子T1がオフする。制御信号A2が論理“0”レベルのとき、スイッチ素子31tがオフして補助スイッチ素子T1のゲート・ソース間電圧が高レベルとなり、補助スイッチ素子T1がオンする。
【0059】
反転回路32は、図9に示すように、制御信号A4に応動するスイッチ素子32tを含み、単位変換器S2の電源部24から補助スイッチ素子T2のゲート・ソース間に印加される直流電圧Vddを制御信号A4に応じたスイッチ素子32tの動作により制御する。制御信号A4が論理“1”レベルのとき、スイッチ素子32tがオンして補助スイッチ素子T2のゲート・ソース間電圧が低レベルとなり、補助スイッチ素子T2がオフする。制御信号A4が論理“0”レベルのとき、スイッチ素子32tがオフして補助スイッチ素子T2のゲート・ソース間電圧が高レベルとなり、補助スイッチ素子T2がオンする。
【0060】
補助スイッチ回路30は、単位変換器S1のコンデンサ電圧Vcと単位変換器S2のコンデンサ電圧Vcを、補助スイッチ素子T1,T2および受動素子Rを通してバランスさせる。受動素子Rは、抵抗器である。
【0061】
共通の制御信号A1~A4によって駆動される2つの単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサ電圧Vcを補助スイッチ回路30でバランスさせることにより、単位変換器S1の1つの電圧検出器22だけで、単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサ電圧Vcを検出できる。
【0062】
抵抗器である受動素子Rの抵抗値を調整することで、補助スイッチ素子T1,T2を通して流れる電流の大きさを調整することができる。すなわち、受動素子Rの抵抗値を小さくすると補助スイッチ素子T1,T2を通して流れる電流が大きくなり、受動素子Rの抵抗値を大きくすると補助スイッチ素子T1,T2を通して流れる電流が小さくなる。補助スイッチ素子T1,T2を通して流れる電流が大きいと、補助スイッチ回路30において損失が生じたり、補助スイッチ回路30の構成部品に不具合が生じる原因となるので、受動素子Rの抵抗値は大きいことが望ましい。
【0063】
制御信号A1~A4の論理レベル(“1”or“0”)、補助スイッチ素子T1,T2の動作、補助スイッチ回路30に流れる電流(バランス回路電流)Irの関係を図10のタイムチャートに示している。制御信号A1~A4の論理レベルと、単位変換器S1,S2の各スイッチ素子の動作、補助スイッチ素子T1,T2の動作、単位変換器S1,S2および補助スイッチ回路30における電流経路と、の関係を図11図15に示している。
【0064】
A1=“1”,A2=“0”,A3=“0”,A4=“1”のとき、図11に示すように、単位変換器S1,S2のスイッチ素子Q1,Q4がオンしてスイッチ素子Q2,Q3がオフし、かつ補助スイッチ素子T1がオンして補助スイッチ素子T2がオフする。これにより、図11に破線矢印で示すように、単位変換器S1のスイッチ素子Q1→単位変換器S1のコンデンサC→単位変換器S1のスイッチ素子Q4→単位変換器S2のスイッチ素子Q1→単位変換器S2のコンデンサC→単位変換器S2のスイッチ素子Q4を通る経路で電流が流れ、単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサCが充電される。補助スイッチ素子T2がオフしているので、補助スイッチ回路30には電流が流れない。
【0065】
続いて、A1=“0”,A2=“1”,A3=“0”,A4=“1”では、図12に示すように、単位変換器S1,S2のスイッチ素子Q2,Q4がオンしてスイッチ素子Q1,Q3がオフし、かつ補助スイッチ素子T1がオンして補助スイッチ素子T2がオフする。これにより、図12に破線矢印で示すように、単位変換器S1のスイッチ素子Q2→単位変換器S1のスイッチ素子Q4→単位変換器S2のスイッチ素子Q2→単位変換器S2のスイッチ素子Q4を通る経路で電流が流れる。単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサCには電流が流れない。補助スイッチ回路30にも電流は流れない。
【0066】
この場合、A2が“0”から“1”に変わってスイッチ素子Q2がターンオンする時点と、A1が“1”から“0”に変わってスイッチ素子Q1がターンオフする時点との間に、スイッチ素子Q1,Q2が同時にオンすることによる短絡を防ぐためのデッドタイム(A1,A2,A3=“0”、A4=“1”)が確保される。
【0067】
続いて、A1=“1”,A2=“0”,A3=“0”,A4=“1”では、各スイッチ素子の状態および電流の流れが上記した図11の状態となる。この場合、A1が“0”から“1”に変わってスイッチ素子Q1がターンオンする時点と、A2が“1”から“0”に変わってスイッチ素子Q2がターンオフする時点との間に、スイッチ素子Q1,Q2が同時にオンすることによる短絡を防ぐためのデッドタイム(A1~A3=“0”、A4=“1”)が確保される。
【0068】
続いて、A1=“1”,A2=“0”,A3=“1”,A4=“0”では、図13に示すように、単位変換器S1,S2のスイッチ素子Q1,Q3がオンしてスイッチ素子Q2,Q4がオフし、かつ補助スイッチ素子T1,T2がオンする。これにより、図13に破線矢印で示すように、単位変換器S1のスイッチ素子Q1→単位変換器S1のスイッチ素子Q3→単位変換器S2のスイッチ素子Q1→単位変換器S2のスイッチ素子Q3を通る経路で電流が流れる。
【0069】
この場合、A3が“0”から“1”に変わってスイッチ素子Q3がターンオンする時点と、A4が“1”から“0”に変わってスイッチ素子Q4がターンオフする時点との間に、スイッチ素子Q3,Q4が同時にオンすることによる短絡を防ぐためのデッドタイム(A1=“1”、A2~A4=“0”)が確保される。また、単位変換器S1のスイッチ素子Q3および単位変換器S2のスイッチ素子Q1のオンによって単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサCの正側端子が導通し、補助スイッチ素子T1,T2のオンによって単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサCの負側端子が導通し、単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサCが互いに並列接続された状態となる。この並列接続により、単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサCが互いに充放電し、それぞれのコンデンサ電圧Vcがバランスする。
【0070】
例えば、単位変換器S1のコンデンサ電圧Vcが単位変換器S2のコンデンサ電圧Vcより低い場合、図13に破線矢印で示すように、単位変換器S1のスイッチ素子Q1からスイッチ素子Q3に向かう電流の一部が単位変換器S1のコンデンサCの正側端子に流れ、その単位変換器S1のコンデンサCが充電される。単位変換器S1のコンデンサCを経た電流は、バランス回路電流Irとして補助スイッチ素子T1、受動素子R、補助スイッチ素子T2を通り、単位変換器S2のコンデンサCの負側端子に流れる。単位変換器S2のコンデンサCは放電し、その放電電流が単位変換器S2のスイッチ素子Q3へ向かう電流に合流する。この充放電により、単位変換器S1のコンデンサ電圧Vcが上昇方向に変化して単位変換器S2のコンデンサ電圧Vcが下降方向に変化し、それぞれのコンデンサ電圧Vcが互いに同じ値にバランスしたところで、バランス回路Irがゼロとなる。
【0071】
単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサ電圧Vcが互いに同じ値にバランスするので、単位変換器S1に設けている1つの電圧検出器22だけで、単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサ電圧Vcを検出できる。残りの単位変換器S3~Snにおいても、少ない数の電圧検出器22で単位変換器S3~Snのそれぞれコンデンサ電圧Vcを検出できる。電圧検出器22の数が少ない分、コストの低減が図れる。
【0072】
続いて、A1=“1”、A2=“0”、A3=“0”、A4=“1”では、各スイッチ素子の状態および電流の流れが上記した図11の状態となる。この場合、A4が“0”から“1”に変わってスイッチ素子Q4がターンオンする時点と、A3が“1”から“0”に変わってスイッチ素子Q3がターンオフする時点との間に、スイッチ素子Q3,Q4が同時にオンすることによる短絡を防ぐためのデッドタイム(A1=“1”、A2~A4=“0”)が確保される。
【0073】
このデッドタイム(A1=“1”、A2~A4=“0”)では、図14に示すように、単位変換器S1,S2のスイッチ素子Q1がオンしてスイッチ素子Q2,Q3,Q4がオフし、かつ補助スイッチ素子T1,T2がオンする。これにより、図14に破線矢印で示すように、単位変換器S1のスイッチ素子Q1→単位変換器S1のコンデンサC→補助スイッチ素子T1→受動素子R→補助スイッチ素子T2→単位変換器S2のスイッチ素子Q4の還流ダイオードDを通る経路で電流(パルス状の電流)が流れる。なお、図10において、バランス期間中とその前後のデッドタイム中の電流Irを同じ値で表しているが、バランス状況に応じてバランス期間中の電流Irの値は変化し、マイナス側(逆方向)に流れる場合もある。
【0074】
補助スイッチ回路30は、図15に示すように、反転回路31、補助スイッチ素子T1、反転回路32、補助スイッチ素子T2、受動素子Rを含むことに加え、補助スイッチ素子T1へのゲート入力を制御信号A1に同期して制御する同期制御回路(第1同期制御回路)33、および前記第2補助スイッチ素子へのゲート入力を制御信号A3に同期して制御する同期制御回路(第2同期制御回路)34を含む構成としてもよい。
【0075】
同期制御回路33は、制御信号A1に応動するフォトカプラ(第1フォトカプラ)であり、制御信号A1が論理“1”のときに発光するフォトダイオード33a、およびこのフォトダイオード33aの発光によりオンして直流電圧Vddを補助スイッチ素子T1へのゲート信号として出力するフォトトランジスタ33bから成り、上記[A1~A3=“0”、A4=“1”]のデッドタイムにおいて補助スイッチ素子T1を強制的にオフする。この補助スイッチ素子T1の強制的なオフにより、そのデッドタイム中に補助スイッチ回路30を通して流れる不要なパルス状電流を遮断することができる。不要なパルス状電流を遮断できる分、損失の低減が図れる。
【0076】
同期制御回路34は、制御信号A3に応動するフォトカプラ(第2フォトカプラ)であり、制御信号A3が論理“1”のときに発光するフォトダイオード34a、およびこのフォトダイオード34aの発光によりオンして直流電圧Vddを補助スイッチ素子T2へのゲート信号として出力するフォトトランジスタ34bにより構成され、上記[A1=“1”、A2~A4=“0”]のデッドタイムにおいて補助スイッチ素子T2を強制的にオフする。この補助スイッチ素子T2の強制的なオフにより、そのデッドタイム中に補助スイッチ回路30を通して流れる不要なパルス状電流を遮断することができる。不要なパルス状電流を遮断できる分、損失の低減が図れる。
【0077】
図10のタイムチャートにない制御として、図16に示すように単位変換器S1,S2のスイッチ素子Q2,Q3をオンしてスイッチ素子Q1,Q4をオフし、かつ補助スイッチ素子T1,T2をオフする例がある。この場合、図16に破線で示すように、単位変換器S1,S2のそれぞれコンデンサCに対する放電路がスイッチ素子Q2,Q3を通して形成される。補助スイッチ回路30には電流が流れない。
【0078】
上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態および変形例は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…三相交流電源、Lu,Lv,Lw…電源ライン、2…空気調和機(負荷)、10…電力変換装置(アクティブフィルタ)、11u,11v,11w…リアクタ、20…マルチレベル変換器、21u,21v,21w…クラスタ、S1~Sn…単位変換器、Q1~Q4…スイッチ素子、C…コンデンサ、22…電圧検出器、30…補助スイッチ回路、40…マイクロコントローラ(第1マイクロコントローラ)、41…A/D変換器、42…主制御部、43…PWM生成部、44…クロック発生部、50…マイクロコントローラ(第2マイクロコントローラ)。
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